JP5298045B2 - 電源制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電源回路を制御するデジタル制御方式の電源制御装置関する。
近年、CPUなどの性能向上等によりデジタル制御化が進んでいる。例えば、DC/DCコンバータやインバータといった電源回路においても、この電源回路をデジタル制御するための専用のマイコンやDSP等の制御ICを備えた電源制御装置が開発され、市場で急速に普及している。
このような、電源制御装置を用いて、電源回路のスイッチング素子をPWM制御する際には、フィードバック制御方式の一つであるPI制御方式が広く用いられている。このPI制御方式について、図8を参照して説明する。
PI制御方式は、まず、図示しない電源回路からフィードバックされるAD変換後の電圧や電流の検出値と、予め定められている電圧や電流の目標値との偏差ΔXを減算器25で演算する。そして、この偏差ΔXに対して比例ゲインPを乗算器26で乗算してP・ΔXを出力する一方、偏差ΔXに積分ゲインIを乗算器27で乗算する。次いで、積分ゲインIを乗算した結果I・ΔXと前回までの乗算結果を保管しているバッファメモリ28の前回の値とを加算器29で加算し、その加算結果であるΣ(I・ΔX)がバッファメモリ28に前回の値として次回まで保持される。
そして、P・ΔXとΣ(I・ΔX)とが加算器30で加算され、その結果、制御量としてP・ΔX+Σ(I・ΔX)が得られるので、制御量決定部31において上記の制御量P・ΔX+Σ(I・ΔX)に対応したPWM制御用のデューティ比が決定されて電源回路のスイッチング素子のオン/オフ制御が実行される。
また、従来技術では、AD変換後の電圧や電流の検出値と目標値との偏差ΔXに対応した制御量をメモリに予め記憶しておき、偏差ΔXが得られるたびに、偏差ΔXに対応した必要な制御量をメモリから読み出すことで、図8に示したような加減算処理や乗算処理を行わずにPI制御方式を実行できるようにした技術も提案されている(例えば、下記の非特許文献1参照)。
杉本英彦ら:「ACサーボシステムの理論と設計の実際」、P77〜P78、発行所 総合電子出版社
しかし、図8に示したようなPI制御方式を実行するには、上記のように複数回の乗算処理や加減算処理を必要とし、特に、CPUの処理能力が低い安価な制御ICを用いて乗算処理を行う場合には演算時間が長くなる。一方で、演算処理を短時間で行うことができるような高性能な制御ICを使用する場合には、制御ICが高価になってコストアップになる。
また、上記の非特許文献1に記載されるような従来技術では、加減算処理や乗算処理を行わずにPI制御方式を実行できるので、比較的安価な制御ICが使用できるものの、制御量を記憶するメモリには、メモリ容量が大きいものを使用する必要が生じるため、依然としてコストアップになるという問題がある。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、CPUの処理能力が比較的低い安価な制御ICを使用し、かつ、メモリ容量が少なくても、電源回路のデジタル制御を確実に実行することができ、かつ、余分なコストアップを抑えることが可能な電源制御回路提供することを目的とする。
本発明の電源制御装置は、予め設定された目標値と制御対象となる電源回路からフィードバックされたAD変換後の電圧や電流の検出値との偏差を算出する演算部と、この演算部で算出された偏差の2進数データの正負判定を行うとともに、この2進数データについて上位ビットから順にその有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位1桁のビット位置、または、有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置を確認するビット確認部と、このビット確認部で確認される有効データの存在する最上位1桁のビット位置、または有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置に対応して一意に決定される制御量が予め格納されているメモリと、上記ビット確認部で確認された有効データの存在する最上位1桁のビット位置、または有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置に対応する制御量を上記メモリから読み出すメモリ読出部と、を備え、この制御量で上記電源回路を制御するものである。
本発明によれば、電源回路を制御する制御量を算出するための演算処理は加減算処理とメモリ読出処理のみであり、従来のような乗算処理を行う必要がないので、制御処理の高速化を図ることができる。また、必要なデータを格納するためのメモリ容量は、AD変換後のビット数がKビットの場合、2K個となり、例えばAD変換値が10ビットの場合は、20個と少ない。これらのことから、乗算処理の必要がなく、かつ、メモリ容量が小さい安価な制御ICを使用しても十分に電源回路を制御可能であり、コスト削減を図ることができる。
本発明の実施の形態1において、電源回路を制御する電源制御装置の構成を示すブロック図である。 同装置の制御動作を示すフロー図である。 同装置のルックアップテーブルメモリに格納されているデータ内容の特性を示す説明図である。 本発明の実施の形態2における電源制御装置の構成を示すブロック図である。 同装置の制御動作を示すフロー図である。 本発明の実施の形態3における電源制御装置の構成を示すブロック図である。 同装置の制御動作を示すフロー図である。 電源回路に対するPI制御を行う従来の電源制御装置の要部構成を示すブロック図である。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における電源制御装置を含むブロック図である。
この実施の形態1の電源制御装置は、電源回路1のスイッチング素子のオン/オフ制御によりPWM制御を行う制御IC2と、AD変換部3とを備える。なお、AD変換部3は、制御IC2の外部に設けられた構成としているが、制御IC2の内部に設けられた構成のものであってもよい。
そして、制御IC2は、演算部4、ビット確認部5、メモリ読出部6、およびルックアップテーブルメモリ7を有する。
ここに、演算部4は、電源回路1からフィードバックされたAD変換後の電流や電圧の検出値と予め定められた電流や電圧の目標値との減算を行って偏差を算出するものである。また、ビット確認部5は、演算部4で算出された偏差の2進数データの正負判定を行うとともに、偏差として得られた2進数データについて、上位ビットから順に、偏差の値として有効な有効データの最上位1桁のビット位置を確認するものである。ルックアップテーブルメモリ7には、ビット確認部5で確認される有効データの存在する最上位の1桁に基づいて一意に決定される制御量が予め格納されている。メモリ読出部6は、ビット確認部5で確認された有効データの存在する最上位の1桁に基づいて上記メモリ7からこれに対応する制御量を読み出すものである。
なお、上記各部4,5,6の具体的な作用、およびルックアップテーブルメモリ7に記憶されている制御量の内容については、以下に述べるこの電源制御装置の動作説明に合わせてさらに詳述する。
次に、この実施の形態1における電源制御装置の動作について、図2に示すフロー図を参照して説明する。なお、符号Sは、各処理ステップを意味する。
演算部4は、電源回路1からフィードバックされたAD変換後の電流や電圧の検出値と予め定められた目標値との減算を行って偏差(=目標値−検出値)を算出する(S11)。
次いで、ビット確認部5において、偏差の2進数データから最上位ビット(MSB)(例えば10ビットデータの場合なら10桁目の値)を確認することで偏差が正の値か負の値であるかの判断を行う(S12)。すなわち、偏差の2進数データが正の値である場合には、最上位ビット(MSB)は“0”となり、また、偏差の2進数データが負の値である場合には、最上位ビット(MSB)は、いわゆる「2の補数」の関係から“1”となるので、これによって、偏差の正負が判定される。
引き続いて、ビット確認部5において、偏差の正負判定結果に基づき、偏差として得られた2進数データについて、上位ビットから順に偏差の値として有効な有効データの最上位1桁(1ビット分)のビット位置を確認する(S13,S14)。
すなわち、偏差の2進数データが正の値である場合には、有効データ“1”が存在する最上位の1桁のビット位置を確認する(S13)。例えば、10ビットデータにおいて、“0000001101”となっておれば、有効データ“1”が存在する最上位の桁の位置は、上位ビットから7桁目であることを確認する。また、偏差の2進数データが負の値である場合には、上位ビットから順に有効データとして“0”が存在する最上位の1桁のビット位置を確認する(S14)。例えば、10ビットデータにおいて、“1111001101”となっておれば、有効データ“0”が存在する最上位の桁の位置は、上位ビットから5桁目であることを確認する。
次に、メモリ読出部6において、予め制御量を格納しているルックアップテーブルメモリ7からビット確認部5で確認した有効データ“1”もしくは“0”が存在する最上位の1桁のビット位置の情報に基づいて、これに対応する制御量を読み出す(S15)。
例えば、上記のように、10ビットデータにおいて、偏差が正の値で、かつ有効データの最上位の桁が上位ビットから7桁目であれば、その7桁目の有効データの大きさ“0000001000”に対応した制御量をルックアップテーブルメモリ7から読み出す。また、偏差が負の値で、かつ有効データの最上位の桁が上位ビットから5桁目であれば、その5桁目の有効データの大きさ“1111000000”に対応した制御量をルックアップテーブルメモリ7から読み出す。このように、ルックアップテーブルメモリ7から制御量を読み出する際には、偏差の値を示す有効データの上位1ビットのみを活用する。
ここで、ルックアップテーブルメモリ7に記憶されている制御量の一例を図3に示す。上記のように、メモリ読出部6において、ルックアップテーブルメモリ7から読み出される制御量は、ビット確認部5において確認される偏差の有効データの上位1桁(1ビット分)のビット位置、つまり有効データの上位1ビットの位置の桁数のみで決定される。すなわち、
制御量=基本制御量±2×P (1)
で決定される。
ここに、式(1)での制御量は、入出力の電圧比やトランスの巻数比から決定される制御量であって、nは有効データの上位1ビットの位置の桁数、Pは比例ゲインである。そして、上記の式(1)に基づいてオフラインで制御量を計算し、その制御量を予めルックアップテーブルメモリ7に格納しておく。
このように、ルックアップテーブルメモリ7に格納すべき制御量は、ビット確認部2において確認される偏差の有効データの上位1桁(1ビット分)のビット位置のみで決定されるので、AD変換部3で得られる2進数データの検出値がKビットである場合、ルックアップテーブルメモリ7に制御量として格納するのに必要なデータの個数は、正の制御量がK個、負の制御量がK個の合計2K個であり、例えばAD変換後の検出値が10ビットであるとすると、ルックアップテーブルメモリ7に保存するデータの値は20個となり、多くのメモリ容量を必要としない。
そして、(1)式から分かるように、比例ゲインPを大きくすると、(1)式の第2項の値が大きくなり、急峻な制御特性をとる。逆に比例ゲインPを小さくすると、(1)式の第2項の値が小さくなり、緩やかな制御特性をとる。しかも、制御量は、ビット確認部2において確認される偏差の有効データの最上位1桁のビット位置のみで決定されるので、偏差が大きくなるほど、制御量として同じ値を取るデータ幅が大きくなる。すなわち、(1)式の第2項の値に着目すれば、2進数データにおいて、有効データが正で、上位1ビットの位置の桁数n=2なら、“10”〜“11”の2つの値は全て同じ“4P”となるが、n=4なら“1000”〜“1111”の8つの値は全て同じ“16P”になる。すなわち、偏差が大きくなるほど、図3に離散的に示す各太線の長さが長くなり、制御量として大きな値になる。
このようにして、ルックアップテーブルメモリ7から読み出された制御量は、制御IC2から電源回路1に出力される(S16)。そして、電源回路1は、この制御IC2から与えられる制御量に基づいて当該電源回路1を構成するスイッチング素子のPWM制御を行う。
以上のように、この実施の形態1によれば、目標値とAD変換値の検出値との偏差を算出し、この偏差の2進数データの正負判定を行った後、その偏差の有効データ“1”もしくは“0”が存在する最上位1桁のビット位置を確認し、この最上位1桁のビット位置に基づいて一意に決定される制御量をルックアップテーブルメモリ7から読み出すようにしているので、従来のPI制御を行う際の乗算処理を必要としない。このため、安価なCPUを用いても高速処理が可能となる。しかも、偏差として得られる2進数データについて、その有効データの上位1桁のビット位置のみを活用してその制御量を決定するので、ルックアップテーブルメモリ7として少ないメモリ容量のものを使用することができる。したがって、処理能力を維持しつつ、制御ICおよびメモリとして安価なものを使用することが可能となり、余分なコストアップを削減することができる。
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2における電源制御装置の制御IC部の構成を示すブロック図であり、図1と同一もしくは対応する構成部分には、同一の符号を付す。
この実施の形態2の特徴は、図1に示した実施の形態1の制御IC2の構成と対比すると、ルックアップテーブルメモリ7に記憶されているデータ内容が、実施の形態1の場合と若干異なっており、また、制御量算出部14が付加されていることである。
ここに、ルックアップテーブルメモリ7に記憶されているデータ内容に着目すると、実施の形態1の場合は、偏差の正および負の値に応じてそれぞれ制御値を記憶しているが、偏差は、2の補数を考慮した場合の正負のビットパターンを見ると、ビットパターンは基本制御量を中心として上下対称のパターン(図3の場合は点対称)となる。
よって、この実施の形態2では、ルックアップテーブルメモリ7に偏差の絶対値、つまり偏差が正の場合の有効データ“1”が存在する最上位の1桁のビット位置に基づいて一意に決定される制御量、すなわち、前述の(1)式の第2項の正の値を制御補正量として予め格納しておく。そして、偏差が正の値の場合には基本制御量に対して制御補正量を加算し、偏差が負の値の場合には基本制御量に対して制御補正量を減算することにより、(1)式に基づいて最終的に必要な制御値を求めることができる。このようにすれば、ルックアップテーブルメモリ7に格納するために必要なメモリ容量は、実施の形態1の場合の半分で済むことになり、メモリ容量を一層削減すことができる。
また、制御量算出部14は、ビット確認部5による偏差の正負の判断結果に応じて、基本制御量にルックアップテーブルメモリ7から読み出された制御補正量を加減算して制御量として算出するものである。すなわち、偏差が正の場合には、基本制御量に対して制御補正量を加算してこれを制御量とし、また、偏差が負の場合には、基本制御量に対して制御補正量を減算してこれを制御量とする処理を行う。
次に、この実施の形態2における電源制御装置の動作について、図5に示すフロー図を参照して説明する。なお、符号Sは各処理ステップを意味する。
演算部4は、電源回路1からフィードバックされたAD変換後の電流や電圧の検出値と予め定められた目標値との減算を行って偏差(=目標値−検出値)を算出する(S21)。
次いで、ビット確認部5において、偏差の2進数データから最上位ビット(MSB)(例えば10ビットデータの場合なら10桁目の値)を確認し、この最上位ビットの値をt_flagとして、例えば図示しないバッファメモリ等に一時的に保存する(S22)。この場合、前述のように、偏差の2進数データが正の値である場合には、最上位ビット(MSB)は“0”となるので、t_flag=0が格納され、また、偏差の2進数データが負の値である場合には、「2の補数」の関係から最上位ビット(MSB)は“1”となるので、t_flag=1が格納されることになる。
そして、ビット確認部5は、引き続いて、偏差の絶対値を算出する(S23)。この絶対値を算出することにより、偏差の絶対値の2進数データは、当然のことながら、正負の値によらず同じビットパターンとなる。
さらに続いて、ビット確認部5は、偏差の絶対値の2進数データについて、上位ビットから順に有効データ“1”が存在する最上位1桁のビット位置を確認する(S24)。すなわち、先のS23の絶対値演算により、偏差の2進数データは負の値の場合でも、正の値の場合と同じビットパターンになっているので、上位ビットから順に、有効データ“1”が存在する最上位1桁のビット位置を確認する。例えば、10ビットデータにおいて、2進数データの絶対値が“0000001101”となっておれば、有効データ“1”が存在する最上位1桁の位置は、上位ビットから7桁目であることを確認する。
次に、メモリ読出部6は、予め制御補正量が格納されているルックアップテーブルメモリ7からビット確認部5で確認された有効データ“1”が存在する最上位1桁のビット位置に基づいて、これに対応して一意に決定される制御補正量(前述の(1)式の第2項に対応する正の値)を読み出す(S25)。
次に、制御量算出部14において、上記t_flagのビット判定を行う(S26)。このビット判定により、t_flag=0の場合は、偏差は正の値であって、検出値が目標値に達していないので、この場合は基本制御量に制御補正量を加算することで制御量を算出する。すなわち、制御量=基本制御量+制御補正量となる(S27)。また、t_flag=1の場合は、偏差は負の値であって、検出値が目標値を越えているので、この場合は基本制御量から制御補正量を減算することで制御量を算出する。すなわち、制御量=基本制御量−制御補正量となる(S28)。
以降は、実施の形態1の場合と同様、制御IC2はこの制御量を電源回路1に出力する(S29)。電源回路1は、制御IC2から与えられる制御量に基づいて当該電源回路1を構成するスイッチング素子のPWM制御を行う。
以上のように、この実施の形態2によれば、乗算処理をすることがなく加減算処理とメモリ読出処理のみで構成できるため、安価な制御ICを用いても高速処理が可能となる。また、偏差の絶対値を算出してから、有効データの最上位1桁のビット位置の確認を行い、これに対応する制御補正量をルックアップテーブルメモリ7から読み出し、この制御補正量を基本制御量に対して加減算することで制御量を決定するようにしているので、実施の形態1の場合に対して、ルックアップテーブルメモリ7に格納するのに必要なメモリ容量は半分で済むことになる。したがって、この実施の形態2のような構成とすれば、安価な制御ICを使用するとともに、メモリ容量の小さなものを使用することができ、さらにコストダウンを図ることができる。
実施の形態3.
図6は本発明の実施の形態3における電源制御装置の制御IC部の構成を示すブロック図であり、図1と同一もしくは対応する構成部分には、同一の符号を付す。
上記の実施の形態1、2では、目標値とAD変換後の検出値との偏差を算出し、その偏差の有効データの上位1桁のビット位置を確認することで、この偏差に対応する制御量を決定していた。この場合の制御量は、従来のPI制御でいうところの偏差に比例した制御量を求める比例(P)制御に相当する。
しかし、周知のとおり、比例(P)制御だけでは、フィードバックされた検出値に対して予め定めた比例ゲインにより制御量が決まるため、入力電圧の変動や環境変化により目標値と制御出力との間に残留偏差が生じる。そこで、この実施の形態3では、実施の形態1に対して、さらに積分(I)制御を付加した構成とし、これにより制御量を積算することにより、確実に制御量を目標値に近づけることができるようにしている。
すなわち、この実施の形態3の特徴は、図1に示した制御IC2の構成に対して、積分制御量算出部21と、制御量算出部14とを付加した構成となっている。
ここに、演算部4、ビット確認部5、メモリ読出部6の各構成は、実施の形態1の場合と同様である。また、ルックアップテーブルメモリ7に記憶されている制御量は、前述の(1)式に基づいて予め決定された制御量であって、比例(P)制御量に相当するものであり、その具体的内容は、実施の形態1で説明した場合と基本的には同じであるから、ここでは詳しい説明は省略する。
また、積分制御量算出部21は、ビット確認部5による偏差の2進数データの正負判定結果に基づき、積分制御量に対して±N(ただし、Nは整数)の演算を行うものである。すなわち、偏差が正の場合には、積分制御量に“N”を加算してこれを新たな積分制御量とし、また、偏差が負の場合には、積分制御量から“N”を減算してこれを新たな積分制御量とする処理を行う。
また、制御量算出部14は、メモリ読出部6によりルックアップテーブルメモリ7から読み出された比例(P)制御量に、積分制御量算出部21で算出された積分(I)制御量を加算して制御量として算出するものである。
次に、この実施の形態3における電源制御装置の動作について、図7に示すフロー図を参照して説明する。なお、符号Sは各処理ステップを意味する。
演算部4は、電源回路1からフィードバックされたAD変換後の電流や電圧の検出値と予め定められた目標値との減算を行って偏差(=目標値−検出値)を算出する(S31)。
次いで、ビット確認部5において、偏差の2進数データから最上位ビット(MSB)を確認することで偏差が正の値か負の値であるかの判断を行う(S32)。
引き続いて、ビット確認部5において、偏差の正負判定結果に基づき、偏差として得られた2進数データについて、上位ビットから順に有効データの最上位1桁(1ビット分)のビット位置を確認する(S33,S34)。すなわち、偏差が正の値である場合は、上位ビットから順に有効データ“1”が存在する1桁のビット位置を確認する(S33)。一方、偏差が負の値である場合は、上位ビットから順に有効データ“0”が存在する1桁のビット位置を確認する(S34)。
引き続いて、メモリ読出部6において、予め比例制御量を格納しているルックアップテーブルメモリ7からビット確認部5での有効データ“1”、もしくは“0”が存在する最上位1桁のビット位置の情報に基づき、これに対応する比例制御量を読み出す(S35)。
一方、積分制御量算出部21は、ビット確認部5による偏差の2進数データの正負判定結果に基づき、偏差が正の値である場合には、検出値が目標値に達していないため積分制御量を増加させる必要があるため、前回までに図示しないバッファメモリに格納されている積分偏差量に“N”を加算して新たに積分制御量としてバッファメモリに保存する(S36)。一方、偏差が負の値である場合には、検出値が目標値を越えていて積分制御量を減少させる必要があるため、前回までに図示しないバッファメモリに格納されている積分偏差量から“N”を減算して新たに積分制御量としてバッファメモリに保存する(S37)。
続いて、制御量算出部14は、メモリ読出部6によりルックアップテーブルメモリ7から読み出された比例制御量に、積分制御量算出部21で算出された積分制御量を加算し、これを制御量として算出する。すなわち、制御量=比例制御量+積分制御量となる(S38)。
以降は、実施の形態1の場合と同様、制御IC2はこの制御量を電源回路1に出力する(S39)。電源回路1は、制御IC2から与えられる制御量に基づいて当該電源回路1を構成するスイッチング素子のPWM制御を行う。
以上のように、この実施の形態3よれば、積分制御量算出部21で積分制御量を算出し、次に、制御量算出部14でルックアップテーブルメモリ7から読み出された比例制御量に上記積分制御量を加算して制御量とする構成とすることにより、従来のようにPI制御の際に乗算処理をする必要がなく、加減算処理とメモリ読出処理のみで対処することができる。このため、確実に目標値に近づける制御が可能となるとともに、乗算処理がないので、高速処理が可能となる。また、有効データの存在する最上位1桁のビット位置からその制御量(比例制御量)を決定するので、必要なメモリ容量が少なくてよい。したがって、この実施の形態3のような構成とすれば、安価な制御ICを使用することができる。
なお、この実施の形態3では、積分制御量算出部21において2進数データの正負判定結果に基づき、積分制御量に対して±N(ただし、Nは整数)の演算を行うようにしているが、“N”の大きさは一定値とせず、偏差の有効データの最上位桁のビット位置に応じて変化させるようにしてもよい。例えば、偏差の有効データの最上位桁のビット位置が最上位ビット(MSB)側に近い場合は、“N”が大きく、最下位ビット(LSB)側に近い場合は“N”が小さくなるような値をルックアップメモリに予め保存しておき、ルックアップメモリから読み出した“N”の値で積分偏差量を算出してもよい。こうすることにより、実施の形態3の場合よりも制御応答性をさらに高めることができる。
また、この実施の形態3では、ルックアップテーブルメモリ7には偏差の正および負に応じてそれぞれ比例制御量が記憶されている場合を前提に説明したが、これに限らず、実施の形態2のように、ルックアップテーブルメモリ7には偏差の絶対値に応じた制御補正量を記憶するようにしてメモリ容量を削減し、制御量算出部14でルックアップテーブルメモリ7から読み出した制御補正量に基本制御量を加算して比例制御量を得る構成とすることも可能である。
また、上記の各実施の形態1〜3では、ルックアップテーブルメモリ7に格納されている制御量や制御補正量が有効データの最上位の1桁(1ビット分)のみで決定されるようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば複数ビットにより制御量や制御補正量を決定するようにすることも可能である。このように、複数ビットにより制御量や制御補正量を決定する場合、実施の形態1〜3の場合よりも幾分大きなメモリ容量が必要となって幾分コストアップになるが、判定するビット数を増やすほど従来のP制御やPI制御に近づくので、制御精度が向上する。
また、実施の形態1〜3の各ルックアップテーブルメモリ7において、保存する制御量や制御補正量は、線形特性をもつようにしているが、有効データのビット位置を確認することにより制御量や制御補正量を決定するものであれば、これに限定されるものではなく、制御量や制御補正量が非線形特性をもつようにして、柔軟な制御応答が確保できるようにすることも可能である。
上記の実施の形態1〜3に示した本発明の電源制御装置は、例えば負荷が発光光源である場合に好適に使用することができる。
前記のとおり、実施の形態1〜3では、目標値と検出値の偏差を算出し、偏差の有効データの上位1桁のビット位置に対応する制御量もしくは制御補正量をルックアップテーブルメモリ7から読み出して制御量を決定しているので、従来のPI制御に比べるとやや粗い制御になる傾向があるのは否めない。
しかし、負荷が発光光源である場合には、制御の粗さはフリッカ(光のチラツキ)として顕在化するが、一般的に人間がフリッカと認識できる周波数は、50Hz〜60Hzであり、これ以上の制御応答性があれば人間の視覚では認識できないため問題とならない。
したがって、発光光源を負荷とするものに対して、本発明の電源制御装置を適用した場合は、有効な制御が可能であり、しかも、乗算処理を必要とせず、かつ、少ないメモリ容量で構成できるため、安価な制御ICを選択使用することができる。
また、負荷が発光光源の場合に限らず、その他の負荷、例えばモータ等において上記の制御の粗さが許容できる場合においては、インバータやDC/DCコンバータ等の電源回路にも安価な制御ICを使用して適用することができる。
1 電源回路、2 制御IC、3 AD変換部、4 演算部、5 ビット確認部、
6 メモリ読出部、7 ルックアップテーブルメモリ、14 制御量算出部、
21 積分制御量算出部。

Claims (7)

  1. 予め設定された目標値と制御対象となる電源回路からフィードバックされたAD変換後の電圧や電流の検出値との偏差を算出する演算部と、
    上記演算部で算出された偏差の2進数データの正負判定を行うとともに、上記2進数データについて上位ビットから順にその有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位1桁のビット位置、または、有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置を確認するビット確認部と、
    上記ビット確認部で確認される有効データの存在する最上位1桁、または有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置に対応して一意に決定される制御量が予め格納されているメモリと、
    上記ビット確認部で確認された有効データの存在する最上位1桁のビット位置、または有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置に対応する制御量を上記メモリから読み出すメモリ読出部と、を備え、
    上記制御量で上記電源回路を制御する電源制御装置。
  2. 上記メモリに予め格納されている制御量は、上記偏差の有効データの存在する桁数に応じて非線形となるように設定されている請求項1に記載の電源制御装置。
  3. 予め設定された目標値と制御対象となる電源回路からフィードバックされたAD変換後の電圧や電流の検出値との偏差を算出する演算部と、
    上記演算部で算出された偏差の2進数データの正負判定を行うとともに、上記2進数データの絶対値を求め、この絶対値の上位ビットから順に有効データの“1”が存在する最上位1桁のビット位置、または有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置を確認するビット確認部と、
    上記ビット確認部で確認される偏差の有効データの最上位1桁のビット位置、または有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置の桁数に対応して一意に決定される制御補正量が予め格納されたメモリと、
    2進数データの絶対値の有効データの存在する最上位1桁のビット位置、または有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置に基づいて上記メモリから制御補正量を読み出すメモリ読出部と、を備えるとともに、
    基本制御量に対して、上記ビット確認部で確認された偏差の2進数データの正負判定結果に応じて、上記メモリ読出部から読み出された制御補正量を加減算して制御量とする制御量算出部を有する電源制御装置。
  4. 上記メモリに予め格納されている制御補正量は、上記偏差の有効データの存在する桁数に応じて非線形となるように設定されている請求項3に記載の電源制御装置。
  5. 上記ビット確認部による偏差の正負判定結果に基づき、偏差が正の場合には既存の積分制御量にN(Nは整数)を加算し、偏差が負の場合には既存の積分制御量にN(Nは整数)を減算し、その加減算の結果を新たな積分制御量として算出する積分制御量算出部と、
    上記メモリ読出部により上記メモリから読み出される制御量を比例制御量とし、この比例制御量に上記積分制御量算出部で算出された積分制御量を加算して制御量とする制御量算出部と、
    を備える請求項1または請求項2に記載の電源制御装置。
  6. 上記ビット確認部による偏差の正負判定結果に基づき、偏差が正の場合には既存の積分制御量にN(Nは整数)を加算し、偏差が負の場合には既存の積分制御量にN(Nは整数)を減算し、その加減算の結果を新たな積分制御量として算出する積分制御量算出部を備え、
    上記制御量算出部は、上記基本制御量に対して上記ビット確認部で確認された偏差の2進数データの正負判定結果に応じて、上記メモリ読出部から読み出された制御補正量を加減算して得られる制御量を比例制御量とし、この比例制御量に上記積分制御量算出部で算出された積分制御量を加算して制御量とするものである請求項3または請求項4に記載の電源制御装置。
  7. 上記積分制御量に対して加減算する上記Nの値は、上記偏差の有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位1桁のビット位置、または有効データの“1”もしくは“0”が存在する最上位の桁から下位側に複数桁にわたるビット位置に応じて変更されるものである請求項5または請求項6に記載の電源制御装置。
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