以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、車両に搭載される衝突防止装置に適用する。本実施の形態に係る衝突防止装置は、隣接車線を走行中の先行車両が方向指示器作動後に車線変更して自車両の前方に進入してくるときの衝突の可能性を判定し、衝突の可能性がある場合には介入支援制御(自動ブレーキ、警報)を行う。
図1〜図6を参照して、本実施の形態に係る衝突防止装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る衝突防止装置の構成図である。図2は、自車両、先行車両、先先行車両の位置関係を示す模式図である。図3は、先先行車両が存在しない場合の走行シーンの模式図である。図4は、先行車両の車線に先先行車両が存在する場合の走行シーンの模式図である。図5は、先行車両の車線変更先の車線に先先行車両が存在する場合の走行シーンの模式図である。図6は、先行車両の車線及び車線変更先の車線に先先行車両が存在する場合の走行シーンの模式図である。
本実施の形態では、図2に示す車両の位置関係を例に挙げて説明する。この例は、自車両VDは片側二車線のうちの右側車線(自車両VDが走行中の自車線)を走行しており、先行車両VCは左側車線(先行車両VCが車線変更前に走行していた他車線)から右側車線に車線変更する場合である。左側車線(他車線)において先行車両VCよりも前方を走行している車両が存在する場合には先先行車両VAとし、右側車線(自車線)において先行車両VCよりも前方を走行している車両が存在する場合には先先行車両VBとする。なお、自車両と先行車両との位置関係や車線変更する方向、先行車両と先先行車両との位置関係については、他の場合にも適用可能である。
車両間の相対距離と相対速度の記号については、以下のように定義する。車両Viと車両Vjの場合、相対距離をdijとし、相対速度をvijとする。例えば、先先行車両VAと先行車両VBの場合、相対距離がdABとなり、相対速度がvABとなる。なお、相対速度は、近づく場合が正値であり、遠ざかる場合が負値である。
衝突防止装置1は、先行車両が方向指示器を作動してからΔT秒後の先行車両の存在確率分布と自車両の存在確率分布から衝突の可能性を判定する。特に、衝突防止装置1は、先行車両と先先行車両との位置関係及び相対距離と相対速度に応じてシーンを推定し、その推定したシーンに応じて先行車両が方向指示器を作動してから旋回運動を開始するまでに要する時間パラメータを設定し、その時間パラメータに応じてΔT秒を決定する。衝突防止装置1は、ミリ波レーダ10、カメラ11、ブレーキアクチュエータ20、警報装置21及びECU[Electronic Control Unit]30を備えている。
ミリ波レーダ10は、ミリ波を利用して先行車両及び先先行車両を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ10は、自車両の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ10では、ミリ波を左右方向でスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ10では、そのミリ波の送受信情報(自車両進行方向を中心とした送信角度、送信時刻、受信角度、受信時刻、受信強度など)をレーダ信号としてECU30に送信する。なお、ミリ波レーダ10は、スキャン範囲が隣接車線まで十分に検出可能なレーダとする。
カメラ11は、自車両の前方を撮像するカメラである。カメラ11は、自車両の前側の中央に取り付けられる。カメラ11は、自車両前方を撮像し、その画像情報を画像信号としてECU30に送信する。なお、カメラ11は、撮像範囲が隣接車線まで十分に撮像可能なカメラとする。また、カメラ11は、カラーカメラでもよいし、白黒カメラでもよい。また、カメラ11は、夜間でも撮像可能とするために、近赤外線カメラとすると好適である。
ブレーキアクチュエータ20は、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ20では、ECU30からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
警報装置21は、運転者に対して衝突の可能性があることを知らせるための警報音を出力する装置である。警報装置21では、ECU30から警報信号を受信すると、その警報信号に応じて警報音を出力する。
ECU30は、CPU[Central Processing Unit]や各種メモリ等からなり、衝突防止装置1を統括制御する。ECU30では、一定時間毎に、ミリ波レーダ10からのレーダ信号及びカメラ11からの画像信号を受信する。そして、ECU30では、そのレーダ信号及び画像信号を用いて、車両認識処理、方向指示器作動判定処理、シーン判別処理、時間パラメータ設定処理、衝突判定処理、介入支援制御を行い、必要に応じてブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ20に送信し、警報信号を警報装置21に送信する。なお、本実施の形態では、ミリ波レーダ10及びECU30における車両認識処理が特許請求の範囲に記載する周辺車両位置取得手段及び相対情報取得手段に相当し、ECU30におけるシーン判別処理及び時間パラメータ設定処理が特許請求の範囲に記載する予測手段に相当する。
車両認識処理について説明する。ECU30では、一定時間毎に、ミリ波の送受信情報(特に、受信情報がある反射点の情報)に基づいて、自車両VDの前方の車両の有無を判定する。ここでは、ミリ波の反射点をグルーピングしており、複数のグループが存在する場合があり、複数のグループが存在する場合には前方に複数の車両を認識できたことになる。
ECU30では、認識できた車両毎に、ミリ波の速度とミリ波の送信から受信までの時間に基づいて、自車両VDとその車両との相対距離を演算する。また、ECU30では、認識できた車両毎に、ミリ波の反射波の周波数変化(ドップラ効果)を利用して、自車両VDとその車両との相対速度を演算する。また、ECU30では、認識できた車両毎に、ミリ波の受信角度に基づいて、自車両VDとの相対方向を演算する。
ECU30では、認識できた各車両についての相対距離及び相対方向を比較し、その車両の中に他車線の先行車両VCが存在するかを判定する。先行車両VCが存在する場合、ECU30では、その先行車両VCに対する相対距離dCDと相対速度vCDを設定する。
先行車両VCが存在しかつ認識できた車両が2台以上の場合、ECU30では、先行車両VCを除いて認識できた各車両についての相対距離及び相対方向を比較し、その車両の中に他車線の先先行車両VA又は/及び自車線の先先行車両VBが存在するかを判定する。先先行車両VAが存在する場合、ECU30では、その先先行車両VAと自車両VDとの相対距離dADと相対速度vAD及び先行車両VCと自車両VDとの相対距離dCDと相対速度vCDに基づいて、先先行車両VAと先行車両VCとの相対距離dACと相対速度vACを設定する。先先行車両VBが存在する場合、ECU30では、その先先行車両VBと自車両VDとの相対距離dBDと相対速度vBD及び先行車両VCと自車両VDとの相対距離dCDと相対速度vCDに基づいて、先先行車両VBと先行車両VCとの相対距離dBCと相対速度vBCを設定する。
方向指示器作動判定処理について説明する。車両認識処理で先行車両VCを認識している場合、ECU30では、カメラ11の画像情報から、テンプレートマッチングなどで先行車両VCを抽出する。この際、先行車両VCの相対距離dCや相対方向などの情報を用いて、画像上でマッチングを行うエリアを限定するとよい。先行車両VCを抽出すると、ECU30では、抽出した先行車両VCの画像情報に基づいて、自車両VDの車線側に方向指示器が作動したか否かを判定する。この判定方法としては、例えば、先行車両VCの画像から方向指示器を抽出し、その方向指示器の画像の輝度変化に基づいて判定する。
シーン判別処理について説明する。方向指示器作動判定処理で先行車両VCの方向指示器が作動したと判定した場合、ECU30では、先先行車両VAが存在するかを判定するとともに、先先行車両VBが存在するかを判定する。先先行車両VAと先先行車両VBが共に存在しないと判定した場合、ECU30では、シーン1と判別する(図3参照)。シーン1は、先行車両VCの車線変更に影響を与えるような先先行車両が存在しないシーンであり、運転者が通常行うタイミングで車線変更を行うシーンである。
先先行車両V
Aのみ存在すると判定した場合(図4参照)、ECU30では、先先行車両V
Aと先行車両V
Cとの相対距離d
ACが条件式(1)を満たすか否かを判定するとともに、先先行車両V
Aと先行車両V
Cとの相対速度v
ACが条件式(2)を満たすか否かを判定する。式(1)におけるαは、先先行車両V
Aと先行車両V
Cとが接近しているか否かを判定するための閾値であり、実車実験等によって予め設定される。式(2)におけるβは、先先行車両V
Aと先行車両V
Cとが接近する相対速度が大きいか否かを判定するための閾値であり、実車実験等によって予め設定される。条件式(1)と条件式(2)を共に満たすと判定した場合、ECU30では、シーン2−aと判別する。シーン2−aは、先行車両V
Cが同じ車線の先先行車両V
Aとの接近度合いが大きい(距離が接近しかつ接近する相対速度が大きい)シーンである。一方、条件式(1)と条件式(2)の少なくとも一方を満たさないと判定した場合、ECU30では、シーン2−bと判別する。シーン2−bは、先行車両V
Cが同じ車線の先先行車両V
Aとの接近度合いが小さい(距離が離れているかあるいは接近する相対速度が小さい)シーンである。
先先行車両V
Bのみ存在すると判定した場合(図5参照)、ECU30では、先先行車両V
Bと先行車両V
Cとの相対距離d
BCが条件式(3)を満たすか否かを判定するとともに、先先行車両V
Bと先行車両V
Cとの相対速度v
BCが条件式(4)を満たすか否かを判定する。式(3)におけるχは、先先行車両V
Bと先行車両V
Cとが接近しているか否かを判定するための閾値であり、実車実験等によって予め設定される。式(4)におけるδは、先先行車両V
Bと先行車両V
Cとが接近する相対速度が大きいか否かを判定するための閾値であり、実車実験等によって予め設定される。条件式(3)と条件式(4)を共に満たすと判定した場合、ECU30では、シーン3−aと判別する。シーン3−aは、先行車両V
Cが車線変更先の車線の先先行車両V
Bとの接近度合いが大きいシーンである。一方、条件式(3)と条件式(4)の少なくとも一方を満たさないと判定した場合、ECU30では、シーン3−bと判別する。シーン3−bは、先行車両V
Cが車線変更先の車線の先先行車両V
Bとの接近度合いが小さいシーンである。
先先行車両V
A及び先先行車両V
Bが存在すると判定した場合(図6参照)、ECU30では、先先行車両V
Aと先行車両V
Cとの相対距離d
ACが条件式(5)を満たすか否かを判定するとともに、先先行車両V
Aと先行車両V
Cとの相対速度v
ACが条件式(6)を満たすか否かを判定する。式(5)におけるεは、先先行車両V
Aと先行車両V
Cとが接近しているか否かを判定するための閾値であり、実車実験等によって予め設定される。式(6)におけるφは、先先行車両V
Aと先行車両V
Cとが接近する相対速度が大きいか否かを判定するための閾値であり、実車実験等によって予め設定される。
条件式(5)と条件式(6)を共に満たすと判定した場合、ECU30では、先先行車両V
Bと先行車両V
Cとの相対距離d
BCが条件式(7)を満たすか否かを判定するとともに、先先行車両V
Bと先行車両V
Cとの相対速度v
BCが条件式(8)を満たすか否かを判定する。式(7)におけるφは、先先行車両V
Bと先行車両V
Cとが接近しているか否かを判定するための閾値であり、実車実験等によって予め設定される。式(8)におけるγは、先先行車両V
Bと先行車両V
Cとが接近する相対速度が大きいか否かを判定するための閾値であり、実車実験等によって予め設定される。条件式(7)と条件式(8)を共に満たすと判定した場合、ECU30では、シーン4−aと判別する。シーン4−aは、先行車両V
Cが同じ車線の先先行車両V
Aとの接近度合いが小さいが、車線変更先の車線の先先行車両V
Bとの接近度合いが大きいシーンである。一方、条件式(7)と条件式(8)の少なくとも一方を満たさないと判定した場合、ECU30では、シーン4−bと判別する。シーン4−bは、先行車両V
Cが同じ車線の先先行車両V
Aとの接近度合いが小さく、車線変更先の車線の先先行車両V
Bとの接近度合いも小さいシーンである。
条件式(5)と条件式(6)の少なくとも一方を満たさないと判定した場合、ECU30では、先先行車両VBと先行車両VCとの相対距離dBCが条件式(3)を満たすか否かを判定するとともに、先先行車両VBと先行車両VCとの相対速度vBCが条件式(4)を満たすか否かを判定する。条件式(3)と条件式(4)を共に満たすと判定した場合、ECU30では、シーン4−cと判別する。シーン4−cは、先行車両VCが同じ車線の先先行車両VAとの接近度合いが大きく、車線変更先の車線の先先行車両VBとの接近度合いも大きいシーンである。一方、条件式(3)と条件式(4)の少なくとも一方を満たさないと判定した場合、ECU30では、シーン4−dと判別する。シーン4−dは、先行車両VCが同じ車線の先先行車両VAとの接近度合いが大きいが、車線変更先の車線の先先行車両VBとの接近度合いが小さいシーンである。
時間パラメータ設定処理について説明する。シーン判別処理でシーン1と判別した場合、ECU30では、先行車両VCが方向指示器を作動させてから旋回を始めるまでの時間パラメータとして基準値Aを設定する。基準値Aは、車線変更時に方向指示器を作動させてから旋回運動を開始するまでの標準的な時間であり、実験等によって予め設定される。なお、基準値Aについては、学習などによって運転者毎に設定してもよい。
シーン判別処理でシーン2−aと判別した場合、ECU30では、時間パラメータとして基準値Aから補正値Bを減算した値を設定する。このシーン2−aでは、先行車両VCが同じ車線の先先行車両VAとの接近度合いが大きいので、先先行車両VAを追い越すなどのために、先先行車両の存在しない隣接車線に通常よりも急いで車線変更を開始すると予測されるため、時間パラメータとして基準値Aより短い時間を設定する。
シーン判別処理でシーン2−bと判別した場合、ECU30では、時間パラメータとして基準値Aを設定する。このシーン2−bでは、先行車両VCが同じ車線の先先行車両VAとの接近度合いが小さいので、通常と同様に車線変更すると予測されるため、時間パラメータとして基準値Aを設定する。なお、通常よりもゆっくりと車線変更すると予測される場合には、基準値Aより長い時間を設定してもよい。
シーン判別処理でシーン3−aと判別した場合、ECU30では、時間パラメータとして基準値Aから補正値Cを減算した値を設定する。このシーン3−aでは、先行車両VCが車線変更先の車線の先先行車両VBとの接近度合いが大きいにもかかわらず車線変更を行おうとしているので、高速道路出口での退出や前方工事の回避などのために、通常よりも急いで車線変更を開始すると予測されるため、時間パラメータとして基準値Aより短い時間を設定する。
シーン判別処理でシーン3−bと判別した場合、ECU30では、時間パラメータとして基準値Aを設定する。このシーン3−bでは、先行車両VCが車線変更先の車線の先先行車両VBとの接近度合いが小さいので、通常と同様に車線変更すると予測されるため、時間パラメータとして基準値Aを設定する。なお、通常よりもゆっくりと車線変更すると予測される場合には、基準値Aより長い時間を設定してもよい。
シーン判別処理でシーン4−aと判別した場合、ECU30では、時間パラメータとして基準値Aから補正値Dを減算した値を設定する。このシーン4−aでは、先行車両VCが同じ車線に接近度合いの大きい先先行車両VAが存在する状況で車線変更先の車線の先先行車両VBとの接近度合いが大きいにもかかわらず車線変更を行おうとしているので、先先行車両VAを追い越すあるいは高速道路出口での退出や前方工事の回避などのために、通常よりも急いで車線変更を開始すると予測されるため、時間パラメータとして基準値Aより短い時間を設定する。
シーン判別処理でシーン4−bと判別した場合、ECU30では、時間パラメータとして基準値Aから補正値Eを減算した値を設定する。このシーン4−bでは、先行車両VCが同じ車線に接近度合いの大きい先先行車両VAが存在する状況で車線変更先の車線の先先行車両VBとの接近度合いが小さいので、先先行車両VAを追い越すなどのために、通常よりも急いで車線変更を開始すると予測されるため、時間パラメータとして基準値Aより短い時間を設定する。
シーン判別処理でシーン4−cと判別した場合、ECU30では、時間パラメータとして基準値Aから補正値Fを減算した値を設定する。このシーン4−cでは、先行車両VCが同じ車線に接近度合いの小さい先先行車両VAが存在する状況で車線変更先の車線の先先行車両VBとの接近度合いが大きいにもかかわらず車線変更を行おうとしているので、高速道路出口での退出や前方工事の回避などのために、通常よりも急いで車線変更を開始すると予測されるため、時間パラメータとして基準値Aより短い時間を設定する。
シーン判別処理でシーン4−dと判別した場合、ECU30では、時間パラメータとして基準値Aを設定する。このシーン4−dでは、先行車両VCが同じ車線に接近度合いの小さい先先行車両VAが存在する状況で車線変更先の車線の先先行車両VBとの接近度合いも小さいので、通常と同様に車線変更すると予測されるため、時間パラメータとして基準値Aを設定する。なお、通常よりもゆっくりと車線変更すると予測される場合には、基準値Aより長い時間を設定してもよい。
なお、各補正値B,C,D,E,Fは、実験等によって予め設定された一定値でもよいしあるいは相対距離や相対速度に応じた可変値としてもよい。特に、補正値Dについては、他のシーンの補正値よりも大きな値とし、時間パラメータを大きく減少させる値としてもよい。
衝突判定処理について説明する。時間パラメータ設定処理で時間パラメータを設定すると、ECU30では、時間パラメータに移動時間を加算した値をΔTとして設定する。移動時間は、先行車両VCが旋回運動を開始してから自車両VDの車線に進入までに要する時間であり、実験等で予め設定された一定値でもよいしあるいは先行車両VCの速度に応じた可変値としてもよい。
ECU30では、マップや演算式などにより、先行車両VCが方向指示器作動後のΔT秒後に存在する位置についての正規分布の平均と分散を求める。そして、ECU30では、その平均と分散から正規分布の確率分布を演算し、その正規分布の確率分布からΔT秒後の先行車両VCの存在確率分布PCを演算する(図2参照)。存在確率分布は、ΔT秒後に車両が存在する各確率を同心の楕円状又は円状の各領域で表したものであり、確率が大きくなるほど領域が大きくなる。また、同様の処理により、ECU30では、ΔT秒後の自車両VDの存在確率分布PDを演算する(図2参照)。
ECU30では、先行車両VCのΔT秒の存在確率分布PCと自車両VDのΔT秒後の存在確率分布PDに基づいて、先行車両VCと自車両VDが衝突の可能性があるか否かを判定する。ここでは、存在確率分布PCと存在確率分布PDが重なるか否かで判定を行う。なお、衝突可能性の判定では、衝突の可能性があるか否かで判定してもよいし、複数の段階で衝突の可能性を判定してもよい。
介入支援制御について説明する。衝突判定処理で衝突の可能性があると判定している場合、ECU30では、自車両VDと先行車両VCとの相対距離dCD及び相対速度vCDに基づいて、衝突を回避する(先行車両VCの存在確率分布PCと自車両VDの存在確率分布PDが重ならない)ための目標減速度を設定する。そして、ECU30では、その目標減速度になるために必要な各輪のホイールシリンダの目標ブレーキ油圧を設定し、その目標ブレーキ油圧をブレーキ制御信号としてブレーキアクチュエータ20に送信する。さらに、ECU30では、警報音を出力するための警報信号を警報装置21に送信する。
図1〜図6を参照して、衝突防止装置1における動作について説明する。特に、ECU30における処理については図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、図1のECUにおける処理の流れを示すフローチャートである。
ミリ波レーダ10では、一定時間毎に、自車両VDの前方にミリ波をスキャンしながら送信するとともに反射してきたミリ波を受信し、そのミリ波の送受信情報をレーダ信号としてECU30に送信している。ECU30では、そのレーダ信号を受信し、ミリ波の送受信情報を取得する。
カメラ11では、一定時間毎に、自車両VDの前方を撮像し、その画像情報を画像信号としてECU30に送信している。ECU30では、その画像信号を受信し、画像情報を取得する。
一定時間毎に、ECU30では、ミリ波の送受信情報に基づいて、隣接車線の前方に先行車両VCが存在するか否かを判定する(S1)。先行車両VCが存在する場合、ECU30では、先行車両VCと自車両VDとの相対距離dCD、相対速度vCDを設定する(S1)。なお、先行車両VCが存在しない場合、ECU30では、以降の処理は行わずに、一定時間後に先行車両VCの認識処理を行う。
また、ECU30では、ミリ波の送受信情報に基づいて、先行車両VCと同じ車線の先先行車両VA及び/又は自車両VDと同じ車線の先先行車両VBが存在するか否かを判定する(S2)。先先行車両VA及び/又は先先行車両VBが存在する場合、ECU30では、先先行車両VAと先行車両VCとの相対距離dAC、相対速度vAC及び/又は先先行車両VBと先行車両VCとの相対距離dBC、相対速度vBCを設定する(S2)。
ECU30では、画像情報に基づいて、先行車両VCが自車両VDの車線側に方向指示器を作動させたか否かを判定する(S3)。S3にて先行車両VCが方向指示器を作動させていないと判定した場合、ECU30では、以降の処理は行わずに、一定時間後に先行車両VCの認識処理を行う。
S3にて先行車両VCが方向指示器を作動させたと判定した場合、ECU30では、先先行車両VA,VBの有無及び先先行車両VA,VBと先行車両VCとの相対距離dAC,dBCと相対速度vAC,vBCに基づいて、シーンを判別する(S4)。ここでは、先先行車両VA,VBが存在しない場合にはシーン1と判別され、先先行車両VAのみが存在し、先行車両VCと先先行車両VAとの接近度合いが大きい場合にはシーン2−aと判別され、先先行車両VAのみが存在し、先行車両VCと先先行車両VAとの接近度合いが小さい場合にはシーン2−bと判別され、先先行車両VBのみが存在し、先行車両VCと先先行車両VBとの接近度合いが大きい場合にはシーン3−aと判別され、先先行車両VBのみが存在し、先行車両VCと先先行車両VBとの接近度合いが小さい場合にはシーン3−bと判別され、先先行車両VA,VBが共に存在し、先行車両VCと先先行車両VAとの接近度合いが大きくかつ先行車両VCと先先行車両VBとの接近度合いが大きい場合にはシーン4−aと判別され、先先行車両VA,VBが共に存在し、先行車両VCと先先行車両VAとの接近度合いが大きくかつ先行車両VCと先先行車両VBとの接近度合いが小さい場合にはシーン4−bと判別され、先先行車両VA,VBが共に存在し、先行車両VCと先先行車両VAとの接近度合いが小さくかつ先行車両VCと先先行車両VBとの接近度合いが大きい場合にはシーン4−cと判別され、先先行車両VA,VBが共に存在し、先行車両VCと先先行車両VAとの接近度合いが小さくかつ先行車両VCと先先行車両VBとの接近度合いが小さい場合にはシーン4−dと判別される。
ECU30では、判別したシーンに応じて時間パラメータを設定する(S5)。ここでは、シーン1の場合には時間パラメータとして基準値Aが設定され、シーン2−aの場合には時間パラメータとして(基準値A−補正値B)が設定され、シーン2−bの場合には時間パラメータとして基準値Aが設定され、シーン3−aの場合には時間パラメータとして(基準値A−補正値C)が設定され、シーン3−bの場合には時間パラメータとして基準値Aが設定され、シーン4−aの場合には時間パラメータとして(基準値A−補正値D)が設定され、シーン4−bの場合には時間パラメータとして(基準値A−補正値E)が設定され、シーン4−cの場合には時間パラメータとして(基準値A−補正値F)が設定され、シーン4−dの場合には時間パラメータとして基準値Aが設定される。
ECU30では、設定した時間パラメータに応じて、移動時間を加算した値をΔTとして設定する。そして、ECU30では、先行車両VCが方向指示器を作動させてからΔT秒後の先行車両VCの存在確率分布を演算する(S6)。また、ECU30では、先行車両VCが方向指示器を作動させてからΔT秒後の自車両VDの存在確率分布を演算する(S7)。
ECU30では、ΔT秒後の先行車両VCの存在確率分布と自車両VDの存在確率分布に基づいて、先行車両VCと自車両VDとが衝突する可能性があるか否かを判定する(S8)。S8にて衝突の可能性がないと判定した場合、ECU30では、以降の処理は行わずに、一定時間後に先行車両VCの認識処理を行う。
S8にて衝突の可能性があると判定した場合、ECU30では、衝突を回避するための目標減速度を設定し、その目標減速度になるために必要な目標ブレーキ油圧をブレーキ制御信号としてブレーキアクチュエータ20に送信するとともに、警報音を出力するための警報信号を警報装置21に送信する(S9)。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキアクチュエータ20では、ブレーキ制御信号に基づいて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を加圧する。これによって、自車両に自動ブレーキが作動し、減速する。また、警報信号を受信すると、警報装置21では、その警報信号に基づいて警報音を出力する。
この運転支援装置1によれば、先行車両と先先行車両との有無(位置関係)及び先行車両と先先行車両との相対距離や相対速度に応じて方向指示器作動後に先行車両が旋回を開始するまでの時間パラメータを予測することにより、その予測した時間パラメータに応じて先行車両の方向指示器作動後の挙動(ΔT秒後の存在確率分布)を高精度に予測することができる。その結果、先行車両と自車両との衝突判定を高精度に行うことができる。
特に、運転支援装置1では、先行車両と先先行車両との有無及び先行車両と先先行車両との相対距離や相対速度に基づいて先行車両がおかれている走行状況(シーン)を推定することにより、シーンに応じて時間パラメータを補正することができ、適切な時間パラメータを設定することができる。また、運転支援装置1では、先行車両の走行車線と車線変更先の車線(自車両の走行車線)に先先行車両が存在するか否かに加えて、先先行車両が存在する場合には先先行車両と先行車両との相対距離や相対速度を考慮してシーンを判別することにより、適切なシーンを設定することができる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では衝突の可能性がある場合には運転支援(自動ブレーキ、警報)を行う衝突防止装置に適用したが、車線変更する先行車両の予測だけを行う装置や衝突判定だけを行う装置などの他の運転支援装置に適用してもよい。また、運転支援としては、自動ブレーキと警報のいずれか一方だけを行ってもよいしあるいは情報提供などの他の運転支援を行ってもよい。
また、本実施の形態では先行車両が方向指示器を作動後に先先行車両との関係で旋回を開始するまでの時間パラメータを予測する構成としたが、先行車両以外の車両(例えば、自車両)が方向指示器を作動後にその周辺車両との関係で旋回を開始するまでの時間パラメータを予測する構成としてもよい。
また、本実施の形態では先行車両と先先行車両との位置関係及び相対距離と相対速度の両方を用いてシーンを判別する構成としたが、位置関係だけでシーンを判別してもよいし、位置関係及び相対距離と相対速度のいずれか一方だけを用いてシーンを判別してもよい。また、相対距離と相対速度を用いたシーンの判別条件についても、他の判別条件を適用してもよい。
また、本実施の形態ではシーン別で設定した時間パタメータに応じたΔT秒後の自車両と先行車両の存在確率分布に基づいて衝突判定を行う構成としたが、シーン別で設定した時間パタメータを用いた他の方法によって衝突判定を行ってもよい。
また、本実施の形態では先行車両や先先行車両を検出する手段としてミリ波レーダを適用したが、レーザレーダやカメラ(例えば、先行車両の方向指示器の作動状態を検出するためのカメラを利用)などの他の検出手段を適用してもよい。レーザレーダやカメラの場合、レーダ情報や画像情報に基づいて先行車両を検出できると、その先行車両との相対距離を演算し、その相対距離を時間微分することによって相対速度を演算する。したがって、レーダ無しで、カメラだけでも構成できる。また、先行車両や先先行車両の位置や速度の情報を車車間通信で取得し、その取得した情報を用いて、先行車両や先先行車両の有無の判断、相対距離及び相対速度の演算を行ってもよい。