JP5271221B2 - 植物由来組成物とその硬化物 - Google Patents

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本発明は、植物由来組成物とその硬化物に関する。
近年、地球温暖化等の環境問題に対する関心が高まるにつれ、プラスチック分野においては、石油由来の材料に代替するものとして、低エミッションかつカーボンニュートラルな植物由来の分解物を重合して得られる樹脂に注目が集まってきている。
中でも、植物由来の分解物の一種である乳酸を重合して得られたポリ乳酸は、結晶性を有し、他の植物由来樹脂と比較して物性の高い樹脂の一つであり、大量生産も可能で生産コストも比較的低い。
しかし、ポリ乳酸は熱可塑性樹脂であり、汎用の石油由来の熱可塑性樹脂(PE、PP、ABS等)に比較すると、耐熱性と機械的特性が低いために、広く普及するには至っていない。また、ポリ乳酸は耐熱性の高いエンジニアリングプラスチックや熱硬化性樹脂に代替できるような物性を有していない。
一方、木材等に多く含まれるポリフェノール類であるリグニンは、植物由来の物質としてはセルロースに次ぐ存在量がある。リグニンはパルプ製造の際に廃棄物となるため、これを有効利用しようという試みが古くからなされてきた。
例えば、リグニンは化学構造がフェノール樹脂に類似していることから、フェノール樹脂と同様にリグニンをホルムアルデヒドと反応させ縮合させて接着剤として用いることが検討されてきた。また、樹皮等に含まれるタンニンもリグニンと同様にホルムアルデヒドと反応させ縮合させて接着剤として用いることが検討されてきた。さらに、フェノール樹脂のメチロール基とリグニンのフェノール性水酸基との反応を期待して、フェノール樹脂にリグニンを添加し、リグニンをフェノール樹脂の高分子骨格の中に取り込む検討もなされてきた。
しかしながら、リグニン等をホルムアルデヒドを用いて反応させる場合、残留したホルムアルデヒドや加水分解によって発生したホルムアルデヒドが放散されるという問題があった。また、リグニンの反応性が従来のフェノール樹脂よりも低いため、物性と生産性が劣り、上記の技術は広く実用化されていないのが現状である。
リグニンを有効利用しようという他の試みとして、リグニンのフェノール性水酸基とポリイソシアナートを反応させてウレタン樹脂とすること(非特許文献1参照)、リグニンのフェノール性水酸基をエポキシ化し、他のエポキシ樹脂と反応させること(非特許文献2参照)、ロジン系成分およびそれと反応する成分をリグニンに加えること(特許文献1参照)等が検討されている。
しかしながら、これらの従来技術では石油由来成分を多く用いているため、植物由来成分の比率を高くできず、さらに反応性が低いため物性と生産性が劣るという問題があり、広く実用化されていないのが現状である。また特許文献1では、ロジン系成分を加えずにリグニンとエポキシ化合物を混合した配合は物性が低くなっている。これはリグニンの反応性の低さが原因と考えられる。
一方、パルプ製造により生産されるリグニンスルホン酸塩を用いてエポキシ樹脂と反応させることも検討されている。リグニンスルホン酸塩は、2つ以上の芳香族環を有し、それぞれに水酸基を有しているので、その水酸基がエポキシ樹脂のエポキシ基と反応すれば、反応物は三次元架橋して優れた耐熱性を有する硬化物になると考えられる。しかしながら、本出願人の検討結果によれば、リグニンスルホン酸塩とエポキシ樹脂とをメチルエチルケトン等の有機溶媒中で混合した樹脂組成物を加熱してもゲル化しなかった(例えば、特許文献2の比較例1参照)。これは、エポキシ樹脂が有機溶媒に可溶であるのに対し、リグニンスルホン酸塩は有機溶媒への溶解性が低く、エポキシ樹脂との反応性が低いことが原因として考えられる。
特開2003−277615号公報 特開2009−46646号公報
「木質新素材ハンドブック」技報堂出版 p. 685 「植物由来リグノフェノールを原料とする新規エポキシ樹脂」 ネットワークポリマー、27 (2)、118 (2006)
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、高い反応性を有し、高い耐熱性と機械的特性を有する硬化物を形成することができる植物由来組成物とその硬化物を提供することを課題としている。
本発明は以下のことを特徴としている。
第1に、本発明の植物由来組成物は、有機硫黄含有率が1.5質量%以上4質量%以下である部分脱スルホン化されたリグニンスルホン酸塩、エポキシ化合物、およびこれら双方を溶解するSP値が9.9〜12.7の範囲である溶媒を含有し、前記リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物との合計量100質量部に対して、溶媒の配合量が50〜500質量部であって、前記リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物とは溶媒中で相溶した溶液状であることを特徴とする。
に、本発明の硬化物は、上記第の発明の植物由来組成物を硬化してなることを特徴とする。
上記第1の発明によれば、部分脱スルホン化されたリグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物とがこれらを共に溶解させる溶媒中で相溶した溶液状であることにより、リグニンスルホン酸塩の水酸基の反応性が向上してエポキシ化合物のエポキシ基と反応させることができる。
また、リグニンスルホン酸塩中には2つ以上の芳香族環を有し、それぞれに水酸基を有しているので、一分子中の複数の水酸基が複数のエポキシ基と反応することにより、反応物は3次元架橋した高い耐熱性と機械的特性を有する硬化物となる。したがって本発明の植物由来組成物は成形材料や接着剤等として利用することができる。
上記第の発明によれば、上記第の発明の植物由来組成物を反応硬化させることで硬化物としており、この植物由来組成物は、従来の硬化性樹脂と同様に加熱、光照射、硬化促進剤の添加等により反応して三次元網状構造の硬化物となるため、熱可塑性樹脂等と比較して同程度もしくはより高い耐熱性と機械的強度が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるリグニンスルホン酸塩は、植物由来であり、広葉樹、針葉樹またはそれらの混合されたチップを原料として亜硫酸パルプを製造する工程(蒸解工程)で副生する亜硫酸パルプ排液から分離、精製することができる。また、草本類からも得ることができる。亜硫酸パルプの蒸解方法には、酸性亜硫酸法、重亜硫酸法等があり、亜硫酸パルプ廃液のpHも酸性からアルカリ性領域まであり幅広い。
リグニンスルホン酸塩の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、アルミニウム、マンガン、コバルト等の金属また有機物でも塩を形成できれば、特に限定されることはない。
一般的なリグニンスルホン酸塩の構造は、スルホン基、カルボキシル基、フェノール性水酸基ないしアルコール性水酸基等の官能基を有する電解質の高分子であり、アルカリ性溶液に溶解しやすい特性を有している一方で、エポキシ化合物が可溶な有機溶媒への溶解性は低い。リグニンスルホン酸塩中の水酸基とエポキシ化合物のエポキシ基との反応性を高めるためには、リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物とを相溶させる必要があり、そのためにはリグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物の双方を溶媒に溶解させる必要がある。
そこで、本発明では、部分脱スルホン化によってリグニンスルホン酸塩中のスルホン基量を少なくしたリグニンスルホン酸塩を用いることにより、このリグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物の双方が溶媒に溶解しやすくなる等、前記リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物の双方を溶解させる溶媒の選択の幅が拡がることを見出した。本発明では、部分脱スルホン化したリグニンスルホン酸塩中の有機硫黄含有率が4質量%以下のものを用いることが好ましい。有機硫黄含有率が4質量%を超えるリグニンスルホン酸塩は、エポキシ樹脂と相溶可能な溶媒とは不溶となるおそれがある。有機硫黄含有率の下限値は、エポキシ化合物との溶媒への相溶性や反応性を考慮すると1.5質量%であることが好ましい。さらに好ましい範囲は2.0〜3.5質量%であり、より好適には2.0〜2.5質量%である。このようなリグニンスルホン酸塩は、市販されており、例えば、日本製紙ケミカル製の「バニレックスHW」(有機硫黄含有率2.4質量%)等を挙げることができる。
なお、リグニンスルホン酸塩中の有機硫黄含有率は、特開2002−114896号公報に開示されているような方法によって測定することができる。すなわち、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子工業製 SPS1700VRI)を用いてリグニンスルホン酸塩中の全硫黄含有率を求め、次にイオンクロマトグラフ(METROHM社製 761Compact IC)を用いてリグニン中の無機硫黄含有率を求め、全硫黄含有率と無機硫黄含有率の差より有機硫黄含有率を求める(対固形分%)。
本発明に用いられるエポキシ化合物としては、複数のエポキシ基を有するものであれば特に制限はない。エポキシ化合物中のエポキシ基が単数である場合は、反応物は3次元架橋することができなくなる。本発明に用いられるエポキシ化合物としては、例えば、石油由来のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、植物油脂のエポキシ化合物を用いることで、植物由来組成物とその硬化物中における植物由来成分の比率を高めることができ、カーボンニュートラルな特性をさらに高めることができる。このような植物油脂のエポキシ化合物としては、例えば、市販されている大豆、亜麻、桐、ごま、やしの種子等の植物油脂のエポキシ化合物等が挙げられる。
また、エポキシ化合物は液状、固形問わないが、リグニンスルホン酸塩との相溶化を考慮すると、液状のものであることが好ましい。
本発明に用いられる、リグニンスルホン酸塩およびエポキシ化合物を共に溶解させる溶媒は、リグニンスルホン酸塩およびエポキシ化合物の分子量や極性により適宜のものが選択され、特に制限はないが、SP値が9.5〜13程度の溶媒が好ましい。好適には9.9〜12.7程度の溶媒、例えば、エタノール、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、ピリジン、アセトン等の有機溶媒は、極性の高いリグニンスルホン酸塩と極性の低いエポキシ化合物とを共に溶解させることが可能である。
本発明の植物由来組成物における溶媒の配合量は、リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物との双方の溶解性により適宜に設定され、特に制限はないが、好ましくは、リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物との合計量100質量部に対して50〜500質量部である。溶媒の配合量が50質量部未満であると、リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物とのいずれかが溶解しない可能性が高まり、結果として反応性が低下するおそれが高まる。溶媒の配合量が500質量部を超えると、加熱硬化成形時の熱により溶媒成分が気化して硬化樹脂中で発泡し、成形体の機械的特性を低下させるおそれがある。また、溶媒を除去するためのエネルギーやプロセスが必要になる場合がある。
本発明では、リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物との相溶性をさらに向上させて反応性を高め、あるいは溶媒の使用量を抑制する目的で、オキサゾリン系、エポキシ−アクリル系、エポキシ−酸無水物系等の相溶化剤を植物由来組成物に配合することができる。
また、植物由来組成物はリグニンスルホン酸塩の水酸基とエポキシ化合物のエポキシ基、またはエポキシ化合物のエポキシ基同士が1対1で反応して形成されるが、リグニンスルホン酸塩の配合比率をリグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物との合計量に対して35〜95質量%とすることで、優れた耐熱性および機械的特性を有する硬化物を得ることができる。良好な相溶状態を保つために40〜80質量%の比率にすることが望ましい。
本発明の植物由来組成物には、上記した各成分に加えて、他の添加成分を配合してもよい。このような添加成分としては、例えば、パラトルエンスルホン酸水和物、トリフェニルホスフィン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン等の硬化性樹脂に一般に用いられている硬化促進剤、および充填材、増量材等が挙げられる。
本発明の植物由来組成物は、適宜の条件にて反応させることによって硬化物とされる。
硬化反応の反応機構としては、リグニンスルホン酸塩の水酸基と、エポキシ化合物のエポキシ基との反応が主反応として進行し、副反応としてエポキシ化合物のエポキシ基同士の反応が進行する。これにより3次元網状構造の硬化物が形成される。リグニンスルホン酸塩は2つ以上の芳香族環を有し、それぞれに水酸基を有しているので、一分子中の複数の水酸基が複数のエポキシ基と反応することにより、反応物は3次元架橋した高い耐熱性と機械的特性を有する硬化物となる。
硬化反応の条件は、特に制限はなく、従来の硬化性樹脂と同様の条件が適用できる。例えば、加熱、光照射、硬化促進剤の添加などにより硬化反応を進行させることができる。
本発明の植物由来組成物は、高い耐熱性と機械的特性を有する硬化物を形成することができるため、成形材料として好適に用いることができる。また、紙やガラス繊維などに含浸し、あるいは単板に塗布して積層板として好適に用いることができ、接着剤としても好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
リグニンスルホン酸塩としてバニレックスHW(日本製紙ケミカル(株)製、高純度部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム、有機硫黄含有率2.4質量%)、エポキシ化合物として液状エポキシ化合物(エピクロン850S、DIC(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)を用い、溶媒のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で混合して植物由来組成物とした。混合比はリグニンスルホン酸塩:エポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=80:20:1:150とした。
ここで、溶媒へのリグニンスルホン酸塩の溶解性、および溶媒へのエポキシ化合物の溶解性を確認した。また、上記植物由来組成物の相分離の有無も確認した。
次いで、この植物由来組成物を120℃、20分の条件で予備乾燥し、均一な半硬化物とし、半硬化物の相分離の有無も確認した。
さらに、半硬化物を160℃、3.5MPa、120分の条件で成形を行い、厚さ2mmの硬化物を得た。この硬化物をTMA(熱機械的分析装置(TMA320:セイコー電子工業(株)製)において0.5g加重、5℃/min昇温の条件で膨張率を測定し、その変曲点からガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<実施例2>
リグニンスルホン酸塩としてバニレックスHW(日本製紙ケミカル(株)製、高純度部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム、有機硫黄含有率2.4質量%)、エポキシ化合物として液状エポキシ化合物(エピクロン830、DIC(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)を用い、溶媒のピリジン中で混合して植物由来組成物とした。混合比はリグニンスルホン酸塩:エポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=50:50:1:150とした。
この植物由来組成物を実施例1と同様の条件で処理し、ガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<実施例3>
リグニンスルホン酸塩としてバニレックスHW(日本製紙ケミカル(株)製、高純度部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム、有機硫黄含有率2.4質量%)、エポキシ化合物として液状エポキシ化合物(エピクロン830、DIC(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)を用い、溶媒のエタノール中で混合して植物由来組成物とした。混合比はリグニンスルホン酸塩:エポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=60:40:1:200とした。
この植物由来組成物を実施例1と同様の条件で処理し、ガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<比較例1>
リグニンスルホン酸塩としてバニレックスHW(日本製紙ケミカル(株)製、高純度部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム、有機硫黄含有率2.4質量%)、エポキシ化合物として液状エポキシ化合物(エピクロン850S、DIC(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)を溶媒無しで混合して植物由来組成物とした。混合比はリグニンスルホン酸塩:エポキシ化合物:硬化促進剤=80:20:1とした。
この植物由来組成物を実施例1と同様の条件で処理し、ガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<比較例2>
リグニンスルホン酸塩としてバニレックスHW(日本製紙ケミカル(株)製、高純度部分脱スルホンリグニンスルホン酸ナトリウム、有機硫黄含有率2.4質量%)、エポキシ化合物として液状エポキシ化合物(エピクロン830、DIC(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)を用い、溶媒の酢酸エチル中で混合して植物由来組成物とした。混合比はリグニンスルホン酸塩:エポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=80:20:1:300とした。
この植物由来組成物を実施例1と同様の条件で処理し、ガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<比較例3>
リグニンスルホン酸塩としてパールレックスNP(日本製紙ケミカル(株)製、高純度高分子量リグニンスルホン酸ナトリウム、有機硫黄含有率5.8質量%)、エポキシ化合物として液状エポキシ化合物(エピクロン830、DIC(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)を用い、溶媒の水中で混合して植物由来組成物とした。混合比はリグニンスルホン酸塩:エポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=80:20:1:250とした。
この植物由来組成物を実施例1と同様の条件で処理し、ガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<比較例4>
リグニンスルホン酸塩としてサンエキスP252(日本製紙ケミカル(株)製、リグニンスルホン酸ナトリウム、有機硫黄含有率4.4質量%)、エポキシ化合物として液状エポキシ化合物(エピクロン850S、DIC(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)を用い、溶媒のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中で混合して植物由来組成物とした。混合比はリグニンスルホン酸塩:エポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=80:20:1:150とした。
この植物由来組成物を実施例1と同様の条件で処理し、ガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<比較例5>
リグニンスルホン酸塩の代わりにクラフトリグニン(アルドリッチ試薬製、クラフトリグニン(リグニンアルカリ)、有機硫黄含有率1.3質量%)、エポキシ化合物として液状エポキシ化合物(エピクロン850S、DIC(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)を用い、溶媒の水酸化ナトリウム水溶液中で混合して植物由来組成物とした。混合比はクラフトリグニン:エポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=80:20:1:200とした。
この植物由来組成物を実施例1と同様の条件で処理し、ガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0005271221
表1より、実施例1〜3の植物由来組成物は、リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物の双方が溶媒中において相分離せず溶解していることが確認できた。また、その植物由来組成物を加熱すると均一な半硬化物となり、その硬化物のガラス転移温度が100℃前後になることが確認できた。
これに対して、部分脱スルホン化されたリグニンスルホン酸塩を用いていないか、あるいは、リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物の双方を溶解する溶媒を用いていない比較例1〜5では、各原料を配合して植物由来組成物にした際に、沈殿物が発生するか、上下2層に相分離を起こした。これらは加熱により均一な半硬化物とはならず、得られた硬化物のガラス転移温度は実施例1〜3と比較して大幅に低い値となった。

Claims (2)

  1. 有機硫黄含有率が1.5質量%以上4質量%以下である部分脱スルホン化されたリグニンスルホン酸塩、エポキシ化合物、およびこれら双方を溶解するSP値が9.9〜12.7の範囲である溶媒を含有し、前記リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物との合計量100質量部に対して、溶媒の配合量が50〜500質量部であって、前記リグニンスルホン酸塩とエポキシ化合物とは溶媒中で相溶した溶液状であることを特徴とする植物由来組成物。
  2. 請求項に記載の植物由来組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
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