JP2008095940A - 多孔性固形潤滑剤封入軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸受31内部に多孔性固形潤滑剤37が封入されてなる多孔性固形潤滑剤封入軸受であって、上記多孔性固形潤滑剤37は、潤滑成分および樹脂成分を必須成分とし、該樹脂成分を発泡・硬化して多孔質化した固形物であり、上記多孔性固形潤滑剤は、ゴム状弾性を有する樹脂またはゴムからなる樹脂成分を具備し、外力による変形により潤滑成分の滲出性を有し、上記樹脂成分がポリウレタン樹脂である。
【選択図】図5
Description
また、潤滑剤の存在下でポリウレタン原料であるポリオールとジイソシアネートとを潤滑成分中で反応させた自己潤滑性のポリウレタンエラストマーが知られている(特許文献4参照)。
また、樹脂成分である固形成分を発泡体化し、これに潤滑油を後含浸させ、軸受内部の摩擦接触部の近傍に設ける含油発泡体が知られている(特許文献5参照)。
また、このような固形潤滑剤を製造する工程では、潤滑油やグリースを確実に含浸させるために多くの製造工程が必要になり、これでは低コスト化の要求に応えることも困難である。
また、上記樹脂成分の発泡倍率が、1.1 倍〜100 倍であることを特徴とする。
また、上記樹脂成分がポリウレタン樹脂であることを特徴とする。
また、上記多孔性固形潤滑剤封入軸受は、転がり軸受であることを特徴とする。
また、多孔性固形潤滑剤を封入することで、転走面近くに潤滑剤が存在できグリース潤滑と比較してより潤滑剤が転走面に供給されやすい。また、外部からの塵・水分等の侵入に対してはシール部材の役割をも果たす。その上、多孔質な部分を多く持つので、軸受の軽量化の点でも有利である。
また、組み立て後に潤滑剤を封入する必要がないので、生産効率が向上し、安価に製造できる。
また、本発明に用いる多孔性固形潤滑剤において樹脂成分は、発泡により表面積が大きくなっており、染み出した余剰の潤滑油を再び発泡体の気泡内に一時的に保持することもできて染み出す潤滑油量は安定しており、また樹脂内に潤滑剤を吸蔵させるとともに気泡内に含浸させることによって非発泡の状態より潤滑油の保持量も多くなる。
また、本発明に用いる多孔性固形潤滑剤は潤滑成分と、樹脂成分とを必須成分として含む混合物を発泡・硬化させるだけであるので、特別な設備も不要であり、任意の場所に充填して成形することが可能である。
また、上記混合物の配合成分の配合量をコントロールすることにより多孔性固形潤滑剤の密度を変化させることができる。
発泡・硬化は、樹脂生成時に発泡・硬化させる形式であっても、樹脂成分に発泡剤を配合して成形時に発泡・硬化させる形式であってもよい。ここで硬化は架橋反応および/または液状物が固体化する現象を意味する。また、ゴム状弾性とは、ゴム弾性を意味するとともに、外力により加えられた変形がその外力を無くすことにより元の形状に復帰することを意味する。
ゴムの場合は、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンエラストマー、フッ素ゴム、クロロスルフォンゴムなどの各種ゴムを採用できる。
また、プラスチックの場合は、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド4,6樹脂(PA4,6)、ポリアミド6,6樹脂(PA6,6)、ポリアミド6T樹脂(PA6T)、ポリアミド9T樹脂(PA9T)などの汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックを採用できる。
上記プラスチックなどに限られることなく、軟質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム、半硬質ウレタンフォームなどのウレタンフォームなどを用いることもできる。
上記樹脂成分の中で、容易に発泡・硬化して多孔質化するポリウレタン樹脂が好ましい。
活性水素基を有する化合物としては低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上の混合物として使用することができる。低分子ポリオールとしては、2価のもの例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等、3価以上のもの(3〜8価のもの)例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等が挙げられる。
ポリカプロラクトンポリオールは、グリコール類やトリオール類の重合開始剤にε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン等を有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化物等の触媒の存在下で付加重合により得られる。ポリエーテルエステルポリオールには、末端にカルボキシル基および/または水酸基を有するポリエステルにアルキレンオキサイド例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られる。ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油およびひまし油またはひまし油脂肪酸と上記低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールとのエステル交換あるいは、エステル化ポリオールが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートおよびその混合物、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族または脂環式ジイソシアネートは、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、1,3-シクロブタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソプロパンジイソシアネート、2,4-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、1,3-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、1,4-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、2,4′パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、4,4′,4″-トリフェニルメタントリイソシアネート、4,6,4′-ジフェニルトリイソシアネート、2,4,4′-ジフェニルエーテルトリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。
また、これらイソシアネートの一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変性したものが挙げられる。
上記ポリラクトンエステルポリオールはカプロラクトンを開環反応させて得られるポリラクトンエステルポリオールに短鎖ポリオールの存在下、ポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイドの付加物または開環重合物が挙げられ、これらとポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
また、有機金属触媒としてはスタナオクタエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、オクテン酸塩などが挙げられる。また、反応のバランスを整えるなどの目的でこれら複数種類を混合して用いてもよい。
潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、エステル系合成油、エーテル系合成油、炭化水素系合成油、GTL基油、フッ素油、シリコーン油等が挙げられる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
樹脂材料と潤滑油が極性などの化学的な相性によって溶解、分散しない場合には、粘度の近い潤滑油を使用することで、物理的に混合しやすくなり、潤滑油の偏析を防ぐことが可能となる。
ジウレア化合物は、例えばジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、へキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、へキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
上記分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの配合割合は、混合物全体に対して、8〜98 重量%、好ましくは 20〜80 重量%である。8 重量%より少ないときは固化せず、98 重量%より多いときには潤滑成分の供給量が少なく、十分な寿命を得ることができない。
上記混合物は、市販のシリコーン系整泡剤などの界面活性剤を使用し、各原料分子を均一に分散させておくことが望ましい。また、この整泡剤の種類によって表面張力を制御し、生じる気泡の種類を連続気泡または独立気泡に制御することが可能となる。このような界面活性剤としては陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
潤滑成分を樹脂内部に吸蔵するには、潤滑成分の存在下で発泡反応と硬化反応とを同時に行なわせる反応型含浸法を採用することが望ましい。このようにすると潤滑剤を樹脂内部に高充填することが可能となり、その後には潤滑剤を含浸して補充する後含浸工程を省略できる。
これに対して発泡固形体をあらかじめ成形しておき、これに潤滑剤を含浸させる後含浸法だけでは、樹脂内部に充分な量の液体潤滑剤が染み込まないので、潤滑剤保持力が充分でなく、短時間で潤滑油が放出されて長期的に使用すると潤滑油が供給不足となる場合がある。このため、後含浸工程は、反応型含浸法の補助手段として採用することが好ましい。
(1)発泡硬化した多孔性固形潤滑剤を適当な大きさにカットし、試料Aを得る。試料Aの重量を測定する。
(2)Aを 3 時間ソックスレー洗浄(溶剤:石油ベンジン)する。その後 80℃で 2 時間恒温槽に放置し、有機溶剤を完全に乾燥させ、試料Bを得る。試料Bの重量を測定する。
(3)連続気泡率を以下の手順で算出する。
連続気泡率=(1−(試料Bの樹脂成分重量−試料Aの樹脂成分重量)/試料Aの潤滑成分重量)×100
なお、試料A、Bの樹脂成分重量、潤滑成分重量は、試料A、Bの重量に組成の仕込み割合を乗じて算出する。
連続していない独立気泡中に取り込まれた潤滑成分は 3 時間ソックスレー洗浄では外部へ放出されないため試料Bの重量を減少させることがないので、上記の操作で試料Bの重量減少分は連続気泡からの潤滑成分の放出によるものとして連続気泡率が算出できる。
形状が複雑な軸受内の任意の部位にも容易に充填することが可能であり、発泡成形体を得るための成形金型や研削工程等も不要であることから、本発明では、混合物を発泡・硬化前に軸受内に流し込み、軸受内において発泡・硬化させる方法を採用することが好ましい。該方法を採用することで、製造工程が簡易となり低コスト化が図れる。
図5に示すように軸受31は内輪32と、内輪32と同心に配置された外輪33と、これら内、外輪間に介在する複数個の転動体34と、この複数個の転動体34を保持する保持器36と、外輪33等に固定されるシール部材35とにより構成される。少なくとも転動体34の周囲に上述の多孔性固形潤滑剤37が封入される。
図1は、本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。図1に示すように、軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具の上に内輪2と、外輪3と、内、外輪間に介在する転動体4とを有する軸受1を置き、よく撹拌した発泡直前の多孔性固形潤滑剤成分の混合物6を内輪2と、外輪3と、鉄板5とに囲まれた空間に流し込み、発泡・硬化させる。この場合、混合物6を軸受1内に流し込んだ後にさらに軸受1上部に軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具をかぶせてもよい。鉄板もしくは治具をかぶせる場合、軸受内での多孔性固形潤滑剤の充填率が向上する。混合物6の発泡・硬化終了後に鉄板5もしくはそれに類似する治具を外して、多孔性固形潤滑剤封入軸受を得る。
また、軸受への潤滑剤の封入には、射出成型機等を用いることもできる。この場合、軸受は金型に装着され、スクリュー内で混合された多孔性固形潤滑剤成分はノズルより軸受内へ封入される。
表1に示す配合割合で、樹脂成分としてウレタンプレポリマーにシリコーン系整泡剤とウレアグリースを加え、120℃でよく撹拌した。これにアミン系硬化剤を加え、撹拌した後、発泡剤としての水を加え、玉軸受6204の内部空間に充填した後、120℃に設定した恒温槽に 1 時間放置して硬化させ、多孔性固形潤滑剤封入軸受の試験片を得た。得られた試験片について、以下に示す軸受耐久試験を実施し、軸受寿命時間を測定した。結果を表1に併記する。また、前述の連続気泡率の算出法に基づき多孔性固形潤滑剤の連続気泡率を測定した。これらの結果を表1に併記する。
得られた試験片にラジアル荷重 67 N 、スラスト荷重 67 N を負荷し、100℃で 10000 rpm で回転させ、回転軸を駆動している電動機の入力電流が制限電流を超過した時(回転トルクが始動トルクの 2 倍をこえた時)までの寿命時間を測定した。
表1に示す配合割合で、樹脂成分としてポリエーテルポリオールにシリコーン系整泡剤、潤滑油、アミン系触媒、発泡剤としての水を加え、90℃で加熱しよく撹拌した。これにイソシアネートを加えてよく撹拌し、玉軸受6204の内部空間に充填した後、90℃に設定した恒温槽で 15分間放置し、多孔性固形潤滑剤封入軸受の試験片を得た。得られた試験片について、上述の軸受耐久試験を実施し、軸受寿命時間を測定した。結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合で、樹脂成分を発泡させなかったこと以外は実施例1と同様の製造方法で非発泡潤滑剤封入軸受の試験片を得た。得られた試験片について、上述の軸受耐久試験を実施し、軸受寿命時間を測定した。結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合のうち、潤滑油を除く配合で実施例2と同じ方法で発泡体を玉軸受6204の内部空間に形成した。得られた発泡体に潤滑油を含浸させ、後含浸型の発泡潤滑剤封入軸受の試験片を得た。得られた試験片について、上述の軸受耐久試験を実施し、軸受寿命時間を測定した。結果を表1に併記する。
表1に示す配合割合のうち、シリコーン系整泡剤を除く組成で実施例3と同じ方法で多孔性固形潤滑剤封入軸受の試験片を得た。得られた試験片について、上述の軸受耐久試験を実施し、軸受寿命時間を測定した。結果を表1に併記する。
2、12、22、32 内輪
3、13、23、33 外輪
4、14、24、34 ボール(転動体)
5 鉄板
6、16、26 多孔性固形潤滑剤成分の混合物
7 軸受外径
15、35 シール部材
21 スラスト玉軸受
25 金型
27 円筒治具
28 多孔性固形潤滑剤
31 深溝玉軸受
36 保持器
37 多孔性固形潤滑剤
Claims (6)
- 軸受内部に多孔性固形潤滑剤が封入されてなる多孔性固形潤滑剤封入軸受であって、
前記多孔性固形潤滑剤は、潤滑成分および樹脂成分を必須成分とし、該樹脂成分を発泡・硬化して多孔質化した固形物であることを特徴とする多孔性固形潤滑剤封入軸受。 - 前記発泡・硬化して多孔質化された樹脂成分の連続気泡率が 50%以上であることを特徴とする請求項1記載の多孔性固形潤滑剤封入軸受。
- 前記多孔性固形潤滑剤は、ゴム状弾性を有する樹脂またはゴムからなる樹脂成分を具備し、外力による変形により潤滑成分の滲出性を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の多孔性固形潤滑剤封入軸受。
- 前記樹脂成分の発泡倍率が、1.1〜100 倍であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の多孔性固形潤滑剤封入軸受。
- 前記樹脂成分がポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の多孔性固形潤滑剤封入軸受。
- 前記多孔性固形潤滑剤封入軸受は、転がり軸受であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の多孔性固形潤滑剤封入軸受。
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2006
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