JP5316842B2 - 免震機構 - Google Patents
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Description
慣性質量ダンパーとしてはボールねじとフライホイール(回転体錘)を組み合わせたものが多用されており、それによれば実際の回転体質量の数百倍と桁違いに大きな質量効果が得られることから、そのような回転慣性機構を利用した免震システムとしてたとえば特許文献1に示されるものが知られている。
すなわち、慣性質量ダンパーを構造体バネに並列に設置する場合には、構造体質量に慣性質量が加わることで固有振動数が小さくなり(つまり長周期化する)、それにより加振力が低減されるために応答変位も低下できるが、その反面、高振動数域では加速度応答倍率が増大してしまう。また、慣性質量ダンパーを付加バネと直列に設置した場合には、加振振幅に対して付加振動系の固有周期近傍で応答変位が低減するが、固有周期の前後の振動数域で応答加速度が加振加速度に対して増大してしまう。
また、本発明は慣性質量ダンパーとリリーフ機構付きオイルダンパーとを併設したパッシブ型(受働型)の免震機構であって、外部からの電力や油圧などのエネルギー供給や、センサーを用いての高度の制御を必要とするシステムではないし、慣性質量ダンパーとリリーフ機構付きオイルダンパーはいずれも安価に調達可能な汎用製品を使用可能であるので、簡便にしてローコストでありながら高性能な免震機構を容易に実現できるものである。
本実施形態では、構造体バネ2と構造体減衰3を介して固定端に接続されている構造体1を対象とする。
ここで、固定端とは構造体1が地表に設置される建物等の構造物の場合は実質的に地面であり、構造体1が建物内に設置される機器等である場合には実質的にその設置面である床面をさす。
また、構造体バネ2および構造体減衰3とは、具体的には、構造体1が建物等の構造物である場合には免震装置(積層ゴムや滑り支承、履歴ダンパー等)がそれに該当し、構造体が機器等の場合には免震架台や防振架台の類(摩擦係数の小さいリニアレールと復元バネにより構成されているものが一般的である)がそれに該当する。
また、付加減衰として第1のリリーフ機構付きオイルダンパー7を第1の慣性質量ダンパー4と並列に設置し、同じく付加減衰として2台の第2のリリーフ機構付きオイルダンパー8、9をそれぞれ付加バネ6と第2の慣性質量ダンパー5に対して並列に設置する。
なお、必ずしも上記のように2台の第2のリリーフ機構付きオイルダンパー8,9の双方を併設することはなく、本実施形態ではそれら2台の第2のリリーフ機構付きオイルダンパー8,9のいずれか一方は省略することも可能である。
これはシリンダ10内の油室11内に配置されてロッド12とともにシリンダ10に対して軸方向に変位するピストン13に対し、そのピストン13の両側の油室11を連絡するような逃がし通路14を設けてそこにリリーフバルブ(逃し弁)15を設け、油室11内の圧力が一定以上になるとリリーフバルブ15が自ずと開かれてそれ以上の圧力上昇が制限されるように構成されたものである。
リリーフ機構のない通常のオイルダンパーではその速度vと負担力Fとは(b)に示すような関係となるが、上記のようなリリーフ機構を備えたオイルダンパーでは(c)に示すように負担力Fが頭打ちとなり、その負担力Fが所定のリリーフ荷重Frを超えないように制限することができる。
これは(b)に示すように長尺の帯状バネ21を対のドラム22,23にゼンマイ状に巻回したもので、常にほぼ一定の力で帯状バネ21をドラム22,23から引き出し可能かつ巻き取り可能な構成のものである。
この定荷重バネ20を(a)に示すように2台1組としてそれぞれワイヤー24を介して所定の予張力を付与した状態で構造体1に接続しておくと、構造体1が静止状態にある通常時においては両側のワイヤー24の引張力がバランスしているが、地震時に構造体1が変位した際にはいずれか一方の定荷重バネ20から帯状バネ21が引き出され、その弾性反力が復元力として構造体1に作用して構造体1を原位置に復帰させて残留変位が防止される。
すなわち、双方のワイヤー24に予張力を加えて所定位置に固定すると、構造体1が図示A方向に変位した場合、図示左側のワイヤー24aにのみ一定張力(反力)T0が生じる。その際、右側のワイヤー24bは単にたわむだけで張力を失い、したがって合計反力は図3(c)に示すようにT0となる。構造体1が逆方向(図示B方向)に変位すると上記の逆となり、合計反力は−T0となる。
解析の基本的な条件は以下のとおりである。
半導体工場の4階に設置する部分免震(建物内で一部の範囲だけ免震床とする)を対象とする。
構造体1の質量M1=109ton、構造体バネK1=36kgf/cm、固有周期11秒とする。構造体1はリニアガイドにより支持され、その摩擦係数μ=0.006とし、構造体減衰は小さいため無視する。
設計与条件は、最大変位を50cm以下とすることを条件として最大加速度を120gal以下とすることを目標とする。
地震動を上町断層波とし、建設地の地盤条件を考慮した建物の応答解析により免震設置階床の応答波を本検討用の入力地震動とする。これは図4に示すように最大加速度425galで長期成分が大きいという特徴がある地震波である。
構造体1の固有周期11秒に対し、付加振動系の固有周期を3.6秒に設定する。
振動諸元は、付加バネ6のバネ定数K2=62kgf/cm、第1の慣性質量ダンパー4による慣性質量ΔM1=52ton、第2の慣性質量ダンパー5による慣性質量ΔM2=20tonとした。
この場合、応答変位を50cm以下にしたときの最大応答加速度は約162galとなり、目標値120galを満足しない。
この場合、応答変位を50cm以下にしたときの最大応答加速度は約108galとなって目標を充分に満足し、特にリリーフ機構のない場合に比べて最初の5秒までの加振力が大きく低下していることが分かる。
すなわち、リリーフ機構のない通常のオイルダンパーでは、地震動の初期において固定端の変位(速度)が大きくなると、オイルダンパーの減衰による構造体への加振力も増大して構造体の加速度が増加してしまうという問題があったが、リリーフ機構を付けることで減衰による加振力が頭打ちになり加速度の増加を抑制することが可能である。
特に、慣性質量ダンパーやリリーフ機構付きオイルダンパーはいずれも安価に調達可能な汎用製品を使用可能であるし、復元機構を設置する場合にはそれに好適な定荷重バネも同様に安価な市販品を調達可能であるので、発明は既存の普及した技術を組み合わせることで従来にない高性能な免震を容易に実現できるものである。
以下、本発明の他の実施形態としてそのような場合の設計例と解析例を示す。
この場合において、他の諸元は上記の検討の場合と同じにしたまま、第1の慣性質量ダンパー4による慣性質量ΔM1=50ton、付加減衰としてリリーフ機構のないオイルダンパーを用いてその付加減衰C1=112kgf/kineとした場合には、(b)に示すように応答変位を50cm以下にしたときの最大応答加速度は約165galとなり、目標値120galを満足しない。
それに対し、オイルダンパーにリリーフ機構を設けて第1のリリーフ機構付きオイルダンパー7とし、それによる付加減衰C1=148kgf/kine、そのリリーフ荷重11.8tonfとした場合には、(c)に示すように最大応答変位が同等のままで最大応答加速度は約147galに低減され、目標を満足するには至らないが充分に改善されることが分かる。
この場合において、構造体1の質量M1=109ton、構造体バネK1=72kgf/cm、固有周期7.8秒、摩擦係数μ=0.006、付加バネ6のバネ定数K2=62kgf/cm、第2の慣性質量ダンパー5による慣性質量ΔM2=52ton、付加減衰としてリリーフ機構のないオイルダンパーを用いてその付加減衰C2=367kgf/kineとした場合、(b)に示すように応答変位を50cm以下にしたときの最大応答加速度は約189galとなり、目標値120galを満足しない。
それに対し、オイルダンパーにリリーフ機構を設けて第2のリリーフ機構付きオイルダンパー8とし、それによる付加減衰C2=490kgf/kine、そのリリーフ荷重15.0tonfとした場合には、(c)に示すように最大応答変位が同等のままで最大応答加速度は約174galに低減され、目標を満足するには至らないが改善されることが分かる。
2 構造体バネ
3 構造体減衰
4 第1の慣性質量ダンパー
5 第2の慣性質量ダンパー
6 付加バネ
7 第1のリリーフ機構付きオイルダンパー
8,9 第2のリリーフ機構付きオイルダンパー
10 シリンダ
11 油室
12 ロッド
13 ピストン
14 逃がし通路
15 リリーフ弁
20 定荷重バネ(復元機構)
21 帯状バネ
22,23 ドラム
24 ワイヤー
Claims (5)
- 固定端に構造体バネと構造体減衰を介して接続された構造体を対象とし、固定端から加振入力される地震動に対する構造体の応答加速度と応答変位をともに低減させるための免震機構であって、
前記構造体と前記固定端との間に慣性質量ダンパーとリリーフ機構付きオイルダンパーを設置して、前記固定端から前記構造体に加振入力される地震動による前記構造体の応答変位を前記リリーフ機構付きオイルダンパーによって抑制可能に構成するとともに、前記リリーフ機構付きオイルダンパーが備えるリリーフ機構を所定のリリーフ荷重において作動せしめて該リリーフ機構付きオイルダンパーによる減衰力を頭打ちにすることにより、前記構造体に作用する加振力を頭打ちにして該構造体の応答加速度も抑制可能に構成してなり、かつ、前記応答変位が所望の値に収まるように前記オイルダンパーの減衰係数を設定した上で加速度が所望の値になるように前記リリーフ荷重を設定してなることを特徴とする免震機構。 - 請求項1記載の免震機構であって、
慣性質量ダンパーを構造体バネと並列に設置するとともに、リリーフ機構付きオイルダンパーを前記慣性質量ダンパーと並列に設置してなることを特徴とする免震機構。 - 請求項1記載の免震機構であって、
構造体と固定端との間に付加バネを設置して該付加バネと直列に慣性質量ダンパーを設置し、該慣性質量ダンパーと前記付加バネのいずれか一方もしくは双方と並列にリリーフ機構付きオイルダンパーを設置してなることを特徴とする免震機構。 - 請求項1記載の免震機構であって、
構造体バネと並列に第1の慣性質量ダンパーを設置するとともに、該第1の慣性質量ダンパーと並列に第1のリリーフ機構付きオイルダンパーを設置し、
かつ、構造体と固定端との間に付加バネを設置して該付加バネと直列に第2の慣性質量ダンパーを設置し、該第2の慣性質量ダンパーと前記付加バネのいずれか一方もしくは双方と並列に第2のリリーフ機構付きオイルダンパーを設置してなることを特徴とする免震機構。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の免震機構であって、
構造体と固定端との間に復元機構としての定荷重バネを設置してなることを特徴とする免震機構。
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