JP5302497B2 - 感圧転写テープ - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、修正テープ、着色テープ、感圧転写粘着テープ等の、感圧転写テープに関するものである。
フィルム状の基材の片面に、感圧転写性を有する白色の隠蔽層を備え、前記隠蔽層を、紙等の表面に感圧転写することで、前記表面の記載を隠蔽したり、その上に、新たに記載して修正したりするための修正テープや、同じく、フィルム状の基材の片面に、感圧転写性を有する蛍光色等の着色層を備え、前記着色層を、紙等の表面に感圧転写することで、前記表面の記載を強調したりするためのマーカーテープ等の着色テープ、あるいは、フィルム状の基材の片面に、感圧転写性を有する粘着層を備え、前記粘着層を、紙等の表面に感圧転写して、その上に、他の紙等を貼り付けたりするための感圧転写粘着テープ(以下、これらを「感圧転写テープ」と総称することがある)が、それぞれ、従来の、修正液やマーカーペン、液状もしくはスティックタイプの糊や両面粘着テープ等に代わる新たな文房具として、普及しつつある。
これら感圧転写テープは、基材の片面に、離型層を形成し、その上に、感圧転写性を有する隠蔽層、着色層、粘着層等の感圧転写層を、離型可能に積層し、それを、長尺帯状に形成して、ロール状に捲回した状態で使用するのが一般的である。
例えば、ロール状に捲回した感圧転写テープを、手で持って操作することができる専用のホルダ内に装填した感圧転写具が、広く用いられている。前記感圧転写具によれば、ホルダを手で持って、ロールから繰り出した感圧転写テープの感圧転写層を、前記ホルダの先端から突設させたヘッドによって、紙等の表面に押し付けながら、ホルダを移動させると、前記移動に伴って、ロールから、新たな感圧転写テープを連続的に繰り出させながら、前記感圧転写テープの感圧転写層を、基材から離型させて、ヘッドによって、紙等の表面に圧着させて、前記表面に、感圧転写層を、連続的に感圧転写させることができる。
また、前記感圧転写具を、モータ駆動式の紙送り機構を有する電動塗膜転写装置に組み込んで、前記紙送り機構によって、一定速度で紙を送りながら、先に説明したメカニズムによって、自動的に、感圧転写テープの感圧転写層を、基材から離型させながら、ホルダに設けたヘッドによって、紙等の表面に圧着させて、前記表面に感圧転写させることも提案されている(特許文献1参照)。
感圧転写テープの感圧転写層には、ロール状に捲回した基材の背面に粘着して、いわゆるブロッキングを生じたり、前記背面に転移して、ヘッドに転写層が送られない転写不良を生じたりするのを防止しながら、なおかつ、紙等の表面に転写されずに、基材ごと、感圧転写具の、転写後の基材を巻き取るための巻取りリールに巻き取られるといった転写不良を生じることなく、良好に、感圧転写できること、つまり、良好な転写性を有することが求められる。
しかし、一般的に、ブロッキングを生じにくくする、つまり、耐ブロッキング性を向上したり、基材の背面への転移を生じにくくする、つまり耐転移性を向上したりするためには、感圧転写層の粘着力を抑えることが求められ、逆に、紙等の表面への転写性を向上するためには、前記粘着力を向上することが求められることから、これらの特性を、いずれも満足するのは容易ではない。特に、新聞紙等の、大きな凹凸の多いラフな表面に対しても、良好な転写性を有する上、耐ブロッキング性や耐転移性にも優れた感圧転写テープを製造するのは、実質的に困難である。
そこで、基材の両面に離型層を形成すると共に、片方の離型層上に、感圧転写層としての粘着層を積層した感圧転写粘着テープにおいて、互いに積層した離型層と粘着層との間の、剥離速度0.3m/min(=300mm/min)での剥離力を、2.9×10−2〜3.4×10−1N/25mmに設定することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、発明者の検討によると、前記両者間の剥離力の範囲を規定するだけでは不十分であって、前記従来の感圧転写テープでは、特に、新聞紙等に対する良好な転写性が得られないだけでなく、感圧転写テープを、高温環境下で、長期に亘って保存した際に、ブロッキングが発生しやすいという問題がある。
また、前記従来の感圧転写テープは、転写速度が高いほど、転写性が低下して、転写不良を生じやすい傾向がある。そのため、先に説明したように、感圧転写テープのロールを、感圧転写具のホルダに装填し、前記ホルダを、手で持って使用して、前記感圧転写テープの感圧転写層を、紙等の表面に転写する際に、従来の感圧転写テープでは、ホルダの移動速度(≒転写速度)が、使用者によって、あるいは使用状況によって区々であることから、転写不良を生じたり、生じなかったりしやすく、転写性が安定しないという問題もある。
また、感圧転写具を、先に説明した、電動塗膜転写装置に組み込んで用いる場合には、紙送り機構による紙送りの速度が、一般的に、感圧転写具を手で持って使用する場合よりも速いことから、さらに、転写不良を生じやすいという問題がある。
また、特に、感圧転写粘着テープにおいては、感圧転写層としての粘着層の、転写終了時の糸引きを防止するために、前記粘着層を、不連続にパターン形成することが行われるが(例えば、特許文献3参照)、パターン形成した粘着層は、連続した粘着層よりも、離型層に対する接触面積が小さいことから、同じ剥離力を有しているにも拘らず、前記連続した粘着層よりも、離型して、基材の背面の離型層に転移しやすく、転写性と、耐転移性とのバランスをとるのが難しいという問題もある。
特開2004−66481号公報(請求項1、段落[0009]〜[0010]、図1〜図3) 特開2002−167561号公報(請求項1、段落[0015]〜[0017]) 特開2001−192625号公報(請求項1、段落[0006]〜[0008])
本発明の目的は、耐転移性や、高温環境下で、長期に亘って保存した際の耐ブロッキング性に優れると共に、新聞紙等のラフな表面等に対しても、常に、安定して、良好な転写性を有する感圧転写テープを提供することにある。また、本発明の目的は、前記各特性に優れる上、さらに、様々な転写速度で転写する際にも、常に、安定して、良好な転写性を有する感圧転写テープを提供することにある。
前記課題を解決するため、発明者は、互いに積層した離型層と感圧転写層との、剥離力の範囲を規定するのではなく、前記離型層と、基材の背面に形成した、主に転移やブロッキングにかかわる離型層との、剥離力の比の範囲を規定することを検討した。また、基材の両面に形成する離型層の種類についても検討した。
その結果、離型層として、バインダとしてシリコーン系樹脂を含むシリコーン離型層を採用すると共に、基材の、背面に相当する一方の面に形成した第1のシリコーン離型層と、他方の面に形成した、感圧転写層が離型可能に積層される第2のシリコーン離型層の、被着体としてのSUS304鋼板に対する剥離速度300mm/minでの粘着力が6.0N/10mmである同じアクリル系粘着剤に対する、剥離速度300mm/minでの剥離力F、Fの比F/F5.06.0の範囲内、剥離速度1000mm/minでの剥離力F 、F の比F /F を3.0〜5.5の範囲内で、かつ前記剥離力F 、F の比F /F を1.2以下の範囲内に限定すればよいことを見出した。
したがって、請求項1記載の発明は、基材と、前記基材の一方の面に形成された第1のシリコーン離型層と、基材の他方の面に形成された第2のシリコーン離型層と、前記第2のシリコーン離型層上に、離型可能に積層された感圧転写層とを含む感圧転写テープであって、被着体としてのSUS304鋼板に対する剥離速度300mm/minでの粘着力が6.0N/10mmである同じアクリル系粘着剤に対する、第1のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力Fと、第2のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力Fとが、式(a):
5.0≦F/F6.0 (a)
を満足し、かつ前記アクリル系粘着剤に対する、前記第1のシリコーン離型層の、剥離速度1000mm/minでの剥離力F と、前記第2のシリコーン離型層の、剥離速度1000mm/minでの剥離力F とが、式(b):
3.0≦F /F ≦5.5 (b)
を満足するとともに、前記アクリル系粘着剤に対する、前記第2のシリコーン離型層の剥離力F 、F が、式(c):
/F ≦1.2 (c)
を満足することを特徴とする感圧転写テープである。
前記請求項1記載の発明において、離型層が、バインダとしてシリコーン系樹脂を含むシリコーン離型層に限定されるのは、前記シリコーン系樹脂が、離型性に優れると共に、安定で、たとえ、高温環境下で長期に亘って保存される等しても、剥離力が変動することなく、常に、良好な離型性を維持することができるためである。また、第1および第2のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力F、Fの比F/Fが式(a)の範囲内、剥離速度1000mm/minでの剥離力F 、F の比F /F が式(b)の範囲内、そして前記第2のシリコーン離型層の剥離力F 、F の比F /F が式(c)の範囲内にそれぞれ限定されるのは、下記の理由による。
すなわち、前記式(a)の範囲より剥離力Fが大きい場合には、特に、感圧転写具を手で持って操作して、感圧転写層を紙等の表面に転写する際に、感圧転写層が、第2のシリコーン離型層から離型しにくくなるため、前記感圧転写層の、特に、新聞紙等のラフな表面への転写性が低下する。そのため、例えば、感圧転写テープを、先に説明した感圧転写具に使用した場合には、感圧転写層が、新聞紙等の表面に転写されずに、基材ごと、感圧転写具の、転写後の基材を巻き取るための巻取りリールに巻き取られるといった転写不良が発生しやすくなる。
また、剥離力Fが小さくなりすぎて、感圧転写テープが滑りやすくなるため、例えば、ロール状に捲回した感圧転写テープが巻きずれしやすくなって、感圧転写具の組み立ての作業性が低下するおそれも生じる。
一方、前記範囲より、剥離力Fが大きい場合には、特に、感圧転写テープをロール状に捲回した状態で、高温環境下で長期間に亘って保存した際に、ブロッキングを発生しやすくなる。また、感圧転写層が、第1のシリコーン離型層に転移して、ヘッドに転写層が送られない転写不良を生じやすくなる。
また、前記式(b)の範囲より剥離力F が大きいと、剥離速度が速い場合に、感圧転写層が、第2のシリコーン離型層から離型しにくくなるため、前記感圧転写層の、特に、新聞紙等のラフな表面への転写性が低下する。そのため、例えば、感圧転写テープを、先に説明した感圧転写具に使用した場合には、感圧転写層が、新聞紙等の表面に転写されずに、基材ごと、感圧転写具の、転写後の基材を巻き取るための巻取りリールに巻き取られるといった転写不良が発生しやすくなる。
一方、前記範囲より剥離力F が大きいと、感圧転写層が、第1のシリコーン離型層に転移して、ヘッドに転写層が送られない転写不良を生じやすくなる。
さらに、式(c)の範囲より剥離力F が大きい場合には、第1および第2のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力と、剥離速度1000mm/minでの剥離力との差が大きくなりすぎる。
これに対し、剥離力F 、F の比F /F が式(a)の範囲内で、かつ剥離力F 、F の比F /F が式(b)の範囲内であるとともに、剥離力F 、F の比F /F が式(c)の範囲内であれば、第1および第2のシリコーン離型層の剥離力を良好にバランスさせて、感圧転写層の、新聞紙等のラフな表面への転写性を良好な範囲に維持すると共に、巻きずれを生じにくくした状態で、前記転写性等と相反する特性である、耐ブロッキング性や耐転移性を向上して、ブロッキングや、感圧転写層の転移を防止する効果を、広い剥離速度の範囲で良好に、しかも速度依存性を小さくして、安定して発現させることができる。
したがって、請求項1記載の発明によれば、特に、耐転移性や、高温環境下で、長期に亘って保存した際の耐ブロッキング性に優れると共に、新聞紙等のラフな表面等に対しても、常に、安定して、良好な転写性を有する感圧転写テープを提供することが可能となる
なお、感圧転写テープを、様々な転写速度で転写した際に、より一層、安定して、良好な転写性を有するものとするためには、請求項2に記載したように、前記と同じアクリル系粘着剤に対する、前記第2のシリコーン離型層の剥離力F 、F の比F /F を、前記範囲内でも1.0以上、1.1以下とするのが好ましい。
また、請求項3に記載したように、前記第1および第2のシリコーン離型層が、式(1):
Figure 0005302497
〔式中、Rは、炭素数1〜5の鎖状アルキル基を示す。〕
で表されるシラン化合物を含んでいる場合には、両シリコーン離型層のもとになる、バインダとしてシリコーン系樹脂を含む塗剤の、基材表面への濡れ性を向上して、前記基材の表面に、ムラのない均一な塗膜と、前記塗膜を架橋させたシリコーン離型層とを形成することができると共に、形成したシリコーン離型層の、基材への密着性を向上することができる。
前記シラン化合物としては、請求項4に記載したように式(2)で表されるビニルトリアセトキシシランが挙げられる。また、先に説明した効果をより一層、良好に発現させることを考慮すると、請求項5に記載したように式(2)で表されるビニルトリアセトキシシランと、式(3)で表されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを、重量比で7/3〜4/6の割合で併用するのがさらに好ましい。
第1および第2のシリコーン離型層の剥離力F、F 、F 、F を、前記式(a)〜(c)を満足する範囲内となるように調整するためには、前記両シリコーン離型層の硬さを個別に調整すればよく、そのためには、請求項6に記載したように、前記シリコーン離型層を形成する主体であるバインダとしてのシリコーン系樹脂の架橋密度を調整すればよい
また感圧転写層が、感圧転写粘着テープの、感圧転写性を有する粘着層である場合、前記粘着層は、転写終了時の糸引きを防止することを考慮すると、請求項7に記載したように、第2のシリコーン離型層上に、不連続にパターン形成されているのが好ましい。
本発明によれば、耐転移性や、高温環境下で、長期に亘って保存した際の耐ブロッキング性に優れると共に、新聞紙等のラフな表面等に対しても、常に、安定して、良好な転写性を有する感圧転写テープを提供することができる。また、本発明によれば、前記各特性に優れる上、さらに、様々な転写速度で転写する際にも、常に、安定して、良好な転写性を有する感圧転写テープを提供することができる。
本発明の感圧転写テープは、基材と、前記基材の一方の面に形成された第1のシリコーン離型層と、基材の他方の面に形成された第2のシリコーン離型層と、前記第2のシリコーン離型層上に、離型可能に積層された感圧転写層とを含む感圧転写テープであって、被着体としてのSUS304鋼板に対する剥離速度300mm/minでの粘着力が6.0N/10mmである同じアクリル系粘着剤に対する、第1のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力Fと、第2のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力Fとが、式(a):
5.0≦F/F6.0 (a)
を満足し、かつ前記アクリル系粘着剤に対する、前記第1のシリコーン離型層の、剥離速度1000mm/minでの剥離力F と、前記第2のシリコーン離型層の、剥離速度1000mm/minでの剥離力F とが、式(b):
3.0≦F /F ≦5.5 (b)
を満足するとともに、前記アクリル系粘着剤に対する、前記第2のシリコーン離型層の剥離力F 、F が、式(c):
/F ≦1.2 (c)
を満足することを特徴とするものである。
前記本発明の感圧転写テープによれば、離型層を、バインダとしてシリコーン系樹脂を含むシリコーン離型層に限定しているため、前記シリコーン系樹脂による、離型性に優れると共に、安定で、たとえ、高温環境下で長期に亘って保存される等しても、剥離力が変動することなく、常に、良好な離型性を維持することができるという特性を、基材の両面に形成する、第1および第2のシリコーン離型層に付与することができる。
また、前記第1および第2のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力F、Fの比F/Fを式(a)の範囲内、剥離速度1000mm/minでの剥離力F 、F の比F /F を式(b)の範囲内、そして前記剥離力F 、F の比F /F を式(c)の範囲内にそれぞれ限定しているため、前記両シリコーン離型層の剥離力を良好にバランスさせて、特に、感圧転写層の、新聞紙等のラフな表面への転写性を良好な範囲に維持すると共に、巻きずれを生じにくくした状態で、前記転写性等と相反する特性である、耐ブロッキング性や耐転移性を向上して、ブロッキングや、感圧転写層の転移を防止する効果を、広い剥離速度の範囲で良好に、しかも速度依存性を小さくして、安定して発現させることができる。
そのため、本発明によれば、耐転移性や、高温環境下で、長期に亘って保存した際の耐ブロッキング性に優れると共に、新聞紙等のラフな表面等に対しても、常に、安定して、良好な転写性を有する感圧転写テープを提供することができる
また、本発明の感圧転写テープは、様々な転写速度で転写する際にも、常に、安定して、良好な転写性を発現させることを考慮すると、前記アクリル系粘着剤に対する、第2のシリコーン離型層の剥離力F、Fの比F/F を、前記式(c)の範囲内でも1.0以上、1.1以下の範囲内とするのが好ましい
離力F、Fの比F/F前記の範囲内であれば、第1および第2のシリコーン離型層の剥離力を良好にバランスさせて、感圧転写層の、新聞紙等のラフな表面への転写性を良好な範囲に維持すると共に、巻きずれを生じにくくした状態で、前記転写性等と相反する特性である、耐ブロッキング性や耐転移性を向上して、ブロッキングや、感圧転写層の転移を防止する効果を、より広い剥離速度の範囲で、より一層、良好に、しかも、速度依存性を小さくして、安定して発現させることができる。
そのため、本発明の転写テープを、先に説明した各特性に優れる上、さらに、様々な転写速度で転写する際にも、常に、安定して、良好な転写性を有するものとすることができる
なお、本発明では、アクリル系粘着剤に対する、第1および第2のシリコーン離型層の剥離力F〜Fを、いずれも、日本工業規格JIS Z0237:2000「粘着テープ・粘着シート試験方法」に所載の、90度引きはがし粘着力の測定方法に準拠した、下記の測定方法で測定した値でもって表すこととする。
すなわち、剥離力を測定するシリコーン離型層の表面に、アクリル系粘着剤の層を有する粘着テープを、2kgの荷重をかけながら貼り付けて、温度23℃、相対湿度50%の温度、湿度環境下で静置した後、同じ温度、湿度環境下、300mm/minの速度で90度剥離した際の剥離力を測定して、アクリル系粘着剤に対する、第1および第2のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力F、Fとする。また、剥離速度を1000mm/minとしたこと以外は、前記と同様にして測定して、アクリル系粘着剤に対する、両シリコーン離型層の、剥離速度1000mm/minでの剥離力F、Fとする。
また、前記粘着テープとしては、基材が、厚み25μm、幅25mmのポリエステルフィルムであると共に、アクリル系粘着剤の層を含む総厚みが53μmで、かつ、被着体としてSUS304鋼板を使用して、剥離速度300mm/minとしたこと以外は、前記と同様にして測定したアクリル系粘着剤の層の粘着力が6.0N/10mmである、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープNo.31Bを使用することとする。
第1および第2のシリコーン離型層の剥離力F〜Fを、それぞれ、前記範囲内となるように調整するためには、前記両シリコーン離型層の硬さを、個別に調整すればよい。硬さが硬いほど、シリコーン離型層の剥離力の、速度依存性を小さくすることができる。また、両シリコーン離型層の硬さを調整するためには、前記シリコーン離型層を形成する主体であるバインダとしてのシリコーン系樹脂の、架橋密度を調整すればよく、架橋密度を調整するためには、シリコーン離型層のもとになる塗剤に添加するシリコーン系樹脂の種類(分子構造、分子量等)を選択したり、前記シリコーン系樹脂を架橋するための触媒や架橋剤の種類や量を選択したりすればよい。
両シリコーン離型層の剥離力F〜Fの具体的な範囲については、特に限定されないが、第1のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力Fが5.0×10−2〜10.0×10−2N/10mm、特に6.0×10−2〜9.0×10−2N/10mmで、かつ、他の剥離力F、F、およびFが、前記Fに対して、式(a)〜(c)を満足する値であるのが好ましい。
また、第1および第2のシリコーン離型層は、前記両シリコーン離型層のもとになる、バインダとしてシリコーン系樹脂を含む塗剤の、基材表面への濡れ性を向上して、前記基材の表面に、ムラのない均一な塗膜と、前記塗膜を架橋させたシリコーン離型層とを形成すると共に、形成したシリコーン離型層の、基材への密着性を向上することを考慮すると、式(1):
Figure 0005302497
〔式中、Rは、炭素数1〜5の鎖状アルキル基を示す。〕
で表されるシラン化合物を含んでいるのが好ましい。
前記シラン化合物の具体例としては、例えば、式(2):
Figure 0005302497
で表されるビニルトリアセトキシシランが挙げられる。シラン化合物の添加量は、シリコーン系樹脂100重量部に対して1〜10重量部であるのが好ましい。添加量が、前記範囲未満では、シラン化合物を添加することによる、先に説明した効果が十分に得られないおそれがある。また、前記範囲を超えても、それ以上の添加効果が得られないだけでなく、過剰のシラン化合物が生じることによって、シリコーン離型層の、基材への密着性が、却って低下したりするおそれがある。
また、先に説明した効果を、より一層、良好に発現させることを考慮すると、前記式(2)で表されるビニルトリアセトキシシランと、式(3):
Figure 0005302497
で表されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを、重量比で7/3〜4/6の割合で併用するのが、さらに好ましい。
第1および第2のシリコーン離型層は、共に、両シリコーン離型層のもとになる、バインダとしてシリコーン系樹脂を含む塗剤を、基材の表面に塗布して乾燥させると共に、シリコーン系樹脂を架橋反応させることで形成される。前記両シリコーン離型層の厚みは0.03〜0.5μm、特に0.05〜0.3μmであるのが好ましい。
本発明の構成は、感圧転写層が隠蔽層である修正テープ、着色層であるマーカーテープ等の着色テープ、および粘着層である感圧転写粘着テープの、いずれに適用することもできる。このうち、修正テープの隠蔽層は、第2のシリコーン離型層上に、前記第2のシリコーン離型層に対して離型可能なバインダ樹脂からなり、隠蔽性を有する着色剤で着色された離型層と、感圧粘着性を有する粘着層とを、この順に積層することで形成される。
離型層を形成するバインダ樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP)、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル樹脂、フッ素ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、および環化ゴム等の1種または2種以上が挙げられる。
また、隠蔽性を有する着色剤としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、シリカ等の無機微粒子や、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル等の樹脂微粒子等の1種または2種以上が挙げられる。離型層の厚みは3〜40μm、特に5〜30μmであるのが好ましい。
また、着色テープの着色層は、第2のシリコーン離型層上に、前記バインダ樹脂からなり、所定の色味を有する着色剤で着色された離型層と、感圧粘着性を有する粘着層とを、この順に積層することで形成される。着色剤としては、各種色味を有する染料、顔料、蛍光染料、蛍光顔料等の1種または2種以上が挙げられる。離型層の厚みは、前記と同じ範囲が好ましい。
また、感圧転写粘着テープの粘着層は、第2のシリコーン離型層上に、前記第2のシリコーン離型層に対して離型性を有すると共に、感圧粘着性を有する粘着層を積層することで形成される。単独で、前記粘着層を形成すると共に、離型層と積層されて、隠蔽層や着色層を形成する粘着層のもとになる感圧粘着剤としては、例えば、アクリル系、ロジン系、ゴム系、ビニルエーテル系、ポリイソブチレン系等の種々の粘着剤が、いずれも使用可能であり、特に、アクリル系の、水溶性または水分散性の粘着剤が好ましい。
粘着剤の具体例としては、昭和高分子(株)製のポリゾール(登録商標)4150、6010、大日本インキ化学工業(株)製のボンコート(登録商標)8300、日本カーバイド工業(株)製のニカゾール(登録商標)TS−910、TS−1537、ニッセツ(登録商標)KP−1004、積水化学工業(株)製のエスダイン(登録商標)#7110、東亜合成(株)製のアロンタック(登録商標)HV−5200、A−1081H、綜研化学(株)製のSKダインE−3308、1100等が挙げられる。また、ロジン系粘着付与剤等を配合してもよい。
粘着層の厚みは、修正テープ、着色テープ、および感圧転写粘着テープのいずれにおいても1〜50μm、特に2〜30μmであるのが好ましい。また、感圧転写粘着テープの粘着層は、転写終了時の糸引きを防止するため、不連続にパターン形成するのが好ましい。
図1〜図4は、それぞれ、粘着層のパターンの例を示す平面図である。図1を参照して、図の例では、感圧転写粘着テープ1の、第2の離型層2上に、平面形状が円形の、多数の粘着層3を、前記感圧転写粘着テープ1の長さ方向に沿う複数列に分けて配列すると共に、前記感圧転写粘着テープ1の幅方向に隣り合う各列の粘着層3を、半ピッチずつずらして形成している。
また、図2を参照して、図の例では、前記第2の離型層2上に、平面形状が正方形の、多数の粘着層3を、感圧転写粘着テープ1の長さ方向に沿う複数列に分けて配列すると共に、前記感圧転写粘着テープ1の幅方向に隣り合う各列の粘着層3を、ピッチを一致させて形成している。
図3を参照して、図の例では、第2の離型層2上に、平面形状が長円形の、多数の粘着層3を、長円の長径を、感圧転写粘着テープ1の長さ方向に向けた状態で、前記感圧転写粘着テープ1の長さ方向に沿う複数列に分けて配列すると共に、前記感圧転写粘着テープ1の幅方向に隣り合う各列の粘着層3を、ピッチを一致させて形成している。
さらに、図4を参照して、図の例では、第2の離型層2上に、平面形状が“X”字状の、多数の粘着層3を感圧転写粘着テープ1の長さ方向に沿う複数列に分けて配列すると共に、前記感圧転写粘着テープ1の幅方向に隣り合う各列の粘着層3を、ピッチを一致させて形成している。
粘着層3を、前記各図の例に示すように、不連続にパターン形成することで、前記粘着層3の、転写終了時の糸引きを防止することができる。粘着層3をパターン形成するためには、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷方法によって、第2の離型層上に、粘着層3を形成すればよい。
基材としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)のプラスチックからなるフィルムや、各種の紙類が挙げられる。基材の厚みは、4〜60μmであるのが好ましい。
本発明の構成は、以上で説明した例には限定されず、本発明の用紙を逸脱しない範囲で、種々の変更を施すことができる。
《実施例1、2、比較例1〜5
基材としての、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、下記の各成分からなり、成分中のシリコーン系樹脂と、触媒または硬化剤として、表1に示す組み合わせのものを用いた、第1のシリコーン離型層のもとになる塗剤を、乾燥後の厚みが0.1μmとなるように塗布して乾燥させると共に、シリコーン系樹脂を架橋反応させて、第1のシリコーン離型層を形成した。
また、基材の反対面に、やはり下記の各成分からなり、成分中のシリコーン系樹脂と、触媒または硬化剤として、表1に示す組み合わせのものを用いた、第2のシリコーン離型層のもとになる塗剤を、乾燥後の厚みが0.1μmとなるように塗布して乾燥させると共に、シリコーン系樹脂を架橋反応させて、第2のシリコーン離型層を形成した。
(成分) (重量部)
シリコーン系樹脂 3.00
触媒または硬化剤 0.05
ビニルトリアセトキシシラン 0.03
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 0.02
トルエン 50.00
メチルエチルケトン 46.90
次に、前記第2のシリコーン離型層上に、下記の各成分からなる、粘着層のもとになる塗剤を、グラビア印刷法によって、乾燥後の厚みが20μmとなるように、図1に示す円形状にパターン形成し、乾燥させて、粘着層を形成することで、感圧転写テープとしての、感圧転写粘着テープを製造した。
(成分) (重量部)
エマルジョン型アクリル系樹脂 37.0
ロジン系粘着付与剤 4.5
はじき防止剤 2.5
水 56.0
なお、エマルジョン型アクリル系樹脂の重量部は、エマルジョン中の固形分の量を換算した値である。エマルジョンの残量は、水の重量部に含まれている。
《実施例
第1および第2のシリコーン離型層用の塗剤中の、ビニルトリアセトキシシランの配合量を0.05重量部として、グリシドキシプロピルトリメトキシシランを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、感圧転写テープとしての、感圧転写粘着テープを製造した。
《実施例
ビニルトリアセトキシシランに代えて、同量のビニルトリエトキシシランを配合したこと以外は実施例と同様にして、感圧転写テープとしての、感圧転写粘着テープを製造した。
《実施例
粘着層をパターン形成せずに、第2のシリコーン離型層の全面を覆う連続層としたこと以外は実施例1と同様にして、感圧転写テープとしての、感圧転写粘着テープを製造した。
各実施例、比較例で製造した感圧転写粘着テープについて、下記の各試験を行って、その特性を評価した。
《剥離力測定》
実施例、比較例で製造した感圧転写粘着テープの、第1および第2のシリコーン離型層の、アクリル系粘着剤に対する剥離力を、先に説明した測定方法によって測定した。
《転写性試験》
実施例、比較例で製造した感圧転写粘着テープを、感圧転写具〔ゼネラル(株)製のピタタ(登録商標)〕用のリールに、ロール状に捲回した状態で、温度25℃、相対湿度60%の温度、湿度条件下で、前記感圧転写具に装填して、転写角度45°、荷重300g、転写速度2m/min、はたは6m/minの条件で、新聞紙の表面に転写(転写回数10回)して、下記の基準で、転写性を評価した。
◎:転写速度2m/min、および6m/minのいずれにおいても、粘着層が転写されない転写不良は発生せず、問題なく転写することができた。
○:転写速度6m/minでは、1回以上の転写不良が発生したが、転写速度2m/minでは、転写不良は発生せず、問題なく転写することができた。
×:転写速度2m/minでも、1回以上の転写不良が発生した。
《高温保存性試験》
実施例、比較例で製造した感圧転写粘着テープを、前出の感圧転写具用のリールに、ロール状に捲回した状態で、温度50℃、相対湿度90%の温度、湿度条件下で1週間、静置した後、同じ温度、湿度条件下でロールを巻きほどいた際に、粘着層が、第1のシリコーン離型層の表面に付着していたか否かを観察して、下記の基準で、高温保存性を評価した。
◎:全く付着なし。
×:付着あり、ブロッキング発生。
《塗剤の塗布状態評価》
基材に塗布された、シリコーン離型層のもとになる塗剤の塗布状態を観察して、下記の基準で評価した。
◎:全く問題なし。
○:◎と比較して、若干、塗布条件がシビアになったが、塗布ムラは観察されなかった。
△:やや塗布ムラが生じたが、品質上、問題が生じるレベルではなかった。
×:品質に問題があるレベルの塗布ムラが頻発した。
以上の結果を表1〜表3に示す。
Figure 0005302497
Figure 0005302497
Figure 0005302497
表より、第1および第2のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力F、Fの比F/F5.06.0の範囲内、剥離速度1000mm/minでの剥離力F 、F の比F /F が3.0〜5.5の範囲内で、かつ、第2のシリコーン離型層の剥離力F 、F の比、F /F が1.2以下の範囲内である各実施例は、前記範囲を外れる比較例に比べて、転写性、および耐ブロッキング性に優れていることが確認された。また、各実施例を比較すると、前記比F /F は1.0〜1.1の範囲内であるのが好ましいことが判った。
さらに、第1および第2のシリコーン離型層のもとになる塗剤は、前記塗剤を用いて、基材上に、ムラのない均一な塗膜を形成することを考慮すると、式(1)のシラン化合物としてのビニルトリアセトキシシランを含むのが好ましく、前記ビニルトリアセトキシシランを、グリシドキシプロピルトリメトキシシランと併用するのが、より一層、好ましいことも判った。
図1は、粘着層のパターンの例を示す平面図である。 図2は、粘着層のパターンの他の例を示す平面図である。 図3は、粘着層のパターンの、さらに他の例を示す平面図である。 図4は、粘着層のパターンの、さらに他の例を示す平面図である。
符号の説明
1 感圧転写粘着テープ
2 第2の離型層
3 粘着層

Claims (7)

  1. 基材と、前記基材の一方の面に形成された第1のシリコーン離型層と、基材の他方の面に形成された第2のシリコーン離型層と、前記第2のシリコーン離型層上に、離型可能に積層された感圧転写層とを含む感圧転写テープであって、被着体としてのSUS304鋼板に対する剥離速度300mm/minでの粘着力が6.0N/10mmである同じアクリル系粘着剤に対する、第1のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力Fと、第2のシリコーン離型層の、剥離速度300mm/minでの剥離力Fとが、式(a):
    5.0≦F/F6.0 (a)
    を満足し、かつ前記アクリル系粘着剤に対する、前記第1のシリコーン離型層の、剥離速度1000mm/minでの剥離力F と、前記第2のシリコーン離型層の、剥離速度1000mm/minでの剥離力F とが、式(b):
    3.0≦F /F ≦5.5 (b)
    を満足するとともに、前記アクリル系粘着剤に対する、前記第2のシリコーン離型層の剥離力F 、F が、式(c):
    /F ≦1.2 (c)
    を満足することを特徴とする感圧転写テープ。
  2. 前記比 /F が1.0以上、1.1以下の範囲内である請求項1記載の感圧転写テープ。
  3. 第1および第2のシリコーン離型層が、式(1):
    Figure 0005302497
    〔式中、 は、炭素数1〜5の鎖状アルキル基を示す。〕
    で表されるシラン化合物を含んでいる請求項1または2記載の感圧転写テープ。
  4. 式(1)で表されるシラン化合物が、式(2):
    Figure 0005302497
    で表されるビニルトリアセトキシシランである請求項3記載の感圧転写テープ。
  5. 第1および第2のシリコーン離型層が、前記式(2)で表されるビニルトリアセトキシシランと、式(3):
    Figure 0005302497
    で表されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを、重量比で7/3〜4/6の割合で含んでいる請求項4記載の感圧転写テープ。
  6. 第1および第2のシリコーン離型層を形成するシリコーン系樹脂の架橋密度が調整されて、剥離力F、F 、F 、F が式(a)〜(c)を満足している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の感圧転写テープ。
  7. 感圧転写層が粘着層であって、前記粘着層が、第2のシリコーン離型層上に、不連続にパターン形成されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の感圧転写テープ。
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