JP2017193767A - 冷間鍛造用鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷間鍛造性および被削性に優れた冷間鍛造用鋼およびその製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.40〜2.00%、S:0.008〜0.040%未満、Cr:0.01〜3.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.0250%以下、Ca:0.0001〜0.0050%、Bi:0.0001〜0.0050%を含有し、P:0.050%以下、O:0.0020%以下に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、下記式(1)を満たす化学組成を有し、圧延方向と平行な断面において、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm2以上である冷間鍛造用鋼とする。0.030≦Ca/S≦0.150 式(1)(式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。)【選択図】なし

Description

本発明は、冷間鍛造用鋼およびその製造方法に関する。
従来、機械構造用鋼は、産業用機械、建設用機械、及び、自動車に代表される輸送用機械などの機械部品に用いられている。機械構造用鋼は、一般に、熱間鍛造により粗加工された後、切削加工されて所定の形状を有する機械部品に仕上げられる。
冷間鍛造は、熱間鍛造と比べて寸法精度が高いので、鍛造後の切削加工量を低減できる。このため、近年、冷間鍛造で粗成形される部品が多くなってきている。冷間鍛造に利用される冷間鍛造用鋼には、冷間鍛造時に割れが発生しにくい特性(以下、冷間鍛造性という)が求められる。
冷間鍛造によって鋼材を粗成形する場合、鍛造での変形抵抗を下げるために、鍛造前の鋼材に球状化焼鈍を施すことが多い。しかし、鋼材に球状化焼鈍を施して球状化焼鈍組織にすると、冷間鍛造後の切削加工時における被削性が低下するという問題がある。
この問題に対し、鋼に硫黄(S)を含有することで、被削性が向上することが知られている。Sは、鋼中のマンガン(Mn)と結合して、MnSを主体とするMn硫化物系介在物を形成し、被削性を向上させる。
しかしながら、被削性を高めるために、鋼材中のS含有量を高くすると、粗大な硫化物が多量に生成し、冷間鍛造性が低下する。このため、従来の冷間鍛造用鋼では、S含有量を低減することにより、冷間鍛造性や疲労強度の低下を抑制していた。その結果、従来の冷間鍛造用鋼は被削性が低かった。
従来、硫化物を鋼中に微細分散させることにより、被削性を高める技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、鋳造時の凝固速度を制御して硫化物の粗大化を抑制し、被削性を向上させた肌焼鋼が提案されている。また、特許文献2には、サブミクロンレベルの硫化物を分散させることにより、鋼の被削性を向上させる技術が提案されている。特許文献1および特許文献2に示されるとおり、硫化物の形態を制御することによって、鋼材の被削性を向上できる。
また、特許文献3には、硫化物系介在物の粒子間距離が小さく、優れた切りくず処理性および機械的特性を発揮する機械構造用鋼が記載されている。
特許第5114689号公報 特許第5114753号公報 特開2000−282171号公報
W.Kurz and D.J.Fisher著、「Fundamentals of Solidification」、Trans Tech Publications Ltd.,(Switzerland)、1998年、p.256
従来の冷間鍛造用鋼材においては、冷間鍛造性を損ねることなく、被削性を向上させることが要望されている。
しかしながら、特許文献2に開示された技術は、冷間鍛造性に関して何ら考慮されていない。また、特許文献3に開示された技術は、鋼中に粗大な硫化物が存在している場合には、かえって冷間鍛造性が低下する恐れがある。さらに、特許文献1〜特許文献3に開示された技術は、いずれも冷間鍛造後の被削性向上について何ら考慮されていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、冷間鍛造性および被削性に優れた冷間鍛造用鋼およびその製造方法を提供することを課題とする。
[1] 質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.40〜2.00%、
S:0.008〜0.040%未満、
Cr:0.01〜3.00%、
Al:0.010〜0.100%、
N:0.0250%以下、
Ca:0.0001〜0.0050%、
Bi:0.0001〜0.0050%
を含有し、
P:0.050%以下、
O:0.0020%以下
に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、
下記式(1)を満たす化学組成を有し、
圧延方向と平行な断面において、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm以上であることを特徴とする冷間鍛造用鋼。
0.030≦Ca/S≦0.150 式(1)
(式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。)
[2] Feの一部に代えて、質量%で、
Mo:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
V:0.30%以下、
B:0.0200%以下、
Mg:0.0035%以下
からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の冷間鍛造用鋼。
[3] Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.060%以下、
Nb:0.080%以下
からなる群から選択される1種または2種を含有する、請求項1または請求項2に記載の冷間鍛造用鋼。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の化学組成を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライトの1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を鋳造し、前記鋳片を熱間加工し、更に焼鈍することを特徴とする冷間鍛造用鋼の製造方法。
本発明の冷間鍛造用鋼は、所定の化学組成を有し、圧延方向と平行な断面において、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm以上であるので、優れた冷間鍛造性および被削性を有する。
本発明の冷間鍛造用鋼の製造方法によれば、優れた冷間鍛造性および被削性を有する冷間鍛造用鋼が得られる。
本発明者らは、上記課題を解決するために、冷間鍛造用鋼に関する研究および検討を行った。その結果、以下に示す(a)〜(e)の知見を得た。
(a)冷間鍛造前の焼鈍は、鋼材の冷間鍛造性を向上させるために有効である。しかし、冷間鍛造前に焼鈍を行うと、鋼材の延性が向上するため、切削した時の切粉が長くなり、切りくず処理性(被削性)が悪くなる。また、冷間鍛造前に焼鈍を行うと、切削後の鋼材の表面粗さも大きくなる。
(b)切削は、切りくずを分離する破壊現象である。切削を促進させるには、マトリックスを脆化させることが一つのポイントである。鋼材中に硫化物を微細分散させることにより、破壊を容易にすると、切りくず処理性(被削性)が向上する。しかし、鋼材中に粗大な硫化物が少数分散していると、切りくず分離の起点となる硫化物の間隔が長くなる。その結果、切りくずが長くなりやすくなる。
なお、本実施形態における「硫化物」とは、以下に示すMn硫化物系介在物の総称を意味する。
すなわち、MnSを主体に含み、Fe、Ca、Ti、Zr、Mg、REM等の硫化物がMnSと固溶または結合して共存している介在物、MnTeのようにS以外の元素がMnと化合物を形成してMnSと固溶・結合して共存している介在物、酸化物を核として析出した上記介在物が含まれるものであり、化学式では(Mn、X)(S、Y)(ここで、X:Mn以外の硫化物形成元素、Y:S以外でMnと結合する元素)として表記できるMn硫化物系介在物の総称である。なお、介在物が硫化物であることは、走査電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線解析によって確認できる。
(c)本発明者らは、硫化物の円相当径と切りくず処理性との関係について種々実験を行った。その結果、平均円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm以上であると、切りくず処理性が向上するという知見を得た。
(d)鋼材中の硫化物は、凝固前(溶鋼中)または凝固時に晶出することが多い。したがって、鋼材中の硫化物の大きさは、凝固時の冷却速度に大きく影響を受ける。また、連続鋳造鋳片の凝固組織は、通常はデンドライト形態(デンドライト)を呈している。デンドライトは、凝固過程における溶質元素の拡散に起因して形成される。溶質元素は、デンドライトの樹間部において濃化する。具体的には、デンドライトの樹間部でMnが濃化し、Mn硫化物が晶出する。
(e)鋼材中に硫化物を微細に分散させるには、デンドライトの樹間の間隔を短くする必要がある。デンドライトの1次アーム間隔は、非特許文献1に記載されているように、下記(A)式で表すことができる。
λ∝(D×σ×ΔT)0.25 …(A)
(A)式において、λはデンドライトの1次アーム間隔(μm)、Dは拡散係数(m/s)、σは固液界面エネルギー(J/m)、ΔTは凝固温度範囲(℃)である。
(A)式から、デンドライトの1次アーム間隔λは、固液界面エネルギーσに依存しており、σが低減すればλも減少することがわかる。1次アーム間隔λを減少できれば、デンドライトの樹間部に晶出するMn硫化物のサイズを低減できる。本発明者らは、鋼にBiを微量添加することにより、1次アーム間隔λを減少でき、硫化物のサイズを微細化できることを見出した。
本発明は、上記(a)〜(e)の知見に基づいて完成されたものである。
以下、本実施形態の冷間鍛造用鋼およびその製造方法について詳細に説明する。
歯車などの鋼製部品の素材として用いる冷間鍛造用鋼は、例えば、連続鋳造した鋳片に熱間圧延や熱間鍛造といった熱間加工を行うことにより製造される。得られた冷間鍛造用鋼は、例えば、所定の部品形状に切削し、更に浸炭焼き入れ等の表面硬化処理を実施することにより部品となる。
冷間鍛造用鋼中の硫化物は、冷間鍛造性を低下させるが、切削性の向上には極めて有効である。すなわち、被削材である冷間鍛造用鋼中の硫化物は、切削工具の摩耗による工具変化を抑制し、工具寿命を延ばす効果を発現する。したがって、切削性を高めるには、鋼中に硫化物を生じさせることが望ましい。
一方、冷間鍛造用鋼を製造する過程で熱間圧延や熱間鍛造といった熱間加工を施すと、粗大な硫化物が延伸して被削性が低下することが多い。硫化物の粗大化を抑制するためには、溶鋼中の固液界面エネルギーを低減して、鋳造後の鋳片のデンドライトを微細化することが望ましい。デンドライトは、硫化物の粒径に大きく影響する。デンドライトが微細になるほど、硫化物の粒径が小さくなる。
冷間鍛造用鋼中に硫化物を安定的にかつ効果的に微細分散させるには、微量のBiを含む化学組成とすることにより、溶鋼中の固液界面エネルギーを低減させることが好ましい。固液界面エネルギーを低減させると、鋳片のデンドライトが微細となり、そこから晶出する硫化物が微細化される。
本実施形態の冷間鍛造用鋼の冷間鍛造性について、更に説明する。
鋼中の硫化物は、冷間鍛造時に硫化物自体が変形して破壊の起点となる。特に粗大な硫化物は、限界圧縮率などの冷間鍛造性を低下させる。そのため、本実施形態の冷間鍛造用鋼を製造する際には、熱間加工後の鋳片に球状化焼鈍などの焼鈍を施して、硫化物を中心とする硫化物を微細化および球状化することが望ましい。
次に、本実施形態の冷間鍛造用鋼の化学組成について説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
本実施形態の冷間鍛造用鋼は、C:0.05〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.40〜2.00%、S:0.008〜0.040%未満、Cr:0.01〜3.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.0250%以下、Ca:0.0001〜0.0050%、Bi:0.0001〜0.0050%を含有し、P:0.050%以下、O:0.0020%以下に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、下記式(1)を満たす化学組成を有する。
0.030≦Ca/S≦0.150 式(1)
(式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。)
(C:0.05〜0.30%)
炭素(C)は、鋼の引張強度及び疲労強度を高める。一方、C含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性が低下し、被削性も低下する。したがって、C含有量は0.05〜0.30%である。好ましいC含有量は0.10〜0.28%であり、さらに好ましくは0.15〜0.25%である。
(Si:0.05〜1.0%)
シリコン(Si)は、鋼中のフェライトに固溶して、鋼の引張強度を高める。一方、Si含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Si含有量は、0.05〜1.0%である。好ましいSi含有量は0.15〜0.70%であり、さらに好ましくは0.20〜0.35%である。
(Mn:0.40〜2.00%)
マンガン(Mn)は、鋼に固溶して鋼の引張強度及び疲労強度を高め、鋼の焼入れ性を高める。Mnはさらに、鋼中の硫黄(S)と結合してMn硫化物を形成し、鋼の被削性を高める。一方、Mn含有量が高すぎると、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.40〜2.00%である。鋼の引張強度、疲労強度及び焼入れ性を高める場合、好ましいMn含有量は0.60%以上であり、さらに好ましくは0.75%以上である。鋼の冷間鍛造性をさらに高める場合、好ましいMn含有量は1.50%以下であり、さらに好ましくは1.20%以下である。
(S:0.008〜0.040%未満)
硫黄(S)は、鋼中のMnと結合してMn硫化物を形成し、鋼の被削性を高める。一方、Sを過剰に含有すると、鋼の冷間鍛造性および疲労強度が低下する。したがって、S含有量は、0.008〜0.040%未満である。鋼の被削性を高める場合、好ましいS含有量は0.010%以上であり、さらに好ましくは、0.012%以上である。鋼の冷間鍛造性をさらに高める場合、好ましいS含有量は、0.020%未満であり、さらに好ましくは、0.018%未満である。
(Cr:0.01〜3.00%)
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性および引張強度を高める。本実施形態の冷間鍛造用鋼を用いて鋼製部品を製造する場合、部品形状とされた冷間鍛造用鋼に、浸炭処理や高周波焼入れなどの表面硬化処理を行う場合がある。Crは、鋼の焼入れ性を高め、浸炭処理や高周波焼入れ後の鋼の表面硬度を高める。一方、Cr含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性や疲労強度が低下する。したがって、Cr含有量は、0.01〜3.00%とする。鋼の焼入れ性及び引張強度を高める場合、好ましいCr含有量は、0.03%以上であり、さらに好ましくは、0.10%以上である。冷間鍛造性及び疲労強度をさらに高める場合、好ましいCr含有量は1.60%以下であり、より好ましくは1.50%以下であり、さらに好ましくは、1.20%以下である。
(Al:0.010〜0.100%)
アルミニウム(Al)は、脱酸作用を有する。また、Alは、Nと結合してAlNを形成しやすく、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化防止に有効な元素である。しかし、Alの含有量が0.010%未満では、安定してオーステナイト粒の粗大化を防止できない。オーステナイト粒が粗大化すると、曲げ疲労強度が低下する。一方、Alの含有量が0.100%を超えると、粗大な酸化物が形成されやすくなり、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Alの含有量を0.010〜0.100%とした。Al含有量の好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.06%である。
(N:0.0250%以下)
窒素(N)は、不純物として含有される。鋼中に固溶するNは、鋼の冷間鍛造時の変形抵抗を大きくし、また冷間鍛造性を低下する。また、鋼がBを含有する場合、Nの含有量が高いと、BNが生成されて、Bの焼入れ性向上効果を低下させてしまう。したがって、鋼がBを含み、Tiおよび/またはNbを含まない場合、N含有量はなるべく少ない方が好ましい。N含有量は0.0250%以下である。好ましいN含有量は、0.0180%以下であり、さらに好ましくは、0.0150%以下である。一方、NをTiやNbとともに含有させると、窒化物や炭窒化物を生成することにより、オーステナイト結晶粒が微細化され、鋼の冷間鍛造性や疲労強度を高める。Bを含まず、かつTiおよび/またはNbを含有して窒化物や炭窒化物を積極的に生成する場合には、Nを0.0060%以上含有することが好ましい。
(Ca:0.0001〜0.0050%)
カルシウム(Ca)は、硫化物に固溶して、硫化物を微細かつ球状化する。これにより、Caは鋼の冷間鍛造性を高める。Ca含有量が低すぎると、この効果が得られない。一方、Ca含有量が高すぎると、粗大な酸化物が形成される。粗大な酸化物は、鋼の冷間鍛造性を低下する。したがって、Ca含有量は0.0001〜0.0050%である。Ca含有量の好ましい下限は0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.0007%以上である。Ca含有量の好ましい上限は0.0035%以下であり、さらに好ましくは0.0030%以下であり、さらに好ましくは0.0025%以下である。
(Bi:0.0001〜0.0050%)
Bi(ビスマス)は、本発明において重要な元素である。微量のBiを含有することによって、鋼の凝固組織が微細化され、硫化物が微細分散される。硫化物の微細化効果を得るには、Biの含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかし、Biの含有量が0.0050%を超えると、デンドライトの微細化効果が飽和し、かつ鋼の加工性が劣化し、連続鋳造時および熱間圧延時に割れが発生する。さらに、これらのことから、Bi含有量を0.0001〜0.0050%とする。被削性をさらに向上させるには、Bi含有量を0.0010%以上とすることが好ましい。また、Biは0.0048%以下であってもよい。
(P:0.050%以下)
燐(P)は不純物である。Pは鋼の冷間鍛造性および熱間加工性を低下させる。したがって、P含有量は少ない方が好ましい。P含有量は0.050%以下である。好ましいP含有量は0.035%以下であり、さらに好ましくは、0.020%以下である。
(O:0.0020%以下)
O(酸素)は、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、曲げ疲労強度を低下させる。特に、Oの含有量が0.0020%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Oの含有量を0.0020%以下とした。なお、不純物元素としてのOの含有量は0.0010%以下にすることが好ましく、製鋼工程でのコスト上昇をきたさない範囲で、できる限り少なくすることがさらに望ましい。
本実施形態における冷間鍛造用鋼の化学組成の残部は、Feおよび不純物からなる。本実施形態における不純物は、鋼の原料として利用される鉱石、スクラップ、あるいは製造過程の環境等から混入する元素をいう。本実施形態において、不純物は例えば、銅(Cu)等である。不純物であるCu含有量は、JIS G4053機械構造用合金鋼鋼材に規定されたSCr鋼およびSCM鋼中のCu含有量と同程度である。具体的には、Cu含有量は0.30%以下である。
[式(1)について]
Caは、硫化物に固溶して、硫化物を微細分散させ、硫化物の球状化を促進する。しかしながら、S含有量に対するCa含有量が高すぎると、硫化物に固溶しなかったCaが粗大な酸化物を形成し、鋼の冷間鍛造性が低下する。また、S含有量に対するCa含有量が低すぎると、Caが硫化物に固溶しにくく、硫化物が球状化されにくい。そのため、冷間鍛造性が低下する。したがって、鋼中のS含有量に対するCa含有量の比(Ca/S)は冷間鍛造性の指標である。
鋼中のCa/Sを適切な範囲に設定すれば、硫化物の形態を制御して冷間鍛造性を高めることができ、かつ、被削性を維持できる。具体的には、冷間鍛造用鋼の化学組成が式(1)を満たすことにより、被削性が維持されつつ、優れた冷間鍛造性が得られ、より複雑な部品の成形が可能となる。
0.03≦Ca/S≦0.150 式(1)
(式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。対応する元素が不純物レベルの場合、式(1)の対応する元素記号には「0」が代入される。)
本実施形態の冷間鍛造用鋼は、Mo、Ni、V、B及びMgからなる群から選択された1種または2種以上を含有してもよい。Mo、Ni、V、B及びMgはいずれも、鋼の疲労強度を高める。
(Mo:1.00%以下)
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の疲労強度を高める。また、Moは、浸炭処理において、不完全焼入れ層を抑制する。Moを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Mo含有量が多すぎると、鋼の被削性が低下する。さらに、鋼の製造コストも高くなる。したがって、Mo含有量は、1.00%以下である。Mo含有量が0.02%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいMo含有量は0.05〜0.50%であり、さらに好ましくは、0.10〜0.30%である。
(Ni:1.00%以下)
ニッケル(Ni)は、焼入れ性を高める効果があり、より疲労強度を高めるために有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が1.00%を超えると、焼入れ性向上による疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなり冷間鍛造性の低下が顕著となる。そのため、Ni含有量を1.00%以下とした。Ni含有量は、0.80%以下であることが好ましい。さらに、Niの焼入れ性向上による疲労強度を高める効果を安定して得るためには、Ni含有量は0.10%以上であることが好ましい。
なお、ニッケル(Ni)は、意図的に添加しなくても、不純物として0.25%以下程度含まれている場合がある。不純物としてNiが含まれている場合でも、Niを含むことにより、焼き入れ性が向上する。
(V:0.30%以下)
バナジウム(V)は、鋼中で炭化物を形成し、鋼の疲労強度を高める。バナジウム炭化物は、フェライト中に析出して鋼の芯部(表層以外の部分)の強度を高める。Vを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、V含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性および疲労強度が低下する。したがって、V含有量は0.30%以下である。V含有量が0.03%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいV含有量は0.04〜0.20%であり、さらに好ましくは0.05〜0.10%である。
(B:0.0200%以下)
ボロン(B)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の疲労強度を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。B含有量が0.0200%を超えると、その効果は飽和する。したがって、B含有量は0.0200%以下である。B含有量が0.0005%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいB含有量は、0.0010〜0.0120%であり、さらに好ましくは、0.0020〜0.0100%である。
(Mg:0.0035%以下)
マグネシウム(Mg)は、Alと同様に、鋼を脱酸し、鋼中の酸化物を微細化する。鋼中の酸化物が微細化することにより、粗大酸化物を破壊起点とする確率が低下し、鋼の疲労強度が高まる。Mgを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Mg含有量が多すぎると、上記効果は飽和し、かつ、鋼の被削性が低下する。したがって、Mg含有量は0.0035%以下である。Mg含有量が0.0001%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいMg含有量は0.0003〜0.0030%であり、さらに好ましくは、0.0005〜0.0025%である。
本実施形態の冷間鍛造用鋼はさらに、TiおよびNbからなる群から選択された1種または2種を含有してもよい。TiおよびNbは、鋼の疲労強度を高める。
(Ti:0.060%以下)
チタン(Ti)は、微細な炭化物や窒化物、炭窒化物を生成し、ピン止め効果によりオーステナイト結晶粒を微細化する。オーステナイト結晶粒が微細化されることにより、鋼の冷間鍛造性や疲労強度が高まる。Tiが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Ti含有量が多すぎると、鋼の被削性および冷間鍛造性が低下する。したがって、Ti含有量は0.060%以下である。Ti含有量が0.002%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいTi含有量は0.005〜0.040%であり、さらに好ましくは、0.010〜0.030%である。
(Nb:0.080%以下)
ニオブ(Nb)は、Tiと同様に、微細な炭化物や窒化物、炭窒化物を生成してオーステナイト結晶粒を微細化し、鋼の冷間鍛造性および疲労強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Nb含有量が多すぎると、上記効果は飽和し、かつ、鋼の被削性が低下する。したがって、Nb含有量は0.080%以下である。Nb含有量が0.010%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいNb含有量は0.015〜0.050%であり、さらに好ましくは、0.020〜0.040%である。
[硫化物]
硫化物は、切削性の向上に有用であるため、その個数密度を確保する必要がある。鋼中のS含有量を増加させると、被削性は向上するが、粗大な硫化物が増加する。熱間圧延等によって延伸した粗大な硫化物は、冷間鍛造性を損なう。このため、鋼中の硫化物のサイズおよび形状を制御する必要がある。さらに、被削時の切りくず処理性を向上させるには、鋼中に硫化物を微細に分散させることが必要である。
本実施形態の冷間鍛造用鋼は、冷間鍛造用鋼の圧延方向と平行な断面において、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm以上である。このため、優れた冷間鍛造性および切りくず処理性(被削性)が得られる。
「製造方法」
次に、本実施形態の冷間鍛造用鋼の製造方法を説明する。
本実施形態の冷間鍛造用鋼の製造方法では、まず、上記のいずれかに記載の化学組成を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライトの1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を鋳造する。
[連続鋳造工程]
上記の化学組成を有する鋳片を連続鋳造法により製造する。鋳片は、造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。鋳造条件としては、例えば、220×220mm角の鋳型を用いて、タンディッシュ内の溶鋼のスーパーヒートを10〜50℃とし、鋳込み速度を1.0〜1.5m/分とする条件を例示できる。
本実施形態の冷間鍛造用鋼の製造方法では、所定の化学組成を有する鋳片を鋳造するため、硫化物の晶出核となるデンドライトが微細化されて、硫化物が鋼中に微細分散される。これにより、冷間鍛造後の被削性に優れた冷間鍛造用鋼が得られる。
[デンドライト]
鋳片の凝固組織は、デンドライト形態(デンドライト)を呈している。冷間鍛造用鋼中の硫化物は、凝固前(溶鋼中)、または凝固時に晶出することが多く、鋳片のデンドライトの1次アーム間隔に大きく影響を受ける。すなわち、デンドライトの1次アーム間隔が小さければ、デンドライトの樹間部に晶出する硫化物が小さくなる。本実施形態の冷間鍛造用鋼は、鋳片の段階におけるデンドライトの1次アーム間隔が600μm未満である。
本実施形態では、上述したデンドライトの1次アーム間隔を600μm未満にするために、上記化学組成を有する溶鋼を鋳造する際に、鋳片表面から15mmの深さにおける液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度を100℃/min以上500℃/min以下とすることが望ましい。平均冷却速度が100℃/min未満では、鋳片表面から15mmの深さ位置におけるデンドライトの1次アーム間隔を600μm未満とすることが困難となり、硫化物を微細分散できないおそれがある。一方、平均冷却速度が500℃/min超では、デンドライトの樹間から晶出する硫化物が微細になり過ぎ、切りくず処理性が低下してしまう恐れがある。
液相線温度から固相線温度までの温度域とは、凝固開始から凝固終了までの温度域のことである。したがって、この温度域での平均冷却温度とは、鋳片の平均凝固速度を意味する。上記の平均冷却速度は、例えば、鋳型断面の大きさ、鋳込み速度等を適正な値に制御すること、または鋳込み直後において、水冷に用いる冷却水量を増大させるなどの手段により達成できる。これは、連続鋳造法および造塊法共に適用可能である。
鋳片表面から15mm深さにおける上記温度域内の平均冷却速度は、以下に示す方法により測定した数値である。
鋳造した鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から15mmの深さの位置について、鋳込み方向に5mmピッチでデンドライトの2次アーム間隔λ(μm)を100点測定する。そして、測定した2次アーム間隔λ(μm)の値から以下に示す式(2)を用いて、鋳片(スラブ)の液相線温度から固相線温度までの温度域内の冷却速度A(℃/秒)を算出し、算術平均により求めた平均値である。
λ=710×A−0.39 式(2)
本実施形態における鋳造条件は、以下に示す方法により決定してもよい。例えば、鋳造条件の異なる複数の鋳片を製造し、各鋳片における平均冷却速度を、上記の方法により式(2)を用いて求める。その後、デンドライトの1次アーム間隔が600μm未満となる平均冷却速度100〜500℃/minであった鋳造条件を用いて、最適条件を決定する。
次に、得られた鋳片を熱間加工して、ビレット(鋼片)を製造し、更に、ビレットを熱間圧延して、棒鋼や線材とする。熱間加工は、熱間圧延を含んでいてもよい。
次に、製造された棒鋼、線材を焼鈍する。焼鈍は、球状化焼鈍であることが好ましい。球状化焼鈍を行うことにより、棒鋼、線材の冷間鍛造性を高めることができる。
以上の工程により、本実施形態の冷間鍛造用鋼が得られる。
本実施形態の冷間鍛造用鋼は、例えば、自動車、産業機械用の歯車、シャフト、プーリーなどの鋼製部品を製造するための浸炭、浸炭窒化または窒化前の素材として、好適に用いることができる。上記の素材として、本実施形態の冷間鍛造用鋼を用いることで、鋼製部品の製造費用に占める切削加工コストの割合を低減できるとともに、鋼製部品の品質を向上させることができる。
次に、本実施形態の冷間鍛造用鋼を用いて部品を製造する方法について説明する。
例えば、冷間鍛造用鋼(棒鋼、線材)を冷間鍛造し、粗形状の中間品を製造する。製造された中間品は、所定の形状とするために、必要に応じて機械加工により切削してもよい。
次いで、中間品に、周知の条件で表面硬化処理を実施する。表面硬化処理としては、例えば、浸炭処理、窒化処理、高周波焼入れが挙げられる。次いで、表面硬化処理後の中間品を所定の形状に研削または磨きを行う。このようにして、冷間鍛造用鋼を素材として用いた機械部品が得られる。
なお、上記の部品の製造方法では、中間品に表面硬化処理を施したが、表面硬化処理は実施しなくてもよい。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜Wを270ton転炉で溶製し、連続鋳造機を用いて連続鋳造を実施して、220×220mm角の鋳片を製造した。なお、連続鋳造の凝固途中の段階で圧下を加えた。
また、各鋳片を鋳造する際における鋳型の冷却水量を変更することで、鋳片表面から15mmの深さにおける液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度を変化させた。
表1に示す鋼A〜Lは、本発明で規定する化学組成を有する鋼である。鋼M〜Wは、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。表1中の数値の下線は、本実施の形態による冷間鍛造用鋼材の範囲外であることを示す。
Figure 2017193767
連続鋳造により得られた各鋳片を、一旦室温まで冷却し、鋳片の表面割れの有無を目視にて判定した。その結果を表2に示す。
さらに、各鋳片から、試験片を採取し、以下に示す方法により、デンドライトを観察した。
[デンドライトの1次アーム間隔および2次アーム間隔の測定]
鋳片から採取した試験片の断面をピクリン酸にてエッチングした。そして、鋳片表面から15mmの深さに位置を、鋳込み方向に5mmピッチで、デンドライトの1次アーム間隔および2次アーム間隔をそれぞれ100点測定した。デンドライトの1次アーム間隔の平均値を表2に示す。
[鋳片表面から15mmの深さにおける液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度]
上記の方法により測定した2次アーム間隔λ(μm)の値から以下に示す式(2)を用いて、液相線温度から固相線温度までの温度域内の冷却速度A(℃/秒)を算出し、算術平均により求めた。上記の温度域内の平均冷却速度を表2に示す。
λ=710×A−0.39 式(2)
デンドライト観察用の試験片を採取した後、各鋳片を1250℃で2時間加熱し、加熱後の鋳片を熱間鍛造(熱間加工)して、直径30mmの複数の丸棒(棒鋼)を製造した。熱間鍛造後、丸棒を大気中で放冷した。
次に、熱間鍛造後に得られた直径30mmの丸棒に対して、球状化焼鈍処理を実施した。具体的には、上述の丸棒を、加熱炉を用いて1300℃で1時間均熱した。次に、丸棒を別の加熱炉に移し、925℃で1時間均熱し、均熱後に丸棒を放冷した。その後、丸棒を再び加熱し、765℃で10時間均熱し、15℃/hの冷却速度で650℃まで冷却した後、放冷した。
以上の工程により、試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼を製造した。
[ミクロ組織観察]
以下に示す方法により、試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼(丸棒)のミクロ組織を観察した。まず、丸棒を軸方向に対して垂直に切断し、直径の1/4の位置(D/4位置)が観察面の中心であるミクロ組織観察用の試験片を採取した。試験片の切断面(観察面)を研磨し、ナイタル腐食液で腐食した。腐食後、切断面の中央部のミクロ組織を、光学顕微鏡を用いて400倍で観察した。
試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼ミクロ組織はいずれも、フェライトに球状セメンタイトが分散した組織であった。
さらに、ミクロ組織観察用試験片を用いて、JIS Z2244に規定されたビッカース硬さ試験を実施した。各試験片について、それぞれ5箇所の硬さを測定した。
その結果、試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼のビッカース硬さは、いずれもHv100〜140の範囲内であり、各冷間鍛造用鋼は、同程度の硬度を有した。
次に、以下に示す方法により、試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼の硫化物密度を測定した。
[硫化物密度測定方法]
ミクロ組織観察と同様にして採取した試験片を樹脂埋めした後、被検面(切断面)を鏡面研磨した。被検面は、冷間鍛造用鋼の長手方向と平行である。被検面内の硫化物を走査電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)により特定した。
具体的には、縦10mm×横10mmの研磨後の試験片を10個作製し、これらの試験片の所定位置を走査電子顕微鏡にて100倍で写真撮影し、0.9mmの検査基準面積(領域)の画像を10視野分準備した。硫化物の観察視野は、9mmである。各観察領域において、走査電子顕微鏡で観察される反射電子像のコントラストに基づいて、硫化物を特定した。反射電子像では、観察領域をグレースケール画像で表示した。反射電子像内におけるマトリクス(母材)、硫化物、酸化物のコントラストはそれぞれ異なるものであった。
各観察視野(画像)中の円相当径が1μm以上の硫化物の粒径を検出した。硫化物の粒径(直径)は、硫化物の面積と同一の面積を有する円の直径を示す円相当径に換算した。そして、各観察視野(画像)中の硫化物の個数を、画像解析によって求めた。その後、観察された1μm以上の硫化物のうち、円相当径が2μm未満の硫化物の個数を、円相当径が1μm以上の硫化物の個数で除し、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度とした。
なお、観察対象とした硫化物の円相当径を1μm以上としたのは、現実的に汎用の機器で、粒子のサイズと成分を統計的に扱うことが可能であり、かつ、これより小さな硫化物を制御しても冷間鍛造性および切りくず処理性に与える影響が少ないためである。
次に、以下に示す方法により、試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼に対し、冷間鍛造性試験および被削性試験を行った。
[冷間鍛造性試験]
各冷間鍛造用鋼(直径30mmの丸棒)から、半径の1/2の位置(R/2位置)を中心とした切り欠き付きの直径10mm、長さ15mmの丸棒試験片を8個ずつ採取した。丸棒試験片の長手方向は、直径30mmの丸棒の鍛伸軸に平行とした。冷間圧縮試験には、500ton油圧プレスを使用した。
冷間圧縮試験は、8個の丸棒試験片を使用して圧縮率を段階的に引き上げて冷間圧縮を実施した。具体的には、初期圧縮率で8個の丸棒試験片を冷間圧縮した。1回目の冷間圧縮後、各丸棒試験片に割れが発生したか否かを目視により確認した。そして、割れが確認された丸棒試験片を排除し、残った丸棒試験片(つまり、割れが観察されなかった丸棒試験片)に対して、圧縮率を引き上げて2回目の冷間圧縮を実施した。2回目の冷間圧縮後、各丸棒試験片の割れの有無を確認した。1回目の冷間圧縮後と同様に、割れが確認された丸棒試験片を排除し、残った丸棒試験片に対して、圧縮率を引き上げて3回目の冷間圧縮を実施した。8個の丸棒試験片のうち、割れが確認された丸棒試験片が4個になるまで、上述の工程を繰り返した。
8個の丸棒試験片のうち、4個の丸棒試験片に割れが確認されたときの圧縮率を「限界圧縮率」と定義した。そして、限界圧縮率が55%以上の場合、冷間鍛造性に優れると判断した。各冷間鍛造用鋼の限界圧縮率を表2に示す。
[被削性試験]
各冷間鍛造用鋼(直径30mmの丸棒)に、冷間での引抜きにより歪を与え、引抜き後の丸棒の被削性により、冷間鍛造後の被削性を評価した。
具体的には、各冷間鍛造用鋼(直径30mmの丸棒)を、減面率30.6%で冷間引抜きし、直径25mmの丸棒にした。冷間引抜きした丸棒を長さ500mmに切断し、旋削加工用の試験材とした。得られた直径25mm、長さ500mmの試験材の外周部を、数値制御(NC)旋盤を用いて、下記の条件で旋削加工し、被削性(切りくず処理性)を調査した。
<使用チップ>
母材材質:超硬P20種グレード。
コーティング:なし。
<旋削加工条件>
周速:150m/分。
送り:0.2mm/rev。
切り込み:0.4mm。
潤滑:水溶性切削油を使用。
各試験材について、旋削加工中の10秒間で排出された切りくずを回収した。回収された切りくずの長さを調べ、長いものから順に10個の切りくずを選択した。そして、選択された10個の切りくずの総重量を「切りくず重量」と定義した。
なお、切りくずが長くつながった結果、切りくずの総数が10個未満である場合、回収された切りくずの総重量を測定し、10個の個数に換算した値を「切りくず重量」と定義した。例えば、切りくずの総数が7個であって、その総重量が12gである場合、切りくず重量は、12g×10個/7個、と計算した。
そして、各試験材の切りくず重量が15g以下であれば、切りくず処理性が高いと評価した。切りくず重量が15gを超える場合、切りくず処理性が低いと評価した。各冷間鍛造用鋼の切りくず処理性の評価結果を表2に示す。
Figure 2017193767
表1および表2に示すように、試験番号1〜12の冷間鍛造用鋼は、化学組成(鋼A〜L)および硫化物個数密度が本発明の範囲内であり、優れた冷間鍛造性および被削性を有していた。
試験番号13の冷間鍛造用鋼は、JIS SCr420に規定される鋼である。試験番号13の冷間鍛造用鋼は、BiおよびCaを含有していないため、式(1)を満たさず、硫化物個数密度も低い。そのため、試験番号13の冷間鍛造用鋼は、限界圧縮率が55%未満となり、冷間鍛造性が低かった。また、試験番号13の冷間鍛造用鋼は、切りくず重量が15gを超え、被削性が低かった。
試験番号14の冷間鍛造用鋼は、BiおよびCaを含有せず、Sの含有量が本発明規定の範囲を下回り、硫化物個数密度が少ない例である。試験番号14の冷間鍛造用鋼は、被削性が低かった。
試験番号15の冷間鍛造用鋼は、BiおよびCaを含有せず、Sの含有量が本発明規定の範囲を上回った例である。試験番号15の冷間鍛造用鋼は、冷間鍛造性が低かった。
試験番号16の冷間鍛造用鋼は、Biを含有せず、硫化物個数密度が少ない例である。試験番号16の冷間鍛造用鋼は、切りくず重量が15gを超え、被削性が低かった。
試験番号17の冷間鍛造用鋼は、Biを含有せず、更にSの含有量が本発明規定の範囲を下回ったため式(1)を満たさず、硫化物個数密度が少ない例である。試験番号17の冷間鍛造用鋼は、切りくず重量が15gを超え、被削性が低かった。
試験番号18の冷間鍛造用鋼は、Biを含有せず、更にSの含有量が本発明規定の範囲を上回ったため式(1)を満たさない例である。試験番号18の冷間鍛造用鋼では、限界圧縮率が55%未満となり、冷間鍛造性が低かった。これは、Sの含有量が多いため、粗大なMnSが生成したことによるものと推定される。
試験番号19の冷間鍛造用鋼は、Sの含有量が本発明規定の範囲を下回ったため式(1)を満たさず、硫化物個数密度が少ない例である。試験番号19の冷間鍛造用鋼は、切りくず重量が15gを超え、被削性が低かった。
試験番号20の冷間鍛造用鋼は、Sの含有量が本発明規定の範囲を上回ったため式(1)を満たさない例である。試験番号20の冷間鍛造用鋼は、冷間鍛造性が低かった。
試験番号21の冷間鍛造用鋼は、Biの含有量が本発明規定の範囲を上回った例である。このため、試験番号21の冷間鍛造用鋼では、加工性が不足し、連続鋳造時に割れが生じた。
試験番号22の冷間鍛造用鋼は、Caの含有量が本発明規定の範囲を上回ったため式(1)を満たさない例である。試験番号22の冷間鍛造用鋼は、限界圧縮率が55%未満となり、冷間鍛造性が低かった。これは、Caの含有量が多いため、硫化物に固溶しなかったCaが粗大な酸化物を形成したことによるものと推定される。
試験番号23の冷間鍛造用鋼は、Ca含有しない例である。試験番号23の冷間鍛造用鋼は、限界圧縮率が55%未満となり、冷間鍛造性が低かった。これは、硫化物が球状化されず、粗大なままであったためであると推定される。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は、本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.05〜0.30%、
    Si:0.05〜1.0%、
    Mn:0.40〜2.00%、
    S:0.008〜0.040%未満、
    Cr:0.01〜3.00%、
    Al:0.010〜0.100%、
    N:0.0250%以下、
    Ca:0.0001〜0.0050%、
    Bi:0.0001〜0.0050%
    を含有し、
    P:0.050%以下、
    O:0.0020%以下
    に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、
    下記式(1)を満たす化学組成を有し、
    圧延方向と平行な断面において、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm以上であることを特徴とする冷間鍛造用鋼。
    0.030≦Ca/S≦0.150 式(1)
    (式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。)
  2. Feの一部に代えて、質量%で、
    Mo:1.00%以下、
    Ni:1.00%以下、
    V:0.30%以下、
    B:0.0200%以下、
    Mg:0.0035%以下
    からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の冷間鍛造用鋼。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、
    Ti:0.060%以下、
    Nb:0.080%以下
    からなる群から選択される1種または2種を含有する、請求項1または請求項2に記載の冷間鍛造用鋼。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の化学組成を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライトの1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を鋳造し、前記鋳片を熱間加工し、更に焼鈍することを特徴とする冷間鍛造用鋼の製造方法。
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