JP3964587B2 - 原子炉用気水分離器 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設置され、炉心から流出する冷却水と蒸気の混合二相流を水と蒸気に分離するための原子炉用気水分離器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般の沸騰水型原子炉においては、原子炉圧力容器内に多数の燃料集合体を装荷した炉心を有し、この炉心の上方に、炉心からの冷却材の気液二相流を水と蒸気に分離するための複数の気水分離器を設置し、これらの気水分離器の上方に水分が除去された蒸気を乾燥させるための複数の蒸気乾燥器が設置されている。乾燥された蒸気はタービンへ送られ発電機の駆動に寄与する。
【0003】
図6により改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の概略を説明する。
原子炉圧力容器1の中央部よりやや下部にシュラウド2によって包囲された多数体の燃料集合体を具備する炉心3が配置されている。この炉心3の下方には多数の制御棒案内管4が設けられ、炉心3を包囲するシュラウド2の上端開口はシュラウドヘッド5で閉塞されている。シュラウドヘッド5には気水分離器6のスタンドパイプ7が立設され、気水分離器6上には矩形平型の蒸気乾燥器8が多数設置されている。
【0004】
原子炉圧力容器1の下部には制御棒案内管4の内面をガイドとして炉心3内の十字型の制御棒を駆動する制御棒駆動機構9が設けられている。原子炉圧力容器1の内側とシュラウド2の外側との間の底部には複数台のインターナルポンプ10が設置されている。
【0005】
炉心3は多数体の燃料集合体の下部が炉心支持板11により、上部が上部格子板12によりそれぞれ支持され、全体がシュラウド2により包囲されている。原子炉圧力容器1には、蒸気乾燥器8で乾燥された蒸気をタービンへと送る主蒸気管13が接続している。
【0006】
また、原子炉圧力容器1には給水管14が接続しており、給水管14により原子炉圧力容器1内に流入した冷却材はダウンカマ15を流れ、インターナルポンプ10により強制循環される。なお、図7中符号16は原子炉圧力容器1内に冷却水を散布するための給水スパージャである。
【0007】
次に気水分離器6について図7(a),(b)及び図8を参照して説明する。図7(a)は図6に示した気水分離器6を拡大して示す縦断面図、図7(b)は図7(a)における気水分離器の旋回羽根の拡大断面図、図8は図7(a)に示す気水分離器内の冷却材の気液二相流の流れを模式的に示す図である。
【0008】
図7(a)に示すように、気水分離器6は、原子炉圧力容器1内の炉心3の直上に位置し、炉心3からの冷却材とボイドの気液二相流を上方へと通すスタンドパイプ7(ライザ管ともいう)と、このスタンドパイプ7の上方に設けられ気液二相流に旋回作用を与える旋回手段である旋回羽根17と、この旋回羽根17の上方に設けられ気液二相流の気水分離を行う気水分離手段として設けられた軸方向に通常は3段に連なる気水分離ステージ18a,18b,18cとからなっている。
【0009】
旋回羽根17は、図9に示すように、逆円錐型の中心ハブ17aの周りに複数、例えば8枚の螺旋状の傾斜翼17bを有するものである。また、気水分離ステージ18a,18b,18cは、それぞれ旋回筒19a,19b,19cと、これら旋回筒19a,19b,19cの外側に位置する外筒20a,20b,20cと、この外筒20a,20b,20cに連なり旋回筒19a,19b,19cの内側に位置するよう外筒に形成された鉤型のピックオフリング21a,21b,21c(キャッチリングともいう)とを有するものである。
【0010】
この鉤型のピックオフリング21a,21b,21cは、旋回筒19a,19b,19cの内壁面に形成される冷却材の液膜を捕捉し、旋回筒19a,19b,19cと外筒20a,20b,20cの間隙に確実に導けるようになっている。また、通常これらの気水分離ステージ18a,18b,18cは、下段に位置するものほど旋回筒及び外筒が軸方向に長く設計されているが、ピックオフリング21a,21b,21cはほぼ同じ長さである。外筒20aの内面には旋回羽根17の上面位置近傍にブレイクダウンリング22が形成されている。
【0011】
次にこの気水分離器6の作用について説明する。
沸騰水型原子炉においては、冷却材は、核分裂反応の熱により沸騰し、通常水と気体の混合した気液二相流となって、炉心3の上方に設けられた上部プレナム(図示せず)内で十分に混合される。この混合された気液二相流は、原子炉圧力容器1内に複数配置された気水分離器6に流量配分されて、スタンドパイプ7内を上昇する。
【0012】
図8に示すように、スタンドパイプ7内で冷却材は環状流と呼ばれる流動状態になっている。すなわち、スタンドパイプ7の内壁面を液膜が覆い、この液膜の内部は液滴と蒸気の気泡23が混合した流れになっている。
【0013】
スタンドパイプ7を上昇した水と蒸気の気液二相流は、スタンドパイプ7の直上の旋回羽根17の回転によって強制的に遠心力を付与されて、図7(b)に拡大して模式的に示したように、矢印方向に旋回する旋回流となる。このとき、沸騰水型原子炉の通常の運転圧力下において、冷却材の気液の密度比はおよそ1:21であるから、旋回作用を受ける気液二相流の気相と液相にかかる遠心力には有為な差が生じる。
【0014】
また、図8に示したように、低密度の蒸気は最下段の気水分離ステージ18aの中心側に位置し、高密度の液体は最下段の気水分離ステージ18aの旋回筒19aの内壁面に沿って液膜24を形成して、ともに旋回しながら上昇する。旋回筒19aの軸近傍では液滴25と蒸気26が混在している。
【0015】
液膜24は気水分離ステージ18aの上部に位置するピックオフリング21aで捕捉され、旋回筒19aと外筒20bの間隙を通り、オリフィスとしてのブレイクダウンリング22を経て、炉心の上部に位置するダウンカマ部15(図6参照)へと放出される。一方、最下段の気水分離ステージ18aにおいて捕捉されなかった液相は、大半がその上段の気水分離ステージ18b,18cにおいてピックオフリング21b,21cにより捕捉される。
【0016】
なお、この気水分離器6を通過する蒸気中から気水分離器6によって取り除かれる湿分のうち、約9割は最下段の気水分離ステージ18aにおいて除去されるように設計されている。また、気水分離器6の出口においては、気液二相流のうち水の質量分率を10%以下に抑えるように設計されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
例えば沸騰水型原子炉では発電のために炉心からの蒸気をタービンに直接供給するが、この蒸気に対しての気体中の水の質量分率を一定値以下にする、すなわち気水分離器6におけるキャリーオーバーを低減する必要がある。
【0018】
しかし、実際には、旋回羽根17による気液二相流の旋回力は上部に行くほど弱まるので、図8に示す気水分離器6の気水分離手段、特に上段の気水分離ステージ18cにおいて、液膜24の表面が波立ち蒸気流によって液膜24が引きちぎられて、液滴25が発生する。
【0019】
ここで発生した液滴25は、旋回筒19b,19cの中央部を流れる蒸気26に混入して気水分離器6上部の蒸気乾燥器8へと運ばれることになり、キャリーオーバーが増大する。
【0020】
気水分離器6に流入した冷却材の液相はそのほとんどが最下段の気水分離ステージ18aで除去される。この部分での液膜除去を確実にするため、ピックオフリング21aと旋回筒19aの内壁面の間隔に想定される液膜厚さより大きくしている。このため、流れの阻害が過大となっており、圧力損失の大きな要因となっている。
【0021】
気水分離器6の旋回筒中心部を流れる蒸気は、ピックオフリング21a,21b,21cに捕捉されずに上部へ向かうが、各気水分離ステージを通過する際、ピックオフリング上部において渦を形成する。この渦によって、各気水分離ステージの上部において圧力損失が増大する。
【0022】
気水分離器6の各気水分離ステージにおいて旋回筒の内壁面に生ずる液膜24による摩擦抵抗も、こうした圧力損失増大の主要因となる。旋回羽根17とその近傍では、中心ハブ17aの存在により冷却材の流路面積が減少するため、旋回羽根17を冷却材が通過する際の圧力損失も大きい。
【0023】
特に、この中心ハブ17aの上部において、旋回羽根17から流出する気液二相流の流れが乱れ渦が発生することにより圧力損失が増大する。実際、気水分離器の全圧力損失のうち約3割がこの旋回羽根17により生じている。
【0024】
このような圧力損失が許容範囲を越えて増大すると、原子炉圧力容器からタービンへと蒸気を円滑に送り出す上での妨げとなる。特に原子炉内の冷却材を循環させるポンプにかかる負荷が大きくなるので、原子炉の健全な運転にはふさわしくない。また自然対流による冷却材の循環流量が大きく変動することも考えられる。
【0025】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、原子炉圧力容器内に設置された気水分離器を通過する気液二相流のうち液相を効率よく除去し、圧力損失を低減した気水分離器を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、原子炉圧力容器内に配置された炉心からの冷却材とボイドの気液二相流を上方へと流通させるスタンドパイプと、このスタンドパイプの上方に設けられた旋回羽根と、この旋回羽根の上方に設けられた旋回筒と、この旋回筒の外側に設けられた外筒と、この外筒に設けられたピックオフリングとを有する複数の気水分離ステージとを具備した原子炉内気水分離器において、前記スタンドパイプに複数の小孔を設けてなることを特徴とする。
【0027】
請求項1の発明によれば、複数の小孔をスタンドパイプの全長にわたり設けると、旋回羽根入口での流速が低下してスタンドパイプの管壁から水を除去することができる。これにより、流れの流速が減少し、圧力損失を小さくできる。
【0028】
請求項2の発明は、前記スタンドパイプの上下両端部を除いた部分に前記複数の小孔を設けてなることを特徴とする。請求項2の発明によれば、気水分離器の強度が低下することを防止できる。
【0029】
請求項3の発明は、前記旋回筒の上流側に複数の小孔を設けてなることを特徴とする。請求項3の発明によれば、ピックオフリング部分での液膜流量を減少させることができ、ピックオフリングの内径を小さくすることができ、投影面積が小さくなって圧力損失が減少する。
【0030】
請求項4の発明は、前記旋回羽根後流の前記旋回筒に部分的に複数の小孔を設けてなることを特徴とする。請求項4の発明によれば、旋回羽根近傍の旋回筒の強度上の課題を解消できる。また、下端部を除去して小孔を設けた場合には、旋回筒壁から水を除去できるので、流れの影響も小さく、これによる圧力損失への影響は小さくなる。
【0031】
請求項5の発明は、前記旋回筒に部分的に複数の小孔を設けるとともに、この複数の小孔が位置する部分には前記外筒を設けないで露出状態とすることを特徴とする。請求項5の発明によれば、小孔を設けた部分の外筒を削除することにより、液膜が外部へ流出する効率がよりすぐれることになる。
【0032】
請求項6の発明は、前記複数の小孔の孔径は1mm以下であることを特徴とする。請求項6の発明によれば、小孔の孔径を1mm以下とすることにより、液膜に混入した気泡を流出することなく、水を外部に流出し、圧力損失を防止できる。
【0033】
請求項7の発明は、前記外筒の上端部に設けられるピックオフリングは上方に突出する略円弧状の曲率面を形成してなることを特徴とする。請求項7の発明によれば、ピックオフリングに角部がなく曲面状に形成しているため、分離された液体を内部の旋回筒から放出流路に滑らかに案内する。これにより外筒内に蒸気がスムーズに流れ、キャリーオーバーが減少し、圧力損失を減少できる。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1および図2により本発明に係る原子炉用気水分離器の第1の実施の形態を説明する。
【0035】
図1(a),(b)に示される場合を本実施の形態の第1の例とし、各図中、図7(a)と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。本実施の形態の第1の例が図7に示した従来例と異なる点は、図1(a),(b)に示したように、旋回羽根の上流に設置されたスタンドパイプ7の管壁に複数の小孔27を管壁の全面にわたり開けたことにある。
圧力損失を低減する手段としては、流れに衝突する物体の投影面積を小さくすることと、流れの流速を減少させることである。
【0036】
【数1】
【0037】
上式に圧力損失を計算する式を示す。流れの流速は圧力損失に2乗で影響するためできる限り早い段階で液体を除去することが有効である。気水分離器での流体は水と蒸気の二相流ではあるが、圧力損失の大部分は水で生じるので、水を何らかの形で少なくすることが圧力損失を低減する決め手である。しかしながら、流れに可能な限り影響しないような形で水を除去することが有効である。
【0038】
本実施の形態における第1の例では、図1(b)に拡大して示すようにスタンドパイプ7の管壁全長にわたり小孔27を複数設けると、スタンドパイプ7では図2に示すような環状流となって、スタンドパイプ7の管壁上に生じた液膜24が小孔27を通過し外部に抽出される。
【0039】
そして、上部に向かうにつれて水の流れ、つまり流速が次第に減少し、従来の気水分離器に比較して第1の例では旋回羽根17の入口での流速は約半分以下になっている。よって、第1の例によれば、スタンドパイプ7の管壁から水を除去することができるので、流れへの影響も小さく、これによる圧力損失への影響を小さくできる。
【0040】
図1(c)は図1(b)の第1の例に準じた第2の例を示したもので、図1(b)と比較して図1(c)に示したように、スタンドパイプ7の上下両端部を除いて中央部と、その上下近傍に複数の小孔27を設けたことにある。
【0041】
スタンドパイプ7は上端は旋回羽根17と下端はシュラウドヘッド5に溶接されているため、この部分に複数の小孔27を設けると気水分離器としての強度上の問題が生じる。この第2の例によれば、第1の例の作用の効果のほかに、前述した気水分離器の強度低下の問題を解消できる効果がある。
【0042】
次に図3により本発明に係る気水分離器の第2の実施の形態を説明する。
図3(a)に示される場合を本実施の形態の第1の例とする。本実施の形態の第1の例が第1の実施の形態と異なる点は、図1(a)に示したピックオフリング21(21a,21b,21c)上流の旋回筒19(19a,19b,19c)の全長にわたり、図3(a)に示すように複数の小孔27を設けたことにある。なお、その他の部分は第1の実施の形態と同様なので、重複する部分の説明は省略する。
【0043】
上記第1の例によれば、ピックオフリング21部分での液膜流量を減少させることができる。液膜流量が減少するということは、液膜厚さを薄くすることができ、従って、ピックオフリング21の内径を小さくすることができる。
【0044】
式(1) において、液膜流量減少に伴い流速が減り、圧力損失が減少する。加えて、ピックオフリング21の内径を小さくすることにより、投影面積が小さくなり圧力損失が減少する効果がある。
【0045】
図3(b)は図3(a)の第1の例に準じた第2の例を示したものである。すなわち、この他の例は図3(b)に示したように旋回筒19の上端部と下端部および中央部を除いた下部分に複数の小孔27を設けたことにある。
【0046】
下部の旋回筒19aの下端は旋回羽根17と溶接されているため、この部分に小孔27を設けると気水分離器の強度上の問題が生じるが、この第2の例によれば、この強度上の課題を解消することができる。
【0047】
以上説明した本実施の形態の第1の例および第2の例では、旋回筒19に小孔を設ける構成としている。この場合、複数段のうち一部の旋回筒のみに小孔27を設ける場合と、複数段の旋回筒19a,19b,19cに対してともに小孔27を設ける場合とが考えられる。前者の場合、特に、気水分離作用の大きい最下段の気水分離ステージ18aにおける旋回筒19aに設けるのが好適である。
【0048】
また、後者の場合、第1の旋回筒19aのみでなく、第2、第3の旋回筒19b,19cについても小孔27を設けることにより、第2、第3の旋回筒においては、図2に示すような環状流が構成され、旋回筒の管壁に生じた液膜が、小孔を通過し外部に抽出される。
【0049】
上部へ向かうにつれて流体の流れ、つまり、液体の流速が次第に減少し、従来の気水分離器に比較して、ピックオフリング21では液膜24の流速は約半分以下になっているものと考えられる。これによって、この場合、旋回筒壁から水を除去する構成により、この流れへの影響も小さく、これによる圧力損失の影響を小さくすることができる。
【0050】
次に本発明に係る原子炉用気水分離器の第3の実施の形態を説明する。
第1および第2の実施の形態においてはスタンドパイプ7および旋回筒19に複数の小孔27を設けたが、本実施の形態は、小孔27を設けた部分の外筒20を削除して小孔27を露出させた構成としている。
【0051】
小孔27を設けると、分離水は旋回筒19aから流出し、外筒20と旋回筒19の間の通路を通過し流出するので、外筒20が流出の抵抗になる。本実施の形態によれば、小孔27を設けた部分の外筒20を削除することにより、液膜が外部へ流出する効率がよりよくなる効果がある。
【0052】
次に本発明に係る原子炉用気水分離器の第4の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1および第2の実施の形態において、小孔27の径に関することにある。すなわち、旋回筒19を流れる液膜24内には小さな気泡23が混入しており、小孔27の径を大きくすると、この小孔27から外筒20の外部に液滴25と一緒に気泡23が流出してしまう。この気泡23がダウンカマ15へ流れてしまうと、循環ポンプのキャビテーションなどの問題が生じることになる。
【0053】
そこで、本実施の形態では、小孔27の径を液膜24に混入する気泡23の径よりも小さくして、気泡23の流出を防止することにある。そのために、この気水分離器の圧力での気泡径が約1mmが大半であることから、小孔27の孔径を1mm以下に選定する。本実施の形態によれば、液膜24に混入した気泡23を外部に流出することなく水(液体)を外部に流出し、圧力損失を防止することができる。
【0054】
次に図4により本発明に係る原子炉用気水分離器の第5の実施の形態を説明する。
第4の実施の形態で説明したように液膜24内には小さな気泡23が混入しており、小孔27の孔径を大きくすると、この小孔27から気水分離器外部に液体と一緒に気泡23が流出する。この気泡23がダウンカマ15へ流れてしまうと、循環ポンプのキャビテーションなどの問題が生じてしまう。
【0055】
そこで、本実施の形態は、図4に示すように旋回筒19に複数の傾斜孔38を設けたことにある。傾斜孔38は旋回筒19内を流れる気液流の流れとは逆の方向に傾斜させて設けている。
【0056】
液膜24は、流れの力により傾斜孔38から水は外部へ流出するが、流出する水の流速が小さいので、気泡23が方向を曲げて傾斜孔38に流入し難くできる。本実施の形態によれば、液膜24に混入した気泡23を外部に流出することなく液体を外部に流出し、圧力損失を防止することができる。
【0057】
次に図5により本発明に係る原子炉用気水分離器の第6の実施の形態を説明する。
本実施の形態は、ピックオフリング21部分の形状を除いて全体として気水分離器と同様の構造を有しているが、従来例と異なる点は、ピックオフリング21の内縁部を、従来の鈎板状構成に代えて、断面が略円弧状となるように曲面29を形成するとともに、曲面29の他端に垂直板30を取付け、ピックオフリング21の外周部と接続する外筒20aの上端部も曲面に形成し、全体として滑らかな曲面を形成したことにある。
【0058】
本実施の形態による気水分離器では、旋回筒19(19a,19b,19c)の内側に形成された液膜24は旋回筒19の内面に沿って上昇しピックオフリング21aに取付けた垂直板30に衝突する。衝突した液膜24は、外筒20と垂直板30との間に形成される略円弧状の曲面29に沿ってスムーズに反転して旋回筒19と外筒20の間の放出流路に案内される。
【0059】
本実施の形態によれば、従来の角部を有する鈎板に代えて、曲面状に形成したことにより、気液流をスムーズに流すことができる。これにより、蒸気の乱れによる液体の飛散も少なくなってキャリオーバーが減少し、圧力損失も減少する効果がある。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、気水分離ステージにおいて、気液二相流のうち液相を効率よく除去し、キャリーオーバー量を低減させることができる。また、冷却材の気液二相流により生じる圧力損失増大幅を縮小し、タービンやポンプにかかる負荷を低減させることができる。これらによって、原子炉の健全性の維持に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る原子炉用気水分離器の第1の実施の形態を示す縦断面図、(b)は(a)におけるスタンドパイプを示す立面図、(c)は(b)の他の例を示す立面図。
【図2】図1(a)における気水分離器の流れの様相を説明するための横断面図。
【図3】(a)は本発明に係る原子炉用気水分離器の第2の実施の形態の要部を示す立面図、(b)は(a)の他の例を示す立面図。
【図4】本発明に係る原子炉用気水分離器の第5の実施の形態を説明するための要部を示す縦断面図。
【図5】本発明に係る原子炉用気水分離器の第6の実施の形態を説明するための要部を示す縦断面図。
【図6】従来の気水分離器を組み込んだ一般的な改良型沸騰水型原子炉(ABWR)を概略的に示す縦断面図。
【図7】(a)は図8における気水分離器を拡大して示す縦断面図、(b)は(a)における旋回羽根近傍を拡大して示す縦断面図。
【図8】図7における気水分離器を流れる冷却材と気泡を模式的に示す縦断面図。
【符号の説明】
1…原子炉圧力容器、2…シュラウド、3…炉心、4…制御棒案内管、5…シュラウドヘッド、6…気水分離器、7…スタンドパイプ、8…蒸気乾燥器、9…制御棒駆動機構、10…インターナルポンプ、11…炉心支持板、12…上部格子板、13…主蒸気管、14…給水管、15…ダウンカマ、17…旋回羽根、17a…中心ハブ、17b…傾斜翼、18(18a,18b,18c)…気水分離ステージ、19(19a,19b,19c)…旋回筒、20(20a,20b,20c)…外筒、21(21a,21b,21c)…ピックオフリング、22…ブレイクダウンリング、23…気泡、24…液膜、25…液滴、26…蒸気、27…小孔、28…傾斜孔、29…曲面、30…垂直板。
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に設置され、炉心から流出する冷却水と蒸気の混合二相流を水と蒸気に分離するための原子炉用気水分離器に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般の沸騰水型原子炉においては、原子炉圧力容器内に多数の燃料集合体を装荷した炉心を有し、この炉心の上方に、炉心からの冷却材の気液二相流を水と蒸気に分離するための複数の気水分離器を設置し、これらの気水分離器の上方に水分が除去された蒸気を乾燥させるための複数の蒸気乾燥器が設置されている。乾燥された蒸気はタービンへ送られ発電機の駆動に寄与する。
【0003】
図6により改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の概略を説明する。
原子炉圧力容器1の中央部よりやや下部にシュラウド2によって包囲された多数体の燃料集合体を具備する炉心3が配置されている。この炉心3の下方には多数の制御棒案内管4が設けられ、炉心3を包囲するシュラウド2の上端開口はシュラウドヘッド5で閉塞されている。シュラウドヘッド5には気水分離器6のスタンドパイプ7が立設され、気水分離器6上には矩形平型の蒸気乾燥器8が多数設置されている。
【0004】
原子炉圧力容器1の下部には制御棒案内管4の内面をガイドとして炉心3内の十字型の制御棒を駆動する制御棒駆動機構9が設けられている。原子炉圧力容器1の内側とシュラウド2の外側との間の底部には複数台のインターナルポンプ10が設置されている。
【0005】
炉心3は多数体の燃料集合体の下部が炉心支持板11により、上部が上部格子板12によりそれぞれ支持され、全体がシュラウド2により包囲されている。原子炉圧力容器1には、蒸気乾燥器8で乾燥された蒸気をタービンへと送る主蒸気管13が接続している。
【0006】
また、原子炉圧力容器1には給水管14が接続しており、給水管14により原子炉圧力容器1内に流入した冷却材はダウンカマ15を流れ、インターナルポンプ10により強制循環される。なお、図7中符号16は原子炉圧力容器1内に冷却水を散布するための給水スパージャである。
【0007】
次に気水分離器6について図7(a),(b)及び図8を参照して説明する。図7(a)は図6に示した気水分離器6を拡大して示す縦断面図、図7(b)は図7(a)における気水分離器の旋回羽根の拡大断面図、図8は図7(a)に示す気水分離器内の冷却材の気液二相流の流れを模式的に示す図である。
【0008】
図7(a)に示すように、気水分離器6は、原子炉圧力容器1内の炉心3の直上に位置し、炉心3からの冷却材とボイドの気液二相流を上方へと通すスタンドパイプ7(ライザ管ともいう)と、このスタンドパイプ7の上方に設けられ気液二相流に旋回作用を与える旋回手段である旋回羽根17と、この旋回羽根17の上方に設けられ気液二相流の気水分離を行う気水分離手段として設けられた軸方向に通常は3段に連なる気水分離ステージ18a,18b,18cとからなっている。
【0009】
旋回羽根17は、図9に示すように、逆円錐型の中心ハブ17aの周りに複数、例えば8枚の螺旋状の傾斜翼17bを有するものである。また、気水分離ステージ18a,18b,18cは、それぞれ旋回筒19a,19b,19cと、これら旋回筒19a,19b,19cの外側に位置する外筒20a,20b,20cと、この外筒20a,20b,20cに連なり旋回筒19a,19b,19cの内側に位置するよう外筒に形成された鉤型のピックオフリング21a,21b,21c(キャッチリングともいう)とを有するものである。
【0010】
この鉤型のピックオフリング21a,21b,21cは、旋回筒19a,19b,19cの内壁面に形成される冷却材の液膜を捕捉し、旋回筒19a,19b,19cと外筒20a,20b,20cの間隙に確実に導けるようになっている。また、通常これらの気水分離ステージ18a,18b,18cは、下段に位置するものほど旋回筒及び外筒が軸方向に長く設計されているが、ピックオフリング21a,21b,21cはほぼ同じ長さである。外筒20aの内面には旋回羽根17の上面位置近傍にブレイクダウンリング22が形成されている。
【0011】
次にこの気水分離器6の作用について説明する。
沸騰水型原子炉においては、冷却材は、核分裂反応の熱により沸騰し、通常水と気体の混合した気液二相流となって、炉心3の上方に設けられた上部プレナム(図示せず)内で十分に混合される。この混合された気液二相流は、原子炉圧力容器1内に複数配置された気水分離器6に流量配分されて、スタンドパイプ7内を上昇する。
【0012】
図8に示すように、スタンドパイプ7内で冷却材は環状流と呼ばれる流動状態になっている。すなわち、スタンドパイプ7の内壁面を液膜が覆い、この液膜の内部は液滴と蒸気の気泡23が混合した流れになっている。
【0013】
スタンドパイプ7を上昇した水と蒸気の気液二相流は、スタンドパイプ7の直上の旋回羽根17の回転によって強制的に遠心力を付与されて、図7(b)に拡大して模式的に示したように、矢印方向に旋回する旋回流となる。このとき、沸騰水型原子炉の通常の運転圧力下において、冷却材の気液の密度比はおよそ1:21であるから、旋回作用を受ける気液二相流の気相と液相にかかる遠心力には有為な差が生じる。
【0014】
また、図8に示したように、低密度の蒸気は最下段の気水分離ステージ18aの中心側に位置し、高密度の液体は最下段の気水分離ステージ18aの旋回筒19aの内壁面に沿って液膜24を形成して、ともに旋回しながら上昇する。旋回筒19aの軸近傍では液滴25と蒸気26が混在している。
【0015】
液膜24は気水分離ステージ18aの上部に位置するピックオフリング21aで捕捉され、旋回筒19aと外筒20bの間隙を通り、オリフィスとしてのブレイクダウンリング22を経て、炉心の上部に位置するダウンカマ部15(図6参照)へと放出される。一方、最下段の気水分離ステージ18aにおいて捕捉されなかった液相は、大半がその上段の気水分離ステージ18b,18cにおいてピックオフリング21b,21cにより捕捉される。
【0016】
なお、この気水分離器6を通過する蒸気中から気水分離器6によって取り除かれる湿分のうち、約9割は最下段の気水分離ステージ18aにおいて除去されるように設計されている。また、気水分離器6の出口においては、気液二相流のうち水の質量分率を10%以下に抑えるように設計されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
例えば沸騰水型原子炉では発電のために炉心からの蒸気をタービンに直接供給するが、この蒸気に対しての気体中の水の質量分率を一定値以下にする、すなわち気水分離器6におけるキャリーオーバーを低減する必要がある。
【0018】
しかし、実際には、旋回羽根17による気液二相流の旋回力は上部に行くほど弱まるので、図8に示す気水分離器6の気水分離手段、特に上段の気水分離ステージ18cにおいて、液膜24の表面が波立ち蒸気流によって液膜24が引きちぎられて、液滴25が発生する。
【0019】
ここで発生した液滴25は、旋回筒19b,19cの中央部を流れる蒸気26に混入して気水分離器6上部の蒸気乾燥器8へと運ばれることになり、キャリーオーバーが増大する。
【0020】
気水分離器6に流入した冷却材の液相はそのほとんどが最下段の気水分離ステージ18aで除去される。この部分での液膜除去を確実にするため、ピックオフリング21aと旋回筒19aの内壁面の間隔に想定される液膜厚さより大きくしている。このため、流れの阻害が過大となっており、圧力損失の大きな要因となっている。
【0021】
気水分離器6の旋回筒中心部を流れる蒸気は、ピックオフリング21a,21b,21cに捕捉されずに上部へ向かうが、各気水分離ステージを通過する際、ピックオフリング上部において渦を形成する。この渦によって、各気水分離ステージの上部において圧力損失が増大する。
【0022】
気水分離器6の各気水分離ステージにおいて旋回筒の内壁面に生ずる液膜24による摩擦抵抗も、こうした圧力損失増大の主要因となる。旋回羽根17とその近傍では、中心ハブ17aの存在により冷却材の流路面積が減少するため、旋回羽根17を冷却材が通過する際の圧力損失も大きい。
【0023】
特に、この中心ハブ17aの上部において、旋回羽根17から流出する気液二相流の流れが乱れ渦が発生することにより圧力損失が増大する。実際、気水分離器の全圧力損失のうち約3割がこの旋回羽根17により生じている。
【0024】
このような圧力損失が許容範囲を越えて増大すると、原子炉圧力容器からタービンへと蒸気を円滑に送り出す上での妨げとなる。特に原子炉内の冷却材を循環させるポンプにかかる負荷が大きくなるので、原子炉の健全な運転にはふさわしくない。また自然対流による冷却材の循環流量が大きく変動することも考えられる。
【0025】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、原子炉圧力容器内に設置された気水分離器を通過する気液二相流のうち液相を効率よく除去し、圧力損失を低減した気水分離器を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、原子炉圧力容器内に配置された炉心からの冷却材とボイドの気液二相流を上方へと流通させるスタンドパイプと、このスタンドパイプの上方に設けられた旋回羽根と、この旋回羽根の上方に設けられた旋回筒と、この旋回筒の外側に設けられた外筒と、この外筒に設けられたピックオフリングとを有する複数の気水分離ステージとを具備した原子炉内気水分離器において、前記スタンドパイプに複数の小孔を設けてなることを特徴とする。
【0027】
請求項1の発明によれば、複数の小孔をスタンドパイプの全長にわたり設けると、旋回羽根入口での流速が低下してスタンドパイプの管壁から水を除去することができる。これにより、流れの流速が減少し、圧力損失を小さくできる。
【0028】
請求項2の発明は、前記スタンドパイプの上下両端部を除いた部分に前記複数の小孔を設けてなることを特徴とする。請求項2の発明によれば、気水分離器の強度が低下することを防止できる。
【0029】
請求項3の発明は、前記旋回筒の上流側に複数の小孔を設けてなることを特徴とする。請求項3の発明によれば、ピックオフリング部分での液膜流量を減少させることができ、ピックオフリングの内径を小さくすることができ、投影面積が小さくなって圧力損失が減少する。
【0030】
請求項4の発明は、前記旋回羽根後流の前記旋回筒に部分的に複数の小孔を設けてなることを特徴とする。請求項4の発明によれば、旋回羽根近傍の旋回筒の強度上の課題を解消できる。また、下端部を除去して小孔を設けた場合には、旋回筒壁から水を除去できるので、流れの影響も小さく、これによる圧力損失への影響は小さくなる。
【0031】
請求項5の発明は、前記旋回筒に部分的に複数の小孔を設けるとともに、この複数の小孔が位置する部分には前記外筒を設けないで露出状態とすることを特徴とする。請求項5の発明によれば、小孔を設けた部分の外筒を削除することにより、液膜が外部へ流出する効率がよりすぐれることになる。
【0032】
請求項6の発明は、前記複数の小孔の孔径は1mm以下であることを特徴とする。請求項6の発明によれば、小孔の孔径を1mm以下とすることにより、液膜に混入した気泡を流出することなく、水を外部に流出し、圧力損失を防止できる。
【0033】
請求項7の発明は、前記外筒の上端部に設けられるピックオフリングは上方に突出する略円弧状の曲率面を形成してなることを特徴とする。請求項7の発明によれば、ピックオフリングに角部がなく曲面状に形成しているため、分離された液体を内部の旋回筒から放出流路に滑らかに案内する。これにより外筒内に蒸気がスムーズに流れ、キャリーオーバーが減少し、圧力損失を減少できる。
【0034】
【発明の実施の形態】
図1および図2により本発明に係る原子炉用気水分離器の第1の実施の形態を説明する。
【0035】
図1(a),(b)に示される場合を本実施の形態の第1の例とし、各図中、図7(a)と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。本実施の形態の第1の例が図7に示した従来例と異なる点は、図1(a),(b)に示したように、旋回羽根の上流に設置されたスタンドパイプ7の管壁に複数の小孔27を管壁の全面にわたり開けたことにある。
圧力損失を低減する手段としては、流れに衝突する物体の投影面積を小さくすることと、流れの流速を減少させることである。
【0036】
【数1】
【0037】
上式に圧力損失を計算する式を示す。流れの流速は圧力損失に2乗で影響するためできる限り早い段階で液体を除去することが有効である。気水分離器での流体は水と蒸気の二相流ではあるが、圧力損失の大部分は水で生じるので、水を何らかの形で少なくすることが圧力損失を低減する決め手である。しかしながら、流れに可能な限り影響しないような形で水を除去することが有効である。
【0038】
本実施の形態における第1の例では、図1(b)に拡大して示すようにスタンドパイプ7の管壁全長にわたり小孔27を複数設けると、スタンドパイプ7では図2に示すような環状流となって、スタンドパイプ7の管壁上に生じた液膜24が小孔27を通過し外部に抽出される。
【0039】
そして、上部に向かうにつれて水の流れ、つまり流速が次第に減少し、従来の気水分離器に比較して第1の例では旋回羽根17の入口での流速は約半分以下になっている。よって、第1の例によれば、スタンドパイプ7の管壁から水を除去することができるので、流れへの影響も小さく、これによる圧力損失への影響を小さくできる。
【0040】
図1(c)は図1(b)の第1の例に準じた第2の例を示したもので、図1(b)と比較して図1(c)に示したように、スタンドパイプ7の上下両端部を除いて中央部と、その上下近傍に複数の小孔27を設けたことにある。
【0041】
スタンドパイプ7は上端は旋回羽根17と下端はシュラウドヘッド5に溶接されているため、この部分に複数の小孔27を設けると気水分離器としての強度上の問題が生じる。この第2の例によれば、第1の例の作用の効果のほかに、前述した気水分離器の強度低下の問題を解消できる効果がある。
【0042】
次に図3により本発明に係る気水分離器の第2の実施の形態を説明する。
図3(a)に示される場合を本実施の形態の第1の例とする。本実施の形態の第1の例が第1の実施の形態と異なる点は、図1(a)に示したピックオフリング21(21a,21b,21c)上流の旋回筒19(19a,19b,19c)の全長にわたり、図3(a)に示すように複数の小孔27を設けたことにある。なお、その他の部分は第1の実施の形態と同様なので、重複する部分の説明は省略する。
【0043】
上記第1の例によれば、ピックオフリング21部分での液膜流量を減少させることができる。液膜流量が減少するということは、液膜厚さを薄くすることができ、従って、ピックオフリング21の内径を小さくすることができる。
【0044】
式(1) において、液膜流量減少に伴い流速が減り、圧力損失が減少する。加えて、ピックオフリング21の内径を小さくすることにより、投影面積が小さくなり圧力損失が減少する効果がある。
【0045】
図3(b)は図3(a)の第1の例に準じた第2の例を示したものである。すなわち、この他の例は図3(b)に示したように旋回筒19の上端部と下端部および中央部を除いた下部分に複数の小孔27を設けたことにある。
【0046】
下部の旋回筒19aの下端は旋回羽根17と溶接されているため、この部分に小孔27を設けると気水分離器の強度上の問題が生じるが、この第2の例によれば、この強度上の課題を解消することができる。
【0047】
以上説明した本実施の形態の第1の例および第2の例では、旋回筒19に小孔を設ける構成としている。この場合、複数段のうち一部の旋回筒のみに小孔27を設ける場合と、複数段の旋回筒19a,19b,19cに対してともに小孔27を設ける場合とが考えられる。前者の場合、特に、気水分離作用の大きい最下段の気水分離ステージ18aにおける旋回筒19aに設けるのが好適である。
【0048】
また、後者の場合、第1の旋回筒19aのみでなく、第2、第3の旋回筒19b,19cについても小孔27を設けることにより、第2、第3の旋回筒においては、図2に示すような環状流が構成され、旋回筒の管壁に生じた液膜が、小孔を通過し外部に抽出される。
【0049】
上部へ向かうにつれて流体の流れ、つまり、液体の流速が次第に減少し、従来の気水分離器に比較して、ピックオフリング21では液膜24の流速は約半分以下になっているものと考えられる。これによって、この場合、旋回筒壁から水を除去する構成により、この流れへの影響も小さく、これによる圧力損失の影響を小さくすることができる。
【0050】
次に本発明に係る原子炉用気水分離器の第3の実施の形態を説明する。
第1および第2の実施の形態においてはスタンドパイプ7および旋回筒19に複数の小孔27を設けたが、本実施の形態は、小孔27を設けた部分の外筒20を削除して小孔27を露出させた構成としている。
【0051】
小孔27を設けると、分離水は旋回筒19aから流出し、外筒20と旋回筒19の間の通路を通過し流出するので、外筒20が流出の抵抗になる。本実施の形態によれば、小孔27を設けた部分の外筒20を削除することにより、液膜が外部へ流出する効率がよりよくなる効果がある。
【0052】
次に本発明に係る原子炉用気水分離器の第4の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1および第2の実施の形態において、小孔27の径に関することにある。すなわち、旋回筒19を流れる液膜24内には小さな気泡23が混入しており、小孔27の径を大きくすると、この小孔27から外筒20の外部に液滴25と一緒に気泡23が流出してしまう。この気泡23がダウンカマ15へ流れてしまうと、循環ポンプのキャビテーションなどの問題が生じることになる。
【0053】
そこで、本実施の形態では、小孔27の径を液膜24に混入する気泡23の径よりも小さくして、気泡23の流出を防止することにある。そのために、この気水分離器の圧力での気泡径が約1mmが大半であることから、小孔27の孔径を1mm以下に選定する。本実施の形態によれば、液膜24に混入した気泡23を外部に流出することなく水(液体)を外部に流出し、圧力損失を防止することができる。
【0054】
次に図4により本発明に係る原子炉用気水分離器の第5の実施の形態を説明する。
第4の実施の形態で説明したように液膜24内には小さな気泡23が混入しており、小孔27の孔径を大きくすると、この小孔27から気水分離器外部に液体と一緒に気泡23が流出する。この気泡23がダウンカマ15へ流れてしまうと、循環ポンプのキャビテーションなどの問題が生じてしまう。
【0055】
そこで、本実施の形態は、図4に示すように旋回筒19に複数の傾斜孔38を設けたことにある。傾斜孔38は旋回筒19内を流れる気液流の流れとは逆の方向に傾斜させて設けている。
【0056】
液膜24は、流れの力により傾斜孔38から水は外部へ流出するが、流出する水の流速が小さいので、気泡23が方向を曲げて傾斜孔38に流入し難くできる。本実施の形態によれば、液膜24に混入した気泡23を外部に流出することなく液体を外部に流出し、圧力損失を防止することができる。
【0057】
次に図5により本発明に係る原子炉用気水分離器の第6の実施の形態を説明する。
本実施の形態は、ピックオフリング21部分の形状を除いて全体として気水分離器と同様の構造を有しているが、従来例と異なる点は、ピックオフリング21の内縁部を、従来の鈎板状構成に代えて、断面が略円弧状となるように曲面29を形成するとともに、曲面29の他端に垂直板30を取付け、ピックオフリング21の外周部と接続する外筒20aの上端部も曲面に形成し、全体として滑らかな曲面を形成したことにある。
【0058】
本実施の形態による気水分離器では、旋回筒19(19a,19b,19c)の内側に形成された液膜24は旋回筒19の内面に沿って上昇しピックオフリング21aに取付けた垂直板30に衝突する。衝突した液膜24は、外筒20と垂直板30との間に形成される略円弧状の曲面29に沿ってスムーズに反転して旋回筒19と外筒20の間の放出流路に案内される。
【0059】
本実施の形態によれば、従来の角部を有する鈎板に代えて、曲面状に形成したことにより、気液流をスムーズに流すことができる。これにより、蒸気の乱れによる液体の飛散も少なくなってキャリオーバーが減少し、圧力損失も減少する効果がある。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、気水分離ステージにおいて、気液二相流のうち液相を効率よく除去し、キャリーオーバー量を低減させることができる。また、冷却材の気液二相流により生じる圧力損失増大幅を縮小し、タービンやポンプにかかる負荷を低減させることができる。これらによって、原子炉の健全性の維持に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る原子炉用気水分離器の第1の実施の形態を示す縦断面図、(b)は(a)におけるスタンドパイプを示す立面図、(c)は(b)の他の例を示す立面図。
【図2】図1(a)における気水分離器の流れの様相を説明するための横断面図。
【図3】(a)は本発明に係る原子炉用気水分離器の第2の実施の形態の要部を示す立面図、(b)は(a)の他の例を示す立面図。
【図4】本発明に係る原子炉用気水分離器の第5の実施の形態を説明するための要部を示す縦断面図。
【図5】本発明に係る原子炉用気水分離器の第6の実施の形態を説明するための要部を示す縦断面図。
【図6】従来の気水分離器を組み込んだ一般的な改良型沸騰水型原子炉(ABWR)を概略的に示す縦断面図。
【図7】(a)は図8における気水分離器を拡大して示す縦断面図、(b)は(a)における旋回羽根近傍を拡大して示す縦断面図。
【図8】図7における気水分離器を流れる冷却材と気泡を模式的に示す縦断面図。
【符号の説明】
1…原子炉圧力容器、2…シュラウド、3…炉心、4…制御棒案内管、5…シュラウドヘッド、6…気水分離器、7…スタンドパイプ、8…蒸気乾燥器、9…制御棒駆動機構、10…インターナルポンプ、11…炉心支持板、12…上部格子板、13…主蒸気管、14…給水管、15…ダウンカマ、17…旋回羽根、17a…中心ハブ、17b…傾斜翼、18(18a,18b,18c)…気水分離ステージ、19(19a,19b,19c)…旋回筒、20(20a,20b,20c)…外筒、21(21a,21b,21c)…ピックオフリング、22…ブレイクダウンリング、23…気泡、24…液膜、25…液滴、26…蒸気、27…小孔、28…傾斜孔、29…曲面、30…垂直板。
Claims (7)
- 原子炉圧力容器内に配置された炉心からの冷却材とボイドの気液二相流を上方へと流通させるスタンドパイプと、このスタンドパイプの上方に設けられた旋回羽根と、この旋回羽根の上方に設けられた旋回筒と、この旋回筒の外側に設けられた外筒と、この外筒に設けられたピックオフリングとを有する複数の気水分離ステージとを具備した原子炉内気水分離器において、前記スタンドパイプに複数の小孔を設けてなることを特徴とする原子炉用気水分離器。
- 前記スタンドパイプの上下両端部を除いた部分に前記複数の小孔を設けてなることを特徴とする請求項1記載の原子炉用気水分離器。
- 前記旋回筒の上流側に複数の小孔を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の原子炉用気水分離器。
- 前記旋回羽根後流の前記旋回筒に部分的に複数の小孔を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の原子炉用気水分離器。
- 前記旋回筒に部分的に複数の小孔を設けるとともに、この複数の小孔が位置する部分には前記外筒を設けないで露出状態とすることを特徴とする請求項1ないし4記載の原子炉用気水分離器。
- 前記複数の小孔の孔径は1mm以下であることを特徴とする請求項1ないし5記載の原子炉用気水分離器。
- 前記外筒の上端部に設けられるピックオフリングは上方に突出する略円弧状の曲率面を形成してなることを特徴とする請求項1ないし6記載の原子炉用気水分離器。
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