以下、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの好適実施形態例について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの具体例について詳細に説明するが、本発明に関連する携帯端末、車載用管理装置、乗車管理方法、乗車管理プログラム及びプログラム記録媒体についても当業者にとっては開示があることは明らかである。
先ず、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの運賃の精算を行う改札システムに適用する例について図1を用いて説明する。図1は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの構成の一例を示す概略構成図であり、一例として、乗合車両として鉄道用の列車を、乗客が該乗合車両に乗降車する乗降車場として鉄道の駅を用いて示している。
また、図1は、鉄道路線として、A、B、C駅と、C駅でD駅に向かう本線とE、F駅に向かう支線とに分岐している場合を示している。本線に位置するA、B、C、D駅には、定期券機能・プリペイド入金機能を有する統合型非接触式ICカード10の情報を読取り可能なカードリーダ/ライタ(カードリーダ/ライタ31a、31bとしてA、B駅に例示している)を備えた改札機(改札機30a、30bとしてA、B駅に例示している)が通常の駅設置型の改札機として設置され、それぞれの駅設置型の改札機には、券売機や乗り越し用の精算機を含め駅業務全体の管理処理を司る管理装置(管理装置35a、35bとしてA、B駅に例示している)が接続されている。
一方、支線に位置するE、F駅には、通常の改札機は設置されておらず、それぞれの駅近くの線路近傍に、DSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)方式で乗合車両2内に設置されている車載用管理装置20との間で無線通信が可能な路側機(E、F駅それぞれの駅構内又は近傍の線路の側に路側機40a、40b)が設置されている。
なお、図示していないが、車載用管理装置20との間で無線通信が可能な路側機は、駅構内又は駅近傍のみならず、走行中の乗合車両2の車載用管理装置20との間で、常時又は適切な間隔でDSRC方式での無線通信(路車間通信)が可能なように、乗合車両2が走行する鉄道線路の側(近傍)に適当な間隔で設置することができる。
また、各管理装置35a、35b、・・・及び各路側機40a、40b・・・は通信回線を介して相互に接続されたネットワーク60を形成しており、更に、該ネットワーク60には、乗合車両の運行管理や運賃処理や座席予約処理などの管理業務を行うセンタ装置50が接続されていて、各管理装置35a、35b、・・・及び各路側機40a、40b・・・との間で、情報を送受信することができる。なお、ネットワーク60に接続されるセンタ装置50は、1個のみに限るものではなく、用途や地域に応じて複数個設置されていても良いし、更に、インターネットなどの公衆通信網や放送網などとの接続を行うゲートウェイ機能を有する管理センタ装置を設置するようにしても良い。
なお、図1には、乗客1が、A駅から乗車3して、B駅で降車4する場合と、E駅で降車5する場合とを示している。即ち、乗客1は、定期券としての乗車期間・乗車区間やプリペイドされた入金金額を記録した統合型非接触式ICカード10を携帯して、A駅に設置の改札機30aのカードリーダ/ライタ31aに統合型非接触式ICカード10をかざすことにより、乗車駅としてA駅が統合型非接触式ICカード10に記録された状態で入駅した後、乗合車両2に乗車3し、駅設置の改札機30bを備えたB駅で乗合車両2から降車4した場合と、その先の駅設置の改札機が備えられていないE駅で乗合車両2から降車5した場合との2つのケースについて示している。
ここで、例えばA駅から乗車した乗合車両2がE駅方面へ向かう乗合車両ではなかった場合に、C駅などでE駅方面へ向かう乗合車両2に乗客1が乗り換えるような場合であっても全く同様である。
乗客1がB駅で乗合車両2から降車4した場合は、駅設置の改札機30bを通過する際に、乗客1が携帯する統合型非接触式ICカード10を改札機30bのカードリーダ/ライタ31bにかざすことにより、統合型非接触式ICカード10に記録された乗車駅のA駅から乗車した乗客1がB駅で降車したことを示す乗降車記録としてB駅の管理装置35bに送信されて記録されると共に、統合型非接触式ICカード10に記録された定期券及びプリペイドカード機能のうち、プリペイドカード機能に該当する乗車区間に該当する場合は、乗車したA駅と降車したB駅間の運賃が改札機30bで算出されて、運賃の入金処理がなされ、かつ、現在の入金金額を記録した統合型非接触式ICカード10に精算処理後の残りの金額が記録されるという運賃の決済処理がなされる。
なお、各駅に設置の管理装置35a、35b、・・・に記録された乗降車記録は、その都度あるいは予め定めた周期でセンタ装置50にネットワーク60を介して送信される。
一方、乗客1がE駅で乗合車両2から降車5する場合は、乗客1が携帯する統合型非接触式ICカード10を乗合車両2内に設置の車載用管理装置20のカードリーダ/ライタ21にかざすことにより、統合型非接触式ICカード10に記録された乗車駅のA駅から乗車した乗客1がE駅で降車したことを示す乗降車記録として車載用管理装置20内に記録されると共に、統合型非接触式ICカード10に記録された定期券及びプリペイドカード機能のうち、プリペイドカード機能に該当する乗車区間に該当する場合は、乗車したA駅と降車したE駅間の運賃が車載用管理装置20で算出されて、運賃の入金処理がなされ、かつ、現在の入金金額を記録した統合型非接触式ICカード10に精算処理後の残りの金額が記録されるという運賃の決済処理がなされる。
なお、車載用管理装置20に記録された乗降車記録は、前述のB駅で降車した場合と同様に、その都度あるいは予め定めた周期で、通信手段22からE駅の駅構内又は近傍又は路線側に設置された路側機40aに送信されて、ネットワーク60を介してセンタ装置50に送信される。
前述の説明では、駅に改札機30aが設置されているA駅から乗合車両2に乗車した場合について説明したが、次に、駅に改札機が設置されていない無人駅など例えばE駅から乗車し、駅に改札機が設置されていない駅、例えば、H駅で降車した場合について、図2を参照して更に説明する。
ここに、図2は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの動作の一例を説明するために用いる路線図を模式的に示したものであり、改札機が設置されていないE駅から乗合車両(列車)2に乗車し、同じく改札機が設置されていないH駅で降車した場合を示している。ここで、E駅からH駅までの乗車区間は、統合型非接触式ICカード10に記録された定期券及びプリペイドカード機能のうち、定期券適用区間ではなく、プリペイドカード機能に該当する乗車区間に該当しているものとする。
まず、乗客1が携帯する統合型非接触式ICカード10に定期券情報やプリペイドの入金金額を予め記録しておき、E駅で乗車する際に、乗合車両2の乗車口に設置されている車載用管理装置20のカードリーダ/ライタ21に統合型非接触式ICカード10をかざす。
カードリーダ/ライタ21から読み込まれた統合型非接触式ICカード10の情報は、車載用管理装置20に送られ、車載用管理装置20は、通信手段22を介して、E駅の構内又は近傍に設置されている路側機40aを経由してセンタ装置50と通信を行うことにより、当該統合型非接触式ICカード10が不正に使用されていないか、使用停止の状態にないか、即ち、乗客1が乗車資格を有しているか否かを調べる。乗車資格がないと判定した場合は、その旨がセンタ装置50から返送されてくるので、車載用管理装置20から警告表示を出力し、乗客1にその旨を通知して乗車を拒否する。
一方、乗車資格があると判定した場合は、その旨がセンタ装置50から返送されてくるので、車載用管理装置20は、その乗客1の乗車駅E駅を記録すると共に、統合型非接触式ICカード10にも乗車駅がE駅であることを記録して、以降、降車駅に至るまでの運賃を更新していく。即ち、車載用管理装置20は、乗合車両2がE駅からの運賃が更新される乗車区間となる駅に到着する都度、順次運賃を更新していく。例えば、図2に示す例の場合、E駅からF駅までの運賃はα円であり、G駅までの料金もF駅までと同様にα円であれば、乗合車両2がF駅に到着した際に、運賃をα円に更新するが、G駅に到着しても運賃は更新されることはない。
次のH駅までの運賃がβ円であれば、車載用管理装置20は、運賃をβ円に更新する。このH駅で、乗客1が降車するために、乗合車両2の降車口に設置されている車載用管理装置20のカードリーダ/ライタ21に統合型非接触式ICカード10をかざすと、カードリーダ/ライタ21から読み込まれた情報が、車載用管理装置20に送られる。車載用管理装置20は、乗車駅E駅から降車駅H駅までの乗車区間を乗降車記録として記録すると共に、その乗車区間の運賃を徴収して入金処理をし、統合型非接触式ICカード10の現在の入金金額から減算する決済処理を行う。車載用管理装置20に記録された乗降車記録は、通信手段22により、H駅の構内又は近傍又は路線の側に設置されている路側機を経由してセンタ装置50に送信される。
なお、統合型非接触式ICカード10と車載用管理装置20のカードリーダ/ライタ21との情報の読み書き用の通信方式として、後述するようなDSRC(Dedicated Short Range Communication)方式に準拠の車内通信を可能としている場合は、前述のように、乗降車時に車載用管理装置20のカードリーダ/ライタ21に統合型非接触式ICカード10をわざわざかざすことなく、カードリーダ/ライタ21が乗降車する乗客の統合型非接触式ICカード10の情報を読み書きすることができるので、乗客は統合型非接触式ICカード10を携帯したまま乗降車すればよい。
次に、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムを改札処理に適用する場合の前述の図1及び図2で説明した課金処理と異なる例について、図3の構成及び図4〜図7のフローチャートを用いて更に説明する。即ち、前述の例では、車載用管理装置20において、乗車時に乗客の乗車を確認し、降車時に乗客の降車を認識することで運賃の決済を行う場合を説明したが、ここでは、車載用管理装置20において、乗車時に乗客の乗車を確認すると同時に、最低運賃の決済を行い、以降、乗合車両2の走行につれて運賃の更新が必要となる状況が発生する都度、更新後の運賃と決済済みの運賃との差分に対する決済を追加して行う場合について説明する。
図3は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの構成について駅設置の改札機がない場合を中心にしてその一例を示した概略構成図であり、図1の構成図と同じブロックについては同一の符号を付している。ただし、この図3においては、統合型非接触式ICカード10と車載用管理装置20のカードリーダ/ライタ21との間の情報の読み書き動作は、統合型非接触式ICカード10をカードリーダ/ライタ21に近接するようにかざすことなく実行することが可能であり、個々の乗合車両内に設置されている車載用管理装置20のカードリーダ/ライタ21とその車両内に居る乗客が携帯する統合型非接触式ICカード10との間をDSRC(専用狭域通信)方式などに準拠した車内通信により情報の送受信が可能である。
なお、乗客1は、統合型非接触式ICカード10単体で携帯する場合のみに限らず、携帯端末として携帯することももちろん可能である。該携帯端末には、内蔵された統合型非接触式ICカード10に、液晶パネルなどの表示手段を接続したり、ボタンやキーなどの操作手段を接続したり、マイク、スピーカ、イヤホーンなどの音声入出力手段を接続したり、メモリカードのような着脱自在な外部記録装置を接続したり、各種のデバイスを搭載した複合装置として構成することができる。図3では、乗客1は、統合型非接触式ICカード10単体ではなく、該統合型非接触式ICカード10を搭載した携帯端末10Aを携帯している場合を示している。
また、前述したように、図3には、車載用管理装置20は、車両内の統合型非接触式ICカード10との間でDSRC方式準拠の車内通信を行うカードリーダ/ライタ21と、車外の駅構内又はその近傍に設置されている路側機40や乗合車両2が走行する路線の近傍(路側)に適切な間隔で設置されている路側機41との間でDSRC方式準拠の車外通信(路車間通信)を行う通信手段22とを備えており、更に、不正使用や使用停止などを含む決済不能な統合型非接触式ICカード10を携帯した乗客に対して警報を発し、乗車を拒否する警報手段23も備えている。
なお、乗合車両2には、車両情報2aとして、該乗合車両2を一意に識別可能な車両ID、扉(ドア)の開閉状況、走行/停止(車両動/停)状態や走行距離などを示す情報が記録されており、車載用管理装置20により読取ることが可能である。また、図3に示す他車両車載用管理装置20Aとは、他の乗合車両に搭載されている車載用管理装置20のことであり、詳細は後述するが、当該乗合車両2の車載用管理装置20から、路側機40、41を介した路車間通信、あるいは、直接の車外通信を行い、情報を送受信することができる。
また、図4は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの乗車から降車に至るまでの全体のメイン動作の一例を示すフローチャートであり、図5は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの乗車判定動作の一例を示すフローチャートであり、図6は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの課金処理の一例を示すフローチャートであり、図7は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの降車判定動作の一例を示すフローチャートである。
(基本動作)
図3において、乗合車両2内に設定されている車載用管理装置20は、通信手段22を起動して、路側機40との間で車外通信即ち路車間通信を行い、ネットワーク60を介してセンタ装置50から統合型非接触式ICカード10の不正使用や使用停止に関する情報を常に取得して、最新の状態に更新している。
車載用管理装置20は、このような最新の情報を常に取得して更新しつつ、図4に示すように、駅に停車する都度、乗客の乗車判定をし(ステップS1)、乗車があれば(ステップS1のYES)、乗車した乗客に対する運賃の課金処理を行い(ステップS2)、しかる後、乗客の降車判定をし(ステップS3)、降車があれば(ステップS3のYES)、当該乗客の乗車区間を示す乗降車記録を記録し、その都度あるいは予め定めた周期で路側機40を介してセンタ装置50に送信する(ステップS4)というメイン動作を行っている。
ここで、車載用管理装置20からの乗降車記録を受信したセンタ装置50の運行管理システム(運行管理センタ)では、乗合車両の時々刻々変動する乗客流動に基づいて乗合車両の運行を調整したり、各路線区間の時間帯別の乗客数を把握して、今後の走行計画に反映すべき乗合車両の本数を推定して、乗合車両や路線の投資計画を作成したり、駅やバス停留所などの乗降車場の乗降客数に対応した各種施設の設備計画を作成したり、乗客への情報サービスなどの計画を作成したりするなど、有益な情報として活用することができる。
次に、図4のステップS1に示す乗車判定処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。車載用管理装置20は、乗合車両2が駅に到着して停車し扉が開いたことを、図3の車両情報2aから取得した後(ステップS11)、乗合車両2に乗客が乗降車し(ステップS12)、しかる後、停車時間が経過して、扉が閉まったことを、図3の車両情報2aから取得すると(ステップS13)、新たに乗車してきた乗客も含め、車両内に居るすべての乗客の統合型非接触式ICカード10の情報を車内通信によりカードリーダ/ライタ21が読取って、その中に含まれているカードID番号、乗車駅情報や、定期券情報及びプリペイド情報などの情報を取得する(ステップS14)。
ここで、カードID番号とは、統合型非接触式ICカード10を一意に識別可能とする番号であり、該統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客本人を特定するための情報である。
次に、車載用管理装置20に既に記録されている、乗合車両2に既に乗車している乗客を示す記録済みのカードID番号を取り出して(ステップS15)、ステップS14で新たに取得したカードID番号と比較する(ステップS16)。両者のカードID番号が一致している場合は(ステップS16の一致)、既に乗車していた乗客であり、ステップS14で新たに取得したカードID番号に関する情報は不要な情報として破棄する(ステップS17)。
一方、両者のカードID番号が一致していない場合で、かつ、ステップS14で新たに取得したカードID番号がまだ記録されていなかった場合は(ステップS15の不一致、かつ、ステップS17のYES)、新たな乗客が乗車(車両進入)してきた場合であり、カードID番号と対応付けて、統合型非接触式ICカード10から取得していた定期券情報やプリペイド情報、乗車駅情報(既に取得されていた場合はその乗車駅、まだ取得されていなかった場合は、新たな乗車を検出した当該乗車駅)、車両情報2aから取得した車両IDなどを記録する(ステップS18)。
なお、車両IDとは、前述のように、乗合車両を一意に識別可能な識別子である。このように、乗車判定は、乗合車両2の外から乗合車両2の内部へ新たに進入した統合型非接触式ICカード10のカードID番号の有無により行われる。乗合車両2の内部への新たな進入により運賃が発生する。この運賃の徴収・決済については、後に図6を用いて説明する。
車載用管理装置20は、図3に示すように、駅構内や近傍に設置されている路側機40や駅間の線路側(近傍)に適当な間隔で設置されている路側機41との間で、常時又は適切な時間間隔で車外通信を行っており、乗合車両2の走行中の位置を検出できるのみならず、統合型非接触式ICカード10の不正使用などに関する最新の情報もセンタ装置50から取得している。
車載用管理装置20は、ステップS14において、統合型非接触式ICカード10に含まれているカードID番号、定期券情報及びプリペイド情報などを取得した際に、カードが不正に使用されていないか、また、プリペイド入金情報による運賃の決済の場合に運賃の決済が可能かなどを調べ、乗車資格がない、あるいは、運賃の決済が不可能であると判定した場合、図3に示す警報手段23により警報を発し、乗車を拒否する。
ここで、プリペイド情報による決済が可能か否かの判定処理は、現在走行中の乗車区間が、定期券の適用区間ではなく、プリペイド入金金額による支払い区間に該当し、かつ、プリペイドされている入金金額が最低運賃分以上に残っていないことが判明した場合であり、この場合、当該統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客に対して警報を発し、乗車を拒否する。
更に、統合型非接触式ICカード10に使用不可の情報が設定されていた場合にも、当該統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客に対して警報を発し、乗車を拒否する。ここで、使用不可情報は、統合型非接触式ICカード10の盗難や違法行為を防止するために、当該統合型非接触式ICカード10の所有者が予め設定しておく情報であり、かかる使用不可の情報が車載用管理装置20にて検出された場合にも、警報を発し、乗車を拒否するようにしている。
次に、図4のステップS2に示す課金処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。まず、車載用管理装置20は、乗合車両2が駅に到着して停車し扉が開いたことを、図3の車両情報2aから取得すると(ステップS21)、当該乗合車両2の走行距離を、図3の車両情報2aから取得して、当該乗合車両2に乗車中の乗客に対する運賃の更新の必要性を判定する(ステップS22)。
即ち、乗客が現在乗車中であることを示す情報として、車載用管理装置20に既に記録済みのカードID番号に対応付けて記録されている定期券情報から、現在走行中の乗車区間が、定期券の適用区間ではないと判定された乗客については、車両情報2aから取得した走行距離に基づいて、該カードID番号に対応付けて記録されている乗車駅情報あるいは定期券区間の最近接駅情報に相当する駅と現在停車した駅との間の当該乗合車両2の走行距離を現在までの乗車区間として算出し、現在までの乗車区間に対応する運賃を求めて、既に決済済みの運賃と比較することにより、運賃の更新の必要性を判定する(ステップS23)。
現在までの乗車区間の運賃の更新が必要であると判定された場合(ステップS23のYES)、現在までの乗車区間に対応する運賃から既に決済済みの運賃を差し引いた差額の金額を、該当するカードID番号の統合型非接触式ICカード10のプリペイド入金金額から減額して記録し直すと共に、徴収した運賃の入金情報を更新する(ステップS24)。この課金処理は、車載用管理装置20のカードリーダ/ライタ21と統合型非接触式ICカード10との車内通信を用いて、当該乗合車両2に乗車中の乗客すべてに対して、即ち、車載用管理装置20にカードID番号が記録されているすべての統合型非接触式ICカード10に対して繰り返し実行される。
次に、停車時間が経過して、扉が閉まったことを、図3の車両情報2aから取得すると(ステップS25)、課金処理は終了する。このように、運賃の課金処理は、駅で当該乗合車両2が停車する都度、該当の乗客が降車するか否かには関係なく、精算すべき運賃の更新が必要になれば、自動的に課金処理が実施される。したがって、最も短い乗車区間として、乗車駅の次の駅で降車するような乗客の場合は、乗車した時点で運賃の課金処理が終了している。
なお、ステップS24における課金処理においては、例えば、異なる鉄道会社の車両であったり、特急車両やグリーン車両のように、同一走行距離であっても運賃が異なる場合には、車両情報2aから取得した車両IDにより、対応する運賃を算出することを可能としている。更には、車載用管理装置20に各種の利用形態別の運賃データベースを配置して、事業者が発行する特定の識別情報(例えば、居住地や年齢など)を統合型非接触式ICカード10に記録して管理することにすれば、例えば、地域別の運賃設定や年齢別の運賃設定などのような利用形態別の運賃設定を行うことも可能である。
更に、図2においても前述したように、車載用管理装置20においては、例えば乗車駅のE駅から降車駅のH駅までの乗車区間の運賃の決済は、降車駅のH駅ではじめて決済されるのではなく、徴収すべき運賃の更新が発生する都度即ち新たな課金が発生する都度、決済処理が行われ、統合型非接触式ICカード10に決済結果が反映される。
ここで、図2や図6では、駅に停車中に、図2に示すF駅到着時点(最低運賃のα円の発生時点)とH駅到着時点(α円からβ円への運賃更新の発生時点)で課金処理を行っているが、停車中ではなく、次の駅に向けて発車した時点で、運賃の更新が必要になったことが判明した場合に直ちに課金処理を行うこととしても良い。
即ち、前述の例の場合であれば、乗車駅E駅で乗車し、扉が閉じて車両が動き出したことを車両情報2aから取得した時点でまず最低の運賃であるα円が発生したものと判断して、α円分の課金処理を行う。次に、G駅に到着して停止した後、扉が閉じて車両が動き出したことを車両情報2aから取得した時点で、乗車駅A駅から次の駅H駅までの運賃がα円からβ円に更新されるものと判断して、運賃をα円からβ円に更新するために既に課金済みのα円との差分である(β−α)円を加算した課金処理を行う。
この結果、H駅で降車する場合の運賃(β円)の課金処理は、H駅に到着した時点で行うのではなく、新たな課金条件の発生時点として乗車駅のE駅(α円の課金)及びG駅からそれぞれ発車した時点で課金(E駅発車時はα円の課金、G駅発車時は差分の(β−α)円の課金)を行う。
このようにすれば、同一乗降車場で、一旦乗車した後降車したような場合に、一旦乗車しただけで運賃の決済をしてしまって最低運賃が徴収されてしまうことはない。更に、車載用管理装置20において、駅に到着して発車するまでの停車中の短い期間にすべての乗客に対する課金処理を実行する必要はなく、また、図4に示すように、乗車判定処理、降車判定処理とはそれぞれ異なる時間で課金処理を実行することも可能となるので、処理能力があまり高くない処理装置を用いて車載用管理装置20を構成することが可能となる。
なお、課金処理は、個々の乗客に対する個別課金であり、各乗客が携帯する統合型非接触式ICカード10に対して運賃についての決済処理が行われる。また、プリペイド式決済を行う場合に、統合型非接触式ICカード10にプリペイドされた現在金額以上の運賃が発生した場合には、当該統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客に対して警報を発すると共に、当該統合型非接触式ICカード10に料金不足の旨を記録するようにし、次のプリペイド入金処理時に、不足金額の精算を行うようにしても良い。
以上のような課金処理においては、車載用管理装置20と路側機40との間でのDSRC方式での路車間通信に、乗客の個人情報や統合型非接触式ICカード10に関する情報が一切送受信されることはなく、個人情報の漏洩を抑止しセキュリティを確保することができる。即ち、車載用管理装置20と路側機40との間の路車間通信では、乗客が携帯する統合型非接触式ICカード10の使用可否に関するセンタ装置50からの情報やセンタ装置50への乗合車両2の乗降車記録などの情報が送受信されるのみであり、運賃の決済処理に直接関係する情報が送受信されることはない。
次に、図4のステップS3に示す降車判定処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。車載用管理装置20は、乗合車両2が駅に到着して停車し扉が開いたことを、図3の車両情報2aから取得した後(ステップS31)、乗合車両2に乗客が乗降車し(ステップS32)、しかる後、停車時間が経過して、扉が閉まったことを、図3の車両情報2aから取得すると(ステップS33)、当駅で降車してしまった乗客を除外し、かつ、当駅で新たに乗車してきた乗客を含めて、車両内に居るすべての乗客の統合型非接触式ICカード10の情報を車内通信によりカードリーダ/ライタ21が読取って、その中に含まれているカードID番号、乗車駅情報や、定期券情報及びプリペイド情報などの情報を取得する(ステップS34)。
ここで、カードID番号とは、前述のように、統合型非接触式ICカード10を一意に識別可能とする番号であり、該統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客本人を特定するための情報である。
次に、車載用管理装置20に記録済みのカードID番号を取り出して(ステップS35)、ステップS34で取得したカードID番号と比較する(ステップS36)。両者のカードID番号が一致している場合は(ステップS36の一致)、該当するカードID番号の統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客が継続して乗車中の場合であり、ステップS34で取得したカードID番号の情報を破棄して、記録済みの情報はそのままにして、次の発車時点で生じる可能性がある課金処理に備える(ステップS37)。
一方、両者のカードID番号が一致していない場合で、記録済みのカードID番号がステップS34で取得したカードID番号に見当たらなかった場合は(ステップS36の不一致、かつ、ステップS38のYES)、該当するカードID番号の統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客が当駅で降車した場合であり、降車が確認できれば、以降の運賃に関する課金処理は発生しないので、記録済みのカードID番号及び対応する乗車情報(定期券情報やプリペイド情報、課金処理済み情報、乗車駅、車両IDなど)を不要な情報として破棄する(ステップS39)。このように、降車判定は、乗合車両2の内部から乗合車両2の外へ移動した統合型非接触式ICカード10のカードID番号の有無により行われる。
次に、図2及び図3に示すような駅に改札機が設置されていない場合の本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの改札処理についての他の各種実施例について更に説明する。
(同一駅での乗降車に対する課金処理手法)
図6のステップS22のような走行距離により運賃の発生の有無を判定するので、同一駅内での乗り降りは、同一走行距離であり、運賃としての徴収対象とならず、課金対象とはならない。あるいは、前述したように、乗合車両2に乗車して発車した時点において、即ち、扉が閉じて、車両が動き出したことを車両情報2aから取得した時点で、初乗り運賃(最低運賃)により運賃の決算を開始するため、同一駅内での乗り降りは、運賃としての徴収対象とならず、課金対象とはならない。
(途中駅における一時降車に対する課金処理手法)
図7のステップS32のように一旦降車した場合であっても、扉が閉じる前の時間内に再乗車した場合や、あるいは、予め定めた一定時間以内であれば、後続乗合車両や別路線への乗合車両に乗り換えた場合、それまでに運賃として課金されていた課金情報に継続して追加料金を課金することが可能である。
ここで、後者の場合のように、別の乗合車両に乗り換えた場合、図3に示すように、前に乗車していた乗合車両2の車載用管理装置20から乗り換え車両の他車両車載用管理装置20Aへの直接の車外通信、あるいは、両方の乗合車両それぞれの近傍に設置されている路側機40を経由した路車間通信によって、前の乗合車両2の運賃の処理に関する情報(例えば、乗車駅を含む情報など)を乗り換え車両の他車両車載用管理装置20Aへ引き継ぐことができる。
即ち、一旦降車した乗客1が別の乗合車両に乗り換える場合に備えて、図7のステップS38において降車したことを検出した後、予め定めた一定時間以内の間は、ステップS39における降車処理(即ち、記録済みのカードID番号及び対応する乗車情報の破棄)を行うことなく、車載用管理装置20にそのまま保存しておく。
このような一定時間の間に、当該乗客1が別の乗合車両に乗り換えた場合、乗り換えた別の乗合車両の他車両車載用管理装置20Aから、当該乗合車両に新たに乗車してきた乗客の統合型非接触式ICカード10のカードID番号が示す乗車情報として、引き継ぐべき情報の有無を問い合わせる検索情報を直接の車外通信あるいは路側機40を経由した路車間通信により受信した場合、車載用管理装置20に保存しておいた対応する乗車情報(定期券情報やプリペイド情報、乗車駅、車両IDなど)を、又は、乗継ぎ処理に必要とする情報(例えば乗車駅や車両IDに関する情報)のみを、問い合わせ先の他車両車載用管理装置20Aに対して送信して引き継ぐ。
引き継いだ後は、車載用管理装置20での保存は不要になったものとして車載用管理装置20から削除する。あるいは、前記一定時間の間に他車両車載用管理装置20Aからの検索情報を一切受信せず、前記一定時間が経過した場合には、車載用管理装置20での保存は不要になったものとして車載用管理装置20から削除する。ここで、前記一定時間は、任意の値を選択して設定可能であるが、乗客1が駅の外へ出てしまった後再度入駅するような長時間ではなく、例えば1時間以内の10分や20分程度の時間を設定することが望ましい。
また、前記一定時間以内に、前に乗車していた乗合車両の車載用管理装置20に保存されていた乗車情報(定期券情報やプリペイド情報、乗車駅、車両IDなど)や乗継ぎ処理に必要な情報のみを、問い合わせ先の他車両車載用管理装置20Aに対して送信した結果、他車両車載用管理装置20Aにて、前に乗車していた乗合車両とは逆方向に向かって走行していることが受信した乗車情報の車両IDなどにより判明した場合は、前の乗合車両の乗車駅からの走行距離に基づいて運賃を算出する課金処理の引き継ぎは中止して、乗換え駅が初乗りの駅とみなして、新たな乗車としての運賃の課金を開始する。
(乗継ぎに対する課金処理手法)
前述した途中駅における一時降車に対する課金処理手法の場合と同様に、乗継ぎを行う乗合車両間の直接の車外通信あるいは路側機40を経由した路車間通信で乗継ぎに関する乗車情報の引継ぎに対応する。
(定期券機能に対応する課金処理手法)
前述したように、車載用管理装置20は、乗客の乗車区間が統合型非接触式ICカード10の定期券情報に記録されている乗車区間即ち定期券区間に含まれているか否かによって課金処理の有無を判定する。乗合車両が定期券区間内から区間外の乗車区間に移行した場合、例えば、乗合車両が定期券区間内の駅で扉が閉じて、区間外の路線へと動き出した時点で、最低運賃の課金がなされ、以降、定期券区間内の最近接駅からの走行距離により、決済処理が開始される。
なお、定期券機能に関するサービス機能の一つとして、車載用管理装置20は、定期券区間内の駅から区間外の路線へと走行する乗合車両に乗車している場合に、次に到着する駅が定期券区間内の最終の駅であり、その駅の次の駅が定期券区間外の駅に該当するようになったことを検出したときに、次に到着する駅が定期券区間内の最終の駅であることを、当該統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客に警告通知するようにすることもできる。
(駅設置の改札機との対応関係)
図1に示したように、A駅〜D駅のような、現在既に設置済みの駅設置型の改札機30a、30b、・・・と、E駅、F駅のような、改札機が駅に設置されていない駅における改札業務にも対応できるようにするために、乗合車両2内に搭載した車載用管理装置20と、の双方のカードリーダ/ライタは、いずれも、本実施例における統合型非接触式ICカード10に対応した読み書きを可能としている。
即ち、駅設置型の改札機30a、30b、・・・と乗合車両2内に設置の車載用管理装置20との統合型非接触式ICカード10を介した乗客との対話手段についても、全く同様の手段で実現されている。なお、統合型非接触式ICカード10は、駅構内又は駅近傍に設定されている路側機40とも、DSRC方式による直接通信が可能である。
もって、駅設置型の改札機30a、30b、・・・を利用することが可能な統合型非接触式ICカード10を携帯する乗客1が、駅に改札機が設置されていない無人駅等から乗降車するときでも、乗合車両2内に設置の車載用管理装置20により、駅設置型の改札機30a、30b、・・・がある駅からの乗降車の場合と全く同様に、運賃の決済を行うことが可能である。
なお、乗降車する駅が、駅設置型の改札機30a、30b、・・・が存在する駅と改札機が設置されていない駅とが混在する場合に、前述したように、乗合車両2内に設置の車載用管理装置20において、乗車時や更に運賃の更新が発生した時点で運賃の決済処理がなされ、統合型非接触式ICカード10のプリペイド入金金額が更新されることを可能とするように、駅設置型の改札機30a、30b、・・・を通過して乗車した際に、改札機30a、30b、・・・にて記録された統合型非接触式ICカード10の情報を車載用管理装置20にて読取ることが可能とされている。
一方、車載用管理装置20で運賃の決済処理がなされて、統合型非接触式ICカード10のプリペイド入金金額が更新された状態で、駅設置型の改札機30a、30b、・・・が存在する駅で降車する場合に備えて、統合型非接触式ICカード10に運賃決済済みを示す情報を記録するか、あるいは、車載用管理装置20から路側機40、41を介して、降車した駅の管理装置に対して、運賃決済済みを示す情報を伝え、降車した乗客の改札機30a、30b、・・の通過を許可させる。
また、前述の実施例では、乗合車両として鉄道用の列車を、また、乗客が乗合車両に乗降車する乗降車場として鉄道の駅を用いて説明したが、乗合車両が路線バスで、乗降車場がバス停留所のような場合であっても全く同様である。更には、鉄道会社や地下鉄会社の各事業者間の相互乗り入れが行われている場合や、鉄道とバスとの連携が行われている場合のように、1枚の統合型非接触式ICカード10によりすべての交通機関の運賃決済を可能とするような場合であっても、乗客から徴収した運賃を各事業者間で精算する処理が追加される以外は全く同様である。
以上のように、駅設置の改札機30a、30b、・・・を使用することが可能な統合型非接触式ICカード10を携帯するユーザが、駅に改札機が設置されていない無人駅等で、乗合車両2に乗降車して運賃決済をすることを可能とするために、乗合車両2内に移動式改札機として機能する車載用管理装置20を設置している。車載用管理装置20は、統合型非接触式ICカード10に記録された情報に応じて運賃決済を行うと共に、不正カードの使用防止のための情報、乗降車記録や乗継ぎのための情報などの送受信用として、駅構内やその近傍あるいは路線近傍に設置された路側機40a、40b、・・・との間のDSRC方式での無線通信や、更には路側機40a、40b、・・・を経由してネットワーク60を介したセンタ装置50や駅の管理装置との通信も可能としている。
更に言えば、無人駅や乗客の少ない駅などの乗降者場の状況の如何によらず、1枚のカード(統合型非接触式ICカード10)で電車・地下鉄・バスそれぞれを利用可能とするために、移動式改札機能を有する車載用管理装置20を乗合車両2内に設置し、DSRC方式による路側機40a、40b、・・・やセンタ装置50との通信も可能な運賃決済システム(改札システム)を実現している。
また、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムは、地上の鉄道や地下鉄や路線バスを運用する事業者により管理される乗車管理専用のシステムであり、移動式改札機能を有する車載用管理装置20を乗合車両2内に設置することにより、不正乗車の防止が可能となるのみならず、乗客の個人情報の漏洩も防止することができる。更には、運賃データベースと運賃管理者である事業者が発行する特定の情報を記録した統合型非接触式ICカード10を使用することにより、例えば地域別の運賃設定や年齢別の運賃設定など利用形態別の運賃設定を行うことも可能である。
次に、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムに関する他の実施例について説明する。前述の第1の実施例においては、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムを乗客の運賃を決済する改札機システムとして適用する場合について説明したが、本実施例においては、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムを、乗客の流動(乗客数)、乗合車両の運行状況の調査・把握を行う運行管理システムとして適用する場合について説明する。
図8は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの異なる構成例を示す概略構成図である。図8に示すように、第1の実施例として図1や図3に示した場合とは異なり、乗合車両2には、車内LAN61が配設されており、連結されている各車両それぞれに設置された車載用管理装置20が車内LAN61により相互に接続されている。
また、図8には、乗合車両2の各車両の車載用管理装置20のうち、いずれかの車両(例えば、先頭車両)の車載用管理装置20にDSRC方式などの路車間通信方式による車外通信を路側機40、41との間で行う通信手段を設けている例を示している。しかし、第1の実施例でも説明したように、特定の車両のみに限るものではなく、各車両の車載用管理装置20のすべてあるいは複数の車載用管理装置20に路側機40、41との間で車外通信を行う通信手段を設けるようにしても良い。該通信手段を介して、乗合車両2内の各種情報を車外に送信したり、逆に、車外のセンタ装置50や乗降車場(駅やバス停留所)などからの各種情報を受信したりすることができる。
また、乗客が携帯する携帯端末10Aは、内蔵した統合型非接触式ICカード10に、画面表示が可能な液晶パネルなどの表示手段や、音声情報を入出力するマイク、スピーカ、イヤホーンなどの音声入出力手段や、情報を入力するボタンやキーなどの操作手段や、情報を格納するメモリカードなどからなる外部メモリなどを必要に応じて接続して構成している。
図8のような構成の乗車管理システムにおいては、統合型非接触式ICカード10との間で情報の読み書き(例えばDSRC方式に準拠した車内通信)が可能なカードリーダ/ライタを有し、かつ、車内LAN61と接続された車載用管理装置20や、あるいは、更には、路線の側(近傍)に設定の路側機40、41との間の車外通信(DSRC方式などの路車間通信)が可能な通信手段を有する車載用管理装置20が、各車両に設置されており、車内LAN61やDSRC方式による車内通信及び車外通信による情報の送受信を可能とし、DSRC方式の長所を活かした各種の付加機能が実現可能であり、ネットワークに接続したセンタ装置50と併用して、乗合車両の運行管理に関する多彩な機能を実現することができる。
まず、その一例として、乗合車両の運行を管理するセンタ装置50において、乗合車両に乗車している乗客数を算出し、乗客の流動状況を把握する場合について図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。図9は、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムにおいて乗客の流動調査を行う動作の一例を説明するためのフローチャートであり、乗客の流動調査の一例として、時々刻々変動する乗合車両2の乗客数をセンタ装置50へ通知する動作について説明するものである。
図9において、まず、各車両の車載用管理装置20は当該車両に乗車している乗客数を乗客の流動調査の一つとして把握する(ステップS41)。この場合、乗客の乗降車時に該乗客が携帯する統合型非接触式ICカード10を読取った結果を集計して、乗客数を把握することとしても良い。
あるいは、図3に前述したように、車載用管理装置20とその車両内に存在する統合型非接触式ICカード10との間をDSRC(専用狭域通信)方式などに準拠した車内通信により情報の交換が可能な形態として、例えば、乗合車両2が扉を閉じて動き出したことを、図3のように、車両情報2aから取得したときに、車載用管理装置20は、その車両内に存在する統合型非接触式ICカード10と車内通信することにより、その車両内の統合型非接触式ICカード10の枚数即ち乗客数を算出するようにしても良い。
次に、路側機40との車外通信が可能な車載用管理装置20にて、各車両の車載用管理装置20における乗客数の算出結果を車内LAN61を介して転送させて、当該乗合車両に乗車している合計乗客数を集計する(ステップS42)。集計した乗客数に関する情報は、車載用管理装置20の通信手段22により路側機40、41とDSRC方式などにより車外通信することにより送信し、ネットワーク60を経由してセンタ装置50に転送される(ステップS43)。
このようにして、各乗合車両の乗客数を把握することにより、センタ装置50の運行管理システム(即ち、乗合車両の運行を管理する運行管理センタ)では、運行中の各乗合車両の混雑状況を把握し、運行ダイヤの遅れが生じないように、各乗合車両の乗降車場(駅やバス停留所など)における停車時間や発車時刻などを調整するための情報として活用することができる。調整された結果は、センタ装置(運行管理センタ)50から路側機40を介して車載用管理装置20や乗降車場(駅やバス停留所など)の管理装置(通信装置)などに送信されて、各乗合車両の運行に関する制御情報や乗客に対する案内情報として利用される。
また、図9では、路側機40、41から乗合車両の乗客数をセンタ装置50に送信する場合について示したが、当該乗合車両が次に到着する乗降車場以降の各乗降車場に設置の管理装置に対してネットワーク60を介して通知するようにしても良い。この通知を受け取った乗降車場においては、到着する乗合車両の乗客数の情報を混雑状況を示す情報として待ち合わせ中の乗客に案内したり、乗客の誘導体制を準備したりすることができる。
また、乗合車両の合計乗客数に限らず、当該乗合車両の各車両の車載用管理装置20において算出された車両ごとの乗客数を車外通信により路側機40、41を介して当該乗合車両が次に到着する乗降車場以降の各乗降車場に設置の管理装置に対して送信するようにしても良い。この車両ごとの乗客数を通知された各乗降車場においては、更にきめ細かい案内を待ち合わせ中の乗客に対して行うことができる。
更に、当該乗合車両の各車両の車載用管理装置20において算出された車両ごとの乗客数を、車内LAN61を介して、各車両の車載用管理装置20が送受信し合うことにより、当該乗合車両に乗車中の乗客が、携帯端末10Aを操作して、統合型非接触式ICカード10の制御により、自分が乗車している車両内の車載用管理装置20に保存された車両ごとの乗客数(即ち混雑度)を、例えば液晶パネルなどの表示手段(視覚的な出力手段)及び/又はイヤホーンなどの音声出力手段(聴覚的な出力手段)に出力して確認することもできる。これにより、乗客は、混雑が少ない車両に移動することも可能である。
あるいは、乗合車両が観光バスのような場合においては、車載用管理装置20における前述のような乗客数算出手段を用いることにより観光地での観光後の乗客の人数把握も容易に可能であり、複数の観光バスに分散している場合であっても、DSRC方式などの車外通信を行うことにより、すべての観光バスの乗客が揃ったか否かを容易に把握することができる。
あるいは、乗車区間によらず一律運賃である場合は、把握した乗客数をもって、本乗合車両において決済すべき運賃の総額を、自動的に把握することもできる。
次に、図8の構成における異なる例として、図3に示したような車両情報2aに含まれている車両IDを、乗合車両の車載用管理装置20が取得して、乗降車場内又はその近傍あるいは乗合車両が進行する路側に設置した路側機40を介して、センタ装置50の運行管理システム(即ち運行管理センタ)や各乗降車場に対して通知する場合を説明する。ここで、車両IDは、前述のように、各乗合車両に固有の情報として車両情報2aに含まれていて、当該乗合車両を一意に識別可能な識別子である。例えば、乗合車両がバスなどの場合、ETC(Electronic Toll Collection Systems)車載器のID番号(WCN:Wireless Call Number)のような自動車に固有の識別番号を用いることができる。
乗合車両の車載用管理装置20は、車両情報2aから車両IDを取得すると、乗降車場内又はその近傍あるいは乗合車両が進行する路側に設置した路側機40に対して、DSRC方式などによる車外通信により、当該乗合車両を示す車両IDを送信する。車両IDを受信した路側機40、41は、受信した車両IDを、ネットワーク60を介して、センタ装置50の運行管理システム(即ち、運行管理センタ)や乗降車場に対して送信する。かかる情報を受信することにより、運行管理センタや乗降車場では、送信してきた路側機40、41を識別することにより、車両IDが示す乗合車両が現在走行中の位置や、あるいは、走行速度などを認識することができる。
この結果、運行管理センタにおいては、常時又は適切な間隔で路側機40、41から受信した乗合車両の車両IDに基づいて、走行中の各乗合車両の時々刻々変化する運行状況(例えば、走行速度や遅延状況や路線の混雑状況など)を把握して、正常な運行ダイヤを守れるように、各乗合車両の運行計画の調整(駅やバス停留所などの乗降車場での停車時間や発車時刻や迂回路などの調整を含む)を行い、各乗合車両の乗務員への指示を作成したり、各乗降車場への通知をしたりすることができ、乗降車場においては、待ち合わせ中の乗客に対して、乗合車両の到着時刻や発車時刻の案内や到着コースへの乗車案内、あるいは、到着する乗合車両からの降車乗客の誘導準備などを予め行うことができる。
運行管理を行うセンタ装置50からの運行計画の調整結果の乗降車場への通知は、ネットワーク60を介して送信され、一方、乗合車両へは、更に路側機40を介して車載用管理装置20に対して送信される。車載用管理装置20にて運行計画の調整結果を受信することにより、車内LAN61を介して乗合車両の乗務員に調整指示が通知される。また、乗合車両の乗客も、車載用管理装置20の受信内容を、携帯端末10Aを操作して車内通信を行い、統合型非接触式ICカード10の制御により、例えば液晶パネルなどの表示手段(視覚的な出力手段)及び/又はイヤホーンなどの音声出力手段(聴覚的な出力手段)に出力して確認することができる。
次に、図8の構成における更に異なる例として、乗降車場内又はその近傍あるいは乗合車両が進行する路側に設置した路側機40、41に対して、乗合車両の進行方向(前方)における路線の状態(混雑状態や車両移動速度状態や事故発生状態など)を、ネットワーク60を介して、センタ装置50の交通監視システム(即ち、交通監視センタ)から、あるいは、路側に設置した路線状況監視センサから、乗合車両の各車両の車載用管理装置20が受信する場合を説明する。なお、路側に設置した路側機40、41自体に、路線の状態を監視する路線状況監視センサの機能を内蔵するようにしても良い。
センタ装置50の交通監視システムから、あるいは、路側に設置した路線状況監視センサから、ネットワーク60を介して、路線前方の状態(軌道状態や道路状態)を受信した路側機40、41は、当該路側機40、41の近傍を走行中の乗合車両の車載用管理装置20の通信手段22に対して、DSRC方式などによる車外通信を行うことにより、路線前方の状態を通知する。通知を受けた車載用管理装置20は、車内LAN61を介して他の車両の車載用管理装置20に対して転送する。
この結果、路線前方の状態(軌道状態や道路状態)を確認した当該乗合車両の乗務員が、その状態に応じた適切な運行を行うことが可能となり、更には、各車両の車載用管理装置20に受信されている路線前方の状態を、各車両に乗車中の乗客が、携帯端末10Aを操作して車内通信を行い、統合型非接触式ICカード10の制御により、例えば液晶パネルなどの表示手段(視覚的な出力手段)及び/又はイヤホーンなどの音声出力手段(聴覚的な出力手段)に出力して確認することもできる。
次に、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムの更に他の実施例について説明する。本実施例においては、本発明によるセンタ装置を有する乗車管理システムを、乗合車両に乗車した乗客に対して多彩な情報サービスを提供する情報提供システムとして適用する場合について前述の図8を用いて説明する。図8では、前述のように、乗客が携帯する携帯端末10Aは、内蔵した統合型非接触式ICカード10に、画面表示が可能な液晶パネルなどの表示手段や、音声情報を入出力するマイク、スピーカ、イヤホーンなどの音声入出力手段や、情報を入力するボタンやキーなどの操作手段や、情報を格納するメモリカードや大容量メモリなどからなる外部メモリなどを必要に応じて接続して構成している。
また、乗客が乗車する乗合車両2の各車両には、車載用管理装置20が設置されており、その車載用管理装置20は、乗客が携帯する携帯端末10Aに内蔵の統合型非接触式ICカード10との間で情報の読み書き(例えばDSRC方式に準拠した車内通信)が可能なカードリーダ/ライタを有し、かつ、車内LAN61と接続された他の車両内の車載用管理装置20との通信や、更には、路線の側(近傍)に設定の路側機40、41との間の車外通信(DSRC方式などの路車間通信)が可能な通信手段を有することにより、乗客に対して、車内LAN61やDSRC方式による車内通信及び車外通信を用いた多彩な情報サービスの提供を可能としている。
まず、情報サービスの一例として、前述したように、センタ装置50が配信する運行管理に関する各種情報(各種ニュース情報、交通情報、運行情報など)を、乗客の携帯端末10Aに送信して画面表示したり音声出力することにより、乗客に提供することができる。更には、センタ装置50として、PTSNやインターネットなどの公衆通信網や放送網とのゲートウェイ機能を備えた関門センタ装置を構成することも可能である。関門センタ装置においては、公衆通信網やインターネットを介して各種のサービスを提供するサーバ装置にアクセスすることができ、サービスアプリケーションの実行結果やWebページなどを携帯端末10Aに送信したり、放送網からの番組の映像情報なども配信することもできる。
即ち、乗客が携帯端末10Aの入力手段及び/又は音声入出力手段から入力した検索情報に応じて、運行管理を司るセンタ装置50から配信されるニュースや運行情報、あるいは、関門センタ装置から転送される公衆通信網や放送網からの情報を、車載用管理装置20を介して携帯端末10Aの表示手段及び/又は音声入出力手段に出力し、乗客の閲覧・視聴に供することができる。
図8の構成における情報サービスの異なる例として、例えば乗降車場内において携帯端末10Aを使用して実行中のアプリケーションを、車両に乗車した後でも、中断することなく引き続き実行することも可能である。統合型非接触式ICカード10を内蔵する携帯端末10Aは、例えばDSRC方式に準拠した通信方式で情報の送受信を行うことが可能であり、車両内の車載用管理装置20との間だけでなく、乗降車場構内において、当該乗降車場構内又はその近傍に設定されている路側機40との間で無線通信を行うことも可能である。
したがって、斯かる携帯端末10Aを携帯する乗客は、乗降車場構内において、携帯端末10Aを用いて、当該乗降車場構内又はその近傍の路側機40からネットワーク60を介して公衆通信網例えばインターネットを利用してアプリケーションを実行している途中で、乗車すべき乗合車両2が到着し、乗合車両2に乗車したとしても、アプリケーションを引き続き実行することができる。
即ち、乗合車両2に乗車した時点で、携帯端末10AのDSRC方式の通信相手を、乗降車場構内又はその近傍の路側機40から、乗合車両2の車載用管理装置20に切り替えて、DSRC方式の車内通信を中断することなく継続することが可能であり、乗合車両2の発車後でも、該車載用管理装置20からその近傍の路側機40、41への車外通信(路車間通信)を行わせることにより、当該乗客は、実行途中のアプリケーションを継続して実行することができる。
以上の各実施例に詳述したように、乗合車両2内に設置された車載用管理装置20と乗降車場内又はその近傍あるいは乗合車両が進行する路側に設置した路側機40との間で、光や電波を用いたDSRC方式などの路車間通信による車外通信としては、乗客が携帯する統合型非接触式ICカード10の使用可/不可や使用停止などに関する情報、各乗降車場での乗降車記録や乗車中の乗客数や車両IDや路線状況などの乗合車両の運行管理に関する情報や、又は、乗客向けの一般的な情報サービスに関する情報に限って送受信しており、運賃の決済そのものに直接関係する情報は一切扱っていないので、個人情報や金銭情報が漏洩するような危険性は全くない。
また、センタ装置50や乗降車場の管理装置や路側機40などを接続するネットワーク60も、不特定のユーザが利用可能な公衆ネットワークではなく、乗合車両を運用する事業者の専用ネットワークであり、情報が不用意に漏洩・盗聴されるような問題もない。
以上、本発明のセンタ装置を有する乗車管理システムの好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明のセンタ装置を有する乗車管理システム単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。