JP5311364B2 - 抗炎症用組成物 - Google Patents
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Description
一方、食用果実の抗炎症作用の研究は少なく、ヤマブドウについての抗炎症作用については知られていない。
ヤマブドウは、ブドウ科ブドウ属に属するものであり、一般にジュース・ソースなどの加工食品や染料などとして使用されてきた。
本発明者は、ヤマブドウのワインビネガーを開発し、それが発癌抑制作用を有することを開示した(特許文献1)。
また、当該用途に対して特に有効な成分を豊富に含む抽出物を製造する方法を提供することである。
本発明はかかる新知見に基づいて本発明を完成するに至った。
(1)ヤマブドウ果汁、ヤマブドウ果汁の発酵産物、ヤマブドウ果実の高極性有機溶媒抽出物またはヤマブドウ果実のヘキサン不溶物を含有する、抗炎症用組成物。
(2)炎症が皮膚炎である(1)に記載の組成物。
(3)高極性有機溶媒抽出物が、酢酸エチル抽出物である(1)または(2)記載の組成物。
(4)高極性有機溶媒抽出物が、ヘキサン不溶物であって、且つ酢酸エチル抽出物である(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)医薬品である(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)食品である(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(7)食品が保健機能食品又はダイエタリーサプリメントである、(6)記載の組成物。
(8)保健機能食品が特定保健用食品又は栄養機能食品である、(7)記載の組成物。
(9)化粧品である(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(10)ヤマブドウ果汁を酢酸エチルで抽出する工程を含む抗炎症用組成物の製造方法。
(11)ヤマブドウ果汁からヘキサン抽出画分を除去する工程、および酢酸エチルで抽出する工程を含む抗炎症用組成物の製造方法。
(12)ヤマブドウ果汁、ヤマブドウ果汁の発酵産物、ヤマブドウ果実の高極性有機溶媒抽出物またはヤマブドウ果実のヘキサン不溶物を含有し、抗炎症作用を有するものであることを特徴とし、抗炎症のために用いられる旨の表示を付した食品。
(13)ヤマブドウ果汁、ヤマブドウ果汁の発酵産物、ヤマブドウ果実の高極性有機溶媒抽出物またはヤマブドウ果実のヘキサン不溶物を含有し、抗炎症作用を有するものであることを特徴とし、抗炎症のために用いられる旨の表示を付した化粧品。
(14)ヤマブドウ果実の高極性有機溶媒抽出物またはヘキサン不溶物を含有する、抗変異原用組成物。
(15)高極性有機溶媒抽出物が、酢酸エチル抽出物である(14)記載の組成物。
(16)高極性有機溶媒抽出物が、ヘキサン不溶物であって、且つ酢酸エチル抽出物である(14)または(15)記載の組成物。
(17)医薬品である(14)〜(16)のいずれかに記載の組成物。
(18)食品である(14)〜(16)のいずれかに記載の組成物。
(19)食品が保健機能食品又はダイエタリーサプリメントである、(18)記載の組成物。
(20)保健機能食品が特定保健用食品又は栄養機能食品である、(19)記載の組成物。
(21)化粧品である(14)〜(16)のいずれかに記載の組成物。
(22)ヤマブドウ果実の高極性有機溶媒抽出物またはヘキサン不溶物を含有し、抗変異原性を有するものであることを特徴とし、抗変異原のために用いられる旨の表示を付した食品。
(23)ヤマブドウ果実の高極性有機溶媒抽出物またはヘキサン不溶物を含有し、抗変異原性を有するものであることを特徴とし、抗変異原のために用いられる旨の表示を付した化粧品。
(24)ヤマブドウ果汁を酢酸エチルで抽出する工程を含む抗変異原用組成物の製造方法。
(25)ヤマブドウ果汁からヘキサン抽出画分を除去する工程、および酢酸エチルで抽出する工程を含む抗変異原用組成物の製造方法。
炎症とは、感染、物理的刺激、化学的刺激、アレルギー反応等の侵襲に対し、免疫系が応答する種々の反応の総称である。
一般に炎症は外来刺激などの外因性要因と生体側の異常、体質的要素などの内因性要因との相互作用によって発症する。また炎症を起こしている部位によって、例えば腰や肩の筋肉等または関節に炎症を起こしている場合には腰痛や肩こりまたは関節炎といった症状(疾患)となって顕れ、皮膚や粘膜に炎症を起こしている場合には皮膚炎や口内炎などの疾患として顕れる。
炎症の症状としては、通常、発赤、熱感、発痛、腫脹、機能障害(例:掻痒、疼痛)が挙げられる。
本発明の組成物はこれらの疾病・症状の予防、治療、症状の改善に用いることができる。
基本的には、本発明の発酵産物は常法に基づいて製造することができる。好ましくは、ヤマブドウの果実を通常10℃〜80℃、好ましくは20℃〜60℃程度、より好ましくは30℃〜50℃程度に加熱してから果汁を搾汁し、これに、例えばアルコール発酵酵母や酵素等を加えて醸造し、アルコール濃度が通常3〜30%、好ましくは5〜20%、より好ましくは約10%とすることによって、ヤマブドウワインが得られる。ヤマブドウワインに、例えば酢酸発酵酵母を加え、酢酸濃度が通常3〜10%、好ましくは6%程度になるまで発酵させ、必要に応じて濾過を行いヤマブドウワインビネガーが製造される。
本発明の抗変異原用組成物は、変異原性物質に対して、その変異原性を抑制または阻止するものである。
ヤマブドウ果実の有機溶媒抽出物(乾燥重量として)の場合、上記ヤマブドウ果汁の投与量の1/100〜1/10、好ましくは1/30〜1/15程度を投与することができる。
ヘキサン不溶物(乾燥重量として)の場合、上記ヤマブドウ果汁の投与量の1/2〜1/5程度を投与することができる。
さらに炎症の予防のために投与する場合は、乾燥重量として、上記ヤマブドウ果汁の量の1/2〜1/5程度を長期間投与することも可能である。
なお該果汁の発酵産物(乾燥重量として)の場合は、通常上記ヤマブドウ果汁とほぼ同じである。
ヤマブドウ果実の有機溶媒抽出物(乾燥重量として)の場合、上記ヤマブドウ果汁の投与量の1/100〜1/10、好ましくは1/30〜1/15程度を投与することができる。
ヘキサン不溶物(乾燥重量として)の場合、上記ヤマブドウ果汁の投与量の1/2〜1/5程度を投与することができる。
さらに炎症の予防のために投与する場合は、乾燥重量として、上記ヤマブドウ果汁の量の1/2〜1/10程度を長期間投与することも可能である。
また、本発明においてはヤマブドウ果実のヘキサン不溶物または高極性有機溶媒抽出物を含有し、抗変異原性を有するものであることを特徴とし、抗変異原のために用いられる旨の表示を付した食品を提供する。
上記の量を1日1回から数回に分けて摂取することが好ましい。この場合、一日あたり摂取量、または1回あたりの摂取量を1単位包装とすることができる。
本発明における化粧品は、日焼けなどの炎症に対して用いることができる。
また、本発明においてはヤマブドウ果汁のヘキサン不溶物またはその高極性有機溶媒抽出物を含有し、抗変異原性を有するものであることを特徴とし、抗変異原性のために用いられる旨の表示を付した化粧品を提供する。
より具体的には、ヤマブドウ果実をそのままで、または圧搾等により粉砕したものに、果実100重量部あたりヘキサン100〜500重量部を加えて抽出し、ヘキサン層を除去し、水層をさらに酢酸エチルで抽出する工程を含む製造方法である。酢酸エチルの量は残渣1重量部に対して1〜10重量部、好ましくは3〜5重量部を加えて抽出する。さらにこの操作を3〜5回繰り返すことが好ましい。さらに抽出温度は5〜30℃、好ましくは5〜20℃である。
なお酢酸エチルで抽出した後に、該抽出物をヘキサン抽出・ヘキサン層除去に供してもよい。
<ヤマブドウ果汁の調製>
ヤマブドウを樹から果実を収穫し、枝を取るために除梗破砕する。これを搾汁機(エアープレス)にて処理し、95℃にてドラム缶に詰め、2〜3ヶ月間保存して、酒石酸結晶を析出させ、酒袋で絞ることによってヤマブドウ果汁を得る。
<発酵産物の調製>
完熟した蒜山ヤマブドウの果実(果皮、果肉、種子)から搾汁した果汁60Lを備前焼容器に仕込み、室温(約20℃)でワイン酵母としてラルバン71Bを7.2g加えてアルコール発酵を行った。発酵液槽内部の温度は25〜28℃に調整した。アルコールが6%に達した段階で純粋培養した産幕酵母バストリアヌス100cm2を表面移植し、酵母菌膜の途中移植を行って、発酵を促進した。これらの操作によって、1週間のアルコール発酵とそれに続く2ヶ月の酢酸発酵で、総酸含量が約6%(酢酸含量は約5.1%)の発酵産物を得た。この発酵産物を凍結させ、減圧乾燥機で水分および酢酸などの揮発成分を取り除き、凍結乾燥物11gを得た。
<ヤマブドウ抽出物の調製>
ヤマブドウ抽出物は図1にしたがって得た。ヤマブドウ果実を搾汁機器にかけて絞り、圧搾搾汁100mL(100mLを凍結乾燥させると乾燥重量15.1gの固形物が残る)を分液ロートに入れ、ヘキサン300mLを加えて振とう撹拌後、ヘキサン層と水層とに分離させた。これを2回繰り返し、ヘキサン層を除いた。残った水層に酢酸エチル300mLを加えて振とう撹拌を3回繰り返し、酢酸エチル層と水層とに分離させ、酢酸エチル層を別容器に分けた。この酢酸エチル画分から、減圧乾燥機を用いて水分及び揮発成分を除き、粉末状の乾燥物0.8gを得た。
<外用によるヤマブドウ果汁の抗炎症効果の評価>
マウス(ICRマウス、メス6週齢、又はSENCARマウス、オス6週齢)8匹の片耳の前面及び後面ともに、炎症性物質12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate)(以下TPAと省略)のアセトン溶液(85μM)を耳の片面に10μL、もう片面に10μLを滴下塗布した。塗布の6時間後に耳重量を測定した。ここで耳重量とは、直径6mmのパンチで耳に穴を開け、その時取れる円形の部分の重量をいう(以下同様)。TPAを塗布したマウスの耳は、6時間後に炎症が起こり、耳が腫れた。その時の耳重量は15.8±1mgであった。コントロールとして、溶媒であるアセトンのみを塗布したところ、耳は腫れず、耳重量は6.5±0.3mgであった。TPAを塗布することで耳重量は増加した。
実施例1で得られたヤマブドウ果汁の凍結乾燥粉末1.8gをアセトン水混液(66%のアセトンと蒸留水の混合溶液;アセトン:蒸留水=2:1(v/v))5mLに溶解させた(0.36g/mL)。次にマウス(ICRマウス、メス6週齢、又はSENCARマウス、オス6週齢)6匹の片耳の前面及び後面ともに、上記を10μLを塗布し、その30分後にTPA(85μMの溶液)を片耳の前面及び後面に10μL塗布した。その結果、6時間後に、マウスの耳は腫れて耳重量(12.9±1.9mg)となった。果汁を塗布しない場合と比べて、重量増加は有意に少なかった。
以上より、ヤマブドウ果汁の凍結乾燥粉末が、炎症反応を抑制すること、即ち抗炎症効果を有することが示された。
<外用によるヤマブドウ発酵産物の抗炎症効果の評価>
実験例1において、ヤマブドウ果汁の凍結乾燥粉末を用いる代わりに実施例2で得たヤマブドウ発酵産物の凍結乾燥粉末を用いる他は、実験例1と同じ条件で抗炎症効果の評価を行った。その結果、TPA塗布6時間後に、アセトンのみを塗布したマウスの耳は腫れて、耳重量は15.8±1mgであった、一方該発酵産物を塗布した場合の耳重量は13.1±2.3mgであり、アセトンのみを塗布した場合に比べての重量増加は有意に少なかった。
以上より、ヤマブドウ発酵産物の凍結乾燥粉末が、抗炎症効果を有することが示された。
<外用によるヤマブドウ抽出物の抗炎症効果の評価>
実施例3で得られたヤマブドウ抽出物(以下酢酸エチル抽出物ともいう)0.8gをアセトン水混液5mLまたは10mLに溶解した((H);0.16g/mL、(L);0.08g/mL)。
調製したヤマブドウ抽出物のアセトン水混液をマウス6匹の片耳の前面及び後面にそれぞれ10μL塗布した後、30分後にTPAを塗布した。塗布6時間後に耳重量を測定した。
さらにヘキサンで抽出したヘキサン層の成分を同様に減圧乾燥させて得られた粉末を0.06g/mLになるようにアセトン水混液に溶解し(以下ヘキサン抽出物ともいう)、上記と同様の条件で実験した。
また比較としてTPAの代わりにアセトンを塗布して実験を行った。表1に耳重量を示した。
以上より、ヤマブドウの酢酸エチル抽出物が、抗炎症効果を有することが示された。
<飲用によるヤマブドウ抽出物の抗炎症効果の評価>
マウス(SENCARマウス、オス6週齢)6匹に、水を飲み水として与え、12時間飼育後、片耳の前面及び後面ともにTPAを塗布したところ、6時間後に炎症が起こり、耳が腫れ、耳重量が17.5mgとなった。一方、マウス(同上)6匹に、実施例2で得られたヤマブドウ果汁の酢酸エチル画分の乾燥物を水に溶解し(0.16g/mL(H)または0.08g/mL(L))飲み水として与え、12時間飼育後、同様に片耳の前面及び後面ともにTPAを塗布したところ、6時間後に、炎症が起こり、耳が腫れ、耳重量は10.0mg(H)または12.8mg(L)となった。飲み水として、水のみを与えた場合と比べて、耳重量の増加は有意に少なかった。
以上より、ヤマブドウ抽出物が、飲用によっても抗炎症作用を示すことが明らかとなった。
<ヤマブドウの変異原性試験に対する評価>
Trp-P-2 (3-Amino-1-methyl-5H-pyrido [4,3-b]indole)に対するヤマブドウの凍結乾燥物の抗変異原性をサルモネラ菌を用いるエイムス試験で調べた。
実験条件:
・Trp-P-2 0.1 nmolの50μL水溶液
・ヤマブドウ凍結乾燥物(i)〜(iv)の蒸留水溶液と滅菌水の合計を100μLとする溶液
・サルモネラ菌液 100μL
・S9入り緩衝液 500μL
を混ぜて、37℃で20分振とうした。
なおヤマブドウ果実凍結乾燥物は、以下の群に分けた。
(i)Y−grape juice群:実施例1で得られたヤマブドウ果汁(0.05mL)の凍結乾燥物の蒸留水溶液(果汁0.05mLから得られた成分を蒸留水溶液100μLに溶かした試料。実際は果汁100mLから得られたサンプルの0.05/100である。)
(ii)Hexane Fra.群:実施例1で得られたヤマブドウ果汁0.03、0.1mLのヘキサン抽出物の蒸留水溶液(果汁100mLをヘキサン抽出し、ヘキサン留去後の残分の0.03/100あるいは0.1/100を滅菌水0.1mLに溶かしたもの)
(iii)EtOAc Fra.群:実施例1で得られたヤマブドウ果汁0.02、0.05、0.1mLをヘキサン抽出・酢酸エチル抽出物の蒸留水溶液(果汁100mLをヘキサン抽出したあとの果汁層を酢酸エチル抽出し、酢酸エチル留去後の残分の、0.02/100、0.05/100あるいは0.1/100を滅菌水0.1mLに溶かしたもの)
(iv)residue群(水層残存群):実施例1で得られたヤマブドウ果汁0.03、0.1mLのヘキサン抽出・酢酸エチル抽出後抽出されなかった果汁層(凍結乾燥)の蒸留水溶液(果汁100mLをヘキサン抽出したあとの果汁層を酢酸エチル抽出し、酢酸エチルで抽出されなかった果汁層を凍結乾燥した時の固形物の、0.02/100、0.05/100あるいは0.1/100を滅菌水0.1mLに溶かしたもの)
これを寒天培地にまいて、37℃で48時間置いた後突然変異を起こしたサルモネラ菌数を数えた。
<外用によるヤマブドウ果汁の皮膚腫瘍に対する評価>
センカー(Sencar)マウス(メス6週)の背部の毛を剃り、背部皮膚に発癌物質DMBA(ジメチルベンゾ(a)アンスラセン)(390nmol/アセトン0.1mL)を1回塗布し、その1週間後より発癌促進物質TPA(1.7nmol/アセトン0.1mL)を週2回塗布した(TPA群、n=8)(図4参照)。
次にDMBAを1回塗布し、その1週間後よりTPA塗布の30分前に、実施例1で得られたヤマブドウ果汁(1L)の凍結乾燥物18.2gをアセトン水混液500mLまたは100mLに溶かした溶液0.15mLを塗布した(上記の乾燥物を500mLに溶かしたものを2X投与群(n=8);100mLに溶かしたものを10X投与群(n=8)という)。なお実験中、餌及び水は自由に与えた。
Claims (4)
- 有効成分として、ヤマブドウ果実のヘキサン不溶物であって且つ酢酸エチル抽出物を含有する抗炎症用組成物。
- 炎症が皮膚炎である請求項1に記載の組成物。
- 抗炎症用医薬品である請求項1または2に記載の組成物。
- ヤマブドウ果汁からヘキサン抽出画分を除去する工程、および酢酸エチルで抽出する工程を含む抗炎症用組成物の製造方法。
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