JP2008174402A - ガラス基板成形用金型、ガラス基板の製造方法、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法及び情報記録媒体の製造方法 - Google Patents

ガラス基板成形用金型、ガラス基板の製造方法、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法及び情報記録媒体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融ガラスをプレス成形して情報記録媒体に用いるガラス基板を製造するためのガラス基板成形用金型において、離型の際のガラス基板の張り付きを抑制し、ガラス基板の割れやクラックの発生を防止することができるガラス基板成形用金型等を提供する。
【解決手段】溶融ガラスを受容する第1の成形面を有する下型と、第1の成形面との間で前記溶融ガラスを加圧するための第2の成形面を有する上型と、を備えたガラス基板成形用金型。第1の成形面及び第2の成形面の少なくとも一方は凸面であり、溶融ガラスを加圧する時点における第1の成形面と第2の成形面との間隙量が、ガラス基板の中心部となる位置で最小となる。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶融ガラスをプレス成形して情報記録媒体に用いるガラス基板を製造するためのガラス基板成形用金型、該成形用金型を用いたガラス基板の製造方法、該製造方法で製造したガラス基板を用いた情報記録媒体用ガラス基板の製造方法及び情報記録媒体の製造方法に関する。
磁気、光、光磁気等の性質を利用した記録層を有する情報記録媒体のなかで、代表的なものとして磁気ディスクがある。磁気ディスク用基板として、従来アルミニウム基板が広く用いられていた。しかし、近年、記録密度向上のための磁気ヘッド浮上量の低減の要請に伴い、アルミニウム基板よりも表面の平滑性に優れ、しかも表面欠陥が少ないことから磁気ヘッド浮上量の低減を図ることができるガラス基板を磁気ディスク用基板として用いる割合が増えてきている。
このような磁気ディスク等の情報記録媒体用ガラス基板は、ブランク材と呼ばれるガラス基板に研磨加工等を施すことによって製造される。ガラス基板は、プレス成形によって製造する方法や、フロート法等によって作製された板ガラスを切断して製造する方法等が知られている。これらの方法うち、溶融ガラスを直接プレス成形することによってガラス基板を製造する方法は、特に高い生産性が期待できることから注目されている。
しかし、プレス成形によってガラス基板を製造する方法においては、上下の金型でプレス成形した後、成形されたガラス基板が金型に強く張り付いてしまい、離型の際にガラス基板が割れたり、クラックが発生する場合があるという問題があった。
溶融ガラスをプレス成形する方法ではなく、ガラス素材を加熱・軟化させてプレス成形し、ガラス基板を成形する方法においては、上型に設けた直径1mm程度の貫通孔から不活性気体等を供給してガラス基板を離型する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2002−187727号公報
しかしながら、溶融ガラスを直接プレス成形してガラス基板を製造する方法は、ガラス素材を加熱・軟化させてプレス成形する方法と比較して、プレス開始時点のガラスの粘性が非常に低いという特徴がある。そのため、溶融ガラスを直接プレス成形してガラス基板を製造する方法において上記のような貫通孔を有する金型を用いると、貫通孔に溶融ガラスが入り込むためガラス基板に凸部が生じてしまい、研磨等の後工程に余分な時間と労力を要するという問題があった。また、貫通孔に入り込んだガラスが起点となってガラス基板に割れやクラックが発生し易いという問題もあった。
本発明は上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、溶融ガラスをプレス成形して情報記録媒体に用いるガラス基板を製造するためのガラス基板成形用金型において、離型の際のガラス基板の張り付きを抑制し、ガラス基板の割れやクラックの発生を防止することができるガラス基板成形用金型を提供することである。更に、本発明の別の目的は、該ガラス基板成形用金型を用いたガラス基板の製造方法、該製造方法で製造したガラス基板を用いた情報記録媒体用ガラス基板の製造方法及び情報記録媒体の製造方法を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
1. 溶融ガラスを受容する第1の成形面を有する下型と、前記第1の成形面との間で前記溶融ガラスを加圧するための第2の成形面を有する上型とを備え、前記溶融ガラスをプレス成形して情報記録媒体に用いるガラス基板を製造するためのガラス基板成形用金型において、前記第1の成形面及び前記第2の成形面の少なくとも一方は凸面であり、前記溶融ガラスを加圧する時点における前記第1の成形面と前記第2の成形面との間隙量が、前記ガラス基板の中心部となる位置で最小となることを特徴とするガラス基板成形用金型。
2. 前記ガラス基板の最外周部となる位置における前記間隙量と、中心部となる位置における前記間隙量との差が3μm〜100μmであることを特徴とする前記1に記載のガラス基板成形用金型。
3. 溶融ガラスを受容する第1の成形面を有する下型と、前記第1の成形面との間で前記溶融ガラスを加圧するための第2の成形面を有する上型とを備えたガラス基板成形用金型を用いて情報記録媒体に用いるガラス基板を製造するガラス基板の製造方法において、前記下型が有する第1の成形面に溶融ガラスを供給する溶融ガラス供給工程と、前記第1の成形面及び前記第2の成形面で前記溶融ガラスを加圧しながら冷却してガラス基板を得る加圧工程と、前記加圧工程の後、前記ガラス基板への加圧を解除して型開きを行う離型工程と、を有し、前記第1の成形面及び前記第2の成形面の少なくとも一方は凸面であり、前記溶融ガラスを加圧する時点における前記第1の成形面と前記第2の成形面との間隙量が、前記ガラス基板の中心部となる位置で最小となることを特徴とするガラス基板の製造方法。
4. 前記ガラス基板の最外周部となる位置における前記間隙量と、中心部となる位置における前記間隙量との差が5μm〜100μmであることを特徴とする前記3に記載のガラス基板の製造方法。
5. 前記3又は4に記載のガラス基板の製造方法により製造されたガラス基板を研磨する工程を有することを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
6. 前記5に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法により製造された情報記録媒体用ガラス基板に記録層を形成する工程を有することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
本発明によれば、溶融ガラスの中心部分の冷却速度を速めることができ、その結果、ガラス基板の張り付きを抑制することができる。従って、溶融ガラスをプレス成形して情報記録媒体に用いるガラス基板を製造する方法において、離型の際のガラス基板の割れやクラックの発生を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(ガラス基板成形用金型)
図1は、本発明のガラス基板成形用金型の例を示す図である。ガラス基板成形用金型10は、溶融ガラスを受容する第1の成形面13を有する下型11と、第1の成形面との間で溶融ガラスを加圧するための第2の成形面を有する上型12とを備えている。
ガラス基板成形用金型10は、下型11の第1の成形面13が平面、上型12の第2の成形面14が凸面であり、溶融ガラスを加圧する時点における第1の成形面13と第2の成形面14との間隙量dが、ガラス基板の中心部となる位置で最小(d0)となる。そのため、成形によるガラス基板の張り付きを抑制することができ、離型の際のガラス基板の割れやクラックの発生を防止することができる。
このように、第1の成形面13及び第2の成形面14の少なくとも一方を凸面とし、溶融ガラスを加圧する時点における第1の成形面13と第2の成形面14との間隙量dが、ガラス基板の中心部となる位置で最小となるようにした金型を用いることでガラス基板の貼り付きを抑制することができる理由を説明する。
溶融ガラスをプレス成形することによってガラス基板を製造する方法においては、所定温度に保たれた金型に、金型よりも高温の溶融ガラスが供給される。高温の溶融ガラスは、上下金型で加圧される間に変形すると同時に放熱し、冷却固化してガラス基板が形成される。このときの放熱の大部分は金型との接触面から行われる。
本発明者は、鋭意検討を重ね、冷却固化した後のガラス基板が金型に強く貼り付くのは、ガラス基板の中心部分と周辺部分とで冷却速度に差があり、中心部分が遅れて固化することが原因となっていることを突き止めた。図6は、従来の金型40でプレス成形した場合のガラス基板24の状態を示す断面図である。金型40は、下型41に形成された第1の成形面43と、上型42に形成された第2の成形面44がいずれも平面であり、溶融ガラスを加圧する時点における第1の成形面43と第2の成形面44との間隙量dは位置によらず均一である。この場合、ガラス基板24は中心部分よりも周辺部分の方が冷却速度が速く、先に固化する。周辺部分が先に固化して流動性を失った後のガラス基板の厚み方向の熱収縮量は、周辺部分よりも中心部分の方が大きくなる。そのため、ガラス基板の中心部分の肉厚が周辺部分の肉厚より薄くなり、金型との間に空隙45が生じる。この空隙45によってガラス基板24が真空吸着されたような状態となり、ガラス基板24が金型に強く張り付いてしまうのである。
これに対し、本発明のガラス基板成形用金型10は、下型11に形成された第1の成形面13は平面、上型12に形成された第2の成形面14は凸面となっている。図2は、本発明のガラス基板成形用金型10でプレス成形した場合のガラス基板26の状態を示す断面図である。溶融ガラスの冷却は金型との接触面からの放熱によるものが大部分であるが、冷却速度はガラス基板の肉厚に影響され、肉厚が薄いほど速く冷却が進む。ガラス基板成形用金型10は、第2の成形面14が凸面、第1の成形面13が平面であり、溶融ガラスを加圧する時点における第1の成形面13と第2の成形面14との間隙量dが、ガラス基板の中心部となる位置で最小(d0)となっている。そのため、ガラス基板26の中心部分の肉厚が薄くなり、中心部分の冷却速度を速めることができる。その結果、中心部分の冷却速度が周辺部分と同等、あるいは周辺部分よりも速くなるため、図6の場合のような空隙45が生じることはなく、逆に周辺部分において金型からガラス基板が離れやすくなり、ガラス基板の貼り付きを抑制することができるのである。
第1の成形面13及び第2の成形面14は、少なくとも一方が凸面であり、溶融ガラスを加圧する時点における間隙量dが、ガラス基板の中心部となる位置で最小となるような形状であれば良い。第1の成形面13が平面で第2の成形面が凸面であっても良いし、逆に第1の成形面13が凸面で第2の成形面が平面であっても良い。また、第1の成形面と第2の成形面の両方が凸面であっても良い。更に、何れか一方の面を凸面とし、他方の面をそれよりゆるやかな凹面とすることもできる。
図3は、本発明のガラス基板成形用金型10の変形例であるガラス基板成形用金型10a、10bでプレス成形した場合のガラス基板26a、26bの状態を示す断面図である。図3(a)に示すガラス基板成形用金型10aは、下型11aと上型12aとを有し、第1の成形面13aと第2の成形面14aの両方が凸面である。間隙量dはガラス基板の中心部となる位置で最小(d0)となっている。また、図3(b)に示すガラス基板成形用金型10bは、下型11bと上型12bとを有し、第2の成形面14bが凸面、第1の成形面13bがそれよりゆるやかな凹面である。この場合も、溶融ガラスを加圧する時点における間隙量dは、ガラス基板の中心部となる位置で最小(d0)となっている。
金型の加工が容易であるという観点からは、凸面は球面形状とすることが好ましい。しかし、球面に限定されるものではなく、周辺部分よりも中心部分が高くなっている形状であれば、円錐形状や放物面形状等でも良い。また、連続的に高さが変化する形状に限らず、階段状に不連続に高さが変化する形状であっても良い。
溶融ガラスを加圧する時点における第1の成形面13と第2の成形面14との間隙量dはガラス基板の中心部となる位置で最小となれば良く、ガラス基板の最外周部となる位置における間隙量(d1)と、中心部となる位置における間隙量(d0)との差に特に制限はない。実際には、ガラス基板の中心部分の冷却速度が周辺部分と同等、あるいは周辺部分よりも速くなるように、製造するガラス基板の外径や肉厚、ガラスの種類、金型の材質や温度等に応じて適宜設定すれば良い。通常、張り付きを十分に抑制する効果を得るためには、d1とd0との差を3μm以上とすることが好ましく、5μm以上とすることが更に好ましい。一方、d1とd0との差が100μmを超えると、得られたガラス基板を研磨して高い平面度を有する情報記録媒体用ガラス基板を製造するための加工工程に余分な時間が必要となる場合がある。このような観点から、ガラス基板の最外周部となる位置における間隙量(d1)と中心部となる位置における間隙量(d0)との差は、3μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることが更に好ましい。
図2に示したガラス基板成形用金型10は、第1の成形面13が平面で、第2の成形面14が凸面となっている。この場合、第2の成形面14におけるガラス基板の最外周部となる位置と中心部となる位置との高さの差(h2)が、d1とd0との差に等しくなる。また、図3(a)に示したガラス基板成形用金型10aのように第1の成形面13aと第2の成形面14aの両方が凸面の場合には、第1の成形面13aにおけるガラス基板の最外周部となる位置と中心部となる位置との高さの差(h1)と、第2の成形面14aにおける高さの差(h2)の合計(h1+h2)が、d1とd0との差に等しくなる。更に、図3(b)に示したガラス基板成形用金型10bのように第1の成形面13bが凹面で、第2の成形面14bが凸面の場合、第2の成形面14bにおける高さの差(h2)の方が第1の成形面13bにおける高さの差(h1)よりも大きいことが必要であり、h2とh1との差(h2−h1)が、d1とd0との差に等しくなる。何れの場合においても、d1とd0との差が、好ましくは3μm〜100μm、更に好ましくは5μm〜100μmとなるように、h1やh2の大きさを決定すれば良い。
第1の成形面13及び第2の成形面14の少なくとも一方は、ガラス基板と接触する全ての領域で凸面となっていることが最も好ましい。但し、凸面となっている領域は、必ずしもガラス基板と接触する全ての領域である必要はなく、本発明の効果が得られる範囲で、ガラス基板と接触する領域よりも小さい領域であっても良い。通常はガラス基板と接触する領域の直径の70%以上の直径の領域を凸面とすることが好ましく、80%以上の直径の領域を凸面とすることが更に好ましい。
本発明のガラス基板成形用金型10の材質は、各種の耐熱性ステンレス鋼、炭化タングステンを主成分とする超硬材料、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、カーボンなど、ガラス基板成形用金型の材質として公知の材料の中から適宜選択して用いることができる。また、耐熱性、耐酸化性等の向上のため、これらの材料の表面に各種金属やセラミックス、カーボンなどの保護膜を形成したものを用いることもできる。下型11と上型12とを同一の材料で構成しても良いし、それぞれ別の材料で構成しても良い。
なお、本発明のガラス基板成形用金型10は、1つの上型12に対して1つの下型11が組になった物であっても良いし、何れか一方、又は両方が複数であっても良い。例えば、1つの上型12に対して2つ以上の下型11が組となった物や、2つ以上の上型12と2つ以上の下型11が組になった物であっても良い。更に他の部材、例えば、ガラス基板の外径端面を形成するための外径規制部材等を備えていても良い。
(ガラス基板の製造方法)
本発明におけるガラス基板の製造方法は、第1の成形面13を有する下型と11第2の成形面14を有する上型12とを備えたガラス基板成形用金型10を用いて、溶融ガラスをプレス成形してガラス基板を製造する方法であり、第1の成形面13に溶融ガラスを供給する溶融ガラス供給工程と、第1の成形面13及び第2の成形面14で溶融ガラスを加圧しながら冷却してガラス基板を得る加圧工程と、加圧工程の後、ガラス基板への加圧を解除して型開きを行う離型工程とを有している。第1の成形面13及び第2の成形面14の少なくとも一方は凸面であり、加圧工程において溶融ガラスを加圧する時点における第1の成形面13と第2の成形面14との間隙量dが、ガラス基板の中心部となる位置で最小となる。
(溶融ガラス供給工程)
溶融ガラス供給工程は、下型11が有する第1の成形面13に溶融ガラスを供給する工程である。図4は、溶融ガラス供給工程における下型11と溶融ガラス23等を示す模式図である。ここでは、第1の成形面13が平面の場合の例を示している。先ず、流出ノズル21から溶融ガラス23を流出して下型11に供給する(図4(a))。その後、溶融ガラスが所定量に達するとブレード22によって溶融ガラス23を切断し、溶融ガラス23を分離する(図4(b))。
下型11は予め所定温度に加熱しておく。下型11の温度に特に制限はなく、ガラスの種類やガラス基板のサイズ等によって適宜決定すればよい。下型11の温度が低すぎるとガラス基板の平面度が悪化したり、転写面へのしわの発生等の問題が起こる。逆に、必要以上に温度を高くしすぎると、ガラスとの融着が発生したり、金型の劣化が著しくなることから好ましくない。通常は、成形するガラスのTg(ガラス転移点)−200℃からTg+100℃程度の温度範囲とすることが好ましい。
下型11の加熱手段にも特に制限はなく、公知の加熱手段の中から適宜選択して用いることができる。例えば、下型11の内部に埋め込んで使用するカートリッジヒーターや、下型11の外側に接触させて使用するシート状のヒーターなどを用いることができる。また、赤外線加熱装置や、高周波誘導加熱装置を用いて加熱することもできる。
(加圧工程)
加圧工程は、第1の成形面13及び第2の成形面14で、溶融ガラスを加圧しながら冷却してガラス基板26を得る工程である。
図2を参照しながら説明する。溶融ガラス供給工程において溶融ガラス23が供給された下型11は、上型12と対向する位置まで水平移動する。その後、下型11の第1の成形面13と、上型12の第2の成形面14とで溶融ガラスを加圧する。溶融ガラスは第1の成形面13及び第2の成形面14との接触面から放熱することによって冷却・固化し、ガラス基板26となる。
上述のように、本発明の製造方法においては、第1の成形面13及び第2の成形面14の少なくとも一方が凸面であり、加圧工程において溶融ガラスを加圧する時点における第1の成形面13と第2の成形面14との間隙量dが、ガラス基板の中心部となる位置で最小となるガラス基板成形用金型10を使用する。そのため、ガラス基板26の中心部分の冷却速度が速くなり、ガラス基板の張り付きを抑制することができる。その結果、離型の際のガラス基板の割れやクラックの発生を防止することができる。
なお、上型12は、下型11と同様に所定温度に加熱されている。加熱温度や加熱手段については上述の下型11の場合と同様である。加熱温度は下型11と同じであっても良いし異なっていても良い。
下型11と上型12に荷重を負荷して溶融ガラスを加圧するための加圧手段は、公知の加圧手段を適宜選択して用いることができる。例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、サーボモータを用いた電動シリンダ等が挙げられる。
(離型工程)
離型工程は、加圧工程の後、ガラス基板への加圧を解除して型開きを行う工程である。本発明の製造方法においては、加圧工程で得られたガラス基板が金型に強く張り付くことはなく、型開きの際のガラス基板の割れやクラックの発生が防止されている。型開きの後は、真空吸着等、一般的な回収方法によってガラス基板を回収すれば良い。
(情報記録媒体用ガラス基板の製造方法)
上述の製造方法によって製造されたガラス基板(ブランク材)に、研磨工程等を施すことにより情報記録媒体用ガラス基板を製造することができる。図5は、本発明の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって製造した情報記録媒体用ガラス基板の1例を示す図である。図5(a)は斜視図、図5(b)は断面図である。情報記録媒体用ガラス基板30は中心穴33が形成された円板状のガラス基板であって、主表面31、外周端面34、内周端面35を有している。外周端面34と内周端面35には、それぞれ面取り部36、37が形成されている。
研磨工程は、プレス成形によって得られたガラス基板(ブランク材)の主表面を研磨する工程であり、最終的に情報記録媒体用ガラス基板として要求される平滑性に仕上げる工程である。研磨の方法は、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法として用いられる公知の方法をそのまま用いることができる。例えば、対向配置した2つの回転可能な定盤の対向する面にパッドを貼り付け、2つのパッド間にガラス基板を配置し、ガラス基板表面にパッドを接触させながら回転させると同時に、ガラス基板表面に研磨剤を供給する方法で行うことができる。また、研磨剤の粒度やパッドの種類を変えて、粗研磨工程、精密研磨工程といったように複数の工程に分けて研磨を行うことも好ましい。
研磨剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、コロイダルシリカ、ダイヤモンドなどが挙げられる。この中でも、ガラスとの反応性が高く、短時間で平滑な研磨面が得られる酸化セリウムを用いることが好ましい。
パッドは硬質パッドと軟質パッドとに分けられるが、必要に応じて適宜選択して用いることができる。硬質パッドとしては、硬質ベロア、ウレタン発泡、ピッチ含有スウェード等を素材とするパッドが挙げられ、軟質パッドとしては、スウェードやベロア等を素材とするパッドが挙げられる。
また、本発明の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法においては、ガラス基板の主表面を研磨する研磨工程の他、内外周加工工程やラッピング工程を行うことが好ましい。内外周加工工程は、中心孔の穿孔加工、外周端面や内周端面の形状や寸法精度確保のための研削加工、内外周端面の研磨加工等を行う工程であり、ラッピング工程は、記録層が形成される面の平面度、厚み、平行度等を満足させるため、研磨工程の前にラッピング加工を行う工程である。更に、ガラス基板の材料として化学強化ガラスや結晶化ガラスを用いる場合には、加熱された化学強化処理液にガラス基板を浸漬してイオン交換を行う化学強化工程や、熱処理によって結晶化を行う結晶化工程等を必要に応じて適宜行うことができる。これらの内外周加工工程、ラッピング工程、化学強化工程、結晶化工程等の各工程は、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法として通常用いられている方法により行うことができる。
なお、本発明の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法においては、上記以外の種々の工程を有していても良い。例えば、ガラス基板の内部歪みを緩和するための熱処理を行うアニール工程、ガラス基板の強度の信頼性確認のためのヒートショック工程、ガラス基板の表面に残った研磨剤や化学強化処理液等の異物を除去する洗浄工程、種々の検査・評価工程等を有していても良い。
ガラス基板の材料に特に制限はなく、情報記録媒体用ガラス基板の材料として用いられる材料を適宜選択して用いることができる。中でも、化学強化ガラスや結晶化ガラスは、耐衝撃性や耐振動性に優れるため好ましい。化学強化が可能なガラス材料としては、例えば、SiO2、Na2O、CaOを主成分としたソーダライムガラス;SiO2、Al23、R2O(R=K、Na、Li)を主成分としたアルミノシリケートガラス;ボロシリケートガラス;Li2O−SiO2系ガラス;Li2O−Al23−SiO2系ガラス;R’O−Al23−SiO2系ガラス(R’=Mg、Ca、Sr、Ba)などが挙げられる。
ガラス基板の大きさにも特に制限はない。例えば、外径が2.5インチ、1.8インチ、1インチ、0.8インチ等種々の大きさのガラス基板を用いることができる。また、ガラス基板の厚みにも制限はない。例えば、1mm、0.64mm、0.4mm等種々の厚みのガラス基板を用いることができる。
(情報記録媒体の製造方法)
本発明の情報記録媒体用ガラス基板に、少なくとも記録層を形成することで情報記録媒体を製造することができる。記録層は特に限定されず、磁気、光、光磁気等の性質を利用した種々の記録層を用いることができるが、特に磁性層を記録層として用いた情報記録媒体(磁気ディスク)の製造に好適である。
磁性層に用いる磁性材料としては、特に制限はなく公知の材料を適宜選択して用いることができる。例えば、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiPt、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrPtTa、CoCrPtSiOなどが挙げられる。また、磁性層を非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrVなど)で分割してノイズの低減を図った多層構成としてもよい。
磁性層として、上記のCo系材料の他、フェライト系や鉄−希土類系の材料や、SiO2、BNなどからなる非磁性膜中にFe、Co、CoFe、CoNiPt等の磁性粒子が分散された構造のグラニュラーなどを用いることもできる。磁性層は、面内型、垂直型の何れであっても良い。
磁性膜の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、スパッタリング法、無電解メッキ法、スピンコート法などが挙げられる。
磁気ディスクには、更に必要により下地層、保護層、潤滑層等を設けても良い。これらの層はいずれも公知の材料を適宜選択して用いることができる。下地層の材料としては、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、Niなどが挙げられる。保護層の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、C、ZrO2、SiO2などが挙げられる。また、潤滑層としては、例えば、パーフロロポリエーテル(PFPE)等からなる液体潤滑剤を塗布し、必要に応じ加熱処理を行ったものなどが挙げられる。
(実施例1〜5)
金型として、下型11の第1の成形面13が平面、上型12の第2の成形面14が凸面(球面)のガラス基板成形用金型10を用意した。上型12は、第2の成形面14におけるガラス基板の最外周部となる位置(直径φ70mmの位置)と中心部となる位置との高さの差(h2)が、表1に示すように種々異なる上型12を用意した。それぞれの上型12を用いた場合の、ガラス基板の最外周部となる位置と中心部となる位置との間隙量dの差は、3μm(実施例1)、5μm(実施例2)、10μm(実施例3)、50μm(実施例4)、100μm(実施例5)となる。上型12及び下型11の材質はSUS310Sとした。
下型11と上型12を共に400℃に加熱し、溶融ガラスを下型11の第1の成形面13に供給した後、上型12の第2の成形面14との間でプレス成形を行った。ガラス材料はボロシリケートガラスを用いた。3秒間加圧した後、型開きを行ってガラス基板を回収した。これをそれぞれの金型について1000回ずつ繰り返し、得られたガラス基板の割れの発生の有無を目視検査により確認した。ここでは、割れの発生が1000枚中20枚未満の場合を良好(判定:○)、10枚未満の場合を非常に良好(判定:◎)と判断した。また、割れの発生が20枚以上の場合を問題有り(判定:×)とした。なお、ガラス基板の外径は70mm、厚みは1mmであった。
結果を表1に示す。いずれも割れの発生が20枚未満であり良好であった。特に、ガラス基板の最外周部となる位置と中心部となる位置との間隙量dの差が5μm以上の場合(実施例2〜5)は、割れの発生が10枚未満と非常に良好であった。
Figure 2008174402
(比較例1)
上型12として、第2の成形面14が平面のものを用いた以外は実施例1〜5と同様にガラス基板の成形と評価を行った。結果を表1に併せて示す。
比較例1の場合は、成形開始から20枚目の成形まで全てのガラス基板で割れが発生し、良好なガラス基板を得ることができなかった。実験はその時点で中止した。
(実施例6〜9)
上型12の第2の成形面14は、凸面(球面)で、ガラス基板の最外周部となる位置(直径φ70mmの位置)と中心部となる位置との高さの差(h2)が20μmのものを用意した。下型11は、表2に示すように、第1の成形面13が凹面(球面)、平面、凸面(球面2種類)の合計4種類のものを用意した。それぞれの下型11の第1の成形面13におけるガラス基板の最外周部となる位置(直径φ70mmの位置)と中心部となる位置との高さの差(h1)は表2に示したとおりである。それぞれの場合の、ガラス基板の最外周部と中心部との間隙量dの差は、10μm(実施例6)、20μm(実施例7)、30μm(実施例8)、40μm(実施例9)となる。
これらの金型を用いて実施例1〜5と同様にガラス基板の成形と評価を行った。結果を表2に示す。いずれも組み合わせにおいても、割れの発生が10枚未満と非常に良好であった。
Figure 2008174402
(比較例2)
下型11として、第1の成形面13が凹面(球面)で、ガラス基板の最外周部となる位置(直径φ70mmの位置)と中心部となる位置との高さの差(h1)が20μm(中心部の方が20μm低い)のものを用意した。上型12は、実施例6〜9と同じものを使用した。この場合、第1の成形面13と第2の成形面14との間隙量dは均一で、ガラス基板の最外周部となる位置と中心部となる位置との間隙量dに差はない。このような金型を用いて実施例6〜9と同様にガラス基板の成形と評価を行った。結果を表2に併せて示す。
比較例2の場合は、成形開始から20枚目の成形まで全てのガラス基板で割れが発生し、良好なガラス基板を得ることができなかった。実験はその時点で中止した。
本発明のガラス基板成形用金型の例を示す図である。 本発明のガラス基板成形用金型10でプレス成形した場合のガラス基板26の状態を示す断面図である。 本発明のガラス基板成形用金型10の変形例であるガラス基板成形用金型10a、10bでプレス成形した場合のガラス基板26a、26bの状態を示す断面図である。 溶融ガラス供給工程における下型と溶融ガラス等を示す模式図である。 本発明の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法によって製造した情報記録媒体用ガラス基板の1例を示す図である。 従来の金型40でプレス成形した場合のガラス基板24の状態を示す断面図である。
符号の説明
10、10a、10b ガラス基板成形用金型
11、11a、11b 下型
12、12a、12b 上型
13、13a、13b 第1の成形面
14、14a、14b 第2の成形面
23 溶融ガラス
26、26a、26b ガラス基板
30 情報記録媒体用ガラス基板
d 間隙量
d0 ガラス基板の中心部となる位置における間隙量
d1 ガラス基板の最外周部となる位置における間隙量

Claims (6)

  1. 溶融ガラスを受容する第1の成形面を有する下型と、
    前記第1の成形面との間で前記溶融ガラスを加圧するための第2の成形面を有する上型とを備え、
    前記溶融ガラスをプレス成形して情報記録媒体に用いるガラス基板を製造するためのガラス基板成形用金型において、
    前記第1の成形面及び前記第2の成形面の少なくとも一方は凸面であり、
    前記溶融ガラスを加圧する時点における前記第1の成形面と前記第2の成形面との間隙量が、前記ガラス基板の中心部となる位置で最小となることを特徴とするガラス基板成形用金型。
  2. 前記ガラス基板の最外周部となる位置における前記間隙量と、中心部となる位置における前記間隙量との差が3μm〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板成形用金型。
  3. 溶融ガラスを受容する第1の成形面を有する下型と、
    前記第1の成形面との間で前記溶融ガラスを加圧するための第2の成形面を有する上型とを備えたガラス基板成形用金型を用いて情報記録媒体に用いるガラス基板を製造するガラス基板の製造方法において、
    前記下型が有する第1の成形面に溶融ガラスを供給する溶融ガラス供給工程と、
    前記第1の成形面及び前記第2の成形面で前記溶融ガラスを加圧しながら冷却してガラス基板を得る加圧工程と、
    前記加圧工程の後、前記ガラス基板への加圧を解除して型開きを行う離型工程と、を有し、
    前記第1の成形面及び前記第2の成形面の少なくとも一方は凸面であり、
    前記溶融ガラスを加圧する時点における前記第1の成形面と前記第2の成形面との間隙量が、前記ガラス基板の中心部となる位置で最小となることを特徴とするガラス基板の製造方法。
  4. 前記ガラス基板の最外周部となる位置における前記間隙量と、中心部となる位置における前記間隙量との差が5μm〜100μmであることを特徴とする請求項3に記載のガラス基板の製造方法。
  5. 請求項3又は4に記載のガラス基板の製造方法により製造されたガラス基板を研磨する工程を有することを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  6. 請求項5に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法により製造された情報記録媒体用ガラス基板に記録層を形成する工程を有することを特徴とする情報記録媒体の製造方法。
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