JP2017193767A - 冷間鍛造用鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
冷間鍛造は、熱間鍛造と比べて寸法精度が高いので、鍛造後の切削加工量を低減できる。このため、近年、冷間鍛造で粗成形される部品が多くなってきている。冷間鍛造に利用される冷間鍛造用鋼には、冷間鍛造時に割れが発生しにくい特性(以下、冷間鍛造性という)が求められる。
この問題に対し、鋼に硫黄(S)を含有することで、被削性が向上することが知られている。Sは、鋼中のマンガン(Mn)と結合して、MnSを主体とするMn硫化物系介在物を形成し、被削性を向上させる。
例えば、特許文献1には、鋳造時の凝固速度を制御して硫化物の粗大化を抑制し、被削性を向上させた肌焼鋼が提案されている。また、特許文献2には、サブミクロンレベルの硫化物を分散させることにより、鋼の被削性を向上させる技術が提案されている。特許文献1および特許文献2に示されるとおり、硫化物の形態を制御することによって、鋼材の被削性を向上できる。
しかしながら、特許文献2に開示された技術は、冷間鍛造性に関して何ら考慮されていない。また、特許文献3に開示された技術は、鋼中に粗大な硫化物が存在している場合には、かえって冷間鍛造性が低下する恐れがある。さらに、特許文献1〜特許文献3に開示された技術は、いずれも冷間鍛造後の被削性向上について何ら考慮されていない。
C:0.05〜0.30%、
Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.40〜2.00%、
S:0.008〜0.040%未満、
Cr:0.01〜3.00%、
Al:0.010〜0.100%、
N:0.0250%以下、
Ca:0.0001〜0.0050%、
Bi:0.0001〜0.0050%
を含有し、
P:0.050%以下、
O:0.0020%以下
に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、
下記式(1)を満たす化学組成を有し、
圧延方向と平行な断面において、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm2以上であることを特徴とする冷間鍛造用鋼。
0.030≦Ca/S≦0.150 式(1)
(式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。)
Mo:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
V:0.30%以下、
B:0.0200%以下、
Mg:0.0035%以下
からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の冷間鍛造用鋼。
Ti:0.060%以下、
Nb:0.080%以下
からなる群から選択される1種または2種を含有する、請求項1または請求項2に記載の冷間鍛造用鋼。
本発明の冷間鍛造用鋼の製造方法によれば、優れた冷間鍛造性および被削性を有する冷間鍛造用鋼が得られる。
(a)冷間鍛造前の焼鈍は、鋼材の冷間鍛造性を向上させるために有効である。しかし、冷間鍛造前に焼鈍を行うと、鋼材の延性が向上するため、切削した時の切粉が長くなり、切りくず処理性(被削性)が悪くなる。また、冷間鍛造前に焼鈍を行うと、切削後の鋼材の表面粗さも大きくなる。
すなわち、MnSを主体に含み、Fe、Ca、Ti、Zr、Mg、REM等の硫化物がMnSと固溶または結合して共存している介在物、MnTeのようにS以外の元素がMnと化合物を形成してMnSと固溶・結合して共存している介在物、酸化物を核として析出した上記介在物が含まれるものであり、化学式では(Mn、X)(S、Y)(ここで、X:Mn以外の硫化物形成元素、Y:S以外でMnと結合する元素)として表記できるMn硫化物系介在物の総称である。なお、介在物が硫化物であることは、走査電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線解析によって確認できる。
λ∝(D×σ×ΔT)0.25 …(A)
(A)式において、λはデンドライトの1次アーム間隔(μm)、Dは拡散係数(m2/s)、σは固液界面エネルギー(J/m2)、ΔTは凝固温度範囲(℃)である。
本発明は、上記(a)〜(e)の知見に基づいて完成されたものである。
歯車などの鋼製部品の素材として用いる冷間鍛造用鋼は、例えば、連続鋳造した鋳片に熱間圧延や熱間鍛造といった熱間加工を行うことにより製造される。得られた冷間鍛造用鋼は、例えば、所定の部品形状に切削し、更に浸炭焼き入れ等の表面硬化処理を実施することにより部品となる。
鋼中の硫化物は、冷間鍛造時に硫化物自体が変形して破壊の起点となる。特に粗大な硫化物は、限界圧縮率などの冷間鍛造性を低下させる。そのため、本実施形態の冷間鍛造用鋼を製造する際には、熱間加工後の鋳片に球状化焼鈍などの焼鈍を施して、硫化物を中心とする硫化物を微細化および球状化することが望ましい。
本実施形態の冷間鍛造用鋼は、C:0.05〜0.30%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.40〜2.00%、S:0.008〜0.040%未満、Cr:0.01〜3.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.0250%以下、Ca:0.0001〜0.0050%、Bi:0.0001〜0.0050%を含有し、P:0.050%以下、O:0.0020%以下に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、下記式(1)を満たす化学組成を有する。
0.030≦Ca/S≦0.150 式(1)
(式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。)
炭素(C)は、鋼の引張強度及び疲労強度を高める。一方、C含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性が低下し、被削性も低下する。したがって、C含有量は0.05〜0.30%である。好ましいC含有量は0.10〜0.28%であり、さらに好ましくは0.15〜0.25%である。
シリコン(Si)は、鋼中のフェライトに固溶して、鋼の引張強度を高める。一方、Si含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Si含有量は、0.05〜1.0%である。好ましいSi含有量は0.15〜0.70%であり、さらに好ましくは0.20〜0.35%である。
マンガン(Mn)は、鋼に固溶して鋼の引張強度及び疲労強度を高め、鋼の焼入れ性を高める。Mnはさらに、鋼中の硫黄(S)と結合してMn硫化物を形成し、鋼の被削性を高める。一方、Mn含有量が高すぎると、鋼の冷間鍛造性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.40〜2.00%である。鋼の引張強度、疲労強度及び焼入れ性を高める場合、好ましいMn含有量は0.60%以上であり、さらに好ましくは0.75%以上である。鋼の冷間鍛造性をさらに高める場合、好ましいMn含有量は1.50%以下であり、さらに好ましくは1.20%以下である。
硫黄(S)は、鋼中のMnと結合してMn硫化物を形成し、鋼の被削性を高める。一方、Sを過剰に含有すると、鋼の冷間鍛造性および疲労強度が低下する。したがって、S含有量は、0.008〜0.040%未満である。鋼の被削性を高める場合、好ましいS含有量は0.010%以上であり、さらに好ましくは、0.012%以上である。鋼の冷間鍛造性をさらに高める場合、好ましいS含有量は、0.020%未満であり、さらに好ましくは、0.018%未満である。
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性および引張強度を高める。本実施形態の冷間鍛造用鋼を用いて鋼製部品を製造する場合、部品形状とされた冷間鍛造用鋼に、浸炭処理や高周波焼入れなどの表面硬化処理を行う場合がある。Crは、鋼の焼入れ性を高め、浸炭処理や高周波焼入れ後の鋼の表面硬度を高める。一方、Cr含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性や疲労強度が低下する。したがって、Cr含有量は、0.01〜3.00%とする。鋼の焼入れ性及び引張強度を高める場合、好ましいCr含有量は、0.03%以上であり、さらに好ましくは、0.10%以上である。冷間鍛造性及び疲労強度をさらに高める場合、好ましいCr含有量は1.60%以下であり、より好ましくは1.50%以下であり、さらに好ましくは、1.20%以下である。
アルミニウム(Al)は、脱酸作用を有する。また、Alは、Nと結合してAlNを形成しやすく、浸炭加熱時のオーステナイト粒粗大化防止に有効な元素である。しかし、Alの含有量が0.010%未満では、安定してオーステナイト粒の粗大化を防止できない。オーステナイト粒が粗大化すると、曲げ疲労強度が低下する。一方、Alの含有量が0.100%を超えると、粗大な酸化物が形成されやすくなり、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Alの含有量を0.010〜0.100%とした。Al含有量の好ましい下限は0.03%であり、好ましい上限は0.06%である。
窒素(N)は、不純物として含有される。鋼中に固溶するNは、鋼の冷間鍛造時の変形抵抗を大きくし、また冷間鍛造性を低下する。また、鋼がBを含有する場合、Nの含有量が高いと、BNが生成されて、Bの焼入れ性向上効果を低下させてしまう。したがって、鋼がBを含み、Tiおよび/またはNbを含まない場合、N含有量はなるべく少ない方が好ましい。N含有量は0.0250%以下である。好ましいN含有量は、0.0180%以下であり、さらに好ましくは、0.0150%以下である。一方、NをTiやNbとともに含有させると、窒化物や炭窒化物を生成することにより、オーステナイト結晶粒が微細化され、鋼の冷間鍛造性や疲労強度を高める。Bを含まず、かつTiおよび/またはNbを含有して窒化物や炭窒化物を積極的に生成する場合には、Nを0.0060%以上含有することが好ましい。
カルシウム(Ca)は、硫化物に固溶して、硫化物を微細かつ球状化する。これにより、Caは鋼の冷間鍛造性を高める。Ca含有量が低すぎると、この効果が得られない。一方、Ca含有量が高すぎると、粗大な酸化物が形成される。粗大な酸化物は、鋼の冷間鍛造性を低下する。したがって、Ca含有量は0.0001〜0.0050%である。Ca含有量の好ましい下限は0.0005%以上であり、さらに好ましくは0.0007%以上である。Ca含有量の好ましい上限は0.0035%以下であり、さらに好ましくは0.0030%以下であり、さらに好ましくは0.0025%以下である。
Bi(ビスマス)は、本発明において重要な元素である。微量のBiを含有することによって、鋼の凝固組織が微細化され、硫化物が微細分散される。硫化物の微細化効果を得るには、Biの含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかし、Biの含有量が0.0050%を超えると、デンドライトの微細化効果が飽和し、かつ鋼の加工性が劣化し、連続鋳造時および熱間圧延時に割れが発生する。さらに、これらのことから、Bi含有量を0.0001〜0.0050%とする。被削性をさらに向上させるには、Bi含有量を0.0010%以上とすることが好ましい。また、Biは0.0048%以下であってもよい。
燐(P)は不純物である。Pは鋼の冷間鍛造性および熱間加工性を低下させる。したがって、P含有量は少ない方が好ましい。P含有量は0.050%以下である。好ましいP含有量は0.035%以下であり、さらに好ましくは、0.020%以下である。
O(酸素)は、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、曲げ疲労強度を低下させる。特に、Oの含有量が0.0020%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Oの含有量を0.0020%以下とした。なお、不純物元素としてのOの含有量は0.0010%以下にすることが好ましく、製鋼工程でのコスト上昇をきたさない範囲で、できる限り少なくすることがさらに望ましい。
Caは、硫化物に固溶して、硫化物を微細分散させ、硫化物の球状化を促進する。しかしながら、S含有量に対するCa含有量が高すぎると、硫化物に固溶しなかったCaが粗大な酸化物を形成し、鋼の冷間鍛造性が低下する。また、S含有量に対するCa含有量が低すぎると、Caが硫化物に固溶しにくく、硫化物が球状化されにくい。そのため、冷間鍛造性が低下する。したがって、鋼中のS含有量に対するCa含有量の比(Ca/S)は冷間鍛造性の指標である。
(式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。対応する元素が不純物レベルの場合、式(1)の対応する元素記号には「0」が代入される。)
モリブデン(Mo)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の疲労強度を高める。また、Moは、浸炭処理において、不完全焼入れ層を抑制する。Moを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Mo含有量が多すぎると、鋼の被削性が低下する。さらに、鋼の製造コストも高くなる。したがって、Mo含有量は、1.00%以下である。Mo含有量が0.02%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいMo含有量は0.05〜0.50%であり、さらに好ましくは、0.10〜0.30%である。
ニッケル(Ni)は、焼入れ性を高める効果があり、より疲労強度を高めるために有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が1.00%を超えると、焼入れ性向上による疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、変形抵抗が高くなり冷間鍛造性の低下が顕著となる。そのため、Ni含有量を1.00%以下とした。Ni含有量は、0.80%以下であることが好ましい。さらに、Niの焼入れ性向上による疲労強度を高める効果を安定して得るためには、Ni含有量は0.10%以上であることが好ましい。
なお、ニッケル(Ni)は、意図的に添加しなくても、不純物として0.25%以下程度含まれている場合がある。不純物としてNiが含まれている場合でも、Niを含むことにより、焼き入れ性が向上する。
バナジウム(V)は、鋼中で炭化物を形成し、鋼の疲労強度を高める。バナジウム炭化物は、フェライト中に析出して鋼の芯部(表層以外の部分)の強度を高める。Vを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、V含有量が多すぎると、鋼の冷間鍛造性および疲労強度が低下する。したがって、V含有量は0.30%以下である。V含有量が0.03%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいV含有量は0.04〜0.20%であり、さらに好ましくは0.05〜0.10%である。
ボロン(B)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の疲労強度を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。B含有量が0.0200%を超えると、その効果は飽和する。したがって、B含有量は0.0200%以下である。B含有量が0.0005%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいB含有量は、0.0010〜0.0120%であり、さらに好ましくは、0.0020〜0.0100%である。
マグネシウム(Mg)は、Alと同様に、鋼を脱酸し、鋼中の酸化物を微細化する。鋼中の酸化物が微細化することにより、粗大酸化物を破壊起点とする確率が低下し、鋼の疲労強度が高まる。Mgを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Mg含有量が多すぎると、上記効果は飽和し、かつ、鋼の被削性が低下する。したがって、Mg含有量は0.0035%以下である。Mg含有量が0.0001%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいMg含有量は0.0003〜0.0030%であり、さらに好ましくは、0.0005〜0.0025%である。
(Ti:0.060%以下)
チタン(Ti)は、微細な炭化物や窒化物、炭窒化物を生成し、ピン止め効果によりオーステナイト結晶粒を微細化する。オーステナイト結晶粒が微細化されることにより、鋼の冷間鍛造性や疲労強度が高まる。Tiが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Ti含有量が多すぎると、鋼の被削性および冷間鍛造性が低下する。したがって、Ti含有量は0.060%以下である。Ti含有量が0.002%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいTi含有量は0.005〜0.040%であり、さらに好ましくは、0.010〜0.030%である。
ニオブ(Nb)は、Tiと同様に、微細な炭化物や窒化物、炭窒化物を生成してオーステナイト結晶粒を微細化し、鋼の冷間鍛造性および疲労強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。一方、Nb含有量が多すぎると、上記効果は飽和し、かつ、鋼の被削性が低下する。したがって、Nb含有量は0.080%以下である。Nb含有量が0.010%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいNb含有量は0.015〜0.050%であり、さらに好ましくは、0.020〜0.040%である。
硫化物は、切削性の向上に有用であるため、その個数密度を確保する必要がある。鋼中のS含有量を増加させると、被削性は向上するが、粗大な硫化物が増加する。熱間圧延等によって延伸した粗大な硫化物は、冷間鍛造性を損なう。このため、鋼中の硫化物のサイズおよび形状を制御する必要がある。さらに、被削時の切りくず処理性を向上させるには、鋼中に硫化物を微細に分散させることが必要である。
本実施形態の冷間鍛造用鋼は、冷間鍛造用鋼の圧延方向と平行な断面において、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm2以上である。このため、優れた冷間鍛造性および切りくず処理性(被削性)が得られる。
次に、本実施形態の冷間鍛造用鋼の製造方法を説明する。
本実施形態の冷間鍛造用鋼の製造方法では、まず、上記のいずれかに記載の化学組成を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライトの1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を鋳造する。
上記の化学組成を有する鋳片を連続鋳造法により製造する。鋳片は、造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。鋳造条件としては、例えば、220×220mm角の鋳型を用いて、タンディッシュ内の溶鋼のスーパーヒートを10〜50℃とし、鋳込み速度を1.0〜1.5m/分とする条件を例示できる。
鋳片の凝固組織は、デンドライト形態(デンドライト)を呈している。冷間鍛造用鋼中の硫化物は、凝固前(溶鋼中)、または凝固時に晶出することが多く、鋳片のデンドライトの1次アーム間隔に大きく影響を受ける。すなわち、デンドライトの1次アーム間隔が小さければ、デンドライトの樹間部に晶出する硫化物が小さくなる。本実施形態の冷間鍛造用鋼は、鋳片の段階におけるデンドライトの1次アーム間隔が600μm未満である。
鋳造した鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から15mmの深さの位置について、鋳込み方向に5mmピッチでデンドライトの2次アーム間隔λ2(μm)を100点測定する。そして、測定した2次アーム間隔λ2(μm)の値から以下に示す式(2)を用いて、鋳片(スラブ)の液相線温度から固相線温度までの温度域内の冷却速度A(℃/秒)を算出し、算術平均により求めた平均値である。
λ2=710×A−0.39 式(2)
次に、製造された棒鋼、線材を焼鈍する。焼鈍は、球状化焼鈍であることが好ましい。球状化焼鈍を行うことにより、棒鋼、線材の冷間鍛造性を高めることができる。
以上の工程により、本実施形態の冷間鍛造用鋼が得られる。
例えば、冷間鍛造用鋼(棒鋼、線材)を冷間鍛造し、粗形状の中間品を製造する。製造された中間品は、所定の形状とするために、必要に応じて機械加工により切削してもよい。
次いで、中間品に、周知の条件で表面硬化処理を実施する。表面硬化処理としては、例えば、浸炭処理、窒化処理、高周波焼入れが挙げられる。次いで、表面硬化処理後の中間品を所定の形状に研削または磨きを行う。このようにして、冷間鍛造用鋼を素材として用いた機械部品が得られる。
なお、上記の部品の製造方法では、中間品に表面硬化処理を施したが、表面硬化処理は実施しなくてもよい。
また、各鋳片を鋳造する際における鋳型の冷却水量を変更することで、鋳片表面から15mmの深さにおける液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度を変化させた。
さらに、各鋳片から、試験片を採取し、以下に示す方法により、デンドライトを観察した。
鋳片から採取した試験片の断面をピクリン酸にてエッチングした。そして、鋳片表面から15mmの深さに位置を、鋳込み方向に5mmピッチで、デンドライトの1次アーム間隔および2次アーム間隔をそれぞれ100点測定した。デンドライトの1次アーム間隔の平均値を表2に示す。
上記の方法により測定した2次アーム間隔λ2(μm)の値から以下に示す式(2)を用いて、液相線温度から固相線温度までの温度域内の冷却速度A(℃/秒)を算出し、算術平均により求めた。上記の温度域内の平均冷却速度を表2に示す。
λ2=710×A−0.39 式(2)
以上の工程により、試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼を製造した。
以下に示す方法により、試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼(丸棒)のミクロ組織を観察した。まず、丸棒を軸方向に対して垂直に切断し、直径の1/4の位置(D/4位置)が観察面の中心であるミクロ組織観察用の試験片を採取した。試験片の切断面(観察面)を研磨し、ナイタル腐食液で腐食した。腐食後、切断面の中央部のミクロ組織を、光学顕微鏡を用いて400倍で観察した。
試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼ミクロ組織はいずれも、フェライトに球状セメンタイトが分散した組織であった。
その結果、試験番号1〜23の冷間鍛造用鋼のビッカース硬さは、いずれもHv100〜140の範囲内であり、各冷間鍛造用鋼は、同程度の硬度を有した。
[硫化物密度測定方法]
ミクロ組織観察と同様にして採取した試験片を樹脂埋めした後、被検面(切断面)を鏡面研磨した。被検面は、冷間鍛造用鋼の長手方向と平行である。被検面内の硫化物を走査電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)により特定した。
なお、観察対象とした硫化物の円相当径を1μm以上としたのは、現実的に汎用の機器で、粒子のサイズと成分を統計的に扱うことが可能であり、かつ、これより小さな硫化物を制御しても冷間鍛造性および切りくず処理性に与える影響が少ないためである。
[冷間鍛造性試験]
各冷間鍛造用鋼(直径30mmの丸棒)から、半径の1/2の位置(R/2位置)を中心とした切り欠き付きの直径10mm、長さ15mmの丸棒試験片を8個ずつ採取した。丸棒試験片の長手方向は、直径30mmの丸棒の鍛伸軸に平行とした。冷間圧縮試験には、500ton油圧プレスを使用した。
各冷間鍛造用鋼(直径30mmの丸棒)に、冷間での引抜きにより歪を与え、引抜き後の丸棒の被削性により、冷間鍛造後の被削性を評価した。
具体的には、各冷間鍛造用鋼(直径30mmの丸棒)を、減面率30.6%で冷間引抜きし、直径25mmの丸棒にした。冷間引抜きした丸棒を長さ500mmに切断し、旋削加工用の試験材とした。得られた直径25mm、長さ500mmの試験材の外周部を、数値制御(NC)旋盤を用いて、下記の条件で旋削加工し、被削性(切りくず処理性)を調査した。
母材材質:超硬P20種グレード。
コーティング:なし。
周速:150m/分。
送り:0.2mm/rev。
切り込み:0.4mm。
潤滑:水溶性切削油を使用。
なお、切りくずが長くつながった結果、切りくずの総数が10個未満である場合、回収された切りくずの総重量を測定し、10個の個数に換算した値を「切りくず重量」と定義した。例えば、切りくずの総数が7個であって、その総重量が12gである場合、切りくず重量は、12g×10個/7個、と計算した。
試験番号15の冷間鍛造用鋼は、BiおよびCaを含有せず、Sの含有量が本発明規定の範囲を上回った例である。試験番号15の冷間鍛造用鋼は、冷間鍛造性が低かった。
試験番号16の冷間鍛造用鋼は、Biを含有せず、硫化物個数密度が少ない例である。試験番号16の冷間鍛造用鋼は、切りくず重量が15gを超え、被削性が低かった。
試験番号18の冷間鍛造用鋼は、Biを含有せず、更にSの含有量が本発明規定の範囲を上回ったため式(1)を満たさない例である。試験番号18の冷間鍛造用鋼では、限界圧縮率が55%未満となり、冷間鍛造性が低かった。これは、Sの含有量が多いため、粗大なMnSが生成したことによるものと推定される。
試験番号20の冷間鍛造用鋼は、Sの含有量が本発明規定の範囲を上回ったため式(1)を満たさない例である。試験番号20の冷間鍛造用鋼は、冷間鍛造性が低かった。
試験番号22の冷間鍛造用鋼は、Caの含有量が本発明規定の範囲を上回ったため式(1)を満たさない例である。試験番号22の冷間鍛造用鋼は、限界圧縮率が55%未満となり、冷間鍛造性が低かった。これは、Caの含有量が多いため、硫化物に固溶しなかったCaが粗大な酸化物を形成したことによるものと推定される。
試験番号23の冷間鍛造用鋼は、Ca含有しない例である。試験番号23の冷間鍛造用鋼は、限界圧縮率が55%未満となり、冷間鍛造性が低かった。これは、硫化物が球状化されず、粗大なままであったためであると推定される。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0.05〜1.0%、
Mn:0.40〜2.00%、
S:0.008〜0.040%未満、
Cr:0.01〜3.00%、
Al:0.010〜0.100%、
N:0.0250%以下、
Ca:0.0001〜0.0050%、
Bi:0.0001〜0.0050%
を含有し、
P:0.050%以下、
O:0.0020%以下
に制限し、残部がFeおよび不純物からなり、
下記式(1)を満たす化学組成を有し、
圧延方向と平行な断面において、円相当径が2μm未満の硫化物の個数密度が300個/mm2以上であることを特徴とする冷間鍛造用鋼。
0.030≦Ca/S≦0.150 式(1)
(式(1)中のCa、Sは、質量%での各元素の含有量とする。) - Feの一部に代えて、質量%で、
Mo:1.00%以下、
Ni:1.00%以下、
V:0.30%以下、
B:0.0200%以下、
Mg:0.0035%以下
からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の冷間鍛造用鋼。 - Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.060%以下、
Nb:0.080%以下
からなる群から選択される1種または2種を含有する、請求項1または請求項2に記載の冷間鍛造用鋼。 - 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の化学組成を有し、かつ表層から15mmの範囲内におけるデンドライトの1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を鋳造し、前記鋳片を熱間加工し、更に焼鈍することを特徴とする冷間鍛造用鋼の製造方法。
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