JP5302704B2 - 冷間加工用の機械構造用鋼およびその製造方法ならびに機械構造用部品 - Google Patents

冷間加工用の機械構造用鋼およびその製造方法ならびに機械構造用部品 Download PDF

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Description

本発明は、冷間加工により機械構造用部品に製造される機械構造用鋼に関する。
自動車等の機械構造用部品であるボルト・ナット、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、バルブリフター、コモンレール等は、近年、軽量化のために高強度化が要求されている。
一方、自動車用変速機や差動装置等の各種歯車伝達装置に利用されるクランクシャフト、コンロッド、トランスミッションギヤ等の機械構造用部品は、一般に、鋼材に鍛造等の熱間加工を施した後、切削加工を施すことによって最終形状に仕上げられる。このような機械構造用部品においても、製造工程におけるCO2の排出量削減のため、熱間加工に代えて冷間加工による鍛造で製造することが要求されている。
冷間鍛造は、熱間鍛造と異なり高温下での工程ではないため、冷却による形状、寸法の変化が小さく、これらの精度がよいという利点がある。一方、熱間鍛造に比べて変形抵抗が高く変形能が小さいため、加工時に鋼材や金型に割れが発生し易いという難点がある。冷間加工により製造される機械構造用部品の強度向上に際しては、このような加工性を低下させないことが必要である。
鋼材の高強度化の方法の一つとして、結晶粒の微細化が有効であることが知られている。すなわち、結晶粒径が小さくなるにしたがい降伏強度が大きくなるというHall-Petchの法則によるものである。結晶粒の微細化には、冷間加工や温間加工によって加工ひずみを付与して結晶粒を直接伸張させたり動的再結晶させる方法、加熱後の急冷や加熱冷却を繰り返す相変態熱処理を利用する方法等が用いられる。
例えば、特許文献1は、平均結晶粒径を、温間加工により3μm以下、さらに冷間加工により500nm以下にまで極微細化したフェライト相を主組織とすることにより高強度とした鋼線または棒鋼を開示している。また、特許文献2は、パーライト組織とした高炭素鋼に伸線加工を施すことにより、パーライトラメラ間隔を微細化かつ均一化して引張強度を向上させた極細鋼線を開示している。また、特許文献3は、マルテンサイト組織とした鋼を熱処理と加工を同時に施すことによって動的逆変態を生じさせて極微細な等軸オーステナイト粒を形成し、直ちに冷却することによってサブミクロンオーダーの微細組織として強度と靭性を向上させた鋼材を製造する方法を開示している。
特開2005−320629号公報 特開平3−10050号公報 特許第3922691号公報
しかしながら、特許文献1,2に開示された微細組織の鋼材とするためには、総減面率の大きな温間加工や伸線加工を施す必要があり、装置の制約上、加工前の鋼は大きさに限界があるため、得られる鋼材は大幅に縮小された結果、線状や棒状になる。また、特許文献3に開示された逆変態を生じさせる処理方法は、1パスの加工率が極めて大きく、工業的に製造が困難である。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、冷間加工により製造でき、強度に優れ、かつクランクシャフト等のような大きな部品とすることもできる機械構造用部品、ならびにこのような機械構造用部品に製造できる冷間加工性を有する機械構造用鋼を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、機械構造用鋼の組織の構成について検討した。一般的に鋼材の強度向上に有効とされるマルテンサイト組織等の硬質相を、冷間加工性を保持するための軟質相であるフェライト相に分布させた構成では、冷間加工されると、変形時に軟質相と硬質相との界面が応力集中の起点となり、割れが発生し易い。また、軟質相に動的ひずみ時効が集中し、硬質相にひずみが入り易くなって付与するひずみ以上に硬質相が加工硬化するため、静的ひずみ時効による強度向上は見込めるものの、それ以上に変形抵抗が増加して冷間加工性が劣化してしまう。そこで、冷間加工性を付与するために、軟質のフェライト相を主組織とし、また、ある程度の大きさの機械構造用鋼を得るために、極度に大きな加工率とせずに冷間加工で得られる数ミクロンオーダーの結晶粒径の鋼材とした。一方で、この程度の大きさの結晶粒径でかつフェライト単相であっても、冷間加工にて機械構造用部品とした後の強度が向上するように、固溶させたN(窒素)により冷間加工時に強度を増加させることに至った。
すなわち、本発明に係る機械構造用鋼は、C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Mn:0.4〜1.0質量%、Al:0.01〜0.06質量%、S:0.005〜0.05質量%、P:0.05質量%以下、N:0.009〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、N固溶量が0.0085質量%以上であり、フェライト相の組織分率が90%以上であり、フェライト結晶粒の平均粒径が7μm以下であり、引張強度が500MPa以上であり、前記フェライト結晶粒の平均粒径(μm)をd、前記引張強度(MPa)をTSとしてそれぞれ表したとき、0≦TS−1200/√d≦300を満足することを特徴とする。
このように、低炭素鋼とすることにより、主組織をフェライト相として冷間加工性を付与することができる。そして、溶製中の脱酸、脱硫のためにMnを添加し、一方、脱酸元素であるSiは冷間加工性を低下させないように、同じく脱酸元素であるAlはNの固溶量を低減させないように、それぞれ微量の添加とする。また、Nを十分に固溶させることで、軟質のフェライト組織を、冷間加工後に加工硬化分以上に強度を増加させることができる。また、フェライト結晶粒径を所定値以下として引張強度を確保し、かつ引張強度に対して小さくなりすぎないように制御することにより、冷間加工性を劣化させないことができる。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、Cr:2質量%以下、およびMo:2質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。Cr,Moを添加することにより、機械構造用鋼の冷間加工性および冷間加工後の硬さを向上させることができる。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.2質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。Ti,Nb,Vを添加することにより、これらの窒素化合物が形成されて機械構造用鋼の冷間加工後の靭性を高くして耐割れ性を向上させることができる。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、B:0.005質量%以下を含有してもよい。Bを添加することにより、不可避的に含有されるPのフェライト粒界偏析による粒界強度の低下を抑制することができる。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、Cu:5質量%以下、Ni:5質量%以下、およびCo:5質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。Cu,Ni,Coを添加することにより、機械構造用鋼のひずみ時効を促進させて冷間加工後の強度を向上させることができる。
また、本発明に係る機械構造用鋼において、前記組成がさらに、Ca:0.05質量%以下、REM:0.05質量%以下、Mg:0.02質量%以下、Li:0.02質量%以下、Pb:0.5質量%以下、およびBi:0.5質量%以下のうち1種以上を含有してもよい。これらの元素を添加することにより、機械構造用鋼の冷間加工性および冷間加工後の被削性を向上させることができる。
また、本発明に係る機械構造用鋼の製造方法は、前記組成の鋼を1000℃以上に加熱した後、熱間加工し、この熱間加工後、1000℃から200℃以下まで冷却速度1.5℃/sec以上で冷却する熱間加工工程と、開始温度200℃未満、ひずみ量0.3以上で冷間加工する冷間加工工程と、を行うことを特徴とする。熱間加工において所定以上の温度に加熱することでNを鋼中に固溶させ、十分なひずみ量を付与して冷間加工することにより、結晶粒を微細化して強度を向上させることができる。
本発明に係る機械構造用部品は、前記機械構造用鋼を、開始温度200℃未満で冷間加工して製造される。このような冷間加工によりさらに強度が増加される。
本発明に係る機械構造用鋼は、冷間加工性を十分に有し、またある程度の大きさの鋼材に容易に製造可能である。そして、本発明に係る機械構造用鋼の製造方法によれば、前記の機械構造用鋼を安定して製造することができる。また、このような機械構造用鋼を冷間加工して製造された本発明に係る機械構造用部品は、強度が向上されて部品の軽量化を可能とするものである。
〔機械構造用鋼〕
以下、本発明に係る機械構造用鋼を実施するための形態について説明する。
本発明に係る機械構造用鋼の組成は、C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Mn:0.4〜1.0質量%、Al:0.01〜0.06質量%、S:0.005〜0.05質量%、P:0.05質量%以下、N:0.009〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
以下に、本発明に係る機械構造用鋼の組成の各成分の含有量の数値範囲およびその数値範囲の限定理由について説明する。
(C:0.005〜0.045質量%)
Cは、機械構造用鋼を軟質のフェライト単相とするために極力低減する必要がある。ただし、C含有量が極端に少ないと溶製中の脱酸が困難になり、0.005質量%未満では溶製時にガス欠陥が発生し易くなって歩留りが低下する。したがって、C含有量は0.005質量%以上とし、0.01質量%以上が好ましく、0.015質量%以上がさらに好ましい。一方、C含有量が0.045質量%を超えると、セメンタイトが硬質のパーライトを形成するようになり、フェライト−パーライトの複相組織となって冷間加工性を劣化させる。したがって、C含有量は0.045質量%以下とし、0.043質量%以下が好ましく、0.04質量%以下がさらに好ましい。
(Si:0.005〜0.05質量%)
Siは脱酸効果を有し、含有量が0.005質量%未満では溶製時にガス欠陥が発生し易くなる。したがって、Si含有量は0.005質量%以上とし、0.007質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。一方、Siはフェライト相を固溶強化させるため、含有量が0.05質量%を超えると、変形抵抗の増大すなわち冷間加工性の低下を生じさせる。したがって、Si含有量は0.05質量%以下とし、0.04質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がさらに好ましい。
(Mn:0.4〜1.0質量%)
Mnは、脱酸、脱硫効果を有し、また、Sと結合してMnSとして析出して機械構造用鋼の変形能を向上させる。含有量が0.4質量%未満ではこれらの効果が不十分である。したがって、Mn含有量は0.4質量%以上とし、0.42質量%以上が好ましく、0.45質量%以上がさらに好ましい。一方、Mnはフェライト相を固溶強化させるため、含有量が1.0質量%を超えると、変形抵抗の顕著な増大すなわち冷間加工性の低下を生じさせる。したがって、Mn含有量は1.0質量%以下とし、0.98質量%以下が好ましく、0.95質量%以下がさらに好ましい。
(Al:0.01〜0.06質量%)
Alは、強い脱酸効果を有して機械構造用鋼の内部品質を向上させ、含有量が0.01質量%未満では溶製時にガス欠陥が発生し易くなる。したがって、Al含有量は0.01質量%以上とし、0.015質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がさらに好ましい。一方、Alは鋼中のNと結合してAlNを形成するためNの固溶量を低下させ、含有量が0.06質量%を超えると固溶量を不足させる。したがって、Al含有量は0.06質量%以下とし、0.055質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がさらに好ましい。
(S:0.005〜0.05質量%)
Sは、鋼に不可避的に含まれる元素であり、被削性を向上させる効果を有し、含有量が0.005質量%未満では被削性が劣化する。したがって、S含有量は0.005質量%以上とし、0.007質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。一方で、Sは、Feと結合してFeSとして粒界上に膜状に析出して、冷間加工性を劣化させる。したがって、Sはその全量をMnと結合させ、MnSとして析出させる必要があるが、MnSの析出量が過剰になるとやはり冷間加工性が劣化する。したがって、S含有量は0.05質量%以下とし、0.04質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がさらに好ましい。
(P:0.05質量%以下)
Pは鋼に不可避的に含まれる元素(不純物)である。Pは、フェライト粒界に偏析して冷間加工性を劣化させ、また、フェライトを固溶強化させて変形抵抗を増大させるので、可能な限り低減されることが好ましい。したがって、P含有量は0.05質量%以下とし、0.04質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がさらに好ましい。
(N:0.009〜0.02質量%)
本発明に係る機械構造用鋼において、N(窒素)は鋼中に固溶して、後記するように機械構造用鋼を冷間加工(冷間鍛造)した後の強度を向上させる。N含有量が0.009質量%未満ではこのN固溶量を十分に得られないため、N含有量は0.009質量%以上とし、0.0095質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。一方、N含有量が0.02質量%を超えると、N固溶量が過剰になって冷間加工性を劣化させる。したがって、N含有量は0.02質量%以下とし、0.018質量%以下が好ましく、0.016質量%以下がさらに好ましい。なお、Nは鋼の溶融工程で大気中から不可避的に混入するため、精錬工程で調整してN含有量を制御することができる。また、成分として含有される金属元素(例えばMn)の窒素化合物を添加してもよい。
本発明に係る機械構造用鋼の組成において、さらに、Cr:2質量%以下、Mo:2質量%以下、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、V:0.2質量%以下、B:0.005質量%以下、Cu:5質量%以下、Ni:5質量%以下、Co:5質量%以下、Ca:0.05質量%以下、REM:0.05質量%以下、Mg:0.02質量%以下、Li:0.02質量%以下、Pb:0.5質量%以下、Bi:0.5質量%以下、のうちの1種以上を含有してもよい。
(Cr,Mo:各2質量%以下)
CrやMoは、機械構造用鋼の冷間加工性および冷間加工後の硬さを向上させる。この効果を得るために、Cr含有量は0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。同様に、Mo含有量は0.04質量%以上が好ましく、0.12質量%以上がさらに好ましい。一方、Cr,Moはどちらも過剰に添加されると、変形抵抗が増大して却って冷間加工性が劣化する。したがって、Cr,Moの各含有量は2質量%以下とし、1.5質量%以下が好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
(Ti,Nb,V:各0.2質量%以下)
Ti,Nb,Vは、それぞれが鋼中のNと結合して窒素化合物を形成して結晶粒を微細化し、冷間加工後の靭性を高くして耐割れ性を向上させる。この効果を得るために、Ti,Nb,Vの各含有量は0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.003質量%以上がさらに好ましい。一方、Ti,Nb,VはNとの親和力が強いため、いずれも過剰に添加されるとNの固溶量を低下させる。したがって、Ti,Nb,Vの各含有量は0.2質量%以下とし、0.15質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
(B:0.005質量%以下)
Bは、フェライト粒界に集まる傾向があり、Pのフェライト粒界偏析による粒界強度の低下を抑制する効果がある。この効果を得るために、B含有量は0.0002質量%以上が好ましく、0.0004質量%以上がより好ましく、0.0006質量%以上がさらに好ましい。一方、BはNとの親和力が強く、鋼中のNと結合してBNを形成するため、Bが過剰に添加されると、BNがフェライト粒界に過剰に偏析して粒界強度を低減させ、またNの固溶量を低下させる。したがって、B含有量は0.005質量%以下とし、0.0035質量%以下が好ましく、0.002質量%以下がさらに好ましい。
(Cu,Ni,Co:各5質量%以下)
Cu,Ni,Coは、それぞれが機械構造用鋼のひずみ時効を促進させて冷間加工後の強度を向上させる。この効果を得るために、Cu,Ni,Coの各含有量は0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。一方、これらの元素が5質量%を超えて添加されても前記効果は飽和する上、割れも促進される。したがって、Cu,Ni,Coの各含有量は5質量%以下とし、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
(Ca:0.05質量%以下、REM:0.05質量%以下、Mg:0.02質量%以下、Li:0.02質量%以下、Pb:0.5質量%以下、Bi:0.5質量%以下)
Ca,REM(希土類金属元素),Mg,Liは、それぞれがMnS等の硫化物系介在物を球状化させて機械構造用鋼の冷間加工性を向上させ、また被削性を向上させる元素である。これらの効果を得るために、Ca,REMの各含有量は0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.0015質量%以上がさらに好ましい。同様に、Mg,Liの各含有量は0.0001質量%以上が好ましく、0.0003質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上がさらに好ましい。なお、希土類金属元素として具体的に、Ce,La,Nd等の元素が挙げられ、本明細書におけるREMの含有量とは、これらのすべての希土類金属元素の含有量の合計を指す。一方、これらの元素が過剰に添加されても前記効果は飽和するため、コスト高となる。したがって、Ca,REMの各含有量は0.05質量%以下とし、0.03質量%以下が好ましく、0.01質量%以下がさらに好ましい。同様に、Mg,Liの各含有量は0.02質量%以下とし、0.01質量%以下が好ましく、0.005質量%以下がさらに好ましい。
Pb,Biは被削性を向上させる元素であり、各含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。一方、Pb,Biはどちらも過剰に添加されると、圧延疵等の製造上の問題を生じる。したがって、Pb,Biの各含有量は0.5質量%以下とし、0.4質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係る機械構造用鋼は、前記組成の鋼からなり、N固溶量は0.0085質量%以上であり、フェライト相の組織分率は90%以上であり、フェライト結晶粒の平均粒径は7μm以下である。そして、本発明に係る機械構造用鋼は、引張強度が500MPa以上であり、この引張強度(MPa)をTS、前記平均粒径(μm)をdとしてそれぞれ表したとき、0≦TS−1200/√d≦300を満足する。
以下に、本発明に係る機械構造用鋼を構成する各要素について説明する。
(N固溶量:0.0085質量%以上)
機械構造用鋼中に固溶したN(固溶N)は、冷間加工時に発生する動的ひずみ時効により多くの転位を導入させる。そして冷間加工後には、この導入された転位が加工発熱によって動き易くなった固溶Nによって固着されることで、静的ひずみ時効分の強化が付与され、加工硬化分以上に強度を増加させる。N固溶量が0.0085質量%未満では、静的ひずみ時効による強度増加の効果を十分に得ることができない。したがって、N固溶量は0.0085質量%以上とし、0.009質量%以上が好ましく、0.0095質量%以上がさらに好ましい。一方、N固溶量が過剰になると、静的ひずみ時効よりも動的ひずみ時効の影響が顕著になり、変形抵抗が増大するため、冷間加工性が劣化する。N固溶量は前記組成におけるN含有量以下となるので、N固溶量の上限値は前記N含有量の上限値すなわち0.02質量%に収束される。このようなN固溶量は、前記のN含有量およびAl含有量のそれぞれの制限を満足し、かつ後記するように製造時の熱間加工工程(圧延、鍛造)における温度等を制御することにより、制御される。なお、本発明におけるN(窒素)固溶量の値は、JIS G 1228に準拠し、機械構造用鋼の全窒素量(N含有量)から窒素化合物における窒素量を減じた差とする。以下に、鋼中のそれぞれの窒素量を測定する方法を説明する。
鋼中の全窒素量は、不活性ガス融解法−熱伝導度法により測定できる。この方法は、供試鋼材から切り出された試料をるつぼに投入し、この試料を不活性ガス気流中で融解して窒素を含めたガスを抽出し、このガスを熱伝導度セルに搬送して熱伝導度の変化を測定して、窒素の量を求めるものである。
鋼中の窒素化合物における窒素量は、アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法により測定できる。この方法は以下の通りである。まず、供試鋼材から切り出された約0.5gの試料を、10%AA系電解液(鋼材の表面に不動態皮膜を生成させない非水溶媒系の電解液であり、具体的には、10%アセチルアセトン、10%塩化テトラメチルアンモニウム、残部:メタノール)中での定電流電解により溶解する。この溶解した試料(と電解液)をメッシュサイズ0.1μmのポリカーボネート製フィルタでろ過し、不溶解残渣(窒素化合物)とろ液とに分離する。不溶解残渣を硫酸、硫酸カリウム、および純Cuチップ中で加熱、分解した後、前記ろ液に混合する。この混合された溶液を、水酸化ナトリウムでアルカリ化した後、水蒸気蒸留して、留出したアンモニウムを希硫酸に吸収させる。溶液にフェノール、次亜塩素酸ナトリウム、およびペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウムを加えて青色錯体を生成させる。この青色錯体の吸光度を光度計を用いて測定して、この吸光度から窒素化合物中の窒素の量を求めるものである。
(フェライト相の組織分率:90%以上)
本発明に係る機械構造用鋼は、冷間加工性を付与するために軟質のフェライト相を主組織とする。フェライト単相とすることで、機械構造用鋼を冷間加工して機械構造用部品を製造する際に、組織全体が同時にかつ均一に変形、硬化するので、全体として変形抵抗の上昇が抑えられ、冷間加工性が劣化しない。また、検討の結果、必ずしも完全なフェライト単相組織でなくてもよいことが判り、フェライト相の全組織に対する面積率(組織分率)が90%以上であればよい。一部粒界にセメンタイトが析出していても、それが球状化していれば冷間加工性を劣化させないためである。フェライト相の組織分率が90%未満になると、フェライトとセメンタイトとの界面が割れの起点となり易く、冷間加工性が劣化する。フェライト相の組織分率は、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上である。組織を判別する方法としては、光学顕微鏡での観察が一例として挙げられる。また、組織を観察する位置としては、機械構造用鋼の表面から機械構造用鋼を製造する際の冷間加工方向(圧縮方向)の長さ(縮径して円柱形状に加工した場合は当該円柱の直径)の1/4の深さの位置が好ましく、その近傍の複数視野(例えば5視野)を観察して、得られた組織分率の平均で判定することができる。具体的には、機械構造用鋼を、前記観察位置を切断面に含むように切り出して、切断面を鏡面に研磨した後、ナイタール液(3%硝酸エタノール溶液)で腐食させ、腐食面を光学顕微鏡にて100倍程度で観察し、白く見える領域がフェライト相である。組織分率を求めるには、例えば、光学顕微鏡写真上からランダムに複数点(例えば100点)を選び、各点の組織を判別して、フェライト相の点数の全点数に対する百分率を算出すればよい。あるいは、光学顕微鏡写真を市販の画像解析ソフトで処理して白い領域の面積率を求めてもよい。
(フェライト結晶粒の平均粒径:7μm以下)
本発明に係る機械構造用鋼は、機械構造用部品を製造する際の冷間加工によって強度を増加させるが、冷間加工前すなわち機械構造用鋼の段階での強度が不足していては、冷間加工後に十分な強度とならない。そして、金属材料の強度は、一般的に結晶粒径の平方根に反比例することがHall-Petchの法則として知られている。すなわち、結晶粒径が小さくなるにしたがい強度が大きくなるので、前記の強度を得るため、機械構造用鋼におけるフェライト結晶粒の平均粒径を7μm以下とする。好ましくは6.5μm以下、さらに好ましくは5.5μm以下である。このような結晶粒とするためには、後記するように、機械構造用鋼を製造する際の冷間加工において、ひずみ量を所定値以上とする。フェライト結晶粒は、前記の組織の判別と同じ位置の複数視野を観察位置として、組織の判別と同様にナイタール液で腐食させた切断面を光学顕微鏡にて1000倍程度で観察することによって検出することができる。結晶粒径を求めるには、例えば、光学顕微鏡写真に直線を引き、この直線と交差する結晶粒界の数をカウントし、この結晶粒界の数で直線の長さを割れば、当該光学顕微鏡写真上の結晶粒の平均粒径を算出できる。
(引張強度:500MPa以上)
本発明に係る機械構造用鋼は、前記した通り、機械構造用鋼の段階である程度の強度を有する必要がある。したがって、機械構造用鋼の引張強度は500MPa以上とし、好ましくは550MPa以上、さらに好ましくは600MPa以上である。さらに、本発明に係る機械構造用鋼は、その結晶粒の微細さに対する強度が高く、フェライト結晶粒の平均粒径(μm)をdとして表したとき、引張強度は(1200/√d)MPa以上とする。好ましくは(20+1200/√d)MPa以上、さらに好ましくは(50+1200/√d)MPa以上である。結晶粒径に対してこのような引張強度とするためには、Nの固溶量を制御する。すなわち、機械構造用鋼を製造する際の冷間加工において、結晶粒の微細化と共に、固溶Nにより強度を増加させる。そして、機械構造用部品を製造する際の冷間加工時には、同様に固溶Nにより強度がさらに増加して、機械構造用部品の強度を向上させることができる。一方、結晶粒の微細さに対する強度が過剰に高くなると、冷間加工性が劣化するため、引張強度は(300+1200/√d)MPa以下とする。好ましくは(280+1200/√d)MPa以下、さらに好ましくは(250+1200/√d)MPa以下である。したがって、引張強度(MPa)をTSとして表したとき、引張強度は下式にしたがう。
0≦TS−1200/√d≦300
機械構造用鋼の引張強度は、例えばJIS Z 2241による引張試験により測定する。
本発明に係る機械構造用鋼の製造方法は、前記成分の組成を有する鋼を公知の方法で溶製したものを1000℃以上に加熱した後、熱間加工し、1000℃から200℃以下まで冷却速度1.5℃/sec以上で冷却する熱間加工工程と、開始温度200℃未満、ひずみ量0.3以上で冷間加工する冷間加工工程と、を行う。以下に、製造方法における各要素について説明する。
〔熱間加工工程〕
(加熱温度:1000℃以上)
機械構造用鋼の製造における熱間加工の際には、まず、鋼(溶製したもの)を1000℃以上に加熱する。これは、溶製時等に生成したAlNを分解して、Nを鋼中に固溶させるためである。好ましくは1020℃以上、さらに好ましくは1050℃以上である。一方、過剰に高く加熱しても、前記効果が飽和して製造コストが増大するので、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1180℃以下、さらに好ましくは1150℃以下である。このような温度に加熱された後、速やかに熱間鍛造や熱間圧延により所望の形状および大きさとする。
(冷却速度:1.5℃/sec以上)
熱間加工後の冷却が緩やかであると、鋼中にAlNが析出するため、1000℃から200℃以下になるまでは冷却速度1.5℃/sec以上で冷却する。好ましくは2℃/sec℃以上、さらに好ましくは2.5℃/sec以上である。冷却速度の上限については特に規制されず、設備能力や熱間加工材の形状に応じて設定すればよく、好ましくは15℃/sec℃以下、さらに好ましくは10℃/sec以下である。
〔冷間加工工程〕
(開始温度:200℃未満)
機械構造用鋼の製造における冷間加工は、開始温度を200℃未満とする。本発明に係る機械構造用鋼はNの固溶量が多いため、200℃以上で加工されると、変形時の動的ひずみ時効によって加工性が劣化し、さらに温度が高いと転位が増殖し難くなって強化が不十分になるからである。
(冷間加工ひずみ量:0.3以上)
冷間加工においては、ひずみ量を0.3以上とする。冷間加工ひずみ量が0.3未満では、結晶粒が微細化されず、またこの冷間加工による強化も十分に得られない。
〔機械構造用部品〕
本発明に係る機械構造用部品は、前記機械構造用鋼を開始温度200℃未満で冷間加工(冷間鍛造)して製造される。機械構造用鋼を製造する際の冷間加工と同様、200℃以上で加工されると、強化が不十分になるからである。冷間加工後は、切削等、公知の方法で所望の形状に仕上げる。
以上のようにして得られる機械構造用部品は、機械構造用鋼の元の強度に対して、冷間加工における通常の加工硬化に加え、固溶Nの作用によりさらに強化されたものとなる。具体的には、機械構造用鋼を、冷間鍛造として1600tプレスで圧縮率80%まで圧縮してなる機械構造用部品のビッカース硬さ(冷間加工後硬さH)が、(1)330Hv以上、あるいは、前記冷間鍛造において最大の変形抵抗(MPa)をDRとして表したとき(2)(DR+200)/2.5以上、となる。変形抵抗DRは、機械構造用鋼の元の強度である引張強度TSに略比例するので、前記(2)の基準を満足することは、引張強度500MPa以上である機械構造用鋼が冷間加工により大幅に強化されたことを表す。また、これは同時に、変形抵抗が小さく、冷間加工性に優れている割に高強度の機械構造用部品になることを表す。なお、圧縮率は、圧縮前(機械構造用鋼)の圧縮方向長をH0、圧縮後(機械構造用部品)の圧縮方向長をHとして表したとき、(H0−H)/H0×100で算出される。
以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではなく、請求項に示した範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〔供試材作製〕
表1および表2に示す化学成分組成の鋼150kgを真空誘導炉で溶解して、上面:φ245mm、下面:φ210mm×高さ480mmのインゴットに鋳造した。このインゴットを、1150〜1250℃で3hrのソーキングの後、155mm角の四角材に熱間鍛造して、長さ600mm程度に切断した。
(熱間加工工程)
表1に示す供試材No.1〜33については、前記四角材をダミービレットに溶接し、1000〜1200℃に加熱して、φ80mmの丸棒材に熱間圧延し、冷却速度2℃/secで200℃以下に冷却して、長さ900mm程度に切断した。また、表2に示す供試材No.34〜47については、前記四角材を1000〜1200℃に加熱して、φ80mmの丸棒材に熱間鍛造し、冷却速度2℃/secで200℃以下に冷却して、長さ900mm程度に切断した。
(冷間加工工程)
前記それぞれの丸棒材(熱間圧延材、熱間鍛造材)を、冷間加工にて表1および表2に示すひずみ量となるようにドロー加工して、φ75mm〜φ10.5mmに縮径された丸棒状(円柱形状)の機械構造用鋼の供試材を作製した。得られた供試材について、N固溶量、フェライト組織分率、フェライト結晶粒の平均粒径、および引張強度を測定し、表1および表2に示す。
〔機械構造用鋼の測定、評価〕
(N固溶量)
供試材から切り出したサンプルで、前記JIS G 1228に準拠する不活性ガス融解法−熱伝導度法およびアンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法にてN固溶量を測定した。
(フェライト組織分率、フェライト結晶粒径)
供試材の表面から円柱の直径の1/4の深さの位置かつ軸方向中央近傍を観察できるように、供試材を円柱の軸に沿って(半円柱形状に)切断して樹脂に埋め込み、切断面をエメリー紙およびダイヤモンドバフで鏡面に研磨し、ナイタール液(3%硝酸エタノール溶液)で腐食させた。腐食面を光学顕微鏡で観察して構成組織および結晶粒を判別した。組織解析は、100倍で5箇所(5視野)の写真を撮影し、これらの写真に対して、画像解析ソフト(Image Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて画像を2値化して、白色の領域をフェライト相として各写真の面積率を算出し、5視野の平均値をフェライト組織分率とした。結晶粒径の測定は、1000倍で5箇所(5視野)の写真を撮影し、写真に直線を引き、この直線と交差する結晶粒界の数をカウントして結晶粒径の平均値を算出し、さらに5視野の平均値を平均粒径とした。
(引張強度)
供試材の中心部(円柱の軸近傍)からJIS14A号の引張試験片(標点φ8mmの棒状試験片)を切り出し、JIS Z 2241による引張試験を実施して引張強度を測定した。また、この引張強度(MPa)TSと前記フェライト結晶粒の平均粒径(μm)dとから算出した(TS−1200/√d)を表1および表2に併記する。なお、供試材の中心部から試験片を切り出すとは、供試材の円柱の軸と棒状試験片の円柱の軸とが略一致するということである。
〔冷間鍛造材作製〕
表1に示す供試材No.1〜33の中心部から、φ10mm×15mmの試験片を切り出した。この試験片を、1600tプレスを用い、端面を拘束した状態で、表3に示す開始温度で、ひずみ速度10/secの冷間鍛造により試験片の軸方向に圧縮率80%まで圧縮して、機械構造用部品の供試材(冷間鍛造材)を作製した。この冷間鍛造における冷間加工性、および得られた冷間鍛造材の強度を評価し、表3に示す。
表2に示す供試材No.34〜47の中心部からφ10mm×15mmの試験片を、また前記供試材の一部について、中心部からさらにφ20mm×30mm、φ30mm×45mmの試験片をそれぞれ切り出した。これらの試験片を、1600tプレスを用い、端面を拘束した状態で、開始温度20℃で、ひずみ速度10/secの冷間鍛造により試験片の軸方向に圧縮率80%まで圧縮して、機械構造用部品の供試材(冷間鍛造材)を作製した。この冷間鍛造における冷間加工性、および得られた冷間鍛造材の強度を評価し、表4に示す。
〔機械構造用部品の測定、評価〕
(冷間加工性)
冷間鍛造時に、1600tプレスに付属のロードセルと変位計を用いて、変位抵抗−変位曲線を記録し、この曲線における変形抵抗の最大値を冷間加工における変形抵抗DRとして表3および表4に示す。さらに、この変形抵抗(MPa)DRから算出した((DR+200)/2.5)を表3および表4に併記する。また、冷間鍛造により割れの発生した冷間鍛造材を冷間加工性が不良であるとして「×」、割れのない冷間鍛造材を冷間加工性が良好であるとして「○」と示した。
(冷間加工後強度)
冷間加工後の強度として、冷間鍛造材のビッカース硬さを測定した。冷間鍛造材の円柱の軸(冷間鍛造前の試験片の軸と同)に沿って切断して、樹脂に埋め込んで試料として調整した。この試料について、冷間鍛造材の円柱の軸方向中央における直径の1/4位置の両側3点ずつの計6点のビッカース硬さを測定し、6点の平均値を冷間加工後硬さHとした。冷間加工後強度の合格基準は、冷間加工後硬さHが(1)330Hv以上、および前記の(2)(DR+200)/2.5以上、の少なくとも一方とする。
Figure 0005302704
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(評価)
表1および表2に示すように、機械構造用鋼の供試材No.1〜22,34〜43は、その組成における成分および冷間加工条件が本発明の範囲であるので、N固溶量、フェライト相の組織分率、結晶粒径および引張強度ならびに両者の相関(以下、これらをまとめて機械構造用鋼の特性という)が、本発明の機械構造用鋼の要件を満足した。さらに、これらの供試材のうち、表3および表4に示すように、開始温度200℃未満で冷間鍛造を施した供試材No.1〜21,34〜43は、いずれも割れを生じることなく良好な冷間加工性を示し、かつ良好な冷間加工後強度が得られた。このうち供試材No.1においては、機械構造用鋼の引張強度TRが本発明の範囲内(500MPa以上)で低かったために冷間加工後硬さHが330Hvに達しなかったが、それ以外の供試材No.2〜21,34〜43においては冷間加工後硬さHが330Hv以上の高強度が得られた。さらに、供試材No.2,9,13,18,34〜36は、冷間加工後硬さHに対して変形抵抗DRが低く、特に優れた冷間加工性を示した。また、これらの効果は、供試材No.34〜39,42,43の結果が示すように、冷間鍛造前の試験片の大きさに依存しない。これに対して、供試材No.22は、機械構造用鋼としては本発明の要件を満足するが、開始温度200℃以上で鍛造を施したため、強度が十分に増加しなかった。
供試材No.23,44はC含有量が過剰なため、機械構造用鋼としてのフェライト相の組織分率は満足しているが、硬質のパーライトが形成されたことにより、冷間加工性が劣化した。さらに供試材No.33,47は一般的な炭素鋼で、C,Si含有量が過剰で、かつN含有量が不足しているため、フェライト相の組織分率が低く、さらにN固溶量が不足して結晶粒径に対する引張強度が低く、その結果、冷間加工性および冷間加工後の強度が得られなかった。供試材No.24はSi含有量が不足しているため、機械構造用鋼の特性は満足しているが、冷間加工性が劣化した。一方、供試材No.25は、Si含有量が過剰なため冷間加工性が劣化し、また冷間加工時のひずみ量が不足したため結晶粒が微細化されず、かつ引張強度が不足した。
供試材No.26,27,45はMn含有量が本発明の範囲外であり、また供試材No.28はP含有量が、供試材No.29はS含有量がそれぞれ過剰なため、いずれも機械構造用鋼の特性は満足しているが、冷間加工性が低下した。
供試材No.30はAl含有量が過剰なため、供試材No.31,46はN含有量が不足しているため、それぞれN固溶量が不足した結果、結晶粒径に対する引張強度が不足し、さらに冷間加工後の強度が十分に増加しなかった。一方、供試材No.32はN含有量が過剰なため、固溶Nも過剰となり、結晶粒径に対して引張強度が高くなりすぎた結果、冷間加工性が劣化した。

Claims (8)

  1. C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.05質量%、Mn:0.4〜1.0質量%、Al:0.01〜0.06質量%、S:0.005〜0.05質量%、P:0.05質量%以下、N:0.009〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    N固溶量は0.0085質量%以上であり、
    フェライト相の組織分率は90%以上であり、
    フェライト結晶粒の平均粒径は7μm以下であり、
    引張強度は500MPa以上であり、
    前記フェライト結晶粒の平均粒径(μm)をd、前記引張強度(MPa)をTSとしてそれぞれ表したとき、0≦TS−1200/√d≦300を満足することを特徴とする機械構造用鋼。
  2. 前記組成がさらに、Cr:2質量%以下、およびMo:2質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の機械構造用鋼。
  3. 前記組成がさらに、Ti:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、およびV:0.2質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機械構造用鋼。
  4. 前記組成がさらに、B:0.005質量%以下を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の機械構造用鋼。
  5. 前記組成がさらに、Cu:5質量%以下、Ni:5質量%以下、およびCo:5質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の機械構造用鋼。
  6. 前記組成がさらに、Ca:0.05質量%以下、REM:0.05質量%以下、Mg:0.02質量%以下、Li:0.02質量%以下、Pb:0.5質量%以下、およびBi:0.5質量%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の機械構造用鋼。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の機械構造用鋼の製造方法であって、
    前記組成の鋼を、1000℃以上に加熱した後、熱間加工し、この熱間加工後、1000℃から200℃以下まで冷却速度1.5℃/sec以上で冷却する熱間加工工程と、
    開始温度200℃未満、ひずみ量0.3以上で冷間加工する冷間加工工程と、を行うことを特徴とする機械構造用鋼の製造方法。
  8. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の機械構造用鋼を、開始温度200℃未満で冷間加工して製造された機械構造用部品。
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