JP5305721B2 - 表面処理剤、ゴムの表面処理方法およびゴム製品 - Google Patents
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Description
また、従来公知の表面処理剤で処理して撥水性が付与されたゴム製品の表面に有機溶剤を接触させると、付与された撥水性が大幅に減少してしまうことがあり、このため、そのような表面処理剤で処理されたゴム製品を耐溶剤性が要求される用途に使用することができない。
本発明の目的は、ゴムの表面を含めた種々の基材表面に対して超撥水性を付与することができ、有機溶剤を接触させた後であっても、付与された超撥水性を保持することができる耐久性(耐溶剤性)に優れた表面処理層を形成することができる表面処理剤を提供することにある。
(A)特定のフッ素含有化合物の含有量をa、(B1)ポリオルガノシロキサンの含有量をb1、(B2)ポリオルガノ水素シロキサンの含有量をb2、(B3)エポキシ変性シリコーンの含有量をb3、(B4)シランカップリング剤の含有量をb4とするとき、a/(b1+b2+b3+b4)の値(質量比率)が1.0〜4.0であることを特徴とする。
また、本発明の表面処理剤には、酸触媒が含有されていることが好ましい。
本発明のゴム製品は、本発明の表面処理剤によって処理され、水との接触角が140°以上であることを特徴とする。
本発明の表面処理剤によれば、耐久性(耐溶剤性)に優れた表面処理層(超撥水性付与層)を形成することができ、本発明の表面処理剤により処理された表面に有機溶剤を接触させても、当該表面に付与された超撥水性は十分に保持される。
本発明の表面処理剤は、特定のフッ素含有化合物と、シリコーン系樹脂と、これらを溶解する溶剤とを含有する。
本発明の表面処理剤を構成する「特定のフッ素含有化合物」は、フルオロアルキル基を含有する基(RF )を分子両末端に有するとともに、−Si(OR1 )3 で示される基(トリアルコキシシリル基もしくはトリアルコキシアルコキシシリル基)が結合されてなる中間鎖を有するフッ素系のオリゴマーである。
特定のフッ素含有化合物に代えて、他のフッ素含有化合物(例えば、引用文献3に記載されたFAS)を含有させても、得られる表面処理剤によっては、基材の表面に超撥水性を付与することができない(後述する比較例5参照)。
特定のフッ素含有化合物の含有割合が過小である場合には、超撥水性を基材の表面に付与することが困難となる。他方、30質量%を超える割合で特定のフッ素含有化合物を含有させても、含有量に見合う処理効果が得られない。
本発明の表面処理剤を構成する「シリコーン系樹脂」は、硬化性の樹脂であり、液状のシリコーンオイルを包含する。
本発明の表面処理剤を構成する好適なシリコーン系樹脂としては、ポリオルガノシロキサンと、ポリオルガノ水素シロキサンと、エポキシ変性シリコーンと、シランカップリング剤とを含有する特定のシリコーン系樹脂を挙げることができる。
式:(R2 )3 SiO[Si(R2 )2 O]n Si(R2 )3 (式中、R2 は、それぞれ同一または異なるアルキル基を示し、nは1以上の数である。)で示される直鎖状のポリアルキルシロキサンを挙げることができる。
直鎖状のポリアルキルシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
また、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの環状ポリアルキルシロキサンを使用することもできる。
ここに、「ケイ素原子に結合しているアルケニル基」としては、ビニル基、アリル基、ブチニル基、ヘキセニル基などを例示することができる。
式:(R3 )3 SiO[Si(R2 )(H)O]m1[Si(R2 )2 O]m2Si(R3 )3 (式中、R2 は、それぞれ同一または異なるアルキル基、R3 は、それぞれ同一もしくは異なるアルキル基または水素原子である。m1は0以上の数であり、m2は1以上の数である。但し、m1が0であるとき、R3 の少なくとも2つは水素原子であり、m1が1であるとき、R3 の少なくとも1つは水素原子である。)で示されるポリアルキル水素シロキサンを挙げることができる。
式:(R5 )(R4 )2 SiO[Si(R4 )2 O]p Si(R4 )2 (R6 )(式中、R4 は、それぞれ同一または異なる一価の炭化水素基、R5 はエポキシ基を含有する基、R6 は、エポキシ基を含有する基または一価の炭化水素基であり、pは1以上の数である。)で示されるものを挙げることができる。
エポキシ変性シリコーンの具体例としては、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジエチルポリシロキサン、エポキシ変性ジフェニルポリシロキサン、エポキシ変性メチルフェニルポリシロキサンなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
エポキシ変性シリコーンの有するエポキシ基は、特定のフッ素含有化合物の有する−Si(OR1 )3 で示される基と反応性を有する。
式:Si(OR7 )q R8 3-q −(CH2 )r −R9 (式中、R7 はアルキル基またはアルコキシ基を表し、R8 はアルキル基を表し、qは1〜3の整数、好ましくは3であり、rは0〜5の整数である。また、R9 は有機官能基を表す。)で示されるものを例示することができる。
シランカップリング剤の有する−Si(OR7 )q R8 3-q で示される基は、エポキシ変性シリコーンの有するエポキシ基と反応性を有する。
更に、−Si(OR7 )q R8 3-q で示される基は、特定のフッ素含有化合物の有する−Si(OR1 )3 で示される基と反応性(加水分解・縮合反応)を有する。
また、シランカップリング剤の有する有機官能基(R9 )としては、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基などを例示することができる。
また、エポキシ変性シリコーンおよびシランカップリング剤を含有する硬化剤としてはシリコーン溶液「XC9603」(GE東芝シリコーン(株)製)を挙げることができる。
ジアルキルスズ化合物としては、ジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズジラウレートなどのジアルキルスズジカルボキシレート類、ジブチルスズジブトキシド、ジオクチルスズジブトキシドなどのジアルキルスズジアルコキシド類、ジブチルスズジ(チオブトキシド)などのジアルキルスズジチオアルコキシド類、ジ(2−エチルヘキシル)スズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ビス(ブトキシジブチルスズ)オキサイドなどのジアルキルスズ酸化物類、ジブチルスズスルフィドなどのジアルキルスズ硫化物類を例示することができる。
ジアルキルスズ化合物からなる触媒の市販品としては「YC6831」(GE東芝シリコーン(株)製)を挙げることができる。
特定のシリコーン系樹脂を含有する本発明の表面処理剤には、更に、酸触媒が含有されていることが好ましい。
酸触媒が含有されて酸性(pHが6以下、特に2〜5)とすることにより、特定のフッ素含有化合物の有する−Si(OR1 )3 で示される基と、シランカップリング剤の有する−Si(OR7 )q で示される基とを効率的に反応させることができる。
ここに、含有される酸触媒としては、無機酸であっても有機酸であってもよい。
ここに、無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などを挙げることができ、塩酸が好ましい。また、有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸などを挙げることができ、酢酸が好ましい。
本発明の表面処理剤を構成する溶剤としては、特定のフッ素含有化合物およびシリコーン系樹脂を共に溶解することができるものの中から選択することができ、これらの種類によっても異なるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、アセトンなどの有機溶剤を例示することができ、これらは単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。
特定のシリコーン系樹脂を含有する本発明の表面処理剤において、特定のフッ素含有化合物の含有量をa、ポリオルガノシロキサンの含有量をb1、ポリオルガノ水素シロキサンの含有量をb2、エポキシ変性シリコーンの含有量をb3、シランカップリング剤の含有量をb4とするとき、a/(b1+b2+b3+b4)の値が1.0〜4.0であることが好ましく、更に好ましくは1.5〜3.5、特に好ましくは1.9〜3.1とされる。
a/(b1+b2+b3+b4)の値が1.0〜4.0であることにより、形成される表面処理層によって、水との接触角が140°以上の超撥水性を確実に付与することができる。
なお、本発明の表面処理剤は、ゴム以外の基材(例えば樹脂、繊維、ガラス、金属)の表面にも適用できることは勿論である。
本発明の表面処理方法は、本発明の表面処理剤をゴムの表面に塗布する工程(以下「塗布工程」という。)と、前記表面処理剤による塗膜を加熱する工程(以下「加熱工程」という。)とを含む。
なお、この塗布工程の終了後、ゴムの表面に形成された塗膜から溶剤を除去するために乾燥処理を行うことが好ましい。
加熱工程において、塗膜の加熱方法としては、オーブンによる加熱、熱プレスによる加熱など、特に制限されるものではない。加熱条件としては、例えば80〜200℃で5分間〜2時間とされ、好ましくは100〜150℃で10〜60分間とされる。
このように、本発明の表面処理剤(処理方法)により表面処理されたゴム製品は、特定のフッ素含有化合物により表面処理されたゴム製品、および、シリコーン系樹脂により表面処理されたゴム製品と比較して、格段に優れた耐久性(耐溶剤性)を有するものとなる(後述する比較例2および比較例3参照)。
・ポリアルキルシロキサンおよびポリアルキル水素シロキサン:12%
・キシレン:65%
・イソプロピルアルコール:16%
・シクロヘキサノン:7%
・エポキシ変性シリコーンおよびシランカップリング剤:30%
・イソプロピルアルコール:70%
・ジアルキルスズ化合物:37.5%
・トルエン:62.5%
下記表1に示す処方に従って、下記の式(1)(式中、x’は2または3である。)で示される特定のフッ素含有化合物1.00gと、シリコーン溶液「HS−3」3.00g(ポリアルキルシロキサンおよびポリアルキル水素シロキサンの両者の含有量:0.36g)と、シリコーン溶液「XC9603」1.50g(エポキシ変性シリコーンおよびシランカップリング剤の両者の含有量:0.45g)と、触媒溶液「YC6831」0.30g(ジアルキルスズ化合物の含有量:0.11g)と、0.1Nの塩酸2.0gとを、トルエン3.0gに添加し、この系を室温下に1時間攪拌することにより、本発明の表面処理剤(a/(b1+b2+b3+b4)=1.2)を製造した。
下記表1に示す処方に従って、特定のフッ素含有化合物の添加量を変更したこと以外は実施例1と同様にして本発明の表面処理剤を製造し、得られた表面処理剤の各々を塗布したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の表面処理剤による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
アルコール洗浄および静電気除去を施したEPDMからなるゴム板(80mm×80mm)を準備した。この比較例1は、表面処理剤によるゴム板の処理を行わない比較例である。
下記表1に示す処方に従って、特定のフッ素含有化合物2.00gをトルエン3.0gに添加したこと以外は実施例1と同様にして表面処理剤を製造し、この表面処理剤を塗布したこと以外は実施例1と同様にして、比較用の表面処理剤による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
この比較例2は、シリコーン系樹脂を含有させずに製造した表面処理剤によりゴム板を処理した比較例である。
下記表1に示す処方に従って、シリコーン溶液「HS−3」3.00gと、シリコーン溶液「XC9603」1.50gと、触媒溶液「YC6831」0.30gとをトルエン3.0gに添加したこと以外は実施例1と同様にして表面処理剤を製造し、この表面処理剤を塗布したこと以外は実施例1と同様にして、比較用の表面処理剤による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
この比較例3は、特定のフッ素含有化合物および0.1Nの塩酸を含有させずに製造した表面処理剤によりゴム板を処理した比較例である。
この比較例4は、フッ素結合基を有するシランカップリング剤(FAS)による表面処理剤によりゴム板を処理した比較例である。
この比較例5は、フッ素結合基を有するシランカップリング剤(FAS)を特定のフッ素含有化合物の代わりに含有する表面処理剤によりゴム板を処理した比較例である。
(1)撥水性(初期値):
実施例1〜5および比較例1〜5により表面処理されたゴム板の各々について、処理面に約0.05ccの水滴を乗せ、滴下してから5分経過後の接触角をERMA社製のG−1−1000型ゴニオメーターを用いて水に対する接触角を測定した。結果を併せて下記表1に示す。
実施例1〜5および比較例1〜5により表面処理されたゴム板の各々について、メタノール中で1時間にわたり超音波洗浄を行った後、上記(1)と同様にして水に対する接触角を測定した。結果を併せて下記表1に示す。
Claims (7)
- (A)下記一般式(I)で示されるフッ素含有化合物と、
(B)(B1)ポリオルガノシロキサンと、
(B2)ポリオルガノ水素シロキサンと、
(B3)エポキシ変性シリコーンと、
(B4)シランカップリング剤とを含有するシリコーン系樹脂と、
(C)これらを溶解する溶剤とを含有し、
(A)フッ素含有化合物の含有量をa、
(B1)ポリオルガノシロキサンの含有量をb1、
(B2)ポリオルガノ水素シロキサンの含有量をb2、
(B3)エポキシ変性シリコーンの含有量をb3、
(B4)シランカップリング剤の含有量をb4とするとき、
a/(b1+b2+b3+b4)の値が1.0〜4.0であることを特徴とする表面処理剤。
- a/(b1+b2+b3+b4)の値が1.5〜3.5であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理剤。
- (B)シリコーン系樹脂が、
(B5)ジアルキルスズ化合物からなる触媒を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理剤。 - 酸触媒を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の表面処理剤。
- ゴムの表面を処理するための請求項1乃至請求項4の何れかに記載の表面処理剤。
- 請求項5に記載の表面処理剤をゴムの表面に塗布する工程と、前記表面処理剤による塗膜を加熱する工程とを含むゴムの表面処理方法。
- 請求項5に記載の表面処理剤によって処理された、水との接触角が140°以上であるゴム製品。
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