JP5317100B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
小型燃料電池の場合、補器を使用して燃料をセルに供給して発電する場合が多く補器の動力が必要なため電池が大きくなりがちである。本発明では燃料供給のための補機動力を必要とせず、比較的簡便な構造にて燃料を供給することが可能であり、小型で高出力な燃料電池を提供する。
(燃料電池)
本発明に係る燃料電池24を図1、7、9を用いて説明する。
図1に示される様に燃料電池セルは、カソードガス拡散層2、カソード触媒層(図示せず)、固体電解質膜1、アノード触媒層(図示せず)およびアノードガス拡散層3を前記の順で具備し、アノードガス拡散層3に接合された流路板6等から構成される。
圧力損失は、例えば、図23に示す様に燃料供給口および燃料排出口のそれぞれにおいて供給口の流動抵抗制御物(細孔径の小さいフィルター25)および排出口の流動抵抗制御物(細孔径の大きなフィルター26)を挟んで前後に小孔を開け(たとえば、セル側は流路板に小孔33、外側は、燃料供給口に接続される管あるいは燃料排出口に接続される管)に小孔33を開け)それぞれに圧力計29,30,31,32を接続して静圧を測定して、圧力計29と圧力計30の圧力差(1)と圧力計31と圧力計32の圧力差(2)から(圧力損失(1)/圧力損失(2))圧力損失比を計算する。なお、この一例には、流動抵抗制御物としてフィルターを例に記載しているが、フィルター以外の多孔体、繊維束、流路突起等の流動抵抗制御物も同様に使用することができる。
これらは、圧力損失を測定するものであり、本発明の燃料電池の構造物に含まれてもかまわないが、燃料電池の小型化のためには圧力損失差の大小関係が本発明の範囲になるようにあらかじめ作られた流動抵抗物の組み合わせにより作製されてもかまわない。特に圧力損失差を測定できる構造の有無により限定されるものではない。
本発明の燃料電池は、図3〜図6に示す様に1以上の燃料電池セルから構成される燃料電池層22aまたは22bを2以上積層してなる燃料電池スタック23a,23bを使用することができる。
固体電解質膜1は、スルホン基、リン酸基等の強酸基や、カルボキシル基等の弱酸基など極性基を有する材料から構成される。例えば、パーフルオロルスルホン酸のようなスルホン酸基を有するフッ素系樹脂やスルホン酸基を有する炭化水素系樹脂などを使用しても良い。例えば、ナフィオン(登録商標)、Nafion117(デュポン社製商品名)を用いることができる。
前記固体電解質膜1は、一方の表面にカソード触媒層、他方の表面にアノード触媒層が接合されている。カソード触媒層、アノード触媒層としては、白金族元素の単体金属粒子(Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等)や白金族元素を含有する合金粒子を炭素系粉末担体に担持させたものが使用できる。例えば、カソード触媒層は、白金粒子を炭素系粉末担体に担持させたもの、アノード触媒層は、一酸化炭素の被毒による性能の低下が抑制されやすいPt−Ru合金の粒子を炭素系粉末担体に担持させたものが使用可能であるが、これに限定されるものではない。
アノードガス拡散層3は、燃料に対して耐薬品性を有する材料で多孔質構造を有する。アノードガス拡散層3に好適な多孔質材料としては、セラミックス、カーボンペーパー、カーボン繊維不織布、フッ素樹脂、ポリプロピレン等の多孔質材料が使用できる。
カソードガス拡散層2は、空気の供給のためカソード極で生成した水が、カソード極のカソード触媒層と導電性カーボンとプロトン伝導性材料からなる三相界面上を覆いかぶさない様に撥水性のマイクロポーラスレイヤー(Micro Porus Layer:以下MPL)が形成されている。これにより、水と空気の交換をスムーズに実施し安定した反応が進行しやすくなる。
アノード集電体5およびカソード集電体4は、導電性を有する材料からなる。例えば、Au、Ni、SUS304、SUS316等の導電性を有し、耐蝕性の高い金属材料から構成されるのが望ましいが、これらの材料に限定されるものではない。また、その構造は、燃料、空気の導入や二酸化炭素、生成水分の排出が可能なように、金属メッシュ、エキスパンドメタル、金属不織布、三次元網目構造の発泡金属等からなる。また、アノード集電体5、カソード集電体4双方ともその表面に、高導電性でかつ高耐蝕性の金属膜、たとえば、Au膜等を形成することが好ましい。また、流路板6やアノードガス拡散層3が導電性を有する場合、アノード集電体として流路板6を使用してもかまわない。
流路板6はAu、Ni、SUS304、SUS316などの金属(無機物)およびプラスチック(有機物)などが使用できるがこれらに限定されるものではない。但し、材料は、燃料に対する耐薬品性や耐食性を有している必要がある。流路板6の厚さは、セルの体積を減らしセル出力密度を向上させるため、数百ミクロン程度の厚さの流路が望ましい。そして、金属の流路板の場合は、表面を高温酸化やプラズマ処理等で親水化処理をすることにより、燃料供給口9に供給された燃料を毛管力にて流路19および拡散層内部に吸い上げやすくなる。
Kelvin式:h=2×γ×cosθ÷(g×ρ×r)
(式中、高さ:h[m]、表面張力:γ[N/m]、接触角:θ、重力加速度:g[m/s2]、密度:ρ[kg/m3]、半径:r[m])
仮に上記のように流路板6やアノードガス拡散層3を親水化処理し、接触角がゼロ、流体に水物性(希薄燃料のため)を仮定すると図17に示すようにセル高さにより流路深さを変えることで流路への燃料供給が可能となる。毛管力による燃料の吸水や液泡の飛散により液を循環させるため流路深さは極端に深くても極端に浅くても望ましくない。そして、流路深さが深くなると燃料排出口において液泡がはじけて液を排出する量が減少する。
流路19は燃料供給口9の断面積が燃料排出口10の断面積に比較して小さい形状が望ましい。あるいは、流路板6に近接して燃料供給口9と燃料排出口10に断面積の異なる絞り部15(例えばオリフィス、接着剤等)を設けてもよい。これにより燃料供給口9から排出される二酸化炭素の量を抑制できる。これは、燃料供給口9からの生成二酸化炭素17の排出を抑制し、燃料排出口10からの二酸化炭素及び燃料の排出を促進し、燃料供給口9からの新鮮な燃料をアノードガス拡散層2、アノード触媒層に供給する効果を高める。但し、極端に絞り込むと燃料供給口9からの二酸化炭素の排出量が低下するが、同時に新鮮な燃料の流路内への流れも悪くなり、流路19内への燃料の流入抵抗となるため、適度な絞りこみの状態が望ましい。
流路板6の燃料排出口10に接続される燃料輸送管8は、できるだ使用燃料に対する耐薬品性があると同時に耐圧性があることが望ましい。燃料貯蔵槽11から燃料電池セル21あるいはスタックの燃料供給口9まではできるだけ断面積が広い燃料輸送管8が適している。
気液分離膜は、親水性の水、メタノールが分離されるように撥水性の多孔体などが使用できる。例えば、PTFE多孔体(フロンケミカル社製)、ゴアテックス(ジャパンゴアテックス(株)社製、登録商標)、バーサポア(日本ポール社製、登録商標)、スーポア(日本ポール(株)社製、登録商標)などが使用できる。また、気液分離膜を介して気液分離部14が接続されており、排出燃料中の液体燃料および水だけを燃料貯蔵槽11に戻す。
生成二酸化炭素は、排気速度が調整可能な弁13から排出される。
燃料貯蔵槽11の形状等は、特に限定されていない。但し、燃料貯蔵槽11の内表面は燃料16に対して耐薬品性を有し、燃料16に対して化学的、物理的に安定な材料からなる容器が望ましい。また、二酸化炭素の排出による圧力にて変形しない強度が必要であり、水や液体燃料の溶解、拡散の少ない材料であれば特には限定されない。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)などの高分子樹脂類やガラスや、アルミニウム、ステンレスといった金属類が使用できる。
燃料16には例えば、メタノールのように酸化されやすい物質を用いることが可能である。メタノール水溶液の濃度は、燃料のエネルギー密度の観点から100%に近い濃度の燃料が望まれるが、現状開発されている固体電解質膜の多くは、高濃度燃料を使用するとメタノールが固体電解質膜をクロスオーバーし発電効率を低下させる。また、電解質膜のプロトン伝導性が膜中の含水状態に大きく左右されるため3M程度の低濃度燃料濃度が比較的適している。燃料16は、例えばメタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジメチルエーテル、エタノール、エチレングリコール等を用いることができる。
(流路板中の燃料、二酸化炭素の移動現象)
流路19内の燃料16の移動現象を図7および図8(図7のA部の拡大図)に示す。
式:CH3OH+H2O→CO2+6H+6e-
により、アノード極の触媒層で二酸化炭素ガス17が発生し、流路板6の流路19中には燃料、発電後の燃料濃度が低下した燃料、生成二酸化炭素の気液が混合した状態になって存在している。流路板6の流路19内では、二酸化炭素ガス17が燃料とともに流動抵抗の低い燃料排出口10に移動し易く、燃料排出口10において一定の水泡の大きさ、圧に達すると燃料と二酸化炭素が飛散する。
さらに、生成した二酸化炭素17が燃料貯蔵槽11を介して排気されないため、排気二酸化炭素中に比較的濃度の高い燃料ガスの混入を防止でき、毒性物質である燃料の燃料電池系外への排出量を低減できる。そのため、排出ガス中の除去すべき燃料ガス量が減りシステムの簡便化、低コスト化がしやすくなる。
燃料電池系内における燃料供給を促進する動作を図9に示す。燃料電池の燃料排出口10より間欠的に排出された二酸化炭素が排出された瞬間、弁13の排出抵抗が大きいために、燃料貯蔵槽11と燃料排出口10と燃料貯蔵槽11を接続する燃料輸送管8の間に一瞬、圧がかかり前記二酸化炭素が弁13から徐々に排出され少しずつ大気圧に近づく。その圧力変動により燃料貯蔵槽11内の燃料16の液面の上下運動が生じ、その結果として、流路板6の燃料供給口9において流路板6への燃料16の出入りが生じ強制対流による新燃料が流路19中に供給される。
(1)発電により流路板6の流路19中における二酸化炭素17の圧力は徐々に上昇する。
(カソード集電体、カソードガス拡散層、カソード触媒層の接合)
カソード集電体4、カソードガス拡散層2、カソード触媒層の接合は、まず、カソード集電体4とカソードガス拡散層2のマイクロポーラスレイヤーを常温プレスにて接合する(カソード集電体−カソードガス拡散層接合体)。次に固体電解質膜1のカソード触媒層とカソード集電体−カソードガス拡散層接合体をホットプレス等により接合する。
アノード集電体5、アノードガス拡散層3、アノード触媒層の接合は、まず、アノード集電体4とアノードガス拡散層3が接合される。アノードガス拡散層3のマイクロポーラスレイヤー(MPL)にアノード集電体5を常温プレスにて接合した後、固体電解質膜1のアノード触媒層とホットプレス等により接合してもかまわない。但し、アノード極は親水性が望ましいためMPLなしのアノードガス拡散層3を使用する場合は、親水性処理したアノードガス拡散層3にプロトン伝導性の溶液、例えばナフィオン溶液をスクリーン印刷等にて塗布し乾燥させた後、アノード集電体5とホットプレスした後に固体電解質膜1のアノード触媒層にホットプレスにて接合する。
上記の集電体とガス拡散層と固体電解質膜が一体化された集電極付き膜電極接合体(MEA)は、燃料を供給できる構造を構成するため流路板6に接続され、燃料供給口9、燃料排出口10が設けられた燃料電池セルを構成する。アノードガス拡散層3と流路板6の接合は、流路の燃料が直接流れない土手部に燃料に対して耐薬品性を有する接着剤をスポットあるいは全面に塗布した後接合される。その後、固体電解質膜1の周囲と流路板6を封止剤18にて接合する。これによりガス拡散と流路板の間の剥離および燃料の外部への漏れを防止できる。
前記の燃料電池セルの燃料排出口10を燃料輸送管を介して気液分離部14、燃料貯蔵槽11に接続する。気液分離部14は、弁13に接続する。また、前記の燃料電池セルの燃料供給口9は燃料輸送管を介して燃料貯蔵槽11に接続し、本発明の燃料電池を得る。
固体電解質膜(ナフィオン117:デュポン製)のアノード(燃料)極側に炭素系粉末担体に白金とルテニウムの混合金属の微粒子を分散担持したアノード触媒層を、そしてカソード(空気)側に炭素系担体に白金微粒子を分散担持したカソード触媒層を形成した。次にアノードガス拡散層(31AA:SGLカーボン製)を約67%硝酸で煮沸し親水化処理し、20wt%ナフィオン水溶液をスクリーン印刷した後に、70ミクロン線径の金メッシュをホットプレスにて接合した。一方、カソードガス拡散層(GDL25BC:SGLカーボン製)に70ミクロン線径の金メッシュを常温にてプレスした。そして、上記、集電体付きアノードガス拡散層、触媒接合固体電解質膜、集電体付きカソードガス拡散層を130℃でホットプレスにて接合した。そして、幅20mm、長さ54mm、厚み300μmのステンレス板に深さ200μm、幅1mmの流路を1.5mmピッチにて13本設けた流路板を空気雰囲気下にて高温状態で2時間放置した。その後、上記の集電極が一体された膜電極接合体(MEA)をエポキシ系の接着剤を使用して接合し、更に固体電解質膜とステンレス製の流路板の周囲を接着剤にて封止した。
実施例2として、実施例1と同様のセルを使用し、異なる点として燃料排出口を燃料貯蔵槽に接続していない(排気系が完全に大気開放状態)燃料電池を作製した(図12)。実施例1と同条件にて連続発電試験を実施した。結果、図11の実施例2に示すように15分程度で出力が低下してきた。
比較例1として、実施例1と異なる点として流路板に絞り部(流動抵抗)を付けず(流路板中の燃料供給口と燃料排出口の流路の断面積が等しい)に、そして燃料排出口を燃料貯蔵槽に接続していない(排気系が完全に大気開放状態)燃料電池を作製した(図13)。実施例1と同条件にて連続発電試験を実施した。結果、図11の比較例1に示すように10分程度で出力が低下してきた。
次に実施例1において気液分離部を介して排出する排気口において0.6mm系の穴3個を大きな穴に変えて、実施例1と同様の評価をした結果、排気二酸化炭素の排出圧による燃料貯蔵槽の燃料の大きな液面の動きが生じず、定電流付加による連続発電試験において出力低下が多少早かった。
Claims (2)
- カソードガス拡散層、カソード触媒層、固体電解質膜、アノード触媒層およびアノードガス拡散層を前記の順で有し、
前記アノードガス拡散層に燃料供給口と燃料排出口を有する燃料流路が形成されたアノード流路板が接合され、
前記燃料流路の燃料供給口における断面積が前記燃料排出口における断面積より小さく、
前記燃料排出口が気液分離部と燃料貯蔵槽に前記の順に連結され、かつ
前記燃料貯蔵槽が前記燃料供給口に連結されてなる燃料電池であって、
前記気液分離部に連結された弁は、燃料電池の発電により生成する二酸化炭素の排出周期内で前記燃料排出口と前記燃料貯蔵槽とを接続する燃料輸送管内部が大気圧になるように前記弁の開口度が調節される、燃料電池。 - カソードガス拡散層、カソード触媒層、固体電解質膜、アノード触媒層およびアノードガス拡散層を前記の順で有し、
前記アノードガス拡散層に燃料供給口と燃料排出口を有する燃料流路が形成されたアノード流路板が接合され、
前記燃料流路の燃料供給口の圧力損失が前記燃料排出口の圧力損失より大きく、
前記燃料排出口が気液分離部と燃料貯蔵槽に前記の順に連結され、かつ
前記燃料貯蔵槽が前記燃料供給口に連結されてなる燃料電池であって、
前記気液分離部に連結された弁は、燃料電池の発電により生成する二酸化炭素の排出周期内で前記燃料排出口と前記燃料貯蔵槽とを接続する燃料輸送管内部が大気圧になるように前記弁の開口度が調節される、燃料電池。
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