JP2010073607A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】発電反応に伴ってMEAの燃料極側で発生するガス成分の除去効率を高めることによって、燃料電池の出力特性等を向上させる。
【解決手段】燃料電池は、膜電極接合体(MEA)12を備える起電部と、燃料を収容する燃料収容部と、燃料収容部に収容された燃料を膜電極接合体12の燃料極に供給する燃料供給機構とを具備する。膜電極接合体12は電解質膜11を貫通するように設けられ、燃料極側に生じたガス成分を空気極側に逃がすガス抜き孔17を有する。ガス抜き孔17は膜電極接合体12の温度分布に基づいて高温領域が密となるように配置されている。
【選択図】図3
【解決手段】燃料電池は、膜電極接合体(MEA)12を備える起電部と、燃料を収容する燃料収容部と、燃料収容部に収容された燃料を膜電極接合体12の燃料極に供給する燃料供給機構とを具備する。膜電極接合体12は電解質膜11を貫通するように設けられ、燃料極側に生じたガス成分を空気極側に逃がすガス抜き孔17を有する。ガス抜き孔17は膜電極接合体12の温度分布に基づいて高温領域が密となるように配置されている。
【選択図】図3
Description
本発明は液体燃料を用いた燃料電池に関する。
直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:DMFC)は小型化が可能であり、さらに燃料の取り扱いも容易であるため、携帯用電子機器の電源や充電器として有望視されている。DMFCにおける液体燃料の供給方式としては、気体供給型や液体供給型等のアクティブ方式、また燃料収容部内の液体燃料を電池内部で気化させて燃料極に供給する内部気化型等のパッシブ方式が知られている。
パッシブ型DMFCにおいては、例えば燃料極(アノード)、電解質膜および空気極(カソード)を有する膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を、燃料収容部上に配置した構造が適用されている。また、DMFCの起電部と燃料収容部とを流路を介して接続することも検討されている。燃料収容部から直接もしくは流路を介して導入されたメタノール燃料等を電池内部で気化させて燃料極に供給する場合、MEAの燃料極側ではガス化した燃料を閉じ込めつつ、電池反応に基づいて生じる炭酸ガスや水蒸気等のガス成分を系外に放出する必要がある。
パッシブ型DMFCでは、燃料極側の容器側面にガス抜き機構(内圧逃がし機構)を設け、ガス成分を系外に放出することが提案されている(特許文献1,2参照)。DMFCの容器側面にガス抜き機構を設けた場合、発生したガス成分が周辺部から抜けていくことになるため、MEAの中央付近で生成したガス成分の除去性が低下するおそれがある。このようなことから、燃料極側で生じた炭酸ガスや水蒸気等のガス成分をMEA全体から系外に効率よく放出することが求められている。
特開2006−108028号公報
特開2006−318712号公報
本発明の目的は、発電反応に伴って燃料極側で発生するガス成分の放出効率を高めることによって、出力特性の向上等を図った燃料電池を提供することにある。
本発明の態様に係る燃料電池は、燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体を備える起電部と、液体燃料を収容する燃料収容部と、前記燃料収容部から前記燃料極に燃料を供給する燃料供給機構とを具備し、前記膜電極接合体は、少なくとも前記電解質膜を貫通するように設けられ、前記燃料極側に生じたガス成分を前記空気極側に逃がすガス抜き孔を有し、前記ガス抜き孔は前記膜電極接合体の温度分布に基づく高温領域の孔密度が低温領域の孔密度に対して密となるように配置されていることを特徴としている。
本発明の態様に係る燃料電池においては、燃料極側で発生するガス成分を膜電極接合体に設けたガス抜き孔から系外に放出する。さらに、ガス抜き孔は膜電極接合体の温度分布に基づいて配置されているため、ガス成分の系外への放出効率を高めることができる。従って、出力特性等を向上させた燃料電池を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態による燃料電池の構成を示す断面図である。図1に示す燃料電池1は、膜電極接合体(MEA)を備える起電部2と、起電部2に燃料を供給する燃料供給機構3と、液体燃料を収容する燃料収容部4とから主として構成されている。
起電部2は、アノード触媒層5とアノードガス拡散層6とを有するアノード(燃料極)7と、カソード触媒層8とカソードガス拡散層9とを有するカソード(空気極/酸化剤極)10と、アノード触媒層5とカソード触媒層8とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜11とから構成される膜電極接合体(MEA)12を有している。
アノード触媒層5やカソード触媒層8に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層5にはメタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層8にはPtやPt−Ni等を用いることが好ましい。ただし、触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は炭素材料等の導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
アノード触媒層5に積層されるアノードガス拡散層6は、アノード触媒層5に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層5の集電機能を有するものである。カソード触媒層8に積層されるカソードガス拡散層9は、カソード触媒層8に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層8の集電機能を有するものである。アノードガス拡散層6やカソードガス拡散層9は、例えばカーボンペーパーやカーボンクロス等の導電性を有する多孔質基材で構成されている。
電解質膜11を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の電解質膜11はこれらに限られるものではない。
上記したMEA12をアノード集電体13とカソード集電体14とで挟み込むことによって、起電部2が構成される。アノードガス拡散層6はアノード集電体13と積層され、カソードガス拡散層9はカソード集電体14と積層されている。集電体13、14は燃料や空気を流通させる貫通孔を有している。集電体13、14にはAuやNi等の導電性金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)や箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)のような導電性金属材料にAu等の良導電性金属を被覆した複合材等が用いられる。起電部2はOリング等のシール部材15でシールされており、MEA12からの燃料漏れや酸化剤漏れが防止されている。
起電部2は図2や図3に示すように、電解質膜11を介して配置されたアノード(燃料極)7とカソード(空気極)10とで構成される単セル16を複数有している。これら複数の単セル16は電解質膜11の平面内に分離して配置され、かつ集電体13、14により電気的に接続されている。複数の単セル16は直列に接続されている。単セル16の数は任意であり、例えば3セル直列、4セル直列等の直列配置が適用される。
MEA12は少なくとも電解質膜11を貫通するように設けられたガス抜き孔17を有している。ガス抜き孔17は発電反応に伴ってアノード7側に生じたガス成分(炭酸ガスや水蒸気等)をカソード10側に逃がすための排気孔である。このようにMEA12にガス抜き孔17を設けることによって、アノード7側に生じたガス成分をカソード10側に逃がすことができ、さらに燃料電池1の系外に放出することができる。ガス抜き孔17はMEA12の任意の位置に形成することができるため、ガス抜き孔17の形成位置等に基づいてガス成分の放出効率を高めることが可能となる。
ガス抜き孔17の孔径は50μm以上2mm以下の範囲とすることが好ましい。ガス抜き孔17の孔径が50μm以下であると水蒸気の凝集による閉塞が生じやすくなり、ガス抜き効果を十分に得ることができないおそれがある。ガス抜き孔17の孔径が2mm以上の場合、カソード10側に直接透過する燃料の量が多くなり、局部的な加熱状態が生じやすくなる。このため、出力の安定性等が低下するおそれがある。ガス抜き孔17の孔径は0.1〜1mmの範囲とすることがより好ましい。
ガス抜き孔17はMEA12の各単セル16、16…間に相当する部分、具体的には電解質膜11のみが存在する部分に設けられていることが好ましい。例えば、ガス抜き孔17は単セル16間に相当する電解質膜11の部分に設けられている。さらに、ガス抜き孔17は単セル16の周囲に相当する電解質膜11の部分にも形成することができる。ガス抜き孔17は燃料電池1内の任意の位置に任意の数で設けることができるが、単セル16間に相当する電解質膜11の部分、あるいはそのような部分と単セル16の周囲に相当する電解質膜11の部分とに形成することが好ましい。ガス抜き孔17の形成領域等については後に詳述する。
起電部2は例えば燃料拡散室18を形成する容器19上に配置されている。容器19は上部が開口された箱状の形状を有している。このような容器19の開口部側にMEA12のアノード7が位置するように起電部2が配置される。容器19内には燃料拡散材20が配置されている。燃料拡散材20は板状の多孔質材料等で形成されており、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等からなる樹脂製多孔質板が用いられる。燃料拡散室18と燃料拡散材20とは、アノード7の面方向に燃料を分散並びに拡散させつつ供給する燃料供給部21を構成するものである。
そして、燃料拡散材20が配置された容器19上に起電部2と保湿層22とを積層し、その上から金属製(例えばステンレス製)のカバープレート23を被せるように取り付けて全体を保持することで、燃料電池(DMFC)1の発電ユニットが構成されている。保湿層22はカソード触媒層8で生成された水の一部が含浸されて水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層8への空気の均一拡散を促進するものである。保湿層22は保湿性を有する多孔質部材(例えば樹脂製多孔質板)で形成される。カバープレート23は起電部2をカソード10側から保持するものであり、空気導入用の開口部23aを有している。開口部23aは複数の単セル16、16…の部分に対応するように設けられている。
燃料拡散材20は容器19に設けられた燃料注入部24と接している。燃料注入部24は配管のような液体燃料の流路25を介して燃料収容部4と接続されている。燃料収容部4にはMEA12に応じた液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料はこれに限られるものではない。液体燃料はエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。
流路25にはポンプ26が介在されている。ポンプ26は燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部4から燃料供給部21に液体燃料を送液する燃料供給ポンプである。燃料供給部21からMEA12に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部4に戻されることはない。燃料電池1は燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。液体燃料の供給にポンプ26を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なる。燃料電池1はセミパッシブ型と呼称される方式を適用したものである。
ポンプ26の種類は特に限定されるものではないが、少量の液体燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリーベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリーベーンポンプはモータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。
燃料電池1においては、ポンプ26を用いて燃料収容部4から燃料供給部21に液体燃料が間欠的に送液される。ポンプ26で送液された液体燃料は燃料拡散材20内を速やかに面方向に展開し、燃料拡散室18を介してMEA12のアノード(燃料極)7の全面に対して均一に供給される。すなわち、複数の単セル16、16…の各アノード(燃料極)7の平面方向に対して均一に燃料が供給され、これにより発電反応が生起される。燃料供給用(送液用)のポンプ26の運転動作は、燃料電池1の出力、温度情報、電力供給先である電子機器の運転情報等に基づいて制御することが好ましい。
燃料供給部21から放出された燃料は、MEA12のアノード(燃料極)7に供給される。MEA12内において、燃料はアノードガス拡散層6を拡散してアノード触媒層5に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層5で下記の式(1)に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層8で生成した水や電解質膜11中の水をメタノールと反応させて式(1)の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e- …(1)
この反応で生成した電子(e-)は集電体13を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、集電体14を経由してカソード(空気極)10に導かれる。式(1)の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は電解質膜11を経てカソード10に導かれる。カソード10には酸化剤として空気が供給される。カソード10に到達した電子(e-)とプロトン(H+)は、カソード触媒層8で空気中の酸素と下記の式(2)にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
6e-+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
この実施形態の燃料電池1において、上述した発電反応に伴ってアノード7側で発生した炭酸ガスや水蒸気等のガス成分は、MEA12に設けられたガス抜き孔17を介してカソード10側に逃がされ、さらには保湿層22およびカバープレート23の開口部23aを介して燃料電池1の系外に放出される。ガス成分の系外への放出性を向上させる上で、保湿層22はガス抜き孔17の形成位置に対応する貫通孔(図示せず)を有することが好ましい。保湿層22の貫通孔はカバープレート23との干渉を避けるために、MEA12のガス抜き孔17より大きい孔径を有することが好ましい。
ここで、燃料電池1では発電反応に伴ってMEA12に温度分布が生じる。具体的には、平面内で直列接続された複数の単セル16を有するMEA12では中心領域が高温領域となり、それに対して周辺領域は低温領域となる。図3において、線Xで囲まれた領域(領域X)は高温領域となる中心領域を示している。これに対して、中心領域Xより外側の周辺領域は低温領域となる。高温領域と低温領域との温度差は燃料電池1の運転条件等によっても異なるが、例えば5〜10℃程度の温度差が生じる。
高温領域となる中心領域では反応が促進されるため、炭酸ガス等のガス成分の排出量も増大する。一方、低温領域となる周辺領域では反応が低下し、炭酸ガス等のガス成分の排出量も高温領域に比べて少ない。このように、MEA12の温度分布(高温領域と低温領域)に基づいてガス成分の排出量に差が生じる。図4は低温領域となる周辺領域のみにガス抜き孔17を形成した状態を示している。このようなガス抜き孔17の配置を適用した場合、ガス成分の排出量が多い高温領域からのガス成分の除去効率が低下し、その結果としてMEA12全体としてのガス放出効率も低下する。
そこで、この実施形態の燃料電池1においては、MEA12の温度分布に基づく高温領域の孔密度(単位面積当たりのガス抜き孔17の個数)が低温領域の孔密度に対して密となるように、MEA12に対してガス抜き孔17を形成している。図3は高温領域のみにガス抜き孔17を形成したMEA12を示している。このように、ガス抜き孔17を高温領域のみに形成した場合においても、ガス成分の排出量が多い領域から炭酸ガス等のガス成分を有効に逃がすことができるため、MEA12全体としてのガス放出効率を向上させることが可能となる。
図3は高温領域(中心領域)のみにガス抜き孔17を形成した状態を示したが、ガス抜き孔17の配置はこれに限られるものではない。MEA12全体としてのガス放出効率を考慮した場合、低温領域(周辺領域)にもガス抜き孔17を形成した方が有効な場合がある。そのような場合においても、高温領域のガス抜き孔17の形成密度(孔密度)が低温領域のガス抜き孔17の形成密度より大きくなるようにガス抜き孔17を配置する。これによって、高温領域で発生するガス成分を効率よく系外に排出することができる。
さらに、高温領域(中心領域)に形成するガス抜き孔17の孔径を低温領域(周辺領域)に形成するガス抜き孔17の孔径より大きくすることも有効である。このような孔径を異ならせたガス抜き孔17によっても、ガス成分の放出効率を高めることができる。孔径が異なるガス抜き孔17は、高温領域と低温領域とに形成する場合に限られるものではない。高温領域のみにガス抜き孔17を形成する場合においても、より中心に近い領域に形成するガス抜き孔17の孔径をそれ以外の領域に形成するガス抜き孔17の孔径より大きくすることも有効である。この場合にもガス成分の放出効率が向上する。
ガス抜き孔17の孔径の差はガス放出量等を考慮して設定することが好ましい。具体的な孔径差としては、例えば小孔径のガス抜き孔17の孔径を1としたとき、大孔径のガス抜き孔17の孔径は1を超え2以下の範囲とすることが好ましい。小孔径のガス抜き孔17に対する大孔径のガス抜き孔17の孔径比が1以下であると、孔径差に基づくガス成分の放出効率の向上効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、孔径比が2を超えると不要なガス成分である炭酸ガス等だけでなく、未反応の燃料までもが排出される、いわゆるクロスオーバーが増大するおそれがある。なお、このような孔径差を適用する場合においても、大孔径および小孔径のガス抜き孔17のいずれの孔径も50μm以上2mm以下の範囲とすることが好ましい。
複数の単セル16を有するMEA12において、ガス抜き孔17は単セル16の長手方向の中心線を対象軸とした場合に線対称に配置されていることが好ましい。あるいは、ガス抜き孔17は単セル16の長手方向と直交する方向の中心線を対象軸とした場合に線対称に配置されていることが好ましい。さらに、ガス抜き孔17は単セル16の長手方向の中心線およびそれと直交する方向の中心線のいずれに対しても線対称に配置されていることが好ましい。このようなガス抜き孔17の配置を適用することによって、MEA12全体としてのガス成分の放出効率を向上させることが可能となる。
MEA12の温度分布に基づく高温領域および低温領域は、燃料電池1の構成や運転条件等に基づいて設定されるものであり、必ずしも限定されるものではない。また、高温領域のガス抜き孔17はその形成密度が低温領域におけるガス抜き孔17の形成密度より高くなるように設定されていればよい。例えば、ガス抜き孔17の形成密度として、低温領域のガス抜き孔17の総開口面積に対する高温領域のガス抜き孔17の総開口面積の比が1:1を超えて1:4以下の範囲とすることが好ましい。
上記した開口面積比が1:1以下では、MEA12の高温領域における炭酸ガス等の濃度を低減または抑制する効果が低下してしまう。逆に開口面積比が1:4を超えると、ガス抜き孔17を通って未反応の燃料がカソード10側へ排出される、いわゆるクロスオーバーが増大する。さらに好ましくは開口面積の比を1:1超えて1:2以下の範囲とする。特に容器19からアノード7の主面全体に燃料供給口を配置した構造では単位面積当たりの燃料供給量が増大するため、未反応燃料のクロスオーバー量を抑制することが好ましい。高温領域のガス抜き孔17でMEA12全体としてのガス放出性を満たすことが可能であれば、低温領域にはガス抜き孔17を形成しなくてもよい。
図5にMEA12の温度分布の一例を示す。図5は4個の単セル16(第1ないし第4の単セル16A、16B、16C、16D)を直列に接続したセル構造(4セル直列構造)を有するMEA12を示している。各単セル16の面積は800mm2(10×80mm)であり、セルの合計面積は3200mm2である。このようなMEA12を用いて燃料電池(DMFC)1を組み立てると共に、液体燃料として純メタノールを使用して、25℃の環境下で動作させた場合のDMFC1の温度分布を測定した。
上述したMEA12を有する燃料電池(DMFC)1において、単セル16の長手方向に沿った中心線を基準とした場合に、中心付近に位置する第2および第3の単セル16B、16Cの温度は54〜55℃であったのに対し、外側に位置する第1および第4の単セル16A、16Dの温度は50℃未満であった。図5に示すMEA12を備える燃料電池(DMFC)1において、第2および第3の単セル16B、16Cが高温領域、第1および第4の単セル16A、16Dが低温領域となる。
第2および第3の単セル16B、16Cが高温領域、第1および第4の単セル16A、16Dが低温領域となるMEA12に対して、図6に示すような3個のガス抜き孔17を形成した。図6は第1の実施例によるMEA12を示している。単セル16の長手方向に沿った中心線を基準とし、この中心線の中心位置に孔径が1mmの第1のガス抜き孔17Aを形成する。第1のガス抜き孔17Aは第2の単セル16Bと第3の単セル16Cとの間に相当する電解質膜11に形成されている。
さらに、第1の単セル16Aと第2の単セル16Bとの間に相当する電解質膜11に第2のガス抜き孔17Bを形成し、第3の単セル16Cと第4の単セル16Dとの間に相当する電解質膜11に第3のガス抜き孔17Cを形成する。第2および第3のガス抜き孔17B、17Cの孔径は0.5mmである。第1のガス抜き孔17Aの第2および第3のガス抜き孔17B、17Cに対する孔径比は2である。第1ないし第3のガス抜き孔17A〜17Cは長手方向の中心線と直交する方向の中心線に沿って配列されており、長手方向およびそれと直交する方向のいずれに対しても対称に配置されている。
また、第2および第3の単セル16B、16Cが高温領域、第1および第4の単セル16A、16Dが低温領域となるMEA12に対して、図7に示すような3個のガス抜き孔17を形成した。図7は第2の実施例によるMEA12を示している。単セル16の長手方向に沿った中心線を基準とし、この中心線の中心位置に孔径が1mmの第1のガス抜き孔17Aを形成する。第1のガス抜き孔17Aは第2の単セル16Bと第3の単セル16Cとの間に相当する電解質膜11に形成されている。
さらに、単セル16の長手方向の中心線上における両端近傍に第2および第3のガス抜き孔17B、17Cを形成する。第2および第3のガス抜き孔17B、17Cはいずれも第2の単セル16Bと第3の単セル16Cとの間に相当する電解質膜11に形成されている。第2および第3のガス抜き孔17B、17Cの孔径は0.5mmである。第1のガス抜き孔17Aの第2および第3のガス抜き孔17B、17Cに対する孔径比は2である。第1ないし第3のガス抜き孔17A〜17Cは長手方向に対して対称に配置されている。
図8は比較例によるMEA12を示している。図8に示すMEA12は、第1の単セル16Aと第2の単セル16Bとの間に相当する電解質膜11に第1および第2のガス抜き孔17A、17Bが形成されており、第3の単セル16Cと第4の単セル16Dとの間に相当する電解質膜11に第3および第4のガス抜き孔17C、17Dが形成されている。各ガス抜き孔17A〜17Dはそれぞれ周辺領域に設けられている。第1ないし第4のガス抜き孔17A〜17Dの孔径はいずれも0.5mmである。
第1の実施例(図6)、第2の実施例(図7)、および比較例(図8)によるMEA12を用いて、それぞれ図5に温度分布を示した燃料電池(DMFC)1を組み立て、これらを液体燃料として純メタノールを使用して25℃の環境下で動作させ、その際の燃料電池内の各部位における炭酸ガス(CO2)濃度を測定した。CO2濃度の測定部位はカソードガス拡散層9、保湿層22、カバープレート23の開口部23aとし、これら各部位の面内濃度を測定した。測定結果を表1に示す。表1のCO2濃度の測定結果は比較例1のカソードガス拡散層9におけるCO2濃度を100とした場合の相対値である。
表1から明らかなように、第1および第2の実施例2の燃料電池はいずれも比較例1に比べて各部の炭酸ガス(CO2)濃度が低く、比較例に比べてガス放出性に優れていることが分かる。また、各例の出力を測定したところ、実施例の燃料電池は比較例と比べて出力特性が向上していることが確認された。
この実施形態の燃料電池1においては、アノード7側で発生した炭酸ガスや水蒸気等のガス成分をカソード10側に逃がすガス抜き孔17をMEA12に設けると共に、MEA12の温度分布に基づいて高温領域にガス抜き孔17を密に配置している。これによって、ガス放出量が多い高温領域からガス成分を効率よく系外に放出することができ、ひいてはMEA12全体としてのガス放出効率を高めることができる。従って、燃料電池1の出力特性等を向上させることが可能となる。
上述した実施形態では燃料を面方向に分散させつつ供給する燃料供給部21として、燃料拡散室18内に配置した燃料拡散材20を適用しているが、燃料供給部21の構成はこれに限られるものではない。燃料供給部21は例えば図9および図10に示すように、燃料注入口31と複数の燃料排出口32とを細管33のような燃料通路で接続した燃料分配板34で構成することも可能である。
図9および図10に示す燃料供給部21は、液体燃料が流入する少なくとも1個の燃料注入口31と、液体燃料もしくはその気化成分を排出する複数個の燃料排出口32とを有する燃料分配板34を備えている。燃料分配板34の内部には、液体燃料の通路として機能する細管33が形成されている。細管33の一端(始端部)には燃料注入口31が設けられている。細管33は途中で複数に分岐しており、これら分岐した細管33の各終端部に燃料排出口32がそれぞれ設けられている。
さらに、上述した実施形態は本発明をセミパッシブ型の燃料電池に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。金属多孔質体27を備えるカバープレート23は純パッシブ型の燃料電池に対しても適用可能である。本発明はパッシブ型やセミパッシブ型等の燃料電池に適用することができる。これらの燃料電池において、ガス成分の系外への放出性や放出効率を高めることが可能となる。
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、MEAに供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、全てが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組合せたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除する等、種々の変形が可能である。
1…燃料電池、2…起電部、3…燃料供給機構、4…燃料収容部、5…アノード触媒層、6…アノードガス拡散層、7…アノード(燃料極)、8…カソード触媒層、9…カソードガス拡散層、10…カソード(空気極)、11…電解質膜、12…MEA、13…アノード集電体、14…カソード集電体、17…ガス抜き孔、18…燃料拡散室、19…容器、20…燃料拡散材、21…燃料供給部、22…保湿層、23…カバープレート。
Claims (5)
- 燃料極と、空気極と、前記燃料極と前記空気極とに挟持された電解質膜とを有する膜電極接合体を備える起電部と、
液体燃料を収容する燃料収容部と、
前記燃料収容部から前記燃料極に燃料を供給する燃料供給機構とを具備し、
前記膜電極接合体は、少なくとも前記電解質膜を貫通するように設けられ、前記燃料極側に生じたガス成分を前記空気極側に逃がすガス抜き孔を有し、前記ガス抜き孔は前記膜電極接合体の温度分布に基づく高温領域の孔密度が低温領域の孔密度に対して密となるように配置されていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池において、
前記起電部は前記電解質膜を介して配置された前記燃料極と前記空気極とで構成される単セルを複数有し、前記ガス抜き孔は前記単セル間に相当する前記電解質膜の部分に設けられていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1または請求項2記載の燃料電池において、
前記ガス抜き孔は前記膜電極接合体の中心領域の孔密度が周辺領域の孔密度に対して密となるように配置されていることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の燃料電池において、
前記膜電極接合体の中心領域に配置された前記ガス抜き孔は周辺領域に配置された前記ガス抜き孔より大きい孔径を有することを特徴とする燃料電池。 - 請求項2ないし請求項4のいずれか1項記載の燃料電池において、
前記単セルの長手方向の中心線または前記長手方向と直交する方向の中心線を対象軸とした場合に、前記ガス抜き孔は線対称に配置されていることを特徴とする燃料電池。
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-
2008
- 2008-09-22 JP JP2008242167A patent/JP2010073607A/ja not_active Withdrawn
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