以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、以下の説明において示す図面における各部材の縮尺は実際と異なる場合がある。
本発明にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極および陰極のうちのいずれか一方の電極であり、透明な第1電極と、前記第1電極と比較して電気抵抗値が低く、前記第1電極に接して設けられる補助電極と、前記第1電極に対向して配置され、前記陽極および陰極のうちの他方の電極である第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置され、高分子化合物を含む発光層を3層以上有する発光部と、を含み、前記補助電極が、前記第1電極に接続された枠状の第1補助電極と、該第1補助電極の枠内に配置され、該第1補助電極に電気的に接続された細線電極から構成されている第2補助電極と、を有し、前記発光部を構成する各発光層が、互いに異なるピーク波長の光を発し、発光する光のピーク波長が長い発光層ほど、前記陽極寄りに配置されていることを、特徴としている。
かかる基本的構成を有する本発明の第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を、図1に示す。
図1中、符号1は、透明支持基板を示す。この支持基板1上に、第1補助電極2と第2補助電極3とからなる補助電極4が配置されている。これら補助電極4の上に透明の陽極(第1電極)5が配置されている。この陽極(第1電極)5の上に発光部6が配置され、その上に陰極(第2電極)7が配置されている。通常、これら支持基板1上に配置された積層体(発光機能部と呼称する場合もある)を保護するために積層体全体を保護する保護層(上部封止膜と呼称する場合もある)8が設けられる。
なお、第1の実施形態では、第1電極5が陽極であり、第2電極7が陰極であるが、第1電極が陰極であり、第2電極が陽極である有機エレクトロルミネッセンス素子であっても本発明を好適に適用することができる。
(補助電極)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、上記補助電極4は、前記陽極(第1電極)5の表面上に配置され、前記第1電極に電気的に接続された枠状の第1補助電極2と、前記第1補助電極2の枠内に配置され、前記第1補助電極に電気的に接続された細線電極により構成されている第2補助電極3とを備える。
第1の実施形態においては、前記陽極(第1電極)5の表面上に第1補助電極2及び第2補助電極3を上記のような形態で配置することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラを十分に抑制することが可能となる。
このような第1補助電極2及び第2補助電極3とからなる補助電極4の配置形態としては、例えば、図2〜図5に示す配置形態を挙げることができる。
図2に示す配置形態においては、支持基板1上に形成された補助電極4は、矩形枠状の第1補助電極2aと、この第1補助電極2aの枠内に電気的に一体的に形成されている第2補助電極3aとから構成されている。前記第2補助電極3aは細線電極から構成されており、その配置形状は複数の細線電極が互いに直角に交差した格子状とされている。
また、図3に示す配置形態においては、支持基板1上に形成された補助電極4は、矩形枠状の第1補助電極2bと、この第1補助電極2bの枠内に電気的に一体的に形成されている第2補助電極3bとから構成されている。前記第2補助電極3bは細線電極から構成されており、その配置形状は複数の細線電極が平行に配列した線縞状とされている。
また、図4に示す配置形態においては、支持基板1上に形成された補助電極4は、矩形枠状の第1補助電極2cと、この第1補助電極2cの枠内に電気的に一体的に形成されている第2補助電極3cとから構成されている。前記第2補助電極3cは細線電極から構成されており、その配置形状は複数の各細線電極が複数の六角形の各辺を構成するハニカム状とされている。
さらに、図5に示す配置形態においては、支持基板1上に形成された補助電極4は、矩形枠状の第1補助電極2dと、この第1補助電極2dの枠内に電気的に一体的に形成されている第2補助電極3dとから構成されている。前記第2補助電極3dは寸法が異なる二種類の細線電極から構成されている。すなわち、前記第2補助電極3dは、互いに直角に交差した主幹路的な複数の第1の細線電極3d−1と、これら第1の細線電極3d−1に囲まれた領域の内部、もしくは前記第1補助電極2dと第1の細線電極3d−1とで囲まれた領域の内部に形成された第2の細線電極3d−2とから構成されている。
図5の配置形態では、前記第1の細線電極3d−1は格子状に配置され、その格子状の各枠内に複数の第2の細線電極3d−2が格子状に配列されている。前記第2の細線電極3d−2は、通常、好ましくは、前記第1の細線電極3d−1よりもさらに細く形成されている。
このような補助電極の配置形態を取ることにより、発光面積がさらに大きな素子においても、本発明の効果を得ることができる。
ここで、枠状の第1補助電極2の枠形状としては、第1補助電極2内に第2補助電極3が形成され得るものであれば特に限定されず、例えば、矩形状、円形状等が可能である。また第1補助電極2は、光が透過する主たる領域を囲むように設けられることが好ましい。第1補助電極2の線幅は、電気抵抗および有機エレクトロルミネッセンス素子の発光面積に応じて適宜選択することができ、1〜50mmの範囲であることが好ましく、3〜20mmの範囲であることがより好ましい。
第2補助電極3が設けられる前記第1補助電極2の枠内は、発光部6からの光が透過する主たる領域であるので、第2補助電極3の線幅は、光の透過を阻害しないような寸法であることが好ましい。かかる観点から、第2補助電極3を構成する細線電極の線幅(以下、「第2補助電極の線幅」という)は、光の利用効率の観点から、1〜200μmの範囲であることが好ましく、10〜100μmの範囲であることがより好ましい。
また、第1の実施形態においては、前記第2補助電極3と前記第1補助電極2との線幅の比(前記第2補助電極の線幅/前記第1補助電極の線幅)が、1/1000〜1/10であることが好ましく、1/500〜1/20であることがより好ましい。線幅の比が前記範囲内であれば、光の利用効率を更に向上させるとともに、発光輝度のムラを更に抑制することができる傾向となる。
このような第1補助電極2及び第2補助電極3の材料としては、透明陽極(第1電極)5よりも電気伝導度が高い(電気抵抗値の低い)ものが好ましく、通常は107S/cm以上の電気伝導度を有する導電材料が使用される。かかる導電材料の具体例としては、アルミニウム、銀、クロミニウム、金、銅、タンタル等の金属材料を挙げることができる。これらの中でも、電気伝導度の高さ、および材料のハンドリングの容易さの観点から、アルミニウム、クロミニウム、銅、銀がより好ましい。
第1補助電極2及び第2補助電極3からなる補助電極4が透明陽極(第1電極)5に接する面積は、第1電極5の抵抗による電圧低下を軽減するという目的から、広ければ広い程良い。したがって、第1補助電極2及び第2補助電極3の材料として金属を用いた場合には、素子の発光する面積に対する補助電極4で被われる面積の割合に換算すると、補助電極4が透明陽極(第1電極)5に接する面積は、少なくとも20%であることが好ましく、より好ましくは、30%以上である。
他方、補助電極4は発光部6からの光を透過させる透明陽極(第1電極)5に接して設けられるため、光をできるだけ遮断しないように、補助電極4の占有面積はできるだけ少ない方がよい。かかる観点からは、素子の発光する面積に対する補助電極4で被われる面積の割合は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
これらを勘案すると、素子の発光する面積に対する補助電極4で被われる面積の割合は、20%以上であり且つ90%以下であることが好ましく、30%以上であり且つ80%以下であることがより好ましい。
さらに、第1補助電極2及び第2補助電極3の厚みは、面抵抗が所望の値となるように適宜選択することができ、例えば10〜500nmであり、好ましくは20〜300nmであり、より好ましくは50〜150nmである。
さらに、第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記第1補助電極2及び前記第2補助電極3が、前記透明陽極(第1電極)5の表面のうち、発光部6側の表面上に配置されていてもよいが、前記透明陽極(第1電極)5と、前記第1補助電極2及び前記第2補助電極3との電気的な接続をより確実にするという観点から、発光部6と反対側の表面上に配置されていることが好ましい。
上述の第1補助電極2及び第2補助電極3を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等により補助電極の構成材料から成る膜を形成した後に、フォトレジストを用いたエッチング法によりパターン形成する方法が挙げられる。なお、エッチングを行うことなく補助電極をパターン形成することもできる。例えば、補助電極の形状に対応する開口が形成された1又は複数のマスクを用いて、複数回真空蒸着などを行うことによって、所定のパターンの補助電極を形成することができる。第2電極を構成する材料によっては、第2電極がエッチャントによって損傷を受けるおそれがあるが、マスクを用いて補助電極を形成することによって、エッチャントに対する耐性の低い第2電極などにでも補助電極を形成することができる。
(発光部)
上記発光部6は、3層以上からなる発光層10を有し、陽極(第1電極)5と発光層10との間に必要に応じて設けられる層9と、陰極(第2電極)7と発光層10との間に必要に応じて設けられる層11とを有する。
発光層10は、高分子化合物を含み、3層以上から構成され、互いに異なるピーク波長の光を発し、発光する光のピーク波長が長い発光層ほど、より陽極(第1電極)5寄りに配置されている。図1では、発光層10は、発光のピーク波長が異なる3つの発光層10a,10b,10cから構成される場合を示している。3つの発光層10a,10b,及び10cは、図1の配置では、それぞれ赤色、緑色、及び青色の光を発する発光層とされる。
すなわち、図1に示す構成では、発光部6に含まれる発光層10は、陽極(第1電極)5側から順に、赤色を発光する発光層(以下、赤色発光層という場合がある)10aと、緑色を発光する発光層(以下、緑色発光層という場合がある)10bと、青色を発光する発光層(以下、青色発光層という場合がある)10cとがこの順で積層されて構成される。
赤色発光層10aは、発光層10を構成する3つの発光層10a,10b,10cの中で、発光する光のピーク波長が最も長いので、3つの発光層10a,10b,10cの中で最も陽極(第1電極)5寄りに配置され、緑色発光層10bは、3つの発光層10a,10b,10cの中で、発光する光のピーク波長が真中なので、3つの発光層10a,10b,10cの真中に配置され、青色発光層10cは、3つの発光層10a,10b,10cの中で、発光する光のピーク波長が最も短いので、3つの発光層10a,10b,10cの中で最も陰極(第2電極)7寄りに配置される。
なお、発光層10の発光するピーク波長とは、発光する光を波長領域で見たときに、最も強い光強度となる波長のことである。
第1の実施形態における赤色発光層10aとしては、発光する光のピーク波長が、例えば580nm〜660nmのものが用いられ、好ましくは600〜640nmのものが用いられる。
また、第1の実施形態における緑色発光層10bとしては、発光する光のピーク波長が、例えば500nm〜560nmのものが用いられ、好ましくは520nm〜540nmのものが用いられる。
また、第1の実施形態における青色発光層10cとしては、発光する光のピーク波長が、例えば400nm〜500nmのものが用いられ、好ましくは420nm〜480nmのものが用いられる。
このようなピーク波長で発光する3つの発光層10a,10b,10cからそれぞれ発光される光を重ね合わせると、白色光となるので、発光層10が赤色発光層10a、緑色発光層10b、および青色発光層10cで構成される本実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、全体として白色光を発する。
発光層10を構成する各発光層10a,10b,10cは、本実施の形態ではそれぞれ塗布法によって形成される。特に、第1の実施形態では、塗布により形成された各発光層は、次に形成される発光層の塗布液が表面上に塗布される前において、塗布される塗布液に対して不溶化される。具体的には、緑色発光層10bを塗布法によって成膜する前に、赤色発光層10aを不溶化させ、さらに、青色発光層10cを塗布法によって成膜する前に、緑色発光層10bを不溶化させる。
第1の実施形態では、不溶化される発光層を構成する材料の少なくとも一部は、エネルギーを加えることによって架橋する。このような材料を含む塗布液を塗布して成膜した後に、エネルギーとして光または熱を加え、架橋させることによって膜を不溶化することができる。
なお、不溶化される発光層10を主に構成する材料が、エネルギーを加えることによって架橋する材料を用いて発光層10を形成してもよく、また、不溶化される発光層10を構成する材料のうちの、発光層10を主に構成する材料を除く残余の材料の少なくとも一部が、エネルギーを加えることによって架橋する材料を用いて発光層10を形成してもよい。
後者の場合、塗布液には、発光層10を主に構成する材料の他に、エネルギーを加えることによって架橋する架橋剤がさらに加えられる。
なお、発光層10を主に構成する材料が、エネルギーを加えることによって架橋するものであれば、塗布液に架橋剤を加える必要がない。
第1の実施形態では、発光層10を主に構成する材料は、発光層10において質量濃度の最も高い材料であり、発光層10を構成する材料のうちで、蛍光、及び/又は燐光を発光する材料(以下、発光材料という場合がある)に相当する。
発光層10を主に構成する材料として、エネルギーを加えることによって架橋するものを用いる場合、エネルギーを加えることによって架橋する基(以下、架橋基という)を含む高分子化合物を用いればよい。
前記架橋基としては、ビニル基などを挙げることができる。上記発光層10を主に構成する材料として、具体的には、ベンゾシクロブタン(BCB)から少なくとも1つの水素原子を除いた残基を主鎖及び/又は側鎖に含む高分子化合物を用いたものを挙げることができる。
また、上記発光層10を主に構成する材料の他に、塗布液に加える架橋剤としては、ビニル基、アセチル基、ブテニル基、アクリル基、アクリルアミド基、メタクリル基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基、シラノール基、シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基、ラクトン基、及びラクタム基からなる群から選ばれる重合可能な置換基を有する化合物を挙げることができる。かかる架橋剤用の化合物としては、例えば多官能アクリレートが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)およびトリスペンタエリスリトールオクタアクリレート(TPEA)などがさらに好ましい。
各発光層10a,10b,10cは、蛍光及び/又は燐光を発光する有機物、若しくは該有機物と、ドーパントとを含んで構成される。ドーパントは、例えば発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的で付加される。各発光層10a,10b,10cを主に構成する発光材料としては、例えば以下のものが挙げられる。
色素系の発光材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびピラゾリンダイマーなどを高分子化したものを挙げることができる。
金属錯体系の発光材料としては、中心金属に、Al、Zn、Beなど、またはTb、Eu、Dyなどの希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを有する金属錯体を高分子化したものを挙げることができ、例えば、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体などを高分子化したものを挙げることができる。
高分子系の発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、およびポリビニルカルバゾール誘導体などを挙げることができる。
赤色発光層10aを主に構成する発光材料としては、前述の発光材料のうち、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることが出来る。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
緑色発光層10bを主に構成する材料としては、前述の発光材料のうち、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、チオフェン環化合物およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
青色発光層10cを主に構成する材料としては、前述の発光材料のうち、ジスチリルアリーレン誘導体、及び/又はオキサジアゾール誘導体の重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
各発光層10a,10b,10cを主に構成する発光材料としては、前述の発光材料の他に、例えば発光効率の向上や発光波長を変化させるなどの目的でドーパント材料をさらに含んでいてもよい。このようなドーパント材料としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。
各発光層10a,10b,10cは、後述する正孔注入層を成膜する方法と同様の方法によって形成することができる。具体的には、正孔注入材料を溶解する溶媒と同様の溶媒に、発光層10a,10b,10cを構成する材料を溶解した塗布液を、慣用の塗布法によって塗布することで成膜することができる。
まず、赤色発光層10aを成膜する。具体的には前述した赤色発光層10aを構成する材料を溶解した塗布液を、慣用の塗布法によって第1電極(陽極)5の表面上に塗布する。次に、塗布した膜を加熱または光照射することによって、架橋した赤色発光層10aを得る。このように架橋した赤色発光層10aは、緑色発光層10bを形成するために塗布液を塗布したとしても、溶出しない。
次に、緑色発光層10bを成膜する。具体的には前述した緑色発光層10bを構成する材料を溶解した塗布液を、慣用の塗布法によって赤色発光層10aの表面上に塗布する。次に、塗布した膜を加熱または光照射することによって、架橋した緑色発光層10bを得る。このように架橋した緑色発光層10bは、青色発光層10cを形成するために塗布液を塗布したとしても、溶出しない。
次に、青色発光層10cを成膜する。具体的には前述した青色発光層10cを構成する材料を溶解した塗布液を、慣用の塗布法によって緑色発光層10bの表面上に塗布して、乾燥させることによって青色発光層10cを得る。
このように、塗布液が塗布される発光層を塗布液に対して予め不溶化させることによって、先に形成された発光層の表面に、次に形成される発光層の塗布液を塗布したときに、先に形成されていた発光層が溶解してしまうことを防ぐことができる。これによって、各発光層の膜厚の制御が容易になり、意図した膜厚の発光層を容易に形成することができる。
発光層10を構成する各発光層10a,10b,10cの層厚は、陽極(第1電極)5側に配置される発光層ほど、層厚が薄い方が好ましい。具体的には、赤色発光層10aの層厚よりも、緑色発光層10bの層厚が厚く、緑色発光層10bの層厚よりも、青色発光層10cの層厚が厚い方が好ましい。さらに具体的には、赤色発光層10aの層厚は、5nm〜20nmが好ましく、さらに好ましくは、10nm〜15nmである。また緑色発光層10bの層厚は、10nm〜30nmが好ましく、さらに好ましくは、15nm〜25nmである。また青色発光層10cの層厚は、40nm〜70nmが好ましく、さらに好ましくは、50nm〜65nmである。このように、各発光層10a,10b,10cの層厚を設定することによって、電極に印加する電圧の変化に対して、色味の変化が少なく、かつ駆動電圧の低い、高効率で発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。
また、発光層10を構成する各発光層10a,10b,10cは、発光する光のピーク波長が長い発光層ほど、陽極(第1基板)5寄りに配置されるので、各発光層10a,10b,10cの層厚を設定することによって、電極に印加する電圧の変化に対して、色味の変化の少なく、かつ駆動電圧の低い有機エレクトロルミネッセンス素子1を実現することができる。
なお、発光する光のピーク波長が長いほど、発光層の最高占有分子軌道(Highest Occupied Molecular Orbital:略称HOMO)および最低非占有分子軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:略称LUMO)がそれぞれ低い傾向にあるので、本実施の形態では、HOMOおよびLUMOが低い発光層ほど、陽極(第1電極)5寄りに配置される。このように陽極(第1電極)5から離間する発光層ほどHOMOおよびLUMOが順次高くなる配置となるので、発光層10において正孔および電子を効率的に輸送することができ、電極に印加する電圧の変化に対して、色味の変化の少なく、かつ駆動電圧の低い有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができるものと推測される。
第1の実施形態では、発光層10を構成する3つの発光層10a,10b,10cを、発光する光のピーク波長が長い発光層ほど、陽極5寄りに配置することによって、電極に印加する電圧の変化に対して、色味の変化の少なく、かつ高効率で発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。
このような構成の有機エレクトロルミネッセンス素子では、陽極と陰極との間に印加する電圧を変化させたときの、外に取出される光の色度座標における座標値xと座標値yの変化の幅が、それぞれ0.05以下の有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。ここで、印加する電圧を変化させるときの範囲は、通常、輝度が100cd/m2〜10000cd/m2となる範囲であり、少なくとも4000cd/m2〜6000cd/m2となる範囲である。
ここで、外に取出される光は、各発光層10a,10b,10cからの光が重ね合わされた光のことであり、本実施の形態における色度座標とは、国際照明委員会(CIE)の定めるCIE1931のことである。
第1の実施形態では、発光層10は、3つの発光層10a,10b,10cが積層されて構成され、全体として白色を発光するとしたけれども、本実施の形態の各発光層10a,10b,10cの発光する波長とは異なる波長の光を発する発光層をそれぞれ設けて、例えば白色とは異なる波長の光を発する発光層10を構成してもよく、また、発光層10を、4層以上の発光層で構成してもよい。各発光層の発光する光の色は、それぞれの有機エレクトロルミネッセンス素子から取出される光の色に応じて、適宜選択される。
なお、有機エレクトロルミネッセンス素子から取出される光の色が、白色であっても、白とは異なる色であっても、また発光層10の層数が3層であっても、4層以上であったとしても、各発光層を、発光する光のピーク波長が長い発光層ほど、陽極5寄りに配置することによって、電極に印加する電圧の変化に対して、色味の変化の少なく、かつ高効率で発光する有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。
第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子の特徴は、上述のように、透明な陽極又は陰極である第1電極に電気的に接続した状態で特定形状の補助電極4が配置されていること、陽極と陰極との間に配置する発光部が3層以上の発光層を有し、各発光層が、互いに異なるピーク波長の光を発し、発光する光のピーク波長がより長い発光層ほど、より前記陽極寄りに配置されていることにある。これら補助電極4及び発光層10の詳細は、上述の通りである。
続いて、これら補助電極4および発光層10以外の有機エレクトロルミネッセンス素子の構成要素について、以下に詳しく説明する。
(基板)
支持基板1としては、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する工程において変化しないもの、すなわち、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、リジッド基板でも、フレキシブル基板でもよく、例えば、ガラス板、プラスチック板、高分子フィルムおよびシリコン板、並びにこれらを積層した積層板などが好適に用いられる。さらに、プラスチック、高分子フィルムなどに低透水化処理を施したものを用いることもできる。前記基板としては、市販のものが使用可能である。また前記基板を公知の方法により製造することもできる。
図1に示すような発光部6からの光を支持基板1側から取出すいわゆるボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子では、支持基板1は、可視光領域の光の透過率が高いものが好適に用いられる。
なお、後述の第2の実施形態にて示すような発光部6からの光を陰極7側から取出すトップエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス素子では、支持基板1は、透明のものでも、不透明のものでもよい。
(陽極と発光層との間に設けられる層)
上記発光部6の任意構成要素である陽極と発光層との間に設けられる層9としては、正孔注入層・正孔輸送層、電子ブロック層等が挙げられる。
上記正孔注入層は、陽極(第1電極)5からの正孔注入効率を改善する機能を有する層であり、上記正孔輸送層とは、正孔注入層または陽極により近い層(正孔輸送層)からの正孔注入を改善する機能を有する層である。また、正孔注入層または正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層を電子ブロック層と称することがある。電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
(陰極と発光層との間に設けられる層)
上記発光部6の任意構成要素である陰極と発光層との間に設けられる層11としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等が挙げられる。
上記電子注入層は、陰極(第2電極)7からの電子注入効率を改善する機能を有する層であり、上記電子輸送層は、電子注入層または陰極により近い層(電子輸送層)からの電子注入を改善する機能を有する層である。また、電子注入層もしくは電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層を正孔ブロック層と称することがある。正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、ホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
上記のような陽極(第1電極)5と陰極(第2電極)7との間に設けられる発光部6の前記発光層10以外の各層の積層構成としては、陽極(第1電極)と発光層との間に設けられる層9として正孔輸送層を設けた構成、陰極と発光層(第2電極)との間に設けられる層11として電子輸送層を設けた構成、陰極と発光層との間に設けられる層11として電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に設けられる層9として正孔輸送層を設けた構成等が挙げられる。例えば、具体的には、以下のa)〜d)の積層構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同様。)
上記構成において、先述のように、正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ場合もある。正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と呼ばれることがある。
さらに、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記電荷注入層または膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。積層する層の順番や数および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜に設定することができる。
また、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子が挙げられる。例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電荷輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(第1電極)
第1の実施形態における第1電極(図1の構成では陽極5)は、発光層10からの光を透過させる透明電極であって、主に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極となるものであるが、後述のように、透明な第1電極を陰極として用いる構成の有機エレクトロルミネッセンス素子も可能である。このような第1電極5は、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物や金属の薄膜を用いることができ、透過率が高いものが好適に利用でき、発光部6の構成材料に応じて適宜選択して用いることができる。第1電極5の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(略称IZO)、金、白金、銀、銅等の薄膜が用いられる。これらの中でも、ITO、IZO、酸化スズが好ましい。
また、かかる第1電極5の構成材料として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。
また、発光層10への電荷注入を容易にするという観点から、このような第1電極5の発光層10側の表面上に、フタロシアニン誘導体、ポリチオフェン誘導体等の導電性高分子、Mo酸化物、アモルファスカーボン、フッ化カーボン、ポリアミン化合物等の1〜200nmの層、或いは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚10nm以下の層を設けてもよい。
このような第1電極5の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して適宜選択することができ、例えば5nm〜10μmであり、好ましくは10nm〜1μmであり、より好ましくは20nm〜500nmである。
また、第1電極を電気的に分離された複数のセルに仕切る構造としてもよく、このような場合には、隣接するセル間の間隔は、好ましくは1μm〜50μmであり、より好ましくは5μm〜30μmである。隣接するセルとの間の間隔が前記下限未満では、第1電極5の面方向に導波する光を十分に抑制することができない傾向となり、他方、前記上限を超えると、素子全体の実際の発光面積が小さくなるため、発光効率が低下する傾向となる。
また、電気的に分離された複数のセルの形状としては、特に限定されないが、例えば、ストライプ状、三角形状、矩形状が挙げられる。なお、第1電極を電気的に分離させた複数のセルに仕切る構造とする場合においては、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製するにあたり、第1電極を形成した後に形成されるもの(例えば、補助電極、有機層)の少なくとも一部が隣接するセル間に充填されることとなる。
上述の第1電極5を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
また、第1電極を電気的に分離させた複数のセルに仕切る方法としては、例えば、第1電極を形成した後に、フォトレジストを用いたエッチング法によりパターン形成する方法が挙げられる。
(陽極と発光層との間に設けられる層)
上述のように、前記陽極(第1電極)5と発光層10との間に、必要に応じて、正孔注入層、正孔輸送層などの陽極と発光層との間に設けられる層9が積層される。
(正孔注入層)
正孔注入層は、上述のように、陽極と正孔輸送層との間、または陽極と発光層との間に設けることができる。正孔注入層を構成する材料としては、公知の材料を適宜用いることができ、特に制限はない。例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
正孔注入層の成膜方法としては、例えば正孔注入層となる材料(正孔注入材料)を含む溶液からの成膜を挙げることができる。溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。
また、このような正孔注入層の厚みとしては、5〜300nm程度であることが好ましい。この厚みが5nm未満では、製造が困難になる傾向があり、他方、300nmを超えると、駆動電圧、および正孔注入層に印加される電圧が大きくなる傾向となる。
(正孔輸送層)
正孔輸送層を構成する材料としては、特に制限はないが、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)4,4’−ジアミノビフェニル(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)等の芳香族アミン誘導体、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体などが例示される。
これらの中でも、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリアリールアミンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
正孔輸送層の厚みは、特に制限されないが、目的とする設計に応じて適宜変更することができ、1〜1000nm程度であることが好ましい。この厚みが前記下限値未満となると、製造が困難になる、または正孔輸送の効果が十分に得られないなどの傾向があり、他方、前記上限値を超えると、駆動電圧および正孔輸送層に印加される電圧が大きくなる傾向がある。したがって正孔輸送層の厚みは、上述のように、好ましくは、1〜1000nmであるが、より好ましくは、2nm〜500nmであり、さらに好ましくは、5nm〜200nmである。
(陰極と発光層との間に設けられる層)
上述のように、前記発光層10と陰極(第2電極)7との間に、必要に応じて、電子注入層、電子輸送層などの層11が積層される。
(電子輸送層)
電子輸送層を形成する材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
(電子注入層)
電子注入層は、先に述べたように、電子輸送層と陰極との間、または発光層と陰極との間に設けられる。電子注入層としては、発光層の種類に応じて、アルカリ金属やアルカリ土類金属、あるいは前記金属を一種類以上含む合金、あるいは前記金属の酸化物、ハロゲン化物および炭酸化物、あるいは前記物質の混合物などが挙げられる。
前記アルカリ金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
前記アルカリ土類金属またはその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
さらに、金属、金属酸化物、金属塩をドーピングした有機金属化合物、および有機金属錯体化合物、またはこれらの混合物も、電子注入層の材料として用いることができる。
この電子注入層は、2層以上を積層した積層構造を有していても良い。具体的には、Li/Caなどが挙げられる。この電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。
この電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
(第2電極)
第1の実施形態における第2電極7は、前記第1電極5に対向して配置される電極であって、有機エレクトロルミネッセンス素子の陰極となるものであるが、本発明においては、後述の第2の実施形態に示すように、陽極である場合も可能である。このような陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易な材料および/または電気伝導度が高い材料および/または可視光反射率の高い材料が好ましい。かかる陰極材料としては、具体的には、金属、金属酸化物、合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物、酸化亜鉛(ZnO)等の無機半導体などを挙げることができる。
上記金属としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属や周期表の13族金属等を用いることができる。これら金属の具体的例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等を挙げることができる。
また、合金としては、上記金属の少なくとも一種を含む合金を挙げることができ、具体的には、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
陰極は、必要に応じて透明電極もしくは半透明電極とされるが、それらの材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、IZOなどの導電性酸化物;ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの導電性有機物を挙げることができる。
なお、陰極(第2電極)7を2層以上の積層構造としてもよい。また、電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
陰極(第2電極)7の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
上述の陰極(第2電極)7を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。なお、この第2電極を2層以上の積層構造としてもよい。
(保護層)
上述のように陰極(第2電極)7が形成された後、基本構造として補助電極4−第1電極(陽極)5−発光部6−第2電極(陰極)7を有してなる発光機能部を保護するために、該発光機能部を封止する保護層(上部封止膜)8が形成される。この保護層8は、通常、少なくとも一つの無機層と少なくとも一つの有機層を有する。積層数は、必要に応じて決定され、基本的には、無機層と有機層は交互に積層される。
なお、プラスチック基板はガラス基板に比べて、ガスおよび液体の透過性が高く、また発光層10などの発光物質は酸化されやすく、水と接触することにより劣化しやすいため、前記基板1としてプラスチック基板が用いられる場合には、基板1および保護層8により発光機能部が被包されていても経時変化し易いので、プラスチック基板上にガスおよび液体に対するバリア性の高い下部封止膜を積層し、その後、この下部封止膜の上に上記発光機能部を積層する。この下部封止膜は、通常、上記保護層(上部封止膜)と同様の構成、同様の材料にて形成される。
次に、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の第2の実施形態を、図6を参照して説明する。
第2の実施形態と、上述の第1の実施形態との違いは、上述の第1の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子が発光部6からの光を透明な陽極(第1電極)5を透過させて透明な支持基板1から外部へ出射するボトムエミッション型の素子であったのに対し、第2の実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子では発光部26からの光を透明な陰極(第1電極)27を透過させて透明な保護層28から外部へ出射するトップエミッション型の素子である点にある。
第2の実施形態では、発光部26からの光を透過させる透明な第1電極が透明陰極27であり、この第1電極27の保護層28側の表面に補助電極24が形成されている。補助電極24は、上述の第1の実施形態における補助電極4と形状、寸法、構成材料は、同一でよく、上述のように、透明陰極(第1電極)27に接して設けられている点が異なるだけである。
第2の実施形態においても、陽極(第2電極)25と陰極(第1電極)27との間に配置される発光部26の配置構成、寸法、構成材料は、上述の第1の実施形態における発光部6と同一でよい。すなわち、発光部26は、3層以上からなる発光層30を有し、必要に応じて陽極(第2電極)25と発光層30との間に設けられる層29と、必要に応じて陰極(第1電極)27と発光層30との間に設けられる層31とを有する。そして、発光部26に含まれる発光層30は、好ましくは、陽極(第2電極)25から陰極(第1電極)27に向けて、赤色発光層30aと、緑色発光層30bと、青色発光層30cとがこの順で積層されて構成される。
本発明にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子を、上記第2の実施形態のように構成しても、上述の第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
すなわち、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記第1の実施形態によっても、第2の実施形態によっても、透明電極の抵抗による電圧低下を軽減し、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、均一発光が可能となる。そして、発光する光のピーク波長に応じて、各発光層を所定の順序で配置しているので、電極に印加する電圧の変化に対して、色味の変化が少なく、かつ高効率で発光することができる。
以上説明した本発明の各実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、曲面状や平面状の照明装置、例えばスキャナの光源として用いられる面状光源、表示装置に好適に用いることができる。
有機エレクトロルミネッセンス素子を備える表示装置としては、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、および液晶表示装置などを挙げることができる。なお有機エレクトロルミネッセンス素子は、アクティブマトリックス表示装置、パッシブマトリックス表示装置において、各画素を構成する発光素子として用いられ、セグメント表示装置において、各セグメントを構成する発光素子として用いられ、ドットマトリックス表示装置、および液晶表示装置において、バックライトとして用いられる。
本発明の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に印加する電圧を変化させたときの、取出される光の色度座標における座標値xと、座標値yとの変化の幅が、それぞれ0.05以下なので、色味の変化が少なく、上述のような面状光源、照明装置、および表示装置に好適に用いられる。
特に、照明装置としては、陽極と陰極との間に印加する電圧を変化させることによって明るさを調整したときに、色味が変化しないものが好ましく、照明装置からの光の色度座標における座標値xと、座標値yとの変化の幅が、それぞれ0.05以下のものが好ましいので、本発明の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子が照明装置に好適に用いられる。
また、同様に、ドットマトリックス表示装置および液晶表示装置のバックライトとしては、明るさを調整したときに、色味が変化しないものが好ましく、バックライトからの光の色度座標における座標値xと、座標値yとの変化の幅が、それぞれ0.05以下のものが好ましいので、本発明の実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子がバックライトに好適に用いられる。
以下、作製例及び参考例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の例示に限定されるものではない。
なお、合成例1、2において用いた下記構造式(A)〜(C)で表される化合物A〜Cは、WO2000/046321公開明細書に記載された方法に従って合成した。
(合成例1)
下記一般式(1)で表される高分子化合物1を以下の方法により合成した。
先ず、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名:Aliquat336)0.91gと、上記化合物A5.23gと、上記化合物C4.55gとを反応容器(200mLセパラブルフラスコ)に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。その後、トルエン70mLを加え、酢酸パラジウム2.0mg、トリス(o−トリル)ホスフィン15.1mgを加えた後に、還流させて混合溶液を得た。
得られた混合溶液に、炭酸ナトリウム水溶液19mLを滴下後、還流下終夜攪拌した後、フェニルホウ酸0.12gを加えて7時間攪拌した。その後、300mlのトルエンを加え、反応液を分液し、有機相を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、ナトリウムN,N−ジエチルジチオカルバメート水溶液を加えて4時間攪拌した。
次いで、攪拌後の混合溶液を分液した後、シリカゲル−アルミナカラムに通し、トルエンで洗浄した後に、メタノールに滴下してポリマーを沈殿させ、その後、得られたポリマーをろ過、減圧乾燥した後にトルエンに溶解させた。得られたトルエン溶液を再度メタノールに滴下して沈殿物を生じさせ、この沈殿物をろ過、減圧乾燥して高分子化合物1を6.33g得た。得られた高分子化合物1のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.2×105であり、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.8×104であった。
(合成例2)
下記一般式(2)で表される高分子化合物2を以下の方法により合成した。
先ず、化合物B22.5gと2,2’−ビピリジル17.6gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。その後、あらかじめアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)1500gを加え、混合溶液を得た。得られた混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)31gを加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
次に、得られた反応溶液を冷却した後、この溶液に、25質量%アンモニア水200mL/メタノール900mL/イオン交換水900mL混合溶液をそそぎ込み、約1時間攪拌した。その後、生成した沈殿物を濾過して回収し、この沈殿物を減圧乾燥した後、トルエンに溶解させた。そして、得られたトルエン溶液を濾過して不溶物を除去した後、このトルエン溶液を、アルミナを充填したカラムに通過させることにより精製した。
次に、精製後のトルエン溶液を、1規定塩酸水溶液で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。そして、このトルエン溶液を、約3質量%アンモニア水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。その後、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液した後、洗浄後のトルエン溶液を回収した。
次いで、洗浄後のトルエン溶液をメタノール中にそそぎ込み、沈殿物を生じさせ、この沈殿物をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して高分子化合物2を得た。得られた高分子化合物2のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.2×105であり、ポリスチレン換算の数平均分子量は1.0×105であった。
(作製例1)
作製例1では、透明な第1電極に補助電極を形成した場合の効果を確認するために、発光層は一層構造とし、透明陽極の基板側の表面に補助電極を配置した有機エレクトロルミネッセンス素子を製造した。
支持基板としてガラス基板(100mm×100mm)を用いた。支持基板の温度を120℃にして、Crターゲット及びスパッタリングガスとしてArを用いたDCスパッタリング法により、膜厚1000nmのCrを前記支持基板に堆積させた。このときの製膜圧力は0.5Pa、スパッタリングパワーは2.0kWであった。Cr膜の上にフォトレジストを塗布し、さらに110℃で90秒間ベークした。次に、線幅20mmのラインから構成される正方形の枠状の開口部と前記開口部の枠内に縦・横のピッチがそれぞれ300μm・100μm、線幅70μm・30μmからなる格子型の開口部とを有するフォトマスクを通して、200mJのエネルギーで露光し、0.5質量%の水酸化カリウム水溶液によって現像後、130℃で110秒間ポストベークした。次いで、Cr用エッチング液に、40℃、120秒間浸漬し、Crのパターニングを行い、次に2質量%水酸化カリウム水溶液に浸漬することで、レジスト残渣を剥離し、Crからなる補助電極(第1補助電極及び第2補助電極)を形成した。
次に、補助電極が形成された基板上に第1電極を形成した。具体的には、基板温度を120℃にし、第1電極材料としてITO焼成ターゲット、スパッタガスとしてArを用いて、DCスパッタリング法により、膜厚3000nmのITOを堆積させた。このときの製膜圧力は0.25Pa、スパッタリングパワーは0.25kWであった。その後、200℃のオーブンで40分間アニール処理を行った。その後、第1電極が形成された基板を60℃の弱アルカリ性洗剤、冷水、50℃の温水をもちいて超音波洗浄し、50℃の温水から引き上げて乾燥した後、20分間UV/O3洗浄を行った。
次に、0.45μm径のフィルター及び0.2μm径のフィルターをそれぞれ用いて、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルクヴィテック社製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液を2段階ろ過し、2段階目にろ過した溶液を用いて、前記洗浄後の基板にスピンコート法により80nmの厚みで薄膜を形成し、大気雰囲気下においてホットプレート上で、200℃で15分間熱処理し、正孔注入層を形成した。
次いで、合成例1、2で得られた高分子化合物1及び高分子化合物2を重量比で1:1の比で計り取り、トルエンに溶解させ、1質量%の高分子溶液を作製した。上記正孔注入層が形成された基板上に、作製した高分子溶液をスピンコート法により80nmの膜厚で製膜した後、窒素雰囲気下のホットプレート上で130℃、60分間熱処理し、発光層を形成した。
その後、前記発光層が形成された基板を真空蒸着機に導入し、陰極としてLiF、Ca、Alを順次それぞれ、2nm、5nm、200nmの厚みで蒸着し、第2電極を形成した。なお、この蒸着工程においては、真空度が1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
最後に、不活性ガス中で、第2電極が形成された基板における第2電極の表面をガラス板で覆い、さらに4辺を光硬化樹脂で覆った後に、光硬化樹脂を硬化させることで保護層を形成して、有機EL発光素子を得た。
(参考例1)
上記作製例1において、補助電極を形成する際のフォトマスクとして、線幅20mmのラインから構成される正方形の枠状の開口部のみを有するフォトマスクを用いた以外は、作製例1と同様にして、比較用の有機EL発光素子を作製した。
(参考例2)
上記作製例1において、補助電極を形成する際のフォトマスクとして、縦・横のピッチがそれぞれ300μm・100μm、線幅70μm・30μmからなる格子型の開口部とを有するフォトマスクを用いた以外は、作製例1と同様にして、比較用の有機EL発光素子を作製した。
(補助電極形成効果の評価)
作製例1及び参考例1〜2で得られた有機EL発光素子の発光特性を評価した。具体的には、素子全体に8Vの電圧を印加した際の発光輝度を測定し、さらに発光面の様子を目視にて観察した。得られた結果を(表1)に示す。
(表1)に示した結果から明らかなように、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光面積が大きい場合でも発光輝度のムラが十分に抑制され、均一発光が可能であることが確認された。
(作製例2)
この作製例2では、発光する光のピーク波長が異なる複数の発光層を所定の順序で配置することによる効果を確認するために、透明陽極の基板側の表面に補助電極を配置せず、発光層を赤、緑、青に発光する3つの発光層から構成し、これら発光層を陽極から陰極に向けて、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層の順に配置した有機エレクトロルミネッセンス素子を製造した。
支持基板としては、ガラス基板を用い、このガラス基板上にスパッタリング法によって成膜され、所定の形状にパターニングされたITO膜を陽極(第1電極)として用いた。陽極としては、厚みが150nmのものを用いた。陽極が形成された基板を、アルカリ洗剤および超純水で洗浄し、乾燥させた後に、UV−O3装置(テクノビジョン株式会社製、商品名「モデル312 UV−O3クリーニングシステム」)を用いてUV−O3処理を行った。
次に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(HC スタルクヴィテック社製、商品名「BaytronP TP AI4083」)の懸濁液を、孔径が0.2μmのメンブランフィルターで濾過した。濾過して得られた液体を、スピンコートすることによって、陽極上に薄膜を形成した。次に、ホットプレート上において200℃で10分間加熱する処理を行い、膜厚が70nmの正孔注入層を得た。
次に、赤色発光層を上記正孔注入層上に積層した。まず、溶媒としてキシレンを用い、赤色発光層を主に構成する材料として、発光材料(サメイション社製、商品名「PR158」)を用い、架橋剤として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、商品名「KAYARAD DPHA」)を用いて塗布液を調合した。発光材料と架橋剤との重量比を4:1とし、発光材料と架橋剤とを合わせた材料の塗布液における割合を1.0質量%とした。このようにして得られた塗布液を、スピンコートすることによって、正孔注入層上に薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気において200℃で20分間加熱して、膜厚が10nmの赤色発光層を得た。このような加熱処理を行うことによって、薄膜を乾燥させて溶媒を除去するとともに、架橋剤を架橋させて、次に塗布される塗布液に対して赤色発光層を不溶化した。
次に緑色発光層を上記赤色発光層上に積層した。まず、溶媒としてキシレンを用い、緑色発光層を主に構成する材料として、発光材料(サメイション社製、製品名「Green1300」)を用い、架橋剤として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、商品名「KAYARAD DPHA」)を用いて塗布液を調合した。発光材料と架橋剤との重量比を、4:1とし、発光材料と架橋剤とを合わせた材料の塗布液における割合を1.0質量%とした。このようにして得られた塗布液を、スピンコートすることによって、上記赤色発光層上に薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気において200℃で20分間加熱して、膜厚が15nmの緑色発光層を得た。このような加熱処理を行うことによって、薄膜を乾燥させて溶媒を除去するとともに、架橋剤を架橋させて、次に塗布される塗布液に対して緑色発光層を不溶化した。
次に青色発光層を上記緑色発光層上に積層した。まず、溶媒としてキシレンを用い、青色発光層を主に構成する材料として、発光材料(サメイション社製、商品名「BP361」)を用いて塗布液を調合した。塗布液における青色発光材料の割合を、1.5質量%とした。このようにして得られた塗布液を、スピンコートすることによって、上記緑色発光層上に薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気において130℃で20分間加熱して、膜厚が55nmの青色発光層を得た。なお、各発光層の厚み方向に垂直な平面で切った断面の形状は、2mm×2mmの正方形とした。
次に、上述のようにして青色発光層を成膜した基板を、真空蒸着気に導入して、バリウムを青色発光層上に蒸着させて、膜厚が約5nmのバリウムからなる薄膜を形成し、さらにバリウムからなる薄膜上にアルミニウムを蒸着させて、膜厚が約80nmのアルミニウムからなる薄膜を形成して、バリウムからなる薄膜と、アルミニウムからなる薄膜との積層体によって構成される陰極を形成した。なお、真空度が5×10-5Pa以下に達してから、バリウムおよびアルミニウムの蒸着を開始した。
(参考例3)
参考例3として、白色の波長領域で発光する一層の発光層(以下、白色発光層という場合がある)のみから成る発光部を備える有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。白色発光層以外の製造工程は、上記作製例2の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造工程と同じなので、重複する説明を省略して、白色発光層の製造工程についてのみ説明する。
まず、溶媒としてキシレンを用い、白色発光層を主に構成する材料として、発光材料(サメイション社製、商品名「WP1330」)を用いて塗布液を調合した。塗布液における発光材料の割合は、1.0質量%とした。このようにして得られた塗布液を、正孔注入層が形成された基板上にスピンコートすることによって、正孔注入層上に薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気において130℃で20分間加熱して、膜厚が80nmの白色発光層を得た。
(参考例4)
参考例4として、赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層の3層の積層順のみが、作製例2の有機エレクトロルミネッセンス素子とは異なる有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。陽極に最も近い層に、青色発光層を配置し、真中の層に、緑色発光層を配置し、陰極に最も近い層に赤色発光層を配置した。赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層以外の製造工程は、作製例2の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造工程と同じなので、赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層の製造工程についてのみ説明する。
まず青色発光層を正孔注入層上に積層した。塗布液の溶媒としてキシレンを用い、青色発光層を主に構成する材料として、発光材料(サメイション社製、商品名「BP361」)を用い、架橋剤として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、商品名「KAYARAD DPHA」)を用いて塗布液を調合した。発光材料と架橋剤との重量比を、4:1とし、発光材料と架橋剤とを合わせた材料の塗布液における割合を1.0質量%とした。このようにして得られた塗布液を、スピンコートすることによって、正孔注入層上に薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気において130℃で20分間加熱して、膜厚が55nmの青色発光層を得た。このような加熱処理を行うことによって、薄膜を乾燥させて溶媒を除去するとともに、架橋剤を架橋させて、次に塗布される塗布液に対して青色発光層不溶化した。
次に緑色発光層を上記青色発光層に積層した。まず、溶媒としてキシレンを用い、緑色発光層を主に構成する材料として、発光材料(サメイション社製、製品名「Green1300」)を用い、架橋剤として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、商品名「KAYARAD DPHA」)を用いて塗布液を調合した。発光材料と架橋剤との重量比を、4:1とし、発光材料と架橋剤とを合わせた材料の塗布液における割合を1.0質量%とした。このようにして得られた塗布液を、スピンコートすることによって、上記青色発光層上に薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気において200℃で20分間加熱して、膜厚が15nmの緑色発光層を得た。このような加熱処理を行うことによって、薄膜を乾燥させて溶媒を除去するとともに、架橋剤を架橋させて、次に塗布される塗布液に対して緑色発光層を不溶化した。
次に赤色発光層を上記緑色発光層上に積層した。まず、溶媒としてキシレンを用い、赤色発光層を主に構成する材料として、発光材料(サメイション社製、商品名「PR158」)を用いて塗布液を調合した。塗布液における発光材料の割合を1.0質量%とした。このようにして得られた塗布液を、スピンコートすることによって、上記緑色発光層上に薄膜を形成した。次に、窒素雰囲気において200℃で20分間加熱して、膜厚が10nmの赤色発光層を得た。
(発光波長の異なった複数の発光層の所定順の配置による効果の評価)
作製例2、参考例3、参考例4の各有機エレクトロルミネッセンス素子にそれぞれ電圧を印加して、輝度および色度を測定した。測定では、印加する電圧を段階的に変化させ、印加する電圧毎に輝度および色度を測定した。測定結果を(表2)に示す。
印加する電圧を変えて輝度を100cd/m2〜10000cd/m2まで変化させたときの、作製例2、参考例3、参考例4の各有機エレクトロルミネッセンス素子のCIE色度座標における座標値x,yのそれぞれの変化幅を下記(表3)に示す。
(表2)および(表3)に示すように、作製例2の有機エレクトロルミネッセンス素子は、印加する電圧を変えて輝度を100cd/m2〜10000cd/m2まで変化させたときの、取出される光の色度座標における座標値xと座標値yの変化の幅が、それぞれ0.016以下であった。
(表2)に示すように、作製例2の有機エレクトロルミネッセンス素子は、3層の発光層を設けることによって、1層の発光層のみからなる参考例3の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも電流効率の最大値が向上した。
また、作製例2の有機エレクトロルミネッセンス素子は、3層の発光層を所定の配置にすることによって、参考例4の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも電流効率の最大値が向上した。
また、(表3)に示すように、作製例2の有機エレクトロルミネッセンス素子は、3層の発光層を設けることによって、1層の発光層のみからなる参考例3の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも、電圧の変化に対する色味の変化が少なかった。また、作製例2の有機エレクトロルミネッセンス素子は、3層の発光層を所定の配置にすることによって、参考例4の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも、電圧の変化に対する色味の変化が少なかった。