図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、充放電可能なマスタバッテリ50と、マスタバッテリ50からの電力を昇圧してインバータ41,42に供給するマスタ側昇圧回路55と、マスタバッテリ50とマスタ側昇圧回路55との接続や接続の解除を行なうシステムメインリレー56と、充放電可能なスレーブバッテリ60,62と、スレーブバッテリ60,62からの電力を昇圧してインバータ41,42に供給するスレーブ側昇圧回路65と、スレーブバッテリ60,62の各々とスレーブ側昇圧回路65との接続や接続の解除を各々に行なうシステムメインリレー66,67と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。以下、説明の都合上、マスタ側昇圧回路55およびスレーブ側昇圧回路65よりインバータ41,42側を高電圧系といい、マスタ側昇圧回路55よりマスタバッテリ50側を第1低電圧系といい、スレーブ側昇圧回路65よりスレーブバッテリ60,62側を第2低電圧系という。
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト26のクランク角を検出する図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションなどが入力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、図示しないクランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構37およびデファレンシャルギヤ38を介して、最終的には車両の駆動輪39a,39bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42やマスタ側昇圧回路55を介してマスタバッテリ50と電力のやりとりを行なうと共にインバータ41,42やスレーブ側昇圧回路65を介してスレーブバッテリ60,62と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを接続する電力ライン(以下、高電圧系電力ラインという)54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
マスタ側昇圧回路55およびスレーブ側昇圧回路65は、周知の昇圧コンバータとして構成されている。マスタ側昇圧回路55は、マスタバッテリ50にシステムメインリレー56を介して接続された電力ライン(以下、第1低電圧系電力ラインという)59と前述の高電圧系電力ライン54とに接続され、マスタバッテリ50の電力を昇圧してインバータ41,42に供給したりインバータ41,42に作用している電力を降圧してマスタバッテリ50を充電したりする。スレーブ側昇圧回路65は、スレーブバッテリ60にシステムメインリレー66を介して接続されると共にスレーブバッテリ62にシステムメインリレー67を介して接続された電力ライン(以下、第2低電圧系電力ラインという)69と高電圧系電力ライン54とに接続され、スレーブバッテリ60,62のうちスレーブ側昇圧回路65に接続されているスレーブバッテリ(以下、接続側スレーブバッテリという)の電力を昇圧してインバータ41,42に供給したりインバータ41,42に作用している電力を降圧して接続側スレーブバッテリを充電したりする。なお、高電圧系電力ライン54の正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ57が接続されており、第1低電圧系電力ライン59の正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ58が接続されており、第2低電圧系電力ライン69の正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ68が接続されている。
マスタバッテリ50とスレーブバッテリ60,62とは、いずれもリチウムイオン二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62を管理するのに必要な信号、例えば、マスタバッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vb1,マスタバッテリ50の正極側の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib1,マスタバッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tb1,スレーブバッテリ60,62の各々の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vb2,Vb3,スレーブバッテリ60,62の各々の正極側の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib2,Ib3,スレーブバッテリ60,62にそれぞれ取り付けられた温度センサ61,63からの電池温度Tb2,Tb3などが入力されており、必要に応じてマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、マスタバッテリ50を管理するために、図示しない電流センサにより検出された充放電電流Ib1の積算値に基づいて蓄電量SOC1を演算したり、演算した蓄電量SOC1と電池温度Tb1とに基づいてマスタバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win1,Wout1を演算したりすると共に、スレーブバッテリ60,62を管理するために、図示しない電流センサにより検出された充放電電流Ib2,Ib3の積算値に基づいて蓄電量SOC2,SOC3を演算したり、演算した蓄電量SOC2,SOC3と電池温度Tb2,Tb3とに基づいてスレーブバッテリ60,62の入出力制限Win2,Wout2,Win3,Wout3を演算したりしている。なお、マスタバッテリ50の入出力制限Win1,Wout1は、電池温度Tb1に基づいて入出力制限Win1,Wout1の基本値を設定し、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win1,Wout1の基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図2にマスタバッテリ50の電池温度Tb1と入出力制限Win1,Wout1との関係の一例を示し、図3にマスタバッテリ50の蓄電量SOC1と入出力制限Win1,Wout1の補正係数との関係の一例を示す。スレーブバッテリ60,62の入出力制限Win2,Wout2,Win3,Wout3は、マスタバッテリ50の入出力制限Win1,Wout1と同様に設定することができる。
第2低電圧系には、スレーブ側昇圧回路65に対してスレーブバッテリ60,62と並列に充電器90が接続されると共にこの充電器90に車両側コネクタ92が接続されている。車両側コネクタ92は、車外の電源である交流の外部電源(例えば、家庭用電源(AC100V)など)100に接続された外部電源側コネクタ102を接続可能に形成されている。充電器90は、第2低電圧系と車両側コネクタ92との接続や接続の解除を行なう充電用リレーや、外部電源100からの交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ,AC/DCコンバータにより変換した直流電力の電圧を変換して第2低電圧系に供給するDC/DCコンバータなどを備える。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ57aからの電圧(高電圧系の電圧)VHや、コンデンサ58の端子間に取り付けられた電圧センサ58aからの電圧(第1低電圧系の電圧)VL1,コンデンサ68の端子間に取り付けられた電圧センサ68aからの電圧(第2低電圧系の電圧)VL2,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,モータMG2からの動力だけで走行する電動走行とエンジン22からの動力の出力を伴って走行するハイブリッド走行とのうち電動走行の優先の解除を指示する電動走行優先キャンセルスイッチ89からのスイッチ信号SWなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、マスタ側昇圧回路55のスイッチング素子へのスイッチング制御信号や、スレーブ側昇圧回路65のスイッチング素子へのスイッチング制御信号,システムメインリレー56,66,67への駆動信号,充電器90への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションセンサ82により検出するシフトポジションSPとしては、駐車ポジション(Pポジション)や中立ポジション(Nポジション),ドライブポジション(Dポジション),リバースポジション(Rポジション)などがある。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
また、実施例のハイブリッド自動車20では、自宅や予め設定された充電ポイントで車両をシステム停止した後に外部電源側コネクタ102と車両側コネクタ92とが接続されると、充電器90内の充電用リレーをオンとし、システムメインリレー56やシステムメインリレー66,67をオンとして充電器90内のAC/DCコンバータやDC/DCコンバータを制御し、外部電源100からの電力を用いてマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62を満充電や満充電より低い所定の充電状態(例えば、蓄電量SOC1,SOC2,SOC3が80%や85%の状態)にする。したがって、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62が充分に充電されている状態でシステム起動(イグニッションオン)されて走行する際には、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62からの電力を用いてモータ運転モードである程度の距離(時間)を走行することが可能となる。しかも、実施例のハイブリッド自動車20では、マスタバッテリ50に加えてスレーブバッテリ60,62を備えるから、マスタバッテリ50だけを備えるものに比してモータ運転モードでの走行距離(走行時間)を長くすることができる。
さらに、実施例のハイブリッド自動車20では、電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフの状態のときには、基本的に以下のように走行する。まず、外部電源100からの電力を用いてマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62が充分に充電されている状態でシステム起動(イグニッションオン)されたときには、システムメインリレー56をオンとしてマスタバッテリ50とマスタ側昇圧回路55とを接続すると共にシステムメインリレー66をオンとしてスレーブバッテリ60とスレーブ側昇圧回路65とを接続する(以下、この状態を第1接続状態という)。そして、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1に比してスレーブバッテリ60の蓄電量SOC2が迅速に低下するようマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御しながら、モータMG2から入出力される動力だけを用いて走行する電動走行とエンジン22からの動力の出力を伴って走行するハイブリッド走行とのうち電動走行を優先して走行し、スレーブバッテリ60の蓄電量SOC2が所定値Sref2(例えば、25%や30%,35%など)以下になると、システムメインリレー66をオフとしてスレーブバッテリ60とスレーブ側昇圧回路65とを切り離すと共にシステムメインリレー67をオンとしてスレーブバッテリ62とスレーブ側昇圧回路65とを接続し(以下、この状態を第2接続状態という)、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1が所定値Sref1(例えば、30%や35%,40%など)以下になると共にスレーブバッテリ62の蓄電量SOC3が所定値Sref3(例えば、25%や30%,35%など)以下になるようマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御しながら電動走行を優先して走行する。そして、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1が所定値Sref1以下になると共にスレーブバッテリ62の蓄電量SOC3が所定値Sref3以下になると、システムメインリレー67をオフとしてスレーブバッテリ62とスレーブ側昇圧回路65とを切り離す(以下、この状態をスレーブ切り離し状態という)と共にその後は車両に要求される要求パワーに基づいてエンジン22を間欠運転しながら走行する。即ち、第1接続状態は、マスタバッテリ50とマスタ側昇圧回路55とが接続されると共にスレーブバッテリ60とスレーブ側昇圧回路65とが接続されスレーブバッテリ62とスレーブ側昇圧回路65との接続が解除されている状態であり、第2接続状態は、マスタバッテリ50とマスタ側昇圧回路55とが接続されると共にスレーブバッテリ62とスレーブ側昇圧回路65とが接続されスレーブバッテリ60とスレーブ側昇圧回路65との接続が解除されている状態であり、スレーブ切り離し状態は、マスタバッテリ50とマスタ側昇圧回路55とが接続されると共にスレーブバッテリ60,62の両方とスレーブ側昇圧回路65との接続が解除されている状態である。実施例では、モータMG1,MG2から動力を入出力している最中(走行中)のシステムメインリレー66,67のオンオフ回数を少なくするために、スレーブ切り離し状態になった以降は、システム停止(イグニッションオフ)された後に外部電源100からの電力を用いてマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62を充電するときまでシステムメインリレー66,67をオンとしないものとした。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、外部電源100からの電力を用いてマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62が充分に充電されている状態でシステム起動されて走行する際の動作について説明する。図4はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図5は駆動制御ルーチンで用いる制御用入出力制限Win,Wout(マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の状態,システムメインリレー56,66,67のオンオフ状態に基づいて設定される値)を設定する制御用入出力制限設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。駆動制御ルーチンや制御用入出力制限設定ルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。なお、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、外部電源100からの電力を用いてマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62が充分に充電されている状態でシステム起動されたときにシステムメインリレー56,66をオンとするものとした。以下、説明の都合上、まず、図5の制御用入出力制限設定ルーチンを用いて制御用入出力制限Win,Woutの設定について説明し、その後、図4の駆動制御ルーチンを用いて駆動制御について説明する。
制御用入出力制限設定ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の入出力制限Win1,Wout1,Win2,Wout2,Win3,Wout3や、第1接続状態(システムメインリレー56,66がオンでシステムメインリレー67がオフの状態)のときに値1が設定されると共に第1接続状態でないときに値0が設定される第1接続状態フラグG1,第2接続状態(システムメインリレー56,67がオンでシステムメインリレー66がオフの状態)のときに値1が設定されると共に第2接続状態でないときに値0が設定される第2接続状態フラグG2などのデータを入力する(ステップS400)。ここで、マスタバッテリ50の入出力制限Win1,Wout1はマスタバッテリ50の電池温度Tb1とSOC1とに基づいて設定されたものを、スレーブバッテリ60の入出力制限Win2,Wout2はスレーブバッテリ60の電池温度Tb2と蓄電量SOC2とに基づいて設定されたものを,スレーブバッテリ62の入出力制限Win3,Wout3はスレーブバッテリ62の電池温度Tb3と蓄電量SOC3とに基づいて設定されたものを,それぞれバッテリECU52から通信により入力するものとした。また、第1接続状態か第2接続状態かスレーブ切り離し状態かは、後述の図4の駆動制御ルーチンにより選択されるものとした。
こうしてデータを入力すると、入力した第1接続状態フラグG1の値と第2接続状態フラグG2の値とを調べ(ステップS410)、第1接続状態フラグG1が値1で第2接続状態フラグG2が値0のときには、第1接続状態であると判断し、マスタバッテリ50の入力制限Win1とスレーブバッテリ60の入力制限Win2との和を制御用入力制限Winとして設定すると共にマスタバッテリ50の出力制限Wout1とスレーブバッテリ60の出力制限Wout2との和を制御用出力制限Woutとして設定し(ステップS420)、第1接続状態フラグG1が値0で第2接続状態フラグG2が値1のときには、第2接続状態であると判断し、マスタバッテリ50の入力制限Win1とスレーブバッテリ62の入力制限Win3との和を制御用入力制限Winとして設定すると共にマスタバッテリ50の出力制限Wout1とスレーブバッテリ62の出力制限Wout3との和を制御用出力制限Woutとして設定し(ステップS430)、第1接続状態フラグG1と第2接続状態フラグG2とが共に値0のときには、スレーブ切り離し状態であると判断し、マスタバッテリ50の入出力制限Win1,Wout1を制御用入出力制限Win,Woutとして設定し(ステップS440)、制御用入出力制限設定ルーチンを終了する。即ち、制御用入出力制限Win,Woutは、第1接続状態や第2接続状態のときには、スレーブ切り離し状態のときに比して絶対値が大きな値を設定することになる。
次に、こうして設定された制御用入出力制限Win,Woutを用いた駆動制御について説明する。以下、簡単のために、モータMG2から入出力される動力だけを用いて走行する電動走行を優先しないときについては、エンジン22からの動力の出力を伴って走行するハイブリッド走行で走行するものとして説明する。
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,制御用入出力制限Win,Wout,マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3,マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3の全てが各所定値Sref1,Sref2,Sref3以下になる蓄電量条件が成立したか否かを示す蓄電量条件フラグF1,電動走行優先キャンセルスイッチ89からのスイッチ信号SWなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3は、図示しない電流センサにより検出された充放電電流Ib1,Ib2,Ib3の積算値に基づいてそれぞれ演算されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。さらに、制御用入出力制限Win,Woutは、前述の図5に例示した制御用入出力制限設定ルーチンにより設定されたものを入力するものとした。蓄電量条件フラグF1は、図示しない蓄電量条件フラグ設定ルーチンにより、システム起動後で蓄電量条件が成立する前は値0が設定され、蓄電量条件が成立した以降は値1が設定されたものを入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪39a,39bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。
続いて、スイッチ信号SWを調べることによって電動走行優先キャンセルスイッチ89のオンオフ状態(電動走行の優先の解除が指示されているか否か)を調べ(ステップS120)、電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときには、電動走行の優先の解除が指示されていないと判断し、蓄電量条件フラグF1の値を調べ(ステップS130)、蓄電量条件フラグF1が値0のときには、蓄電量条件が成立する前であると判断し、初期値として値0が設定されると共に蓄電量条件が成立する前(蓄電量条件フラグF1が値0のとき)に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされる所定操作が行なわれたときに値1が設定される所定操作フラグF2に値0を設定し(ステップS140)、第1接続状態または第2接続状態を選択する(ステップS150)。ここで、第1接続状態または第2接続状態の選択は、実施例では、スレーブバッテリ60の蓄電量SOC2が所定値Sref2以下になる前は第1接続状態を選択し、スレーブバッテリ60の蓄電量SOC2が所定値Sref2以下になった以降は第2接続状態を選択するものとした。そして、第1接続状態を選択したときには、システムメインリレー56,66がオンでシステムメインリレー67がオフの状態とし、第2接続状態を選択したときには、システムメインリレー56,67がオンでシステムメインリレー66がオフの状態とする。
そして、燃料噴射制御や点火制御を停止してエンジン22を運転停止する制御信号(運転停止信号)をエンジンECU24に送信すると共に(ステップS160)、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定してこれをモータECU40に送信する(ステップS170)。運転停止信号を受信したエンジンECU24は、エンジン22が運転停止されているときにはその状態を継続し、エンジン22が運転されているときにはその運転を停止する。また、トルク指令Tm1*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*(この場合、値0)でモータMG1が駆動されるようインバータ41のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
次に、要求トルクTr*にトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(1)により計算すると共に(ステップS300)、制御用入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との差分をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(2)および式(3)により計算し(ステップS310)、設定した仮トルクTm2tmpを式(4)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してこれをモータECU40に送信する(ステップS320)。ここで、トルク指Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。エンジン22を運転停止している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図7に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、図7から容易に導くことができる。このように、蓄電量条件が成立する前で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときにはエンジン22を運転停止して制御用入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG2からリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (1)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (2)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (4)
そして、高電圧系の電圧VHが目標電圧VH*になるようマスタ側昇圧回路55を制御すると共に(ステップS330)、接続側スレーブバッテリ(スレーブバッテリ60,62のうちスレーブ側昇圧回路65に接続されているスレーブバッテリ)からインバータ41,42側に供給される電力Pbsが目標充放電電力Pbs*になるようスレーブ側昇圧回路65を制御して(ステップS340)、駆動制御ルーチンを終了する。ここで、実施例では、高電圧系の電圧VHは、電圧センサ57aにより検出されたものを用いるものとし、目標電圧VH*は、モータMG1の目標動作点(トルク指令Tm1*,回転数Nm1)に対応する電圧とモータMG2の目標動作点(トルク指令Tm2*,回転数Nm2)に対応する電圧とのうち大きい方の電圧を設定するものとした。また、実施例では、接続側スレーブバッテリからの放電電力Pbsは、接続側スレーブバッテリに対応する図示しない電圧センサにより検出された端子間電圧と図示しない電流センサにより検出された充放電電流との積として演算されてバッテリECU52から通信により入力されたものを用いるものとし、目標放電電力Pbs1*は、モータMG1,MG2の消費電力Pm(=Tm1*・Nm1+Tm2*・Nm2)のうち接続側スレーブバッテリから高電圧系に供給すべき電力として、第1接続状態のときには、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1と所定値Sref1との差ΔSOC1(SOC1−Sref1)と、スレーブバッテリ60の蓄電量SOC2と所定値Sref2との差ΔSOC2(SOC2−Sref2)と、スレーブバッテリ62の蓄電量SOC3と所定値Sref3との差ΔSOC3(SOC3−Sref3)と、に基づいて次式(5)により得られる割合R1とモータMG1,MG2の消費電力Pmとから設定し、第2接続状態のときには差ΔSOC1と差ΔSOC3とに基づいて次式(6)により得られる割合R2とモータMG1,MG2の消費電力Pmとから設定するものとした。なお、スレーブ切り離し状態のときには、スレーブ側昇圧回路65を駆動停止する。
R1=(ΔSOC2+ΔSOC3)/(ΔSOC1+ΔSOC2+ΔSOC3) (5)
R2=ΔSOC3/(ΔSOC1+ΔSOC3) (6)
ステップS120で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフでありステップS130で蓄電量条件フラグF1が値1のときには、所定操作フラグF2に値0を設定し(ステップS180)、電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフの状態で蓄電量条件が成立した以降であると判断し、スレーブ切り離し状態を選択する(ステップS190)。スレーブ切り離し状態を選択したときには、システムメインリレー56がオンでシステムメインリレー66,67がオフの状態とする。
続いて、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1が所定値Sref1を中心として管理されるよう蓄電量SOC1に基づいて充放電要求パワーPb*(放電側を正、充電側を負とする)を設定し(ステップS200)、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものからバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*を減じてロスLossを加えることにより車両に要求される要求パワーPe*を設定する(ステップS270)。ここで、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
そして、要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定してこれらをエンジンECU24に送信する(ステップS280)。エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*との設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図8に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(7)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(8)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算してこのトルク指令Tm1*をモータECU40に送信し(ステップS290)、ステップS300〜S340処理を実行して駆動制御ルーチンを終了する。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図9に示す。なお、図中、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(7)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。式(8)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。また、いまシステムメインリレー66,67が共にオフされた状態即ちスレーブバッテリ60,62が共にスレーブ側昇圧回路65から切り離された状態を考えているから、マスタ側昇圧回路55やスレーブ側昇圧回路65については、高電圧系の電圧VHが目標電圧VH*になるようマスタ側昇圧回路55を制御すると共にスレーブ側昇圧回路65を駆動停止する。こうした制御により、蓄電量条件が成立した以降で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときには、バッテリ50の制御用入出力制限Win,Wout(この場合はマスタバッテリ50の入出力制限Win1,Wout1)の範囲内でエンジン22を効率よく運転してマスタバッテリ50の蓄電量SOC1を所定値Sref1に基づいて管理しながら駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。しかも、このときには、スレーブ側昇圧回路65を駆動停止することにより、スレーブ側昇圧回路65による電力消費を抑制してエネルギ効率の向上を図ることができる。なお、説明は省略したが、この場合、エンジン22が運転停止されているときには、モータMG1によってエンジン22をモータリングしてエンジン22を始動する。
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (7)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (8)
ステップS120で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンのときには、所定操作フラグF2の値を調べ(ステップS210)、所定操作フラグF2が値0のときには、蓄電量条件フラグF1の値を調べる(ステップS220)。ステップS120,S220の処理は、蓄電量条件が成立する前に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされる所定操作が行なわれたか否かを判定する処理である。蓄電量条件フラグF1が値1のときには、蓄電量条件が成立した以降に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされたと判断し、ステップS180〜S200,S270〜S340の処理を実行して駆動制御ルーチンを終了する。即ち、蓄電量条件が成立した以降は、電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされたか否かに拘わらず同様の制御を行なうことになる。
ステップS120で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンでステップS210で所定操作フラグF2が値0でステップS220で蓄電量条件フラグF1が値0のときには、所定操作が行なわれたと判断し、所定操作フラグF2に値1を設定し(ステップS230)、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3をそれぞれ格納値S1set,S2set,S3setとして設定し(ステップS240)、前回このルーチンが実行されたときにステップS140で選択した第1接続状態または第2接続状態を保持し(ステップS250)、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3と格納値S1set,S2set,S3setとに基づいて充放電要求パワーPb*を設定し(ステップS260)、ステップS270〜S340の処理を実行して駆動制御ルーチンを終了する。ここで、充放電要求パワーPb*の設定は、実施例では、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1が格納値S1setを中心として管理されると共に、第1接続状態のときにはスレーブバッテリ60の蓄電量SOC2が格納値S2setを中心として管理され第2接続状態のときにはスレーブバッテリ62の蓄電量SOC3が格納値S3setを中心として管理されるよう、設定するものとした。マスタ側昇圧回路55やスレーブ側昇圧回路65については、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1が格納値S1setを中心として変動すると共に、第1接続状態のときにはスレーブバッテリ60の蓄電量SOC2が格納値S2setを中心として変動し第2接続状態のときにはスレーブバッテリ62の蓄電量SOC3が格納値S3setを中心として変動するよう、マスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御するものとした。こうした制御により、蓄電量条件が成立する前に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされる所定操作が行なわれたときには、バッテリ50の制御用入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転してマスタバッテリ50の蓄電量SOC1を格納値S1setに基づいて管理すると共に接続側スレーブバッテリ(スレーブバッテリ60,62のうちスレーブ側昇圧回路65に接続されているスレーブバッテリ)の蓄電量を対応する格納値に基づいて管理しながら駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
そして、次回以降にこのルーチンが実行されたときにステップS120で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンのときには、ステップS210で所定操作フラグF2が値1であるから、蓄電量条件フラグF1の値に拘わらず、ステップS250〜S340の処理を実行して駆動制御ルーチンを終了し、ステップS120で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときには、前述したステップS130以降の処理を実行する。したがって、蓄電量条件が成立する前に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされたときには、その後にマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3の全てが各所定値Sref1,Sref2,Sref3以下になる蓄電量条件が成立したとしても、その条件の成立に拘わらず、第1接続状態または第2接続状態を継続するのである。前述したように、実施例では、モータMG1,MG2から動力を入出力している最中のシステムメインリレー66,67のオンオフ回数を少なくするために、スレーブ切り離し状態になった以降は、少なくともシステム停止(イグニッションオフ)されるまではシステムメインリレー66,67をオンとしないものとしたから、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3が変動して一時的に各所定値Sref1,Sref2,Sref3以下になったときに蓄電量条件が成立したとしてスレーブ切り離し状態に移行してしまうと、その後に、蓄電量条件が成立しなくなったときに、第1接続状態または第2接続状態に戻ることができない。このため、電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンからオフされて電動走行する際にモータMG2から入出力可能な動力は、マスタバッテリ50の入出力制限Win1,Wout1の範囲内に限定され、第1接続状態または第2接続状態で電動走行する際に比してより限定されてしまうことになる。このことを考慮して、実施例では、蓄電量条件が成立する前に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされたときには、電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフされるまで第1接続状態または第2接続状態を継続するものとした。これにより、電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンからオフされて電動走行する際に、第1接続状態または第2接続状態で電動走行することができるから、スレーブ切り離し状態に比して絶対値が大きな制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力して電動走行可能になり、電動走行する際の走行性能が低下するのを抑制することができる。
図10は、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3とシステムメインリレー56,66,67のオンオフ状態と電動走行優先キャンセルスイッチ89のオンオフ状態と走行状態との時間変化の様子をの一例を模式的に示す模式図である。なお、図10では、簡単のために、所定値Sref1,Sref2,Sref3を同一の値Srefとし、電動走行を優先して走行するときには電動走行で走行するものとすると共に電動走行を優先しないときにはハイブリッド走行で走行するものとした。また、図10およびこの段落では、システムメインリレー56をマスタ用リレー56、システムメインリレー66を第1スレーブ用リレー66、システムメインリレー67を第2スレーブ用リレー67として説明する。図10の例では、システム起動されると(時刻t1)、マスタ用リレー56,第1スレーブ用リレー66をオンとし、電動走行で走行することによってマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60の蓄電量SOC1,SOC2が低下して蓄電量SOC2が閾値Sref以下になったときに(時刻t2)、第1スレーブ用リレー66をオフとすると共に第2スレーブ用リレー67をオンとする。そして、電動走行で走行することによってマスタバッテリ50やスレーブバッテリ62の蓄電量SOC1,SOC3が低下している最中に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされると(時刻t3)、エンジン22を始動してハイブリッド走行に移行し、マスタバッテリ50の蓄電量SOC1は格納値S1setを中心として変動すると共にスレーブバッテリ62の蓄電量SOC3は格納値S3setを中心として変動する。このとき、蓄電量SOC1,SOC3の変動によって蓄電量SOC1,SOC3が共に所定値Sref以下になってもシステムメインリレー67はオフとせず、その後に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフされると(時刻t4)、電動走行に移行し、蓄電量SOC1,SOC3が共に所定値Sref以下になって蓄電量条件が成立すると(時刻t5)、第2スレーブ用リレー67をオフとしてハイブリッド走行に移行する。したがって、時刻t3〜t4で蓄電量SOC1,SOC3が各所定値Sref1,Sref3以下になっても第2スレーブ用リレー67をオフとはしない(オン状態を継続する)から、時刻t4で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフとされて電動走行に移行したときに、既に第2スレーブ用リレー67がオフされていることによる不都合(例えば、電動走行する際にモータMG2から入出力可能な動力が大きく制限される不都合など)が生じるのを回避することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3の全てが各所定値Sref1,Sref2,Sref3以下になる蓄電量条件が成立する前で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときには、システムメインリレー56,66がオンされている第1接続状態またはシステムメインリレー56,67がオンされている第2接続状態で電動走行を優先して制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御し、蓄電量条件が成立した以降はシステムメインリレー66,67が共にオフされているスレーブ切り離し状態で制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御し、蓄電量条件が成立する前に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされた以降は蓄電量条件が成立したか否かに拘わらず電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフされるまで第1接続状態または第2接続状態で制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御するから、電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされている最中に第1接続状態または第2接続状態からスレーブ切り離し状態になってしまうことによる不都合(その後に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフされて電動走行する際にモータMG2から入出力可能な動力が大きく制限される不都合など)を回避することができる。即ち、電動モードを優先してリングギヤ軸32aに動力を出力している最中に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされたときに、より適正に対応するができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、外部電源100からの電力を用いてマスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62が充分に充電されている状態でシステム起動されて走行する際の動作について説明したが、この状態でシステム起動されて走行する際に限られず、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3が比較的高い状態でシステム起動されて走行する際には、実施例と同様に走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、簡単のために、蓄電量条件が成立する前で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときには、第1接続状態または第2接続状態でモータMG2から入出力される動力だけを用いて電動走行で走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55,スレーブ側昇圧回路65とを制御するものとしたが、蓄電量条件が成立する前で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときでも、要求トルクTr*をモータMG2からのトルクだけで賄うことができないと判定されるときには、第1接続状態または第2接続状態でエンジン22からの動力の出力を伴ってハイブリッド走行で走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御するものとしてもよい。なお、要求トルクTr*をモータMG2からのトルクだけで賄うことができるか否かの判定は、例えば、制御用入出力制限Win,Woutをリングギヤ軸32aの回転数Nr(=Nm2/Gr)で除することによって電動走行で走行する際にモータMG2からリングギヤ軸32aに入出力可能なトルクの上下限としての電動走行許容トルクTmin(=Win/Nr),Tmax(=Wout/Nr)を計算し、要求トルクTr*が電動走行許容トルクTmin,Tmaxの範囲内であるか否かを判定することにより行なうことができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、簡単のために、電動走行を優先しないときには、ハイブリッド走行で走行するものとしたが、要求パワーPe*や電動走行許容トルクTmin,Tmaxなどに基づいてエンジン22の間欠運転を伴って走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、マスタバッテリ50とマスタ側昇圧回路55とスレーブバッテリ60,62とスレーブ側昇圧回路65とを備えるものとしたが、スレーブバッテリは2つに限られず、1つまたは3以上備えるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図11における車輪39c,39dに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22と動力分配統合機構30とモータMG1,MG2とを備える構成としたが、走行用の動力出力可能なエンジンと走行用の動力を出力可能なモータとを備えエンジンの間欠運転を伴って走行するハイブリッド車であれば如何なる構成のハイブリッド車としてもよい。
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の車両や船舶,航空機などの移動体に搭載される動力出力装置の形態や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた動力出力装置の形態としても構わない。さらに、こうした動力出力装置の制御方法の形態としてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、マスタバッテリ50が「第1の蓄電手段」に相当し、スレーブバッテリ60が「第2の蓄電手段」に相当し、マスタ側昇圧回路55が「第1の電圧変換手段」に相当し、システムメインリレー66が「リレー」に相当し、スレーブ側昇圧回路65が「第2の電圧変換手段」に相当し、電動走行優先キャンセルスイッチ89が「解除指示スイッチ」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する図4の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求駆動力設定手段」に相当し、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3の全てが各所定値Sref1,Sref2,Sref3以下になる蓄電量条件が成立する前で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときには、システムメインリレー56,66がオンされている第1接続状態またはシステムメインリレー56,67がオンされている第2接続状態で電動走行を優先して制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるよう運転停止信号をエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信し更にマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御し、蓄電量条件が成立した以降はシステムメインリレー66,67が共にオフされているスレーブ切り離し状態で制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定してエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信し更にマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御し、蓄電量条件が成立する前に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされた以降は蓄電量条件が成立したか否かに拘わらず電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフされるまで第1接続状態または第2接続状態で制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定してエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信し更にマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御する図4の駆動制御ルーチンのステップS120〜S340の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、受信した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御したり運転停止信号に基づいてエンジン22を運転停止したりするエンジンECU24と、受信したトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、が「制御手段」に相当する。また、充電器90が「充電手段」に相当し、スレーブバッテリ62が「第3の蓄電手段」に相当する。
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど、駆動軸に動力を出力可能なものであれば如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、内燃機関からの動力を用いて発電可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「第1の蓄電手段」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたマスタバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素電池や鉛蓄電池,キャパシタなど、充放電可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「第2の蓄電手段」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたスレーブバッテリ60に限定されるものではなく、ニッケル水素電池や鉛蓄電池,キャパシタなど、充放電可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「第3の蓄電手段」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたスレーブバッテリ62に限定されるものではなく、ニッケル水素電池や鉛蓄電池,キャパシタなど、充放電可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「第1の電圧変換手段」としては、マスタ側昇圧回路55に限定されるものではなく、第1の蓄電手段が接続された第1の低電圧系の電力ラインと発電機の駆動回路および電動機の駆動回路が接続された高電圧系の電力ラインとに接続され、第1の蓄電手段からの電力を昇圧して高電圧系の電力ラインに供給可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「第2の電圧変換手段」としては、スレーブ側昇圧回路65に限定されるものではなく、第2の蓄電手段がリレーを介して接続された第2の低電圧系の電力ラインと高電圧系の電力ラインとに接続されリレーがオンされているときに第2の蓄電手段からの電力を昇圧して高電圧系の電力ラインに供給可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「解除指示スイッチ」としては、電動走行優先キャンセルスイッチ89に限定されるものではなく、電動モードの優先の解除を指示するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求駆動力設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定するものに限定されるものではなく、アクセル開度Accだけに基づいて要求トルクを設定するものや走行経路が予め設定されているものにあっては走行経路における走行位置に基づいて要求トルクを設定するものなど、走行に要求される要求駆動力を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、マスタバッテリ50やスレーブバッテリ60,62の蓄電量SOC1,SOC2,SOC3の全てが各所定値Sref1,Sref2,Sref3以下になる蓄電量条件が成立する前で電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフのときには、システムメインリレー56,66がオンされている第1接続状態またはシステムメインリレー56,67がオンされている第2接続状態で電動走行を優先して制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御し、蓄電量条件が成立した以降はシステムメインリレー66,67が共にオフされているスレーブ切り離し状態で制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御し、蓄電量条件が成立する前に電動走行優先キャンセルスイッチ89がオンされた以降は蓄電量条件が成立したか否かに拘わらず電動走行優先キャンセルスイッチ89がオフされるまで第1接続状態または第2接続状態で制御用入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とマスタ側昇圧回路55とスレーブ側昇圧回路65とを制御するものに限定されるものではなく、第1の蓄電手段および第2の蓄電手段が所定の低蓄電量状態になる蓄電量条件が成立する前で解除指示スイッチがオフのときにはリレーがオンされた状態で電動モードを優先して要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機と第1の電圧変換手段と第2の電圧変換手段とを制御する電動モード優先制御を実行し、蓄電量条件が成立した以降はリレーがオフされた状態で第2の電圧変換手段の駆動停止を伴って要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機と第1の電圧変換手段と第2の電圧変換手段とを制御するリレーオフ時制御を実行し、蓄電量条件が成立する前に解除指示スイッチがオンされた所定指示以降は解除指示スイッチがオフされるまでリレーがオンされた状態で要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機と第1の電圧変換手段と第2の電圧変換手段とを制御するリレーオン時制御を実行するものであれば如何なるものとしても構わない。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。