JP4306078B2 - 焼付け硬化性および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

焼付け硬化性および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の構造部材、足周り部材等の使途に供して好適な、歪時効強化能すなわち焼付け硬化性(BH性)および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板およびその製造方法に関する。
本発明において、歪時効強化能とは、2%の歪付与時の最高応力と、該歪付与の後 170℃で20分保持した後、再度引張変形を付与した時の上降伏点との差を意味する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用鋼板には、軽量化による燃費向上のため一層の高強度化が要求されている。しかし、鋼板の高強度化は、プレス成形を困難にするという問題がある。また、最近では乗員の安全確保という目的から、衝突時におけるような高歪速度下での変形エネルギー量で評価される耐衝撃性の向上が望まれている。
【0003】
高強度化によるプレス成形性の劣化を防止した高強度化技術としては、成形時には比較的低強度で加工がしやすく、塗装時の焼付けによって強度を増加させる、いわゆる焼付け硬化性(BH性)を利用した技術が知られており、冷延鋼板については広く利用されている(例えば、特開平6−73498 号公報、特開平7−268544号公報)。しかしながら、これらの技術で得られる焼付け硬化性の向上により、降伏強さを増加させることが可能であり、自動車外板における耐デント性の向上には有効であるが、内装板に要求される耐衝撃性の向上を考慮すると、増加量が小さく、十分な効果は得られない。
【0004】
一方、特開平1−180917号公報には、C:0.030 〜0.100 %、N:0.0015〜0.0150%、Al:0.025 〜0.100 %を含有する鋼を、1200℃以下に加熱し、(Ar3 +30℃)〜950 ℃の温度で仕上圧延を行い、圧延後3秒以内に30℃/s以上の冷却速度で500 ℃/s以下まで急冷し、400 〜500 ℃で巻き取る、加工性、焼付け硬化性に優れた熱延鋼板の製造方法が記載されている。そこでは、圧延後急冷し、鋼板中のC,Nの固溶量を増加させることによってBH性の向上を図っている。
【0005】
また、特開平4−74824 号公報には、C:0.02〜0.13%、N:0.0080〜0.0250%、sol.Al:0.10%以下を含有する鋼を、1100℃以上に再加熱し、850 〜950 ℃の温度で仕上圧延を終了する熱間圧延に供し、ついで15℃/s以上の冷却速度で、一気にあるいは途中空冷を挟んで、350 ℃以下まで冷却したのち巻き取る、焼付け硬化性と加工性に優れた熱延鋼板の製造方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平1−180917号公報に記載された技術で製造された熱延鋼板では、耐常温時効性が劣化する、すなわち、常温で長時間放置すると鋼の伸び特性が劣化するという問題を残していた。また、特開平4−74824 号公報に記載された技術で製造された熱延鋼板は、フェライトとマルテンサイトを主体とする複合組織を有するものであり、加工−塗装焼付け処理後の引張強さは増加するが、耐常温時効性については、配慮されておらず、劣化するという問題を残していた。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題を有利に解決し、引張強さ440 MPa 以上の高強度熱延鋼板において、焼付け硬化性、耐衝撃性をともに向上させた、自動車の内装材として好適な熱延鋼板およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意考究・実験した結果、440 MPa 以上の引張強さを有する鋼について加工−塗装焼付け処理により降伏強さを80MPa 以上上昇させれば低歪速度での変形時の吸収エネルギーが高まり、耐衝撃性が向上し、加工−塗装焼付け処理による降伏強さの上昇を、耐時効性を劣化させずに達成するには、鋼板中に固溶状態で存在するNすなわち固溶Nの量ならびにフェライト粒径を適正範囲内に制御することが有効であり、固溶Nの量およびフェライト粒径は、仕上圧延条件および仕上圧延後の冷却条件を適正化することにより制御可能であることを知見するに至った。
【0009】
例えば図1は、前記実験結果の一例を示すもので、表1の鋼C相当組成を有する鋼素材を種々の条件で熱間圧延し、得られた熱延鋼板について調査した曲げ圧壊試験の吸収エネルギー上昇率ηとBH量の関係を示すグラフである。
ここに、曲げ圧壊試験は、図3に示す形状の試験片、すなわち、曲げ加工により成形したハット成形部品1と平板2とをスポット溶接により接合した試験片3を、図4に示すように、間隔 500mmの2点で支持しておき、これに先端が曲率半径R= 150mmの曲面形状をした50kgのポンチ4を55km/hの速度で衝突させて3点曲げ変形を生じさせ、その時の吸収エネルギーを求めることにより行った。
【0010】
前記吸収エネルギー上昇率ηは、前記曲げ圧壊試験において、試験片として曲げ加工およびスポット溶接したままのものと、該曲げ加工およびスポット溶接ののち170 ℃×20分の塗装焼付け相当の熱処理を施したものとを用いて、それぞれ圧壊して吸収エネルギーE(曲げ加工スポット溶接まま)、EBH(熱処理後)を測定し、η={(EBH−E)/E}×100 (%)なる式により算出した。
【0011】
また、BH量(MPa )は、JIS 13 B号引張試験片に、2%引張予歪付与→除荷→170 ℃×20分保持(塗装焼付け処理相当の熱処理)を順次行う歪時効処理を施し、次いで歪速度10-3/sの引張試験を行い、2%引張予歪付与時の最高応力と、前記引張試験により求められる上降伏点の差を求めることにより得られる。なお、BH量(MPa )を歪時効強化能と称する。
【0012】
図1に示すようにBH量が80MPa を超えるとηが急増し、高い耐衝撃性向上能が発現する。なお、得られた熱延鋼板について、固溶N量およびフェライト粒径を測定したところ、このBH量>80MPa の範囲(良好範囲と称する)となるものでは固溶N:0.0030%以上でかつフェライト粒径:7.0 μm以下であった。すなわち、固溶Nを0.0030%以上、フェライト粒径を7.0 μm以下に制御することにより、80MPa を超えるBH量が得られ、同時に耐衝撃性を顕著に向上させることができる。
【0013】
また、図2は、前記実験結果を一部整理して得られた、フェライト粒径と仕上圧延の最終3パス合計圧下率RFL3P、仕上圧延終了温度FDTの関係を示すグラフである。図示のように、FDTが(Ar3 +10℃)程度〜(Ar3 +100 ℃)程度の温度域にあり、かつRFL3Pが15%程度以上の場合に、フェライト粒径が7.0 μm以下となる。
【0014】
本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ねてなされたものであって、その要旨とするところは、C:0.01〜0.16%、Si:2.0 %以下、Mn:3.0 %以下、P:0.005 〜0.2 %、Al:0.001 〜0.1 %、N:0.0060超〜0.0200%うち固溶N:0.0030〜0.0100%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成および平均結晶粒径7.0 μm以下のフェライトを主相とし、前記フェライトの体積率が65%以上である組織を有し、引張強さ440 〜840MPa、歪時効強化能80MPa 超を有する焼付け硬化性および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板にある。
【0015】
本発明の高張力熱延鋼板では、前記組成にさらに、Ti:0.001 〜0.1 %、Nb:0.001 〜0.1 %のうちの1種または2種および/またはNi:0.1 〜1.5 %、Cr:0.1 〜1.5 %、Mo:0.1 〜1.5 %のうちの1種または2種以上が付加されたものが好ましい。また、前記組織がパーライト、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの1種または2種以上からなる第2相を有するものが好ましい。また、本発明の高張力熱延鋼板は、鋼板表面にめっき層を有するものであってもよい。
【0016】
また、本発明は、C:0.01〜0.16%、Si:2.0 %以下、Mn:3.0 %以下、P:0.005 〜0.2 %、Al:0.001 〜0.1 %、N:0.0060超〜0.0200%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成になる鋼素材を950 〜1250℃に加熱後、粗圧延し、次いで最終3パス合計圧下率:15〜65%、圧延終了温度FDT:(Ar3 +10℃)〜(Ar3 +100 ℃)になる仕上圧延に供し、該仕上圧延の終了後0.5 秒以内に冷却速度20℃/s以上で冷却し、600 〜300 ℃で巻き取ることを特徴とする焼付け硬化性および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法である。
本発明の高張力熱延鋼板の製造方法では、前記鋼素材の組成にさらに、Ti:0.001 〜0.1 %、Nb:0.001 〜0.1 %のうちの1種または2種および/またはNi:0.1 〜1.5 %、Cr:0.1 〜1.5 %、Mo:0.1 〜1.5 %のうちの1種または2種以上が付加されたものが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明における組成の限定理由は以下の通りである。なお、化学成分含有量(濃度)に係る%は質量パーセントを意味する。
C:0.01〜0.16%
Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、強度確保の観点から0.01%以上を必要とするが、一方、0.16%を超えて含有すると溶接性が劣化するので、0.01〜0.16%とする。就中 0.01 〜0.12%が好ましい。
【0018】
Si:2.0 %以下
Siは、固溶強化により鋼の強度増加に寄与する元素であり、所望の強度に応じて含有量を調整する。しかし、2.0 %を超えると加工性を劣化させるため2.0 %以下とする。なお、強度の確保の観点からは、Siは0.003 %以上含有させるのが望ましい。
【0019】
Mn:3.0 %以下
Mnは、鋼の強度を増加させるとともに、Sによる熱間脆性を防止する元素であり、積極的に含有させる。しかし、3.0 %を超えて含有させると加工性が低下する。このため、Mnは3.0 %以下に限定した。なお、所望の強度を確保し、熱間脆性を防止するためには0.01%以上含有させることが望ましい。
【0020】
P:0.005 〜0.2 %
Pは、鋼の強度を増加させる元素であり、引張強さ440 MPa 以上を確保するには0.005 %以上を必要とするが、一方、0.2 %を超えると溶接性が劣化し、またPが粒界に偏析して粒界割れを発生させる虞があるため、0.005 〜0.2 %とする。就中 0.005〜0.15%が好ましい。
【0021】
Al:0.001 〜0.1 %
Alは、脱酸剤として作用し、鋼の脱酸のためには0.001 %以上含有する必要があるが、一方、0.1 %を超えると表面性状を劣化させるため、0.001 〜0.1 %とする。就中 0.005〜0.07%が好ましい。
N:0.0060超〜0.0200%うち固溶N:0.0030〜0.0100%
Nは、本発明ではとくに重要な元素であり、鋼中に固溶して加工−塗装焼付け処理後に降伏強さを顕著に増加させる、すなわち歪時効強化能を著しく向上させる働きをもつ。この働きは固溶Nが0.0030%以上で発現するが、一方、固溶Nが0.0100%超では成形性が劣化するため、固溶Nは0.0030〜0.0100%の範囲に限定される。また、全Nが0.0060%以下では固溶Nが0.0030%に届かず、一方、全Nが0.0200%を超えると固溶Nが0.0100%を超えてしまうため、全Nは0.0060超〜0.0200%とする。就中好ましくは、固溶N:0.0050〜0.0100%である。
【0022】
なお、N(全N)は湿式分析により定量され、固溶Nは、抽出分離法による窒化物中のN定量値を前記全Nの定量値から差し引くことにより定量される。
Ti:0.001 〜0.1 %、Nb:0.001 〜0.1 %のうちの1種または2種
Ti、Nbはいずれも炭化物、窒化物、硫化物を形成し強度および靱性の向上に寄与する。これらの効果は、0.001 %以上で認められるが、0.1 %を超えると焼付け硬化性に寄与するC、Nが減少し、所望の焼付け硬化性を確保しにくくなる。よって、Ti、Nbはいずれも0.001 〜0.1 %が好ましい。
【0023】
Ni:0.1 〜1.5 %、Cr:0.1 〜1.5 %、Mo:0.1 〜1.5 %のうちの1種または2種以上
Ni、Cr、Moは、いずれも固溶強化により鋼の強度を増加させる元素であるとともに、熱延後の冷却過程でオーステナイト(γ)を安定化し二相組織を形成しやすくする効果もある。かかる効果は0.1 %以上で認められる。一方、1.5 %を超えると成形性、めっき性、スポット溶接性を劣化させる。よって、Ni、Cr、Moは、いずれも0.1 〜1.5 %が好ましい。
【0024】
本発明に係る熱延鋼板では、上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物に属するS、Oは、非金属介在物を形成し品質に悪影響を及ぼすため、それぞれ0.05%以下、0.01%以下に低減するのが好ましい。
本発明の熱延鋼板の組成は上記の通りであるが、所望の焼付け硬化性を得るには組成の限定のみでは不十分であり、その組織が平均結晶粒径7.0 μm以下のフェライトを主相とする組織であることを要する。ここに、主相とは体積率50〜100 %を占める相を意味し、この相が平均結晶粒径7.0 μm以下のフェライトからなる。主相がフェライト以外のものでは加工性に乏しく、また、主相がフェライトであってもその平均粒径が7.0 μm超では図1の良好範囲を逸脱して焼付け硬化性およびこれによる耐衝撃性の同時向上は望みえない。この組織要件を付加することで、組織が微細化するとともに、固溶Nの偏在箇所になる結晶粒界が増大し、そのことによって初めて、引張強さ:440 〜840MPa、歪時効強化能:80MPa 超を確保することができ、なおかつ、常温時効性をも向上させることができる。
【0025】
なお、フェライト体積率65%以上のものとこれ未満のものとを比べると、前者のほうが一段と焼付け硬化性、耐衝撃性に優れる。よって、主相であるフェライトの体積率は65%以上が好ましい。
また、前記組織がパーライト、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトの1種または2種以上からなる第2相を有するものが好ましい。第2相を存在させると、高価な合金元素の多量添加を要さずに高強度化することができるからである。なお、第2相の体積率は加工性の観点から3〜30%が好ましい。
【0026】
また、本発明に係る高張力熱延鋼板は、鋼板表面に、亜鉛、錫、クロム、ニッケル等のめっき層を有するものであってもよい。
次に、本発明に係る高張力熱延鋼板の好ましい製造方法について説明する。
これは、C:0.01〜0.16%、Si:2.0 %以下、Mn:3.0 %以下、P:0.005 〜0.2 %、Al:0.001 〜0.1 %、N:0.0060超〜0.0200%を含む組成になる鋼素材を950 〜1250℃に加熱後、粗圧延し、次いで最終3パス合計圧下率:15〜65%、圧延終了温度FDT:(Ar3 +10℃)〜(Ar3 +100 ℃)になる仕上圧延に供し、該仕上圧延の終了後0.5 秒以内に冷却速度20℃/s以上で冷却し、600 〜300 ℃で巻き取るという方法である。
【0027】
前記鋼素材は、公知の溶製方法により溶製された溶鋼を公知の連続鋳造法もしくは造塊法により鋳造してスラブ等の形状に凝固させたものが好ましい。
凝固後の鋼素材は、加熱炉等通常公知の装置で950 〜1250℃に加熱される。この加熱温度が950 ℃未満では窒化物が溶解しにくくなって、熱延板の固溶Nが不足し、一方、1250℃超ではオーステナイト粒が粗大化して、熱延板のフェライト粒径が7.0 μm以下にならない。よって、加熱温度は950 〜1250℃とする。就中1000〜1100℃がより好ましい。
【0028】
加熱された鋼素材は、公知の粗圧延機による粗圧延、公知の仕上圧延機による仕上圧延に順次供せられる。なお、加熱後粗圧延前に公知の幅プレス装置による幅調整を行ってもよい。
仕上圧延は、その最終3パス合計圧下率RFL3P(3スタンド以上のタンデムミルによる通常公知の連続圧延では、後段3スタンドの合計圧下率に該当する)が15〜65%に収まり、かつ圧延終了温度FDTが(Ar3 +10℃)〜(Ar3 +100 ℃)に収まるように行う必要がある。RFL3Pが15%未満であるかまたはFDTが(Ar3 +100 ℃)超であると、フェライト変態前の歪エネルギーの蓄積が不十分となり、フェライト粒径を 7.0μm 以下に微細化することができなくなる。また、FDTが(Ar3 +10℃)未満であると変態前の板厚方向歪分布が不均一となって、フェライト粒径の微細化が図れなくなる。また、RFL3Pが65%超では圧延形状の乱れが発生しやすくなる。
【0029】
仕上圧延終了後は、該終了時点から0.5 秒以内に20℃/s以上の冷却速度で冷却し、巻取温度CT:600 〜300 ℃で巻き取る必要がある。
仕上圧延終了から巻取りまでに係る限定要件は、歪エネルギーを十分に蓄積した状態で過冷度を大きくし、より多くのフェライト核を生成させるために設けられる。仕上圧延終了から冷却開始までの時間が0.5 秒を超え、もしくは巻取りまでの冷却速度が20℃/sを下回ると、フェライト核生成が不十分となり、また、フェライト粒成長も促進されて、フェライトを微細化することができない。
【0030】
巻取温度CTに係る限定要件は、固溶Nの析出抑制と操業上の問題回避のために設けられる。CTが600 ℃超では固溶Nが過剰に析出してしまい、焼付け硬化に必要な固溶N量を確保できなくなる。一方、CTが300 ℃未満では板形状が悪化したり通板性が悪化するなど操業上の問題が発生する。
上記の製造方法によって得られた本発明の熱延鋼板は、各種めっき用原板として好適であり、必要に応じてその表面に各種めっき層を形成し、各種めっき鋼板として使用することもできる。めっきの種類としては、電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき、電気錫めっき、電気クロムめっき、電気ニッケルめっき等が挙げられ、いずれも本発明の熱延鋼板の表面に形成されるめっき層として好適である。
【0031】
【実施例】
表1に示す組成になる溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとなし、これらスラブを表2に示す加熱温度に加熱後、粗圧延してシートバーとなし、これらシートバーを表2に示す最終3パス合計圧下率RFL3P、仕上圧延終了温度FDTになる仕上圧延に供し、該仕上圧延の終了時点から表2に示す時間τ秒以内に表2に示す冷却速度CR(℃/s)で表2に示す巻取温度CT(℃)まで冷却し、コイル状に巻き取って熱延鋼板(板厚 1.6mm)となした。これら熱延鋼板について、組織試験、固溶N測定、引張試験、穴拡げ試験、歪時効試験、常温時効試験、曲げ圧壊試験を行った。なお、表2中No.19 の熱延鋼板については、鋼板表面に溶融亜鉛めっきを施した後に、各種試験に供した。
【0032】
(i) 組織試験
前記熱延鋼板から該鋼板の圧延方向に垂直な断面を有する試片を採取し、該断面を適宜の腐食液で処理し現出させた組織を光学顕微鏡にて観察して同定した。また、画像解析によりフェライト体積率およびフェライト粒径(平均結晶粒径)を測定した。
【0033】
(ii)固溶N測定
電解抽出法により熱延鋼板中に窒化物として存在するNを定量し、その結果を表1のN量から差し引くことにより測定した。
(iii) 引張試験
前記熱延鋼板から採取したJIS 13 B号引張試験片に歪速度10-3/sの引張試験を行って降伏強さYS(MPa )、引張強さTS(MPa )、伸びEL(%)を測定した。
【0034】
(iv)穴拡げ試験
前記熱延鋼板に初期直径d0=10mm の穴を打ち抜き、頂角60°の円錐ポンチを上昇させ穴を拡げた際に、亀裂が板厚貫通したところでポンチ上昇を止め、亀裂貫通後の打ち抜き穴径d を測定し、穴拡げ率λ=((d-d0)/d0)×100 (%)を算出して伸びフランジ性の指標とした。
【0035】
(v) 歪時効試験
前記熱延鋼板から採取したJIS 13 B号引張試験片に前述の、2%引張予歪付与→除荷→ 170℃×20分保持という歪時効処理を施した後歪速度10-3/sの引張試験を行ってBH量を求めた。また、JIS13B号引張試験片に5%の引張歪を付与した後、一旦除荷し、 170℃×20分の塗装焼付処理相当の熱処理を施し、次いで引張試験により引張強さTSBH(MPa )を求め、ΔTS=TSBH−TSを求めた。
【0036】
(vi)常温時効試験
前記熱延鋼板から採取して50℃×400 hの時効処理を施した試料から採取したJIS 13 B号引張試験片に歪速度10-3/sの引張試験を行って伸びELA (%)を測定し、伸び減分ΔEL=EL−ELA で耐常温時効性を評価した。
(vii) 曲げ圧壊試験
前記熱延鋼板について前述の曲げ圧壊試験を行い、その吸収エネルギー上昇率ηで耐衝撃性向上能を評価した。
【0037】
これら試験の結果を表3に示す。表3より、実施例はいずれも本発明要件を満足し、高い耐常温時効性、耐衝撃性向上能を示すのに対し、比較例は本発明要件の少なくともいずれかを満たしておらず、耐常温時効性、耐衝撃性向上能の少なくとも一つが実施例よりも大きく劣っている。
【0038】
【表1】
Figure 0004306078
【0039】
【表2】
Figure 0004306078
【0040】
【表3】
Figure 0004306078
【0041】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、引張り強さ440 MPa 以上の高強度熱延鋼板において、焼付け硬化性、耐衝撃性をともに向上させた、自動車の内装材として好適な熱延鋼板を安定して供給することができるようになるという、産業上寄与するところ大なる格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】曲げ圧壊試験の吸収エネルギー上昇率ηとBH量の関係を示すグラフである。
【図2】フェライト粒径と仕上圧延の最終3パス合計圧下率RFL3P、仕上圧延終了温度FDTの関係を示すグラフである。
【図3】曲げ圧壊試験の試験片形状を示す斜視図である。
【図4】曲げ圧壊試験要領を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ハット成形部品
2 平板
3 試験片
4 ポンチ

Claims (6)

  1. C:0.01〜0.16%、Si:2.0 %以下、Mn:3.0 %以下、P:0.005 〜0.2 %、Al:0.001 〜0.1 %、N:0.0060超〜0.0200%うち固溶N:0.0030〜0.0100%、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成および平均結晶粒径7.0 μm以下のフェライトを主相とし、前記フェライトの体積率が65%以上である組織を有し、引張強さ440 〜840MPa、歪時効強化能80MPa 超を有する焼付け硬化性および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板。
  2. 前記組成にさらに、Ti:0.001 〜0.1 %、Nb:0.001 〜0.1 %のうちの1種または2種および/またはNi:0.1 〜1.5 %、Cr:0.1 〜1.5 %、Mo:0.1 〜1.5 %のうちの1種または2種以上が付加された請求項1記載の高張力熱延鋼板。
  3. 前記組織がパーライト、ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイトのうちの1種または2種以上からなる第2相を有する請求項1または2に記載の高張力熱延鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の高張力熱延鋼板の表面にめっき層を形成してなる焼付け硬化性および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板。
  5. C:0.01〜0.16%、Si:2.0 %以下、Mn:3.0 %以下、P:0.005 〜0.2 %、Al:0.001 〜0.1 %、N:0.0060超〜0.0200%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成になる鋼素材を950 〜1250℃に加熱後、粗圧延し、次いで最終3パス合計圧下率:15〜65%、圧延終了温度FDT:(Ar 3 +10℃)〜(Ar 3 +100 ℃)になる仕上圧延に供し、該仕上圧延の終了後0.5 秒以内に冷却速度20℃/s以上で冷却し、600 〜300 ℃で巻き取ることを特徴とする焼付け硬化性および耐衝撃性に優れた高張力熱延鋼板の製造方法
  6. 前記鋼素材の組成にさらに、Ti:0.001 〜0.1 %、Nb:0.001 〜0.1 %のうちの1種または2種および/またはNi:0.1 〜1.5 %、Cr:0.1 〜1.5 %、Mo:0.1 〜1.5 %のうちの1種または2種以上が付加された請求項5記載の高張力熱延鋼板の製造方法。
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