前述した従来技術のうち,特許文献1として紹介した空気圧縮機では,図9,10に示すように消費側における圧縮空気の消費が停止してレシーバタンク104内の圧力が図10中のP1からP2に上昇するとレギュレータ132を介して吸入弁131に圧縮空気が導入されて圧縮機本体102の吸入口が吸入弁131によって閉ざされ,この動作により圧縮機本体102の吸入口内が負圧になると,圧力スイッチVSが作動してオートレリーフバルブ111を開き,レシーバタンク104内の圧縮空気をパージする。
そして,レシーバタンク104内の圧力がP3にまで降下すると,オートレリーフバルブ111が閉じてパージが停止し,この状態で圧縮機は無負荷運転を継続し,圧縮空気の消費が行われて圧力スイッチPSSが供給配管122内の圧力低下を検知する迄,無負荷運転が継続される。
このように,特許文献1に記載の制御装置にあっては,オートレリーフバルブ111の閉弁圧力であるP3と,レギュレータ132の作動圧力P2とが独立して設定されているために,オートレリーフバルブ111の閉弁圧力P3の設定を変更することなく,レギュレータ132の作動圧力P2の設定のみを変更して設定圧力を例えば高圧側に変更すると,吸入弁131を閉じた時点におけるレシーバタンク104内の圧力P2と,オートレリーフバルブ111を閉じるときのレシーバタンク内の圧力P3との差が大きくなり,この状態で消費側における圧縮空気の消費が再開すると,圧縮空気の消費を開始した当初において,消費側に供給され圧縮空気はP3から徐々にP1に上昇するために,圧力の変動幅が大きく,消費側に安定した圧力で圧縮空気を供給することができない。
逆にレギュレータ132を操作してレギュレータ132の作動圧力P2を低く変更すると,P3とP1の圧力差が小さくなるために消費開始時点において消費側に供給される圧縮空気の圧力変動は小さくなるが,オートレリーフバルブ111を開放して圧縮機本体102の吐出側を開放した状態で行われる運転期間(図10中の線イ)が短くなり,さしたる省エネ効果が期待できず,また,レギュレータ132の設定を誤って,レギュレータ132の作動圧力P2をオートレリーフバルブ111の閉弁圧力P3よりも低く設定してしまうとオートレリーフバルブ111が開いたままの状態となりレシーバタンク104内の圧力が上昇しなくなる。
特許文献2に記載の制御装置では,供給配管に逆止弁Eを設けていることから,パージが行われていない状態においてレシーバF内の圧力はオイルタンクD内の圧力と一致し,パージが行われると,レシーバFはパージ直前の圧縮機本体の吐出側圧力を維持し,消費側における圧縮空気の消費が開始されるまでこの圧力が維持される。
従って,レシーバF内の圧力降下を検知することにより,消費側で圧縮空気の消費が開始されたことの判断を行うことができ,これに基づいて消費側における圧縮空気の消費開始と共にパージを停止することができるものとなっている。
しかし,特許文献2に記載の構成において,圧縮機本体202の吸入側に設けた吸入弁231の開閉制御を,圧力調整弁Bを介してレシーバF内の圧力によって行う場合(特許文献2の第3図の構成),圧力調整弁Bの設定を変更することにより圧力調整弁Bの作動圧力をパージの開始,停止時におけるレシーバF内の圧力よりも高く設定すると,圧力調整弁Bが作動する前にパージが始まってしまい,圧縮機がアンロード運転に移行しなくなる。
また,圧力調整弁Bの設定を変更して作動圧力をパージの開始,停止時におけるレシーバF内の圧力設定よりも大幅に低く設定してしまうと,放気弁211が開閉動作を行わなくなりパージが行われない。
従って,図9,図11いずれの空気圧縮機の構成においても,レギュレータ132や圧力調整弁Bの設定を変更して消費側に供給される圧縮空気の圧力を変更した場合には,これに対応して,オートレリーフバルブ111や放気弁211の作動圧力に付いても変更する,面倒な調整作業が必要となる。
更に,容量制御装置に設けられているレギュレータ132,圧力調整弁B,吸入弁の弁体を動かす駆動手段(例えば吸入弁の受圧室に設けたダイヤフラム等)は一般にゴム製のダイヤフラムを使用していることから,温度や経時劣化によってダイヤフラムの硬度が変わり作動圧力が変化する。
特にエンジン駆動型圧縮機は可搬性に優れ,屋外の現場にて使用される場合が多く,季節や天候,地域などにより外気温の変化の影響を受けやすく,例えば外気温が−15〜40℃の範囲で使用され得るものであることから,作動圧力(設定吐出圧力)の変化が顕著である。
また,レギュレータや圧力調整弁,吸入弁のみならず,圧力センサ等についても温度変化によりセンサの抵抗値が変化してコントローラへ出力する電圧値に誤差が生じる場合がある。
そのため,前述したように,レギュレータ132や圧力調整弁Bの設定を変更した場合のみならず,このような設定の変更を行わない場合においても,レギュレータ132や圧力調整弁Bの作動圧力や吸入弁131,231の作動圧力と,パージの開始,停止する際のレシーバ内の圧力との関係が知らず知らずのうちに変化している場合があり,これにより期待した省エネ効果が得られない場合があるだけでなく,消費側に供給される圧縮空気の圧力変動が大きくなって安定した圧力の圧縮空気が提供できなくなったり,パージ弁が開いたまま閉じなくなったり,圧縮機がアンロード運転に移行する前にパージが始まってしまう等の不具合が生じる場合がある等,空気圧縮機自体を正常に動作させることができなくなる場合があり,容量制御装置の動作と,オートレリーフバルブや放気弁の動作とが一定の関係で行われるように常に複雑な調整を行うことが必要となり煩雑である。
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,消費側に供給する圧縮空気の圧力設定を変更した場合や,使用条件の変化による温度変化等に伴い容量制御装置の動作に変化が生じた場合であっても,特別な調整等を行うことなく容量制御装置の動作に連動してパージ弁を動作させることができると共に,消費側供給される圧縮空気の圧力変動や,パージ弁が開いたまま閉じないといった不具合の発生を生じさせることなく好適に作動させることのできる空気圧縮機の制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の特許請求範囲の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
上記目的を達成するために,本発明の空気圧縮機1の制御方法は,消費側に供給される圧縮空気の圧力が所定の設定吐出圧力(実施形態において圧力調整弁32の開弁動作開始圧力)となるように圧縮機本体2の吸入口に設けた吸入弁31によって圧縮機本体2に対する吸入空気量を制御すると共に,圧縮機本体2の吐出側圧力が前記設定吐出圧力に対して所定の高い圧力であるアンロード開始圧力(実施形態において圧力調整弁32が全開となる圧力)以上になると,前記吸入弁31を閉位置としてアンロード運転に移行する容量制御装置を備えた空気圧縮機において,
圧縮機本体2から消費側に至る流路中に逆止弁6を設け,前記逆止弁6の一次側における前記流路を吐出流路21,前記逆止弁6の二次側における前記流路を消費流路22とし,前記吐出流路21にパージ弁11を連通し,
前記吸入弁31が閉位置となることにより前記吸入弁31の二次側圧力が大気圧よりも低い圧力の範囲で予め設定したパージ開始圧力以下になったときに前記パージ弁31を開放して前記吐出流路21内の圧力を低下すると共に,
前記パージ弁11の開放後,前記消費流路22内の圧力を継続して測定し,該測定された圧力が前記パージ弁11の開放時点における前記消費流路22内の圧力である基準圧力に対して所定の設定値低い圧力以下となったときに前記パージ弁11を閉じることを特徴とする(請求項1)。
なお,前記基準圧力の取得におけるパージ弁11の開放時点とは,パージ弁11の開放と同時のみらず,パージ弁11の開放前後をも含み,前記吸入弁31の二次側圧力が前記パージ開始圧力以下に低下したときの前記消費流路22内の圧力を前記基準圧力としても良い(請求項2)。
また,前記消費流路22内の圧力が前記基準圧力に対して所定の設定値低い圧力以下となったときに加え,前記吐出流路21内の圧力が予め設定した最低圧力以下となったときに例えば既知の方法により前記パージ弁11を閉じるように構成しても良い(請求項3)。
上記各制御方法において,前記パージ弁11の開放中,前記吸入弁31を閉位置に維持することが好ましい(請求項4)。
この場合,前記パージ弁11の開放後,前記吐出流路21内の圧力が所定値まで低下したとき,パージによる放気量と大気圧中における容積で一致する量の吸気を前記圧縮機本体2に生じさせるように構成し(請求項5),この状態でアンロード運転を行うものとしても良い。
また,パージ弁11の開放を,前記吸入弁31の二次側圧力が所定の設定時間継続して前記パージ開始圧力以下の状態を維持したときに行うものとしても良い(請求項6)。
この場合,前記設定時間内に測定された前記消費流路22内の圧力を前記基準圧力として取得するものとしても良い(請求項7)。
更に,前記パージ弁の閉塞時における圧縮機本体2の回転数として設定された回転数に対して相対的に低い回転数である所定のパージ回転数(N pur),又は前記パージ弁の閉塞時における圧縮機本体2の回転数として設定された回転数の変化域の下限値(N min)に対して相対的に低い回転数である所定のパージ回転数(N pur)を設定し,前記パージ弁11の開放後,前記パージ回転数(N pur)となるように圧縮機本体2の回転数を低下させる回転数低下処理を行うと共に,前記パージ弁11の閉塞により前記回転数低下処理を終了することができる(請求項8)。
この回転数低下処理は,前記パージ弁11の開放後であって,前記吐出流路21内の圧力が予め設定した圧力以下となったときに開始するようにしても良く(請求項9),又は,前記パージ弁11の開放後であって,予め設定した時間が経過したときに開始するようにしても良い(請求項10)。
また,本発明の空気圧縮機1は,消費側に供給される圧縮空気の圧力が所定の設定吐出圧力となるように圧縮機本体2の吸入口に設けた吸入弁31によって圧縮機本体2に対する吸入空気量を制御すると共に,圧縮機本体2の吐出側圧力が前記設定吐出圧力に対して所定の高い圧力であるアンロード開始圧力以上になると,前記吸入弁31を閉位置としてアンロード運転に移行する容量制御装置を備えた空気圧縮機において,
圧縮機本体2から消費側に至る流路中に逆止弁6を設け,前記逆止弁6の一次側における前記流路を吐出流路21,前記逆止弁6の二次側における前記流路を消費流路22とし,前記空気圧縮機のアンロード運転時,前記吐出流路21内の圧縮空気を放出するパージ装置を備え,
前記パージ装置が,
前記吐出流路21に連通するパージ弁11と,前記吸入弁31の二次側圧力を検知する吸入圧力検知手段51と,前記消費流路22内の圧力を検知する消費側圧力検知手段52を備えると共に,前記吸入圧力検知手段51及び前記消費側圧力検知手段52の検知信号に基づいて前記パージ弁11を開閉制御するパージ動作制御手段12を備え,
前記パージ動作制御手段12が,
前記吸入圧力検知手段51からの検知信号に基づいて前記吸入弁31の二次側圧力が大気圧よりも低い圧力の範囲で予め設定した所定のパージ開始圧力以下となったとき前記パージ弁11を開放すると共に,前記パージ弁11の開放後,前記消費側圧力検知手段52からの検知信号に基づいて前記消費流路22内の圧力を監視し,前記消費流路22内の圧力が前記パージ弁11の開放時点において検知された前記消費流路22内の圧力である基準圧力に対して所定の設定値低い圧力となったとき,前記パージ弁11を閉じるパージ弁開閉手段12cを備えることを特徴とする(請求項11)。
上記構成において,前記吸入弁31の二次側圧力が前記パージ開始圧力以下に低下したときに検知された前記消費流路22内の圧力を前記基準圧力とすることができる(請求項12)。
また,前記パージ動作制御手段12が,前記消費流路22内の圧力が前記基準圧力に対して所定の設定値低い圧力以下となったときに加え,前記吐出流路21内の圧力が予め設定した最低圧力以下となったときに前記パージ弁11を閉じるように構成することもできる(請求項13)。
上記空気圧縮機1の構成において,前記容量制御装置が,前記吐出流路21内の圧縮空気を前記吸入弁31の作動圧として前記吸入弁31の作動機構(実施形態において吸入弁31の閉弁受圧室)に導入する制御流路23と,前記制御流路23中に設けられた圧力調整弁32を備えると共に,
前記パージ装置が,前記制御流路23の前記圧力調整弁32の一次側と二次側を連通するバイパス流路24と,前記バイパス流路24に設けられた前記パージ弁11を備えると共に,前記バイパス流路24の下流側において前記制御流路23より分岐した放気流路25を備えるものとして構成することができる(請求項14)。
この場合,前記パージ弁11の開放により低下した前記吐出流路21内の圧力が,前記放気流路25を介した放気量と大気圧中における容積で一致する量の吸気を前記圧縮機本体2に生じさせる前記吸入弁31の作動圧となるよう,前記放気流路25の流路面積を形成することができる(請求項15)。
また,前述のパージ動作制御手段12は,前記吸入圧力検知手段51による前記パージ開始圧力以下の圧力の継続検知時間をカウントするタイマー12dを備えると共に,前記パージ弁開閉手段12cが,前記タイマー12dによる所定時間のカウント終了時に前記パージ弁11を開放するように構成しても良い(請求項16)。
この場合,前記タイマー12dによるカウント中に検知された前記消費流路22内の圧力を前記基準圧力とすることができる(請求項17)。
更に,前記パージ弁の閉塞時における圧縮機本体2の回転数として設定された回転数に対して相対的に低い回転数である所定のパージ回転数(N pur),又は前記パージ弁の閉塞時における圧縮機本体2の回転数として設定された回転数の変化域の下限値(N min)に対して相対的に低い回転数である所定のパージ回転数(N pur)を記憶する記憶手段を備えると共に,
前記パージ弁11の開放後,前記パージ回転数(N pur)となるよう圧縮機本体2の回転数を制御する回転数低下処理を行い,且つ,前記パージ弁11の閉塞により前記回転数低下処理を終了する回転数低下処理手段45dを備えるものとして構成しても良い(請求項18)。
この場合,パージ弁11の開放時における前記吐出流路21内の圧力を検知する圧力センサ(図4の実施形態では,制御流路23内の圧力を検知する制御圧センサ53により吐出流路21内の圧力を間接的に検知)を設けると共に,
前記回転数低下処理手段45dが,記憶手段に記憶した所定の回転数低下処理開始圧力と前記圧力センサにより検知された吐出流路21内の圧力を比較して,前記パージ弁11の開放後であって,前記吐出流路21内の圧力が前記回転数低下処理開始圧力以下となったと判断したときに前記回転数低下処理を行うように構成しても良い(請求項19)。
また,前述の回転数低下処理手段45dを設ける場合,この回転数低下処理手段45dが,前記パージ弁の開放時から所定時間経過した後,前記回転数低下処理を行うように構成しても良い(請求項20)。
以上説明した構成により,本発明の空気圧縮機の制御方法及び空気圧縮機によれば,パージ弁11の開放を吸入弁31の閉位置への動作によって生じた吸入弁31の二次側の圧力変化により行うと共に,パージ弁11の閉動作を,逆止弁6の二次側に設けた消費流路22内の圧力がパージ弁11の開放時点において測定された消費流路22内の圧力である基準圧力に対して所定値圧力が低下したときに行うものとしたことにより,パージの開始を,容量制御装置によるアンロード運転の開始に確実に連動させることができると共に,仮にパージを行う毎にパージ時の消費流路内圧力が変化した場合であっても,パージの停止を行う消費流路22内の圧力を都度適正な値として算出し,消費側における圧縮空気の消費開始後の適正なタイミングで行うことができた。
その結果,外気温度の変化によって圧力調整弁32や吸入弁31の作動圧力に変化が生じた場合や,圧力調整弁32を操作して設定吐出圧力を変更した場合であっても,パージ弁11の作動条件の設定を変更することなく,適正なタイミングでパージの開始及び停止を行うことができた。
また,このようにパージの開始,停止を常に適正なタイミングによって行うことができることから,容量制御装置側の設定との間にずれが生じることにより生じ得るものとなっていた,消費側に対して供給される圧縮空気の圧力変化が過大となることにより供給する圧縮空気の圧力が安定しないといった不都合や,パージ弁11が容量制御装置と連動せずに作動しない,又は,パージ弁11が開いたまま閉じないといった不都合の発生を,煩雑な調整作業を行うことなしに解消することができた。
前記消費流路22内の圧力が前記基準圧力に対して所定の設定値低い圧力以下となったときに加え,前記吐出流路21内の圧力が予め設定した最低圧力以下となったときに前記パージ弁11を閉じる構成とした場合には,パージ時に吐出流路21内の圧力と消費流路22内の圧力差が必要以上に過大となることを防止でき,消費側における圧縮空気の消費が再開された際に円滑に圧縮空気の供給を再開することができた。また,本発明の空気圧縮機1が圧縮機本体2内へ潤滑油や水などの冷却媒体を吐出流路21(レシーバタンク4)内の圧力で噴射する場合,吐出流路21内の圧力が必要以上に低下すると,圧縮機本体2内へ噴射する冷却媒体の供給量が不足し,圧縮機本体2の損傷などの不具合が生じるが,前記最低圧力を冷却媒体の供給量が不足しない圧力値に設定しておくことで,圧縮機本体2の損傷を防止できた。
なお,容量制御装置の動作を,吐出流路21内の圧力によって動作させる場合には,パージによる吐出流路21内の圧力を低下させると,消費側における圧縮空気の消費が開始していなくても容量制御装置の吸入弁31が開いて圧縮機が空気の圧縮を開始するために大幅な燃費の向上等が期待し得ないものとなるが,パージ弁11の開放時,前記パージ弁11を通過した吐出流路21内の圧縮空気を前記吸入弁31に作動圧として導入して前記吸入弁31を閉位置に維持するように構成した場合には,消費側における圧縮空気の消費が開始される迄,パージ弁31を開いた状態での無負荷運転を継続することが可能となり,燃費の向上等,大幅な省エネ効果が得られるものとなった。
前記パージ弁11の開放後,前記吐出流路21内の圧力が所定値まで低下したとき,パージによる放気量と大気圧中における容積で一致する量の吸気を前記圧縮機本体2に生じさせる構成(図示の装置構成にあっては,放気流路25の流路面積を調整)とした場合には,前記放気量と吸気量とがバランスした時点において吐出流路21内の圧力が安定して,吐出流路21内の圧力が必要以上に低下することを防止できた。
前述したパージ弁11の開放を,吸入弁31の二次側圧力が所定時間継続してパージ開始圧力以下となった場合に行うように構成した場合には,より一層の燃費向上等の省エネ効果を得ることができた。
すなわち,吸入弁31の二次側圧力が一瞬でもパージ開始圧力以下に低下した場合にパージ弁11を開放するように構成した場合には,消費側において圧縮空気の消費が停止した後,比較的短時間で圧縮空気の消費が再開された場合であっても,パージ弁11は吐出流路21内の圧縮空気をパージすることになる。そのため,吐出流路21内の圧力を再度設定吐出圧力に上昇させるために余分な動力が消費されることとなり,不要な燃料等の消費が行われることとなるが,前述したように圧縮空気の消費停止が比較的短時間である場合には,パージ弁11の開放を行わないように構成することで,前述した不要な動力損失が行われず,燃費の向上等に貢献することができるものとなった。
なお,吐出流路21をパージ弁11によって開放した状態では,圧縮機本体2の吐出側圧力が大幅に低下することにより,圧縮機本体2の駆動に要する動力は大幅に低減していることから,圧縮機本体2を回転するエンジン3等の駆動源の回転数を低下させた場合であっても,駆動源がストール(失速を含む停止)する心配がない一方,パージを行っていない圧縮機本体2と同様の回転数での運転を継続する場合には,燃料や電力等の大幅な損失となる。
そのため,圧縮機本体2の回転を定速で行う空気圧縮機,圧縮機本体2の吐出側圧力の変化に応じて回転速度を所定の回転数の変化域において変化させる速度制御装置を備えた空気圧縮機のいずれの場合においても,この動力の低下分を考慮して所定の低い回転数に設定された前述のパージ回転数となるよう圧縮機本体2の回転数を低下させる回転数低下処理を行うことで,燃費向上や消費電力の減少等の大幅な省エネ効果を得ることができた。
なお,パージ弁11の開放直後に前述した回転数低下処理を行う場合,吐出流路21内の圧力が十分に低下していない状態,従って,圧縮機本体2の回転に必要な動力が十分に低下していない状態で回転数の低下を行えば,駆動源であるエンジン3等がストールを起こす危険があるが,前述したように回転数低下処理を前記パージ弁11の開放後,吐出流路21内の圧力が予め設定した圧力以下となったとき,又は,パージ時間が所定時間継続した後に行うものとした場合には,このように駆動源がストールするなどといった不都合の発生についても確実に解消することができた。
次に,添付図面を参照しながら,本発明の圧縮機の制御装置について説明する。
実施形態1
〔圧縮機の全体構造〕
図1中の符号1は,本発明の制御方法が実現される本発明の空気圧縮機であり,図示の実施形態にあっては,この空気圧縮機1の一例として,エンジン駆動型の油冷式圧縮機を示している。
このエンジン駆動型の油冷式空気圧縮機1は,空気を圧縮して得られた圧縮空気を,作用空間を密封・冷却するための冷却油と共に気液混合流体として吐出する圧縮機本体(一例としてスクリュ圧縮機本体)2と,この圧縮機本体2を駆動するエンジンやモータ等の駆動源(図示の例ではエンジン)3を備えていると共に,前記圧縮機本体2の吐出口より消費側に至る流路中に,圧縮機本体2より冷却油との気液混合流体として吐出された圧縮空気を貯留すると共に冷却油を分離するレシーバタンク4,レシーバタンク4で油が分離された圧縮空気中にミスト状の状態で含まれる油を更に分離するセパレータ5を備えると共に,前記セパレータ5の下流側に逆止弁6を設けて,消費側から圧縮機本体2側に圧縮空気が逆流することを防止している。
なお,本発明において,前述の逆止弁6の一次側(圧縮機本体側)における前記流路(レシーバタンク4やセパレータ5を含む)を吐出流路21と,逆止弁6の二次側(消費側)における前記流路を消費流路22として説明する。
このような空気圧縮機1においては,消費側に対して一定の圧力の圧縮空気を供給することができるよう,圧縮機本体2の吸入口に設けた吸入弁31を開閉制御して,消費側における圧縮空気の消費等により圧縮機本体の吐出側圧力が所定の設定吐出圧力未満になると,圧縮機本体2の吸入口を全開して圧縮機本体2内に空気を吸い込んで圧縮してこの圧縮機本体2より吐出された圧縮空気を吐出流路21に導入して消費された分の圧縮流体を補充すると共に,吐出流路21内の圧力が予め設定された設定吐出圧力以上になると,圧縮機本体2の吸入口を閉じ,又は絞ることで吐出流路21に対する圧縮空気の導入を停止乃至は制限する容量制御を行う容量制御装置が設けられている。
また,図示の実施形態にあっては,前述の容量制御装置と共に,吐出流路21内の圧力が設定吐出圧力未満になると圧縮機本体2を駆動するエンジン3の回転数を上昇させて圧縮機本体2より吐出される圧縮流体の吐出量を増加する一方,吐出流路21内の圧力が設定吐出圧力を越えると,圧縮機本体2を駆動するエンジン3の回転速度を低下させて,圧縮機本体2より吐出される圧縮流体の吐出量を減少させる,速度制御装置が設けられている。
図1に示す例では,この容量制御装置は一例として圧縮機本体2の吸入口に設けられた吸入弁31と,吐出流路21と前記吸入弁31の閉弁受圧室間を連通する制御流路23(図示の例では制御流路23及びその分岐流路23a)を設けると共に,前記制御流路23中に設けられた圧力調整弁32を設けている。
また,図1に示す例において,前述の速度制御装置は,前述の容量制御装置と構成を一部共通するものとして構成されており,エンジン3に設けられたガバナ(機械式ガバナ)3aのガバナレバー3bを揺動動作するスピードレギュレータ41を備え,このスピードレギュレータ41の受圧室に,前述の制御流路23の分岐流路23bを連通することで,圧力調整弁32及び制御流路23が,前述した容量制御装置としてのみならず,速度制御装置の構成要素の一部としても機能するように構成されている。
このような容量制御装置,及び速度制御装置を設けることにより,例えば消費側において圧縮空気の消費が行われることにより吐出流路21内の圧力が圧力調整弁32が開弁動作を開始する圧力である設定吐出圧力未満となっている状態では,圧力調整弁32が全閉となり吐出流路21内の圧縮空気が圧力調整弁32を通過せず,吸入弁31の閉弁受圧室に対する圧縮空気の導入が停止して圧縮機本体2の吸入口を全開としたフルロード運転が行われると共に,スピードレギュレータ41によりエンジン3のガバナレバー3bが高速側に移動されて,エンジン3,従って圧縮機本体2は高速回転で運転される。
一方,消費側における圧縮空気の消費が停止する等して吐出流路21内の圧力が圧力調整弁32が開弁動作を開始する圧力である前述の設定吐出圧力以上に上昇すると,吐出流路21内の圧縮空気が圧力調整弁32を通過して吸入弁31の閉弁受圧室内に導入されて,圧縮機本体2の吸入口を閉じる動作が開始すると共に,スピードレギュレータ41がエンジン3のガバナレバー3bを低速側に移動させる動作を開始する。
そして,更に吐出流路21内の圧力が上昇して,圧力調整弁32を全開と成す圧力であるアンロード開始圧力以上になると,吸入弁31が閉位置となり,圧縮機本体2の吸入口を閉じたアンロード運転に移行すると共に,スピードレギュレータ41がガバナレバー3bを低速の位置として圧縮機本体2が低速回転で運転される。
これとは逆に,例えば消費側における圧縮空気の消費が再開される等して吐出流路21内の圧力が前述のアンロード開始圧力未満に低下すると,圧力調整弁32を介して導入された圧力に応じて吸入弁31が開き始めると共に,スピードレギュレータ41によるガバナレバー3bの高速側への移動が開始して,吐出流路21内の圧力が前述の設定吐出圧力未満に迄低下すると,圧縮機本体2が吸気口を全開としたフルロード運転に移行すると共に,スピードレギュレータ41がガバナレバー3bを高速の位置として,圧縮機本体を高速回転で運転する。
このような容量制御装置及び速度制御装置の動作により,吐出流路21内の圧力は前述の設定吐出圧力となるように維持されており,これにより消費側に対して安定した圧力の圧縮空気を供給することができるようになっている。
なお,図1を参照して説明した容量制御装置及び速度制御装置の構成は,図示の実施形態に限定されず,既知の各種の構成に変更することが可能である。
また,図示の例では,空気圧縮機の制御装置が容量制御装置の他に速度制御装置を備えるものとして説明したが,本発明の制御装置は速度制御装置を備えることなく,圧縮機本体2を一定の回転数で運転するように構成した空気圧縮機に対しても適用可能である。
〔パージ装置〕
本発明の空気圧縮機は,前述した容量制御装置及び速度制御装置の他,更に,容量制御装置の吸入弁31が閉位置となったアンロード運転に移行したとき,圧縮機本体2の吐出口に連通された吐出流路21内の圧縮空気を開放して,圧縮機本体2の吐出側圧力を低減させた状態で前述のアンロード運転(パージアンロード運転)を行わせるための,パージ装置を備えている。
図示の実施形態にあっては,このパージ装置として,一端を圧力調整弁32の一次側で前記制御流路23に連通すると共に,他端を圧力調整弁32の二次側において前記制御流路23に連通させたバイパス流路24を設け,このバイパス流路24中に前述のパージ弁11を設け,パージ弁11の開放時,吐出流路21内の圧縮空気を,圧力調整弁32をバイパスして圧力調整弁32の二次側における制御流路23内に導入することができるようにしている。
そして,このバイパス流路24の下流側において吸入弁31に連通する制御流路23の分岐流路23aを更に分岐した放気流路25を設け,この放気流路25を吸入弁31の一次側における吸入流路26aに連通することで,パージ弁11を通過した吐出流路21内の圧縮空気が,一部は圧縮機本体2へ吸い込まれ,他はエアフィルタ7から大気へ放出されるように構成されている。
なお,図示の構成では,パージ弁11を前述のバイパス流路24に設けることで,パージ弁11の二次側を,圧力調整弁32の二次側において制御流路23に連通するものとしているが,例えばパージ弁11の二次側を直接大気開放する等して放気するようにしても良く,吐出流路21内の圧縮空気を放気できる構成であればパージ弁11の配置は図示の構成に限定されない。
もっとも,図1に示す構成では,パージ弁11を開放して吐出流路21内の圧力が設定吐出圧力未満に低下すると,圧力調整弁32が閉じて圧力調整弁32側から吸入弁31やスピードレギュレータ41に対する圧縮空気の導入が行われなくなることから,パージ弁11の二次側を制御流路23に連通することなく直接大気開放した場合には,消費側における圧縮空気の消費が開始されていない場合であっても圧縮機本体2がフルロードの高速運転に移行してしまうこととなる。
そのため,パージ弁11を通過した圧縮空気を圧力調整弁32の二次側において制御流路23に導入すると共に,放気流路25に適当な絞りを設ける等して吸入弁31及びスピードレギュレータ41に対し,吸入弁31を閉じ,且つ,ガバナレバー3bを低速側とするに必要な圧力を導入することで,パージによって吐出流路21内の圧力が低下した場合であっても,パージ弁11の開放中,吸入弁31が閉位置となったアンロード運転を,圧縮機本体2を低速回転とした状態で維持できるようになっている。
なお,図1に示す構成に代え,例えばバイパス流路24や放気流路25を設けることなく,制御流路23を吐出流路21に代えて消費流路22に連通して消費流路22内の圧力変化によって容量制御及び速度制御を行うように構成し,かつ,パージ弁11の一次側を吐出流路21に連通すると共に,パージ弁11の二次側を大気開放するように構成しても良く,パージ弁11の開放中,圧縮機本体2が低速回転でのアンロード運転を継続できるように構成することが好ましい。
前述のパージ弁11は,電気信号の受信によって動作する電磁開閉弁として構成されており,前述のパージ装置は,更に,吸入弁31の二次側における吸入流路26b内の圧力を検知する吸入圧力検知手段51,消費流路内の圧力を検知する消費側圧力検知手段52を備えると共に,吸入圧力検知手段51及び消費側圧力検知手段52からの検知信号に基づいてパージ弁11を開閉制御する電子制御装置等によって実現されるパージ動作制御手段12を備えている。
このうち,前述の吸入圧力検知手段51,及び消費側圧検知手段52は,いずれも圧力センサによって構成されるものであり,例えばダイヤフラムゲージのように,ダイヤフラムに加わる圧力を膜の変形量を静電容量の変化やひずみゲージによって測定して電気信号に変換できるものであれば各種のセンサを使用することができる。
測定する圧力は,絶対圧乃至はゲージ圧いずれで測定するものであっても良く,吸入圧力検出手段51については,大気圧以下の負圧のみを計測する負圧センサとして構成するものとしても良い。
前述のパージ動作制御手段12は,前述したように電子制御装置などによって実現されるもので,吸入圧力検知手段51からの検知信号に基づいて,吸入弁31の二次側における吸入通路26b内の圧力を監視し,この圧力を記憶手段に記憶されている所定のパージ開始圧力と比較してパージ開始圧力以下になるとパージ弁11を開く制御信号を出力する。
また,消費側圧力検知手段52からの検知信号に基づいて消費流路22内の圧力を監視し,パージ弁11の開放後,消費流路内の圧力がパージ弁の開放時点における前記消費流路22内の圧力である基準圧力に対して記憶手段に記憶された設定低下値より低い圧力に低下したとき,前記パージ弁を閉じる制御信号をパージ弁11に対して出力する。
なお,本実施形態にあっては,前述のパージ動作制御手段12は,吸入圧力検知手段51からの検知信号に基づいて,吸入弁31の二次側における吸入流路26b内の圧力が前記パージ開始圧力以下となった状態の継続時間をタイマー12dによってカウントし,この継続時間が所定時間(本実施形態において30秒)継続していると判断した場合のみ,パージ弁11を開く制御信号を出力するように構成して,例えば消費側における圧縮空気の消費が停止した後,比較的短時間で消費が再開されて吸入弁31の二次側圧力が比較的短時間で上昇した場合にはパージを行わないようにしている。
以上のような動作を可能とするために,電子制御装置によって実現されるパージ動作制御手段12には,前述したパージ開始圧力,設定低下値,タイマーによりカウントする設定時間を記憶する記憶手段,パージ弁の開放信号出力毎にこの時点で消費側圧力検知手段52が測定した消費流路22内の圧力を一時的に記憶する圧力記憶手段12b,前記圧力記憶手段12bに記憶された消費流路22内の圧力に対して前記設定低下値を減算した圧力(パージ停止圧力)を演算するパージ停止圧力演算手段12a,吸入弁31の二次側における吸入流路26b内の圧力が前記パージ開始圧力以下となっている状態の継続時間カウントするタイマー12d,及び,パージ弁11に対してこれを開閉する制御信号を出力するパージ弁開閉手段12c等が更に実現されている。
パージ動作制御手段12を実現する電子制御装置等には,前述のパージ開始圧力を可変する調整ツマミ,タイマー12dによりカウントする時間を調整する調整ツマミ,前記設定低下値を可変する調整ツマミ等を設けてもよく,作業者が空気圧縮機の使用状況や好みに応じて各調整ツマミを調整できるように構成しても良い。
なお,図1中,符号8はエンジン3に供給される燃料が充填された燃料タンクであり,また,符号9は,レシーバタンク4で回収された冷却油を圧縮機本体2の給油口に戻す給油流路中に設けられたオイルクーラである。
〔動作・作用等〕
以上のように構成された本発明の制御装置により制御される空気圧縮機1の動作を,図3を参照しながら以下に説明する。
消費側において圧縮空気の消費が行われ,圧縮機本体2の吐出側の圧力(吐出流路21内の圧力)を圧力調整弁32の開動作の開始圧力である設定吐出圧力値(一例として0.69MPa)に維持するように容量制御及び速度制御が行われていた運転状態から,消費側における圧縮空気の消費が減少又は停止すると(T1),圧縮機本体2の吐出側圧力(吐出流路21及び消費流路22内の圧力)が上昇してやがて設定吐出圧力以上に上昇する(T2)。
この圧力上昇によって,圧力調整弁32の受圧室内の圧力が上昇して圧力調整弁32内の通路を開き始め,これに伴い逆止弁6の一次側に設けられた吐出流路21内の圧縮空気が制御流路23を介して吸入弁31及びスピードレギュレータ41に導入される。
吐出流路21内の圧力上昇に伴って,圧力調整弁32内の流路が広がり,これに伴い吸入弁31及びスピードレギュレータ41に供給される圧力も上昇して,吸入弁31の受圧室内の圧力が上昇すると弁体が圧縮機本体2の吸入口を閉じる方向に作動し,受圧室内の圧力に応じて作動量(開度)が変化する。スピードレギュレータ41の受圧室内の圧力が上昇するとロッドを押し出してエンジン3のガバナレバー3bを低速側へ回動し,受圧室内の圧力上昇に伴ってエンジンの回転数が低下する。
制御流路23は放気流路25を介して吸入弁31の一次側の吸入流路26aと連通していることから,吐出流路21内の圧力に対して制御流路23内の圧力は低くなっている。
吸入弁31の動作と,スピードレギュレータ41の動作は,例えば吸入弁31の作動よりも先にスピードレギュレータ41が作動して,エンジン3及び圧縮機本体2の回転数を低下させて吸入空気量を低下させた後で吸入流路26を絞るようにするものとしても良いが,それぞれが同時であっても,吸入弁31が先に作動するようにしてもよく,エンジン3の出力特性と圧縮機本体2の動力特性により,いずれの運転状態であってもエンジン3がストールしないように調整されていればよい。
吸入弁31が絞られると,吸入弁31を通過する空気量が減少して吸入弁31の二次側における吸入流路26b内の圧力が徐々に低下する。
なお,図3中吸入流路26b内の圧力はT2−T3間において直線で示されているが,吸入弁31がバタフライタイプやピストンタイプのものである場合には,吸入弁31の弁体が全開している状態から絞り始めても吸入弁31の二次側における吸入通路26b内の圧力低下はほとんどなく,弁体が全閉となる近傍において該吸入通路26b内の圧力が急激に低下し,吸入空気量が急激に減少する。
吸入弁31が閉動作すると共に,圧縮機本体2の回転が低速に移行するに従い,吐出流路21及び消費流路22内の圧力上昇も緩やかとなるが,圧縮機本体2からの圧縮空気の吐出自体は継続しているために,圧縮機本体2の吐出側圧力(吐出流路21内圧力,消費流路22内圧力)は更に上昇し,圧力調整弁32が全開となる圧力であるアンロード運転圧力(一例として0.79MPa)以上になると,圧力調整弁32が全開となり,吸入弁31は全閉となると共に,スピードレギュレータ41はガバナレバー3bを低速位置と成しエンジン3の回転数が低速となる(T3)。
吸入弁31が閉じることにより変化する吸入弁31の二次側における吸入流路26b内の圧力は,吸入圧力検知手段51によって測定されており,この吸入圧力検知手段51からの検知信号を受信したパージ動作制御手段12は,予め設定されたパージ開始圧力(一例として-0.06MPa)と,吸入圧力検知手段51が検知した吸入流路26b内の圧力とを比較し,吸入圧力検知手段51によって検知された圧力がパージ開始圧力以下になるとタイマー12dによりカウントを開始する(T4)。
このパージ開始圧力以下の圧力検知が所定の設定時間(例えば30秒)継続して行われると,パージ動作制御手段12はパージ弁11に対して開弁信号を出力してパージ弁11を開放すると共に(T5),消費側圧力検知手段52からの検知信号に基づいて,この時点における消費流路22内の圧力を基準圧力として圧力記憶手段12bに記憶する。
この基準圧力の取得は,必ずしもパージ弁11の開放と厳密に同時である必要はなく,パージ弁11に対する開弁信号の出力時,吸入圧力検知手段51がパージ開始圧力を検知したとき,前記タイマによるカウント中,又はカウント終了時に取得するように構成する等,パージ弁11の開放に時間的に近接した時点で行うものとすれば良い。
なお,タイマー12dによる設定時間(一例として30秒)のカウント前に,吸入圧力検知手段51が検知した吸入弁31の二次側における吸入流路26b内の圧力が前述のパージ開始圧力(-0.06MPa)を超えると,タイマー12dによるカウントがリセットされ,次にパージ開始圧力以下の圧力が検知される迄,待機状態となりパージ弁11の開放は行われない。
パージ弁11の内部通路は圧力調整弁32の内部通路よりも流路面積が広く形成されており,圧力調整弁32に対して流量が大きくなっていることから,パージ弁11が開くと圧力調整弁32をバイパスするバイパス流路24に吐出流路21内の圧縮空気が流れ,この圧縮空気は制御流路23,放気流路25を介して吸入弁31一次側の吸入通路26aに放気される。このようにして吸入弁31の一次側における吸入流路26aに放気された圧縮空気は,一部は圧縮機本体2へ吸い込まれ,他はエアフィルタ7から大気放出される。
このようにして,パージ弁11が開放されて吐出流路21内の圧縮空気が放出されると,吸入通路26が吸入弁31で絞られ又は塞がれることにより吸入空気量が僅かな状態となっている圧縮機本体2より吐出される圧縮空気に対し,大気放出される圧縮空気量が上回り,次第に吐出流路21内の圧力及びこれに連通する圧縮機本体2の吐出室内の圧力が低下して圧縮機本体2の消費動力が減少する。
なお,パージ弁11の開放によって吐出流路21内の圧縮空気が放気された状態においても,逆止弁6の二次側に設けられた消費流路22内の圧力はパージ弁11の開放による影響を受けずに,パージ弁11の開放直前における吐出流路21内の圧力状態を維持する。
パージ弁11の開放によって吐出流路21内の圧力が設定吐出圧力(例えば0.69MPa)未満になると,圧力調整弁32の内部通路が全閉となる(T6)。
しかし,圧力調整弁32の一次側と二次側間をバイパスするバイパス流路24内にパージ弁11を設けた図示の構成にあっては,吐出流路21内の圧縮空気はバイパス流路24及びパージ弁11を介して圧力調整弁32の二次側で制御流路23へ導入され,これにより吸入弁31やスピードレギュレータ41の受圧室に対して圧縮空気が導入されて吸入弁31によって吸入通路26が絞られ又は塞がれた状態が維持されると共に,エンジン3のガバナレバー3bが低速側へ回動した状態に維持されるため,エンジン3及び圧縮機本体2は回転数を低下させた状態でのアンロード運転を継続する。
パージ弁11の開放状態が継続することにより吐出流路21内の圧力が更に低下すると,吸入弁31の受圧室内の圧力も低下し,この圧力が吸入弁31を閉位置とするに必要な圧力を下回ると吸入弁31の弁体が開く方向へ作動し始め,僅かに圧縮機本体2に対する吸入空気量が増えて吐出流路21内の圧力低下速度が鈍化する。そして,この吸入量と放気流路25を介して吸入通路26aへ放気される圧縮空気量とが大気中で容積上一致すると吐出流路21内の圧力低下が止まり,この状態の吐出流路21内の圧力(例えば0.3MPa)が維持される(T7)。なお,ここで吸入弁31が閉位置あるとは,図示せざる吸入口に設けられた弁体が弁座に対し弁座の弁口をほぼ閉じた位置にあることをいう。
前述したように,パージ弁11の開放によって吐出流路21内の圧力が低下しても,逆止弁6によって消費流路22内の圧縮空気は吐出流路21側へは逆流せずに,消費流路22内の圧力はパージ弁11の開放直前における吐出流路21内の圧力(図示の例では一例として0.79MPa)を維持すると共に,この圧力が消費側圧力検知手段52によって測定されてパージ動作制御手段12の圧力記憶手段12bに記憶されている。
パージ動作制御手段12は,消費側圧力検知手段52の検知信号に基づいて消費流路22内の圧力を監視すると共に,記憶手段に記憶した設定低下値(例えば0.1MPa)低いパージ停止圧力(例えば0.69MPa)を演算し,この演算によって求めた圧力(パージ停止圧力)を消費側圧力検知手段52によって検知された消費流路22内の圧力と比較する。
以上の状態から,消費側における圧縮空気の消費が再開すると(T8),消費流路22内の圧力が低下し,消費側圧力検知手段52がこの圧力の低下を検知してパージ動作制御手段12に対して出力される検知信号に変化が生じる。そして,消費流路22内の圧力が,前述したパージ停止圧力(一例として0.69MPa)以下になると,パージ動作制御手段12は,パージ弁11に対して閉弁信号を出力して,パージ弁を閉じる(T9)。
このようにしてパージ弁11が閉じると,吸入弁31及びスピードレギュレータ41に対する圧縮空気が供給が停止して,吸入弁31が吸入流路26を開くと共に,スピードレギュレータ41はガバナレバー3bを高速側へ回動し,エンジン3及び圧縮機本体2の回転数を上昇させ吸入空気量を増加したフルロード運転に移行する。
そして,吐出流路21内の圧力が上昇し消費流路22内の圧力以上に上昇すると逆止弁6を開いて消費流路22を介して消費側に対して圧縮空気が供給されて,消費流路22内の圧力低下が停止すると共に,吐出流路21内の圧力と消費流路内の圧力とが一致した状態となり(T10),吐出流路21内の圧力が設定吐出圧力(一例として0.69MPa)を維持するように容量制御及び速度制御が行われる。
本発明の制御装置は,以上のように構成されているために,圧力調整弁32の圧力調整杆32aを調整し,設定吐出圧力を低下(一例として0.69MPaから0.59MPaに低下)させた場合であっても,他の設定を変更せずに吸入弁31が閉じたとき,従って容量制御装置により圧縮機本体2がアンロード運転に移行した際に,これに連動してパージ弁11を開放することができ,また,設定吐出圧力の低下に伴い,パージ弁停止圧力についてもパージ動作制御手段12のパージ停止圧力演算手段12aによる演算に基づいて都度,適正な値に変更されるものとなっている。
また,設定吐出圧力を上昇させた場合についても同様に,パージ弁11の動作を吸入弁31の動作に連動させることができると共に,パージ停止圧力を自動で適正な値に調整することができるものとなっている。
更に,前述した構成より,圧力調整弁32を調整して設定吐出圧力を変更した場合のみならず,圧力調整弁32や吸入弁31に設けられているゴム製のダイヤフラムが,気温の変化,連続運転による圧縮機のパッケージ内の温度上昇,経時劣化等によりその弾性が変化して,圧力調整弁32の調整等を行っていないにも拘わらず,意図せずに設定吐出圧力が変化してしまっている場合であっても,本発明は確実にパージ弁11を開放し,又は閉塞することが可能であると共に,消費側に対して供給される圧縮空気の圧力が大幅に変化することを防止して,比較的安定した圧力の圧縮空気を消費側に供給することができるものとなっている。
以上の構成を備えた本発明の制御装置によって制御した空気圧縮機における燃費の向上について,図7,図8を参照して説明する。
図7は圧縮機本体2の吸入空気量に対する動力の相関グラフであり,A点ではエンジン3及び圧縮機本体2の回転数が最大であって吸入弁が全開の状態を示している。
この圧縮機本体2の動力が高い状態(A点)から,エンジン3及び圧縮機本体2の回転数を低下させると吸入空気量が低減してほぼ比例するように圧縮機本体2の動力が低下する(点A−B間)。
B点はエンジン3の回転数のみの制御から吸入弁31の開閉制御に移行する点又は,それぞれの制御を併用し始める点であって,C点は吸入弁31が吸入通路26を閉塞して圧縮機本体2に対する吸入空気量(当該圧縮機のエアフィルタ7から圧縮機本体へ吸入する大気の量)が0になったときの圧縮機本体2の動力,D点は吐出流路21内の圧縮空気を大気へ放気し圧力を低下した状態で運転した圧縮機本体2の動力である。A点における圧縮機本体2の動力を100%とした場合,C点における圧縮機本体2の動力は約33%,D点における圧縮機本体2の動力は約23%である。
図8は,時間あたりの全負荷運転と無負荷運転との割合(負荷率)に対するエンジン駆動型圧縮機の燃料消費量を示すグラフであって,ア点は時間当たり100%全負荷運転時(図7におけるA点)の燃料消費量であって,イ点はパージ運転を行わない100%無負荷運転時(全負荷0%)(図7における点C)の燃料消費量,ウ点はパージ運転を100%無負荷運転時(全負荷0%)(図7におけるD点)に行ったときの燃料消費量である。
点ア−イ−ウ内のハッチングはパージ運転を行わない従来の圧縮機に対して本発明の圧縮機による燃費の向上が得られていること(省エネ効果が高いこと)を示している。
実施形態2
本発明の更に別の構成例を図4〜6を参照して説明する。
図4中の符号1は,本発明の第2実施形態の空気圧縮機(エンジン駆動型圧縮機)であり,図1を参照して説明した構成では,エンジン3の回転数制御(速度制御)を機械式ガバナ3aによって行っていたのに対し,図4に示す構成では,機械式ガバナに代えて電子ガバナ3a’で行っている点において異なる。
ここで電子ガバナ3a’とは,入力された制御信号に基づいてエンジン3に対する燃料の供給量を制御することにより,図1を参照して説明した機械式のガバナと同様,エンジン3の回転数を制御するものであり,このような電子ガバナ3a’を採用した結果,図4に示す実施形態の構成では,図1を参照した制御装置に設けられていたスピードレギュレータ41やこのスピードレギュレータ41に圧縮空気を導入するための分岐流路23bが不要となる一方,電子ガバナ3a’に対して制御信号を出力する,電子制御装置によって実現される回転数制御手段45が,前述のパージ弁開閉制御装置12の他に設けられている。
本実施形態にあっては,制御流路23に制御圧センサ53を設けると共に,エンジン3の出力軸に回転数センサ54を設け,両センサ53,54の検知信号に基づいて前述の回転数制御手段45が電子ガバナ3a’に対して燃料の供給量を変化させる制御信号を出力可能に構成したものであり,一例として,図5に示すように,この回転数制御手段45は,回転数の制御に必要な情報を記憶する記憶手段45bを備えると共に,速度制御手段45a,調速手段45c,及び回転数低下処理手段45dが実現されている。
このうちの速度制御手段45aは,図1を参照して説明した制御装置における速度制御装置に対応する動作を行うもので,制御圧センサ53が検出した圧力調整弁32の二次側における制御流路23内の圧力と,記憶手段に予め記憶している前記圧力に対応したエンジン3の回転数との対応関係に基づいて,エンジンの回転数をこの対応関係に従った所定の回転数とする制御信号を前述の電子ガバナ3a’に対して出力してエンジン3と圧縮機本体2の速度制御を行い,吐出流路内の圧力を,設定吐出圧力に近付けるように制御するもので,記憶手段45bには,前記対応関係の一例として,前記圧力調整弁32の二次側における制御流路23内の圧力変化に基づく制御圧センサ53の検知信号の変化と,この検知信号の変化に対応して電子ガバナ3a’に対して出力すべき制御信号の変化との対応関係が記憶されている。
この対応関係に従い,前述の速度制御手段45aは,圧力調整弁32が閉じているとき(一例として,制御流路23内の圧力が0以下のとき),エンジン3を全負荷回転数N maxとする制御信号を電子ガバナ3a’に対して出力し,吐出流路21内の圧力が圧力調整弁32の開弁動作の開始圧力である設定吐出圧力(一例として0.69MPa)以上となり圧力調整弁32の二次側における制御流路23内に圧縮空気の導入が開始されて制御流路内の圧力が上昇を開始すると,この圧力の上昇に応じてエンジン3の回転数を全負荷回転数N maxから徐々に無負荷回転数N minに減速させる制御信号を電子ガバナ3a’に対して出力する。
これにより,吐出流路21内の圧力,従って消費側に供給される圧縮空気の圧力が設定吐出圧力と一致するようにエンジン3の回転数が制御される。
また,前述の調速手段45cは,エンジン3の実際の回転数(実測値)と,電子ガバナ3a’に対して出力された制御信号によって実現されるべき回転数(理論値)との間にずれが生じている場合,エンジン3の実際の回転数(実測値)が前記理論値に一致するように,電子ガバナ3a’に対して出力する制御信号を補正するものであり,一例として,電子ガバナ3a’に対してエンジン3を前述の全負荷回転数N maxで運転するための制御信号が出力されている場合を例にとり説明すると,予め記憶手段45bに記憶されているエンジン3の全負荷回転数N maxと,回転数センサ54により検知されたエンジン3の回転数(実測値)を比較し,検知された回転数が全負荷回転数N max以上のとき,電子ガバナ3a’に対して出力する制御信号を補正してエンジン3に対する単位時間当たりの燃料の供給量を減少してエンジンの回転数をN maxと一致するように減少させ,また,検出された回転数が全負荷回転数N max未満となると,前記エンジン3に対する燃料の供給量を増加するように電子ガバナ3a’に対して出力する制御信号を補正して前記エンジン3の回転数Nを上昇させ,この動作を繰り返すことにより,前記エンジンの回転数Nが,全負荷回転数N maxに保持されるように制御を行う。
なお,この調速手段45cは,前述した全負荷回転数N maxのみならず,無負荷回転数N minやその中間値,後述するパージ回転数N purにおける回転数の実測値と理論値との間のずれについても補正するものとして構成し得る。
更に,前述の回転数低下処理手段45dは,圧縮機本体2がアンロード運転に移行すると共に,前述のパージ動作制御手段12によるパージ弁11の開放が行われた後,エンジン3の回転数を前述の無負荷回転数N minに対して更に低い回転数として予め記憶したパージ回転数N purに低下させる処理を行うものであり,例えば前述のパージ動作制御手段12によるパージ信号の出力により起動して,前述の速度制御手段45aによる制御を無効とすると共に,電子ガバナ3a’に対してエンジン3の回転数を前記パージ回転数N purに低下させる制御信号を出力する。
また,回転数低下処理手段45dは,パージ動作制御手段12によるパージ停止信号の出力により前記速度低下処理を終了し,前述の速度制御手段45aによるエンジン3の速度制御を再開させる。
前述したように,パージ弁11の開放によって吐出流路21を開放して圧縮機本体2の吐出側圧力を低下させることにより,圧縮機本体2の駆動に要する動力は大幅に軽減することから,この圧縮機本体2を駆動するエンジン3の回転数を,パージが行われていない状態における無負荷回転数N minに対して更に低下させてもエンジン3をストールさせることなく運転できる一方,このような回転数の低下により,パージ状態でのアンロード運転時における燃料の消費量を大幅に低減することができるものとなっている。
なお,速度低下処理手段45dは,パージ弁11の開放と同時に前述した速度低下処理行うものとしても良いが,パージ弁11の開放直後においては吐出流路21内の圧力が十分に低下しておらず,従って,圧縮機本体2の駆動に要する動力も十分に低下していない場合があり,この状態でエンジン3の回転数を前述したパージ回転数N purまで低下させるとエンジン3がストールしてしまう可能性がある。
そのため,回転数低下処理手段45dは,パージ動作制御手段12によるパージ開始信号出力後の経過時間をタイマーによってカウントし,パージ時間が所定時間に達した時に前述の速度低下処理を開始するものとしても良く,又は,パージ動作制御手段12によるパージ開始信号の出力後,制御圧センサ53によって検知された制御流路23内の圧力(制御流路23を介して測定される吐出流路21内の圧力)が所定の圧力迄低下したとき,前述の速度低下処理を開始するように構成することが好ましい。
〔動作・作用等〕
以上のように構成された第2実施形態の制御装置を備えた圧縮機1の動作を,図6を参照して説明すると,消費側における圧縮空気の消費が減少又は停止して(t1)圧縮機本体2の吐出側圧力(吐出流路21内の圧力)が設定吐出圧力以上になると,圧力調整弁32が開き始め(t2),圧力調整弁32の二次側における制御流路23内の圧力が上昇して吸入弁31の受圧室に対して圧縮空気の供給が開始される。
この吸入弁31に対する圧縮空気の供給開始により吸入弁31が閉動作を開始すると共に,圧力調整弁32の二次側における制御流路23内の圧力上昇を制御圧センサ53が検知し,制御圧センサ53によって検知された制御流路23内の圧力に応じて回転数制御手段45(速度制御手段45a)が演算により検知された圧力に対応する回転数を算出して,エンジン3の回転数が算出された回転数となるように燃料噴射量を調整する制御信号を電子ガバナ3a’に対して出力する。
速度制御手段45aによって算出される回転数は,圧縮機本体2の吐出室内圧力が設定吐出圧力以上(例えば0.69 MPa)であってもエンジンがストールしないよう十分な出力が得られる回転数(N max-N min)として設定されている。
そして,吐出流路21内の圧力が更に上昇を続け,圧力調整弁32が全開となる圧力以上に上昇すると(t3),吸入弁31は吸入流路26を完全に閉じて圧縮機本体2がアンロード運転に移行すると共に,回転数制御手段45の速度制御手段45aは,エンジン3の回転数を全負荷回転数N maxとする制御信号を電子ガバナ3a’に対して出力し,この制御信号の出力に対応してエンジン3が低速運転となる。
吸入弁31の閉動作により,吸入弁31の二次側における吸入流路26b内の圧力が所定のパージ開始圧力(一例として-0.06MPa)以下に低下すると,吸入圧力検知手段51の検知信号に基づきパージ動作制御手段12がパージ開始圧力以下の圧力が継続して検知されている時間をタイマー12dによりカウントする(t4)。
そして,タイマー12dにより設定時間(一例として30秒)のカウントが完了すると,パージ動作制御手段12はパージ開始信号を出力してパージ弁11を開放し,吐出流路21内の圧縮空気のパージを開始すると共に,この時の消費流路22内の圧力を基準圧力として圧力記憶手段12bに記憶する。
また,パージ動作制御手段12によるパージ開始信号の出力があると,回転数制御手段45は,回転数低下処理手段45dを起動して前述の速度制御手段45aによる速度制御を無効と成すと共に,速度制御手段45aによる速度制御の下限値である無負荷回転数N minに対して更に低いエンジン3の回転数として記憶手段45bに記憶されたパージ回転数N purとなるよう,電子ガバナ3a’に対する制御信号を出力して,エンジン3の回転数をパージ回転数N purまで低下させる(t5)。
以上のように圧縮機本体2のパージ運転時においてエンジン3の回転数を,通常の無負荷運転時における回転数域(N max-N min)に対して低い回転数(パージ回転数N pur)で運転することにより,単に圧縮機本体2の吐出側を開放してパージ運転を行う場合に比較して,パージ運転時における燃費を大幅に向上することができ,より一層の省エネ効果を図ることができる。
なお,図6に示す例では,パージ動作制御手段12によるパージ信号の出力後,エンジン3の回転数を直ちにパージ回転数N purまで低下させた状態を示しているが,前述したように例えば,回転数制御手段45にタイマーを設け,前述のパージ信号の出力後,タイマーによる所定時間の経過がカウントされた後,エンジンの回転数を前述したパージ回転数N purに低下させる動作を開始するものとしても良く,又は,制御圧センサ53が制御流路23内の圧力(制御流路23を介して測定される吐出流路21内の圧力)が所定の圧力に低下したことを検知したときにパージ回転数N purに低下させる動作を開始するものとしても良い。更には,回転数低下処理手段45dが,エンジン3の回転数を無負荷回転数N minから段階的に低下させてパージ回転数N purとなるよう電子ガバナ3a’に対して制御信号を出力するように構成しても良い。このように構成することで,圧縮機本体2の吐出側圧力が十分に低下する前にエンジン3の回転数のみが低下することにより生じる,エンジン3のストールの発生などを解消することができる。
パージ弁11の開放によって,吐出流路21内の圧力が低下すると,この圧力の低下に対応して圧力調整弁32が徐々に制御流路23を絞り,吐出流路21内の圧力が設定吐出圧力(一例として0.69MPa)未満に迄低下すると,圧力調整弁32は制御流路23を完全に閉じる(t6)。
しかし,このようにして圧力調整弁32によって制御流路23が閉じられた状態においても,パージ弁11の開放が継続することによりバイパス流路24を介して吸入弁31の受圧室に対しては圧縮空気の導入が継続することから,吸入弁は,圧縮機本体の吸入口を塞いだ状態を維持すると共に,回転数制御手段45の回転数低下処理手段45dは,電子ガバナ3a’に対してエンジン3の回転数をパージ回転数N purとする制御信号の出力を継続し,パージされた状態でのアンロード運転が,比較的低いエンジンの回転数(パージ回転数N pur)で継続される。
パージによる圧力降下によって吐出流路21内の圧力が,吸入弁31を閉位置に維持するに必要な圧力以下となると(t7),吸入弁31が僅かに開いて圧縮機本体2に対する吸入空気量が増え,圧縮機本体2の吐出側圧力が吸入弁31を閉位置に戻すように動作し,圧縮機本体2に対する吸入量と放気流路25を介して吸入流路26aへ放気される圧縮空気量とが大気中で容積上一致すると吐出流路21内の圧力低下が止まり,この状態の吐出流路21内の圧力(例えば0.3MPa)がバランスするよう動作すると共に,この吸入弁31の動作に伴って圧縮機本体2の吐出側圧力が変動する結果,圧縮機本体2の駆動に要する動力が変化してエンジンの回転数が変化すると,回転数制御手段45の調速手段45cは,回転数センサ54からの検知信号に従ってエンジンの回転数の実測値と,前述したパージ回転数N purを比較して,回転数センサ54で検知されるエンジンの回転数(実測値)が,パージ回転数N pur(理論値)と一致するよう,電子ガバナ3a’に対して出力する制御信号を補正する。
このようにしてパージアンロード運転が行われている状態から,消費側における圧縮空気の消費が再開されて(t8),消費流路22内の圧力がパージ停止圧力演算手段12aによる演算の結果求められたパージ停止圧力(一例として0.69MPa)以下に低下すると,パージ動作制御手段12は,パージ停止信号を出力してパージ弁11を閉じる。また,回転数制御手段45は,パージ動作制御手段12の前記パージ停止信号の出力をトリガとして回転数低下処理手段45dによる回転数低下処理を終了し,速度制御手段45aによる速度制御を再開する(t9)。
このようにしてパージ弁11が閉じられることにより,バイパス流路24を介して行われていた吸入弁31に対する圧縮空気の導入が停止して吸入弁31が圧縮機本体2の吸入口を開くと共に,有効化された速度制御手段45aは,制御圧センサ53からの検知信号に基づいて電子ガバナ3a’に対してエンジン3の回転数を全負荷回転数N maxと成す制御信号を出力する。
そして,吐出流路21内の圧力が上昇し消費流路22内の圧力以上に上昇すると逆止弁6を開いて消費流路22を介して消費側に対して圧縮空気が供給されて,消費流路22内の圧力低下が停止すると共に,吐出流路21内の圧力と消費流路内の圧力とが一致した状態となり(t10),吐出流路21内の圧力が設定吐出圧力(一例として0.69MPa)を維持するように容量制御及び速度制御が行われる。
以上の構成を備えた,本発明の制御装置によって制御した空気圧縮機1における燃費の向上について,図7,図8を参照して説明する。
図7の点Eは,本実施形態における制御装置によって,パージ時,エンジン3の回転数をパージ回転数N purまで低下させたときの圧縮機本体の動力である。
図8の点エは本実施形態における制御装置によってパージ時,エンジン回転数をパージ回転数N pur低下させた100%無負荷運転(全負荷0%)のときの燃料消費量であって,図7の点Eを継続したときの燃料消費量である。ア−ウ−エ内のハッチングは,パージ運転を行わない従来の圧縮機に対してのみならず,前述した実施例1の制御装置によってパージ運転が行われた場合に比較した場合であっても大幅な省エネ効果が得られることが判る。
〔その他〕
以上で説明した実施形態にあっては,パージ弁11の開閉制御と共に,圧縮機本体の速度制御を行う例について説明したが,本発明の制御方法及び制御装置は,少なくとも圧縮機本体の容量制御と連動して行うものであれば,速度制御を伴うことなく行うものとしても良い。もっとも,圧縮機の駆動に要するエネルギ(燃費等)の低減という観点からは,実施形態1,2として記載したように圧縮機本体の速度制御と連動して行うことが好ましい。
また,前述した実施形態にあっては,いずれも本発明の制御装置をエンジン駆動型の圧縮機に対して適用する場合を例として説明したが,本発明の制御装置による制御は,エンジン駆動型圧縮機の制御のみならず,例えば定回転のモータ駆動型圧縮機やインバータを備えた可変速度のモータ駆動型圧縮機に適用するものとしても良い。
このうち,インバータを備えた可変速度モータ駆動型の圧縮機に対して本発明の制御装置を適用する場合には,例えば図5を参照して説明した速度制御手段45が,インバータに対してモータの回転数を変更させる制御信号を出力し得るように構成するものとすれば良い。