JP5296394B2 - トナータンク部材用ウレタンフォームの圧縮成形方法 - Google Patents

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本発明は、軟質ウレタンフォ−ム(以下、ウレタンフォ−ムという)を熱圧縮して永久歪みをもたらし、樹脂化する技術に関するものである。
ウレタンフォ−ムを熱圧縮して永久歪みをもたらす技術は従来より広く知られているところである。しかるに、かかる公知の技術は永久圧縮歪みをもたらしてウレタンフォ−ムの性状を変えるものであって、通常ではウレタンフォ−ムの嵩が大きく減ることとはなるが、あくまでもウレタンフォ−ムとしての性状を保つ構成となっている。
近年、かかる熱圧縮による永久歪みを更に進めて、熱圧縮された部位を樹脂化(フィルク化)させる技術の開発が進められている。かかる技術を用いた製品としては、例えば、特許文献1に示すへら付き洗浄スポンジがある。
特開2004−181128号公報
以下、特許文献1に記載されたへら付き洗浄スポンジをもって説明すると、従来のものはスポンジ部分とへら部分を接着剤等を用いて後付け加工されていた。これはスポンジ部分とへら部分とではその機能が異なるためであり、スポンジ部分は洗剤を保持すると共に泡立ちをよくする等の機能が要求され、へら部分は付着物を落としやすいように適度な硬さが要求されていたからである。
しかるに、かかるへら付き洗浄スポンジを熱圧縮の技術を用いて一体的にで製造しようとすると、特に樹脂化されるへら部に欠陥がもたらされるケ−スがある。即ち、へら部分を圧縮するに際して、圧縮成形型内のエアの一部がかかる成形型の外に逃げ出すことができず、そのまま成形型内に留まってしまい、このまま熱圧縮されて永久歪みを受けることとなる。このため、樹脂化した部位(この例ではへら部)が所望の形状とはならず、例えば、エア溜りによる凹みや膨らみができたり、樹脂化した部位の内部にエアが入り込んでしまうという欠点があった。更には、この影響により樹脂化部位が破れたり、スポンジ部との接続部位が破れたりすることが見られた。
更に、近時ウレタンフォ−ムの熱圧縮成形方法による樹脂化材を、電子複写機器に適用するべく鋭意開発を押し進めているところであるが、例えば、トナ−タンク部材に用いられる場合にはトナ−が溜められるフィルム部と、その周囲がトナ−タンクを構成するタンク機体と蓋体との間に挟み込まれて密封されるシ−ル部とが必要とされる。
従来の成形方法によるトナ−タンク部材Aは、図1に示すようにトナ−が溜められるフィルム部をプラスチック11等にて形成し、その周囲にシ−ル性を付与するために、粘着材にてフォ−ム材12を貼り付けてなるものが考えられる。勿論、この方法では製造工程が複雑となり、作業性も悪くコストアップとなることは明らかである。
図2はウレタンフォ−ムの熱圧縮成形方法によって得るトナ−タンク部材Aの成形方法の例を示す概念図であり、図3はこの成形方法によって得られたトナ−タンク部材Aの部分拡大図である。即ち、所定の厚みを持つウレタンフォ−ムシ−ト1の周囲をほぼそのままシ−ル部3とし、中央部を上下の成形型5、6にて所望の厚さにまで圧縮し、この状態で加熱して永久歪みを与えて樹脂化(フィルム化)2する成形方法である。
尚、図例にあっては、ウレタンフォ−ムを圧縮する成形型5、6面を均一にするのではなく、後述する段部Dを形成し、シ−ル部3と樹脂化部2とを形成したものである。
しかるに、この際、前述したように上下の成形型5、6内のエアが逃げきれず、エアが入った状態で熱圧縮すると、得られたフィルム部2がそのエアが影響され、所望の厚さのフィルムはできず、フィルム部2に凹み2pが生じたりフィルム部2中にエア2qが入ってしまうことがあった。特に圧縮する面(樹脂化する部位、即ちフィルム部)が広い場合にはエアが抜けにくく、その欠点が目立つこととなってしまう。
本発明は、以上のような従来の技術に鑑みてなされたものであり、ウレタンフォ−ムを熱圧縮して永久歪みをもたらして樹脂化する際に、その樹脂化部位に熱圧縮時のエアの存在による欠点を取り除くことを目的としたもので、特に具体的には、ウレタンフォ−ムよりスポンジ部位と熱圧縮による樹脂化部位との両方を備えた製品の製造に適した技術を提供するものである。
本発明の要旨は、トナータンク部材用の軟質ウレタンフォームの一部を熱圧縮し永久歪みをもたらして当該部位を樹脂化する方法において、成形型にてシート状の前記軟質ウレタンフォームの中央部を当該中央部の周囲よりも高い圧力で圧縮すると共に前記中央部をシート厚み方向に湾曲させ前記中央部を減圧下で加熱して樹脂化させて、トナータンクを構成するタンク機体内のトナーが溜められる湾曲した高圧縮部位と、当該高圧縮部位の周囲に当該高圧縮部位よりも低圧縮とされ且つ前記タンク機体と蓋体との間に挟み込まれて両者の間を密封する低圧縮部位と、を有するトナータンク部材を成形する、ことを特徴とするトナータンク部材用ウレタンフォームの圧縮成形方法である
そして好ましくは、軟質ウレタンフォームの被樹脂化部位である中央部を両面より、場合によっては圧縮面に段部を備えた成形型にて圧縮し、当該成形型を減圧手段を備えたチャンバー内に設置し、かかるチャンバー内を減圧下に置くトナータンク部材用ウレタンフォームの圧縮成形方法である。
本発明によれば、ウレタンフォ−ムを熱圧縮して永久歪みをもたらし、その成形の際に成形型内よりエアを除去することにより極めて均質なフィルム部位を得ることが可能となったものである。このため、特に段部を備えた成形型を用いれば、非或いは低圧縮部位であるウレタンフォ−ム部位と、高圧縮部位(熱圧縮部位)であるフィルム部位とを備えた一体成形部材を効率よく成形できることとなったのである。
成形に供されるウレタンフォ−ムには特に限定しなくてはならないものはなく、通常のウレタンフォ−ムは勿論であるが、いわゆる成形時にセル膜を除去したフォ−ムであってもよいことは言うまでもない。
ウレタンフォ−ムの成形の際、所定の厚さに圧縮することとなるが、圧縮圧力も又用いられるウレタンフォ−ムの厚みや性状によって異なるものであり、任意に選択される。
熱圧縮による永久歪みが加えられた樹脂化(フィルム化)部位の性状としては、密度が大きいエアの不透過性から密度の小さいエアの透過可能な範囲まで制限はないが、密度が大きい場合に型内の残留エアの影響が出やすく、密度が0.8g/cm 以上の樹脂化をもたらす場合に特に効果的である。
熱成形条件としては、170〜220℃×0.5〜3分、圧縮力は5〜7MPaが適当であるが、これらは用いられるウレタンフォ−ムの厚みや性状、得ようとする樹脂化の状態を勘案して適宜条件が設定されることとなる。
そして、成形時の減圧条件であるが、これ又得ようとする樹脂化の状態を勘案して決められるが、通常は−100MPa程度の減圧下で成形が行われる。この減圧作業は特に限定はなく、上下の成形型に備えた排気口からエアを引き抜く方法や、成形型自体をチャンバ−内に備え、そのチャンバ−内を減圧することも効果的である。
尚、ウレタンフォ−ムを圧縮する成形型について言えば、圧縮面の形状は任意であり、例えばフラットな面を形成していても、段部を持っていても、更にはテ−パ−面であってもよく、これによって夫々特徴ある樹脂化部位を有する成形品が得られることとなることは言うまでもない。
図4は、本発明方法にて得られたトナ−タンク部材Aの拡大図であり、トナ−タンク部材A全体がウレタンフォ−ム1の一体物でできている。そして、中央部は熱圧縮成形による樹脂化部位(高圧縮部位)2であり、この例では樹脂化部位2によって湾曲部2aを形成している。そして、その周囲はシ−ル部(低圧縮部位)3であり、これは用いられたウレタンフォ−ム1の原形がほぼそのまま残っており、この部位3が相手側の機器に挟まれてシ−ル機能を発揮するものである。全体的形状としては、平面視で70mm×210mmの大きさであり、中央部(樹脂化部)2即ち高圧縮部位の厚さは0.5mmであった。勿論、本成形方法によって得られたトナ−タンク部材Aのフィルム部2には、図2にて説明したような凹み2pが生じたりエア2qが入ってしまうような欠点は全くない。
さて、図5は本発明を実施するに適した熱圧縮成形方法の一例であり、図3に示した段部Dを備えた上下の成形型5、6をチャンバ−7内に備え、成形時にこのチャンバ−7内を減圧して成形に供する方法である。図中、1は熱圧縮成形に用いられるウレタンフォ−ムシ−トであり、セル膜が除去されていない密度0.063g/cm (±0.0058g/cm )のフォ−ムである。
5、6は上下の成形型であり、図示はしないが、少なくとも一方の成形型に加熱手段が備えられる。そして、成形型5、6には、前記の湾曲部2aを構成するように窪み5bとこれに対向する山部6bが形成されている。両型5、6には段部Dによって両者を合わせた際には窪み5bと山部6bとの隙間S1(即ち、高圧縮部位成形部)は0.5mmに設定され、一方、両型5、6の周囲5c、6cはウレタンフォ−ムシ−ト1をほぼ挟むだけの隙間S2(即ち、低圧縮部位成形部)を備えたものである。この両型5、6をチャンバ−7内に備えることによって準備されるが、チャンバ−7は内部のエアを減圧可能とするバキュ−ム装置Qが備えられている。
さて、かかる成形条件下で熱圧縮成形を行った。成形型5、6による圧縮圧力は6MPa、加熱温度は210℃、加熱時間は2分30秒であった。
(実験1:比較例1)
熱圧縮成形に用いられるウレタンフォ−ムシ−ト1の厚さを4mm及び5mmとして成形した。この場合、バキュ−ム装置Qを起動させなくとも平坦な樹脂化2を完成した。これは樹脂化した部位2の表面が未だポ−ラスであり、エアがその中に逃げ込んでしまったため、エア溜りによる悪影響が出なかったものと思われる。尚、トナ−タンク部材Aとしては、樹脂化部分2がポ−ラスであり十分なものでない。
(実験2:比較例2)
熱圧縮成形に用いられるウレタンフォ−ムシ−ト1の厚さを7mmとして成形した。バキュ−ム装置Qを起動させない場合、樹脂化した部位2の表面に金型内のエアの影響が出、図2に示したと同様の欠点が生じた。これは樹脂化の部分2の表面が成形時に高密度(エア不透過性)になったため、エアが成形型5、6の外に逃げられず、樹脂化部分2の表面にそのまま留まり、凹み2pが形成してしまった例である。勿論、トナ−タンク部材Aとしては十分なものでない。
(実験3:本発明例)
上記実験2にあって、バキュ−ム装置Qを起動させ、チャンバ−7内を−97MPaに減圧して熱圧縮成形を行った。先ず、金型にウレタンフォ−ム材料1をセットし、自重により上下の金型5、6をプレス位置に合わせ、バキュ−ム装置Qの真空カバ−を降ろし、バキュ−ム装置Q内(金型全体)を−97MPaに減圧(30秒間)し、その後、6PMaの圧力を2分30秒金型にかけ、脱型した。
結果は、図4に示す樹脂化部分2の表面に全く乱れのないトナ−タンク部材Aが得られた。これは、チャンバ−7内を減圧することによって成形型5、6内よりエアを強制排除したからであり、幅42.32mm×長さ255.7mm×深さ14.75mmに熱成形体の樹脂化の部分2の表面に全く影響のない部材ができ上がったものである。
尚、実験例にあっては、熱圧縮部分(樹脂化部分)に湾曲を形成した例をもって説明したが、これに限定されないことは勿論であり、熱圧縮部分が平坦であったり、熱圧縮部分を成形型の圧縮面の形状に応じて複数の段部にしたり、徐々にその圧縮の性状を変化させたりすることも可能である。
又、両型5、6の周囲である5c、6cにより隙間1mmの低圧縮部(図1のS2)を備えており、これにより熱圧縮ウレタンフォ−ムを電子複写機等に挟み込んで保持することを容易にする。
本発明は、以上の通りウレタンフォ−ムを熱圧縮処理して樹脂化(フィルム化)するに際し、樹脂化部分にエア溜りによる凹凸を形成することなく所期の性状の樹脂化部分を形成できたものであり、特に熱圧縮されないウレタンフォ−ム部位との一体成形品が簡単に得られることとなったものである。従って、樹脂化部分のみの製品も製造可能ではあるが、特に樹脂化部分と非樹脂化部分とを備えた製品、例えば電子部品、クッション部品、家庭用部品、自動車用部品等全ての製品に適用可能であってその応用範囲は極めて広い。
図1は従来の成形方法によるトナ−タンク部材である。 図2は熱圧縮成形方法によって得られたトナ−タンク部材である。 図3は熱圧縮成形方法を示した概念図である。 図4は本発明の成形方法によるトナ−タンク部材である。 図5は本発明の熱圧縮成形方法を示した概念図である。
符号の説明
1‥ウレタンフォ−ム、
2‥樹脂化部分(フィルム化部分)、
3‥シ−ル部分、
5、6‥金型、
7‥チャンバ−、
A‥トナ−タンク部材、
D‥成形型の段部、
Q‥バキュ−ム装置、
S1、S2‥成形型の隙間。

Claims (5)

  1. トナータンク部材用の軟質ウレタンフォームの一部又は全部を熱圧縮し永久歪みをもたらして当該部位を樹脂化する方法において、
    成形型にてシート状の前記軟質ウレタンフォームの中央部を当該中央部の周囲よりも高い圧力で圧縮すると共に前記中央部をシート厚み方向に湾曲させ前記中央部を減圧下で加熱して樹脂化させて、トナータンクを構成するタンク機体内のトナーが溜められる湾曲した高圧縮部位と、当該高圧縮部位の周囲に当該高圧縮部位よりも低圧縮とされ且つ前記タンク機体と蓋体との間に挟み込まれて両者の間を密封する低圧縮部位と、を有するトナータンク部材を成形する、ことを特徴とするトナータンク部材用ウレタンフォームの圧縮成形方法。
  2. 前記軟質ウレタンフォームの被樹脂化部位である前記中央部を両面より成形型にて圧縮し、当該成形型を減圧手段を備えたチャンバー内に設置し、かかるチャンバー内を減圧下に置く請求項1に記載のトナータンク部材用ウレタンフォームの圧縮成形方法。
  3. 前記成形型の、前記軟質ウレタンフォームの前記中央部を圧縮する面に段部を備えてなる請求項2に記載のトナータンク部材用ウレタンフォームの圧縮成形方法。
  4. 前記高圧縮部位がフィルム状である請求項1〜3のいずれか1項記載のトナータンク部材用ウレタンフォームの圧縮成形方法。
  5. 前記高圧縮部位がエア不透過性を有する請求項4記載のトナータンク部材用ウレタンフォームの圧縮成形方法。
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