JP5321225B2 - ステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ドライバの操舵操作に応じて操舵輪を転舵するステアリング装置に関する。
従来のステアリング装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなステアリング装置がある。
特許文献1に記載されているステアリング装置は、変速用歯車と、操舵ギア対を有する。変速用歯車は、ドライバの操舵操作による入力歯車の回転を受ける歯車である。操舵ギア対は、変速用歯車と同軸に設けて変速用歯車と連動する非円形入力歯車と、この非円形入力歯車と噛合して連動することによりナックルアームを動作させる非円形出力歯車とからなる。変速用歯車と非円形入力歯車は、同軸上に配置されている。
特開2007−22159号公報
特許文献1に記載のステアリング装置では、変速用歯車と非円形入力歯車を、同軸上に配置するため、ステアリング装置が、この軸方向(略車高方向)に大型化するおそれがある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、大舵角転舵を可能にしつつ、ステアリング装置を構成する変速用歯車と非円形入力歯車の軸長を短縮し、ステアリング装置全体を小型化することが可能な、ステアリング装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、ドライバの操舵操作に応じた入力歯車の回転を、操舵輪と接続して操舵輪を転舵する第二非円形歯車に、入力歯車と噛合する第一非円形歯車を介して伝達し、操舵輪を転舵するステアリング装置である。そして、第一非円形歯車が有し、ピッチ曲線の輪郭が第一非円形歯車の回転軸を中心としたピッチ円の一部からなる第一円形部を、入力歯車と噛合させる。さらに、第一非円形歯車が有する第一非円形部を、入力歯車と噛合せず、且つピッチ曲線の輪郭が第一非円形歯車の回転軸を中心としたピッチ円の輪郭と異ならせた構成とする。また、第一非円形歯車と噛合する第二非円形歯車を、第一円形部と噛合可能な第二円形部と、第一非円形部と噛合可能な第二非円形部を有する構成とする。
本発明によれば、変速用歯車(第一円形部)と操舵輪を転舵させる歯車に回転を伝達する歯車(第一非円形部)とを一体歯車として形成したことで、変速用歯車と伝達用歯車を個別に設けることを必要とせず、入力歯車の回転を第二非円形歯車へ伝達することが可能となる。
このため、従来のステアリング装置と比較して、一つの歯車を省略することが可能となり、ステアリング装置を、小型化することが可能となる。
また、第一円形部と第一非円形部との第一境界と第二円形部と第二非円形部との第二境界とを歯合可能とすることで、歯車の可動範囲減少を抑制することが可能となり、半径の小さい歯車を用いた場合であっても、大舵角を実現することが可能となる。
本発明のステアリング装置を備える車両の上面図であり、車両の概略構成を示す図である。 ステアリングギヤボックスの構成を示す図である。 正逆転切り替え機構の構成を示す図である。 図1中に円IVで囲んだ範囲の拡大図であり、車両の上面図である。 入力歯車の回転軸及び第一非円形歯車の回転軸と、第二非円形歯車の回転軸との位置関係を示す図であり、車両の上面図である。 図5のVI線矢視図であり、右前輪(操舵輪)を中立位置とした状態において、車両を車両前後方向後方から見た図である。 本発明の変形例を示す図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
(構成)
まず、図1から図6を参照して、ステアリング装置1の構成を説明する。
図1は、本実施形態のステアリング装置1を備える車両Cの上面図であり、車両Cの概略構成を示す図である。なお、車両Cは、車両前後方向に配置した前輪WF及び後輪WRを備える車両である。
図1中に示すように、ステアリング装置1は、ステアリングホイール2と、ステアリングギヤボックス4と、ステアリングシャフト6と、入力歯車8と、第一非円形歯車10と、第二非円形歯車12とを備えている。
ステアリングホイール2は、車室内の運転席付近に配置する。また、ステアリングホイール2は、ドライバDによる操舵操作に応じて回転する。
ステアリングギヤボックス4は、ステアリングホイール2の回転を、ステアリングシャフト6の軸心回りへの回転に変換する。ステアリングギヤボックス4の詳細な構成については、後述する。
ステアリングシャフト6は、車幅方向に延在する棒状部材であり、ステアリングギヤボックス4から左前輪WFL及び右前輪WFRへ延在する。なお、図1中では、ステアリングギヤボックス4から左前輪WFLへ延在するステアリングシャフト6を、符号6Lを付して示し、ステアリングギヤボックス4から右前輪WFRへ延在するステアリングシャフト6を、符号6Rを付して示す。
ステアリングシャフト6の一端は、ステアリングギヤボックス4内に挿通しており、ステアリングシャフト6の他端には、入力歯車8を固定する。なお、以下の説明では、ステアリングシャフト6L及び6Rの他端にそれぞれ固定する二つの入力歯車8のうち、ステアリングシャフト6Lの他端に固定する入力歯車8について記載する。
入力歯車8は、ねじれ角を有する歯車とし、回転軸RAを車幅方向へ向けた状態で、第一非円形歯車10と噛合する。入力歯車8が有するねじれ角については、後述する。なお、本実施形態では、入力歯車8のねじれ方向を、右ねじれとする。
第一非円形歯車10は、入力歯車8と同様、ねじれ角を有する歯車とする。第一非円形歯車10が有するねじれ角については、後述する。
また、第一非円形歯車10は、回転軸RBを車両上下方向へ向けた状態で、入力歯車8及び第二非円形歯車12と噛合する。したがって、第一非円形歯車10は、入力歯車8の回転を、車両上下方向軸回りへの回転に変換する。なお、本実施形態では、第一非円形歯車10のねじれ方向を、入力歯車8と同様、右ねじれとする。
第二非円形歯車12は、入力歯車8及び第一非円形歯車10と同様、ねじれ角を有する歯車とする。
また、第二非円形歯車12は、回転軸RCを車両上下方向へ向けた状態で、第一非円形歯車10と噛合する。したがって、第二非円形歯車12は、第一非円形歯車10の回転により、車両上下方向軸回りに回転する。なお、本実施形態では、第二非円形歯車12のねじれ方向を、入力歯車8及び第一非円形歯車10と同様、右ねじれとする。
また、第二非円形歯車12は、各操舵輪(左前輪WFL及び右前輪WFR)の車輪転舵軸上に配置するとともに、各操舵輪を転舵可能に、各操舵輪と接続する。これにより、ステアリング装置1を、運転者によるステアリングホイール2の操舵操作に応じて、操舵輪を転舵する構成とする。なお、本実施形態では、上記のように、操舵輪を、左前輪WFL及び右前輪WFRとする。
図2は、ステアリングギヤボックス4の構成を示す図である。
図2中に示すように、ステアリングギヤボックス4は、交差軸歯車30と、正逆転切り替え機構40を備えている。
交差軸歯車30は、ステアリングホイール2と同軸に回転する歯車30aと、ステアリングシャフト6と同軸に回転する歯車30bとを備えており、ステアリングホイール2の回転を、ステアリングシャフト6に伝達する。
正逆転切り替え機構40は、ドライバDによる操舵モードの選択により、ステアリングシャフト6の回転方向を正逆転方向で切り替える。正逆転切り替え機構40の詳細な構成については、後述する。
なお、ドライバDによる操舵モードの選択は、例えば、運転席内に配置した操舵モード設定スイッチ(図示せず)の操作により行う。
ここで、上記の操舵モードとは、例えば、車両Cをその場で回転させるモードや、車両Cを横移動させるモード、さらに、車両Cを小回りで操舵するモードや、車両Cを通常の操舵状態で操舵するモード等である。
以下、図3を参照して、正逆転切り替え機構40の構成を説明する。
図3(a)は、正逆転切り替え機構40の構成を示す図である。また、図3(a)は、後述する電磁石42の非通電時を示す図である。
図3(a)中に示すように、正逆転切り替え機構40には、サンギヤ44、キャリア46及びリングギヤ48を備えるダブルピニオン式遊星歯車を用いる。
具体的には、サンギヤ44を、右側のステアリングシャフト6Rに連結し、キャリア46を、左側のステアリングシャフト6Lに連結する。サンギヤ44とリングギヤ48の歯数比は、例えば、0.5に設定する。なお、これらの結合は左右入れ替えてもよい。
リングギヤ48は、電磁式ツーウェイクラッチからなるロック機構50により、ケース52に断接される。サンギヤ軸とキャリア軸、すなわち、左右のステアリングシャフト6L,6Rは、電磁式ツーウェイクラッチからなる一体回転クラッチ54により断接する。
図3(b)は、ロック機構50の構成を示す図である。
図3(b)中に示すように、リングギヤ48の外周は、内輪転動面56になっている。また、外輪はケース52に固定され、その外輪転動面58は正多角形となっており、カム面を形成している。内輪転動面56と外輪転動面58の間には、複数個のローラ60が、各カム面上に、ばね62と保持器64により等間隔に保持されている。
そして、図3(a)中に示した電磁石42の非通電時には、保持器64はフリーとなり、リングギヤ48の回転に保持器64が連れ周ることとなる。これにより、カム面とローラ60との間の隙間がなくなり、リングギヤ48の回転がロックされる。これは、左右いずれの方向の回転もロックすることが可能である。
一方、電磁石42の通電時には、電磁石42によって、保持器64に連結されたアーマチュア66が、ケース52に固定された外輪プレート68に吸着され、保持器64が中央位置で保持される。このため、カム面とローラ60との間には隙間が形成され、リングギヤ48は、左右どちらの方向にも自由に回転することが可能となる。
図3(c)は、一体回転クラッチ54の構成を示す図である。
図3(c)中に示すように、外輪70は、キャリア46に装着されている。
また、内輪はサンギヤ44に連結されたステアリングシャフト6に装着されている。その内輪の内輪転動面72は、正多角形でカム面を形成し、その各カム面上にローラ74が保持器76により等間隔に保持されている。
そして、図3(a)中に示した電磁石42の非通電時には、内輪転動面72に対して、ローラ74は、スイッチばね78により中立位置に保持される。このため、内輪は空転することとなる。
一方、電磁石42の通電時には、電磁石42によって、保持器76に連結されたアーマチュア80が、キャリアに固定されたロータ82に吸着され、内輪の回転によりカム面とローラ74との間の隙間がなくなる。このため、左右のステアリングシャフト6L,6Rは、一体となって回転する。
図4は、図1中に円IVで囲んだ範囲の拡大図であり、車両Cの上面図である。なお、図4中では、操舵輪を中立位置とした状態を示してしている。また、図4中では、説明のために、入力歯車8、第一非円形歯車10、第二非円形歯車12及びステアリングシャフト6以外の図示を省略している。また、図4中では、操舵輪を、右前輪WFRとした状態を示している(図1参照)。
図4中に示すように、第一非円形歯車10は、第一円形部14と、第一非円形部16とを有する。
第一円形部14は、第一非円形歯車10のうち、入力歯車8と噛合する部分とする。
また、第一円形部14は、ピッチ曲線の輪郭が、第一非円形歯車10の回転軸RBを中心としたピッチ円の一部からなるように形成する。
なお、本実施形態では、第一非円形歯車10のうち、第一円形部14が占める割合を、全周の3/4(270°/360°)とする。また、図中では、第一非円形歯車10のうち、第一円形部14が占める範囲を、双方向矢印A1によって示す。
入力歯車8と第一円形部14とを噛合させる際には、図中に示すように、右前輪WFR(操舵輪)を中立位置とした状態で、入力歯車8と、第一円形部14の中央部18とを噛合させる。ここで、第一円形部14の中央部18とは、図中に示すように、第一円形部14のうち、車幅方向内側の部分が占める範囲の角度θ1と、車幅方向外側の部分が占める範囲の角度θ2が同一角(θ1=θ2)となる部分である。
第一非円形部16は、第一非円形歯車10のうち、入力歯車8と噛合しない部分とする。
また、第一非円形部16は、ピッチ曲線の輪郭が、第一非円形歯車10の回転軸RBを中心としたピッチ円の輪郭と異なるように形成する。ここで、第一非円形部16のピッチ曲線の輪郭は、右前輪WFR(操舵輪)の転舵角に応じた値に設定する。また、上記の「ピッチ曲線の輪郭が、第一非円形歯車10の回転軸RBを中心としたピッチ円の輪郭と異なるように形成する」とは、具体的には、「第一非円形部16のピッチ曲線半径が、第一非円形歯車10の周方向に沿って変化するように形成する」ことである。
なお、本実施形態では、第一非円形歯車10のうち、第一非円形部16が占める割合を、全周の1/4(90°/360°)とする。また、図中では、第一非円形歯車10のうち、第一非円形部16が占める範囲を、双方向矢印A2によって示す。
第二非円形歯車12は、第二円形部20と、第二非円形部22とを有する。
第二円形部20は、第二非円形歯車12のうち、第一円形部14と噛合可能な部分とする。
また、第二円形部20は、ピッチ曲線の輪郭が、第二非円形歯車12の回転軸RCを中心としたピッチ円の一部からなるように形成する。なお、第二円形部20のピッチ曲線の半径は、第一円形部14とピッチ曲線の半径と同一である。
なお、本実施形態では、第二非円形歯車12のうち、第二円形部20が占める割合を、全周の3/4(270°/360°)とする。また、図中では、第二非円形歯車12のうち、第二円形部20が占める範囲を、双方向矢印A3によって示す。以上により、第一非円形歯車10の外周のうち第一円形部14の占める長さと、第二非円形歯車12の外周のうち第二円形部20の占める長さは、同一となる。
第二非円形部22は、第二非円形歯車12のうち、第一非円形部16と噛合可能な部分とする。
また、第二非円形部22は、ピッチ曲線の輪郭が、第二非円形歯車12の回転軸RCを中心としたピッチ円の輪郭と異なるように形成する。ここで、第二非円形部22のピッチ曲線の輪郭は、第一非円形部16と同様、右前輪WFR(操舵輪)の転舵角に応じた値に設定する。また、上記の「ピッチ曲線の輪郭が、第二非円形歯車12の回転軸RCを中心としたピッチ円の輪郭と異なるように形成する」とは、具体的には、「第二非円形部22のピッチ曲線半径が、第二非円形歯車12の周方向に沿って変化するように形成する」ことである。
なお、本実施形態では、第二非円形歯車12のうち、第二非円形部22が占める割合を、全周の1/4(90°/360°)とする。また、図中では、第二非円形歯車12のうち、第二非円形部22が占める範囲を、双方向矢印A4によって示す。
また、第一非円形歯車10と第二非円形歯車12は、第一円形部14と第一非円形部16との第一境界24と、第二円形部20と第二非円形部22との第二境界26が噛合可能な状態で噛合させる。これにより、第一非円形歯車10及び第二非円形歯車12が噛合して回転する際は、第一円形部14と第二円形部20同士、または、第一非円形部16と第二非円形部22同士が噛合して回転する。
これは、例えば右旋回を考えた場合に、外輪となる左前輪WFLにおいては、左前輪WFLを転舵する第一非円形歯車10及び第二非円形歯車12が噛合して回転する際に、第一円形部14と第二円形部20同士が噛合して回転する状態である(外輪転舵角小)。これに加え、内輪となる右前輪WFRにおいては、右前輪WFRを転舵する第一非円形歯車10及び第二非円形歯車12が噛合して回転する際に、第一非円形部16と第二非円形部22同士が噛合して回転する状態である(内輪転舵角大)。この状態であれば、左前輪WFLの舵角と右前輪WFRの舵角に差が生じる。したがって、この舵角の差が旋回時の内外輪差に合うように、予め、非円形度合いや歯数などを調整しておくことで、大舵角旋回が可能となる。
図5は、入力歯車8の回転軸RA及び第一非円形歯車10の回転軸RBと、第二非円形歯車12の回転軸RCとの位置関係を示す図であり、車両Cの上面図である。なお、図5中では、説明のために、入力歯車8、第一非円形歯車10、第二非円形歯車12、ステアリングシャフト6及び右前輪WFR以外の図示を省略している。
図5中に示すように、入力歯車8の回転軸RA及び第一非円形歯車10の回転軸RBは、第二非円形歯車12の回転軸RCよりも車両前後方向前方にオフセットして配置する。これにより、入力歯車8と第一非円形歯車10が噛合する位置を、第二非円形歯車12よりも車両前後方向前方にオフセットさせる。
この配置は、転舵時に内輪となるときの右前輪WFR(操舵輪)の最大転舵角をαとし、且つ転舵時に外輪となるときの右前輪WFR(操舵輪)の最大転舵角をβとし、さらに、これらの最大転舵角がα>βの条件式を満足する場合に適用する。なお、図5中では、説明のために、中立位置の右前輪WFRを、符号WFRNを付して示している。さらに、図5中では、説明のために、転舵時に内輪となる右前輪WFRを、符号WFRIを付して示し、転舵時に外輪となる右前輪WFRを、符号WFROを付して示している。
ここで、操舵輪の転舵角とは、操舵輪を中立位置とした状態を基準とし、この状態から操舵輪を転舵した角度である。なお、図5中では、説明のために、右前輪WFR(操舵輪)を中立位置とした状態における、右前輪WFRの径方向と直交する線を中立基準線DRNで示す。これに加え、転舵時に内輪となる左前輪WFRの径方向と直交する線を内輪基準線DRIで示し、転舵時に外輪となる右前輪WFRの径方向と直交する線を外輪基準線DROで示す。これらの中立基準線DRN、内輪基準線DRI及び外輪基準線DROは、それぞれ、第二非円形歯車12の回転軸RCを基準として示す。
図6は、図5のVI線矢視図であり、右前輪WFR(操舵輪)を中立位置とした状態において、車両Cを車両前後方向後方から見た図である。なお、図6中では、説明のために、入力歯車8、第一非円形歯車10、第二非円形歯車12及び右前輪WFR以外の図示を省略している。
上述したように、本実施形態では、入力歯車8のねじれ方向を右ねじれとし、第一非円形歯車10のねじれ方向を右ねじれとする。すなわち、入力歯車8のねじれ方向と第一非円形歯車10のねじれ方向とを、同方向とする。
これにより、図6中に示すように、入力歯車8及び第一非円形歯車10は、入力歯車8が有するねじれ角γAと第一非円形歯車10が有するねじれ角γBが、車両前後方向から見て連続する。
なお、本実施形態では、入力歯車8が有するねじれ角γAと第一非円形歯車10が有するねじれ角γBを、同じ角度とする。すなわち、本実施形態では、入力歯車8の回転軸RAと第一非円形歯車10の回転軸RBがなす角度(軸角)が、入力歯車8が有するねじれ角γA及び第一非円形歯車10が有するねじれ角γBの二倍の角度(2γA、2γB)となる。
また、本実施形態では、図6中に示すように、入力歯車8のねじれ方向及び第一非円形歯車10のねじれ方向を、共に右ねじれとして、入力歯車8の回転軸RAが、第一非円形歯車10の回転軸RBよりも水平に近づく方向とする。すなわち、入力歯車8のねじれ方向及び第一非円形歯車10のねじれ方向を、入力歯車8の回転軸RAが、第一非円形歯車10の回転軸RBよりも水平に近づく方向とする。なお、図6中には、水平を示す直線を、水平軸線Hとして示す。
第二非円形歯車12の回転軸RCは、車両上下方向に延在する垂直軸線VSに対し、車両下方から車両上方へ向かうにつれて、傾斜角(キングピン軸傾斜角)εで車両中心側へ傾斜する。したがって、右前輪WFRの転舵軸(車輪転舵軸)は、車両下方から車両上方へ向かうにつれて、傾斜角εで車両中心側へ傾斜する。
また、第二非円形歯車12が有するねじれ角(図示せず)は、第一非円形歯車10と第二非円形歯車12との噛合状態に合わせて設定する。
(動作)
次に、図1から図6を参照して、ステアリング装置1の動作について説明する。
まず、ステアリング装置1を備えた車両Cの走行時において、車両Cの進行方向を変化させる際の動作について説明する。
ステアリング装置1を備えた車両Cの走行時(直進時)において、例えば、右折時や左折時等に、運転者がステアリングホイール2を操作すると、ステアリングシャフト6が、軸心回りに回転する(図1から図5参照)。
ステアリングシャフト6が軸心回りに回転すると、入力歯車8が、車幅方向に延在する回転軸回りに回転する(図1から図6参照)。そして、入力歯車8と噛合する第一非円形歯車10が、車両上下方向軸回りに回転する。これにより、入力歯車8の回転を、車両上下方向軸回りへの回転に変換する(図1から図6参照)。
第一非円形歯車10が、車両上下方向軸回りに回転すると、第一非円形歯車10と噛合する第二非円形歯車12が、第一非円形歯車10の回転により、車両上下方向軸回りに回転する(図1から図6参照)。
このとき、第一円形部14と第二円形部20同士、または、第一非円形部16と第二非円形部22同士が噛合して、第一非円形歯車10及び第二非円形歯車12が回転する(図4参照)。
具体的には、車両Cが直進から右折する場合、右前輪WFRと接続する第二非円形歯車12と、この第二非円形歯車12と噛合する第一非円形歯車10は、第一非円形部16と第二非円形部22同士が噛合した状態で回転する(図4参照)。
一方、車両Cが直進から右折する場合、左前輪WFLと接続する第二非円形歯車12と、この第二非円形歯車12と噛合する第一非円形歯車10は、第一円形部14と第二円形部20同士が噛合した状態で回転する。
以上により、本実施形態のステアリング装置1を備えた車両Cでは、ステアリング装置1を、小型化することが可能となる。さらに、ステアリング装置1が備える歯車(入力歯車8、第一非円形歯車10、第二非円形歯車12)の中立時の接点を、各境界が噛み合うようにしたことで、回転稼動範囲を最大限にすることが可能となるため、入出力を一体化した第一非円形歯車を用いた場合であっても、大舵角を実現することが可能となる。また、ステアリング装置1が備える歯車として、より半径の小さい歯車を用いた場合であっても、大舵角を実現することが可能となる。
第二非円形歯車12が、車両上下方向軸回りに回転すると、各操舵輪(左前輪WFL及び右前輪WFR)が、車両上下方向軸回りに回転して転舵される(図1から図6参照)。これにより、ステアリング装置1を備える車両Cの進行方向が、運転者によるステアリングホイール2の操舵操作に応じた方向へ変化する。
(第一実施形態の効果)
(1)本実施形態のステアリング装置では、入力歯車と噛合する第一円形部を、第二円形部と噛合可能とし、入力歯車と噛合させない第一非円形部を第二非円形部と噛合可能とする。さらに、第一非円形歯車と第二非円形歯車とを、第一円形部と第一非円形部との第一境界と第二円形部と第二非円形部との第二境界が噛合可能な状態で噛合させる。
このため、第一円形部で入力歯車と噛合する第一非円形歯車により入力歯車の回転を第二非円形歯車へ伝達することを可能として、入力歯車と噛合する歯車と、第二非円形歯車と噛合する歯車とを、一体化することが可能となり、それら種々の機能の歯車を支持する軸の軸方向への長さを、短縮することが可能となる。さらに、半径が小さい歯車を用いて、ステアリング装置を形成しても、旋回角を増加させることが可能となる。
これは、例えば、従来例の構成を有するステアリング装置と比較して、入力歯車と噛合する変速用歯車と、非円形入力歯車とを、一体化することが可能となり、それら種々の機能の歯車を支持する軸の軸方向への長さを、変速用歯車の長さ分、短縮可能な点で特に効果的である。さらに、半径が小さい歯車を用いて、ステアリング装置を形成しても、旋回角を増加させることが可能となる点で特に効果的である。なお、従来例のステアリング装置が有する構成とは、入力歯車の回転を、まず、変速用歯車で受け、そして、その変速用歯車と同軸に設けた非円形入力歯車を用いて、ナックルアームを動作させる非円形出力歯車へ伝達する構成である。
また、第一非円形歯車が有する第一円形部を、入力歯車と噛合し、且つピッチ曲線の輪郭が第一非円形歯車の回転軸を中心としたピッチ円の一部からなる構成とする。さらに、第一非円形歯車が有する第一非円形部を、入力歯車と噛合せず、且つピッチ曲線の輪郭が第一非円形歯車の回転軸を中心としたピッチ円の輪郭と異なる構成とする。
このため、例えば、上述した従来例の構成を有するステアリング装置と比較して、一つの歯車で変速用歯車と非円形入力歯車の機能を有することによる、歯車の可動範囲減少を抑制することが可能となる。これに加え、第一非円形歯車の半径が増大することを抑制することが可能となる。
以上により、本実施形態のステアリング装置を、電動車用、例えば、IWM(イン・ホイール・モータ)を適用した車両のステアリング機構として用いる場合、小型且つ大舵角なステアリング装置を提供することが可能となる。
(2)本実施形態のステアリング装置では、操舵輪を中立位置とした状態で、入力歯車と、第一円形部の中央部とを噛合させる。
このため、第一円形部のうち、入力歯車と第一円形部との噛合部分を最大限に共有することが可能となり、歯車の可動範囲減少を抑制することが可能となる。また、入力歯車と第一非円形歯車との噛合部分における、ギヤ比を増加させることが可能となる。
その結果、操舵輪の転舵角や、転舵に要する力を調節することが容易となる。
(3)本実施形態のステアリング装置では、入力歯車の回転軸及び第一非円形歯車の回転軸を、第二非円形歯車の回転軸よりも車両前後方向後方にオフセットして配置する。これは、転舵時に外輪となる操舵輪の最大転舵角αが、転舵時に内輪となる操舵輪の最大転舵角βを超えている場合に適用する。
このため、入力歯車及び第一非円形歯車を、転舵時に最大転舵角となる操舵輪から離間させることが可能となるため、転舵時における、入力歯車及び第一非円形歯車と操舵輪との干渉を抑制することが可能となる。
その結果、操舵輪の転舵角度を増加させることが可能となり、操舵輪の転舵角度に対する設定自由度を向上させることが可能となる。
(4)本実施形態のステアリング装置では、入力歯車及び第一非円形歯車を、ねじれ角を有する歯車とし、入力歯車のねじれ方向と第一非円形歯車のねじれ方向とを、同方向とする。
このため、入力歯車の回転軸と第一非円形歯車の回転軸とのなす角度が、入力歯車または第一非円形歯車のねじれ角の二倍の角度となり、入力歯車と第一非円形歯車が噛合する部分において、食い違い軸歯車としての機能を保持させることが可能となる。
その結果、入力歯車と第一非円形歯車との間に発生するバックラッシ等を低減することが可能となる。
(5)本実施形態のステアリング装置では、入力歯車のねじれ方向及び第一非円形歯車のねじれ方向を、入力歯車の回転軸が第一非円形歯車の回転軸よりも水平に近づく方向とする。
このため、入力歯車の回転軸が水平方向に近づくように傾斜するため、車体中央付近から入力される、ステアリングホイールからの入力を、ステアリングシャフトを介して、入力歯車へ効率良く伝達することが可能となる。
その結果、操舵輪の転舵における操作性を向上させることが可能となる。
なお、上記の構成により、歯車軸方向への長さが短く、半径の小さい歯車を用いて形成したステアリング装置を用いて、図7に記載のような、種々な操舵モードを選択可能なステアリング装置を実現可能となる。
以下、図7を参照して、種々な操舵モードを選択可能なステアリング装置1を備えた車両Cの構成を説明する。なお、上述した本実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明する。なお、図7は、本実施形態の変形例を示す図である。
図7中に示すように、複数の操舵モードを選択可能なステアリング装置1を備えた車両Cは、前輪WF及び後輪WRを操舵可能な車両である。なお、図7中では、後輪WRを、左後輪WRL及び右後輪WRRと記載する。したがって、この車両Cが備えるステアリング装置1は、前輪WF(WFL,WFR)を操舵する前輪ステアリング装置1Aと、後輪WR(WRL,WRR)を操舵する後輪ステアリング装置1Bとを備えている。
前輪ステアリング装置1Aは、操舵角センサ84と、操舵力アシストモータ86を備えている。
操舵角センサ84は、ステアリングホイール2が連結されたコラムシャフト上に配置されており、操舵角及び操舵速度を検出して、後述するコントロールユニット88へ出力する。操舵力アシストモータ86は、ステアリングホイール2の回転トルクを増幅する。なお、操舵角センサ84及び操舵力アシストモータ86以外の構成は、上述したステアリング装置1の構成と同様であるため、説明を省略する。
後輪ステアリング装置1Bは、転舵モータ90と、モータ角度センサ92を備えている。
転舵モータ90は、後輪ステアリング装置1Bを駆動させる。モータ角度センサ92は、転舵モータ90に付設されており、転舵モータ90の回転角を検出して、後述するコントロールユニット88へ出力する。なお、転舵モータ90及びモータ角度センサ92以外の構成は、前輪ステアリング装置1Aの構成と同様であるため、説明を省略する。
また、図7中に示すように、複数の操舵モードを選択可能なステアリング装置1は、操舵モード設定スイッチ94と、コントロールユニット88と、アクチュエータドライバ96を備えている。
操舵モード設定スイッチ94は、ドライバDが、操舵モードの選択、具体的には、通常走行モード、小回りモード、その場回転モードあるいは横移動モードのいずれかを選択する際に操作するスイッチである。
ドライバDが操舵モード設定スイッチ94を操作すると、操舵モード設定スイッチ94は、選択した操舵モードを含むモード選択信号を、コントロールユニット88へ出力する。
コントロールユニット88は、操舵角センサ84、モータ角度センサ92、操舵モード設定スイッチ94からのモード選択信号、車速等の走行状態に応じて、目標アシスト量、左右輪の目標転舵方向、目標後輪転舵量をそれぞれ算出する。そして、算出した情報を、それぞれ、アクチュエータドライバ96へ出力する。
アクチュエータドライバ96は、コントロールユニット88が出力した目標アシスト量に応じて、操舵力アシストモータ86を駆動し、ドライバDによる操舵操作をアシストする。また、アクチュエータドライバ96は、コントロールユニット88が出力した左右輪の目標転舵方向に応じて、正逆転切り替え機構40を切り替える。さらに、アクチュエータドライバ96は、コントロールユニット88が出力した目標後輪転舵量に応じて、転舵モータ90を駆動する。
次に、上記の各操舵モードにおける、動作を説明する。
ドライバDが、操舵モード設定スイッチ94により、その場回転モードまたは横移動モードを選択した場合、前後輪の正逆転切り替え機構40と、操舵力アシストモータ86と転舵モータ90の出力制御を行い、自動的の所定の角度まで車輪を操向する。これらの制御は、コントロールユニット88の指令により、アクチュエータドライバ96が行う。
なお、操舵モード設定スイッチ94は、デフォルトで通常操舵モードとなるようにしておくことが好適である。すなわち、エンジンスタート時は常に通常操舵モードとし、車輪が小回り、その場回転、横移動のまま放置されている場合には、中立状態に戻す。
ドライバDが小回りモードを選択した場合には、後輪切れ角が前輪切れ角と大きさが同じで逆位相となるように、転舵モータ90を出力制御する。
通常操舵モードでは、操舵角センサ84により検出される操舵角度と操舵速度及び車速から、操舵力アシストモータ86を最適に制御する。
(応用例)
(1)本実施形態のステアリング装置1では、入力歯車8と第一円形部14とを噛合させる際に、操舵輪を中立位置とした状態で、入力歯車8と、第一円形部14の中央部18とを噛合させたが、これに限定するものではない。すなわち、入力歯車8と第一円形部14とを噛合させる際に、操舵輪を中立位置とした状態で、入力歯車8と、第一円形部14のうち中央部18からオフセットした部分とを噛合させてもよい。
(2)本実施形態のステアリング装置1では、ステアリングギヤボックス4の構成を、交差軸歯車30と、正逆転切り替え機構40を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、ステアリングシャフト6を、車幅方向に延在する一本の棒状部材で形成し、ステアリングギヤボックス4の構成を、内部にステアリングホイール2及びステアリングシャフト6を挿通する構成としてもよい。この場合、ステアリングギヤボックス4は、内部に、例えば、傘歯車等を備え、この歯車により、ステアリングホイール2の回転を、ステアリングシャフト6の軸心回りへの回転に変換する。また、ステアリングシャフト6の両端部には、それぞれ、入力歯車8を固定する。これは、入力歯車8の回転軸RA及び第一非円形歯車10の回転軸RBを、第二非円形歯車12の回転軸RCよりも車両前後方向前方にオフセットして配置した構成に適用することが好適である。このような構成とすることにより、ステアリングギヤボックス4の構成を、本実施形態のステアリングギヤボックス4と比較して、シンプルな構成とすることが可能となる。
(3)本実施形態のステアリング装置1では、入力歯車8のねじれ方向と第一非円形歯車10のねじれ方向とを同方向としたが、これに限定するものではない。すなわち、入力歯車8のねじれ方向と第一非円形歯車10のねじれ方向とを、異なる方向としてもよい。
(4)本実施形態のステアリング装置1では、入力歯車8のねじれ方向及び第一非円形歯車10のねじれ方向を、入力歯車8の回転軸RAが、第一非円形歯車10の回転軸RBよりも水平に近づく方向としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、入力歯車8のねじれ方向及び第一非円形歯車10のねじれ方向を、第一非円形歯車10の回転軸RBが、入力歯車8の回転軸RAよりも水平に近づく方向としてもよい。
1 ステアリング装置
2 ステアリングホイール
4 ステアリングギヤボックス
6 ステアリングシャフト
8 入力歯車
10 第一非円形歯車
12 第二非円形歯車
14 第一円形部
16 第一非円形部
18 第一円形部14の中央部
20 第二円形部
22 第二非円形部
24 第一境界
26 第二境界
C 車両
D ドライバ
WFL 左前輪(操舵輪)
WFR 右前輪(操舵輪)
α 転舵時に内輪となる操舵輪(右前輪WFR)の最大転舵角
β 転舵時に外輪となる操舵輪(右前輪WFR)の最大転舵角
RA 入力歯車8の回転軸
RB 第一非円形歯車10の回転軸
RC 第二非円形歯車12の回転軸

Claims (5)

  1. ドライバの操舵操作に応じて操舵輪を転舵するステアリング装置であって、
    前記操舵操作に応じて回転する入力歯車と、当該入力歯車と噛合する第一非円形歯車と、当該第一非円形歯車と噛合し且つ前記操舵輪と接続して操舵輪を転舵する第二非円形歯車と、を備え、
    前記第一非円形歯車は、前記入力歯車と噛合し且つピッチ曲線の輪郭が当該第一非円形歯車の回転軸を中心としたピッチ円の一部からなる第一円形部と、前記入力歯車と噛合せず且つピッチ曲線の輪郭が前記第一非円形歯車の回転軸を中心としたピッチ円の輪郭と異なる第一非円形部と、を有し、
    前記第二非円形歯車は、前記第一円形部と噛合可能であり且つピッチ曲線の輪郭が当該第二非円形歯車の回転軸を中心としたピッチ円の一部からなる第二円形部と、前記第一非円形部と噛合可能であり且つピッチ曲線の輪郭が前記第二非円形歯車の回転軸を中心としたピッチ円の輪郭と異なる第二非円形部と、を有し、
    前記第一非円形歯車と前記第二非円形歯車とを、前記第一円形部と前記第一非円形部との第一境界と前記第二円形部と前記第二非円形部との第二境界が噛合可能な状態で噛合させることを特徴とするステアリング装置。
  2. 前記操舵輪を中立位置とした状態で、前記入力歯車と前記第一円形部の中央部とを噛合させることを特徴とする請求項1に記載したステアリング装置。
  3. 転舵時に外輪となる前記操舵輪の最大転舵角をαとし、且つ転舵時に内輪となる前記操舵輪の最大転舵角をβとし、
    前記最大転舵角がα>βの条件式を満足する場合に、前記入力歯車の回転軸及び前記第一非円形歯車の回転軸を、前記第二非円形歯車の回転軸よりも車両前後方向後方にオフセットして配置し、
    前記最大転舵角がα<βの条件式を満足する場合に、前記入力歯車の回転軸及び前記第一非円形歯車の回転軸を、前記第二非円形歯車の回転軸よりも車両前後方向前方にオフセットして配置することを特徴とする請求項1または2に記載したステアリング装置。
  4. 前記入力歯車及び前記第一非円形歯車を、ねじれ角を有する歯車とし、
    前記入力歯車のねじれ方向と前記第一非円形歯車のねじれ方向とを、同方向とすることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載したステアリング装置。
  5. 前記入力歯車のねじれ方向及び前記第一非円形歯車のねじれ方向を、前記入力歯車の回転軸が前記第一非円形歯車の回転軸よりも水平に近づく方向とすることを特徴とする請求項4に記載したステアリング装置。
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