しかし、前述したような従来の技術においてPAA(Phased Array Antenna)処理により無線端末の方向検出を行う場合、障害物に起因する反射や回折等により複数の電波受信経路が生じてしまう所謂マルチパスの影響によって、検出の対象となる無線端末に対応する方向からの無線信号が弱くなったり、或いは無線端末が存在しない方向からの無線信号が強くなる等して、無線端末の方向の検出が困難になるおそれがあった。このため、マルチパスの影響を軽減して好適な方向検出を実現する方向検出装置の開発が求められていた。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、マルチパスの影響を軽減して好適な方向検出を実現する方向検出装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、無線端末に対して無線信号の送信及び/又は受信を行い、その無線信号に基づいてその無線端末の方向を検出する方向検出装置であって、前記無線端末への無線信号を送信するため及び/又はその無線端末からの無線信号を受信するための、それぞれ複数のアンテナ素子により構成される複数組のアレイアンテナと、それら複数組のアレイアンテナそれぞれにおいて、そのアレイアンテナを構成する前記複数のアンテナ素子それぞれに対応する送信信号及び/又は受信信号の位相を制御することにより、前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御する指向性制御部と、その指向性制御部により前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線端末の方向を検出する方向検出部とを、備えたことを特徴とするものである。
このようにすれば、前記無線端末への無線信号を送信するため及び/又はその無線端末からの無線信号を受信するための、それぞれ複数のアンテナ素子により構成される複数組のアレイアンテナと、それら複数組のアレイアンテナそれぞれにおいて、そのアレイアンテナを構成する前記複数のアンテナ素子それぞれに対応する送信信号及び/又は受信信号の位相を制御することにより、前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御する指向性制御部と、その指向性制御部により前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線端末の方向を検出する方向検出部とを、備えたものであることから、前記受信信号を比較してマルチパスの影響が少ないアレイアンテナによる受信結果を用いることで、前記無線端末の方向を好適に検出することができる。すなわち、マルチパスの影響を軽減して好適な方向検出を実現する方向検出装置を提供することができる。
ここで、好適には、前記アレイアンテナにより受信される受信信号の信号強度を検出する信号強度検出部を備え、前記方向検出部は、その信号強度検出部により検出される信号強度に応じて前記無線端末の方向を検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線端末の方向を検出することができる。
また、好適には、前記複数組のアレイアンテナを構成するアンテナ素子のうち、少なくとも1つのアンテナ素子はそれら複数組のアレイアンテナに共用されるものである。このようにすれば、前記複数組のアレイアンテナが占める空間を可及的に小さくすることができ、延いては装置を小型化できる。
また、好適には、前記複数組のアレイアンテナのうち何れか1組のアレイアンテナにより選択的に前記無線端末に対する無線信号が送信及び/又は受信されるように回路を切り替えるアンテナ選択制御部を有するものである。このようにすれば、そのアンテナ選択制御部により前記無線端末に対する無線信号を送信及び/又は受信するアレイアンテナを順次切り替えてゆくことで、各アレイアンテナに対応して受信信号処理回路を設ける必要がなく、装置の構成を簡単なものとすることができる。
また、好適には、前記複数組のアレイアンテナそれぞれに対応して受信信号処理回路を有するものであり、それら複数組のアレイアンテナは、前記無線端末からの無線信号を同時に受信するものである。このようにすれば、前記無線信号の処理時間を可及的に短縮することができ、延いては前記無線端末の検出に要する時間を短縮することができる。
また、好適には、前記方向検出部は、前記指向性制御部により前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部により検出される検出結果を一通り比較し、その検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線端末の方向として検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線端末の方向を検出することができる。
また、好適には、前記方向検出部は、前記指向性制御部により前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部により検出される検出結果を比較し、その検出結果が前記複数組のアレイアンテナ何れにおいても所定の閾値以上となる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線端末の方向として検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線端末の方向を検出することができる。
また、好適には、前記方向検出部は、前記指向性制御部により前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部により検出される検出結果を比較し、前記複数組のアレイアンテナのうちその検出結果の変動が最も少ないアレイアンテナにおいてその検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線端末の方向として検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線端末の方向を検出することができる。
また、好適には、前記方向検出部は、前記指向性制御部により前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部により検出される検出結果を平均し、その平均の最も大きなアレイアンテナにおいて前記検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線端末の方向として検出するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記無線端末の方向を検出することができる。
また、好適には、前記アレイアンテナは、互いに平行を成すように配設された複数本の直線状アンテナ素子から構成されるものである。このようにすれば、複数本の直線状アンテナ素子から成る実用的なアレイアンテナを有する方向検出装置においてマルチパスの影響を軽減して好適な方向検出を実現することができる。
また、好適には、前記アレイアンテナを構成する複数本の直線状アンテナ素子のうち、相互に最も離れて配設された直線状アンテナ素子相互間の距離は、前記無線信号の搬送波の波長以下である。このようにすれば、前記複数組のアレイアンテナが占める空間を可及的に小さくすることができ、延いては装置を小型化できる。
また、好適には、前記複数組のアレイアンテナは、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子のうち相互に隣接する2本ずつの直線状アンテナ素子からそれぞれ構成される2組のアレイアンテナである。このようにすれば、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子から選択的に構成される2組のアレイアンテナそれぞれに対応する受信信号を比較することで、前記無線端末の方向を好適に検出することができる。
また、好適には、前記複数組のアレイアンテナは、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子のうち相互に隣接する2本ずつの直線状アンテナ素子からそれぞれ構成される2組のアレイアンテナ、及び相互に最も離れて配設された2本の直線状アンテナ素子から構成される1組のアレイアンテナである。このようにすれば、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子から選択的に構成される3組のアレイアンテナそれぞれに対応する受信信号を比較することで、前記無線端末の方向を好適に検出することができる。
また、好適には、前記複数組のアレイアンテナは、互いに平行を成すように配設された4本の直線状アンテナ素子のうち相互に隣接する2本の直線状アンテナ素子から構成される3組のアレイアンテナである。このようにすれば、互いに平行を成すように配設された4本の直線状アンテナ素子から選択的に構成される3組のアレイアンテナそれぞれに対応する受信信号を比較することで、前記無線端末の方向を好適に検出することができる。
また、好適には、前記複数組のアレイアンテナは、互いに平行を成すように配設された4本の直線状アンテナ素子のうち選択される何れか3本の直線状アンテナ素子から構成される2組のアレイアンテナである。このようにすれば、互いに平行を成すように配設された4本の直線状アンテナ素子から選択的に構成される2組のアレイアンテナそれぞれに対応する受信信号を比較することで、前記無線端末の方向を好適に検出することができる。
また、好適には、前記方向検出部は、予め定められた所定の相対角度範囲に対応して前記指向性制御部により前記複数組のアレイアンテナそれぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線端末の方向を検出するものである。このようにすれば、予め方向検出の対象となる範囲を限定しておくことで、前記無線端末の検出に要する時間を短縮することができる。
また、好適には、前記複数組のアレイアンテナそれぞれにより送信及び/又は受信を行った結果、受信される受信信号を比較することで障害物の存在する方向を検出する障害物方向検出部、又は予め障害物の方向が既知である場合はその障害物の方向を設定する障害物方向設定部を備え、前記方向検出部は、その障害物方向検出部により障害物が検出された方向、又は前記障害物方向設定部に設定された方向を除外して前記無線端末の方向を検出するものである。このようにすれば、マルチパス発生の原因となる障害物が存在する方向を避けることで、前記無線端末の方向を好適に検出することができる。
また、好適には、前記方向検出装置は、検出対象である無線タグに向けて所定の送信信号を送信すると共に、その送信信号に応答して前記無線タグから返信される返信信号を受信することで前記無線タグの方向を検出する無線タグ方向検出装置である。このようにすれば、マルチパスの影響を軽減して好適な無線タグ方向の検出を実現する無線タグ方向検出装置を提供することができる。
また、好適には、前記方向検出部は、前記送信信号の搬送波の周波数を変化させ、各周波数に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線タグの方向を検出するものである。このようにすれば、複数の搬送波周波数それぞれにおける各受信指向性に対応して受信される受信信号を比較してマルチパスの影響が少ない搬送波周波数による受信結果を用いることで、前記無線タグの方向を好適に検出することができる。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の方向検出装置が好適に用いられる無線タグ通信システム10について説明する図である。この無線タグ通信システム10は、本発明の方向検出装置の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の検出対象の無線端末である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波Fc(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fcを受信した上記無線タグ14において所定のコマンド(送信データ)によりその質問波Fcが変調され、応答波Fr(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。斯かる通信により、上記無線タグ通信装置12に対する無線タグ14の方向乃至は位置が検出される。この無線タグ通信システム10は、例えば、所定の通信領域内における物品の管理等に用いられるものであり、上記無線タグ14は、好適には、管理対象である物品に貼られる等してその物品と一体的に設けられている。
図2は、上記無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図2に示すように、本実施例の無線タグ通信装置12は、後述する方向検出部60からの指令に応じて所定の周波数の搬送波を発生させる搬送波発生部20と、その搬送波発生部20から出力される搬送波を増幅する搬送波増幅部22と、その搬送波増幅部22から供給される搬送波に基づく送信信号を対応するアンテナ素子26から送信すると共にそのアンテナ素子26により受信される受信信号を処理する複数(図2では3つ)の送受信モジュール24a、24b、24c(以下、特に区別しない場合には単に送受信モジュール24と称する)と、各送受信モジュール24a、24b、24cに対応して設けられた送受信共用のアンテナ素子26a、26b、26c(以下、特に区別しない場合には単にアンテナ素子26と称する)と、上記複数の送受信モジュール24から供給される受信信号を合成(加算)する合波部である受信信号合成部28と、その受信信号合成部28から供給される合成信号を増幅する可変増幅部30と、その可変増幅部30から供給される合成信号をホモダイン検波するホモダイン検波回路32と、そのホモダイン検波回路32から出力されるI相信号(同相成分)のうち所定の周波数帯域の信号のみ通過させるI相LPF(Low Pass Filter)34と、そのI相LPF34を通過したI相信号をディジタル変換するI相A/D変換部36と、そのI相A/D変換部36によりディジタル変換された信号を記憶するI相メモリ部38と、上記ホモダイン検波回路32から出力されるQ相信号(直交成分)のうち所定の周波数帯域の信号のみ通過させるQ相LPF40と、そのQ相LPF40を通過したQ相信号をディジタル変換するQ相A/D変換部42と、そのQ相A/D変換部42によりディジタル変換された信号を記憶するQ相メモリ部44と、上記搬送波増幅部22と送受信モジュール24aとの間の信号伝達回路を開閉する送信回路切替部46aと、上記搬送波増幅部22と送受信モジュール24cとの間の信号伝達回路を開閉する送信回路切替部46b(以下、送信回路切替部46aと特に区別しない場合には単に送信回路切替部46と称する)と、上記送受信モジュール24aと受信信号合成部28との間の信号伝達回路を開閉する受信回路切替部48aと、上記送受信モジュール24cと受信信号合成部28との間の信号伝達回路を開閉する受信回路切替部48c(以下、受信回路切替部48aと特に区別しない場合には単に受信回路切替部48と称する)とを、備えて構成されている。また、前記無線タグ14の方向を検出する方向検出制御を行うために、送信データ生成部50、アンテナ選択制御部52、指向性制御部54、信号強度検出部56、障害物方向検出部58、障害物方向設定部59、及び方向検出部60を備えている。
図3は、前記送受信モジュール24の構成を詳しく説明する図である。この図3に示すように、前記送受信モジュール24は、前記搬送波増幅部22から供給される搬送波の位相を制御するための可変移相器である送信移相部62と、その送信移相部62から出力される搬送波を所定の送信データにより変調して前記送信信号を出力するための可変ゲインアンプである送信アンプ64と、その送信アンプ64と前記アンテナ素子26との間の信号伝達経路に設けられたフィルタ68と、上記送信アンプ64から出力される送信信号をそのフィルタ68を介して前記アンテナ素子26へ供給すると共に、そのアンテナ素子26により受信されて上記フィルタ68を介して供給される受信信号を受信アンプ70へ供給する送受信分離部66と、その送受信分離部66から供給される受信信号の位相を制御するための可変移相器である受信移相部70とを、備えている。
図4は、前記無線タグ14に備えられた無線タグ回路素子72の構成を説明する図である。この図4に示すように、上記無線タグ回路素子72は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部74と、そのアンテナ部74により受信された信号を処理するためのIC回路部76とを、備えて構成されている。そのIC回路部76は、上記アンテナ部74により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fcを整流する整流部78と、その整流部78により整流された質問波Fcのエネルギを蓄積するための電源部80と、上記アンテナ部74により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部88に供給するクロック抽出部82と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部84と、上記アンテナ部74に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部86と、上記整流部78、クロック抽出部82、及び変復調部86等を介して上記無線タグ回路素子72の作動を制御するための制御部88とを、機能的に含んでいる。この制御部88は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部84に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部74により受信された質問波Fcを上記変復調部86において上記メモリ部84に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Frとして上記アンテナ部74から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
図2に戻って、前記送信データ生成部50は、前記搬送波発生部20により発生させられる搬送波に乗せて前記無線タグ14へ送信するための送信データを生成して各送受信モジュール24における送信アンプ64へ供給する。その送信アンプ64では、上記送信データ生成部50から供給される送信データに基づいて変調が行われて送信信号とされ、前記フィルタ68等を介して前記アンテナ素子26から送信される。
前記アンテナ選択制御部52は、前記複数のアンテナ素子26のうち少なくとも2つのアンテナ素子26により信号の送信及び/又は受信が行われるように、前記送信回路切替部46及び/又は受信回路切替部48を介して回路を切り替える。本実施例の無線タグ通信装置12では、前記複数のアンテナ素子26により複数組のアレイアンテナが選択的に成立させられる。すなわち、前記無線タグ14への送信信号の送信に関して、前記送信回路切替部46aが接続されると共に46cが開放されることでアンテナ素子26a及び26bから成るアレイアンテナ16aが、前記送信回路切替部46aが開放されると共に46cが接続されることでアンテナ素子26b及び26cから成るアレイアンテナ16bが、前記送信回路切替部46a及び46cが共に接続されることでアンテナ素子26a、26b、及び26cから成るアレイアンテナ16cがそれぞれ成立させられる。また、前記無線タグ14からの返信信号の受信に関して、前記受信回路切替部48aが接続されると共に48cが開放されることでアンテナ素子26a及び26bから成るアレイアンテナ16aが、前記受信回路切替部48aが開放されると共に48cが接続されることでアンテナ素子26b及び26cから成るアレイアンテナ16bが、前記受信回路切替部48a及び48cが共に接続されることでアンテナ素子26a、26b、及び26cから成るアレイアンテナ16cがそれぞれ成立させられる。換言すれば、前記アンテナ選択制御部52は、複数組のアレイアンテナ16a、16b、16c(以下、特に区別しない場合には単にアレイアンテナ16と称する)のうち何れか1組のアレイアンテナ16により選択的に前記無線タグ14に対する無線信号が送信及び/又は受信されるように回路を切り替える。また、このように本実施例では、上記複数組のアレイアンテナ16を構成するアンテナ素子26のうち、それらアンテナ素子26の配設幅方向の中央に位置する1つのアンテナ素子26bは上記複数組のアレイアンテナ16に共用される。
前記指向性制御部54は、上記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御する。具体的には、各送受信モジュール24における送信移相部62を介してそれぞれ対応するアンテナ素子26から送信される送信信号の位相を制御することで、上記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性を制御する。また、各送受信モジュール24における受信移相部70を介してそれぞれ対応するアンテナ素子26により受信される受信信号の位相を制御することで、上記複数組のアレイアンテナ16それぞれの受信指向性を制御する。
前記信号強度検出部56は、前記複数組のアレイアンテナ16それぞれに対応する受信信号の信号強度を検出する。具体的には、前記I相メモリ部38に記憶されたI相信号及びQ相メモリ部44に記憶されたQ相信号を読み出し、それらI相信号及びQ相信号それぞれの二乗の和の平方根を算出すること等によりそれらI相信号及びQ相信号に相当する受信信号の信号強度を検出する。
前記障害物方向検出部58は、前記複数組のアレイアンテナ16それぞれにより送信あるいは受信を行った結果、受信される受信信号を比較することで障害物の存在する方向を検出する。この検出は、好適には、前記信号強度検出部56の検出結果に基づいて行われる。すなわち、前記障害物方向検出部58は、前記複数組のアレイアンテナ16それぞれにより送信あるいは受信を行った結果、受信される受信信号の信号強度が極小又は極大となる方向を上記障害物が存在する方向として検出する。また前記障害物方向設定部59は障害物の方向が既知である場合にその方向を設定する。
前記方向検出部60は、前記複数組のアレイアンテナ16それぞれによる送信及び/又は受信の結果、受信される受信信号を比較することで前記無線タグ14の存在する方向を検出する。すなわち、前記アンテナ選択制御部52により選択的に成立させられるアレイアンテナ16のそれぞれについて前記無線タグ14に対する無線信号の送信及び/又は受信を行い、その無線信号に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線タグ14の存在する方向を検出する。
本実施例の無線タグ通信装置12に備えられた複数のアンテナ素子26は、好適には、何れもダイポールアンテナ等の直線状アンテナ素子であり、それら複数の直線状アンテナ素子26が同一平面内に互いに平行を成すように且つ等間隔で配設されたものである。また、好適には、前記アレイアンテナ16を構成する複数本の直線状アンテナ素子26のうち、相互に最も離れて配設された直線状アンテナ素子26相互間の距離すなわちアンテナ素子26a及び26c相互間の距離は、前記搬送波発生部20により発生させられる搬送波の波長以下とされている。そして、前述したように、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子26のうち相互に隣接する2本ずつの直線状アンテナ素子26a及び26b、26b及び26cから2組のアレイアンテナ16a、16bがそれぞれ構成される。また、特に図示しないが、前述した図2の構成に加えて前記搬送波増幅部22と送受信モジュール24bとの間の信号伝達回路を開閉する送信回路切替部46bと、前記送受信モジュール24bと受信信号合成部28との間の信号伝達回路を開閉する受信回路切替部48bとを設けることで、相互に最も離れて配設された2本の直線状アンテナ素子26a及び26cからアレイアンテナ16を構成することもできる。
図5は、前記無線タグ通信システム10が室90内において運用される場合に発生するマルチパスについて説明する図である。この図5に示すように、前記無線タグ通信システム10が四方に障害物である壁92を有する室90内において運用される場合、その壁92に起因する反射や回折等により直接波の経路とは別に所謂マルチパスが発生することが考えられる。図5では、前記アンテナ素子26a及び26bから成るアレイアンテナ16aによる直接波及びマルチパスを実線矢印で、前記アンテナ素子26b及び26cから成るアレイアンテナ16bによる直接波及びマルチパスを破線矢印でそれぞれ示している。このようにマルチパスが発生した場合、そのマルチパスと直接波とは経路によって異なった位相となるため、その直接波経路の信号がマルチパス経路の信号により強められたり、弱められたりする。また、マルチパスにより直接波の届かない場所にも電波が届くようになる。図6及び図7は、前記アレイアンテナ16a、16bで同様に指向性を変化させていった場合における受信信号の信号強度の違いを説明する図であり、各指向性方向に応じた受信信号の信号強度を矢印で示している。これら図6及び図7に示すように、障害物である上記壁92に対するアレイアンテナ16の位置を変えることでマルチパスの経路もまた変化するため、前記アレイアンテナ16a、16bの送信指向性及び/又は受信指向性を同様に変化させていった場合であってもそれぞれの指向性に応じて受信される受信信号の信号強度は異なってくる。
前記方向検出部60は、具体的には、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号に対応する前記信号強度検出部56の検出結果を比較することで前記無線タグ14の存在する方向を検出する。好適には、所定の中心方向を基準として−30°乃至30°といったように予め定められた所定の相対角度範囲に対応して前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線タグ14の方向を検出する。以下、斯かる無線タグ14の方向検出制御を、図8乃至図13のフローチャートを用いて説明する。なお、それら図8乃至図13のフローチャートに示す制御において、共通するステップは同一の符号を付してその説明を省略する。
前記方向検出部60は、好適には、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部56により検出される検出結果を一通り比較し、その検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線タグ14の方向として検出する。図8は、斯かる態様のタグ方向検出制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
図8の制御では、先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記複数組のアレイアンテナ16からi=1(例えば、i=1にはアレイアンテナ16aが、i=2にはアレイアンテナ16bが対応)で指定されるアレイアンテナ16が選択され、その選択されたアレイアンテナ16が構成されるように前記送信回路切替部46及び/又は受信回路切替部48が切り替えられる。次に、S2において、指向性方向を示す角度θが初期値であるθstartとされ、その角度θに応じて前記送信移相部62及び/又は受信移相部70の設定が行われる。次に、S3において、検出対象である無線タグ14に向けて所定の送信信号を送信すると共に、その送信信号に応答して前記無線タグ14から返信される返信信号を受信する送受信処理が行われる。次に、前記信号強度検出部56の動作に対応するS4において、S3の送受信処理により受信された受信信号の信号強度が検出されると共に、その検出結果Siθが前記I相メモリ部38及び/又はQ相メモリ部44に記憶される。次に、S5において、指向性方向を示す角度θが所定値θendであるか否かが判断される。このS5の判断が否定される場合には、S6において、指向性方向を示す角度θにΔθが加算され、その角度θに応じて前記送信移相部62及び/又は受信移相部70の設定が行われた後、S3以下の処理が再び実行されるが、S5の判断が肯定される場合には、S7において、前記アレイアンテナ16を指定するiがiendであるか否かが判断される。このS7の判断が否定される場合には、S8において、iに1が加算され、そのiで指定されるアレイアンテナ16が選択されて前記送信回路切替部46及び/又は受信回路切替部48が切り替えられた後、S2以下の処理が再び実行されるが、S7の判断が肯定される場合には、前記方向検出部60の動作に対応するS9において、前記I相メモリ部38及び/又はQ相メモリ部44に記憶された受信信号強度Siθが全て比較され、最大値をとるSiθに対応するθが前記無線タグ14の方向として検出された後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S1及びS8が前記アンテナ選択制御部52の動作に、S2及びS6が前記指向性制御部54の動作にそれぞれ対応する。
また、前記方向検出部60は、好適には、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部56により検出される検出結果を比較し、その検出結果が前記複数組のアレイアンテナ16何れにおいても所定の閾値以上となる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線タグ14の方向として検出する。図9は、斯かる態様のタグ方向検出制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御において上述したS7の判断が肯定される場合には、前記方向検出部60の動作に対応するS10において、前記I相メモリ部38及び/又はQ相メモリ部44に記憶された受信信号強度Siθが比較され、前記アレイアンテナ16を指定するi=1〜iendの全てについてSiθが所定の閾値A以上である角度θに対応する方向が前記無線タグ14の方向として検出された後、本ルーチンが終了させられる。
また、前記方向検出部60は、好適には、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部56により検出される検出結果を比較し、前記複数組のアレイアンテナ16のうちその検出結果の変動が最も少ないアレイアンテナ16においてその検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線タグ14の方向として検出する。図10は、斯かる態様のタグ方向検出制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御において前述したS7の判断が肯定される場合には、前記方向検出部60の動作に対応するS11において、前記I相メモリ部38及び/又はQ相メモリ部44に記憶された受信信号強度Siθが読み出され、前記アレイアンテナ16を指定するi=1〜iendのそれぞれについてSiθの最大値と最小値との差が算出され、その差が最も小さいアレイアンテナ16においてSiθが最大値をとる角度θに対応する方向が前記無線タグ14の方向として検出された後、本ルーチンが終了させられる。
また、前記方向検出部60は、好適には、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部56により検出される検出結果を平均し、その平均の最も大きなアレイアンテナ16において前記検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線タグの方向として検出する。図11は、斯かる態様のタグ方向検出制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御において前述したS7の判断が肯定される場合には、前記方向検出部60の動作に対応するS12において、前記I相メモリ部38及び/又はQ相メモリ部44に記憶された受信信号強度Siθが読み出され、前記アレイアンテナ16を指定するi=1〜iendのそれぞれについてSiθの平均値(相加平均)が算出され、その平均が最も大きなアレイアンテナ16においてSiθが最大値をとる角度θに対応する方向が前記無線タグ14の方向として検出された後、本ルーチンが終了させられる。
また、前記方向検出部60は、好適には、前記障害物方向検出部58により障害物が検出された方向、又は前記障害物方向設定部59に設定された方向に基づき、例えばその方向を除外して前記無線タグ14の方向を検出する。図12は、斯かる態様のタグ方向検出制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御において前述したS7の判断が肯定される場合には、前記障害物方向検出部58の動作に対応するS13において、前記I相メモリ部38及び/又はQ相メモリ部44に記憶された受信信号強度Siθが読み出され、それら受信信号強度Siθを比較することで障害物の存在する方向が検出(判定)される。次に、前記方向検出部60の動作に対応するS14において、S13にて検出された障害物方向、又は前記障害物方向設定部59に設定された方向から所定角度以上離れた角度範囲においてSiθが最大値をとる角度θに対応する方向が前記無線タグ14の方向として検出された後、本ルーチンが終了させられる。
また、前記方向検出部60は、好適には、前記送信信号の搬送波すなわち前記搬送波発生部20により発生させられる搬送波の周波数を変化させ、各周波数に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線タグ14の方向を検出する。図13は、斯かる態様のタグ方向検出制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この制御では、先ず、S15において、前記搬送波発生部20により発生させられる搬送波の周波数設定値fがf1とされた後、S1以下の処理が実行される。また、前述したS7の判断が肯定される場合には、S16において、前記搬送波発生部20により発生させられる搬送波の周波数設定値fがfendであるか否かが判断される。このS16の判断が否定される場合には、S17において、周波数設定値fにΔfが加算された後、S1以下の処理が再び実行されるが、S16の判断が肯定される場合には、前記方向検出部60の動作に対応するS18において、前記I相メモリ部38及び/又はQ相メモリ部44に記憶された受信信号強度Siθが読み出され、それら受信信号強度Siθが比較されることで前記無線タグ14の方向が検出された後、本ルーチンが終了させられる。
このように、本実施例によれば、前記無線タグ14への無線信号を送信するため及び/又はその無線タグ14からの無線信号を受信するための、それぞれ複数のアンテナ素子26により構成される複数組のアレイアンテナ16と、それら複数組のアレイアンテナ16それぞれによる送信及び/又は受信の結果、受信される受信信号を比較することで前記無線タグ14の方向を検出する方向検出部60(S9、S10、S11、S12、S14、S18)とを、備えたものであることから、前記受信信号を比較してマルチパスの影響が少ないアレイアンテナ16による受信結果を用いることで、前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。すなわち、マルチパスの影響を軽減して好適な方向検出を実現する方向検出装置を提供することができる。
また、前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御する指向性制御部54(S2及びS6)を備え、前記方向検出部60は、その指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線タグ14の方向を検出するものであるため、前記複数組のアレイアンテナ16それぞれにおける各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号を比較してマルチパスの影響が少ないアレイアンテナ16による受信結果を用いることで、前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。
また、前記アレイアンテナ16により受信される受信信号の信号強度を検出する信号強度検出部56(S4)を備え、前記方向検出部60は、その信号強度検出部56により検出される信号強度に応じて前記無線タグ14の方向を検出するものであるため、実用的な態様で前記無線タグ14の方向を検出することができる。
また、前記複数組のアレイアンテナ16を構成するアンテナ素子26のうち、少なくとも1つのアンテナ素子26はそれら複数組のアレイアンテナ16に共用されるものであるため、前記複数組のアレイアンテナ16が占める空間を可及的に小さくすることができ、延いては装置を小型化できる。
また、前記複数組のアレイアンテナ16のうち何れか1組のアレイアンテナ16により選択的に前記無線タグ14に対する無線信号が送信及び/又は受信されるように回路を切り替えるアンテナ選択制御部52(S1及びS8)を有するものであるため、そのアンテナ選択制御部52により前記無線タグ14に対する無線信号を送信及び/又は受信するアレイアンテナ16を順次切り替えてゆくことで、各アレイアンテナ16に対応して受信信号処理回路を設ける必要がなく、装置の構成を簡単なものとすることができる。
また、前記方向検出部60(S9)は、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部56により検出される検出結果を一通り比較し、その検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線タグ14の方向として検出するものであるため、実用的な態様で前記無線タグ14の方向を検出することができる。
また、前記方向検出部60(S10)は、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部56により検出される検出結果を比較し、その検出結果が前記複数組のアレイアンテナ16何れにおいても所定の閾値以上となる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線タグ14の方向として検出するものであるため、実用的な態様で前記無線タグ14の方向を検出することができる。
また、前記方向検出部60(S11)は、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部56により検出される検出結果を比較し、前記複数組のアレイアンテナ16のうちその検出結果の変動が最も少ないアレイアンテナ16においてその検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線タグ14の方向として検出するものであるため、実用的な態様で前記無線タグ14の方向を検出することができる。
また、前記方向検出部60(S12)は、前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各受信指向性に対応して受信される受信信号について前記信号強度検出部56により検出される検出結果を平均し、その平均の最も大きなアレイアンテナ16において前記検出結果が最大値をとる送信指向性及び/又は受信指向性に対応する方向を前記無線タグ14の方向として検出するものであるため、実用的な態様で前記無線タグ14の方向を検出することができる。
また、前記アレイアンテナ16は、互いに平行を成すように配設された複数本の直線状アンテナ素子26から構成されるものであるため、複数本の直線状アンテナ素子26から成る実用的なアレイアンテナ16を有する方向検出装置においてマルチパスの影響を軽減して好適な方向検出を実現することができる。
また、前記アレイアンテナ16を構成する複数本の直線状アンテナ素子26のうち、相互に最も離れて配設された直線状アンテナ素子26相互間の距離は、前記無線信号の搬送波の波長以下であるため、前記複数組のアレイアンテナ16が占める空間を可及的に小さくすることができ、延いては装置を小型化できる。
また、前記複数組のアレイアンテナ16は、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子26のうち相互に隣接する2本ずつの直線状アンテナ素子26からそれぞれ構成される2組のアレイアンテナ16であるため、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子26から選択的に構成される2組のアレイアンテナ16それぞれに対応する受信信号を比較することで、前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。
また、前記複数組のアレイアンテナ16は、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子26のうち相互に隣接する2本ずつの直線状アンテナ素子26からそれぞれ構成される2組のアレイアンテナ16、及び相互に最も離れて配設された2本の直線状アンテナ素子26から構成される1組のアレイアンテナ16であるため、互いに平行を成すように配設された3本の直線状アンテナ素子26から選択的に構成される3組のアレイアンテナ16それぞれに対応する受信信号を比較することで、前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。
また、前記方向検出部60は、予め定められた所定の相対角度範囲に対応して前記指向性制御部54により前記複数組のアレイアンテナ16それぞれの送信指向性及び/又は受信指向性を制御し、各送信指向性及び/又は受信指向性に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線タグ14の方向を検出するものであるため、予め方向検出の対象となる範囲を限定しておくことで、前記無線タグ14の検出に要する時間を短縮することができる。
また、前記複数組のアレイアンテナ16それぞれにより送信及び/又は受信を行った結果、受信される受信信号を比較することで障害物の存在する方向を検出する障害物方向検出部58(S13)を備え、前記方向検出部60(S14)は、その障害物方向検出部58により障害物が検出された方向、又は障害物方向設定部59に設定された方向を除外して前記無線タグ14の方向を検出するものであるため、マルチパス発生の原因となる障害物が存在する方向を避けることで、前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。
また、本実施例の方向検出装置は、検出対象である無線タグ14に向けて所定の送信信号を送信すると共に、その送信信号に応答して前記無線タグ14から返信される返信信号を受信することで前記無線タグ14の方向を検出する無線タグ方向検出装置12であるため、マルチパスの影響を軽減して好適な無線タグ方向の検出を実現する無線タグ方向検出装置を提供することができる。
また、前記方向検出部60(S8)は、前記送信信号の搬送波の周波数を変化させ、各周波数に対応して受信される受信信号を比較することで前記無線タグ14の方向を検出するものであるため、複数の搬送波周波数それぞれにおける各受信指向性に対応して受信される受信信号を比較してマルチパスの影響が少ない搬送波周波数による受信結果を用いることで、前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。
続いて、本発明の方向検出装置の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
図14は、本発明の方向検出装置の他の好適な実施例である無線タグ通信装置94の構成を説明する図である。この図14に示すように、本実施例の無線タグ通信装置94は、前記送受信モジュール24a及び24bから供給される受信信号を合成(加算)する合波部である受信信号合成部28aと、その受信信号合成部28aから供給される合成信号を増幅する可変増幅部30aと、その可変増幅部30aから供給される合成信号をホモダイン検波するホモダイン検波回路32aと、そのホモダイン検波回路32aから出力されるI相信号のうち所定の周波数帯域の信号のみ通過させるI相LPF34aと、そのI相LPF34aを通過したI相信号をディジタル変換するI相A/D変換部36aと、そのI相A/D変換部36aによりディジタル変換された信号を記憶するI相メモリ部38aと、上記ホモダイン検波回路32aから出力されるQ相信号のうち所定の周波数帯域の信号のみ通過させるQ相LPF40aと、そのQ相LPF40aを通過したQ相信号をディジタル変換するQ相A/D変換部42aと、そのQ相A/D変換部42aによりディジタル変換された信号を記憶するQ相メモリ部44aと、前記送受信モジュール24b及び24cから供給される受信信号を合成(加算)する合波部である受信信号合成部28bと、その受信信号合成部28bから供給される合成信号を増幅する可変増幅部30bと、その可変増幅部30bから供給される合成信号をホモダイン検波するホモダイン検波回路32bと、そのホモダイン検波回路32bから出力されるI相信号のうち所定の周波数帯域の信号のみ通過させるI相LPF34bと、そのI相LPF34bを通過したI相信号をディジタル変換するI相A/D変換部36bと、そのI相A/D変換部36bによりディジタル変換された信号を記憶するI相メモリ部38bと、上記ホモダイン検波回路32bから出力されるQ相信号のうち所定の周波数帯域の信号のみ通過させるQ相LPF40bと、そのQ相LPF40bを通過したQ相信号をディジタル変換するQ相A/D変換部42bと、そのQ相A/D変換部42bによりディジタル変換された信号を記憶するQ相メモリ部44bとを、備えて構成されている。
このように、本実施例の無線タグ通信装置94は、前記アレイアンテナ16aに対応して受信信号合成部28a、可変増幅部30a、及びホモダイン検波回路32a等の受信信号処理回路を、前記アレイアンテナ16bに対応して受信信号合成部28b、可変増幅部30b、及びホモダイン検波回路32b等の受信信号処理回路を、それぞれ独立に有しており、前記アレイアンテナ16a、16bは、前記無線タグ14からの無線信号を同時に受信するように構成されているため、前記無線信号の処理時間を可及的に短縮することができ、延いては前記無線タグ14の検出に要する時間を短縮することができる。
図15は、本発明の方向検出装置の更に別の好適な実施例である無線タグ通信装置96の構成を説明する図である。この図15に示すように、本実施例の無線タグ通信装置96は、前記アンテナ素子26a、26b、26cに加えてアンテナ素子26dを有しており、そのアンテナ素子26dに対応して送受信モジュール24dを備えている。この送受信モジュール24dは、図3を用いて前述した送受信モジュール24a、24b、24c等と同様の構成とされたものであり、前記搬送波増幅部22から供給される搬送波に基づく送信信号を処理してアンテナ素子26dから送信すると共にそのアンテナ素子26dにより受信される受信信号を処理して前記受信信号合成部28へ供給する。また、前記搬送波増幅部22と送受信モジュール24bとの間の信号伝達回路を開閉する送信回路切替部46bと、上記搬送波増幅部22と送受信モジュール24dとの間の信号伝達回路を開閉する送信回路切替部46dと、上記送受信モジュール24bと受信信号合成部28との間の信号伝達回路を開閉する受信回路切替部48bと、上記送受信モジュール24dと受信信号合成部28との間の信号伝達回路を開閉する受信回路切替部48dとを、備えており、前記受信信号合成部28は、前記受信回路切替部48a、48b、48c、48dの開閉に応じて前記送受信モジュール24a、24b、24c、24dから選択的に供給される受信信号を合成する。
本実施例の無線タグ通信装置96に備えられた4つのアンテナ素子26は、何れもダイポールアンテナ等の直線状アンテナ素子であり、それら複数の直線状アンテナ素子26が同一平面内に互いに平行を成すように且つ等間隔で配設されたものである。そして、それら4本の直線状アンテナ素子26のうち少なくとも2本のアンテナ素子26から送信及び/又は受信におけるアレイアンテナ16が構成される。例えば、上記4本の直線状アンテナ素子26のうち相互に隣接する2本の直線状アンテナ素子26から3組のアレイアンテナ16が構成される。すなわち、上記アンテナ素子26a及び26bからアレイアンテナ16aが、アンテナ素子26b及び26cからアレイアンテナ16bが、アンテナ素子26c及び26dからアレイアンテナ16cがそれぞれ構成される。また、上記4本の直線状アンテナ素子26のうち選択される何れか3本の直線状アンテナ素子26から2組のアレイアンテナ16が構成される。すなわち、上記アンテナ素子26a、26b、26cからアレイアンテナ16dが、アンテナ素子26b、26c、26dからアレイアンテナ16eがそれぞれ構成される。前記無線タグ通信装置96では、前記アンテナ選択制御部52により前記送信回路切替部46及び/又は受信回路切替部48を介して上述のような複数組のアレイアンテナ16が選択的に成立させられ、そのアレイアンテナ16により前記無線タグ14に対する無線信号の送信及び/又は受信が行われる。
このように、本実施例によれば、前記複数組のアレイアンテナ16は、互いに平行を成すように配設された4本の直線状アンテナ素子26のうち相互に隣接する2本の直線状アンテナ素子26から構成される3組のアレイアンテナ16a、16b、16cであるため、互いに平行を成すように配設された4本の直線状アンテナ素子26から選択的に構成される3組のアレイアンテナ16a、16b、16cそれぞれに対応する受信信号を比較することで、前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。
また、前記複数組のアレイアンテナ16は、互いに平行を成すように配設された4本の直線状アンテナ素子26のうち選択される何れか3本の直線状アンテナ素子26から構成される2組のアレイアンテナ16d、16eであるため、互いに平行を成すように配設された4本の直線状アンテナ素子26から選択的に構成される2組のアレイアンテナ16それぞれに対応する受信信号を比較することで、前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例において、前記アンテナ選択制御部52、指向性制御部54、信号強度検出部56、障害物方向検出部58、障害物方向設定部59、及び方向検出部60等は、何れも個別に設けられたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらと同等の制御機能がCPU、ROM、RAM等を含んでディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)等に機能的に備えられたものであっても構わない。また、それら制御装置による制御は、ディジタル信号処理であるとアナログ信号処理であるとを問わない。
また、前述の実施例において、前記無線タグ通信装置12に備えられたアンテナ素子26は、何れもダイポールアンテナ等の直線状アンテナ素子であり、それら複数本の直線状アンテナ素子26から複数組のアレイアンテナ16が構成されるものであったが、例えばパッチアンテナ等の平板状(平面)アンテナ素子からアレイアンテナが構成されるものであってもよく、斯かるアンテナを備えた通信装置にも本発明は好適に適用され得る。
また、前述の実施例では、通信対象である無線タグ14に向けて所定の送信信号を送信すると共に、その送信信号に応答して前記無線タグ14から返信される返信信号を受信することで前記無線タグ14との間で情報の通信を行う無線タグ通信装置12に本発明が適用された例について説明したが、例えば携帯電話機や移動体通信装置をはじめとする他の無線通信装置における通信端末の方向検出にも本発明は好適に適用され得る。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。