JP5297878B2 - 沸騰水型原子炉の気水分離器 - Google Patents

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Description

本発明は、沸騰水型原子炉において炉心から流出した水と蒸気の混合流を水,蒸気それぞれに分離するために原子炉圧力容器内に配置される気水分離器に関する。
発電用途に用いられる沸騰水型原子炉は原子炉圧力容器を有し、その内部に複数の燃料集合体が装荷された炉心が配置されている。沸騰水型原子炉においては、ポンプ或いは自然循環力を利用して炉心下端面よりサブクール水として炉心に流入させた冷却材を、炉心内の核燃料の発熱によって加熱させて沸騰させる。この沸騰によって冷却水の一部が蒸気となるため、炉心上端面から流出する冷却材の流れは水と蒸気の混合流となる。
原子炉圧力容器内の炉心の上方には、多数の気水分離器及び蒸気乾燥器がスタンドパイプを介して炉心のシュラウドヘッド上に配置されている。気水分離器は、炉心から流出した水と蒸気の混合流をシュラウドヘッド内からスタンドパイプを通じて受け入れて分離し、分離した蒸気を原子炉圧力容器内で気水分離器の上方に配備されている蒸気乾燥器へと供給する。
蒸気乾燥器では、気水分離器から供給された蒸気に微小液滴などの形でごく僅かに含まれる湿分をさらに除去して乾燥させる。蒸気乾燥器を通過した乾燥蒸気は、原子炉圧力容器から主蒸気配管を介して発電機用タービンに供給される。
タービンに供給される乾燥蒸気が十分に乾燥していないと、液滴の衝突などによってタービン翼の損傷を引き起こす可能性がある。このため、蒸気乾燥器通過後の蒸気の湿分は一定値以下に制限する必要がある。このため、蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分も前記の制限値と蒸気乾燥器の除湿性能から決まる値で制限される。従って、気水分離器の気水分離性能への要求の一つは、蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分が前記の理由により決まる制限値以下とできることである。
現行の改良型沸騰水型原子炉で採用されている気水分離器では、水と蒸気の密度差を利用した遠心分離方式を用いている。具体的には、炉心からの水と蒸気の混合流を垂直円筒の下端から流入させたのち、スワラーと呼ばれる旋回羽根を持つ構造物で円筒の中心軸位置を中心軸とする旋回流とする(例えば、特許文献1参照)。密度が蒸気と比べて大きな水は、旋回による遠心力で円筒内壁に付着して液膜流を形成する。一方、蒸気は円筒の中心軸付近を上昇していく。
円筒内壁上に形成された液膜流は、高さ方向複数ヶ所で円筒内壁面付近の流れのみが流入できる排出専用の流路に選択的に流入して気水分離器外部に排出され、円筒上端からは円筒内壁に付着しなかった水を液滴の形で同伴した蒸気のみが流出する。
水と蒸気の混合流に与える旋回力を大きくする、すなわち回転の周方向速度を大きくした方が水に働く遠心力は大きくなるため、気水分離器から流出する蒸気の湿分は旋回力が大きい方が基本的に低くなる。しかし、旋回力を与えるスワラーなどの構造物は流動抵抗体ともなるため、強い旋回力を与えようとすると気水分離器通過時の流動抵抗も大きくなるのが一般的である。
気水分離器の流動抵抗の増加は、冷却材再循環ポンプの揚程の増大などを招くため望ましくない。このため、原子炉の定格運転条件近傍で排出蒸気の湿分が所定の制限値以下とできる範囲で、水と蒸気の混合流に与える旋回力を抑えたスワラーの形状や寸法を選んで気水分離器の流動抵抗を抑えるのが一般的である。
さらに一歩進め、炉心の径方向出力分布に依存して水と蒸気の混合流の流量や蒸気の流量割合に径方向分布があることに着目し、径方向位置毎にスワラー形状や寸法が異なる気水分離器を配置する技術がある(例えば、特許文献2参照)。
また、蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分は気水分離器外部の流動状況にも影響を受ける。
旋回によって円筒内壁に付着、液膜を形成した水は、前記のように排出専用の流路へ誘導されて気水分離器外部に排出される。このとき、原子炉の運転条件によっては排出される水が気泡などの形で蒸気を同伴する場合がある。
水とともに気水分離器外へ排出された蒸気は、気水分離器間の空間を上昇し、蒸気乾燥器に流入する。気水分離器外部を上昇する蒸気も様々な原因によって液滴を同伴し得るため、蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分量は、気水分離器上端から流出した蒸気の湿分量と気水分離器外部を上昇してきた蒸気の湿分量との和となる。気水分離器外部を上昇する蒸気の湿分を除去する技術として、気水分離器間の隙間を覆う液滴捕獲リングを設けたものがある(例えば、特許文献3参照)。
また、気水分離器の内筒にトレイを螺旋状に装備し、そのトレイに内筒からの分離水(排水)を受けさせて分離水が垂直降下するに比べて流速が緩やかになるようにして自由液面まで導くものもある(例えば、特許文献4参照)。
特開2001−183489号公報 特開平10−197678号公報 特開平8−179077号公報 実開昭60−60507号公報
上記液滴保護リングを採用した特許文献3においては、上段側の気水分離器の排水口から排水された水が液滴保護リングに到達して気水分離器の外側を上昇する蒸気の通気抵抗となる。その上、排水口から直接あるいは液滴保護リングから排水が水面に落下あるいは上昇流に同伴されて大小さまざまな粒径の液滴を発生させる。上昇蒸気に同伴された粒径の小さい液滴を液滴保護リングで捕捉しようとすると、液滴保護リングの密度が大きくなり一層蒸気の通気抵抗が大きくなる傾向を示す懸念がある。
また、気水分離器の内筒に螺旋状のトレイを装備した特許文献4においては、トレイで分離水を自由液面へ誘導するため、気水分離器の外筒は極端に短く、自由液面よりもはるかに上方に外筒の下端部が位置し、外筒の下端は水没しないため、気水分離器の第1段目の排水口は自由液面下に水没しない。
これに対して現行の気水分離器のように、第1段目の排水口出口を水没させることによる作用の一つは、出口圧力を一定に保つことで排水流路の入口と出口間の差圧を一定に保ち、排水路内部を通過する排水の流量を時間的に安定させることである。これは、多段構成の気水分離器において排水流量が大きい第1段目の内筒外壁と外筒内壁とで形成される排水流路の排水口を、自由液面より上に設けることは望ましくない。
特許文献4の実施例では外筒を短くしたために排水流路の出口は自由液面より上に開口している。かかる構造では、分離水の流量に変動が発生した場合、排水路の出口圧力も変動し、安定した排水が阻害される可能性がある。排水流量が時間的に変動して排水の流れが蒸気を含んだ間欠的なものとなると、排水口で水の一部が蒸気に同伴されてキャリーオーバーとなるため、現行の気水分離器よりもキャリーオーバーが増える可能性がある。すなわち、特許文献4の構成でも、キャリーオーバー低減には寄与しないものと推察される。さらには、特許文献4の気水分離器は上段の気水分離部(コルゲートセパレータ)からの分離水の排水が外筒に接して減速降下せず直接的に周囲の自由液面にほぼ垂直に落下して上昇蒸気による液滴の同伴を促進することでキャリーオーバーが増える可能性もあり、このような観点からでも、特許文献4の構成は、キャリーオーバー低減に寄与しない可能性が高いと推察される。
したがって、現行の沸騰水型原子炉の気水分離器は、一般的には、図2のように、気水分離器の周囲に液滴保護リングが無く、且つ気水分離器の第1段排水口が自由液面下に水没できる構成の気水分離器が採用されている。その現行の気水分離器について考察した結果、以下のような気水分離器外周囲での液滴発生およびその液滴の上昇蒸気による蒸気乾燥器側への同伴機構が明らかとなった。
その同伴機構とは以下のとおりであるが、まずは気水分離器内外の水及び蒸気の流動挙動について、図2を参照して簡単に説明する。原子炉の炉心より上方へ流出した水と蒸気の混合流はスタンドパイプ17に上向きに流入し、ディフューザ12内に設けたスワラー11で旋回流31となる。
旋回に伴う遠心力によって、水と蒸気の混合流のうち蒸気より密度の大きな水の大部分はまず第1段内筒13a内壁面上に付着して液膜を形成する。第1段内筒13a内壁面上を上昇した液膜の大部分は、第1段ピックオフリング15aによって選択的に第1段排水流路19aに誘導される。第1段排水流路19aに誘導された水はそのまま下向きに流れ、自由液面21より低い位置に設けられた第1段排水口16aより排水される。ただし、第1段排水路19aを流下する水は気泡26a,26bなどの形で若干の蒸気を同伴する。
第1段排水口16aから流出したこの同伴蒸気気泡の一部の気泡26bは水とともに流下するが、残りの気泡26aは原子炉圧力容器内の水の自由液面21まで上昇し、気水分離器外部での上昇蒸気流形成の原因の一つとなる。
一方、第1段内筒13a内で旋回流によって第1段内筒13a内壁面上に付着しなかった水は液滴27として蒸気に同伴され、第1段ピックオフリング15aの内側を通過して第2段内筒13bに流入する。また、第1段ピックオフリング15aによって第1段排水流路19aに誘導されなかった液膜も第2段内筒13bに流入する。
スワラー11で水と蒸気の混合流に与えられた旋回力はスワラー11からの流れ方向距離が長くなるとともに減衰するが、第2段内筒13b内でも旋回力は水と蒸気の混合流に作用して気水分離に有効に作用する。このため、蒸気に同伴された液滴27の一部は第2内筒13b内壁面上を上昇する液膜に付着する。第2段内筒13b内壁面上を第2段ピックオフリング15b高さまで上昇した液膜は、ほぼ全量が第2段排水流路19bに誘導され、第2段排水口16bから気水分離器外部へ排出される。
ここで、第2段内筒13bから排出される水量は第1段内筒13aから排出される水量よりも少ないことなどが原因で、水とともに第2段排水口16bから排出される蒸気量は第1段排水口16aから排出される蒸気量よりも多くなり易い。第2段排水口16bから排出された蒸気も気水分離器外部を上昇していく。第3段内筒13c内には第2段ピックオフリング15b内側を通過しての液膜の流入はほぼ無いとみなせ、実質的に液滴27を同伴した蒸気のみが流入する。
気水分離器内を上昇する蒸気中の同伴液滴27の一部は旋回力や蒸気流の乱れによってさらに第3段内筒13c内壁面上に付着し、第3段排水流路19cを介して第3段排水口16cから排出される。排出される水量は第2段排水口16bからの排出水量よりもさらに少なく、水とともに排出される蒸気量は第2段排水口16bからの場合と同様に第1段排水口16aからの排出蒸気量よりも多くなり易い。
第3段排水口16cから排出された蒸気も気水分離器外部を上昇していく。一方、第3段内筒13c内でも壁面上に付着しなかった液滴27は、蒸気とともに第3段ピックオフリング15cの内側を通って気水分離器外部に排出され、気水分離器外部を上昇してきた蒸気の同伴液滴27とともに蒸気乾燥器入口に到達する。
続いて、気水分離器外部での蒸気への液滴同伴の発生機構について図2を用いて簡単に説明する。液滴同伴の発生機構として、図2中にA乃至Dに示す4つの液滴同伴の発生機構が挙げられる。液滴同伴の発生機構Aは、上昇蒸気流が外筒14外壁面上を流下する液膜28の一部を巻き上げたり、液膜28表面に発生した波の先端を引きちぎったりする際に発生した液滴27をそのまま同伴するものである。
この液滴同伴の発生機構Aによる蒸気流の液滴同伴発生は液膜28の厚みが大きいほど発生し易い。このため、流下液膜の流量が大きくなる第1段外筒14a外壁面上で最も発生し易く、基本的に液膜28が形成されない第3段外筒14c外壁面上では発生しない。
液滴同伴の発生機構Bは、第1段外筒14a外壁面上を流下してきた液膜28が原子炉圧力容器内の水の自由液面21に達した際に、自由液面21との衝突や周囲蒸気の巻き込みなどによって自由液面21を波立たせ、波立ちとともに発生した液滴27の一部が自由液面21近傍の蒸気に同伴されるものである。自由液面21の波立ちや蒸気の巻き込みの程度は液膜28の流量よりも流下速度に強く支配される。
液滴同伴の発生機構Cは、第2段乃至第3段排水流路19b,19cを流下してきた水の一部が、それぞれの排水口16b,16c付近で同じ経路で排出される蒸気に液滴27として同伴されるものである。
液滴同伴の発生機構Dは、第1段排水口16aから自由液面21下に水とともに排出された蒸気気泡26aが上昇し、自由液面21ではじけた際に発生した液滴を同伴して蒸気が上昇していくというものである。
このような水と蒸気の混合流の気水分離に旋回力を利用する気水分離器では、一般的に旋回流の周方向速度を大きくすることで気水分離器内部での気水分離効率を上げることができる。しかし、その混合流を旋回させる旋回羽根を持つスワラーは流動抵抗ともなる。
旋回力を与えるということは混合流の流れの向きを強制的に変えることであるため、一般的に旋回力を大きくできるスワラー構造ほど流れの向きを変えることになり流動抵抗は大きくなる。
改良型沸騰水型原子炉の現行気水分離器では、定格運転条件における水と蒸気の混合流の流入流量や蒸気の流量割合を含む広い流動条件範囲で所定の気水分離効率が得られるスワラー形状及び寸法の組み合わせが選ばれている。このように現行の気水分離器のスワラー設計は気水分離効率についてロバスト性が高く、原子炉の形式や炉心熱出力の変更に対して使用本数や配置の変更だけで対応できている。他方、気水分離器の流動抵抗はあくまで小さいことが望ましいが、スワラー設計の変更による流動抵抗の低減と前記のロバスト性の高い気水分離効率性能の維持や性能向上との両立は一般的に極めて困難である。
ところで、気水分離器の気水分離性能への要求は、その下流に設けられている蒸気乾燥器入口に流入する蒸気の湿分の制限値で決まる。加えて、蒸気乾燥器入口での湿分は主に気水分離器のスワラー設計で決まる気水分離器内の気水分離効率だけでなく、気水分離器外部を上昇していく蒸気の同伴液滴量も影響することが実験的に分かっている。
従って、気水分離器外部を上昇していく蒸気の同伴液滴量を低減できれば、スワラー設計の変更を伴うことなく蒸気乾燥器の入口での湿分が低減できる。この場合、気水分離器の流動抵抗は低減できないが、現行気水分離器の持つ気水分離性能のロバスト性を損ねることがない。また、スワラー設計を変更して流動抵抗を低減して気水分離器内部での気水分離効率が下がっても、その効率の低下幅が、気水分離器外部を上昇していく蒸気の同伴液滴量低減相当分以下であれば蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分の制限値は満足できる。
本発明の目的は、沸騰水型原子炉における気水分離器外部を上昇する蒸気への液滴の同伴を抑制して蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分を低減することで、気水分離器内部の構造や寸法,蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分の制限値を変えることなく原子炉の運転条件範囲を拡大可能、或いは蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分の制限値を変えることなくスワラーの流動抵抗を低減可能な気水分離器を提供することである。
本発明の目的は、
スワラーによって旋回力を与えられた後の気液混合流体を通す内筒と、
前記内筒の外周囲に配備されて前記内筒との間に排水流路を形成する外筒と、
前記内筒内壁面の液膜流を前記排水流路に誘導するピックオフリングと環状板との組立体と、
前記排水流路の排水口と、を有する気液分離部を上下に直列多段に備え、
前記多段の内の最下段の前記排水口が原子炉定格運転時の原子炉圧力容器内の自由液面下に水没できる配置で備わる沸騰水型原子炉の気水分離器において、
前記外筒の外周囲に、前記排水口から前記外筒外面上に沿って流れ落ちる前記液膜流を受ける面を有する液膜流ガイドを前記面が傾斜するように螺旋状に装備してあることを特徴とした沸騰水型原子炉の気水分離器によって達成される。
このような沸騰水型原子炉の気水分離器では、記述の液滴同伴の発生機構A,Bの成立要件を抑制することができ、上昇蒸気への液滴の同伴(キャリーオーバー)の発生を抑制できる。
本発明によれば、気水分離器内部の構造や寸法を変更することなく、蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分を低減できる。このため、スワラーなどの気水分離器内構造物の設計を変更することなく原子炉の運転条件範囲を拡大、或いは蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分の制限値を変えることなく気水分離器内の流動抵抗を低減できる。
本発明の実施例1である気水分離器の外観を示す鳥瞰図である。 現行気水分離器の構造と気水分離器外部での蒸気への液滴同伴発生機構を示す模式図である。 本発明の実施例1である気水分離器外筒外壁面近傍の蒸気及び液膜の流れの向きを示す模式図である。 沸騰水型原子炉内に配置された気水分離器の気水分離性能の特性を模式的に示すグラフである。 本発明の実施例2である気水分離器の外観を示す鳥瞰図である。 本発明の実施例3である気水分離器の一部を切断して示す鳥瞰図である。 図5のA−A′矢視による第2段外筒の断面図である。 図5の第2段外筒の変形例をA−A′矢視にて表した第2段外筒の断面図である。 沸騰水型原子炉の縦断面を右側半分で示した図である。
沸騰水型原子炉の気水分離器に本発明を採用した実施例では、気水分離器は以下の構成を備える。すなわち、その気水分離器は各環状板を各段の境に下方から第1段,第2段,第3段の上下直列3段の第1,第2,第3気水分離部を備える構成を有する。
気水分離器の内部構成は図2の現行の気水分離器と同じである。すなわち、円筒状の第1段内筒と、この第1段内筒の上端に配置した第1段ピックオフリング及び第1段環状板と、第1段内筒の外部を取り囲むように配置した第1段外筒とで第1段気水分離部を構成し、円筒状のスタンドパイプの上端に流路面積を拡大するディフューザを接続し、このディフューザの上端に第1段内筒を接続し、ハブと複数の旋回羽根で構成されるスワラーにより気液混合流に旋回力を与え、旋回に伴う遠心力で分離された液体で第1段内筒の内壁面上に液膜流を形成させて、第1段ピックオフリング、第1段環状板で液膜流を第1段排水流路内に誘導して、第1段排水流路の液膜流を第1段排水口から原子炉圧力容器内の水中に排水する。
さらに第1段気水分離部の第1段環状板の上方に設けた円筒状の第2段内筒と、この第2段内筒の上端に配置した第2段ピックオフリング及び第2段環状板と、第2段内筒の外部を取り囲むように配置した第2段外筒とで第2段気水分離部を構成し、旋回に伴う遠心力で分離された液体で第2段内筒の内壁面上に液膜流を形成させて、第2段ピックオフリング,第2段環状板で液膜流を第2段排水流路内に誘導して、第2段排水流路の液膜流を第2段排水口から原子炉圧力容器内の水中に排水し、さらに第2段気水分離部の第2段環状板の上方に設けた円筒状の第3段内筒と、この第3段内筒の上端に配置した第3段ピックオフリング及び第3段環状板と、第3段内筒の外部を取り囲むように配置した第3段外筒とで第3段気水分離部を構成し、旋回に伴う遠心力や上昇蒸気流の流れの乱れにより分離された液体で第2段内筒の内壁面上に液膜流を形成させて、第3段ピックオフリング,第3段環状板で液膜流を第3段排水流路内に誘導して、第3段排水流路の液膜流を第3段排水口から原子炉圧力容器内の水中に排水し、乾燥した蒸気が第3段ピックオフリングから上方外部へ抜け出て蒸気乾燥器内に供給される。
このような現行のものと同じ内部構成を有する気水分離器の第1段外筒と第2段外筒の各外壁面には液膜流ガイドとして板状の凸状部を、外筒の半径方向に突き出し、さらに螺旋状配置して取り付けられる。これにより、外筒に沿って流れ落ちる液膜流を凸状部の上方斜めへ向いた板面が受け止めて螺旋の斜めの傾斜に沿って降下速度緩やかに液膜流を原子炉圧力容器内の水の自由液面に誘導する。さらには、気水分離器の外筒に沿って上昇する蒸気流を、凸状部の下方斜めに向いた板面が受け止めて斜め上方へ誘導して、液膜流の水が上昇蒸気に同伴されることを抑制する。
その板状の凸状部は、第1段外筒にだけ取り付けることであっても、上記と同様に、降下速度緩やかに液膜流を原子炉圧力容器内の水の自由液面に誘導することや、上昇する蒸気流を、凸状部の下方斜めに向いた板面が受け止めて斜め上方へ誘導して、液膜流の水が上昇蒸気に同伴されることを抑制することが可能である。
第3段外筒の外壁面には何も構成を付加しておらず現行の構成と同じである。また、板状の凸状部は、凹状部に置き換えてもよい。具体的には、第1段外筒と第2段外筒の外壁面に外壁沿いに流下する排水後の液膜流を受ける面が生じるように形成した溝、あるいはその溝の上斜めの一面を外筒の半径方向へ延長した板状の凸状部を、螺旋状にして設ける。
このような着換え構成の液膜流ガイドによっても、外筒の外壁面に沿って流下する液膜流を溝等の液膜流ガイドの上斜め向きの面が受け止めて螺旋の斜めの傾斜に沿って降下速度緩やかに液膜流を原子炉圧力容器内の水の自由液面に誘導する。さらには、気水分離器の外筒に沿って上昇する蒸気流を、凸状部の下方斜めに向いた板面が受け止めて斜め上方へ誘導して、液膜流の水が上昇蒸気に同伴されることを抑制する。
この場合にも、着換え構成の液膜流ガイドは少なくとも第1段外筒に装備されればよい。さらには、着換え構成の液膜流ガイドを第2段外筒に、板状の凸状部を有する液膜流ガイドを第1段外筒に装備、あるいはその逆に装備することであってもよい。
特に、溝を用いた液膜流ガイドは、半径方向への突き出しが無いか抑制できるので、気液分離装置の外側を上昇する蒸気流の流動抵抗になり難いよさがある。
また、第1段外壁に装備される液膜流ガイドは、原子炉運転時における原子炉圧力容器内の水の液面よりも下方に下端が到達するように配慮することにより、排水された液膜の液面への突入も穏やかとなり、蒸気による液滴の同伴が良く抑制できる。
このようにして、原子炉圧力容器内の自由液面よりも上の気水分離器外部での蒸気流への液滴の同伴の発生、すなわち蒸気の湿分増加の原因として挙げられる、外筒外壁面上を流下していく液膜の一部が、逆向きに流れる上昇蒸気との摩擦力によって引きちぎられ、液滴となって蒸気に同伴される場合と、第1段外筒の外壁面上を流下してきた液膜が自由液面に流れ込む際に自由液面を乱し、その際に発生した液滴が自由液面付近の蒸気流に同伴される場合とにおける上昇蒸気への液滴の同伴発生機構が抑制できる。
沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器30内には、図9のように、シュラウド31で囲われた炉心32と、その上方のシュラウドヘッド33と、シュラウドヘッド33に設置された気水分離器34と、気水分離器34の上方に配備された蒸気乾燥器35とが内蔵されている。
その原子炉圧力容器30内には冷却材として水(軽水)が自由液面21を持つようにして入れられている。その水はインターナルポンプ36によってダウンカマ37から矢印40のように炉心32内へ供給されて、炉心32で加熱され、そこで蒸気と液体との気液二層混合流が発生する。その混合流はシュラウドヘッド33内へ上昇して、シュラウドヘッド33から各気水分離器34へと分配され気液分離作用を受ける。気液分離後の蒸気は上昇して蒸気乾燥器35に流入して乾燥蒸気として原子炉圧力容器30の上部空間に抜け出て主蒸気ノズル38から発電機を駆動するための蒸気タービンへ供給され駆動蒸気として使用される。使用後の蒸気は凝縮されて、給水ノズル39から原子炉圧力容器30内に戻される。
その気水分離器34は、シュラウドヘッド33上にシュラウドヘッド33内と連通するように設置されたスタンドパイプ17の上端に連通接続されている。気水分離器34は、前述のように、各環状板20a,20b,20cを各段の境に下方から第1段,第2段,第3段の上下直列3段の第1,第2,第3気水分離部を備える構成を有する。
スワラー11などの気水分離器の内部の構造や寸法は改良型沸騰水型原子炉で現行使用されている図2に沿って記述した気水分離器と同一である。
まず気水分離器の内部の水及び蒸気の流動挙動について説明する。炉心より流出した水と蒸気の混合流はスタンドパイプ17に上向きに流入し、ディフューザ12内に設けたスワラー11で旋回流31となる。旋回に伴う遠心力によって、蒸気より密度の大きな水の大部分はまず第1段内筒13a内壁面上に付着して液膜を形成する。
第1段内筒13a内壁面上を上昇した液膜の大部分は、第1段ピックオフリング15aと第1段環状板20aによって選択的に第1段排水流路19aに誘導される。第1段排水流路19aに誘導された水はそのまま下向きに流れ、原子炉圧力容器内の水の自由液面21より低い位置に設けられた第1段排水口16aより排水される。ただし、第1段排水路19aを流下する水は気泡26a,26bなどの形で若干の蒸気を同伴する。第1段排水口16aから流出したこの同伴蒸気気泡の一部の気泡26bは水とともに流下するが、残りの気泡26aは自由液面21まで上昇し、気水分離器外部での上昇蒸気流形成の原因の一つとなる。
一方、第1段内筒13a内で旋回流によって第1段内筒13a内壁面上に付着しなかった水は液滴27として蒸気に同伴され、第1段ピックオフリング15aの内側を上方へ通過して第2段内筒13bに流入する。また、第1段ピックオフリング15aによって第1段排水流路19aに誘導されなかった液膜も第2段内筒13bに流入する。
スワラー11で与えられた旋回力はスワラー11からの流れ方向の距離の増大とともに減衰するが、第2段内筒13b内でも旋回力は気水分離に有効である。このため、蒸気に同伴された液滴27の一部は第2段内筒13b内壁面上を上昇する液膜に付着する。第2段内筒13b内壁面上を第2段ピックオフリング15b高さまで上昇して第2段環状板20bに上昇を妨げられた液膜流れは、ほぼ全量が第2段排水流路19bに誘導され、第2段排水口16bから気水分離器外部へ排出される。
ここで、第2段内筒13bから排出される水量は第1段内筒13aから排出される水量よりも少ないことなどが原因で、水とともに第2段排水口16bから排出される蒸気量は第1段排水口16aから排出される蒸気量よりも大きくなり易い。第2段排水口16bから排出された蒸気も気水分離器外部を上昇していく。
さらに蒸気は第2段ピックオフリング15bから上方の第3段内筒13c内に入るが、第2段ピックオフリング15b内側を通過しての液膜の流入はほぼ無いとみなせ、実質的に液滴27を同伴した蒸気のみが流入する。蒸気中の同伴液滴27の一部は旋回力や蒸気流の乱れによってさらに第3段内筒13c内壁面上に付着し、第3段ピックオフリング15cと第3段環状板20cとに誘導されて第3段排水流路19c内に入り、その第3段排水流路19cの第3段排水口16cから排出される。排出される水量は第2段排水口16bからの排出水量よりもさらに小さく、水とともに排出される蒸気量は第2段排水口16bからの場合と同様に第1段排水口16aからの排出蒸気量よりも大きくなり易い。第3段排水口16cから排出された蒸気も気水分離器外部を上昇していく。
一方、第3段内筒13c内でも壁面上に付着しなかった液滴27は、蒸気とともに第3段ピックオフリング15cの内側を通って上部排出口18から気水分離器外部に排出され、気水分離器外部を上昇してきた蒸気及びその蒸気に同伴された液滴27とともに蒸気乾燥器入口に到達する。
このような現行の沸騰水型原子炉の気水分離器の外周囲に、図1,図3のように液膜流ガイド1が装備される。実施例1の気水分離器は記述のように上下直列3段の気水分離部を持ち、鉛直方向3ヶ所に第1段排水口16a,第2段排水口16b及び第3段排水口16cが設けられている。そして、第1段外筒14a及び第2段外筒14bの外壁面上には、液膜流ガイド1として高さ方向に螺旋を描くように板状の凸部1a,1bが周方向に等間隔にそれぞれ4本設置されている。第2段外筒14b外壁面上に設置したそれぞれの板状の凸部1bは、第2段外筒14b上端と下端との間で第2段外筒14bの外壁面上を周方向に1/4周するように配置されている。
一方、第1段外筒14a外壁面上に設置したそれぞれの板状の凸部1aは、第1段外筒14a上端から原子炉の定格運転条件時に原子炉圧力容器内に形成される自由液面高さ21の間で第1段外筒14a外壁面上を周方向に1/4周するように配置され、かつ、その下端の高さは原子炉定格運転時の原子炉圧力容器内の水の自由液面21よりも下方としている。
また、第1段外筒14a外壁面上に設けた凸部1aの上端と第2段外筒14b外壁上に設けた板状の凸部1bの下端の周方向位置は一致させてある。
気水分離器の各排水口から流出した液膜流は、各外筒沿いに流下し、凸部1aの斜め上方向に向いた面に受け止められ、螺旋状に降下誘導され、その降下速度が垂直降下に比べて緩やかになる。その一方で、気水分離器の外周囲で下方から各外筒沿いに上昇してきた蒸気流は凸部1aの斜め下向きの面に受け止められ、螺旋降下する液膜流との強い勢力状態での干渉がさけられる。
さらに説明すれば、本発明の実施例1は、前述の蒸気による液滴同伴発生機構A乃至Dに示した気水分離器外部での蒸気への液滴同伴の発生のうち、A及びBで示した発生機構での液滴の蒸気への同伴を抑制することで、気水分離器外部を上昇してきた蒸気の蒸気乾燥器入口での湿分を低減するものである。
図1に示す実施例1における板状の凸部1a,1bが、第1段外筒14a及び第2段外筒14bの外壁面近傍の蒸気と液膜の流れに与える効果を図3を用いて説明する。図3は、第1段乃至第3段外筒14a,14b,14cの外壁面を周方向に展開して示す図で、図中のX及びYで示す一点鎖線の位置は実際には周方向の同じ位置となる。図中の実線矢印は第2段排水口16b及び第3段排水口16cから流出し、液膜流として第1段外筒14a及び第2段外筒14bの外壁面上を流下する水の流れを表す。
破線矢印は、第1段乃至第3段外筒14a,14b,14cの外壁面付近を上昇する蒸気の流れを表す。第3段排水口16cから流出した水は、重力によって第2段外筒14b外壁面上を流下するが、やがて第2段外筒14b外壁面上に設置された板状の凸部1bに達する。凸部1bに達した水は、図中の実線矢印で示すように凸部1bの斜め上向き面3上に沿って斜め下向きに流下していく。
一方、現行の構造の気水分離器では流下液膜28に直接接して上昇していた蒸気流は、第2段外筒14b外壁面上に設置された板状の凸部1bの斜め下向き面4に衝突する。蒸気流にとって板状の凸部1bが流動抵抗となるため、まず第2段外筒14b外壁面付近の上昇速度は低下する。さらに、蒸気が第2段外筒14b外壁面に沿って上昇する際も、速度が相対的に速い領域は図中に破線矢印で示す板状の凸部1bの斜め下向き面4に沿った一部の領域とできる。
このように第2段外筒14b外壁面付近で蒸気が主に上昇する領域と液膜28が主に流下する領域を分けることで、流下液膜28が高速な上昇蒸気流に直接さらされることがなくなる。これにより、上昇上気流が外筒14外壁面上を流下する液膜28の一部を巻き上げたり、液膜28表面に発生した波の先端を引きちぎったりする際に発生した液滴をそのまま同伴するという、図2中の同伴発生機構Aで示した機構による上昇蒸気への液滴27の同伴発生を大幅に抑制できる。
この効果は、第1段外筒14a外壁面上に設けた板状の凸部1aにおいても同様である。図1に示す実施例1では、第1段外筒14a外壁面上に設置した板状の凸部1aの下端の高さを自由液面21よりも下方としている。このため、第1段外筒14a外壁面上を流下する水は板状の凸部1aの斜め上向き面3に沿って流れたまま自由液面21に達する。
自由液面21に達した時点での流下水の速度は鉛直下向きに流下する従来構造での液膜28の速度よりも小さくなるため、自由液面21との衝突などを原因とする液滴の発生量も小さくできる。
すなわち、第1段外筒14a外壁面上を流下してきた液膜28が自由液面21に達した際に、自由液面21との衝突や周囲蒸気の巻き込みなどによって自由液面21を波立たせ、波立ちとともに発生した液滴27の一部が自由液面21近傍の蒸気に同伴されるという、図2中の液滴同伴発生機構Bで示した機構による上昇蒸気への液滴27の同伴発生を大幅に低減できる。
以上で述べた本発明の実施例1における気水分離器外部での蒸気への液滴同伴量の抑制が、気水分離器全体の気水分離性能に与える効果を図4を用いて説明する。図4は気水分離器へ流入する水と蒸気の質量流量の和が一定の条件において、クオリティが変化した場合の蒸気乾燥器入口での湿分の変化を模式的に示すグラフである。クオリティとは水と蒸気の混合流の質量流量に対する蒸気の質量流量に対する比である。
ここでグラフ横軸のクオリティの増加は、例えば原子炉の経済性を向上するために、原子炉圧力容器内の機器構成は変更せずに炉心の熱出力のみを増加させた場合に相当する。
図中の実線で示す曲線が現行気水分離器における蒸気乾燥器入口での湿分のクオリティに対する変化特性である。また、図中には破線で気水分離器内部から、一点鎖線で気水分離器外部からの湿分のクオリティに対する変化特性をそれぞれ示してある。破線及び一点鎖線で示した気水分離器内外からの湿分の和が、実線で示す気水分離器全体での蒸気乾燥器入口の湿分となっている。
図中に(II)で示すクオリティ範囲が気水分離器が適用できる最大のクオリティ範囲で、この範囲において実線で示す気水分離器全体での蒸気乾燥器入口での湿分が蒸気乾燥器入口での制限値よりも小さくなっている。特にクオリティ範囲(II)のうちでも、蒸気乾燥器入口での湿分がほぼ一定となっている範囲で実際には使用される。
クオリティが低い側の(I)の範囲で、蒸気乾燥器入口での湿分はクオリティの低下とともに急激に増加する。これは、クオリティが低いほど流入する水の流量が大きいこと、及び水と蒸気の混合物の流速が小さくなるためスワラー11による旋回力が小さくなることが重畳することが原因である。従って、クオリティ範囲(I)での蒸気乾燥器入口での湿分の増減は、図中破線で示す気水分離器内部からの湿分の増減で実質的に決まる。
一方、クオリティが高い側の(III)の範囲では蒸気乾燥器入口での湿分はクオリティの上昇とともに増加する。このクオリティ範囲での蒸気乾燥器入口での湿分の増加は、図
中一点鎖線で示す気水分離器外部からの湿分の増加によるものである。クオリティ範囲(III)ではスワラー11に与えられる旋回力は気水分離に十分であるため、気水分離器内部からの湿分はこのクオリティ範囲では増加しない。
一方、気水分離器へ流入する蒸気流量が大きくなるため、排水口16から水とともに流出する蒸気の流量も増加する。このため気水分離器外部での蒸気流の上昇速度も増加し、第1段外筒14a及び第2段外筒14bの外壁面上を流下する液膜28からの蒸気流への液滴同伴量も増加することになる。
実施例1に示す本発明における気水分離器では第1段外筒14a及び第2段外筒14bの外壁面上で流下液膜28と上昇蒸気がそれぞれ別の領域を主に流れているため、上昇蒸気速度の増加による流下液膜28からの液滴発生量増加は抑制される。その結果、主に気水分離器外部からの湿分増加によって現行構造の気水分離器では使用可能範囲外となっている図4中のクオリティ領域(III)での蒸気乾燥器入口での湿分を低減でき、気水分離器の使用可能範囲をより高クオリティ側に広げることができる。
なお、実施例1に示す気水分離器は現行構造の気水分離器の第1段外筒14a及び第2段外筒14bの外壁面上に液膜流ガイドとなる板状の凸部1a,1bを設置したもので、スワラー11形状などの気水分離器内部の構造や寸法は一切変更していない。このため、基本的に気水分離器内部の構造や寸法のみに依存する使用可能範囲の低クオリティ側の制限は変わらない。
このように、実施例1に示す本発明における気水分離器を用いれば、設計や性能の確認に多大なコストを要するスワラー11形状や寸法を変更することなく、使用可能なクオリティ条件の上限を上げることができる。このような気水分離特性を持つ気水分離器ならば、炉心の高出力化などによって炉心出口でのクオリティが高くなってもそのまま適用可能である。
また図4で示したように、気水分離器の使用可能範囲であるクオリティ範囲(II)においても、気水分離器外部から蒸気乾燥器入口に達する湿分は存在する。従って実施例1の気水分離器では、クオリティ領域(II)においても蒸気乾燥器入口での湿分は現行構造の気水分離器10よりも小さくなる。本発明によるこの気水分離性能の向上分は、蒸気乾燥器の除湿性能や気水分離器内部での気水分離性能の低下分に振り向けることができる。
先に述べた気水分離器のスワラー11設計と同様に蒸気乾燥器においても圧力損失低減と除湿性能の両立は困難であり、単なる低圧損化のための構造変更は除湿性能の低下を招くことが多い。実施例1の気水分離器と組み合わせれば、タービン入口での湿分を制限値以下としつつ、蒸気乾燥器の低圧損化が可能である。逆に蒸気乾燥器の除湿性能及び圧力損失は変更せず、蒸気乾燥器入口での湿分を現行構造の気水分離器と同等としたまま、スワラー11の形状,寸法,取付け位置などを変更して気水分離器を低圧損化することもできる。
なお図1に示す実施例1では、全ての板状の凸部1の外筒14外壁面からの外筒14径方向での高さを同等としているが、使用時のクオリティ条件や取り付ける鉛直方向位置によって変えても良い。例えば、第2段外筒14b外壁面上を流下する水は第3段排水口16cから排出されたものだけだが、第1段外筒14a外壁面上を流下する水はそれに第2段排水口16bから排出された水を加えたものとなる。
このため、流下する水の流量が大きい第1段外筒14a外壁面上の板状の凸部1aの高さの方が第2段外筒14b外壁面上の板状の凸部1bの高さより相対的に高くなっていて良い。また使用条件が現行よりも高クオリティ側で第3段排水口16cからの排水がほとんどないような場合には、板状の凸部1は第1段外筒14aの外壁面上のみに設けても良い。さらに液膜28の流れに沿った方向でも板状の凸部1の外筒14の外壁面からの外筒14径方向での高さは一定でなくとも良い。
さらに図1に示す実施例1では、加工が比較的容易という観点から液膜流ガイド1として板状の凸部1を選んだ。しかし、外筒14外壁面上で流下液膜28と高速で上昇する蒸気流を極力分離して流すとの観点からは、雨どいなどに用いられるような上向きに開口面を持つ半円形や略四角形の断面を持つ長尺部材を螺旋状に外筒14外壁面上に設けて液膜流ガイド1としても良い。
本発明の実施例2による気水分離器を図5を用いて説明する。実施例2の気水分離器は既述の実施例1と同様に上下直列3段の気水分離部を持ち、鉛直方向3ヶ所に第1段排水口16a,第2段排水口16b及び第3段排水口16cが設けられている。そして、第1段外筒14a外壁面上には、液膜流ガイドとして実施例1と同様の高さ方向に螺旋を描くように板状の凸部1aが周方向に等間隔にそれぞれ4本設置されている。
一方、第2段外筒14b外壁面上には液膜流ガイドとして水平断面内で切り欠き状の形状を持つ4本の溝2が設けられている。溝2の形状は水平断面で見ると、図7のように、第2段外筒14bを一部切り欠いて、破線で囲んだ2つの面から成る“V字”の凹みを持つ溝形状となっている。
溝2の形状については、図8のように、斜め下向き面4は第2段外筒14bの半径方向へ突き出た板状の凸部によって形成され、斜め上向き面3は第2段外筒14bを一部切り欠いて“V字”の凹みを持つ溝形状を作って形成され、斜め下向き面4の第2外筒の半径方向の突き出し長さを、斜め上向き面3の第2外筒の半径方向長さの1/2としてある。
このように実施例1のように斜め下向き面4を利用した液滴同伴発生の抑制作用を得たいが、斜め下向き面4が上昇蒸気流の流動抵抗となることを実施例1よりも軽減したい場合には、図8の溝2と板状凸部との併用構造が有効である。
これらの溝2は、第2段外筒14bの上端と下端との間で第2段外筒14bの外壁面上を周方向に1/4周するように螺旋状に配置されており、液膜流を受けて螺旋降下して流されるように斜め上向き面3を有する。また、第1段外筒14a外壁上に設けた凸部1aの上端での斜め上向き面3と第2段外筒14b外壁面上に設けた溝2の下端での斜め上向き面3の周方向位置は実質的に一致させてある。
なお、スワラー11などの気水分離器の内部の構造や寸法は、既述の実施例1と同様であり、改良型沸騰水型原子炉で現行使用されている気水分離器と同一である。
先に述べたように、第3段排水口16cからの排水量は第2段排水口16bからの排水量より小さい。このため、第2段外筒14bの外壁面に設ける液膜流ガイド構造の斜め上向き面3の外筒14外壁面からの外筒14径方向での高さは流下する液膜28の流量に合せて低いもので良い。第2段外筒14b外壁面上に設けた溝2構造は、第1段外筒14a外壁面上に設けた板状の凸部1aと違って上昇蒸気流を優先的に流すための斜め下向き面4を有しないが、斜め上向き面3が低くても良いので外筒14外壁面の切削加工、或いはプレス加工で比較的容易に形成できる利点がある。また、斜め下向き面4が無いため外筒14外壁面近傍での蒸気流の流動抵抗増加も抑制できる。同様の効果は三角形断面を有する長尺部材を螺旋状に外筒14外壁面上に設けることでも得ることができる。
本発明の実施例3による気水分離器を図6を用いて説明する。図8は実施例3における本発明の気水分離器の第2段排水口16b付近の構造を、一部を切断して示す鳥瞰図である。本実施例における気水分離器は、第1段外筒14a外壁面上に実施例1に類似した板状の凸部1aを4本設けている。
板状の凸部1aの上端は、第2段外筒14bの内壁面と第2段内筒13bの外壁面との間に形成される第2段排水流路19bの内部まで延長されている。例えば、図6に示す実施例では板状の凸部1aの上端高さから第2段排水口16b高さの間で第2段内筒13bの外壁面上を周方向にほぼ1/8周するように螺旋状に配置しているため、第2段排水流路19bを流下する水の1/2は第2段排水口16b高さまで流下してきた時点で板状の凸部1aの斜め上向き面3上にすでに集められる。
これら板状の凸部1aの斜め上向き面3に集めることができる水は、実施例1のように板状の凸部1aの上端が第2段排水口16bの下端までの場合には、第2段排水口16bから流出する際に板状の凸部1aの斜め下向き面4に沿って上昇してきた蒸気流に直接さらされて液滴として飛散する可能性がある。
本実施例における構造ならば、板状の凸部1aの斜め下向き面4に沿って上昇してきた蒸気流による第2段排水口16b近傍での液滴発生を抑制し、気水分離器10外部からの蒸気の湿分増加を防ぐことができる。
なお、一般的に排水口16の開口面積を小さくすると平均的な排水速度が大きくなる。
排水速度の増大は排水が外筒14外壁面から離脱しやすくなるため、蒸気乾燥器入口での蒸気の湿分低減の観点からは望ましくない。例えば、直接蒸気流中に排水が飛び出せば自由液面21に達するまでに蒸気流中への液滴飛散は避けられないほか、さらに液塊として自由液面21に落下した際には自由液面21を激しく乱して液滴発生を引き起こす。
しかし、本実施例のように第2段排水口16bで排水に寄与する開口範囲を限定した場合、明らかに排水のために不要となる周方向位置の開口部分は無くしても良い。排水口16の開口面積が小さくできれば外筒14の強度確保が容易となる。さらに、排水流路内で板状の凸部1aを外筒14内壁面及び内筒13外壁面と溶接などで接合すれば、気水分離器の強度自体を向上できる。その他の構成や作用は実施例1と同様である。
本発明は、沸騰水型原子炉の気水分離器に採用されることに産業上の利用可能性がある。
1a,1b 凸部
2 溝
3 斜め上向き面
4 斜め下向き面
11 スワラー
12 ディフューザ
13a 第1段内筒
13b 第2段内筒
13c 第3段内筒
14a 第1段外筒
14b 第2段外筒
14c 第3段外筒
15a 第1段ピックオフリング
15b 第2段ピックオフリング
15c 第3段ピックオフリング
16a 第1段排水口
16b 第2段排水口
16c 第3段排水口
17 スタンドパイプ
18 上部排出口
19a 第1段排水流路
19b 第2段排水流路
19c 第3段排水流路
20a 第1段環状板
20b 第2段環状板
20c 第3段環状板
21 自由液面
26a,26b 気泡
27 液滴
28 液膜

Claims (7)

  1. スワラーによって旋回力を与えられた後の気液混合流体を通す内筒と、
    前記内筒の外周囲に配備されて前記内筒との間に排水流路を形成する外筒と、
    前記内筒内壁面の液膜流を前記排水流路に誘導するピックオフリングと環状板との組立体と、
    前記排水流路の排水口と、を有する気液分離部を上下に直列多段に備え、
    前記多段の内の最下段の前記排水口が原子炉定格運転時の原子炉圧力容器内の自由液面下に水没できる配置で備わる沸騰水型原子炉の気水分離器において、
    前記外筒の外周囲に、前記排水口から前記外筒外面上に沿って流れ落ちる前記液膜流を受ける面を有する液膜流ガイドを前記面が傾斜するように螺旋状に装備してあることを特徴とした沸騰水型原子炉の気水分離器。
  2. 請求項1において、最下段の前記気液分離部の外筒に装着された前記液膜流ガイドは、下端が前記自由液面下に水没する位置に設定されていることを特徴とした沸騰水型原子炉の気水分離器。
  3. 請求項2において、隣接する各段の気液分離部の各外筒に装着された各液膜流ガイドが、相対的に上段側の液膜流ガイドの下端が、相対的に下段側の液膜流ガイドの上方に位置するように配置されていることを特徴とした沸騰水型原子炉の気水分離器。
  4. 請求項3において、前記外筒に装着される前記各液膜流ガイドは、一つの前記液膜流ガイドについて前記外筒の外周囲4分の1周囲に渡って装着され、前記外筒一筒につき4本の前記液膜流ガイドが周方向に均等配置されていることを特徴とした沸騰水型原子炉の気水分離器。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項において、最下段の前記気液分離部の外筒に装着された前記液膜流ガイドは、隣接する上段の前記気液分離部の前記排水流路内へ螺旋状にして延長されている部分を備えていることを特徴とした沸騰水型原子炉の気水分離器。
  6. 請求項1から請求項4において、前記液膜流ガイドは、前記外筒の外壁面に形成された溝か前記外筒の半径方向へ突き出た板状の凸部か、前記凸部と前記溝の併用構造を有するものであることを特徴とした沸騰水型原子炉の気水分離器。
  7. 請求項6において、最下段の前記気液分離部の外筒には前記液膜流ガイドとして前記凸部が装着され、それよりも上段の前記気液分離部の外筒には前記液膜流ガイドとして前記溝が形成されていることを特徴とした沸騰水型原子炉の気水分離器。
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