JP5299919B2 - 絶縁性高分子材料組成物及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、絶縁性高分子材料組成物に関するものであって、特に高電圧かつ高温になる電力系統の絶縁に適応するものに関する。従来の絶縁材料において、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の代替となる絶縁性高分子材料組成物に関するものである。
高電圧機器の絶縁材料及び構造材料として、石油を出発物質とした石油由来のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をマトリックスとした高分子複合硬化物、いわゆるモールド注型品が広く用いられている。また、近年の社会の高度化、集中化に伴い機器の大容量・小型・高信頼性化が強く求められており、モールド注型品はますます重要となってきている。
しかし、これらのモールド注型品に使用されている熱硬化樹脂は石油由来の原料を使用しており、石油資源の枯渇といった地球規模の問題から、将来的に再生可能資源を使用することが求められている。
そこで、エポキシ樹脂の原料に植物由来の原料を用いることに関する技術として、天然原料であり、3次元架橋するものが検討されてきた。例えば、エポキシ樹脂の原料としてエポキシ化植物油を使用する技術や、エポキシ樹脂の硬化剤に植物由来フェノール類(リグニン)を使用する技術(例えば、特許文献1)が提案されている。
特開2008−138061号公報
しかしながら、エポキシ樹脂にエポキシ化植物油(例えば、エポキシ化亜麻仁油)を用いた場合でも、該エポキシ樹脂と反応する硬化剤に、アミン系、酸無水物系、フェノール系、イミダソール系等の石油原料を出発物質とするものが用いられていた。
したがって、エポキシ化植物油を用いた場合でも、エポキシ化植物油の硬化剤として石油由来の硬化剤を使用しており、エポキシ樹脂全体に占める植物原料の割合が低いため、今後長期的に既存の熱硬化性樹脂の完全代替品となることはできない。
また、エポキシ化亜麻仁油はエポキシ化大豆油と同じく、塩ビの安定剤として広く使われているが、一般的な工業用エポキシ樹脂と比べ反応性に乏しいため硬化に時間がかかり、Tgが低いうえに機械強度も小さいことから絶縁・構造材として検討はされなかった。
一方、特許文献1のように、硬化剤にリグニンを使用した場合、硬化剤として機能するフェノール性水酸基濃度が低いため、硬化物の架橋点密度が低くなり、工業材料として要求される機械的強度及び耐熱性を得ることができなかった。
よって、工業材料として要求される特性をほぼ満たすことができるエポキシ樹脂の原料は石油由来の原料が用いられてきた。
上記課題を解決する本発明の絶縁性高分子材料組成物は、エポキシ化亜麻仁油に硬化剤として1種類以上の没食子酸誘導体を縮合させたフェノール樹脂を混合した後、加熱処理して硬化したことを特徴としている。
また、この絶縁性高分子材料組成物において、前記没食子酸誘導体が、ピロガロール、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸イソプロピル、没食子酸ブチル、没食子酸ペンチル、没食子酸イソペンチル、没食子酸オクチル、没食子酸デシル、没食子酸ドデシル、没食子酸トリデシル、没食子酸テトラデシル、没食子酸ペンタデシル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸ヘプタデシル、没食子酸オクタデシルのいずれかであることを特徴としている。
また、上記課題を解決する本発明の絶縁性高分子材料組成物製造方法は、1種類以上の没食子酸誘導体を縮合させてフェノール樹脂化するフェノール樹脂化工程と、前記フェノール樹脂化工程で得られたフェノール樹脂をエポキシ化亜麻仁油と混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を加熱処理して絶縁性高分子材料組成物を得る硬化工程とを有することを特徴としている。
以上の発明によれば、非石油由来の原料からなり、絶縁性能に優れた絶縁性高分子材料組成物を得ることができる。
本発明は、石油由来のエポキシ樹脂原料の代替品として植物由来の原料を用いた絶縁性高分子材料組成物、及び該絶縁性高分子材料組成物の製造方法に関するものである。
本発明に係る絶縁性高分子材料組成物は、エポキシ化植物油に硬化剤として植物由来ポリフェノールをフェノール樹脂化したもの添加して硬化させたものである。
前記エポキシ化植物油としては、エポキシ化できるものであればよく、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油等が例示される。
そして、該エポキシ化植物油の硬化剤として、天然原料を出発物質とする植物由来ポリフェノール類をフェノール樹脂化したものを用いた。
植物由来ポリフェノール類とは、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)をもつ植物成分の総称であり、植物が光合成を行うときに合成される物質である。具体的には、没食子酸、タンニン、フラボノール、イソフラボン、カテキン、ケルセチン、アントシアニン等が挙げられる。また、これらを原料とし、種々の化学製品・グレードが作られている。
植物由来ポリフェノール類を硬化剤に使用してエポキシ化植物油を硬化させた場合、得られる硬化物のTgはエポキシ化植物油のエポキシ基濃度に依存する。したがって、硬化物のTgを上げるためには硬化物中の架橋点を増やす必要がある。そこで、硬化物同士を架橋させることにより架橋点密度を向上させ、硬化物の機械的強度及びガラス転移温度の向上を実現した。
本発明に係るフェノール樹脂には、植物由来ポリフェノールとアセトン等のケトン類とを縮合させたものを含む。例えば、植物由来ポリフェノールのフェノール樹脂化手法としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン、メチルシクロヘキシルケトン等の脂環式ケトン、アセトフェノン等の芳香族ケトン等と植物由来ポリフェノールを有機溶媒及び酸触媒の存在下に縮合反応させる手法が挙げられる。
本発明では、植物由来ポリフェノールの一例として、没食子酸誘導体に着目した。没食子酸誘導体としては、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸イソプロピル、没食子酸ブチル、没食子酸ペンチル、没食子酸イソペンチル、没食子酸オクチル、没食子酸デシル、没食子酸ドデシル、没食子酸トリデシル、没食子酸テトラデシル、没食子酸ペンタデシル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸ヘプタデシル、没食子酸オクタデシル、ピロガロール等が挙げられる。これら没食子酸誘導体のなかでも、低分子で融点が低い没食子酸プロピル、没食子酸イソプロピルまたはピロガロールが好ましい。
エポキシ化植物油と植物由来フェノール樹脂の配合比は特に限定されない。また、硬化促進剤や充填剤の添加量についても特に限定せず、最終的に得られる硬化物の物性を鑑みて添加量を決定することが好ましい。硬化促進剤には、イミダゾール系、三級アミン、芳香族アミンなどが使用できる。充填剤には、シリカやアルミナを使用することができるが、充填剤と樹脂の界面を調整するため、シランカップリング剤を添加してもよい。
本発明の実施形態に係る絶縁性高分子材料組成物の製造方法は、植物由来ポリフェノールをフェノール樹脂化する工程(フェノール樹脂化工程)と、エポキシ化植物油と前記フェノール樹脂化工程で得られた植物由来フェノール樹脂を混合した後(混合工程)、混合工程で得られた混合物に添加剤を添加した後、加熱処理することにより前記エポキシ化植物油と前記植物由来フェノール樹脂とを架橋させる工程(硬化工程)からなることを特徴とするものである。
植物由来ポリフェノールをフェノール樹脂化する工程(フェノール樹脂化工程)では、植物由来ポリフェノールを縮合反応させる。植物由来ポリフェノールの縮合反応は、植物由来ポリフェノール、酸触媒及び有機溶媒の混合物中に、脂肪族ケトンまたは、脂環式ケトン、芳香族ケトン等のいずれかを連続的に供給することにより行われる。ケトン類の供給方法としては、間欠的に行ってもよいが、連続的に行うとよい。
脂肪族ケトンの例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、脂環式ケトンの例としては、メチルシクロヘキシルケトン、芳香族ケトンの例として、アセトフェノンが挙げられる。
この縮合反応の反応温度は、20〜100℃で行えばよく、35〜65℃で行うとより効率よく縮合反応を行うことができる。また、反応時間は、1〜72時間、好ましくは3〜30時間であるとよい。縮合反応が十分でないと(反応温度が低い場合または反応時間が短い場合)、得られる硬化物の架橋点密度が少なくTgの向上が十分でない場合がある。また、過度に縮合反応を行うと(反応温度が高い場合または反応時間が長い場合)、フェノール樹脂とエポキシ化植物油が均一に混ざらないので得られる硬化物の物性が低下する場合や、粘度が増加することにより金型注型が困難になる場合がある。
縮合反応終了後は、反応混合物をアルカリで中和するとよい。中和反応は、縮合反応終了後、直ちに中和するのが特に好ましい。中和反応に用いるアルカリとしては、例えば、アンモニア、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのアルカリは、水溶液として使用するとよい。アルカリの使用量は、反応に用いた酸触媒1モルに対して1〜10モルであればよく、1.2〜7モルであればさらに効率よく中和を行うことができる。中和温度は、5〜70℃、好ましくは20〜65℃である。
中和後の反応混合物は、反応溶媒として酢酸エステル類を使用した場合にはそのまま水洗される。一方、反応溶媒としてアルコール類を使用した場合には、酢酸エチルやトルエン等の抽出溶媒を添加した後、水洗される。水洗後の有機層は、例えば、そのままキノンジアジドスルホン酸ハライドと反応させて感光剤とすることもできるが、有機層中の有機溶媒及び抽出溶媒を蒸留等の手段により除去してもよい。有機溶媒及び抽出溶媒の除去は、溶媒除去後の残分中、溶媒量が20重量%以下、好ましくは5重量%以下となるように行えばよい。
溶媒除去後の残分は、例えば、そのままキノンジアジドスルホン酸ハライドと反応させて感光剤とすることもできるが、水等を用いた再結晶により多価フェノール化合物を単離するとよい。再結晶に用いる水の量は、溶媒除去後の残分と水との混合物中、15〜80重量%、好ましくは20〜70重量%である。再結晶時の多価フェノール化合物は、好ましくは約6〜約40重量%、より好ましくは約8〜約35重量%となるようにすればよい。再結晶時の温度は、5〜70℃、好ましくは20〜60℃である。また再結晶時には、必要により種晶を添加してもよい。再結晶により析出した結晶は、濾過、水洗、乾燥等の慣用手段を用いて取り出される。
フェノール樹脂化工程で未反応の植物由来ポリフェノールも硬化剤として機能する。また、フェノール樹脂化にはこれら植物由来ポリフェノールを2種以上組み合わせて樹脂化して硬化剤として機能させてもよい。このとき、植物由来ポリフェノールの配合比は特に限定されないが、最終的に得られる硬化物の物性を鑑みて配合比を決定すればよい。
次に、エポキシ化植物油と硬化剤である植物由来ポリフェノール樹脂を混合させる(混合工程)。なお、混合工程において、エポキシ化植物油と植物由来ポリフェノール樹脂の混合温度は、特に限定するものではなく、常温で混合すればよい。
この時、得られた混合物を予熱し相溶させる(相溶工程)と、得られる絶縁性高分子材料組成物が均一となる。本発明でいう相溶とは、主剤と硬化剤の混合物がクリアな外観を有するものを意味する。相溶させると、エポキシ化植物油と植物由来ポリフェノール樹脂との一部が架橋構造を形成した液状の相溶物(すなわち、液状エポキシ樹脂組成物)が得られる。この液状エポキシ樹脂組成物の架橋の範囲は、1〜80%、好ましくは1〜50%、より好ましくは1〜20%である。液状エポキシ樹脂組成物の架橋の範囲は、該液状エポキシ樹脂組成物の加熱温度、及び加熱時間により制御することができる。
相溶工程では、植物由来のポリフェノール樹脂の融点以上で予熱することが好ましく、温度条件によって相溶時間を調整する必要がある。また、攪拌することによって相溶時間を短縮することができる。しかし、相溶時間が長すぎると前記液状エポキシ樹脂が硬化してしまうので、前記液状エポキシ樹脂に添加する硬化剤等の種類ごとに最適相溶条件(予熱時間、予熱温度)を決定することが好ましい。
最後に、加熱処理することで植物油由来エポキシ樹脂と植物由来ポリフェノール樹脂とが完全に架橋され絶縁硬化物(絶縁性高分子材料組成物)が得られる(硬化工程)。
以下、具体的に実施例を挙げて実施形態1に係る絶縁性高分子材料組成物について説明する。なお、本発明に係る絶縁性高分子材料組成物及びその製造方法は、下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、主剤としてエポキシ化亜麻仁油を用い、エポキシ化亜麻仁油の硬化剤としてピロガロール樹脂を用いた。
上記フェノール樹脂化工程で説明した手法でピロガロールを縮合させて、ピロガロール樹脂を得た。ピロガロール樹脂とエポキシ化亜麻仁油と反応させる場合、エポキシ当量と水酸基当量から配合量を求めるが、エポキシ化亜麻仁油におけるエポキシ基は分子鎖中にあり、反応性に乏しいため最適な配合量は必ずしも化学量論的には決まらない。
そこで、エポキシ化亜麻仁油に対し、ピロガロール樹脂を10、25、50、100wt%とし、硬化促進剤を3phr加え、150℃で10時間の加熱処理を行った。硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチル−イミダゾール(四国化成工業(株)、品名キュアゾール 2E4MZ)、三級アミン(明電ケミカル(株) L−86)、芳香族アミン(明電ケミカル(株)K−61B)を用いた。
硬化物の評価方法は、耐熱性の指標となるTg、体積抵抗率で行った。Tgは加熱処理によって得られた硬化物を4mmφ×15mmの円柱状に切り出し、TMA法によって線膨張率の変曲点から求めた。体積抵抗率はJISK6911に準拠し、1000Vの直流電圧印加で求めた。
エポキシ化亜麻仁油に対し、ピロガロール樹脂を混合し、液状相溶物を得た。ピロガロール樹脂の混合量はエポキシ化亜麻仁油に対して10、25、50、100wt%とし、硬化促進剤を3phr添加して、150℃−16時間の加熱処理を行い絶縁性高分子材料組成物を得た。表1に得られた絶縁性材料組成物のTgの測定結果、表2に得られた絶縁性材料組成物の体積抵抗率の測定結果を示す。
Figure 0005299919
Figure 0005299919
表1、2に示すように、本発明に係る絶縁性高分子材料組成物は、非化石原料であるエポキシ化植物油と植物由来ポリフェノール樹脂の硬化物であって、Tgが室温以上であり絶縁性能に優れた硬化物であることが分かる。
以上、実施例を挙げて説明したように、本発明の絶縁性高分子材料組成物の製造方法によれば、非石油原料であるエポキシ化植物油と植物由来ポリフェノールを原料としてTgが室温以上であり、絶縁性能に優れた硬化物(絶縁性高分子材料組成物)を得ることができる。そして、原料が非石油原料であるため、焼却処分しても新たな二酸化炭素の発生とは見なされないカーボンニュートラルな絶縁性高分子材料組成物を得ることができる。
すなわち、本発明に係る絶縁性高分子材料組成物の製造方法によれば、エポキシ化植物油を植物由来ポリフェノールをフェノール樹脂化した硬化剤により硬化させることで、絶縁性に優れ、かつ高温での機械特性が工業用エポキシ樹脂よりも大きく、従来の工業用エポキシ樹脂以上の物性を有する絶縁性高分子材料組成物を得ることができる。
したがって、この絶縁性高分子材料組成物は、電力機器用絶縁材料等に適用することができる。例えば、絶縁スペーサーや支持碍子、絶縁フレーム、絶縁シート、固体絶縁開閉装置(ミニクラッド)やガス絶縁機器に使われるモールド機器、変圧器などのモールド樹脂等のエポキシモールド製品全般に使用可能である。

Claims (3)

  1. エポキシ化亜麻仁油に硬化剤として1種類以上の没食子酸誘導体を縮合させたフェノール樹脂を混合した後、加熱処理して硬化した
    ことを特徴とする絶縁性高分子材料組成物。
  2. 前記没食子酸誘導体は、ピロガロール、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸イソプロピル、没食子酸ブチル、没食子酸ペンチル、没食子酸イソペンチル、没食子酸オクチル、没食子酸デシル、没食子酸ドデシル、没食子酸トリデシル、没食子酸テトラデシル、没食子酸ペンタデシル、没食子酸ヘキサデシル、没食子酸ヘプタデシル、没食子酸オクタデシルのいずれかである
    ことを特徴とする請求項1に記載の絶縁性高分子材料組成物。
  3. 1種類以上の没食子酸誘導体を縮合させてフェノール樹脂化するフェノール樹脂化工程と、
    前記フェノール樹脂化工程で得られたフェノール樹脂をエポキシ化亜麻仁油と混合する混合工程と、
    前記混合工程で得られた混合物を加熱処理して絶縁性高分子材料組成物を得る硬化工程とを有する
    ことを特徴とする絶縁性高分子材料組成物製造方法。
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