JP5300214B2 - 多孔性固形潤滑剤およびその製造方法 - Google Patents
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また、潤滑剤の存在下でポリウレタン原料であるポリオールとジイソシアネートとを潤滑成分中で反応させた自己潤滑性のポリウレタンエラストマーが知られている(特許文献4参照)。
また、樹脂成分である固形成分を発泡体化し、これに潤滑油を後含浸させ、軸受内部の摩擦接触部の近傍に設ける含油発泡体が知られている(特許文献5参照)。
しかし、固形潤滑剤の強度と充填率は通常、補償的なものであるので、潤滑剤を高充填率で保持することが困難であり、長寿命化を妨げる可能性がある。
そのため、圧縮や屈曲などの外部応力が高い頻度で繰り返し起こるような部位においても簡便に使用可能な固形潤滑剤が求められている。
しかしながら、上記した従来技術1〜従来技術4による固形潤滑剤は、潤滑油保持力は大きいが、柔軟な変形性に欠ける。また、従来技術5は外力に応じる柔軟な変形性があって圧縮や屈曲変形にも追従することはできるが、潤滑油保持力が小さく、軸受などの高速条件で使用した場合には、潤滑油が急速に抜け出て枯渇する可能性もある。
このような含油固形潤滑剤は、短時間での潤滑や密閉空間においては使用可能であるが、長時間の潤滑を要する部分や開放空間で使用すると潤滑油が供給不足になり、または、油保持力が弱いと、余剰の潤滑油は気孔から放出および吸収を繰り返し、耐えず空間内を流動することになる。
このような固形潤滑剤から余剰に染み出した潤滑油は、ゴムなどの外装に接すると、その素材を潤滑油やその添加剤が化学的に腐食または劣化させるものもある。
また、このような固形潤滑剤を製造する工程では、潤滑油やグリースを確実に含浸させるために多くの製造工程が必要になり、これでは低コスト化の要求に応えることも困難である。
上記多孔性固形潤滑剤を構成する潤滑成分が炭化水素油であることを特徴とする。また、上記発泡性液状シリコーン成分が水素ガスを発生して発泡・硬化する2液型液状シリコーンゴムであり、潤滑成分を発泡・硬化前に片方または両方の反応前原料に溶解または懸濁させた状態で混合することで、発泡・硬化させたことを特徴とする。
上記2液型液状シリコーンゴムのうち、ポリ水素化シロキサンを含むA液と、分子内にアルケニル基を有するポリアルキルアルケニルシロキサンまたは水酸基を含むポリオルガノポリヒドロキシシロキサンのうち少なくとも1種類を含むB液とを反応させ、発泡・硬化することを特徴とする。
また、上記発泡性液状シリコーン成分の発泡倍率が、1.1 倍〜20 倍であることを特徴とする。
上記潤滑成分は、上記多孔性固形潤滑剤全体に対して、10 重量%〜60 重量%含まれることを特徴とする。
上記潤滑成分と、上記発泡性液状シリコーン成分とを必須成分として含む混合物は、摺動部材の周囲、または成形用型内に充填された後に、発泡・硬化されることを特徴とする。
また、本発明の多孔性固形潤滑剤は摺動部材の周囲、または成形用型内に混合物を充填して、発泡・硬化させてなるので、切削等の後加工が不要であり、潤滑成分保持力に優れる。
また、多孔性固形潤滑剤を封入することで、摺動部近くに潤滑成分が存在できグリース潤滑と比較してより潤滑成分が摺動部に供給されやすい。
また、本発明の多孔性固形潤滑剤においてシリコーンゴムは、発泡により表面積が大きくなっており、滲み出した余剰の潤滑成分を再び発泡体の気泡内に一時的に保持することもできて滲み出す潤滑油量は安定しており、またシリコーンゴム内に潤滑剤を吸蔵させるとともに気泡内に含浸させることによって非発泡の状態より潤滑油の保持量も多くなる。
また、本発明の多孔性固形潤滑剤は潤滑成分と、シリコーンゴム成分とを必須成分として含む混合物を発泡・硬化させるだけであるので、特別な設備も不要であり、任意の場所に充填して成形することが可能である。
また、上記混合物の配合成分の配合量をコントロールすることにより多孔性固形潤滑剤の密度を変化させることができる。
本発明に用いるシリコーンゴム成分はシリコーンゴムになる前の、未架橋で液状の2液型発泡性シリコーンを用い、発泡・硬化前に上記2液型液状シリコーンゴムの片方または両方に潤滑成分を溶解または懸濁させた状態で混合して、発泡・硬化させて多孔性固形潤滑剤を得る。
2液型発泡性シリコーンは、オルガノポリヒドロキシシロキサンなどの水酸基を有するシリコーン化合物やアルケニル基を有するシリコーン化合物を含むシリコーンA液と、オルガノポリ水素化シロキサンなどの珪素原子に直接水素原子が付加しているシリコーンB液とから構成され、シリコーンA液とシリコーンB液とを触媒の存在下に混合することで水素ガスを発生しながら発泡・硬化する。
2液型発泡性シリコーンの市販品としては、例えば、GE東芝シリコーン社製 TSE5000、スリーボンド社製 TB5277、12X195、TB5277Cなどが挙げられる。
これに対して発泡固形体をあらかじめ成形しておき、これに潤滑剤を含浸させる後含浸法だけでは、シリコーンゴム内部に十分な量の液体潤滑剤が滲み込まないので、潤滑剤保持力が充分になく、短時間で潤滑油が放出されて長期的に使用すると潤滑油が供給不足となる場合がある。このため、後含浸工程は、反応型含浸法の補助手段として採用することが好ましい。
潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、炭化水素系合成油、GTL基油等の普通に使用されている炭化水素系潤滑油またはそれらの混合油が挙げられる。
シリコーンゴム材料と潤滑油が極性などの化学的な相性によって溶解、分散しない場合には、粘度の近い潤滑油を使用することで、物理的に混合しやすくなり、潤滑油の偏析を防ぐことが可能となる。
ウレア系増ちょう剤としては、例えば、ジウレア化合物、ポリウレア化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。ジウレア化合物は、例えばジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、へキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、へキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
形状が複雑な機械や装置の任意の部位にも容易に充填することが可能であり、発泡成形体を得るための成形金型や研削工程等も不要であることから、本発明では、混合物を発泡・硬化前に機械や装置内に流し込み、機械や装置内において発泡・硬化させる方法を採用することが好ましい。該方法を採用することで、製造工程が簡易となり低コスト化が図れる。
実施例1〜実施例6
表1に示す配合割合で各原料をビーカに量り取り、潤滑油で懸濁させた発泡性シリコーン原料A剤(GE東芝シリコーン社製 TSE5000−A)にB剤(GE東芝シリコーン社製 TSE5000−B)を加えすばやく撹拌した。一部を深溝玉軸受(NTN社製 呼び番号6204)の内部空間に封入した。数秒後発熱と発泡反応が始まり、数分後に終了した。ビーカ内で得られた多孔性固形潤滑剤試験片については以下に示す発泡倍率試験により発泡倍率を測定した。また深溝玉軸受については発泡反応後 30分間放置し硬化させた後、シールドを取り付け以下に示す高温軸受試験を行なった。結果を表1に示す。
多孔性固形潤滑剤試験片について、発泡後の固形分の体積を発泡前の液体の体積で除することで発泡倍率を求めた。
<高温軸受試験>
得られた深溝玉軸受試験片について、Fa=Fr=67 Nの荷重を負荷し、150℃で 10000 rpm で 24 時間回転させ、試験後の軸受および多孔性固形潤滑剤の損傷変化を確認した。軸受および多孔性固形潤滑剤の損傷変化のないものを耐熱性に優れると評価して「○」を、軸受に傷が見られたり、多孔性固形潤滑剤が損傷したりする変化が認められたものは耐熱性に劣ると評価して「×」を記録する。
表1に示す配合割合で、実施例1と同様の処理および試験を実施した。結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で、ウレタンプレポリマー、鉱油、シリコーン系整泡剤、アミン系触媒を 120℃でよく撹拌した。これにアミン系硬化剤、発泡剤(水)を加えてすばやく撹拌した。一部を深溝玉軸受(NTN社製 6204)の内部空間に封入した。数秒後に発泡反応が始まり、ビーカおよび軸受を 90℃に設定した恒温槽で 15 分間放置し硬化させ、冷却後、多孔性固形潤滑剤試験片および軸受試験片を得た。得られた多孔性固形潤滑剤試験片および軸受試験片について実施例1と同様の試験を実施した。結果を表1に併記する。
表1に示したように、各実施例は高温でも良好な潤滑性を保つことができるのに対し、比較例1および比較例2では樹脂と油が分離してしまい硬化しなかった。比較例3では高温で樹脂が融解し、多孔性固形潤滑剤としての機能が得られなかった。
実施例1に示す配合割合で各原料をビーカに量り取り、潤滑油で懸濁させた発泡性シリコーン原料A剤(GE東芝シリコーン社製 TSE5000−A)にB剤(GE東芝シリコーン社製 TSE5000−B)を加えすばやく撹拌し、発泡・硬化させた。発泡反応後 30分間放置し硬化させた後、真空含浸した焼結金属製すべり軸受(NTN社製 気孔率 30% Cu−Sn系 内径φ6 mm×外径φ12 mm×長さ10 mm)に図1のように組み付けた。図1はすべり軸受の断面図である。図1に示すように、すべり軸受1において多孔性固形潤滑剤3は摺動面2a(軸4の外周面)で摺動案内される焼結金属多孔体2に取付け、軸受試験片を得た。この試験片を下記の条件で、300 時間の軸受すべり試験を行なった結果、軸受に傷が見られたり、多孔性固形潤滑剤が損傷したりする変化が認められなかった。すべり軸受の給油材として好適に使用可能であると考える。
相手材:軸(φ6 mm、SUS420J2、Ra=0.2μm)
荷重:0.98 N
速度:12 m/分
温度:25℃
ストローク:200 mm
2 焼結金属多孔体
3 多孔性固形潤滑剤
4 軸
Claims (5)
- 潤滑成分と、発泡性液状シリコーン成分とを必須成分として、潤滑成分を発泡・硬化前に含んだ状態で発泡させ、潤滑成分を樹脂骨格内に吸蔵させ、硬化させてなる多孔性固形潤滑剤の製造方法であって、
前記潤滑成分である炭化水素油と、前記発泡性液状シリコーン成分とを必須成分として含む成分を混合して、前記潤滑成分を混合物全体に対して10〜60 重量%含む混合物を得る混合工程と、
前記混合物を発泡・硬化させる発泡・硬化工程とを備えることを特徴とする多孔性固形潤滑剤の製造方法。 - 前記発泡性液状シリコーン成分が水素ガスを発生して発泡・硬化する2液型液状シリコーンゴムであり、潤滑成分を発泡・硬化前に片方または両方の反応前原料に溶解または懸濁させた状態で混合することで、発泡・硬化させたことを特徴とする請求項1記載の多孔性固形潤滑剤の製造方法。
- 前記2液型液状シリコーンゴムのうち、ポリ水素化シロキサンを含むA液と、分子内にアルケニル基を有するポリアルキルアルケニルシロキサンまたは水酸基を含むポリオルガノポリヒドロキシシロキサンのうち少なくとも1種類を含むB液とを反応させ、発泡・硬化させたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の多孔性固形潤滑剤の製造方法。
- 前記発泡性液状シリコーン成分の発泡倍率が、1.1〜20 倍であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載の多孔性固形潤滑剤の製造方法。
- 前記混合物は、摺動部材の周囲、または成形用型内に充填された後に、発泡・硬化されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の多孔性固形潤滑剤の製造方法。
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