JP5577008B2 - 発泡潤滑剤およびその製造方法 - Google Patents
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例えば、潤滑油やグリースに、超高分子量ポリオレフィン、またはウレタン樹脂およびその硬化剤を混合し、樹脂の分子間に液状の潤滑成分を保持させて徐々に染み出る物性を持たせた固形潤滑剤が知られている(特許文献1〜特許文献3参照)。
また、ポリウレタン原料であるポリオールとジイソシアネートとを潤滑成分中で反応させた自己潤滑性のポリウレタンエラストマーが知られている(特許文献4参照)。
このような固形潤滑剤は、軸受に封入して固化させると、潤滑油を徐々に染み出させるものであり、これを用いると潤滑油の補充のためのメンテナンスが不要になり、水分の多い厳しい使用環境や強い慣性力の働く環境などでも軸受寿命の長期化に役立つ場合が多い。
しかしながら、このような固形潤滑剤を、等速ジョイントの駆動部のような圧縮や屈曲などの外部応力が高い頻度で繰り返し加わる部位に使用すると、圧縮や屈曲に追従して変形させるために非常に大きな力が必要になり、または非常に大きな応力が固形潤滑剤に加わって、それを保持する部分にも機械的強度が必要になる。しかし、固形潤滑剤の強度と充填率は通常、相反するものであるので、潤滑剤を高充填率で保持することが困難であり、長寿命化を妨げる可能性がある。
このような固形潤滑剤は、短時間での潤滑や密閉空間においては使用可能であるが、長時間の潤滑を要する部分や開放空間で使用すると潤滑油が供給不足になり、または、油保持力が弱いと、余剰の潤滑油は気孔から放出および吸収を繰り返し、耐えず空間内を流動することになる。
このような固形潤滑剤から余剰に染み出した潤滑油は、ゴムなどの外装材に接すると、その素材を潤滑油やその添加剤が化学的に腐食または劣化させるものもある。
また、このような固形潤滑剤を製造する工程では、潤滑油やグリースを確実に含浸させるために多くの製造工程が必要になり、これでは低コスト化の要求に応えることも困難である。
また、上記混合物を摺動部もしくは転動部の周囲、または成形用型内に充填して、発泡・硬化させてなることを特徴とする。
また、上記発泡潤滑剤の連続気泡率が 50%以上であることを特徴とする。
また、上記発泡潤滑剤は摺動部もしくは転動部の周囲、または成形用型内に混合物を充填して、発泡・硬化させてなるので、切削等の後加工が不要であり、潤滑成分保持力に優れる。
この発泡潤滑剤は潤滑剤保持力に優れ、外力による変形を受けても潤滑油染み出し量を必要最小限に抑制し、かつ安価に製造できることがわかった。本発明はこのような知見に基づくものである。
また、本発明の発泡潤滑剤において樹脂成分は、発泡により表面積が大きくなっており、染み出した余剰の潤滑油を再び発泡体の気泡内に一時的に保持することもできて染み出す潤滑油量は安定しており、また樹脂内に潤滑剤を吸蔵させると共に気泡内に含浸させることによって非発泡の状態より潤滑油の保持量も多くなる。
また、潤滑成分と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させるだけであるので、特別な設備も不要であり、任意の場所に充填して成形することが可能である。
また、潤滑成分と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物の配合量をコントロールすることにより発泡潤滑剤の密度を変化させることができる。
活性水素基を有する化合物としては低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上の混合物として使用することができる。低分子ポリオールとしては、2価のもの例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等、3価以上のもの(3〜8価のもの)例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等が挙げられる。
本発明で用いるウレタンプレポリマーは、イソシアネート基(−NCO)含有量が 2 重量%以上のものが望ましい。イソシアネート基(−NCO)含有量がこれ未満であると、発泡性と弾力性の両立が難しくなる。
芳香族ジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートおよびその混合物、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族または脂環式ジイソシアネートは、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、1,3-シクロブタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソプロパンジイソシアネート、2,4-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、1,3-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、1,4-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、2,4′パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、4,4′,4″-トリフェニルメタントリイソシアネート、4,6,4′-ジフェニルトリイソシアネート、2,4,4′-ジフェニルエーテルトリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。
また、これらイソシアネートの一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変性したものが挙げられる。
上記ポリラクトンエステルポリオールはカプロラクトンを開環反応させて得られるポリラクトンエステルポリオールに短鎖ポリオールの存在下、ポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイドの付加物または開環重合物が挙げられ、これらとポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
本発明においては、分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを用いることから、イソシアネート化合物と反応して二酸化炭素ガスを発生させる水が好ましい。
また、有機金属触媒としてはスタナオクタエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、オクテン酸塩などが挙げられる。また、反応のバランスを整えるなどの目的でこれら複数種類を混合して用いてもよい。
潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、エステル系合成油、エーテル系合成油、炭化水素系合成油、GTL基油、フッ素油、シリコーン油等が挙げられる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
増ちょう剤としては、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
上記潤滑成分の配合割合は、混合物全体に対して、1 重量%〜90 重量%、好ましくは 5 重量%〜80 重量%である。潤滑成分が 1 重量%未満であると、潤滑成分の供給量が少なく発泡潤滑剤としての機能を発揮できず、90 重量%より多いときには固化しなくなる。
上記分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの配合割合は、混合物全体に対して、8 重量%〜98 重量%、好ましくは 20 重量%〜80 重量%である。8 重量%より少ないときは固化しないため発泡潤滑剤としての機能を持たず、98 重量%より多いときには潤滑成分の供給量が少なく、発泡潤滑剤としての機能を持たない。
これに対してあらかじめ発泡体を製造しておき、これに潤滑剤を含浸させる後含浸法では潤滑剤保持力が十分でなく、短時間で潤滑剤が放出され長期的に使用すると潤滑剤が供給不足となる。
(1)発泡硬化した発泡潤滑剤を適当な大きさにカットし、試料Aを得る。試料Aの重量を測定する。
(2)Aを 3 時間ソックスレー洗浄(溶剤:石油ベンジン)する。その後 80℃で 2 時間恒温槽に放置し、有機溶剤を完全に乾燥させ、試料Bを得る。試料Bの重量を測定する。
(3)連続気泡率を以下の手順で算出する。
連続気泡率=(1−(試料Bの樹脂成分重量−試料Aの樹脂成分重量)/試料Aの潤滑成分重量)×100
なお、試料A、Bの樹脂成分重量、潤滑成分重量は、試料A、Bの重量に組成の仕込み割合を乗じて算出する。
連続していない独立気泡中に取り込まれた潤滑成分は 3 時間ソックスレー洗浄では外部へ放出されないため試料Bの重量を減少させることがないので、上記の操作で試料Bの重量減少分は連続気泡からの潤滑成分の放出によるものとして連続気泡率が算出できる。
上記混合工程において、分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、硬化剤と、潤滑成分と、発泡剤とを混合する方法は、特に限定されることなく、例えばヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ジューサーミキサー、ミキシングヘッド等、一般に用いられる撹拌機を使用して混合することができる。
混合物は硬化剤および発泡剤である水により速やかに硬化するため、硬化剤および発泡剤である水を除く他の成分を撹拌機へ投入し、最後に硬化剤および発泡剤である水を投入することが望ましい。
以上のことから本発明においては、品質面、作業面、コスト面で混合物を成形用金型等に充填する方法を採用することが好ましい。
80℃のポリテトラフルオロエチレン製ビーカ(直径 60 mm×高さ 150 mm )内で、硬化剤、アミン触媒および発泡剤を除く配合材料を表1に示す配合割合でよく混合した。次に、120℃で溶解したMOCAをビーカ内に投入し、よく撹拌した。続いてアミン触媒および発泡剤を投入し撹拌した。数秒後に発泡反応が始まり、100℃で 30分間放置し硬化させて試験片を得た。この試験片を目視および光学顕微鏡を用いて観察した。また、指で押したときに油が滲み出す形状の弾性ゴム状の発泡体であるものを優れた発泡潤滑剤であると評価して「○」印を、不十分な水準にあるものには「△」印を、それぞれ表1の触感での評価欄に併記した。また、前述の連続気泡率の算出法に基づき発泡潤滑剤の連続気泡率を測定した。結果を表1に併記する。
また、得られた試験片について潤滑剤の徐放性を調べるために以下に示す潤滑油徐放試験に供し、結果を表1に併記した。
ロータ半径 75 mm の遠心分離器に試験片を投入し、回転速度 1500 rpm で1時間回転させ、試験前後の潤滑剤重量変化率を測定した。ここで潤滑剤重量変化率を以下の式により算出して評価した。
潤滑剤重量変化率(%)=100×(試験前潤滑剤重量−試験後潤滑剤重量)/試験前潤滑剤重量
算出した重量変化率(%)が小さいほど油放出量が少なく、潤滑剤保持力が大きいといえる。
実施例1〜実施例6では遠心力が加わった状態において、即時に発泡体より抜け出てしまうことなく潤滑剤が徐々に放出されることがわかった。
Claims (4)
- 潤滑成分と、分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、硬化剤と、ガスを発生させて発泡させる発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させてなるゴム状弾性を有する発泡潤滑剤であって、
前記潤滑成分の配合割合は、前記混合物全体に対して 1 重量%〜90 重量%であり、
前記発泡潤滑剤は、気泡が連通している連続気泡を有し、前記潤滑成分の存在下で前記混合物の発泡反応と硬化反応とを同時に行なう反応型含浸法により、前記潤滑成分が前記気泡内に含浸されているとともに、固形成分内に吸蔵されていることを特徴とする発泡潤滑剤。 - 前記硬化剤が芳香族ポリアミン化合物であり、前記発泡剤が水であることを特徴とする請求項1記載の発泡潤滑剤。
- 前記混合物を摺動部もしくは転動部の周囲、または成形用型内に充填して、発泡・硬化させてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡潤滑剤。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載の発泡潤滑剤の製造方法であって
潤滑成分と、分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、硬化剤と、ガスを発生させて発泡させる発泡剤とを含む成分を混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物の発泡・硬化が完了する前に、前記混合物を摺動部もしくは転動部の周囲、または成形用型内に充填する充填工程と、
前記充填された前記混合物を発泡・硬化させる発泡・硬化工程とを備えてなり、
前記発泡・硬化工程において、前記潤滑成分の存在下で前記混合物の発泡反応と硬化反応とを同時に行なう反応型含浸法により、前記潤滑成分が気泡が連通している連続気泡内に含浸されるとともに、固形成分内に吸蔵されることを特徴とする発泡潤滑剤の製造方法。
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