JP2009164009A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 気泡による燃料通路の目詰まりを緩和し、燃料排出口へ燃料を安定供給することができる燃料電池を提供する。
【解決手段】 膜電極接合体と、燃料分配機構と、燃料収容部と、燃料収容部を燃料分配機構に接続する流路とを具備する燃料電池であって、前記燃料分配機構は、燃料収容部から供給流路を介して液体燃料が流入する燃料注入口31と、燃料極と対向するように開口する複数の燃料排出口27aと、前記燃料注入口31から前記燃料排出口27aに燃料を流通させるために連通する燃料通路20-27を有し、前記燃料通路20-27は、その少なくとも一部に前記燃料通路を2本以上に分散後、合流する分散通路を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 膜電極接合体と、燃料分配機構と、燃料収容部と、燃料収容部を燃料分配機構に接続する流路とを具備する燃料電池であって、前記燃料分配機構は、燃料収容部から供給流路を介して液体燃料が流入する燃料注入口31と、燃料極と対向するように開口する複数の燃料排出口27aと、前記燃料注入口31から前記燃料排出口27aに燃料を流通させるために連通する燃料通路20-27を有し、前記燃料通路20-27は、その少なくとも一部に前記燃料通路を2本以上に分散後、合流する分散通路を有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、携帯機器の動作に有効な燃料電池に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の各種携帯電子機器は、半導体技術の発達と共に小型化され、燃料電池をこれらの携帯電子機器用の電源に用いることが試みられている。燃料電池は、燃料と酸化剤を供給するだけで発電することができ、燃料のみを補充・交換すれば連続して発電できるという利点を有している。このため、小型化ができれば携帯電子機器の作動に極めて有利なシステムといえる。特に直接メタノール型燃料電池(DMFC;Direct Methanol Fuel Cell)は、エネルギー密度の高いメタノールを燃料に用い、メタノールから電極触媒上で直接電流を取り出せるため、小型化が可能であり、また燃料の取り扱いも水素ガス燃料に比べて容易なことから小型電子機器用電源として有望であることから、携帯電話、携帯オーディオ、携帯ゲーム機、ノートパソコンなどのコードレス携帯電子機器に最適な電源としてその実用化が期待されている。
DMFCの燃料の供給方法としては、液体燃料を気化してからブロア等で燃料電池内に送り込む気体供給型DMFC、液体燃料をそのままポンプ等で燃料電池内に送り込む液体供給型DMFC、および液体燃料をセル内で気化させる内部気化型DMFC等が知られている。
このうち内部気化型DMFCは、例えば特許文献1および特許文献2に記載されているように、燃料極(アノード)、空気極(カソード)、アノードとカソードとの間に挟持されたプロトン伝導性の電解質膜からなる膜電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)と、液体燃料を収容する燃料室と、アノードと燃料室との間に配置された気化室と、燃料室と気化室との間を仕切る気液分離膜とを備えている。
内部気化型DMFCでは、燃料室に注入された液体燃料が気化した燃料ガス(メタノール蒸気)は、気液分離膜を透過し、気化室中を拡散してアノードに供給される。アノードでは、下式(1)の反応に従って、燃料ガスと水とが電気化学反応を生じて二酸化炭素(CO2)とプロトン(H+;水素イオンともいう)と電子(e−)を生じ、アノードで生じたプロトンはプロトン伝導性膜を透過してカソードに拡散する。カソードでは下式(2)の反応に従って、大気中の酸素(O2)と、プロトン伝導性膜を透過してきたプロトンと、アノードから外部回路を通ってカソードに流れてきた電子とが電気化学反応を生じて水(H2O)を生成する。カソードで生成した水は、一部がプロトン伝導性膜を通してアノードに拡散し、式(1)の反応に使われる。このようにして、外部から水を補給することなくアノードとカソードにおいて継続して反応を生じさせることができる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− …(1)
O2+4H++4e− → 2H2O …(2)
このような燃料収容室から気化した燃料を直接MEAに供給する場合、燃料電池の出力の制御性を高めることが重要となるが、現状の内部気化型DMFCでは必ずしも十分な出力制御性は得られていない。
O2+4H++4e− → 2H2O …(2)
このような燃料収容室から気化した燃料を直接MEAに供給する場合、燃料電池の出力の制御性を高めることが重要となるが、現状の内部気化型DMFCでは必ずしも十分な出力制御性は得られていない。
一方、DMFCのMEAと燃料収容部とを流路を介して接続することが検討されている(特許文献3,4参照)。燃料収容部から供給された液体燃料をMEAに流路を介して供給することによって、流路の形状や径などに基づいて液体燃料の供給量を調整することができる。ただし、流路から液体燃料の供給構造によっては、MEAに対する燃料の供給状態が不均一になり、燃料電池の出力が低下する恐れがある。
特許第3413111号公報
国際公開第2005/112172号パンフレット
特表2005−518646号公報
米国特許出願公開番号2006/0029851号公報
本発明者らは、従来の内部気化型DMFCの出力の制御性を改善するため、さらにはMEAと燃料収容部とを流路を介して接続したDMFCのMEAに対する燃料の供給の均一性を意図して、MEAのアノード側に配置され、アノードの複数箇所に対して燃料を分配供給する燃料分配機構を配置し、燃料収容部を燃料分配機構に接続する供給流路を有する構造を検討している。
このような燃料分配機構は、燃料収容部から供給流路を介して液体燃料が流入する燃料注入口と、アノードと対向するように開口し、アノードに向けて燃料を排出する複数の燃料排出口と、燃料注入口から燃料排出口に燃料を通過させるために連通する燃料通路を有している。
この燃料通路は、燃料注入口から燃料排出口の間で分岐を繰り返し、分岐前後においてその相当直径が段階的に減少した構造を有しており、その相当直径は極めて細い。
このため、燃料収容部から燃料分配機構間の流路との継ぎ目や流路間に配置された燃料を供給するためのポンプなどから空気などが流路内に侵入し気泡となり、燃料分配機構の燃料通路内に侵入すると、燃料通路が気泡により目詰まりを発生させる原因となる。目詰まりを起こした燃料通路は、それ以降、燃料排出口に液体燃料が流通せず、MEAへ燃料が供給されなくなり、その結果、MEAに対する燃料の供給状態が不均一になり、燃料電池の出力が低下する恐れがある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、気泡が燃料通路内に侵入した場合であっても、気泡による燃料通路の目詰まりを緩和し、燃料排出口へ燃料を安定供給することができる燃料電池を提供することを目的とする。
本発明に係る燃料電池は、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極との間に挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の燃料極側に配置され、前記燃料極の複数箇所に対して燃料を分配供給する燃料分配機構と、液体燃料を収容する燃料収容部と、前記燃料収容部を前記燃料分配機構に接続する流路と、を具備する燃料電池であって、前記燃料分配機構は、前記燃料収容部から前記流路を介して液体燃料が流入する燃料注入口と、前記燃料極と対向するように開口し、前記燃料極に向けて燃料を排出する複数の燃料排出口と、前記燃料注入口から前記燃料排出口に燃料を流通させるために連通する燃料通路を有し、前記燃料通路は、その少なくとも一部に前記燃料通路を2本以上に分散後、合流する分散通路、を有することを特徴とする。
上記構成により、燃料通路は、1本ではなく2本以上に分散、合流する分散通路を有しているため、気泡が燃料通路内に侵入した場合であっても、仮に一つの分散通路内で気泡詰まりを生じても、他の分散通路で燃料と流通させることが可能であるため、気泡による燃料通路の目詰まりを緩和し、燃料排出口へ燃料を安定供給することができる。
特に、燃料通路を複数回分岐し、複数の燃料排出口に供給する場合には、その分岐間に分散通路を配置することが好ましい。
本発明において、複数の燃料通路は、前記燃料注入口から前記燃料排出口の間で少なくとも1回分岐し、前記分岐前後においてその相当直径が段階的に減少しており、その末端が前記燃料排出口に連通することが好ましい。
相当直径は次のように定義される。
「相当直径」とは、円形以外の形状(例えば矩形)を円形(真円)の直径に換算した指数をいい、下式(1)の通り相当直径deは燃料流路の断面積(a×b)を流路断面の周長(2a+2b)で割ったものを4倍することにより与えられる。
すなわち、流路の断面サイズaとbを下式(1)に代入することにより相当直径deを算出することができる。例えば、高さaが50μm、幅bが25μmの流路では、その相当直径deは33.3となる。
de=4ab/(2a+2b) …(1)
なお、燃料通路が複数の分散通路で構成されている場合には、それら分散通路を合計した断面積で相当直径を求める。
なお、燃料通路が複数の分散通路で構成されている場合には、それら分散通路を合計した断面積で相当直径を求める。
本発明において、分散通路は、燃料注入口から燃料排出口に向かうに従って分散通路の間隔が大きくなるように形成されていることが好ましい。これにより燃料通路の上流側(燃料注入口側)では圧力損失を小さく抑えることができ、下流側(燃料排出口側)では多数の流路の末端に至るまで燃料をできるだけ均等に送ることができ、多数の燃料排出口から燃料が均一に分散・供給されるようになる。
本発明において、分散通路は、縦横比が1に近似する矩形の流路断面を有することが好ましい。矩形断面流路の縦横比を1に近似させると、流路抵抗が小さくなり、より小さい送液力で燃料を末端まで分散・送給することができるようになるからである。
本発明において、燃料通路は、前記燃料排出口の近傍では毛管力を主体として燃料が送られ、かつ毛管抵抗によって送液量が制御されるような相当直径を有することが好ましい。ここで「毛管力」とは、毛細管現象における表面張力による界面エネルギを主体とする液体の駆動力をいう。また、「毛管抵抗」とは、流体と内壁との間に生じる流体摩擦による毛管力の減少(エネルギ損失)をいう。毛管力とポンプ駆動力とを組合せて液体燃料を膜電極接合体に供給・分配する所謂セミパッシブ方式の燃料分配機構では、燃料排出口の数が増加するにしたがって、ポンプに掛かる負荷が指数関数的に増加するため、毛管力の果たす役割が相対的に大きくなるからである。
本発明において、燃料通路は、液体燃料がレイノルズ数(Rec)2000以下の層流状態で流れるように形成されていることが好ましい。これは、燃料通路内の燃料の流れが層流から乱流に変わる臨界レイノルズ数(Rec)が約2000〜3000の範囲にあり、層流の範囲で燃料を流通させるためである。
本発明の燃料電池に使用される液体燃料は、燃料濃度が80モル%を超える高濃度メタノール水溶液または純メタノール液であることが望ましい。燃料濃度が80モル%以下では出力が低下しやすく、液体燃料の供給頻度が増加するからである。
本発明によれば、液体燃料は、気泡が燃料通路内に侵入した場合であっても、仮に一つの分散通路内で気泡詰まりを生じても、他の分散通路で燃料と流通させることが可能であるため、気泡による燃料通路の目詰まりを緩和し、燃料排出口へ燃料を安定供給することができる。これによりバラツキの少ない安定した出力が得られるようになり、携帯電話、携帯オーディオ、携帯ゲーム機、ノートパソコンなどのコードレス携帯電子機器などに優れた小型の電源を提供することができる。
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
先ず、燃料電池の全体概要について図1を参照して説明する。
燃料電池1は、外側がカバープレート18と燃料分配機構3の分配板30とで覆われ、内部に膜電極接合体(MEA)2が収納されている。
MEA2は、燃料極としてのアノード13と、アノード13に所定の隙間を置いて対向配置された空気極としてのカソード16と、アノード13及びカソード16間に挟持された電解質膜17とを有している。
アノード13は、アノード触媒層11と、アノード触媒層11に積層されたアノードガス拡散層12とを有している。カソード16は、カソード触媒層14と、カソード触媒層14に積層されたカソードガス拡散層15とを有している。
アノード触媒層11は、アノードガス拡散層12を介して供給される燃料を酸化させ燃料から電子とプロトンとを取り出すものである。カソード触媒層14は、酸素を還元して、電子とアノード触媒層14において発生したプロトンとを反応させて水を生成するものである。
カバープレート18と燃料分配機構3とは、その間にMEA2を挟み込んでカバープレート18の端部を分配板30にかしめ加工および/またはネジ止めして一体化されている。MEA2の外周には一対のオーリング19が設けられ、カバープレート18とMEA2との間、および燃料分配機構3とMEA2との間がシールされ、内部の燃料が外部に漏れ出さないようにされている。カバープレート18には複数の通気孔(図示せず)開口し、MEA2の空気極(カソード)16側に酸化剤としての空気が供給されるようになっている。 MEA2は、例えば矩形状の複数の単電極(単位セル)を有する多極構造の発電要素である。複数の単電極は、ほぼ同一平面上に並んで配置され、図示しない空気極集電体(カソード導電層)および燃料極集電体(アノード導電層)により直列に電気接続されている。これら空気極集電体および燃料極集電体は、例えば、金、ニッケルなどの金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材などをそれぞれ使用することができる。 カソード16のカバープレート18側には保湿板(図示せず)が設けられ、カソード触媒層14において生成された水の一部を吸収して水の蒸散を抑制し、かつ、カソードガス拡散層15に空気を均一に導入することによりカソード触媒層14への空気の均一拡散を促す機能を有している。保湿板には好ましくは気孔率が例えば20〜60%の多孔性フィルムなどが用いられる。なお、空気導入のために、カバープレート18の主面に複数の通気孔(図示せず)が開口している。空気は、これらの通気孔を通って内部に入り、保湿板を透過してMEA2のカソード16に供給される。
アノード13およびカソード16に含有される触媒としては、例えば、白金族元素の単体金属(Pt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等)、白金族元素を含有する合金などを挙げることができる。アノード触媒には、メタノールや一酸化炭素に対する耐性の強いPt−Ru、カソード触媒には、白金を用いることが望ましいが、これに限定されるものでは無い。また、炭素材料のような導電性担持体を使用する担持触媒を使用しても、あるいは無担持触媒を使用してもよい。
電解質膜17は、アノード13において発生したプロトンをカソード16に輸送するためのものであり、電子伝導性を持たず、プロトンを輸送することが可能な材料により構成されている。例えば、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂(例えば、パーフルオロスルホン酸重合体)、スルホン酸基を有するハイドロカーボン系樹脂、タングステン酸やリンタングステン酸などがあげられるが、具体的には、デュポン社製のナフィオン膜(登録商標)、旭硝子社製のフレミオン膜(登録商標)、あるいは旭化成工業社製のアシプレックス膜(登録商標)などにより構成されている。なお、ポリパーフルオロスルホン酸系の樹脂膜以外にも、トリフルオロスチレン誘導体の共重合膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、芳香族ポリエーテルケトンスルホン酸膜、あるいは脂肪族炭化水素系樹脂獏などプロトンを輸送できる電解質膜17を用いるようにしてもよい。
MEA2のアノード13側には、図1に示すように燃料分配機構3が配置されている。この燃料分配機構3は、供給流路5を介して燃料収容部4に接続されている。燃料分配機構3には所定の燃料供給方式により燃料収容部4から供給流路5を介して液体燃料41が導入されるようになっている。燃料供給方式として純パッシブ方式またはセミパッシブ方式を採用することができる。図1に示す本実施形態の燃料電池1では毛管力のみを利用する純パッシブ方式としているが、毛管力とポンプ駆動力とを組み合わせたセミパッシブ方式を用いてもよい。セミパッシブ型の燃料電池は、燃料収容部4から膜電極接合体2に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部4に戻されることはない。セミパッシブ型の燃料電池は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、燃料電池は、燃料の供給にポンプを使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。このため、燃料電池は、上述したようにセミパッシブ方式と呼称される。なお、供給流路5は燃料分配機構3や燃料収容部4から独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構3と燃料収容部4とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料の流路であってもよい。
図2に示すように、燃料分配機構3は分配板30を備えている。分配板30は、単一の燃料注入口31と、アノード13に向けて燃料を排出する複数の燃料排出口27aと、燃料注入口31から前記燃料排出口に燃料を流通させるために連通する燃料通路20〜27を有する。燃料通路は、燃料注入口31に連通する導入通路20と、導入通路20に連通する導入分岐部21と、導入分岐部21から次々にシーケンシャルに分岐する第1〜第6の分岐通路22〜27とを有する。燃料注入口31は導入通路20の一端(始端部)側に連通している。導入通路20は、一様な径(例えば相当直径が0.05〜5mm)を有する矩形断面の細管からなり、これに続く通路21〜27に対して液体燃料を分配するヘッダとして機能するものである。なお、本実施形態では燃料注入口31を1つのみとしたが、2つ又は3つ又はそれ以上の燃料注入口から燃料分配機構3に燃料を注入することもできる。複数の燃料注入口から燃料を注入する場合は、MEA2の配置を考慮して各MEA2に対して燃料注入口を均等に配置することが好ましい。
導入通路20からは4本の導入分岐部21が分岐し、導入分岐部21の各々からは2本の第1の分岐通路22がそれぞれ分岐し、第1の分岐通路22の各々からは2本の第2の分岐通路23がそれぞれ分岐し、第2の分岐通路23の各々からは2本の第3の分岐通路24がそれぞれ分岐し、第3の分岐通路24の各々からは2本の第4の分岐通路25がそれぞれ分岐し、第4の分岐通路25の各々からは2本の第5の分岐通路26がそれぞれ分岐し、第5の分岐通路26の各々からは2本の第6の分岐通路27がそれぞれ分岐している。最後尾に位置する第6の分岐通路27は、総数が128本であり、各末端にて燃料排出口27aがそれぞれ開口している。これらの燃料排出口27aは、すべてMEA2の燃料極13に対向している。
導入分岐部21から第1の分岐通路22への分岐点、第1の分岐通路22から第2の分岐通路23への分岐点、第2の分岐通路23から第3の分岐通路24への分岐点、第3の分岐通路24から第4の分岐通路25への分岐点、第4の分岐通路25から第5の分岐通路26への分岐点、第5の分岐通路26から第6の分岐通路27への分岐点には、それぞれ燃料通路を複数の分散通路に分散させるためのバイパス孔39が開口している。これらのバイパス孔39は、例えば次に述べるように燃料分配機構3の分配板30の内部において階層化された通路21〜27を上下に互いに連通させ、多数の燃料排出口27aに対して燃料を均一に供給することに大いに寄与する。
次に、図3と図4を参照して燃料分配機構の分配板の詳細、とくに分散通路およびバイパス孔について詳しく説明する。
分配板30の内部には縦壁と横壁とで分散された多数の矩形断面の分散通路が形成されている。例えば図3の(a)に示すように、導入分岐部21となる分散通路は、上段二列の分散通路21a,21dと下段二列の分散通路21b,21cとが上下二段に階層化された構成となっている。各分散通路21a〜21dのサイズは例えば高さ50μm×幅50μmである。このように階層化された通路の横壁は、図4の(a)に示すように、上下一対のマイクロチャネル部材21a,21bの間に仕切壁36を挿入し、これらを接着剤等により互いに接着して形成されたものである。さらに、隣り合う流路を仕切る縦壁は、フォトリソグラフィ法を用いてパターン形成され、同様に21d,21cを作成する。なお、マイクロチャネル部材21a〜21dおよび仕切壁36は、液体燃料41との接触適合性に優れ、かつパターンエッチング可能な材質の樹脂、例えばポリエチレン(PE)のような樹脂でつくられている。
これら4つに仕切られた分散通路21a〜21dは、図3の(b)に示すようにバイパス孔39を分岐点としてさらに下流側において2つに分岐する第1の分岐通路22に連通している。さらに第1の分岐通路22の各々は、内部が導入分岐部と同様に二段二列の分散通路(図示せず)に仕切られている。分岐通路22の各分散通路22a〜22dのサイズは例えば高さ25μm×幅25μmである。このように分岐通路の相当直径は段階的に減少する構成となっている。同様に、第1の分岐通路22の各々は、さらに下流側の分岐点においてバイパス孔39を介して2つに分岐する第2の分岐通路23に連通している。さらに第2の分岐通路23の各々は、内部が二段二列の分散通路(図示せず)に仕切られている。同様に、第2の分岐通路23の各々は、さらに下流側の分岐点においてバイパス孔39を介して2つに分岐する第3の分岐通路24に連通している。さらに第3の分岐通路24の各々は、内部が二段二列の分散通路(図示せず)に仕切られている。同様に、第3の分岐通路24の各々は、さらに下流側の分岐点においてバイパス孔39を介して2つに分岐する第4の分岐通路25に連通している。さらに第4の分岐通路25の各々は、内部が二段二列の分散通路(図示せず)に仕切られている。同様に、第4の分岐通路25の各々は、さらに下流側の分岐点においてバイパス孔39を介して2つに分岐する第5の分岐通路26に連通している。さらに第5の分岐通路26の各々は、内部が二段二列の分散通路(図示せず)に仕切られている。同様に、第5の分岐通路26の各々は、さらに下流側の分岐点においてバイパス孔39を介して2つに分岐する第6の分岐通路27に連通している。さらに第6の分岐通路27の各々は、内部が二段二列の分散通路(図示せず)に仕切られている。最下流に位置する第6の分岐通路27は、総数が128本であり、末端において128個の燃料排出口27aにそれぞれ連通している。これらの燃料排出口27aは、すべてMEA2のアノード13に対向して開口している。
燃料排出口27aはMEA2の全体に均一に燃料を供給することが可能なように、分配板30のアノード13と対向する面に複数設けられている。燃料排出口27aの個数は、例えば4直列接続の場合には4個以上であればよいが、MEA2の面内における燃料供給量を均一化する上で、1個/cm2以上の燃料排出口27aが存在するように形成することが好ましい。燃料排出口27aの個数が1個/cm2未満であると、MEA2に対する燃料供給量を十分に均一化することができないためである。
次に、本実施形態の燃料分配機構3の分配板30を製作する方法について簡単に説明する。
異なる板厚の3種の樹脂板(PE板)を準備する。これらのうち2種は板厚が厚く、1種は板厚が薄い。2種の厚板の片面にフォトリソグラフィ法を利用するパターンエッチングにより一方の厚板にはマイクロチャンネル部材21a,21dが、他方の厚板にはマイクロチャンネル部材21b,21cとなるよう第1〜第6の分散通路22〜27と導入分岐部21を規定する縦壁、およびバイパス孔39となる部分をそれぞれ形成する。
一方、1種の薄板は仕切壁36として使用される。
図4の(a)に示すように、一対のマイクロチャネル部材21a,21bの間および21d,21cの間に仕切壁36を挟み込み、これらを接着剤で接着して貼り合わせる。接着により3種の樹脂板が一体化する。この予成形体の周囲をトリミング加工するとともに燃料排出口27aからバリを除去する。これにより所望の分配板30を得る。このようにして製作した分配板30の燃料注入口31に燃料収容部4からの流路5を接続し、さらにカバープレート18およびMEA2と組み合わせると、所望の燃料電池1が得られる。このようなマイクロチャネル流路の製造方法は例えば特開2006−181740号公報に記載の方法を使用することが可能である。
ちなみに従来装置の分配板は、図4の(b)に示すように、マイクロチャネル流路103がパターン形成された1枚のマイクロチャネル部材101に、1枚の仕切板102を接着剤で貼りあわせて形成されている。
液体燃料は、燃料電池1内を次のようにして通流する。
燃料注入口31から分配板30に導入された液体燃料は、導入通路20から導入分岐部21を通って、複数に分岐した第1乃至第6の分岐通路22〜27を介して複数の燃料排出口27aにそれぞれ導かれる。このとき導入分岐部21から第1乃至第6の分岐通路22〜27までの各分岐点においてバイパス孔39を通って液体燃料41が分散通路で分散されるため、気泡が燃料通路内に侵入した場合であっても、仮に一つの分散通路内で気泡詰まりを生じても、他の分散通路で燃料と流通させることが可能であるため、気泡による燃料通路の目詰まりを緩和し、燃料排出口27aに到達するまでの間に液体燃料41の供給圧力が平均化され、各燃料排出口27aに対して液体燃料41が安定供給されるようになる。
複数の燃料排出口27aには、例えば液体燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離膜(図示せず)が配置され、液体燃料の気化成分のみが透過してMEA2のアノード13に供給されるようになっている。従って、液体燃料の気化成分は複数の燃料排出口27aからアノード13の複数個所に向けて排出される。気液分離膜は、液体燃料(例えばメタノール溶液)の気化成分のみを透過させて、液体燃料そのものは透過させない性質を有するものである。気液分離膜には例えばシリコンシートやポリエチレンテレフタレート(PTFE)膜などの多孔膜を用いる。ここで、液体燃料の気化成分とは、液体燃料として液体のメタノールを使用した場合は気化したメタノールを意味し、液体燃料としてメタノール水溶液を使用した場合にはメタノールの気化成分と水の気化成分からなる混合ガスを意味する。
燃料分配機構3から放出された燃料は、上述したようにMEA2のアノード13に供給される。MEA2内において、燃料はアノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で上式(1)に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて式(1)の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
この反応で生成した電子(e-)は集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード16に導かれる。また、式(1)の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と上式(2)にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
複数の燃料排出口27aはMEA2の全面に燃料が供給されるように配置されているため、MEA2に対する燃料供給量を均一化することができる。すなわち、アノード13の面内における燃料の分布が平準化され、MEA2内での発電反応に必要とされる燃料を全体的に過不足なく供給することができる。従って、燃料電池1の大型化や複雑化等を招くことなく、MEA2で効率的に発電反応を生起させることができる。これによって、燃料電池1の出力を向上させることが可能となる。言い換えると、燃料を循環させないパッシブ型燃料電池1の利点を損なうことなく、出力やその安定性を高めることができる。
このような構造の燃料分配機構3を使用することによって、燃料注入口31から燃料分配機構3内に注入された液体燃料を方向や位置に係わりなく、複数の燃料排出口27aに均等に分配することができる。従って、MEA2の面内における発電反応の均一性をより一層高めることが可能となる。
なお、液体燃料41としては、必ずしもメタノール燃料に限られるものではなく、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、もしくはその他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料電池に応じた液体燃料が使用される。特に燃料濃度が80モル%を超えるメタノール水溶液または純メタノール液であることが好適である。
次に、図面および表1を参照して本発明の実施例を比較例と比べて説明する。
(実施例)
本実施例では、図2に示す燃料通路20〜27の配置構成と同様の燃料分配機構3を用いた。導入通路20として高さ400μm×幅400μm×長さ45mmの正方形断面形状とした。導入分岐部21は直径100μm長さ45mmの円柱断面となるよう、図3の(a)および表1に示すように、内部はさらに4つの分散通路21a〜21dに仕切られている。
本実施例では、図2に示す燃料通路20〜27の配置構成と同様の燃料分配機構3を用いた。導入通路20として高さ400μm×幅400μm×長さ45mmの正方形断面形状とした。導入分岐部21は直径100μm長さ45mmの円柱断面となるよう、図3の(a)および表1に示すように、内部はさらに4つの分散通路21a〜21dに仕切られている。
さらに、第1の分岐通路22は、高さaが50μm、幅bが800μmの矩形断面で、長さが25mm、第2の分岐通路23は、高さaが50μm、幅bが400μmの矩形断面で、長さが14mm、第3の分岐通路24は、高さaが50μm、幅bが200μmの矩形断面で、長さが5mm、第4の分岐通路25は、高さaが50μm、幅bが100μmの矩形断面で、長さが6mm、第5の分岐散通路26は、高さaが50μm、幅bが50μmの正方形断面で、長さが2mm、第6の分岐散通路27は、高さaが50μm、幅bが25μmの矩形断面で、長さが3mmとした。そして、これら分岐通路22〜27は、いずれも4つの分散通路に仕切られている。これら分散通路の個々の高さおよび幅は、分岐通路の高さおよび幅のそれぞれ半分となる。このように、導入分岐部21を除いて、第1乃至第6の分岐通路22〜27をすべて同じ高さa(=50μm)としたのは、後述する製作上の事情に起因している。なお、燃料注入口31から燃料排出口27aに至るまでの燃料流路の全長を約100mmとした。
本実施例の燃料電池においては、上述したようにそれぞれの燃料通路21〜27を4本の分散路で構成している。液体燃料41は、供給流路5を通って燃料注入口31から燃料分配機構3に導入される。燃料分配機構3において、液体燃料41は、ストレート形状の細管からなる導入通路20のなかに流れ込み、導入通路20からシーケンシャルに分岐する4本の導入分岐部21および第1〜第6の分岐通路22〜27に分岐点を通ってほぼ均等に分配され、最終的には第6の分岐通路27の末端に連通する総計128箇所の燃料排出口27aからMEA2の燃料極13に向けて供給される。
導入通路20と導入分岐部21はヘッダとして機能するため、複数の燃料排出口27aの各々から規定濃度の液体燃料41がそれぞれ排出される。また、複数の燃料排出口27aはMEA2の全面に燃料が供給されるように配置されているため、MEA2に対する燃料供給量を均一化することができる。すなわち、燃料極13の面内における燃料の分布が平準化され、MEA2での発電反応に必要とされる燃料を全体的に過不足なく供給することができる。従って、燃料電池1の大型化や複雑化等を招くことなく、MEA2で効率的に発電反応を生起させることができる。これによって燃料電池1の出力が向上する。
本実施例で用いた燃料分配機構3は、その内部に設けた導入通路20から液体燃料を複数の燃料排出口27aに分配している。
燃料注入口31から燃料分配機構3に導入された液体燃料41は、複数に分岐した導入分岐部21および分岐通路22〜27を介して複数の燃料排出口27aにそれぞれ導かれる。このような構造の燃料分配機構3を使用することによって、燃料注入口31から燃料分配機構3内に注入された液体燃料41を方向や位置に拘わりなく、複数の燃料排出口27aに均等に分配することができる。従って、MEA2の面内における発電反応の均一性をより一層高めることが可能となる。
さらに、導入分岐部21および分岐通路22〜27で燃料注入口31と複数の燃料排出口27aとを分岐点を介して接続することによって、燃料電池1の特定箇所により多くの燃料を供給するような設計が可能となる。例えば、装置装着上の都合から燃料電池1の半分の部位の放熱がよくなってしまうような場合、従来では温度分布が生じてしまい、平均出力の低下が避けられない。これに対して、分岐通路22〜27および分岐点の形成パターンを調整し、予め放熱のよい部分に燃料排出口27aを密に配置することによって、その部分での発電に伴う発熱を多くすることができる。これによって、面内の発電度合いを均一化することができ、出力低下を抑制することが可能となる。
(比較例)
比較例として分岐通路21〜27が、分散通路に仕切られていない、すなわち一本の通路で構成されている分配板を作製した。本比較例では、実施例と同様に図2に示す燃料通路20〜27の配置構成と同様の燃料分配機構3を用いた。導入通路20として高さ400μm×幅400μm×長さ45mmの正方形形状とした。
比較例として分岐通路21〜27が、分散通路に仕切られていない、すなわち一本の通路で構成されている分配板を作製した。本比較例では、実施例と同様に図2に示す燃料通路20〜27の配置構成と同様の燃料分配機構3を用いた。導入通路20として高さ400μm×幅400μm×長さ45mmの正方形形状とした。
さらに、第1の分岐通路22は、高さaが50μm、幅bが800μmの矩形断面で、長さが25mm、第2の分岐通路23は、高さaが50μm、幅bが400μmの矩形断面で、長さが14mm、第3の分岐通路24は、高さaが50μm、幅bが200μmの矩形断面で、長さが5mm、第4の分岐通路25は、高さaが50μm、幅bが10μmの矩形断面で、長さが6mm、第5の分岐散通路26は、高さaが50μm、幅bが50μmの正方形断面で、長さが2mm、第6の分岐散通路27は、高さaが50μm、幅bが2.5μmの矩形断面で、長さが3mmとした。なお、燃料注入口31から燃料排出口27aに至るまでの燃料流路の全長を約100mmとした。
上記、実施例および比較例の分岐通路21を代表して分散通路の本数、それらが分散後合流する本数、分配板30における配置構成について整理すると表1の通りとなる。
図5は、横軸に燃料供給開始からの経過時間、縦軸に燃料排出口27aの流量(相対値)をとって、実施例の燃料電池および比較例の燃料電池との燃料流量の変化を調べた結果を示す特性線図である。図中の特性線Aは実施例の結果を、特性線Bは比較例の結果をそれぞれ示す。なお、縦軸の流量は、燃料供給開始時の流量を1とした場合の流量を基準値(=1)とする相対流量で表した。
この結果より、本発明の燃料電池は、燃料供給時間が経過しても燃料排出口での流量に変化は見られないが、比較例の燃料電池は、燃料供給時間の経過と共に燃料供給口での流量が低下し、最終的には燃料が供給されなくなってしまった。これは気泡が燃料通路内に侵入した場合であっても、本発明の燃料電池においては、仮に一つの分散通路内で気泡詰まりを生じても、他の分散通路で燃料と流通させることが可能であるため、気泡による燃料通路の目詰まりを緩和し、燃料排出口へ燃料を安定供給することができているのに対し、比較例の燃料電池では分岐通路が分散通路を有しない一本で構成されているため、一箇所で気泡による燃料通路の目詰まりを生じてしまうと下流側に燃料が供給されないためである。
この点を図6および図7で模式的に示して説明する。
図6は、分岐点を4箇所39a〜39d有した燃料通路を示しており、それぞれの分岐点間はバイパス孔により4本の分散通路を配置した構成となっている。すなわち、分散通路No.1〜4と分散通路No.5〜8との間に分岐点39aが、分散通路No.5〜8と分散通路No.9〜12との間に分岐点39bが、分散通路No,9〜12と分散通路No.13〜16との間に分岐点39cがそれぞれ形成されている。各分散通路No.1〜16の長さは等ピッチ間隔とした。そして、液体燃料は、分散通路No.1〜4側から分散通路No.13〜16側へ流通される構成となっている。
図7は、上記図6の構成において、横軸に流路番号、縦軸に各分散通路における流量(相対値)をとって、図6に示す実施例の燃料電池および分散通路に仕切られていない、すなわち一本の燃料通路で構成されている比較例の結果をそれぞれ示す特性図である。
図中の黒丸プロットは実施例の結果を、黒三角プロットは比較例の結果をそれぞれ示す。
これらの図から明らかなように、実施例の構成においては、分散通路No.1で燃料通路の目詰まり(流量:0)を生じたとしても、他の分散通路No.2〜4で補うことができ、下流側の分散通路には影響がなく、燃料を安定供給することができている。これに対し、比較例の構成においては、燃料通路1aで目詰まり(流量:0)を生じると、それを補う通路を有しないために下流側に燃料が供給されない(流量:0)。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、以下に燃料分配機構への燃料供給にポンプを利用したセミパッシブ方式の燃料電池について説明する。なお、本実施形態の燃料電池が記述の燃料電池と重複する説明は省略する。
燃料収容部4から燃料分配機構3までの間の流路5にポンプ42を取り付け、毛管力ばかりでなくポンプ駆動力の補助により液体燃料をさらに効率良く輸送することができる。ポンプ42の種類は特に限定されるものではないが、少量の液体燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、電気浸透流ポンプ(EOポンプ)、ロータリーポンプ(ロータリーベーンポンプ)、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。電気浸透流ポンプは上述の特許文献2などに記載されている。ロータリーポンプはモータで羽を回転させて送液するものである。ダイアフラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。
このようなポンプ42を使用したセミパッシブ方式の燃料電池に本発明を採用した場合には、燃料通路が目詰まりを生じ下流側に燃料が供給されなくなることによるポンプへの負荷を軽減することが可能となる。
また、燃料分配機構3の内部に積層された液体燃料含浸層(図示せず)を設けるようにしてもよい。液体燃料含浸層として、例えば多孔質ポリエステル繊維、多孔質オレフィン系樹脂等多硬質繊維や、連続気泡多孔質体樹脂が好ましい。液体燃料含浸層は、燃料収容部の液体燃料が減少した場合や燃料電池本体が傾斜して載置され燃料供給が偏った場合においても、図示しない気液分離膜に均等に液体燃料が供給され、その結果、燃料極触媒層11に均等に気化された液体燃料を供給することが可能となる。ポリエステル繊維以外にも、アクリル酸系の樹脂などの各種吸水性ポリマーにより構成してもよく、スポンジまたは繊維の集合体など液体の浸透性を利用して液体を保持することができる材料により構成する。本液体燃料含浸部は,本体の姿勢に関わらず適量の燃料を供給するのに有効である。
さらに、燃料電池としての安定性や信頼性を高めるために、ポンプ42と直列に燃料遮断バルブ43を配置することが好ましい。図8ではポンプ42と燃料分配機構11との間の流路5に燃料遮断バルブ43を挿入した構造を示している。燃料遮断バルブ43はポンプ42と燃料収容部4との間に設置しても機能上の支障はない。
ただし、燃料遮断バルブ43をポンプ42と燃料収容部4との間の流路5に設置した場合、例えば長期保管時にポンプ42の燃料が枯渇(蒸発)すると、燃料収容部4からの液体燃料の吸出し機能に支障が生じるおそれがある。このようなことから、燃料遮断バルブ43はポンプ42と燃料分配機構3との間の流路5に設置し、長期保管時等におけるポンプ42からの液体燃料の蒸発を防止することが好ましい。
このように、燃料収容部4と燃料分配機構3との間に遮断バルブ43を挿入することによって、燃料電池1の未使用時にも不可避的に発生する微量な燃料の消費や上述したポンプ再運転時の吸い込み不良等を回避することができる。これらは燃料電池1の実用上の利便性の向上に大きく貢献するものである。
このようにポンプ42と遮断バルブ43を組み合わせて適用することによって、MEA2に対する燃料の供給を制御し、燃料電池1の出力制御性を高めることができる。この場合の遮断バルブ43の動作制御は、上述したポンプ42の動作制御と同様に実施することができる。
なお、液体燃料を燃料収容部4から燃料分配機構3まで送る機構は特に限定されるものではない。例えば、使用時の設置場所が固定される場合には、重力を利用して液体燃料を燃料収容部4から燃料分配機構3まで落下させて送液することができる。また、多孔体等を充填した供給流路5を用いることによって、毛管力で燃料収容部4から燃料分配機構3まで送液することができる。また、燃料分配機構3からMEA2への燃料供給が行われる構成であればポンプに代えて燃料遮断バルブ43のみを配置する構成とすることも可能である。この場合には、燃料遮断バルブ43は、流路5による液体燃料の供給を制御するために設けられるものである。さらに、燃料電池としての安定性や信頼性を高めるために、ポンプと直列に燃料遮断バルブを配置することができる。
本実施形態の燃料電池においては、燃料収容部4や流路5に燃料収容部4内の圧力を外気とバランスさせるバランスバルブを任意に装着して良い。図8は燃料収容部4にバランスバルブ60を設置した状態を示している。バランスバルブ60は、燃料収容部4内の圧力に応じてバルブ可動片61を動作させるスプリング62と、バルブ可動片61をシールして閉状態とするシール部63とを有している。
燃料収容部4から液体燃料が燃料分配機構11に供給され、燃料収容部4の内圧が減圧状態になると、バランスバルブ60のバルブ可動片61が外圧を受け、スプリング62の反発力に打ち勝ってシール部63が開放される。このバランスバルブ60の開放状態に基づいて、外気が内外圧力差を減少するよう導入される。内外の圧力差が解消されると、再度バルブ可動片61が移動して、シール部63が密閉される。
このように動作するバランスバルブ60を燃料収容部4等に設置することによって、液体燃料の供給に伴って発生する燃料収容部4の内圧低下に起因する送液量の変動を抑制することができる。すなわち、燃料収容部4内が減圧状態になると、ポンプ42による液体燃料の吸い込みが不安定になり、送液量が変動しやすくなる。このような送液量の変動をバランスバルブ60を設置することで解消することができる。従って、燃料電池1Gの動作安定性を向上させることが可能となる。なお、バランスバルブ60を流路5に設置する場合には、燃料収容部4とポンプ42との間に挿入することが好ましい。
上述した各実施形態の液体燃料41は、各種の液体燃料を使用した場合に効果を発揮し、液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。ただし、複数の燃料排出口27aを有する燃料分配機構3の機能がより顕在化するのは燃料濃度が濃い場合である。このため、各実施形態の燃料電池は、濃度が80%以上のメタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる、従って、各実施形態は濃度が80%以上のメタノールを液体燃料として用いた燃料電池に適用することが好ましい。
以上、種々の実施の形態を挙げて説明したが、本発明は上記各実施の形態のみに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
また、MEAへ供給される液体燃料の蒸気においても、全て液体燃料の蒸気を供給してもよいが、一部が液体状態で供給される場合であっても本発明を適用することができる。
1…燃料電池、2…膜電極接合体(MEA)、3…燃料分配機構、
4…燃料収容部、5…流路、
11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…燃料極(アノード)、
14…カソード触媒層、15…カソードガス拡散層、16…空気極(カソード)、
17…電解質膜、19…オーリング(シール部材)、
20〜27…燃料通路、21a〜21b・・・分散通路
27a…燃料排出口、30…分配板、31…燃料注入口、
36…仕切壁、39,39a〜39d…分岐点(バイパス孔)、
41…液体燃料、42…ポンプ、43…遮断バルブ、44…制御部。
4…燃料収容部、5…流路、
11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…燃料極(アノード)、
14…カソード触媒層、15…カソードガス拡散層、16…空気極(カソード)、
17…電解質膜、19…オーリング(シール部材)、
20〜27…燃料通路、21a〜21b・・・分散通路
27a…燃料排出口、30…分配板、31…燃料注入口、
36…仕切壁、39,39a〜39d…分岐点(バイパス孔)、
41…液体燃料、42…ポンプ、43…遮断バルブ、44…制御部。
Claims (8)
- 燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極との間に挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体の燃料極側に配置され、前記燃料極の複数箇所に対して燃料を分配供給する燃料分配機構と、液体燃料を収容する燃料収容部と、前記燃料収容部を前記燃料分配機構に接続する流路と、を具備する燃料電池であって、
前記燃料分配機構は、
前記燃料収容部から前記流路を介して液体燃料が流入する燃料注入口と、
前記燃料極と対向するように開口し、前記燃料極に向けて燃料を排出する複数の燃料排出口と、前記燃料注入口から前記燃料排出口に燃料を流通させるために連通する燃料通路を有し、
前記燃料通路は、その少なくとも一部に前記燃料通路を2本以上に分散後、合流する分散通路、を有することを特徴とする燃料電池。 - 前記燃料通路は、前記燃料注入口から前記燃料排出口の間で少なくとも1回分岐し、前記分岐前後においてその相当直径が段階的に減少しており、その末端が前記燃料排出口に連通することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
- 前記分散通路は、前記燃料注入口から前記燃料排出口に向かうに従って前記分散通路間隔が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 前記分散通路は、縦横比が1に近似する矩形の横断面を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 前記燃料通路は、前記燃料排出口の近傍では毛管力を主体として燃料が送られ、かつ毛管抵抗によって送液量が制御されるような相当直径を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 前記燃料通路は、前記液体燃料がレイノルズ数2000以下の層流状態で流れるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
- 前記液体燃料は、メタノール濃度が80モル%以上のメタノール水溶液または純メタノール液であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の燃料電池。
- 前記分散通路は、前記燃料分配機構に階層化されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
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Cited By (1)
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JP2011129431A (ja) * | 2009-12-18 | 2011-06-30 | Fujikura Ltd | ダイレクトメタノール型燃料電池の燃料供給装置 |
-
2008
- 2008-01-08 JP JP2008001426A patent/JP2009164009A/ja not_active Withdrawn
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