JP5306884B2 - 情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法、情報記録媒体用基板の製造方法、および、情報記録媒体の製造方法 - Google Patents

情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法、情報記録媒体用基板の製造方法、および、情報記録媒体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法、情報記録媒体用基板の製造方法、および、情報記録媒体の製造方法に関するものである。
情報記録媒体用基板や光学レンズ等の作製に用いられる板状のガラス半製品(いわゆる「ガラスブランク」)の作製方法として、ダイレクトプレス法が知られている。このダイレクトプレス法では、フィーダーパイプから連続的に流出する溶融ガラスを所定容量毎に下型上に供給した後、下型上の軟化状態のガラス塊(以下、「ガラスゴブ」と称す場合がある)を下型と上型とによりプレスする工程を経てガラスブランクを作製する。
光学レンズ用のガラスブランクの作製に際しては、プレス後の上型へのガラスの貼り付き防止することなどを目的として、上型からのガラスの剥離を促進するために、上型とガラスとの界面部分や、ガラスの端面側にガスを噴射する技術が提案されている(特許文献1〜3等参照)。また、胴型を用いた光学レンズ用のガラスブランクの作製に際しては、胴型に対してガスを吹き付ける技術も提案されている(特許文献4参照)。この技術では、ガスが吹きつけられた胴型を介して胴型内の高温状態のガラス成型品の周囲を均等に冷却して、成型品の歪の発生を防止すると共に、サイクルタイムの短縮も図っている。
特開平8−48531号公報(請求項1、段落番号0004、図1等)
特開2002−321931号公報(請求項2、段落番号0005、0035、0037、図6等)
特開2007−22852号公報(請求項1、段落番号0006、図4等)
特開平10−72223号公報(請求項1、段落番号0010、図1、図5等)
一方、情報記録媒体用基板(以下、単に「基板」と略す場合がある)の作製に用いられるガラスブランクには、後工程で基板に加工する際の研磨代をより小さくするために、より一層の薄肉化が求められている。しかしながら、これと同時にガラスブランクの平坦性も向上させなければ、後工程で研磨代をより小さくすることは困難である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、より薄肉のガラスブランクを作製する場合においても高い平坦性を有するガラスブランクを作製することができる情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法、並びに、これを用いた情報記録媒体用基板の製造方法および情報記録媒体の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法は、下型のプレス面上に供給された軟化状態の塊状ガラスを上型のプレス面と下型のプレス面とによりプレスすることにより、軟化状態の塊状ガラスを2つのプレス面間に略等方的に延伸させる塊状ガラス延伸工程と、2つのプレス面間に挟持された軟化状態の塊状ガラスが完全に延伸し終えて軟化状態の円板状ガラスとなった後に、軟化状態の円板状ガラスを上型のプレス面から剥離する剥離工程と、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍を、軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に冷却する冷却工程と、を少なくとも経て、情報記録媒体基板用ガラスブランクを製造し、上型のプレス面には複数のガス噴き出し穴が設けられており、複数のガス噴き出し穴が、剥離工程実施前の状態において上型のプレス面と軟化状態の円板状ガラスとが接触する円状の領域の外周側に沿って、軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に設けられており、かつ、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の冷却が、軟化状態の円板状ガラスが2つのプレス面間に挟持された状態において、複数のガス噴き出し穴から冷却用ガスを噴出させることにより行われると略同時に、軟化状態の円板状ガラスを上記上型のプレス面から剥離することを特徴とする。
本発明の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法の一実施態様は、冷却工程において、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍が、歪点以上で、かつ、軟化状態の円板状ガラスのガラス転移温度未満の範囲内にまで冷却されることが好ましい。
本発明の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法の他の実施態様は、剥離工程において、軟化状態の円板状ガラスと上型のプレス面全面とが同時に剥離することが好ましい。
本発明の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法の他の実施態様は、塊状ガラス延伸工程において、下型のプレス面上に供給される軟化状態の塊状ガラスの容量変動に関係無く、2つのプレス面の間隔を一定とした状態で、2つのプレス面間に挟持された軟化状態の塊状ガラスを完全に延伸させることが好ましい。
本発明の情報記録媒体用基板の製造方法は、本発明の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法により製造された情報記録媒体基板用ガラスブランクの少なくとも片面を、研削・研磨する工程を少なくとも経て、情報記録媒体用基板を製造することを特徴とする。
本発明の情報記録媒体用基板の製造方法の一実施態様は、研削・研磨工程を実施する前に、ガラスブランクを加熱することにより結晶化させる結晶化工程を有することが好ましい。
本発明の情報記録媒体の製造方法は、本発明の情報記録媒体用基板の製造方法により作製された情報記録媒体用基板の少なくとも片面に情報記録層を形成する情報記録層形成工程を少なくとも経て、情報記録媒体を製造することを特徴とする。
本発明によれば、より薄肉のガラスブランクを作製する場合においても高い平坦性を有するガラスブランクを作製することができる情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法、並びに、これを用いた情報記録媒体用基板の製造方法および情報記録媒体の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係る情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法で製造されるガラスブランクのアスペクト比の定義を説明するための説明図であり、円板状の薄肉部のみからなるガラスブランクの直径方向の断面図を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法で製造されるガラスブランクのアスペクト比の定義を説明するための説明図であり、円板状の薄肉部と、この薄肉部の直径方向中央部に薄肉部の片面に凸を成すように設けられた厚肉部とからなるガラスブランクの直径方向の断面図を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法で製造されるガラスブランクのアスペクト比の定義を説明するための説明図であり、円板状の薄肉部と、この薄肉部の直径方向周縁部に薄肉部の片面に凸を成すように設けられた厚肉部とからなるガラスブランクの直径方向の断面図を示す断面図である。 本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法に用いられる上型のプレス面の一例を示す平面図である。 本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法に用いられる上型のプレス面の他の例を示す平面図である。 本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法に用いられる上型のプレス面の他の例を示す平面図である。 胴型を用いた従来の非サイドフリープレス方式のダイレクトプレス法の一例を示す説明図である。
(情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法)
本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法は、下型のプレス面上に供給された軟化状態の塊状ガラスを上型のプレス面と下型のプレス面とによりプレスすることにより、軟化状態の塊状ガラスを2つのプレス面間に略等方的に延伸させる塊状ガラス延伸工程と、2つのプレス面間に挟持された軟化状態の塊状ガラスが完全に延伸し終えて軟化状態の円板状ガラスとなった後に、軟化状態の円板状ガラスを上型のプレス面から剥離する剥離工程と、剥離工程の、実施直前、実施と同時および実施直後の3つから選択される少なくともいずれかの時点で、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍を、軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に冷却する冷却工程と、を少なくとも経て、情報記録媒体基板用ガラスブランクを製造することを特徴とする。
本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法では、上述した冷却工程において、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍が、軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に冷却される。このため、軟化状態の円板状ガラスの外周側が先に冷却されて固化する。そして、この外周部の固化は、円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に起こる。この際、円板状ガラスの固化していない内周側の領域に対して、円板状ガラスの中心部から外周側へと略対称的に引っ張るような張力が作用する。したがって、この時点で円板状ガラスがより平坦化する。そして、この状態を維持したまま、円板状ガラスの全体が、徐々に冷却されて内周側の領域の固化が起こることで、成型物(情報記録媒体用ガラスブランク)の形状が固定される。したがって、本実施形態の情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法では、高い平坦性を有するガラスブランクを得ることができる。
なお、本実施形態の情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法は、直径d(mm)に対する厚みt(mm)の比(アスペクト比、t/d)のより小さい情報記録媒体用ガラスブランク(以下、単に「ガラスブランク」と略す場合がある)を製造する上で特に好適である。この理由は以下の通りである。まず、プレス直後の軟化状態の円板状ガラスは、上型のプレス面との微妙な剥離/粘着ムラや、上型や下型のプレス面内の微妙な温度ムラにより、大なり小なり、円板状ガラス面内に発生する張力に非対称性が生じると考えられる。しかし、アスペクト比の大きなガラスブランクを作製する場合は、アンバランスな張力が円板状ガラス面内に発生しても、その影響を受けにくく、比較的高い平坦性を維持するのが容易である。これに対して、アスペクト比の小さなガラスブランクを作製する場合は、アンバランスな張力が円板状ガラス面内に発生すると、その影響を大きく受けてしまい、平坦性が悪化しやすい。
このような観点からは、本実施形態の情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法では、アスペクト比(t/d)が、0.020以下のガラスブランクを作製することが好ましく、アスペクト比(t/d)が、0.012以下のガラスブランクを作製することがより好ましい。なお、本実施形態の情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法により製造するガラスブランクのアスペクト比(t/d)の下限は特に限定されるものではないが、実用上、0.010以上であることが好ましい。
なお、ガラスブランクは、全面が平坦な円板状基板のみならず、部分的に厚肉部を設けたものも存在する。このような厚肉部を部分的に有するガラスブランクでは、ガラスブランクの厚みtは、薄肉部の厚みを基準とする。以下にアスペクト比の定義を図面を用いてより具体的に説明する。図1〜図3は、アスペクト比の定義を説明するための説明図である。ここで、図1は、円板状の薄肉部1のみからなるガラスブランク10の直径方向の断面を示す断面図であり、図2は、円板状の薄肉部1と、この薄肉部1の直径方向中央部の片面に凸を成すように設けられた円形状の厚肉部2とからなるガラスブランク12の直径方向の断面を示す断面図であり、図3は、円板状の薄肉部1と、この薄肉部1の直径方向周縁部の片面に凸を成すように設けられたリング状の厚肉部3とからなるガラスブランク14の直径方向の断面を示す断面図である。図1〜図3に例示するように、本発明における「アスペクト比」とは、厚肉部2、3の有無に関係無く、ガラスブランク10、12、14の最大径(直径d)と薄肉部1の厚みtとを基準として求められる値を意味する。
冷却工程における軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の冷却は、円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に実施されればよいが、平坦性をより向上させる観点からは円板状ガラスの中心部を基準として略等方的に実施することが好ましい。ここで、「対称的」とは、円板状ガラスの外周端近傍の一部を選択的に冷却する場合において、円板状ガラスの外周端近傍の冷却される領域が、円板状ガラスの中心部を基準として360度を整数nで割った角度毎に存在することを意味する。ここで、対称性の高さを示す整数nは、2以上であるが、より高い平坦性を得る観点からは4以上であることが好ましく、6以上がより好ましい。また、「等方的」とは、実質的に、整数nが無限大の値を取り「対称性」が極大となった状態を意味し、この場合は、円板状ガラスの外周端近傍を全周に沿って冷却することを意味する。
なお、冷却工程において、(A)円板状ガラスの外周端近傍の冷却が局所的に偏っていたり、(B)過剰冷却である場合、外周端内側にいわゆるヒケと呼ばれる冷却時の体積収縮による窪みが発生することがある。そして、窪みの発生により、結果的にガラスブランクの平面度が低下する。しかしながら、本実施形態の情報記録媒体用ガラスブランクの製造方法では、円板状ガラスの外周端近傍の冷却は、円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に実施されるため、冷却が局所的に偏るのを抑制できる。このような冷却の局所的な偏り防止は、円板状ガラスの中心部を基準として冷却位置や冷却範囲、上述した対称性の高さを示す整数nの値を適宜選択することで調整できる。また、過剰冷却に関しては、冷却の度合を適宜調整することで抑制できる。なお、窪みの発生をより確実に抑制するためには、必要に応じてプレス面の形状を補正した上型や下型を利用してもよい。ここで、プレス面形状の補正は、冷却時におけるガラスの局所的な体積収縮を考慮して適宜決定することができる。また、冷却工程においては、円板状ガラスの外周端近傍の冷却は、円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に実施されるため、円板状ガラスに中心対称な張力を発生させることができる。しかしながら、こうした冷却をより確実に行うには、冷却が円板状ガラスの周辺から中心に向かって、リング状に徐々に進行するように冷却位置や冷却範囲、冷却度合を調整することが好ましい。
また、冷却工程において、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍は、歪点以上で、かつ、徐冷点以下の範囲内にまで冷却されることがより好ましい。冷却が当該温度範囲内となるように実施されることで、円板状ガラスの面内により効果的に張力を発生させることができる。このため、ガラスブランクの平坦性をより向上させることができる。
冷却方法における円板状ガラスの外周端近傍の冷却方法としては特に限定されず、公知の冷却方法が利用でき、たとえば、冷却用部材を円板状ガラスの外周端近傍に接触させて冷却する方法や、冷却用ガスを円板状ガラスの外周端近傍に吹き付けて冷却する方法が利用できる。しかしながら、本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法では、実用上、後者の冷却方法を採用することが好ましい。
この場合、冷却用ガスを噴出するガス噴き出し穴(又はノズル)は、上型や下型の近傍や、上型や下型のプレス面に配置することができる。なお、いずれの位置にガス噴き出し穴(又はノズル)を配置する場合でも、ガス噴き出し穴(又はノズル)は、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍を、軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に冷却できるように配置される。なお、冷却用ガスとしては、窒素ガスや空気など公知のガスが利用できるが、通常は空気を用いることが好ましい。また、冷却効率を高めるために、気体と水粒子とを混合した混合ガスを用いたり、高湿度の空気を用いてもよい。冷却用ガスを吹き付ける際のガスの温度としては特に限定されず、常温前後としてもよいが、必要に応じて所定の温度に調整しておいてもよい。
また、ガス噴き出し穴(又はノズル)を利用して冷却を行う場合、上型のプレス面に複数のガス噴き出し穴を設けることが好ましい。この場合、冷却工程において、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の冷却を、この複数のガス噴き出し穴から冷却用ガスを噴出させることにより行うことができる。なお、上型のプレス面に設けられるガス噴き出し穴の配置態様としては、たとえば、(1)剥離工程実施前の状態において上型のプレス面と軟化状態の円板状ガラスとが接触する円状の領域(以下、「プレス時接触領域」と略す場合がある)の外周側に沿って、軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的(又は略等方的)に設ける態様(第1の配置態様)や、(2)剥離工程実施前の状態においてプレス時の接触領域内の最外周側に沿って、軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的(又は略等方的)に設ける態様(第2の配置態様)が挙げられる。また、この他にも、プレス時の接触領域の輪郭線上に略一致するようにガス噴き出し穴を設ける態様や、以上に例示した3つの態様のうちのいずれか2つ以上を組み合わせた態様なども挙げることができる。
図4〜6は、本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法に用いられる上型のプレス面の一例を示す平面図である。ここで、図4は、第1の配置態様でプレス面に複数のガス噴き出し穴が設けられた一例を示す平面図であり、図5は、第1の配置態様でプレス面にガス噴き出し穴が設けられた他の例を示す平面図であり、図6は、第2の配置態様でプレス面に複数のガス噴き出し穴が設けられた一例を示す平面図である。
図4に示す上型20は、そのプレス面30に円形状のガス噴き出し穴40が複数設けられている。各々のガス噴き出し穴40は、上型20内に配置されたガス供給管(図中、不図示)に通じている。そして、冷却工程を実施する場合には、不図示の高圧ガス供給源からガス供給管を介して各々のガス噴き出し穴40から冷却用ガスを噴出する。また、複数のガス噴き出し穴40は、プレス面30内において、プレス時の接触領域32の外周側に沿って配置されている。この場合、たとえば、図4に示すように複数のガス噴き出し穴40は、所定の数づつ、6つのグループ40A、40B、40C、40D、40Eおよび40Fに分けて、ガス噴き出し穴グループ40A、40B、40C、40D、40Eおよび40Fを、この順にプレス時の接触領域32の外周側に沿って、プレス時接触領域32の中心点34に対して時計回り方向に90度毎に配置することができる。あるいは、図5に示すように複数のガス噴き出し穴40を、プレス時の接触領域32の外周側に沿って等間隔で配置することもできる。また、6つのガス噴き出し穴グループ40A、40B、40C、40D、40Eおよび40Fを、図4に示すようにプレス時の接触領域32の外周側では無く、図6に示すようにプレス時の接触領域32内の最外周側に沿って配置することもできる。
なお、プレス面に設けるガス噴き出し穴40の形状は、図4〜図6に示すように、円形状であってもよいが、この他にも、たとえば、楕円状、多角形状等であってもよく、また、線状であってもよい。ガス噴き出し穴40の形状が円形状である場合、その穴径は特に限定されないが、実用上0.2mm〜0.4mm程度の範囲とすることが好ましい。また、ガス噴き出し穴40の数も特に限定されないが、実用上20個〜100個程度の範囲内とすることが好ましい。また、ガス噴き出し穴40の中心点からプレス時の接触領域32の輪郭線までの最短距離は、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。これにより円板状ガラスの外周端近傍をより効率的かつ選択的に冷却することができる。
ここで、上型のプレス面に設けられるガス噴き出し穴の配置態様が、図4や図5に例示したように第1の配置態様である場合、冷却工程は、たとえば、以下の(A)または(B)に示す方式で実施することができる。
(A)軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の冷却が、軟化状態の円板状ガラスが2つのプレス面間に挟持された状態において、複数のガス噴き出し穴から冷却用ガスを噴出させると略同時に、軟化状態の円板状ガラスを上型のプレス面から剥離する剥離工程も実施する方式。
(B)軟化状態の円板状ガラスを上型のプレス面から剥離する剥離工程を実施して、円板状ガラスを上型から一旦剥離した後、円板状ガラスのやや上方で上型を停止させた状態で、複数のガス噴き出し穴から冷却用ガスを噴出させて軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の冷却を実施する方式。
また、上型のプレス面に設けられるガス噴き出し穴の配置態様が、図6に例示したように第2の配置態様である場合、冷却工程は、たとえば、以下の(C)または上記(B)に示す方式で実施することができる。
(C)軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の冷却が、軟化状態の円板状ガラスが2つのプレス面間に挟持された状態において、複数のガス噴き出し穴から冷却用ガスを噴出させると略同時に、このガスの噴出力も利用して軟化状態の円板状ガラスを上型のプレス面から剥離する剥離工程も実施する方式。
なお、ガス噴き出し穴40は、下型のプレス面側のみ、または、上型のプレス面に加えて下型のプレス面側にも、図4〜6に例示したような態様で配置してもよい。しかしながら、プレス面にガス噴き出し穴40を設ける場合は、上型のプレス面側のみとすることが最も好ましい。下型のプレス面側にガス噴き出し穴40を設けた場合、軟化状態の円板状ガラスが浮き上がってしまい、結果として、反りや変形が発生してしまうおそれもあるためである。
また、冷却用ガスによる軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の冷却は、冷却用ガスを図4〜6に例示したように円板状ガラスの直径方向と垂直な方向側(縦方向)から吹き付ける態様(以下、「縦吹き付け」と称す場合がある)ではなく、特許文献1〜4に例示されるように直径方向と平行な方向側(横方向)から吹き付ける態様(以下、「横吹き付け」と称す)であってもよい。しかし、本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法では、横吹き付けよりも縦吹き付けにより、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍を冷却することがより好ましい。この理由は以下のとおりである。
すなわち、本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法では、光学ガラス用の肉厚のガラスブランクではなく、情報記録媒体基板用の肉薄のガラスブランクを作製する。これは、特許文献1〜4に示されるような肉厚の光学ガラス用ガラスブランクを作製する場合よりも、情報記録媒体基板用ガラスブランクを作製する場合の方が、プレス時における上型と下型との間に形成される隙間が非常に小さくなることを意味する。よって、プレス時に、軟化状態のガラスブランクの外周側から中心部へと向かうように、横方向から冷却用ガスを軟化状態のガラスブランクの外周端近傍に吹き付けて冷却を行った場合、光学ガラス用ガラスブランクでは、上型と下型との間に形成される隙間が大きいため 上型と下型との間に噴出させた冷却用ガスが縦方向に逃げることが容易である。
これに対して、情報記録媒体基板用ガラスブランクでは、上型と下型との間に形成される隙間が小さいため、上型と下型との間に噴出させた冷却用ガスが縦方向に逃げることは困難である。しかし、縦吹き付けを採用すれば、プレス時に、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍に吹き付けられた冷却用ガスは、縦方向に逃げることはできなくても、円板状ガラスの外周端近傍から離れる方向へと容易に逃げることができる。言い換えれば、本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法では、横吹き付けよりも縦吹き付けの方が、上型と下型との間に噴出させた冷却用ガスの逃げ道が確保し易いといえる。
このため、横吹き付けではなく、縦吹き付けを採用した場合、a)対称的に冷却するのがより容易である、b)十分な量の冷却用ガスを吹き付けるのがより容易である、c)冷却用ガスが、冷却用ガラスの外周端近傍に到達するまでの間に、加熱された上下のプレス面をガスが通過する過程で余熱されて、冷却効果が減殺されることが無いというメリットがある。そして、結果として、横吹き付けではなく、縦吹き付けを採用した場合の方が、より高い平坦性を有するガラスブランクを得ることができる。また、図4〜図6に例示したように上型のプレス面側から冷却用ガスを吹き付ける場合は、さらに、上型と、軟化状態の円板状ガラスとの剥離性も向上させることができる。
また、ダイレクトプレス法では、塊状ガラス延伸工程および剥離工程(以下、両工程を合わせて「プレス工程」と称す場合がある)に用いられる成形型として、たとえば、図7に示すものを用いることができる。図7に例示する成形型は、ガラスブランクの両面を形成するために用いる上型26および下型28の他に、プレス時に軟化状態の塊状ガラス60のプレス面方向への延伸を規制するために胴型50を組み合わせて用いている。本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法においても、軟化状態の塊状ガラスのプレス面方向への自由な延伸を規制する胴型50等の規制部材を用いたプレス方式(非サイドフリープレス方式)を採用することも可能である。しかしながら、本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法においては、軟化状態の塊状ガラス60のプレス面方向、すなわち、外周方向への延伸を規制する胴型50等の規制部材を用いないプレス方式(サイドフリープレス方式)を採用することが特に好ましい。この理由は以下の2つである。
まず、第一の理由としては、サイドフリープレス方式では、剥離工程において、軟化状態の円板状ガラスと上型のプレス面全面とが同時に剥離することが挙げられる。図7に示すように非サイドフリープレス方式で用いる情報記録媒体基板用のガラスブランクを作製するプレス装置では、上型26が外枠52内に上下に移動可能に配置された構造を有しているものもある。この場合、非サイドフリープレス方式における剥離工程は、軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の上面部分を外枠52で押さえたまま、上型26と円板状ガラスとの剥離が行われる。一方、剥離直前の円板状ガラスと上型26のプレス面との間には、大なり小なり粘着力が作用している。このため、剥離に際しては円板状ガラスの中央部を引っ張り上げるような力が作用することになる。それゆえ、非サイドフリープレス方式では、アスペクト比が小さなガラスブランクを作製しようとするほど平面度が悪化しやすくなる可能性がある。しかしながら、サイドフリープレス方式では、円板状ガラスの全面と上型のプレス面全面とが同時に剥離するため、このような問題は発生しえない。
また、第二の理由としては、サイドフリープレス方式では、プレス時に軟化状態の塊状ガラスのプレス面方向への自由な延伸が規制されないことが挙げられる。すなわち、サイドフリープレス方式では、塊状ガラス延伸工程において、下型のプレス面上に供給される軟化状態の塊状ガラスの容量変動に関係無く、2つのプレス面の間隔を一定とした状態で、2つのプレス面間に挟持された軟化状態の塊状ガラスを完全に延伸させることができる。それゆえ、下型28のプレス面上に供給される軟化状態のガラス塊60の容量が多少変動したとしても、プレス時に上型26および下型28のプレス面間の距離を一定に保ちつつ、ガラス塊60の容量変動を、ガラスブランクの外径ばらつきとして吸収させることができる。したがって、サイドフリープレス方式を採用した場合、非サイドフリープレス方式を採用した場合よりもガラスブランク間の厚みばらつきを小さくすることができ、結果として後工程である研磨工程の負荷をより小さくすることができる。
また、プレス工程を実施する前に下型のプレス面に窒化ホウ素(BN)などの耐熱性の固体潤滑剤粉末を付着させてもよい。これにより、下型のプレス面上に供給された塊状ガラスとプレス面との潤滑性が向上するため、プレス時に塊状ガラスをより薄くプレスすることが容易になる。
プレスに用いる上型および下型としては、冷却用ガスを噴出させるガス噴き出し穴を設ける点を除けば、ガラスのプレス成型に利用できる成形型であれば公知のものが利用できる。なお、図2や図3に例示したように、部分的に厚肉部を有するガラスブランクを作製する場合は、この厚肉部2,3に対応するようにプレス面に凹部を設けた成形型が利用できる。また、プレス時のプレス面へのガラスの貼り付きをより確実に抑制するために、プレス面には、ダイヤモンドライクカーボンや、酸化クロム、ニッケル合金などの酸化防止膜を設けてもよい。特に上型のプレス面に酸化防止膜を設けた場合、より確実に貼り付きや変形を抑制することができる。
次に、プレス工程も含めた本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法の典型例について以下に説明する。まず、溶解、清澄され、攪拌均一化されたガラス材料からなる溶融ガラスを、流出ノズルから一定の流出速度で連続して排出させ、この溶融ガラス流をシアと呼ばれる切断機によって、常に一定質量の軟化状態のガラス塊が得られるように周期的に切断する。切断された軟化状態のガラス塊は、流出ノズル直下で待機している下型のプレス面上に供給(キャスト)される。流出ノズルから排出される溶融ガラスは、軟化した状態であり、その粘度は0.3〜100Pa・s程度である。なお、下型の温度はガラス塊の温度よりも低温ではあるが、ガラス塊の温度が急降下してプレス不能とならない温度に調温される。なお、下型のプレス面には、キャストされる溶融ガラスのプレス面に対する潤滑性を向上させるために、必要に応じて予め窒化ホウ素(BN)粉末などの固体潤滑剤を付着させておいてもよい。
上記キャストが終わって軟化状態のガラスをそのプレス面上に載置した下型は、上型が待機しているプレス位置に移送されて、上型および下型によりプレス成形される。この際の上型および下型の温度、プレス圧力、プレス時間は、ガラス転移温度等のガラスの熱物性や、作製するガラスブランクの直径・厚み、サイドフリープレス方式か否か等を考慮して適宜設定する。たとえば、下型の温度を、350〜650℃の範囲とし、上型温度を、250〜550℃で、かつ、下型温度〜[下型温度−100℃]の範囲に設定することができる。プレス時の加圧力については数GPa程度を目安にできるが、特にこの範囲に限定されるものではなく、適宜調整することができる。
プレス成形を終えると、成形品の上面が上型から離型され、成形品を載置した下型はテイクアウトを行う位置に移送される。なお、プレス位置とテイクアウト位置との間で下型を停留させて、下型上の成形品の上面を押し型で押圧し、成形品の反りを修正してからテイクアウト位置に下型と共に移送してもよい。成形品は、テイクアウト位置に移送されるまでの間に、ガラス転移温度付近あるいはガラス転移温度より低い温度にまで冷却される。これはテイクアウトの際に加わる力によって、成形品が変形してしまうのを防ぐためである。テイクアウトは、成形品の上面を吸着手段で吸着保持して行われる。テイクアウトされた成形品は、大気中で急冷されたのち、除歪するためにアニール炉に入れられてアニールされる。そして、このような一連の工程を経ることでガラスブランクを得ることができる。
本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法により作製されるガラスブランクのガラス組成としては、これを用いて作製される基板や情報記録媒体に応じて適宜選択できるが、たとえば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラスなどを挙げることができる。また、これらのガラスは加熱処理により結晶化する結晶化ガラスであってもよい。
なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiOが58質量%以上75質量%以下、Alが5質量%以上23質量%以下、LiOが3質量%以上10質量%以下、NaOが4質量%以上13質量%以下を主成分として含有するアルミノシリケートガラス(ただし、リン酸化物を含まないアルミノシリケートガラス)を用いてよい。たとえば、SiOが62質量%以上75質量%以下、Alが5質量%以上15質量%以下、LiOが4質量%以上10質量%以下、NaOが4質量%以上12質量%以下、ZrOが5.5質量%以上15質量%以下を主成分として含有するとともに、NaO/ZrOの質量比が0.5以上2.0以下、Al/ZrOの質量比が0.4以上2.5以下であるリン酸化物を含まないアモルファスのアルミノシリケートガラスとしてよい。なお、CaOやMgOといったアルカリ土類金属酸化物を含まないガラスであることが望ましい。このようなガラスとしては、HOYA株式会社製のN5ガラス(商品名)を挙げることができる。
(情報記録媒体用基板の製造方法)
上述した本実施形態の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法により作製されたガラスブランクについては、このガラスブランクの少なくとも片面を研削・研磨する研削・研磨工程を少なくとも経て、情報記録媒体用基板を作製する。また、ガラスブランクを構成するガラスが熱処理により結晶化可能なガラス組成を有する場合は、上記工程の他に、ガラスブランクを加熱することにより結晶化させる結晶化工程を組み合わせることもできる。なお、情報記録媒体用基板の製造の一典型例としては、たとえば、(1)第1ラッピング工程、(2)切り出し工程(コアリング、フォーミング)、(3)端面研削工程、(4)第2ラッピング工程、(5)端面研磨工程、(6)主表面研磨工程、(7)化学強化工程および冷却工程、(8)精密洗浄工程、をこの順に実施することできる。以下、これら8つの工程についてより具体的に説明する。
(1)第1ラッピング工程
第1ラッピング工程では、ガラスブランクの両主表面をラッピング加工することで、ディスク状のガラス素板を得る。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行うことができる。具体的には、ガラス素板の両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液をガラス素板の主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行うことができる。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス素板が得られる。
(2)切り出し工程(コアリング、フォーミング)
次に、ダイヤモンドカッタを用いてガラス素板を切断し、このガラス素板から、円盤状のガラス基板を切り出す。次に、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に円孔を形成し、ドーナツ状のガラス基板を得る(コアリング)。
(3)端面研削工程
そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施す(フォーミング)。
(4)第2ラッピング工程
次に、得られたガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行う。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができる。
(5)端面研磨工程
次に、ガラス基板の端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行う。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いることができる。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面から、パーティクル等の発塵を防止できる。
(6)主表面研磨工程
主表面研磨工程の前半工程として、まず第1研磨工程を実施する。この第1研磨工程は、前述のラッピング工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とする。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行う。研磨液としては、たとえば、酸化セリウム砥粒を用いることができる。そして、この第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄する。
次に、主表面研磨工程の後半工程として、第2研磨工程を実施する。この第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、主表面の鏡面研磨を行うことができる。研磨液としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒を用いることができる。この第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄する。なお、各洗浄槽には、超音波を印加する。
(7)化学強化工程および冷却工程
情報記録媒体用基板の作製に用いるガラスブランクが、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属を含むガラスからなる場合は、前述のラッピング工程および研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施すのが好ましい。化学強化工程を行うことにより、情報記録媒体用基板の表層部に高い圧縮応力を生じさせることができる。このため、情報記録媒体用基板の表面の耐衝撃性を向上させることができる。このような化学強化処理は、情報を記録再生するヘッドが、機械的に情報記録媒体表面に接触する可能性のある磁気記録媒体を作製する上で非常に好適である。
化学強化は、硝酸カリウムと硝酸ナトリウムを混合した化学強化溶液を準備し、この化学強化溶液を加熱しておくとともに、洗浄済みのガラス基板を予熱し、化学強化溶液中に浸漬することによって行う。このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオンおよびナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオンおよびカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。
続いて、化学強化工程を終えたガラス基板を、水槽に浸漬して冷却し、しばらくの間維持する。そして、冷却を終えたガラス基板を、加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行う。さらに、硫酸洗浄を終えたガラス基板を、純水、IPA(イソプロピルアルコール)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄する。なお、各洗浄槽には超音波を印加する。
(8)精密洗浄工程
次に、研磨剤残渣や外来の鉄系コンタミなどを除去し、ガラス基板の表面をより平滑かつ清浄にするために、精密洗浄工程を実施するのが好ましい。このような精密洗浄工程の実施は、情報を記録再生するヘッドが、機械的に情報記録媒体表面に接触する可能性のある磁気記録媒体を作製する上で非常に好適である。精密洗浄の実施によりヘッドクラッシュやサーマルアスペリティの発生を抑制できるためである。なお、精密洗浄工程としては、アルカリ性水溶液による洗浄の後に、水リンス洗浄、IPA洗浄工程を行うようにしてもよい。
これらの一連の工程を経て作製された情報記録媒体用基板の表面粗さは、Raでサブナノメーターのオーダーとすることができる。なお、表面粗さは、主表面研磨条件や洗浄条件を選択することにより適宜調整することができる。なお、以上、8つの工程を経て得られた情報記録媒体用基板は、公知の磁気記録、光記録、光磁気記録等の公知の各種記録方式を採用した情報記録媒体の作製に用いることができるが、特に磁気記録媒体の作製に用いることが好適である。また、磁気記録媒体用基板ほどに、情報記録媒体用基板表面の清浄性、平滑性、耐衝撃性が要求されない用途の情報記録媒体用基板の場合は、必要に応じて上記8つの工程の一部を実施しなくてもよいし、また、各工程をより簡略化したり、よりラフな条件で実施してもよい。
(情報記録媒体の製造方法)
このようにして得られた情報記録媒体用基板の少なくとも片面に、情報記録層を形成する情報記録層形成工程を少なくとも経ることで、情報記録媒体を製造することができる。なお、磁気記録媒体を作製する場合は、情報記録層として磁気記録層が設けられる。この磁気記録媒体は、水平磁気記録方式および垂直磁気記録方式のいずれであってもよいが、垂直磁気記録方式であることが好ましい。垂直磁気記録方式の磁気記録媒体を作製する場合は、たとえば、情報記録媒体用基板の両面に、Cr合金からなる付着層、FeCoCrB合金からなる軟磁性層、Ruからなる下地層、CoCrPt−TiO合金からなる垂直磁気記録層、水素化炭素からなる保護層、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑層を、この順に順次成膜することができる。なお、付着層、軟磁性層、下地層、垂直磁気記録層は、スパッタリング法により成膜することができ、保護層は、スパッタリング法やCVD法(Chemical Vapor Deposition法)により成膜することができ、潤滑層は浸漬塗布法により成膜することができる。また、付着層から保護層までの成膜は、各層の連続成膜が可能なインライン型または枚葉型のスパッタリング装置を用いることができ、潤滑層の成膜は浸漬塗布装置を用いることができる。
以下に、本発明について実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
アルミノシリケートガラスを溶融した溶融ガラスを、下型のプレス面上に供給した後、上型と下型とによりサイドフリー方式でプレスすることにより断面形状が図1に示す形状を有するガラスブランク10(薄肉部の厚みt=1.2mm、薄肉部の直径d=70mm、アスペクト比t/d=0.017)を作製した。ここで、このガラスブランク10の作製に際しては、図4に示すパターンでガス噴き出し穴40を設けた上型20を用いた。また、冷却工程は、プレス後に上型20が上方に移動するのと略同時(上型20と軟化状態の円板状ガラスとが剥離するのと略同時)に、ガス噴き出し穴40から常温の空気(供給圧力:約0.2MPa)を0.4秒間噴射することにより実施した。
この実施例1で用いた上型20のプレス面30の各部の主要な寸法は以下の通りである。
・プレス時の接触領域32の直径:70mm
・ガス噴き出し穴40の総数:48個
(各グループ40A、40B、40C、40D、40E、40F当たりの数:8個)
・ガス噴き出し穴40の直径:0.4mm
・プレス時の接触領域32の最外周−ガス噴き出し穴40の中心点との最短距離:0.5mm
・各グループ40A、40B、40C、40D、40E、40F内における隣接する2つのガス噴き出し穴40の中心点間の距離:5mm
また、ガラスブランク10を作製する際のその他の主要な製造条件は以下の通りである。
・ガラス転移温度Tg:485℃
・ガラスの平均線膨張係数:95×10−7/K(100〜300℃)、98×10−7/K(300〜Tg℃)、37×10−6/K(Tg〜530℃)、
・溶融ガラスを下型のプレス面上に供給する際のプレス面の温度:490℃
・下型上に投入される溶融ガラスの粘度:40Pa・s
・プレス時間(ガラスに圧力を加える時間):1秒
・上型および下型のプレス面を構成する材料:鋳鉄
・下型からガラスブランク10をテイクアウトする際のガラスブランク10の温度:470℃
・テイクアウト後のガラスブランク10の放置環境:常温大気中環境
(実施例2)
実施例1において、ガラスブランク10の薄肉部の厚みtを1.0mm(t/d=0.014)に変更し、これに合わせて下型のプレス面上に供給される溶融ガラスの量とプレス時の圧力を調整した以外は実施例1と同様にしてガラスブランク10を作製した。
(実施例3)
実施例1において、ガラスブランク10の薄肉部の厚みtを0.9mm(t/d=0.013)に変更し、これに合わせて下型のプレス面上に供給される溶融ガラスの量とプレス時の圧力を調整した以外は実施例1と同様にしてガラスブランク10を作製した。
(比較例1)
実施例1において、上型として、プレス面にガス噴き出し穴を有さない通常の上型を用い、冷却工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にしてガラスブランク10を作製した。
(比較例2)
実施例2において、上型として、プレス面にガス噴き出し穴を有さない通常の上型を用い、冷却工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にしてガラスブランク10を作製した。
(比較例3)
実施例3において、上型として、プレス面にガス噴き出し穴を有さない通常の上型を用い、冷却工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にしてガラスブランク10を作製した。
(平面度評価)
各実施例・比較例で作製したサンプルについて、平面度を評価した。結果を表1に示す。なお、平面度の評価は次のように実施した。まず、1000枚のサンプルについて、ガラスブランク10の平面度をサーフコム(株式会社東京精密製)により測定した。ここで、平面度は、面内の最大高低差として求め、平面度が30μmを超えたものを不良品としてカウントした。表1に示す評価基準は以下の通りである。
◎:不良品は発生せず。
○:1000枚当たり1枚以上3枚未満の不良品が発生
△:1000枚当たり3枚以上20枚未満の不良品が発生
×:1000枚当たり20枚以上の不良品が発生
Figure 0005306884
1 薄肉部
2、3 厚肉部
10、12、14 ガラスブランク
20、22、24、26 上型
28 下型
30 プレス面
32 プレス時の接触領域
34 プレス時の接触領域の中心点
40 ガス噴き出し穴
40A、40B、40C、40D、40E、40F ガス噴き出し穴グループ
50 胴型
52 外枠
60 軟化状態の塊状ガラス

Claims (7)

  1. 下型のプレス面上に供給された軟化状態の塊状ガラスを上型のプレス面と上記下型のプレス面とによりプレスすることにより、上記軟化状態の塊状ガラスを上記2つのプレス面間に略等方的に延伸させる塊状ガラス延伸工程と、
    上記2つのプレス面間に挟持された上記軟化状態の塊状ガラスが完全に延伸し終えて軟化状態の円板状ガラスとなった後に、上記軟化状態の円板状ガラスを上記上型のプレス面から剥離する剥離工程と、
    記軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍を、上記軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に冷却する冷却工程と、
    を少なくとも経て、情報記録媒体基板用ガラスブランクを製造
    上記上型のプレス面には複数のガス噴き出し穴が設けられており、
    上記複数のガス噴き出し穴が、上記剥離工程実施前の状態において上記上型のプレス面と上記軟化状態の円板状ガラスとが接触する円状の領域の外周側に沿って、上記軟化状態の円板状ガラスの中心部を基準として略対称的に設けられており、かつ、
    上記軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍の冷却が、上記軟化状態の円板状ガラスが上記2つのプレス面間に挟持された状態において、上記複数のガス噴き出し穴から冷却用ガスを噴出させることにより行われると略同時に、上記軟化状態の円板状ガラスを上記上型のプレス面から剥離することを特徴とする情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法。
  2. 請求項1に記載の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法において、
    前記冷却工程において、前記軟化状態の円板状ガラスの外周端近傍が、歪点以上で、かつ、前記軟化状態の円板状ガラスのガラス転移温度未満の範囲内にまで冷却されることを特徴とする情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法において、
    前記剥離工程において、前記軟化状態の円板状ガラスと前記上型のプレス面全面とが同時に剥離することを特徴とする情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法。
  4. 請求項1〜のいずれか1つに記載の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法において、
    前記塊状ガラス延伸工程において、下型のプレス面上に供給される前記軟化状態の塊状ガラスの容量変動に関係無く、前記2つのプレス面の間隔を一定とした状態で、前記2つのプレス面間に挟持された前記軟化状態の塊状ガラスを完全に延伸させることを特徴とする情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法。
  5. 請求項1〜のいずれか1つに記載の情報記録媒体基板用ガラスブランクの製造方法により製造された情報記録媒体基板用ガラスブランクの少なくとも片面を、研削・研磨する研削・研磨工程を少なくとも経て、情報記録媒体用基板を製造することを特徴とする情報記録媒体用基板の製造方法。
  6. 請求項に記載の情報記録媒体用基板の製造方法において、
    前記研削・研磨工程を実施する前に、前記ガラスブランクを加熱することにより結晶化させる結晶化工程を有することを特徴とする情報記録媒体用基板の製造方法。
  7. 請求項または請求項に記載の情報記録媒体用基板の製造方法により作製された情報記録媒体用基板の少なくとも片面に情報記録層を形成する情報記録層形成工程を少なくとも経て、情報記録媒体を製造することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
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