本発明の実施の形態を、図1〜図20を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
図1は本実施例の冷蔵庫を正面から見た図である。図1に示すように、冷蔵庫本体1は、上部に冷蔵室2、冷蔵室2の下方に製氷室3及び急冷凍室4が設置され、冷蔵庫本体1の下部に野菜室6が設置され、製氷室3及び急冷凍室4と野菜室6との間に冷凍室5が設置されて構成される。
冷蔵室2は、前方に回転式の扉2aを備え、製氷室3,急冷凍室4,冷凍室5、及び野菜室6は、引き出し式の扉3a,4a,5a,6aをそれぞれ備えている。
図2は、本実施例の冷蔵庫の庫内の構成を表す断面図である。図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は断熱箱体10により隔てられている。また、断熱仕切壁28により冷蔵室2と、急冷凍室4及び製氷室3(図2中に図示しない)は隔てられ、冷凍室5と野菜室6は断熱仕切壁29によって隔てられている。冷蔵室2の回転式の扉2aの庫内側には、複数の扉ポケット32が備えられている。また、冷蔵室2は複数の棚36によって、複数のスペースに区画される構成である。急冷凍室4,冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの貯蔵室の前方に備えられた引き出し式の扉4a,5a,6aを引出すことに伴って引出される収納容器4b,5b,6bがそれぞれ備えられている。図1に示す製氷室3も同様に、引き出し式の扉3aに、図示しない収納容器が備えられている。
冷却器7は下段冷凍室5の背面壁と断熱箱体10の間に形成された冷却器収納室8内に備えられている。冷却器7の上方には、庫内送風ファン9が備えられている。これにより、冷却器7で熱交換した気体(本明細書中においては、熱交換した低温空気を冷気と称する)が各室へ送られる。庫内送風ファン9の上方には、ダンパ20が設置されており、各室への送風はダンパ20の開閉により制御される。ダンパ20が閉状態のとき、冷気は上段冷凍室送風ダクト12,下段冷凍室送風ダクト13、及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、急冷凍室4,冷凍室5、及び製氷室3に送られる。一方、ダンパ20が開状態のときには、冷気は製氷室3,急冷凍室4、及び冷凍室5へ送られると同時に、冷蔵室送風ダクト11、及び図示しない野菜室送風ダクトを介して冷蔵室2及び野菜室6に送られる。
また、冷蔵庫本体1の下部後方(野菜室6の後方)には、機械室19が備えられている。機械室19には、圧縮機24及び図示しない放熱器(凝縮器)が収納されており、図示しない庫外送風ファンにより通風される。圧縮機24と、図示しない放熱器、絞り機構、及び冷却器7は、図示しない冷媒管で連結され冷凍サイクルを構成する。冷媒管内部を流れる冷媒としてはイソブタンが好適であるが、これに限るものではなく各種の冷媒を用いてもよい。また、電気品を搭載した基板31は、冷蔵庫1の天井壁の後部に設置される。
冷却器7に付着した霜は、除霜ヒータ22により定期的に除霜される。除霜によって生じた除霜水は、冷却器収納室8の下部に備えられた樋23に流入した後に、排水管27を介して蒸発皿21に達し、蒸発が促進される。また、冷蔵庫本体1の断熱箱体10には、ウレタンフォームと複数の真空断熱材25が設置されている。これにより、断熱効果を高めることができ、省エネ化に寄与することができる。
図3は、本実施例の冷蔵庫の冷蔵室扉2aを開けた状態を正面から見た図である。図3に示すように、冷蔵室2の後部の略中央には、冷蔵室送風ダクト11が、略鉛直方向に備えられている。さらに、冷蔵室送風ダクト11には、庫内へ冷気を吐出する吐出口が設けられている。また、冷蔵室2の背面の冷蔵室送風ダクト11の左右両側には、高熱伝導性の冷却パネル35(例えば、アルミニウムパネル)が備えられている。
具体的には、ダクト11の略鉛直方向に第一の吐出口34が複数設けられている。また、第一の吐出口34よりも冷却パネル35側には、左右に略対称に第二の吐出口33が複数設けられている。
詳細は後述するが、冷蔵室送風ダクト11内の流れ方向と逆方向(下方向)の速度成分を持った冷気が吐出されるのが、第一の吐出口34(逆向に冷気を吐出する吐出口)である。一方、冷蔵室送風ダクト11内の流れ方向(上方向)の速度成分を持った冷気が吐出されるのが、第二の吐出口33(順向に冷気を吐出する吐出口)である。第一の吐出口34、第二の吐出口33からは、それぞれ冷気が吐出される。
次に、図3中に示すスペース1(冷蔵室2の天井壁,背面壁,扉2a,最上段の棚36Aとで区画形成された上方のスペース)を例に挙げて、第一の吐出口34と、第二の吐出口33の特徴を説明する。
図4は、第二の吐出口33からスペース1に吐出された冷気の流れを表す図である。図4に示すように、第二の吐出口33から吐出された冷気は、冷蔵室送風ダクト11内の流れ方向の成分を持って吐出するために、スペース1内の上方に向かう。したがって、冷気はまず冷蔵室天井面2bに当たり、次に最上段の扉ポケット32に収納されている食品30に至る。続いて、一部が最上段の棚36Aの上に置かれた食品37に向かい、残りは棚36Aと扉ポケット32の隙間から下方のスペースに向かって流れる。
このような第二の吐出口33は、吐出冷気に上向き速度成分があるために、遠方まで冷気を送る。すなわち、冷蔵室送風ダクト11から遠い位置にある扉ポケット32に収納されている食品30に確実に冷気を供給することができる。しかしながら、冷蔵室送風ダクト11から近い棚36A上の食品37の冷却を考えた場合、冷気は冷蔵室天井面2bと扉ポケット32に収納されている食品30を冷却するので、温度が高くなる。さらに拡散によって低速になって棚36上の食品37に到達するので、食品37の冷却速度が遅くなるおそれがある。すなわち、冷蔵室送風ダクト11から近い位置にある棚36A上の食品37を素早く冷却するには適さない。
第二の吐出口33は、このような特性があるため、吐出口を第二の吐出口33のみとした場合、棚36A上の食品が冷え難いおそれがある。同時に、冷蔵室天井面2b、及び扉ポケット32を過剰に冷却することになる。特に食品が設置できない冷蔵室天井面2bを過剰に冷却することは、熱損失が大きくなるため、省エネ性を低下させてしまうおそれがある。
一方、図5は第一の吐出口34から吐出される冷気の流れを表す図である。図5に示すように、第一の吐出口34から吐出された冷気は、冷蔵室送風ダクト11内の流れ方向と逆向きの成分を持って吐出されるので、スペース1内の下方に向かう。すなわち、第1の吐出口34から吐出された冷気は、低温のまま比較的速く食品37に到達するため、食品37を素早く冷却することができる。一方、下方に向けて吐出しされた低温の冷気は、吐出口から離れて拡散が徐々に進み、自然対流によってさらに下方へ向かうため、冷蔵室送風ダクト11から遠い位置にある扉ポケット32に収納されている食品30まで冷気が届きにくくなる。すなわち、大容量の冷蔵室の場合、特に冷蔵室送風ダクト11から近い位置にある棚36上の食品37を素早く冷却するには適しているが、冷蔵室送風ダクト11から遠い位置にある扉ポケット32に収納されている食品30の冷却効率が低下してしまうおそれがある。
第一の吐出口34は、このような特性があるため、吐出口を第一の吐出口34のみとした場合、扉ポケット32に収納されている食品30の冷却を十分に行うことが困難となる。これは図5に示す最上段のスペース1のみならず、スペース1の下方の各スペース(棚で形成された空間)に関しても共通する課題である。特に、上方から流下してくる冷気が期待できない、最上段の扉ポケット32に関しては、上述した扉ポケット32に収納されている食品30の冷却が十分行えないという課題が顕著に現れる。さらに本実施例の冷蔵庫では、図5に示すように、最上段の扉ポケット32の開口面が、最上段の棚36より上方に位置しているので、第1の吐出口34のみでは扉ポケット32に冷気を届かせることが極めて困難になる。
以上で説明したように、第二の吐出口33と第一の吐出口34には一長一短があるため、この両者を併用することで、相互の短所を補完することができ、理想的な冷却が可能となる。なお、図5に示すように、逆向に吐出させるために、第一の吐出口34の上流側の冷蔵室送風ダクト内面に風向転向リブ38を設けている(詳細は後述)。
次に、第2の吐出口33と第1の吐出口34から吐出される冷気の水平方向の流れについて、図6を参照しながら説明する。図6は、図4及び図5に示すスペース1を上方(冷蔵室天井面2側)から見た図である。図6中の白抜きの矢印は、第二の吐出口33から吐出される冷気の流れを表し、黒塗りの矢印は第一の吐出口34から吐出される冷気の流れを表す。また、長破線で囲まれた範囲は、上方(冷蔵室天井面2)に図2(あるいは図4,図5)に示す基板31が設置されている領域を表す。図6に示すように、第2の吐出口33は、吐出方向が冷却パネル35から角度φで前方(扉方向)に左右に次第に広がるように備えられている。すなわち、第二の吐出口33から吐出した冷気は、扉ポケット32に向かって流れる。一方、第1の吐出口34からは、前方に向けて冷気が吐出される。冷蔵庫運転時には、冷蔵室天井面2に設置される基板31は発熱し高温となるから、冷蔵室天井面2bの中でも、上方に基板31がある長破線で示す面、特に中心付近(領域A。短破線で囲まれた領域)は温度が高くなる、そのため、冷蔵室天井面2bの領域Aに吐出冷気を直接当てると熱損失が大きくなる。よって、第2の吐出口33は、領域A方向に向けることは省エネの観点から好ましくない。本実施例の冷蔵庫では、図5,図6に示すように、第二の吐出口33を領域A方向に直接流れないようにしているので、基板31の影響による熱損失を抑えることができる。また、第2の吐出口33及び第1の吐出口34は、前方の冷蔵室扉2aに向かって流れる。よって、食品を設置できない冷蔵室側面2c及び、冷蔵室背面2dには直接、冷気が流れないようになり、冷却損失を低減でき、省エネ性が良い冷蔵庫となっている。さらに、冷蔵室には直接冷気が流れないように送風ダクト11の両側の冷蔵室背面2dには、高熱伝導部材である冷却パネル35が設けられる。これにより、冷蔵室送風ダクト11近傍の冷熱を伝えて、冷気が到達し難い冷蔵室送風ダクト11の両側の冷蔵室背面2d近傍の領域(領域B)の冷却を補助している。加えて、冷蔵室送風ダクト11が冷蔵室背面2dの中央に位置し、第2の吐出口33及び第1の吐出口34は冷蔵室送風ダクト11の略鉛直方向に複数設けられているので、冷蔵室2内には均一に冷気が行き渡り、温度ムラを抑えることができる。また、冷蔵室送風ダクト11を、単一のダクト11としているので、冷蔵室背面に低温冷気が通るダクト11を複数箇所設ける場合に比べて、ダクト11からの熱損失を小さく抑えることができるため、省エネ性が良い冷蔵庫となっている。
以上で、本実施例の冷蔵庫の構成を説明したが、次に本実施例の冷蔵庫における第2の吐出口33と、第1の吐出口34を形成する手段について説明する。
図4に示すように、扉と対向するようにダクト11に開口を設けた吐出口(例えば特許文献1に記載されているダクト11の吐出口)とした場合、冷気はダクト11内の流れ方向の速度成分を持って吐出される。よって第2の吐出口33を形成する手段としては、図4に示すように、ダクト11の側面に冷却パネル35から角度φで前方に冷気が吐出されるように開口を設ければよい。一方、第1の吐出口34は、扉に対向するようにダクト11側面に形成される。さらに、ダクト11内の流れ方向を転向させる手段(風向転向手段)が必要となる。一般に、流れ方向を逆向き速度成分を持たせるほどに転向させる場合(図5に示す矢印方向のように吐出する場合)には、大きな圧力損失を伴う。したがって、冷気が吐出されるときに、圧力損失の増加を抑えて転向させる必要がある。本実施例の冷蔵庫では、第1の吐出口34を形成する手段として、図5に示すように、ダクト11内の吐出口付近に、風向転向リブ38が設けられる。これにより、圧力損失の大きな増加を伴わずに、流れ方向を逆向きに転向することができる。この理由を以下で説明する。
はじめに、第2の吐出口33から吐出する冷気の吐出角度について説明する。図7は、風国転向リブ38を設けない場合の、第2の吐出口33付近の流れの様子を表す、参考例1の図である。冷蔵室送風ダクト11の第2の吐出口33近傍の破線で囲った領域を検査領域とする。ダクト11の奥行寸法をWとして、ダクト11内を圧力(静圧)P(冷蔵室送風ダクト11外の圧力を0とする),流速u1,密度ρの冷気が第2の吐出口33に向かって流れ、第2の吐出口33(開口高さH1)から流速u2の冷気が角度θ方向に吐出するとする。下流側に壁(ダクト11の上端部)が存在することにより、流れがせき止められ、上流側の流速u1分の動圧(ρu1 2/2)のβ倍だけ圧力が高くなるとする。また、第2の吐出口33に対向する壁面(ダクト11の背面壁)が流れを押す圧力をPとする。以上の記号を用いて、第2の吐出口33からの吐出角度θは、式(1)のようになる。尚、式(1)を導出する際には、簡略化のため、破線で囲った検査領域内の圧力損失,粘性,圧縮性の影響は無視している。
式(1)中のαは縮流係数であり、吐出冷気の断面積が最小となる位置における断面高さをHcとして、α=Hc/(H1sinθ)と定義する。流れをせき止めた場合であっても、終端部の圧力は上流における静圧Pに動圧(ρu1 2/2)を加えた値以上に上昇しないからβ≦1である。また、冷気が吐出することから、0゜<θ<180゜であり、sinθ>0となる。すなわち、流係数α>0となる。以上から、図7に示す第2の吐出口33ではtanθ>0、すなわち、θ<90゜となることがわかる。このことから、図7に示す形態の吐出口とした場合には、吐出冷気の流れは、ダクト内の流れ方向の成分を持つことがわかる。
図13は、図7に示すようにダクト側面に開口を設けた場合の、吐出流れの様子を数値解析(二次元モデル)により可視化したものである。数値解析は、汎用の流体解析ソフト(商品名:STAR−CD 製造元:株式会社シーディー・アダプコ・ジャパン)を用いて行った。諸数値は図7に示す寸法記号に対応して、W=25mm,H=700mm,H1=10mm,H2=10mmであり、ダクト入口に流速0.5m/sの一様流を与えて流れ場を解析した。図13に示すように吐出口からの吐出流れは、ダクト内流れ方向の成分を持って吐出していることがわかる。この解析モデルにおける圧力損失は2.52Paである。
次に、ダクト内の流れ方向と逆向きの速度成分を持った冷気を吐出させる、すなわち、θ>90゜とする条件を考えると、式(1)の形から、β>2とする必要がある。つまり、ダクト内の流速u1の持つ動圧(ρu1 2/2)の2倍より大きい圧力で検査体積内の流体を押し返さなければならない。しかし、上述したように、ダクト内流れをせき止めてもβ≦1しか期待できないから、ダクト内において、吐出口の下流側の壁面を転向したい方向に傾斜させる等の工夫をしても、β>2の条件を満足することができず、第1の吐出口34を形成することはできない。
そこで、第1の吐出口34を形成する手段として、図9に示すように、曲げ風路41を形成する方式(参考例2)を考える。ここで、曲げ風路41とは、吐出方向が下向きに傾斜するように部材39,39′を、吐出口に互いに対向するように設けて、冷気にダクト内流れ方向と逆向きの速度成分を持たせて吐出させるべく風路である。
図16は、図9に示すように曲げ風路41を設けた場合の流れを数値解析(二次元モデル)により可視化したものである。図9に示す寸法記号に対応するように、W=25mm,H=700mm,H1=10mm,H2=10mm,L=10mm,α=110゜として、ダクト入口に流速0.5m/sの一様流を与えて流れ場を解析した。図16に示すように吐出口からの吐出流れは、曲げ風路41によって転向され、ダクト内流れ方向と逆向きの速度成分を持って吐出されていることがわかる。しかしながら、図16の解析モデルにおける圧力損失は3.69Paであり、図13に示す第2の吐出口の圧力損失2.52Paに比べて圧力損失が大きくなっていることがわかる。これは、曲げ風路41に流入する際に、吐出口下方の部材39(風路41の下面)から流れが剥離し、上方の部材39′(曲げ風路41の上面)側に流れが偏ることで、吐出口部材39′付近に速い流れ(縮流)が生じるためである。一般に、流れが広い空間に吐出される際の圧力損失(吐出拡大損失)は、吐出風速の二乗にほぼ比例して大きくなることから、図9に示すように風向転向部材に衝突させる方式で転向させた場合、縮流の影響で第2の吐出口33に比べて圧力損失は大きくなってしまう。
また、第1の吐出口34を形成する別の手段として、図10に示す方式(参考例3)が考えられる。図10では、ダクトの外部であって、且つ吐出口の外部の上方に吐出方向に傾斜させた部材40を設けている。この場合、流れを転向させることは可能であるが、部材40がない場合には、ダクト内の流れ方向の成分を持って吐出する流れを、部材40に衝突させ、押し返すことで吐出する流れを転向させることになるため、部材40の近傍に縮流が生じる。したがって、図10に示す方式も縮流の影響で第2の吐出口33に比べて圧力損失は大きくなる。
図17は、図13に示すように吐出口の外部の上方に吐出方向に傾斜させた部材40を設けた場合の流れを、数値解析(二次元モデル)により可視化したものである。図10に示す寸法記号に対応して、W=25mm,H=700mm,H1=10mm,H2=10mm,L=10mm,α=110゜として、ダクト入口に流速0.5m/sの一様流を与えて流れ場を解析した。図17に示すように吐出口からの吐出流れは、部材40によって転向され、ダクト内流れ方向と逆向きの速度成分を持って吐出されていることがわかるが、図17の解析モデルにおける圧力損失は3.94Paであり、図13に示す第2の吐出口33の圧力損失2.52Paに比べて圧力損失が大きくなっていることがわかる。
一方、実施例1を示した図8は、第1の吐出口34を形成する手段として、風向転向リブ38を第1の吐出口34に対して上流側(下側)のダクト内部に設けたものである。
図14は第1の吐出口34を形成する手段として、風向転向リブ38を第1の吐出口34に対して上流側(下側)のダクト内部に設けた場合の流れを数値解析(二次元モデル)により可視化したものである。図8に示す寸法記号に対応させて、W=25mm,H=700mm,H1=10mm,H2=10mm,L1=7.5mmとして、ダクト入口に流速0.5m/sの一様流を与えて流れ場を解析した。図14に示すように吐出口からの吐出流れは、風向転向リブ38によって転向され、ダクト内流れ方向と逆向きの速度成分を持って吐出されていることがわかる。図14の解析モデルにおける圧力損失は2.28Paであり、図9(図16),図10(図17)に示す手段に比べて圧力損失が小さく、さらに、図13に示す第2の吐出口33の圧力損失2.52Paに比べて圧力損失が同等以下になっていることがわかる。この理由を以下で説明する。
図15は、図14に示す流れ場の圧力分布(静圧分布)を表す図である。図15に示すように、冷気は風向転向リブ38に当たって剥離する。そのため、図8中に破線で囲んだ領域はダクト内の圧力に対して圧力の低い負圧領域となる。したがって、ダクト内部の第1の吐出口34近傍の流れは下向きの力を受ける。この力によって、図14に示すよう、冷気はダクト内の流れ方向と逆向きに転向されて吐出される。この風向転向手段、図9あるいは図10に示す方式のように、流れを部材に衝突させることで転向させるのではないことから、強い縮流は伴わない。よって、図9あるいは図10に示す方式より圧力損失は小さい。さらに、流れをダクト内流れ方向と逆向きに転向しているにも関わらず、図7,図13に示す第2の向吐出口33において生じる圧力損失に対して、同等以下に抑えることができる。
これは、図7に示す第2の吐出口33では、流れは図7中に示すa,b(吐出口の端部)で剥離し、吐出される。a−b間寸法、すなわち吐出口開口高さ寸法H1に応じた縮流(Hc)が生じる。図8の第1の吐出口34では、風向転向リブ38のために、流れは図8中に示すa′(風向転向リブ38のダクト内の端部),bで剥離するため、見かけ上、図7に示す吐出口開口高さ寸法H1より大きい寸法H1′の開口から吐出することになる。したがって、縮流もa′とbの間の距離であるH1′に応じて生じるため、縮流はHc′程度となり、第2の吐出口33より縮流の度合いが小さい(風速が小さい)。よって、風向転向リブ38自体による圧力損失の増加分を、縮流の度合いを小さく抑えられる効果が打ち消すことになり、結果として、第2の吐出口33に比べて、第1の吐出口34の圧力損失を同等以下に抑えることができる。
以上、第1の吐出口34を、風向転向リブ38を設けることによって形成すると、圧力損失を抑えて流れを転向できることを説明した。一方、従来の吐出口には、図11に示す参考例4のように、吐出口の内側に吐出口補強リブ42,42′を設けたものがある。図11に示すように、従来の吐出口補強リブ42,42′は、吐出口の上部と下部に、同等のダクト内への突出長さを有するように設けられている。この場合、上流側の補強リブ42で剥離した流れが、下向きに押し返されることを、下流側のリブ42′が遮るたことで逆向に吐出口される。
図18は、図11のように従来の吐出口補強リブ42を備えた吐出口まわりの流れを数値解析(二次元モデル)により可視化したものである。図11に示す寸法記号において、W=25mm,H=700mm,H1=10mm,H2=10mm,L=2.5mmとして、ダクト入口に流速0.5m/sの一様流を与えて流れ場を解析した。図18に示すように、吐出口からの吐出流れは、ダクト内流れ方向と同じ向きの速度成分を持って吐出されていることがわかる。図18の解析モデルにおける圧力損失は2.85Paである。
一方、図12は、実施例2における冷蔵庫の第1の吐出口34の構成を示している。図12に示すように、実施例2の冷蔵庫の第1の吐出口34は、下流側(吐出口の上部で、且つダクト内)に高さ寸法がL2の吐出口補強リブ42を備え、上流側(吐出口の下部で、且つダクト内)に高さ寸法がL1の風向転向リブ38を備えている。吐出口補強リブ42の高さ寸法L2より風向転向リブ38の高さ寸法L1を長くとることによって、上流側の風向転向リブ38で剥離した流れが下向きに押し返される領域を確保できる。
図19は、実施例2の冷蔵庫の第1の吐出口34まわりの流れを数値解析(二次元モデル)により可視化したものである。図12に示す寸法記号において、W=25mm,H=700mm,H1=10mm,H2=10mm,L1=10mm,L2=2.5mmとして、ダクト入口に流速0.5m/sの一様流を与えて流れ場を解析した。図19に示すように吐出口からの吐出流れは、風向転向リブ38によって転向されている。図19の解析モデルにおける圧力損失は2.54Paであり、図18に示す従来の吐出口補強リブ42を備えた第2の吐出口33における圧力損失2.85Paに比べて、圧力損失が同等以下になっていることがわかる。また、図13に示す補強リブを備えない第2の吐出口33の圧力損失2.52Paと比較しても、同等の圧力損失となっており、風向転向リブ34によって第1の吐出口34を形成することで、圧力損失の増加を抑えて流れをダクト内流れ方向と逆向きに転向できることがわかる。図11に示す従来の吐出口補強リブ42を備えた吐出口では、図11中に示すa,bで流れが剥離して吐出される。これに対して、図12に示す実施例2の第1の吐出口34では、図12中に示すa′,bで流れが剥離して吐出されるので、図11に示す吐出口開口高さ寸法H1より大きい寸法H1′(a′とbの間の距離)の開口から吐出することになり縮流が抑えられる。
尚、第1の吐出口34を風向転向リブ38を設けることによって形成すると、圧力損失を抑えて流れを転向できることを説明したが、図8あるいは図12に示す風向転向リブ38の長さ寸法L1を大きくとりすぎると、風向転向リブ38を設けることによる圧力損失の増加が顕著になる。これは、風向転向リブ38により図8及び図12中に示す寸法A(=W−L1)が小さくなるため、この領域を通過する風速が大きくなり、結果として圧力損失が大きくなる。したがって、第1の吐出口34の吐出開口高さ寸法H1における平均風速よりも、Aにおける平均風速が大きくならないように配慮する必要がある。すなわち、損失の増加を極力抑えて第1の吐出口を形成するためには、H1<Aとする必要がある。本実施例の冷蔵庫の第1の吐出口34では、H1=10mm,A(=W−L1)=15mmでありH1<Aを満足している。
以上のように、本発明の実施例の冷蔵庫は、冷蔵室送風ダクト11に第2の吐出口33と第1の吐出口34を備えている。これにより、冷蔵室送風ダクト11から遠い扉ポケット32に収納された食品と、冷蔵室送風ダクト11から近い棚36の上に設置された食品の両方を素早く冷却することができるので、使い勝手を向上することができる。さらに、食品が設置できない冷蔵室天井面2aや、冷蔵庫2c等を過剰に冷却することが抑えられ、省エネ性に優れた冷蔵庫となる。
また、最上段の棚36A,冷蔵室背面2d,側面2cにて区画形成された上の収納スペース(スペース1)に冷気を吐出する吐出口として、第2の吐出口33aと第1の吐出口34aの両方を備えている。これにより、最上段の扉ポケット32に収納された食品30と最上段の棚36上に設置された食品37をともに素早く冷却できる。
また、最上段の棚36Aの上の収納スペース(スペース1)に冷気を吐出する吐出口として、第2の吐出口33aと第1の吐出口34aの両方を備えており、このうち、第2の吐出口33は、冷蔵室天井面2bの上方に基板31が設置されている領域の中心付近には直接吐出されない。これにより、基板31の影響による熱損失を抑えることができ、省エネ性に優れた冷蔵庫となる。
なお、スペース1に限らず、図3のように各棚36で区画形成されるスペースに対応するように、吐出口33a〜33cが設けられている。これにより、各棚36によって冷気流れが阻害されるおそれがなく、大容量の冷蔵室の各棚36に設置した貯蔵物を効率よく冷却できる。したがって、省エネ性に優れた冷蔵庫にできる。
また、単一の冷蔵室送風ダクト11を冷蔵室背面2dの中央付近の略鉛直方向に設けている。これにより、冷蔵室背面2dに複数の分岐した送風ダクトを設ける方式に比べて、低温冷気が通るダクト11が冷蔵室背面2dの断熱壁を介して庫外と熱交換することによる熱損失を抑えることができ、省エネ性に優れた冷蔵庫となる。
本発明の実施例の冷蔵庫は、冷蔵室送風ダクト11を前方から見た場合、冷気が略左右対称に吐出されるように第2の吐出口33と第1の吐出口34が設けられている。これにより、庫内の容積が大きくても冷蔵室2内に均等に冷気を送ることができるため、温度ムラを抑えた冷蔵庫を提供できる。
また、冷蔵室背面2dにアルミパネル35を備えている。これにより、冷気が届き難い冷蔵室背面2dの近傍の領域の冷却を補助でき、温度ムラを抑えた冷蔵庫を提供することができる。
また、第1の吐出口34を形成する風向転向手段として、第1の吐出口34の開口位置に対して、上流側、且つ冷蔵室送風ダクト11の内部に風向転向リブを設けている。これにより、圧力損失の増加を抑えて風向を転向することができるため、所定の風量を送風するためのエネルギを小さくでき、熱損失を低減させて省エネ性に優れた冷蔵庫を提供することができる。
また、第1の向吐出口34を形成する風向転向手段として、第1の吐出口34の開口位置に対して、上流側、且つ冷蔵室送風ダクト11の内部に風向転向リブを設け、下流側、且つ冷蔵室送風ダクト11の内部に吐出口補強リブを設けており、風向転向リブの高さ寸法L1と補強リブの高さ寸法L2の関係を、L1>L2としている。これにより、吐出口の強度を確保できると同時に、圧力損失の増加を抑えて風向を転向することができるため、熱損失を低減させて省エネ性に優れた冷蔵庫を提供することができる。
また、第1の吐出口34を形成する風向転向手段である風向転向リブ38の高さL1と、ダクト行Wと、吐出開口高さH1の関係を、H1<(W−L1)としている。これにより、圧力損失の増加を抑えて風向を転向することができるため、所定の風量を送風するためのエネルギを小さくでき、熱損失を低減させて省エネ性に優れた冷蔵庫を提供することができる。
なお、第1の吐出口34を形成する手段として、風向転向リブ38を用いたが、図7及び図11に示す吐出口(第2の吐出口33)の、上流側の剥離点(図7及び図11中に示すa部)を下流側の剥離点(図7及び図11中に示すb部)に対してダクト内部に移動させる(図8及び図12のa′部)ことができる部材であれば良い。例え、別の実施例3の形態として、図20に示すように、ダクト内に部材43を設置して、部材43のエッジ部aで流れを剥離させる方式としてもよい。
また、本実施例で示した数値解析では、ダクト内流速を0.5m/sとしたが、本発明の作用効果はこの風速に限定されるものではなく、風速を変化させた場合であっても、同様の作用効果を得ることができる。