以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明が適用された第1実施形態の視界提供装置1の概略構成を示すブロック図である。また図2は、視界提供装置1を構成する各カメラ11〜13の設置を示す説明図である。
視界提供装置1は、車両に搭載された装置であって、ミラー(視界提供手段)に写し出される後方視界と、表示部(視界提供手段)に映し出される後方視界とを切り換えながら少なくとも何れかの後方視界を運転者に提供する装置である。
具体的には、図1に示すように、視界提供装置1は、制御部10と、各種カメラ11〜13(撮像手段、視界提供手段)と、照度センサ14(走行検出手段、照度検出手段)と、車速センサ15(走行検出手段、速度検出手段)と、乗員検出部16(走行検出手段、着座検出手段)と、各種表示スイッチ(SW)17,18と、各種表示部21〜23(表示手段)と、各種ドアミラー駆動部23,24と、を備えている。
各種カメラ11〜13としては、図2に示すように、車両の左右の側面から各側方に突出して配置された収納部材30の内部においてそれぞれ配置された右側カメラ11および左側カメラ12(図2では図示省略)と、車両の後方における天井部分から上側に向けて突出する収納部材50の内部において配置された中央後方カメラ13とを備えている。これらのカメラ11〜13は、それぞれ車両の後方に向けて配置されている。
ここで、右側カメラ11による撮像範囲は、右ドアミラー33によって運転者による通常の利用時に写し出される後方視界の範囲と、略一致するよう設定されている。また、左側カメラ12による撮像範囲は、左ドアミラー34によって運転者による通常の利用時に写し出される後方視界の範囲と、略一致するよう設定されている。
さらに、中央後方カメラ13による撮像範囲は、ルームミラー40(図4参照)によって運転者による通常の利用時に写し出される後方視界の範囲と、略一致するよう設定されている。そして、これらのカメラ11〜13は、各撮像画像を制御部10に対して送信する。
照度センサ14および車速センサ15は、周知のセンサである。即ち、照度センサ14は、図1に示すように、車室内の所定部位(例えばダッシュボード上)における照度を検出し、この検出結果を制御部10に対して送信する。また、車速センサ15は、自車両の車速を検出し、この検出結果を制御部10に対して送信する。
乗員検出部16は、自車両の後部座席に乗員が乗車していることを検出し、検出結果を制御部10に対して送信する。具体的には例えば、乗員検出部16は、後部座席に着座する乗員を検出する着座センサとして構成されていてもよいし、車内を撮像範囲とするカメラによって後部座席に着座する乗員を撮像し、画像処理技術を用いて乗員の有無を検出するようにされていてもよい。
サイドカメラ表示スイッチ17は、右表示部21および左表示部22に対して右側カメラ11および左側カメラ12による撮像画像の表示を許可するか否かを設定するためのスイッチであって、乗員が直接操作することによってON・OFFするよう構成されている。サイドカメラ表示スイッチ17の設定状態(ON状態であるかOFF状態であるか)は、制御部10によって検出することができるよう構成されている。
なお、右表示部21は右側カメラ11による撮像画像を表示する際に利用され、左表示部22は左側カメラ12による撮像画像を表示する際に利用される。
中央カメラ表示スイッチ18は、中央表示部23に対して中央後方カメラ13による撮像画像の表示を許可するか否かを設定するためのスイッチであって、乗員が直接操作することによってON・OFFするよう構成されている。中央カメラ表示スイッチ18の設定状況も、制御部10によって検出することができるよう構成されている。なお、各表示部21〜23は、周知のディスプレイとして構成されていればよい。
右ドアミラー駆動部24および左ドアミラー駆動部25は、制御部10からの指令に応じて右ドアミラー33および左ドアミラー34をそれぞれ開閉させる。ドアミラー33,34の開閉状態については、図3を用いて説明する。
図3(a)はオープン(開)状態のドアミラーを示す説明図、図3(b)はクローズ(閉)状態のドアミラーを示す説明図である。なお、図3においては、右ドアミラー33についてのみ説明するが、左ドアミラー34についても同様である。
図3(a)に示すように、右ドアミラー33は、オープン状態の際に、運転者に対して後方の所定範囲内の視界を提供することができるよう構成されている。また、図3(b)に示すように、右ドアミラー33は、クローズ状態の際には後方の視界を提供することができないが、オープン状態のときと比較して車両側方への突出量(前面投影面積)が少なくなるため、走行時の空気抵抗および風切音(騒音)が小さく抑えられる。
次に、制御部10は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイコンとして構成されており、各カメラ11〜13による撮像画像を各表示部21〜23に表示させる処理や、車速センサ15や乗員検出部16等による検出結果に基づいて、各カメラ11〜13および各表示部21〜23、或いは各ドアミラー駆動部24,25のうちの少なくとも1つを選択して作動させる処理(切換手段)を実施する。
ここで、各ドアミラー33,34,40および表示部21〜23の配置について図4を用いて説明する。図4(a)はドアミラー33,34が完全オープン状態とされた場合を示し、図4(b)はドアミラー33,34が完全クローズ状態とされた場合を示す。
右表示部21および左表示部22は、図4(a)および図4(b)に示すように、各ドアミラー33,34よりも内側の運転席近傍に配置されている。また、中央表示部23は、ルームミラー40に近接し、かつ、運転者が前方を確認する際の視界を阻害しない領域(図4に示す例ではルームミラー40の上部)に配置されている。
このように構成された視界提供装置1においては、条件に応じて運転者が後方を確認するのに利用される手段を切り換える処理が実施される。具体的には、ドアミラー33,34がオープン状態(使用可能な状態)のときには表示部21,22をOFF状態とし(図3(a)の状態)、ドアミラー33,34がクローズ状態(使用不能な状態)のときには表示部21,22をON状態とする(図3(b)の状態)。
このような処理について、図5を用いて説明する。図5は、制御部10が実行する側方視界切換処理を示すフローチャートである。
側方視界切換処理は、予め設定された所定周期で繰り返し実行される処理であって、図5に示すように、まず、各種センサ(照度センサ14、車速センサ15、乗員検出部16)による検出結果、およびサイドカメラ表示スイッチ17の設定状態を表す各種信号を取得する(S100:走行取得手段)。そして、取得した各種信号に基づいてサイドカメラ表示スイッチ17がON状態であるか否かを判定する(S110)。
サイドカメラ表示スイッチ17がOFF状態であれば(S110:NO)、直ちに側方視界切換処理を終了する。また、サイドカメラ表示スイッチ17がON状態であれば(S110:YES)、車速センサ15によって検出された車速Vが予め設定された閾値V1以上であるか否かを判定する(S120)。
車速Vが閾値V1以上であれば(S120:YES)、後述するS140の処理に移行する。また、車速Vが閾値V1未満であれば(S120:NO)、照度センサ14によって検出された照度が予め設定された一定値(照度の閾値)以上であるか否かを判定する(S130)。
なお、この「一定値」は、車両の周囲が暗くなったときに運転者がドアミラー33,34を利用して後方を確認することが困難になる程度の明るさに設定されていればよい。具体的に「一定値」は、ドアミラー33,34の手前のガラスに車室内の物品が写り込む程度の照度や、各カメラが暗視カメラ(赤外線カメラ等)としての機能を有する場合に、カメラが暗視カメラとしての機能を発揮することができる程度の照度等に設定されていればよい。
照度が一定値未満であれば(S130:NO)、後述するS170の処理に移行する。また、照度が一定値以上であれば(S130:YES)、S140の処理に移行する。
S140の処理では、ドアミラー33,34が完全にクローズ状態であるか否かを判定する(S140)。ドアミラー33,34が完全にクローズ状態でなければ(S140:NO)、各ドアミラー駆動部23,24に対してドアミラー33,34をクローズ状態にするよう指示し(S150)、右側カメラ11および左側カメラ12による撮像画像を右表示部21および左表示部22にそれぞれ表示させる(S160)。そして、側方視界切換処理を終了する。
また、ドアミラーが完全にクローズ状態であれば(S140:YES)、直ちに右側カメラ11および左側カメラ12による撮像画像を右表示部21および左表示部22にそれぞれ表示させる(S160)。そして、側方視界切換処理を終了する。
一方、S170の処理では、ドアミラー33,34が完全にオープン状態であるか否かを判定する(S170)。ドアミラー33,34が完全にオープン状態でなければ(S170:NO)、各ドアミラー駆動部23,24に対してドアミラー33,34をオープン状態にするよう指示し(S180)、側方視界切換処理を終了する。
また、ドアミラー33,34が完全にオープン状態であれば(S170:YES)、右表示部21および左表示部22を消灯させ(S190)、側方視界切換処理を終了する。
即ち、上記の側方視界切換処理において視界提供装置1を構成する各構成要素は、図6(a)に示すような作動をする。なお、図6(a)は、本実施形態における表示部21,22およびドアミラー33,34の作動タイミングを示すタイミングチャートである。また、図6(a)において横軸は時間tを示す。
図6(a)に示すように、動作条件がON状態となると(即ち、S120またはS130で肯定判定された場合)、ドアミラー33,34は各ドアミラー駆動部24,25が作動されることによって、完全オープン状態から完全クローズ状態へ移行するが(S150)、このとき、ドアミラー33,34(各ドアミラー駆動部23,24)の作動とほぼ同時に、表示部21,22はON状態(完全点灯状態)とされる(S160)。
そして、動作条件がOFF状態となると(即ち、S120およびS130で否定された場合)、ドアミラー33,34は完全クローズ状態から完全オープン状態へ移行する(S180)。このとき、ドアミラー33,34が完全オープン状態になるまでは表示部21,22をON状態のままにする。続いて、ドアミラー33,34が完全オープン状態になると(S170:YES)、表示部21,22をOFF状態(完全消灯状態)とする(S190)。
なお、ドアミラー33,34が完全オープン状態から完全クローズ状態へ移行する作動を開始する前に、表示部21,22をON状態にしてもよい。具体的には、S160の処理を、S140の処理の直前に実施するようにすればよい。
ところで、視界提供装置1においては、運転者が後方を確認するのに利用される手段を切り換える処理として、ルームミラー40に写し出される視界と、中央表示部23に写し出す視界とを切り換える処理(併用する処理)も実施される。この処理について、図7を用いて説明する。図7は、制御部10が実行する後方視界切換処理を示すフローチャートである。
後方視界切換処理は、予め設定された所定周期毎に繰り返し実施される処理であって、まず、乗員検出部16による検出結果や、中央カメラ表示スイッチ18の設定状態を表す各種信号を取得する(S300:走行取得手段)。そして、中央カメラ表示スイッチ18がON状態にされているか否かを判定する(S310)。
中央カメラ表示スイッチ18がOFF状態にされていれば(S310:NO)、後方視界切換処理を終了する。また、中央カメラ表示スイッチ18がON状態にされていれば(S310:YES)、S300にて取得した検出結果に基づいて、後部座席に乗員が着座しているか否かを判定する(S320)。
後部座席に乗員が着座していれば(S320:YES)、中央表示部23をON状態に設定し(S330)、後方視界切換処理を終了する。また、後部座席に乗員が着座していなければ(S340:NO)、中央表示部23をOFF状態に設定し(S340)、後方視界切換処理を終了する。
以上のように詳述した視界提供装置1においては、複数の視界提供手段(ドアミラー33,34,40と、カメラ11〜13および表示部21〜23と)は、車両において互いに異なる部位に配置され、それぞれが車両周囲の特定範囲内を含む視界を提供する。そして、制御部10は、各視界切換処理にて、外部指令に応じてドアミラー33,34,40からなる視界提供手段と、カメラ11〜13および表示部21〜23を有する視界提供手段とから、少なくとも1つを選択して利用可能な状態とする。
このような視界提供装置1によれば、運転者に対して特定範囲内の視界を複数の視界提供手段を用いて提供することができるので、運転者は最も都合のよい視界提供手段を選択して利用することができる。また、何れかの視界提供手段が利用不可能な状態であっても、異なる部位に配置された他の視界提供手段が利用可能であれば、運転者に視界を提供することができる。
また、制御部10は、各視界切換処理にて、当該車両の走行状態または走行環境を検出する照度センサ14,車速センサ15,乗員検出部16による検出結果を取得する。そして、この取得結果に応じて、少なくとも1つの視界提供手段の利用に支障を来す虞があるか否かを判断し、少なくとも利用に支障を来す虞があると判断した視界提供手段以外の視界提供手段を選択させる。
このような視界提供装置1によれば、自動的に最も都合のよい視界提供手段を選択して利用することができる。このとき、少なくとも利用に支障を来す虞がある視界提供手段以外の視界提供手段を利用可能にすることができる。
続いて、視界提供装置1においては、複数の視界提供手段のうちの少なくとも1つは、車両における後方を特定範囲内とするドアミラー33,34,40を含む構成とされており、複数の視界提供手段のうちの少なくとも他の1つは、特定範囲内を撮像するカメラ11〜13、およびカメラ11〜13による撮像画像を表示する表示部21〜23を含む構成とされている。
このような視界提供装置1によれば、視界提供手段をドアミラー33,34,40として構成する場合と、視界提供手段をカメラ11〜13および表示部21〜23として構成する場合との、それぞれのメリットに応じて利用する視界提供手段を切り換えることができる。
また、当該車両は、格納可能なドアミラー33,34を備え、制御部10は、各視界切換処理にて、当該車両の走行速度の情報である速度情報を検出する車速センサ15による検出結果を取得し、取得された速度情報が予め設定された速度閾値(V1)以上になった場合に、ドアミラー33,34の利用に支障を来すものとしてドアミラー33,34を格納し、カメラ11〜13および表示部21〜23の利用を選択させる。
このような視界提供装置1によれば、走行速度が速くなった場合にドアミラー33,34の利用を禁止し、このドアミラー33,34を格納するので、高速走行時の空気抵抗や騒音を軽減することができる。また、表示部21〜23をドアミラー33,34よりも運転者の正面に近い位置に配置しているので、高速走行時における運転者の視線移動を最低限に抑制することができる。
さらに、制御部10は、ドアミラー33,34,40を格納させる際に、カメラ11〜13および表示部21〜23を作動させる。
このような視界提供装置1によれば、ドアミラー33,34が利用不可能な状態になる前に、カメラ11〜13および表示部21〜23を利用可能な状態にしておくことができるので、ドアミラー33,34を利用不可能な状態にしたときに、運転者の視線を表示部21〜23に直ちに誘導することができる。
さらに、制御部10は、車両の周囲の明るさを検出する照度センサ14による検出結果を取得し、制御部10は、取得された照度が予め設定された照度閾値(一定値)未満になった場合に、ドアミラー33,34,40の利用に支障を来すものとして、カメラ11〜13および表示部21〜23の利用を選択させる。
このような視界提供装置1によれば、周囲が暗くなったときに、ガラスによる写り込み等の虞がない、カメラ11〜13および表示部21〜23を利用した視界を提供することができる。
さらに、視界提供装置1においてはルームミラー40を備え、制御部10は、後部座席に乗員が着座しているか否かを検出する乗員検出部16による検出結果を取得し、後部座席に乗員が着座している旨が取得されると、ルームミラー40の利用に支障を来すものとして、カメラ11〜13および表示部21〜23の利用を選択させる。
このような視界提供装置1によれば、後部座席に乗員が着座しているときに、ルームミラー40の利用に支障を来す(つまり、運転者がルームミラー40を利用して後方視界を確認し難くなる)ものとして、カメラ11〜13および表示部21〜23による視界を提供することができる。
[第1実施形態の変形例]
なお、本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
例えば、上記実施形態においては、表示部21,22をON・OFFの状態を切り換える際に、直ちに完全点灯状態または完全消灯状態としたが、表示部21,22が表示する画像の輝度を徐々に変更するようにしてもよい。具体的には、図6(b)に示すように、ドアミラー33,34を完全オープン状態から完全クローズ状態へ移行する際に、この作動に連動して、表示部21,22が表示する画像の輝度を連続的に徐々に明るく変更し、ドアミラー33,34が完全オープン状態になったときに最大輝度になるようにすればよい。
また、ドアミラー33,34を完全クローズ状態から完全オープン状態へ移行する際に、この作動に連動して、表示部21,22が表示する画像の輝度を連続的に徐々に暗く変更し、ドアミラー33,34が完全クローズ状態になったときに完全に消灯するようにすればよい。
このような視界提供装置1によれば、表示画像の明るさを突然明るくする構成と比較して、表示部21〜23の作動開始時に、表示部21〜23に対して運転者の注意を引き付け過ぎることを防止することができる。つまり、表示部21〜23の作動時に運転者に違和感を与えることを防止することができる。
[第2実施形態]
次に、別形態の視界提供装置2について説明する。本実施形態(第2実施形態)以下の実施形態では、第1実施形態の視界提供装置1と異なる箇所のみを詳述し、第1実施形態の視界提供装置1と同様の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
図8は第2実施形態の視界提供装置2の概略構成を示すブロック図である。視界提供装置2においては、第1実施形態の視界提供装置1の構成に加えて、図2に示すように、視線検出装置61と、右ウインカ62と、左ウインカ63と、ギヤポジションスイッチ64と、クルーズコントロールシステム65と、ブレーキスイッチ67(制動検出手段)と、レインセンサ68(路面状態検出手段)とを備えている。なお、視線検出装置61、右ウインカ62、左ウインカ63は、本発明でいう意思検出手段に相当する。
視線検出装置61は、例えば、運転者の顔を撮像する赤外線カメラと、このカメラによる撮像画像を画像処理する画像処理装置とを備えており、画像処理装置が画像処理によって運転者の視線方向を検出し、この検出結果を制御部10に送るよう構成されている。また、右ウインカ62および左ウインカ63は、一般的な車両に配置された方向指示器と同様の構成にされており、各ウインカ62,63の作動状態(即ち、ON状態かOFF状態か)を制御部10が検出できるように構成されている。
ギヤポジションスイッチ64は、定期的、或いはシフトレバーの位置(具体的には、例えば車両がオートマチック車である場合には、シフトレバーの位置が「P(パーキング)」、「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」等の何れであるか)が変更される度に、シフトレバーの位置の情報を制御部10に送る。
クルーズコントロールシステム65は、運転者がアクセルを踏むことなく車両を設定された速度で走行させる周知のシステムであり、本実施形態においては、当システム65が作動しているか否かを制御部10により検出可能に構成されている。ブレーキスイッチ67は、ブレーキが作動したときに(ブレーキが踏まれたときに)ON状態にされるスイッチであって、このスイッチの作動状態を制御部10が検出できるように構成されている。
レインセンサ68は、例えばフロントガラス上の水滴または雪等を検出することによって降雨または降雪を検出し、この検出結果を制御部10に送る。なお、本実施形態においては、レインセンサ68は、路面が滑りやすい状態であるか否かを検出するために用いられる。
即ち、制御部10は、フロントガラス上に水滴等が存在する場合には、路面も濡れた状態であると推定する。そして、路面が乾いた状態よりも滑りやすい状態であると判断することになる。なお、本実施形態以下のドアミラー駆動部24,25は、急峻にドアミラー33,34を開閉できるアクチュエータを搭載している。
また、本実施形態以下の実施形態においては、各種カメラ11〜13、照度センサ14、乗員検出部16、各種表示スイッチ(SW)17,18、各種表示部21〜23については、備えられていなくてもよい。
次に、本実施形態の視界提供装置2における作動について、図9〜図12を用いて説明する。図9は制御部10が実行するミラー格納制御処理を示すフローチャート、図10および図11はドアミラー33,34の作動状態を示す説明図である。
また、図12は、ドアミラー33,34をドアの内部に収容する際の作動を示す説明図である。なお、ミラー格納制御処理の処理開始時には、ドアミラー33,34は、完全クローズ状態にされているものとする。
格納制御処理は、イグニッションスイッチ(図示省略)等の車両の電源がON状態にされると開始される処理であって、所定の条件に従って、左右のドアミラー33,34をオープン状態またはクローズ状態に変位させる(S510〜S580:変位手段)。
具体的には、図9に示すように、まず、車両情報を取得する(S410:意思取得手段、制動取得手段、路面状態取得手段)。ここでいう車両情報には、ドアミラー33,34を視認する意思を検出するための情報である、視線検出装置61による検出結果や、右ウインカ62、左ウインカ63の作動状態の情報が含まれる。
また、車両情報には、路面が滑りやすい状態であるか否かを検出するための情報であるレインセンサ68による検出結果も含まれる。さらに、車両情報には、車速やクルーズコントロールシステム65の作動状態、ブレーキスイッチ67の作動状態の情報も含まれる。
続いて、取得した車両情報に基づいて、車速が一定速度以上であるか否か(S420)、クルーズコントロールシステム65(ACC)がOFF状態であるか否か(S430)、右ウインカ62が作動中であるか否か(S440)、左ウインカ63が作動中であるか否か(S450)、運転者の視線が右ドアミラー33に向けられているか否か(S460)、運転者の視線が左ドアミラー34に向けられているか否か(S470)、雨滴等が検出された否か(S480)、ブレーキスイッチ67がON状態であるか否か(S490)について、順に判定する。ただし、何れかの判定で肯定判定された時点で以下の判定は省略され、予め設定された設定位置にドアミラー33,34を変位させる。
詳細には、車速が一定速度以上であれば(S420:YES)、左右のドアミラー33,34を起立復帰させる(S510)。即ち、完全オープン状態にする(図3、図4参照)。この処理が終了すると、S410の処理に戻る。
クルーズコントロールシステム65がOFF状態であれば(S420:NO、かつS430:YES)、S510の処理と同様に、左右のドアミラー33,34を起立復帰させ(S520)、S410の処理に戻る。
右ウインカ62が作動中であれば(S420〜S430:NO、かつS440:YES)、右ドアミラー33のみを起立復帰させ(S530:図10(a)参照)、S410の処理に戻る。左ウインカ63が作動中であれば(S420〜S440:NO、かつS450:YES)、左ドアミラー34のみを起立復帰させ(S540)、S410の処理に戻る。
運転者の視線が右ドアミラー33に向けられていれば(S420〜S450:NO、かつS460:YES)、S530の処理と同様に、右ドアミラー33のみを起立復帰させ(S550)、S410の処理に戻る。運転者の視線が左ドアミラー34に向けられていれば(S420〜S460:NO、かつS470:YES)、S540の処理と同様に、左ドアミラー34のみを起立復帰させ(S560)、S410の処理に戻る。
雨滴等が検出されていれば(S420〜S470:NO、かつS480:YES)、両方のドアミラー33,34をダウンフォース発生角度に変位させる(S570)。
ここで、本実施形態におけるドアミラー33,34は、路面と平行かつ車両の進行方向と垂直な軸においてドアミラー33,34を回転することができるように構成されている。そして、S570の処理では、ドアミラー33,34の上面に走行風が当たるようにドアミラー33,34を回転させる。このようにすると、図11(a)に示すように、ドアミラー33,34に当たる走行風によってダウンフォースを発生させることができる。この処理が終了するとS410の処理に戻る。
ブレーキスイッチ67がON状態であれば(S420〜S480:NO、かつS490:YES)、エアブレーキ発生角度にドアミラーを変位させる(S580)。このとき、ドアミラー33,34は、図11(b)に示すように、ドアミラー33,34の前面投影面積が、完全オープン状態のときのドアミラー33,34の前面投影面積よりも大きく、かつ最大になるように変位される。
なお、「前面投影面積」とは、当該車両を車両の進行方向側(前面)から見たときにおけるドアミラー33,34の面積を示す。この処理が終了するとS410の処理に戻る。
一方、S420〜S490の処理の全てで否定判定されれば((S420〜S490:NO)、左右のドアミラー33,34を格納状態(完全クローズ状態)とする(S500)。なお、既に格納状態にされているドアミラー33,34については、格納状態を維持する。
ここで、車両のドア(車両のボディ部分)には、ドアミラー33,34(図12(a)参照)の少なくとも一部分を収容する収容部69(図12(c)参照)が形成されている。オープン状態のドアミラー33,34が格納状態にされるときには、まず、ミラーをクローズ状態に折りたたみ(図12(b)参照)、その後、ドアミラー33,34全体を下方に移動させつつドアミラー33,34の一部を収容部69に収容させる。
この際、ドアミラー33,34は完全オープン状態のときよりも下方に移動している。そして、ドアミラー33,34が収容部69の外部に露出した部分の前面投影面積は、ドアミラー33,34が完全オープン状態のときの前面投影面積よりも、小さくなるように設定されている。
なお、ルームミラー40にミラーを収納する構成を採用する場合には、例えば、車室内の天井部分に収容部69が形成されていればよい。
以上のように詳述した第2実施形態の視界提供装置2において、制御部10は、ミラー格納制御処理にて、運転者が車両に備えられ後方視界を提供するドアミラー33,34を視認する意思を運転者の視線を検出する視線検出装置61や、ウインカ62,63の作動等によって検出する。そして、ドアミラー33,34を視認する意思が検出された場合に後方視界を運転者に提供できる提供位置にドアミラー33,34を変位させ、ドアミラー33,34を視認する意思が検出されなかった場合に予め設定された設定位置にドアミラー33,34を変位させる。
よって、このような視界提供装置2によれば、運転者がドアミラー33,34を視認する際には、ドアミラー33,34により後方視界を提供し、運転者がドアミラー33,34を視認しない際には、ドアミラー33,34を収納したり、ドアミラー33,34をドアミラー33,34以外の他の用途に利用したりすることができる。
また、制御部10は、車両の高速走行時において、運転者がドアミラー33,34を視認しない際には、設定位置におけるドアミラー33,34の前面投影面積が、提供位置におけるドアミラー33,34の前面投影面積よりも小さくなるようにドアミラー33,34を変位させる。 この際、運転者がドアミラー33,34を視認しない際のドアミラー33,34の位置である設定位置は、運転者がドアミラー33,34を視認する際のドアミラー33,34の位置である提供位置よりも下方に設定されている。
このような視界提供装置2によれば、車両の高速走行時において、運転者がドアミラー33,34を視認しないときにおける車両走行時の空気抵抗を軽減することができる。
また、このような視界提供装置2によれば、ドアミラー33,34が一般的な車両のドアミラー33,34として構成されている場合には、ドアミラー33,34が窓を覆う面積を少なくすることができる。よって、ドアミラー33,34による死角を減少させることができる。
さらに、制御部10は、運転者がドアミラー33,34を視認する意思が検出された場合に、ドアミラー33,34の少なくとも一部を内部に収容可能な収容部69にドアミラー33,34の全部を収容しない位置に設定された提供位置にドアミラー33,34を変位させ、運転者がドアミラー33,34を視認する意思が検出されなかった場合に、収容部69にドアミラー33,34の少なくとも一部を収納する位置に設定された設定位置にドアミラー33,34を変位させる。
このような視界提供装置2によれば、運転者がドアミラー33,34を視認しないときにドアミラー33,34の一部が収容部69に収納されるので、ドアミラー33,34による死角を減少させることができる。なお、運転者がドアミラー33,34を見るか、ドアミラー33,34よりも遠くの景色を見るかについては、例えば、運転者の視線と運転者による操作とを組み合わせて検出することによって判断している。
また、制御部10は、当該車両が制動中であることを検出するブレーキスイッチ67による検出結果を取得し、運転者がドアミラー33,34を視認する意思が検出されず、かつブレーキスイッチ67により当該車両が制動中であることが検出された場合に、設定位置におけるドアミラー33,34の前面投影面積が、提供位置におけるドアミラー33,34の前面投影面積よりも大きくなるようにドアミラー33,34を変位させる。
このような視界提供装置2によれば、運転者がドアミラー33,34を視認しない場合の制動時には走行風による空気抵抗を大きくすることができるので、当該車両の制動距離を小さくすることができる。
さらに、制御部10は、路面が滑りやすい状態であるか否かを降雨や降雪の有無で検出するレインセンサ68による検出結果を取得し、運転者がドアミラー33,34を視認する意思が検出されず、かつレインセンサ68により路面が滑り易い状態である旨が検出された場合には、ドアミラー33,34に当たる走行風によってダウンフォースを発生させるダウンフォース発生位置にドアミラー33,34を変位させる。
このような視界提供装置2によれば、雨天時等、路面が滑り易いときには、車両にダウンフォースを発生させて車両の挙動を安定させることができる。ドアミラー33,34はドアミラー33,34として構成されているので、車両の重心に近い位置において揚力またはダウンフォースを発生させることができる。よって、車両挙動の安定性を向上させることができる。
また、視界提供装置2において制御部10は、左右のドアミラー33,34についてそれぞれ運転者が視認する意思を検出し、左右のドアミラー33,34を別々に、提供位置と設定位置との間で変位させる。
このような視界提供装置2によれば、左右のドアミラー33,34のうちの運転者が視認するドアミラー33,34のみを提供位置に変位させ、運転者が視認しないドアミラー33,34については設置位置に変位させることができる。
[第2実施形態の変形例]
ミラー格納制御処理においては、極低速時(例えば車速が10km/hのとき)やバック走行時(ギヤポジションスイッチ64が「R」を出力するとき)に、左右のドアミラー33,34を起立復帰させるようにしてもよい(図10(c)参照)。
ドアミラー33,34はフェンダードアミラー33,34として構成されていてもよい。このように構成されていれば、ドアミラー33,34をダウンフォース発生位置に変位させたときに、車両の前方においてダウンフォースを発生させることができるので、路面が滑り易いときに車両の運動性能(旋回性等)を向上させることができ
また、運転者がドアミラー33,34を視認する意思が検出されず、かつレインセンサ68により路面が滑り難い状態である旨が検出された場合には、ドアミラー33,34に当たる走行風によって揚力を発生させる揚力発生位置にドアミラー33,34を変位させるようにしてもよい(図11(c)参照)。このような視界提供装置によれば、晴天時等、路面が滑り難いときには、揚力を発生させて車両の燃費を向上させることができる。
また、運転者がウインカ62,63を作動させたときに、直ちにウインカ62,63を作動させることなく、運転者がミラーを確認したことを視線検出装置61によって検出できたときに、ウインカ62,63を作動するようにしてもよい。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の視界提供装置3について説明する。図13は第3実施形態の視界提供装置3の概略構成を示すブロック図である。
視界提供装置3においては、第1実施形態の視界提供装置1の構成に加えて、前述の右ウインカ62、左ウインカ63、ギヤポジションスイッチ64、およびレインセンサ68(降雨降雪検出手段)を備えている。また、視界提供装置3においては、さらに、加速度センサ71、傾斜センサ72、ステアリングセンサ73、ヨーレートセンサ74、ナビゲーション装置75、右ミラー角度変更部76、および左ミラー角度変更部77を備えている。なお、車速センサ15、左ウインカ62、右ウインカ63、ギヤポジションスイッチ64、ナビゲーション装置75等は、本発明でいう車両状態検出手段に相当する。
加速度センサ71は、周知の加速度センサとして構成されており、車両に加えられる加速度をその方向とともに検出し、この検出結果を制御部10に送る。傾斜センサ72は、例えば、車両の前後における車高をそれぞれ検出し、これらの差分に基づいて車両の前後方向の傾きを演算し、この演算結果を制御部10に送る。
ステアリングセンサ73は、運転者によりステアリングが回転された角度を検出し、この検出結果を制御部10に送る。ヨーレートセンサ74は、車両が旋回する際の角速度を検出し、この検出結果を制御部10に送る。
ナビゲーション装置75は、車両の現在地を検出し、内部のデータベースから車両の現在地に対応する地図情報を読み出し、車両の現在地とともに地図画像を表示部(図示省略)に表示させる。右ミラー角度変更部76および左ミラー角度変更部77は、ドアミラー33,34を構成するミラー部37(図15(b)参照)の角度を変更させるアクチュエータとして構成されている。
次に、本実施形態の視界提供装置3における作動について、図14〜図17を用いて説明する。図14は制御部10が実行する視野範囲可変制御処理を示すフローチャート、図15はドアミラー33,34の機構および構成を示す説明図である。また、図16はドアミラー33,34の作動状態を示す説明図、図17はドアミラー33,34による可視範囲の変化を示す説明図である。
視野範囲可変制御処理は、イグニッションスイッチ等の車両の電源がON状態にされると開始される処理であって、所定の条件に従って、左右のドアミラー33,34を構成するミラー部37の角度を変更することによって視野範囲を変更する。
具体的には、図14に示すように、まず、車両情報を取得する(S610:勾配取得手段、旋回取得手段、車両状態取得手段、降雨降雪取得手段)。ここでいう車両情報には、車速センサ15、左ウインカ62、右ウインカ63、ギヤポジションスイッチ64、レインセンサ68、加速度センサ71、傾斜センサ72、ステアリングセンサ73、およびヨーレートセンサ74からの情報が含まれる。
続いて、ギヤポジションスイッチ64による検出結果に基づいて、ギヤポジションが「R」であるか否かを判定する(S620)。ギヤポジションが「R」であれば(S620:YES)、視野範囲を下降させ(S630)、S610の処理に戻る。
S630の処理において「視野範囲の下降させる」とは、右ミラー角度変更部76および左ミラー角度変更部77を介して左右のミラー部37の角度を下向きに(つまり、より近くの後方視界がミラー部37に写るように)変更することを意味する。また、このようにするのは、車両がバックする際に、運転者はミラーを利用して車両近傍の縁石等の障害物や駐車枠を確認する必要があるからであり、反対に、車両から遠い位置を確認する必要はないからである。
一方で、ギヤポジションが「R」でなければ(S620:NO)、車速センサ15から取得した車速と基準となる車速である10km/hとを比較する(S640)。取得した車速が基準となる車速以下であれば(S640:YES)、左右何れかのウインカが作動しているか否かを判定する(S650)。
左右何れかのウインカが作動していれば(S650:YES)、ウインカが作動している側のミラーの角度を、周期的に変化させる。具体的には、右ミラー角度変更部76または左ミラー角度変更部77を介して、ウインカが作動している側のミラー部37の角度を左右方向に一定周期で変更させる(S660:周期変化手段)。
また、ウインカが作動していなければ(S650:NO)、車速センサ15およびレインセンサ68による検出結果に基づいて、車両が停止し、かつ天候が雨天であるか否かを判定する(S670)。車両が停止し、かつ天候が雨天であれば(S670:YES)、ドアミラー33,34をワイパとして作動させ(S680:ワイピング手段)、S610の処理に戻る。
ここで、本実施形態における右ドアミラー駆動部24および左ドアミラー駆動部25においては、図15(a)に示すように、ドアミラー33,34を2つの軸において独立して駆動させる2つのモータを備えている。具体的には、各ドアミラー駆動部24,25は、路面と平行かつ車両の進行方向と垂直な第1の軸、および第1の軸と直交する第2の軸においてドアミラー33,34を駆動させる。
また、ドアミラー33,34は、図15(b)に示すように、鏡面であるミラー部37と、各ミラー角度変更部76,77によってミラー部37の角度を変更可能な状態でミラー部37を内部に収納して保持する収納部材36と、収納部材36の下部において配置されたワイパゴム38(ワイパ部材)とを備えている。
このような構成において、制御部10は、S680の処理において、右ドアミラー駆動部24および左ドアミラー駆動部25を利用して、ドアミラー33,34が配置された位置近傍の窓にワイパゴム38が接する状態で一定回数往復運動させる(図16下図参照)。この処理が実施されると、窓の水滴が除去され、ドアミラー33,34の視認性を向上できる(図16上図参照)。また、高速でドアミラー33,34を往復運動させれば、ミラー部37に付着した水滴を遠心力によって除去することができる。
次に図14に戻り、S670の処理にて、車両が移動中であるか、或いは天候が雨天でない場合には(S670:NO)、左右のミラー部37の角度を左右方向に一定周期で変更させ(S690:周期変化手段)、S610の処理に戻る。次に、S640の処理にて、取得した車速が基準となる車速以下であれば(S640:YES)、勾配の有無を判定する(S700,S760:勾配変化検出手段)。
勾配が上り坂であれば(S700:YES)、車両における前後方向の傾きを演算し(S710)、この傾きを検出してからの車両の走行(この勾配の走行)が一定距離以上継続しているか否かを判定する(S720)。この勾配の走行が一定距離以上継続していれば(S720:YES)、視野範囲を通常の範囲に復帰させ(S730)、S610の処理に戻る。
また、この勾配の走行が一定距離未満だけ継続していれば(S720:NO)、図17(a)に示すように、視野範囲を通常の範囲よりも上昇させ(S740:勾配変更手段)、S610の処理に戻る。
勾配が下り坂であれば(S700:NO、かつS760:YES)、車両における前後方向の傾きを演算し(S770)、この勾配の走行が一定距離以上継続しているか否かを判定する(S780)。この勾配の走行が一定距離以上継続していれば(S780:YES)、視野範囲を通常の範囲に復帰させ(S790)、S610の処理に戻る。
また、この勾配の走行が一定距離未満だけ継続していれば(S780:NO)、図17(b)に示すように、視野範囲を通常の範囲よりも下降させ(S800:勾配変更手段)、S610の処理に戻る。
ここで、上記のS730,S790の処理では、勾配の走行が一定距離以上継続している場合に、視野範囲を通常の範囲に戻すようにしている。このようにしているのは、視野範囲を上昇または下降させる必要があるのは、勾配が変化した直後のみであり、長距離に渡って勾配が継続している場合に視野範囲を上昇または下降させたままにしておくと、却って運転者が後方を確認し難くなるからである。本実施形態では、上記構成によって、常に適切な視野範囲を運転者に提供できるようにしている。
続いて、勾配がない場合には(S700,S760:NO)、車速センサ15、加速度センサ71、ステアリングセンサ73、ヨーレートセンサ74等による検出結果に基づいて、車両が曲路を走行しているか否かを判定する(S810)。車両が曲路を走行していれば(S810:YES)、曲路の曲率を演算し(S820)、この演算結果に対応して、図17(c)に示すように、車両の旋回に伴うドアミラー33,34の角度変化を打ち消す方向(右旋回のときには右側、左旋回のときには左側)に視野範囲を移動させ(S830:旋回変更手段)、S610の処理に戻る。なお、S830の処理では、曲率半径が小さくにつれて視野範囲の水平方向の移動量が大きくする。
また、S810の処理にて、車両が曲路を走行していなければ(S810:NO)、視野範囲を通常の範囲に復帰させ(S840)、車速に応じた上下方向の視野範囲になるように視野範囲を移動させる(S850)。即ち、車速が速くなればなるほど運転者はより遠くを確認する必要があり、車速が遅くなればなるほど運転者はより近くを確認する必要がある。このためS840の処理では、車速が速くなるにつれて視野範囲を上向き(車両に対して略水平が上限)に設定する。
このような処理が終了すると、S610の処理に戻る。
上記のように詳述した第3実施形態の視界提供装置3において制御部10は、視野範囲可変制御処理にて、当該車両が走行する道路における勾配の変化が検出された場合に、ドアミラー33,34におけるミラー部37の角度を、勾配の変化に伴うミラー部37の角度変化を打ち消す方向に変更する。
このような視界提供装置3によれば、ミラー部37の角度を勾配の変化に伴う角度変化を打ち消す方向に変更するので、勾配が変化したとしても勾配が変化する前にミラー部37に表示されていた適切な後方視界を提供することができる。
また、制御部10は、車速センサ15、加速度センサ71、ステアリングセンサ73、ヨーレートセンサ74による検出結果に基づいて、当該車両が旋回したことをその旋回方向とともに検出する。そして、制御部10は、当該車両の旋回が検出された場合に、ドアミラー33,34の角度を、当該車両の旋回に伴うドアミラー33,34の角度変化を打ち消す方向に変更する。
このような視界提供装置3によれば、ミラー部37の角度を旋回に伴う角度変化を打ち消す方向に変更するので、旋回前にミラー部37に表示されていた適切な後方視界を提供することができる。
さらに、視界提供装置3において制御部10は、車速センサ15による検出結果を取得することによって、当該車両が徐行している状態であることを検出し、当該車両が徐行している状態が検出された場合に、ミラー部37の角度を、周期的に変化させる。
このような視界提供装置3によれば、ドアミラー33,34の角度を周期的に変化させるので、運転者により広範囲の後方視界を提供することができる。よって、ドアミラー33,34を見たときに死角となる範囲を狭くすることができる。また、運転者が広範囲を確認する必要がない状況においては、無駄にドアミラー33,34の角度を変化させることがない。
また、制御部10は、視野範囲可変制御処理にて、降雨または降雪の検出結果を取得するレインセンサ68による検出結果を取得し、レインセンサ68により降雨または降雪が検出された場合に、ワイパゴム38が窓に接する状態で収納部材36を移動させる。
このような視界提供装置3によれば、ワイパゴム38によって窓を拭くことができる。ここで、ワイパゴム38によって窓を拭くタイミングとしては、運転者がドアミラー33,34を見る直前であるとよい。具体的には、予め運転者がドアミラー33,34を見る直前であるタイミングを登録しておき、このタイミングにおいて制御部10は、収納部材36を移動させて窓を拭くようにすればよい。なお、具体的なタイミングとしては、信号待ち等の停車中や、車両の発進時等のタイミングが考えられる。
[第3実施形態の変形例]
視界提供装置3においては、当該車両が徐行しているときに、ミラー部37の角度を周期的に変化させるようにしたが、例えば、ギヤポジションスイッチ64による検出結果やナビゲーション装置75による現在地を検出する機能を利用して、当該車両が交差点を走行中であること、或いは、当該車両が後退していることを検出し、これらの状態が検出された場合に、ミラー部37の角度を、周期的に変化させるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、視野範囲を変更する処理をドアミラー33,34に適用したが、ルームミラー40に適用してもよい。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の視界提供装置4について説明する。図18は第4実施形態の視界提供装置4の概略構成を示すブロック図である。
視界提供装置4においては、第1実施形態の視界提供装置1の構成に加えて、右ミラー角度変更部76、左ミラー角度変更部77、および距離測定装置81(距離測定手段)を備えている。なお、右ミラー角度変更部76および左ミラー角度変更部77については、第3実施形態の構成と同様である。
距離測定装置81は、ドアミラー33,34における収納部材36の内部において車両の進行方向に向けて配置されており、収納部材36に衝突する虞がある障害物との距離を測定する機能を有する。具体的には、距離測定装置81は、超音波を送信する送信部と、超音波センサと、を備えた構成にされており、送信された超音波センサが障害物に反射された反射波を検出することによって障害物との距離を検出し(図19(b)参照)、この検出結果を制御部10に送る。
次に、本実施形態の視界提供装置4における作動について、図19を用いて説明する。図19(a)は制御部10が実行する可倒制御処理を示すフローチャート、図19(b)は距離測定装置81の配置を示す説明図、図19(c)はドアミラー33,34の作動を示す説明図である。
可倒制御処理は、イグニッションスイッチ(図示省略)等の車両の電源がON状態にされると開始され、その後、一定の周期(例えば100ms)毎に繰り返し実施される処理であって、ドアミラー33,34が障害物と接触することを防止する処理である。具体的には、まず、図19(a)に示すように、距離測定装置81の超音波センサを利用して、障害物までの距離を測定する(S910:距離取得手段)。
そして、障害物までの距離と衝突を避けることができない程度の基準距離(例えば、10cm)とを比較する(S920:比較手段)。障害物までの距離が基準距離以上であれば(S920:NO)、S910の処理に戻る。
障害物までの距離が基準距離未満であれば(S920:YES)、ドアミラー駆動部24,25によるサーボロックを解除する(S930:ロック制御手段)。即ち、本実施形態において、障害物までの距離が基準距離以上である場合においては、ドアミラー33,34が走行風による風圧に耐えられるように、ドアミラー駆動部24,25(モータ)が駆動されてドアミラー33,34を一定の力で保持した状態(サーボロックされた状態)に設定されているが、S930の処理では、ドアミラー駆動部24,25(モータ)の駆動を解除する。
続いて、ドアミラー駆動部24,25を利用して障害物検出側のドアミラー33,34を格納し(S940)、再び超音波センサの検出結果を利用して基準距離未満の障害物が存在するか否かを判定する(S950:比較手段)。障害物が存在すれば(S950:NO)、S930の処理に戻る。
また、障害物が存在しなければ(S950:NO)、障害物検出側のドアミラー33,34を起立復帰させ(S960:ロック制御手段)、可倒制御処理を終了する。
このような可倒制御処理によれば、例えば図19(c)に示すように、狭い道を対向車両とすれ違おうとするとき等に、ドアミラー33,34同士が接触することを防止することができる。
以上のように詳述した第4実施形態の視界提供装置4において制御部10は、可倒制御処理にて、収納部材36とこの収納部材36に衝突する虞がある障害物との距離を測定する距離測定装置81による測定結果を取得し、距離の測定結果と基準距離とを比較する。そして、制御部10は、距離の測定結果が基準距離以上であると判定された場合に、収納部材36を固定するロック状態に設定し、距離の測定結果が基準距離未満であると判定された場合に、収納部材36のロック状態を解除した解除状態に設定する。なお、基準距離は衝突を避けられないと推定される距離に設定されている。
このような視界提供装置4では、収納部材36が障害物と衝突する虞がないときには、収納部材36をロック状態にして強く支持することができ、一方で、収納部が障害物に衝突する虞が高まったときには、収納部のロックを解除した解除状態にするので、衝突の際の衝撃を緩和することができる。よって、収納部材36を支持する際の力の大きさを容易に設定することができる。
また、収納部材36と障害物との間の距離の測定結果が基準距離未満の場合に、設定位置における収納部材36の前面投影面積が、提供位置における収納部材36の前面投影面積よりも小さくなるようにドアミラー33,34を変位させる。
このような視界提供装置4によれば、収納部材36と障害物との衝突を積極的に回避することができる。
ここで、従来の収納部材は、バネ等の付勢部材にて運転者に後方視界を提供できるミラーの角度を維持して支持し、収納部材に障害物が衝突した場合のように強い衝撃が加わると、収納部材が車両の後方に移動しつつ衝撃を吸収する機構を備えていたが、本実施形態の構成によれば、この機構が不要になる。よって、この機構を配置しなくてもよい分だけ収納部材36のサイズを小さくすることができ、設計、デザイン、コストの面で有利である。
[第4実施形態の変形例]
第4実施形態においては、収納部材36と障害物との衝突を積極的に回避するために、S940の処理にてドアミラー33,34を格納するようにしたが、S930の処理にてロック状態が解除されていれば、S940の処理は実施しなくてもよい。ロック状態が解除されているので、衝突時の衝撃が緩和されるからである。このようにしても、上記第4実施形態とほぼ同様の効果が得られる。
また、本実施形態の距離測定装置81においては、超音波を利用して障害物までの距離を測定したが、電磁波や画像処理等の技術を利用してもよい。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の視界提供装置5(警告装置)について説明する。図20は第5実施形態の視界提供装置5の概略構成を示すブロック図である。視界提供装置5においては、第1実施形態の視界提供装置1の構成に加えて、人物検出装置91(人物検出手段)、無線施錠システム94、および前述の距離測定装置81を備えている。
人物検出装置91は、例えば赤外線を検出する焦電センサを備え、この焦電センサによって車両周囲の人物を検出し、人物の検出結果を制御部10に送信する。無線施錠システム94は、車両外にいる乗員が所持する無線キーからの指令を受けて、車両の解錠および施錠を行う周知のシステムである。
次に、本実施形態の視界提供装置5における作動について、図21および図22を用いて説明する。図21は制御部10が実行する通知作動制御処理を示すフローチャート、図22は視界提供装置5の作動を示す説明図である。通知作動制御処理は、イグニッションスイッチ(図示省略)等の車両の電源がON状態にされると開始される処理であって、車両に危害を加える虞がある人物に対して警告を行う処理である。
具体的には、まず、車両情報を取得する(S1010:人物取得手段)。ここで、車両情報とは、距離測定装置81の超音波センサによる検出結果や、人物検出装置91の焦電センサによる検出結果等が該当する。
続いて、イグニッションスイッチの状態を判定する(S1030)。イグニッションスイッチがON状態であれば(S1030:YES)、ドアミラー33,34を起立復帰させ(S1040)、車両が停止しているか否かを判定する(S1050)。なお、S1040の処理にて、既にドアミラー33,34が起立復帰している場合には、そのままの状態にする。
車両が停止していれば(S1050:YES)、超音波センサによる検出結果に基づいて障害物が存在するか否かを判定する(S1060)。この処理においては、超音波センサの検出可能範囲内に障害物が存在すれば肯定判定されるものとする。
障害物が存在すれば(S1060:YES)、焦電センサによる検出結果に基づいて障害物が人物であるか否かを判定する(S1070)。ここで、人物であるか否かについては、例えば焦電センサが人間の体温に相当する温度の領域を検出したか否かによって判断する。
障害物が人物であれば(S1070:YES)、人物を検出した側のドアミラー駆動部24,25を駆動させることによって、ドアミラー33,34を揺動させる(S1080:警告手段)。この際のドアミラー33,34の作動音によって、車両の近傍にいる人物と車両の乗員とに注意喚起を行う。つまり、車両の近傍にいる人物には車両が発進する虞があることを警告し、車両の乗員には車両の近傍に人物がいることを警告する。S1080の処理が終了すると、S1010の処理に戻る。
また、S1070の処理にて、障害物が人物ではないと判定された場合(S1070:NO)、S1060の処理にて、障害物が存在しないと判定された場合(S1060:NO)には、S1010の処理に戻る。
次に、S1050の処理にて、車両が停止していないと判定された場合には(S1050:NO)、S920と同様に、障害物までの距離と衝突を避けることができない程度の基準距離とを比較する(S1090)。障害物までの距離が基準距離以上であれば(S1090:NO)、S1010の処理に戻る。
障害物までの距離が基準距離未満であれば(S1090:YES)、S930の処理と同様に、ドアミラー駆動部24,25によるサーボロックを解除し(S1100)、さらに、S940の処理と同様に、ドアミラー駆動部24,25を利用して障害物検出側のドアミラー33,34を格納し(S1110)、S1010の処理に戻る。
次に、S1030の処理にてイグニッションスイッチがOFF状態であると判定された場合には(S1030:NO)、左右のドアミラー33,34を格納状態にする(S1210)。なお、既に格納状態にされている場合には、そのままS1220の処理に移行する。
続いて、無線施錠システム94を介して車両の乗員が所持する無線キーからの指令が入力されたことを確認する(S1220、S1230)。無線キーからの指令の入力があれば(S1230:YES)、ドアミラー33,34を起立復帰させ(S1240)、左右のドアミラー駆動部24,25を駆動させることによって、ドアミラー33,34を揺動させる(S1250)。
つまり、ドアミラー33,34を利用して、車両の解錠または施錠が実施されたことを乗員に通知している。なお、解錠の際と施錠の際とで異なるパターンでドアミラー33,34を作動させるようにしてもよい。このような処理が終了すると、S1010の処理に戻る。
S1230の処理にて、無線キーからの入力が無ければ(S1230:NO)、前述のS1060,S1070の処理と同様に、超音波センサによる検出結果に基づいて障害物が存在するか否か(S1300)、および焦電センサによる検出結果に基づいて障害物が人物であるか否か(S1310)を判定する。
障害物が人物でなければ(S1300またはS1310:NO)、S1010の処理に戻る。また、障害物が人物であれば(S1300およびS1310:YES)、人物を検出してから経過してからの時間をカウントし、カウントによる時間と基準時間(例えば30秒程度)とを比較する(S1320:カウント手段)。
カウントによる時間が基準時間以上であれば(S1320:YES)、ドアミラー33,34を起立復帰させ(S1330)、人物を検出した側のドアミラー駆動部24,25を駆動させることによって、ドアミラー33,34を揺動させる(S1340:警告手段)。即ち、ドアミラー33,34を揺動させることによって、検出した人物に車両から離れるように促している。
なお、ここでいう人物は、図22に示すように、車両の装備品を盗もうとする者や、車両の近傍で遊んでいる者等を対象とし、単なる通行人を除外するために、S1320の処理を実施している。このような処理が終了すると、S1010の処理に戻る。
また、S1320の処理にてカウントによる時間が基準時間未満であれば(S1320:NO)、S1010の処理に戻る。
以上のように詳述した第5実施形態の視界提供装置5において、制御部10は、通知作動処理にて、人物検出装置91による検出結果を取得し、人物検出装置91により人物が検出された場合に、ドアミラー33,34の角度を変更させる際の作動音によって人物に対して警告を行う。
このような視界提供装置5によれば、警告を既存のアクチュエータ等の作動音を利用して行うため、ブザー等の音を出すために特化した手段を用いる場合と比較して、その音の聞こえる範囲が非常に狭い。にもかかわらず、ドアミラー33,34の角度を変更するアクチュエータの作動音は、車両に接近する人物の注意を引きつけるのに充分な音量を有するので、警告するための手段として有意義に活用することができる。また、既存の構成を利用することができるので、安価な構成で実現することができる。
なお、本実施形態において「ドアミラー33,34の角度を変更させる」際には、ミラー部37のみの角度を変更してもよいし、ミラー部37を収納する収納部材36の角度を変更してもよい。
また、制御部10は、通知作動処理にて、人物を検出してから経過してからの時間をカウントし、カウントが基準時間を超えたときに警告する。なお、基準時間とは、単なる通行人を排除し、当該車両に危害を加える虞がある人物のみに警告するために設定するものである。
このような視界提供装置5によれば、単なる通行人等、基準時間以内に車両から離れる人物には警告をしないようにすることができる。また、周知の無線施錠システムにおいて無線キーによって解錠または施錠が行われたときに、その旨をドアミラー33,34の作動(ドアミラー33,34の角度を変化させる際の動きまたはアクチュエータ音)によって通知することもできる。