JP5295713B2 - 積層不織布およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、伸縮性を有する積層不織布およびその製造方法に関し、より詳細には、熱可塑性エラストマーから成る伸縮性を有する不織布と繊維長0.5〜20mmの短繊維層とから成る、積層体を中層として有する、積層不織布およびその製造方法に関する。
熱可塑性エラストマーから成る不織布が、積層不織布の一層として使用され、全体として伸縮性を有する積層構造の不織布はこれまで種々提案されている。例えば、特許文献1(特開2005―67201号公報)には、スパンボンドウェブ/メルトブロー繊維層/親水性繊維層/スパンボンドウェブの積層構造を備え、メルトブロー繊維がポリウレタンのようなエラストマーから成る積層体が提案されている。
また、3層構造の伸縮性不織布も提案されている。例えば、特許文献2(特開2002−1855号公報)には、第1層の短繊維不織ウエッブと、第2層の繊維状の熱可塑性エラストマーの交絡ウエッブと、第3層として短繊維不織ウエッブとが積層され、加熱することによって一体化された不織布が開示されている。特許文献3(特開2002−4161号公報)は、特許文献2に記載の不織布と同じ積層構造を有し、熱および/または高圧柱状水流によって一体化された不織布が開示されている。特許文献4(特開平7−70902号公報)には、第1層が短繊維ウエッブ、第2層がエラストマーからなる伸縮性不織布、第3層が短繊維ウエッブであり、第1層と第3層の繊維は第2層を貫通し部分的に交絡しており、第1層及び/又は第3層の単繊維間が接着剤及び/又は熱融着で部分的にドット接着され、伸縮性を少なくとも1方向で保持している伸縮性不織布が開示されている。
各特許文献はいずれも、伸縮性不織布を製造する方法を示している。具体的には、特許文献1は、スパンボンドウェブ製の一層にメルトブロー繊維製の一層を塗布し、層集合体が凝固されることにより、繊維積層体を形成することを提案している。特許文献2および3は、短繊維不織ウエッブ上に熱可塑性エラストマーの有機溶剤の溶液を空気流によってスプレー吐出し、溶剤の揮散の下に短繊維状に堆積せしめ、次いで加熱による融着および/または高圧柱状水流による交絡処理を施すことにより、伸縮性不織布を製造することを提案している。特許文献4は、第1層の短繊維ウエッブを第2層のエラストマー不織布に貫通させて、第3層を形成した後、エンボスにより接着することにより、伸縮性不織布を製造することを提案している。
特開2005−67201号公報 特開2002−1855号公報 特開2002−4161号公報 特開平7−70902号公報 特開平11−158766号公報
このように、積層構造の不織布において、1つの層を、伸縮性を有するものとすることによって、伸縮性不織布を得ることは、既に知られている。そして、そのような不織布を製造する過程、またはそのような不織布を加工して別の製品を製造する過程で、「幅入り」と呼ばれる現象が、不織布の製造を困難にし、あるいは不織布または不織布を用いた製品の質に好ましくない影響を及ぼすこともまた知られている。
例えば、特許文献4に記載のように、エラストマーからなる伸縮性不織布を、別の繊維層に積層して一体化させる際には、この伸縮性不織布を引っ張り気味にする、即ち、縦方向(機械方向)に張力をかける必要がある。そのような張力は、連続製造中に、エラストマー不織布がたるまないようにするために必要とされる。
しかし、エラストマー不織布を縦方向に引っ張ると、容易に伸びて、変形し、細長くなる、即ち、横方向の寸法(幅)の減少が生じやすい傾向にある。この幅の減少が「幅入り」と呼ばれる現象である。この現象は、エラストマー不織布の寸法安定性が低いことに起因して生じる。不織布製造中にエラストマー不織布の幅が減少すると、所望の幅の最終製品が得られない、物性にばらつきが生じる等の不都合が生じる。幅の減少や物性のばらつき等は、エラストマー不織布の目付が小さいほど、顕著に生じる。幅入りの問題は、積層した後の不織布においても生じ得る。例えば、積層した後の不織布を連続的に供給して、他のシートと一体化させるとき、または開口部を打ち抜きで形成するとき等に、積層した不織布の幅入りが生じて、これらの作業を困難にする。
また、伸縮性を有する不織布の加工に関連する問題として、所定の寸法に切断(例えばカット又は打ち抜き)するときに、刃の当たる部分が伸びて、輪郭がだれやすい(即ち、シャープな輪郭が得られない)ということが挙げられる。さらに、伸縮性を有する不織布を切断するときには、切断面が毛羽立ちやすい(切断面から短い繊維が切断面に対して垂直に出る)という問題もある。
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、製造時および加工時の幅入りが小さく、ならびに切断時の輪郭のだれを低減させる、伸縮性を有する積層不織布およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、伸縮性を有する層を予め形成し、この層と別の繊維層とを一体化して得られる構成を採用して、上記の問題を解決する不織布を得ることを検討した。特許文献2および3に記載のように、熱可塑性エラストマーを溶液にして、短繊維状に、短繊維不織ウエッブに直接堆積する手法で製造される不織布は、エラストマーを短繊維状に堆積して成る層の伸縮性が強く現れるものとなり、得られた不織布を後で加工するときに、幅入りが生じやすくなることによる。
さらに、本発明者らは、伸縮性を有する層を、伸縮性を有する繊維層とそれよりも伸縮性の小さい繊維層との積層体で形成することを検討した。そのような積層体は、非伸縮性繊維層が、製造時の幅入りを抑制すると考えたことによる。
発明者は、特許文献1に開示された、スパンボンドウェブにエラストマーから成るメルトブローン繊維を塗布する手法に着目し、スパンボンドウェブ(又は不織布)とメルトブローンウェブ(又は不織布)とが一体化された積層体の使用を検討した。スパンボンド不織布とメルトブローン不織布とを一体化させた積層不織布は、例えば、特許文献5(特開平11−158766号公報)に開示されている。しかし、スパンボンド不織布(エラストマー繊維で構成されていないもの)は、概して強度および伸長応力が大きく、また、伸縮性を有しない。そのため、スパンボンドウェブをエラストマー不織布と一体化させると、エラストマー不織布の伸縮性が阻害される傾向にあり、スパンボンドウェブは伸縮性を有する中層として使用するのに適さないことが分かった。
そこで、発明者がさらに検討を重ねたところ、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を含む伸縮性不織布の少なくとも一方の表面に、繊維長0.5〜20mmの繊維から成る短繊維層が積層されてなる積層体を、積層不織布の中に位置する伸縮性繊維層として利用し、かつ積層体の形態が積層構造の不織布において少なくとも一部維持されるようにすれば、製造過程、および積層した後の不織布の加工過程において、幅入りが抑制され、かつ伸縮性不織布に起因する伸縮性が積層不織布において現われることを見出し、本発明を案出するに至った。
即ち、本発明は、
熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を含む伸縮性不織布の少なくとも一方の表面に、繊維長0.5〜20mmの短繊維から成る短繊維層が積層されてなる積層体、および
当該積層体の少なくとも一方の表面に積層された、繊維長が当該短繊維層に含まれる繊維の繊維長よりも長いステープル繊維を50質量%以上含む、ステープル繊維層
を含み、
ステープル繊維層と積層体とが、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維、短繊維、およびステープル繊維が互いに交絡することにより一体化されている、
積層不織布を提供する。
この積層不織布は、短繊維層が、エラストマー不織布の寸法安定性を、ある程度高くして、エラストマー不織布が連続加工中に縦方向に伸びることに起因する幅入りを防止するので、安定して製造することができる。また、短繊維層は、ステープル繊維層と一体化した後も、積層不織布の一層を少なくとも部分的に構成するので、本発明の積層不織布を加工するとき、幅入りが生じることを有効に防止する。さらにまた、短繊維層は、スパンボンドウェブのように大きい強度を有していないため、エラストマー不織布の伸縮性を完全に阻害することはない。よって、本発明の積層不織布は、エラストマー不織布によりもたらされる伸縮性を呈する。
また、この積層不織布は、不織布の少なくとも一方の表面を、繊維長が短繊維層に含まれる繊維の繊維長よりも長いステープル繊維を含むステープル繊維層で形成している。そのため、不織布表面の風合いおよび触感は、ステープル繊維により支配されることとなり、それにより、種々の用途で積層不織布を使用することが可能となる。
ステープル繊維層は、繊度が0.5dtex以下である極細繊維を含むことが好ましい。そのような極細繊維を含むことにより、表面が緻密で、滑らかな触感の積層不織布を得ることができる。
極細繊維は、例えば、分割型複合繊維の割繊により形成されたものであることが好ましい。例えば、水流により繊維同士を交絡させる場合に、分割型複合繊維を用いると、交絡前までは、大きい繊度の繊維として、容易に取扱うことができ、交絡処理によって、繊維同士の交絡と割繊による極細繊維の形成を同時に実施できる。
あるいは、ステープル繊維層は、セルロース系繊維を含むことが好ましい。セルロース系繊維を含むことにより、当該繊維に特有の柔らかい触感とともに、伸縮性を有する不織布を得ることができる。また、セルロース系繊維は、例えば繊維同士を水流により繊維同士を交絡させる場合に、短繊維層と良好に交絡する。
セルロース系繊維は、例えば、コットンであることが好ましい。コットンは、天然素材として広く使用されている実績があるので、特に、積層不織布を人の肌と接する用途において使用する場合に好ましく使用される。また、コットンと、エラストマー不織布と、短繊維層とを組み合わせることによって、コットンを含む単層不織布では得られない、優れた機械特性を有する不織布を実現できる。
エラストマー不織布は、メルトブローン不織布であることが好ましい。メルトブローン不織布は、比較的小さい目付で提供されることが多いために、特に製造時に幅入りの問題を生じやすい。よって、エラストマー不織布がメルトブローン不織布であると、本発明の効果を有効に利用することができる。
本発明の積層不織布において、短繊維層は、親水性繊維を50質量%以上含む不織布であることが好ましい。親水性繊維は、特に水流により繊維同士を交絡一体化させるときに、ステープル繊維と良好に交絡することによる。また、親水性繊維を含む短繊維層は、積層不織布が乾燥状態にあるときに、積層不織布全体の剛性を高くして、不織布の連続加工(特に、切断)を容易にする。また、積層不織布が湿潤状態にあるときには、湿式不織布を構成する繊維同士の接合および/または交絡が解けやすくなるために、積層不織布全体が柔らかくなるとともに、積層不織布はより小さい力で伸長可能なものとなる。
本発明の積層不織布において、短繊維層は、パルプ繊維から成る湿式抄紙不織布であることが好ましい。短繊維層がパルプ繊維から成ると、積層不織布が乾燥状態にあるときの剛性と、湿潤状態にあるときの剛性との差がより大きくなる。また、パルプ繊維から成る短繊維層は、水流により繊維同士を交絡させるときに、ステープル繊維との交絡がより良好となる。
本発明の積層不織布においては、前記熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維、前記短繊維、および前記ステープル繊維が、水流交絡処理により互いに交絡していることが好ましい。水流交絡処理により繊維同士が交絡した積層不織布は、良好な風合いを有しつつ、各層が各々の役割を有効に発揮する(即ち、短繊維層は、積層不織布を加工するときの幅入りを減少させ、エラストマー不織布は、積層不織布全体に伸縮性を付与する)ものとなる。
本発明はまた、上記積層不織布の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、
繊維長0.5〜20mmの繊維から成る短繊維層の一方の表面に、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を集積して不織布を形成するとともに、集積した溶融または軟化している熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維によって、短繊維層と、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を含む不織布とを、接着させて、積層体を得ること、
積層体の少なくとも一方の表面に、繊維長が短繊維層に含まれる繊維の繊維長よりも長いステープル繊維を含むステープル繊維層を積層して、多層積層体を得ること、および
多層積層体に水流交絡処理を施すこと
を含む。ここで「多層積層体」という用語は、エラストマー不織布と短繊維層とからなる積層体と区別するために使用している。
この製造方法は、積層体を予め作製し、その積層体の片面または両面にステープル繊維層を配置して、繊維同士を水流交絡処理により一体化させることを特徴とする。この製造方法によれば、積層体を引張り気味にしながら、ステープル繊維層を積層し、さらに水流交絡処理を施すときに、積層体の幅入りが生じにくく、安定して、本発明の積層不織布を製造することが可能である。
本発明の製造方法においては、熱可塑性エラストマーを含んで成る樹脂をメルトブローン法により繊維化して積層体を形成することが好ましい。この方法によれば、エラストマー不織布が、メルトブローン不織布である積層体を容易に得ることができる。
本発明の積層不織布は、伸縮しやすいエラストマー不織布を、短繊維層に積層して一体化して成る積層体の少なくとも一方の表面に、短繊維層を構成する繊維の繊維長よりも繊維長の長いステープル繊維から成るステープル繊維層を積層して一体化したものである。この積層不織布においては、積層体が伸縮性を担う層として機能するとともに、積層体を構成する短繊維層が、積層不織布の製造時および積層不織布の加工時に発生する、積層体それ自身および積層不織布の幅入りを有効に抑制する。よって、本発明の積層不織布は、安定して製造できるとともに、連続加工(例えば、処理剤の塗布または浸漬、切断)に安定して付することができる。
また、本発明の積層不織布は、伸縮性を有するエラストマー不織布を一構成層として含み、エラストマー不織布による伸縮性を有するので、伸縮性が必要とされる用途に適用することができる。よって、本発明の積層不織布は、紙おむつ、生理用ナプキンおよびパンティーライナーのような、吸収体を内部に有している吸収物品を構成する伸縮性部材(例えばウエスト部材)、衛生マスク、ワイパー、化粧用物品(例えば、クレンジングシートおよびフェイスマスク)、ガーゼ、絆創膏のパッド、自動車の天井裏材、椅子の裏材等の産業資材用途等に好適に使用することができる。
本発明の積層不織布は、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を含む伸縮性不織布の少なくとも一方の表面に、短繊維層が積層されてなり、かつ伸縮性エラストマー不織布と短繊維層とから成る積層体、およびこの積層体の両方の表面に積層されたステープル繊維層から構成される。ここで、「表面」という用語は、不織布または層の主表面(厚さ方向と垂直な表面)を指す。
[積層体]
まず、積層体の一層である、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を含む伸縮性不織布(以下、「エラストマー不織布」とも呼ぶ)について説明する。熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維は、熱可塑性エラストマーを、30質量%以上含む樹脂から成る繊維であり、好ましくは熱可塑性エラストマーを50重量%以上含む。あるいは、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維は、熱可塑性エラストマーのみからなっていてよい。
熱可塑性エラストマー(単に「エラストマー」とも呼ぶ)としては、例えば、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマーおよびアミド系エラストマー等を挙げることができる。エラストマー不織布は、好ましくは、スチレン系エラストマーおよび/またはポリオレフィン系エラストマーを含む繊維から構成される。これらのエラストマーは成形性が良好であり、また、後述する製造方法で、本発明の積層不織布を製造する場合において、短繊維層と一体化させるときに、接着成分として良好に機能することによる。
スチレン系エラストマーは、好ましくは、スチレン成分を5重量%以上70重量%以下含む共重合体である。スチレン系エラストマーとしては、具体的には、スチレン・ブタジエンブロック共重合体エラストマー、およびスチレン・イソプレンブロック共重合体エラストマー、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体エラストマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体エラストマー、ならびにこれらの水素添加物であるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体エラストマー、およびスチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体エラストマーなどが挙げられる。水素添加ブロック共重合体において、水素転化率は80%以上であることが好ましい。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いてよい。
オレフィン系エラストマーとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、および1−オクテンなどから選択される2以上のα−オレフィンのランダムまたはブロック共重合体で、結晶化度が50%未満の低結晶性または非晶性のもので、MFRが20〜100g/10分、好ましくは50〜80g/10分の範囲にあるものが挙げられる。具体的には、オレフィン系エラストマーとして、エチレン・プロピレンランダム共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテンランダム共重合体エラストマー、およびプロピレン・1−ブテンランダム共重合体エラストマーなどのα−オレフィンのランダム共重合体エラストマー、ならびにエチレン・プロピレンブロック共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテンランダムブロック共重合体エラストマー、およびプロピレン・1−ブテンランダムブロック共重合体エラストマーなどのα−オレフィンのブロック共重合体エラストマーが挙げられる。
エラストマーを含む繊維がエラストマー以外の樹脂を含む場合、その樹脂は、オレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体である。これらの樹脂は成形性が良好であり、また、エラストマー不織布のタック性(粘着性)を低下させるという観点から良好に機能することによる。タック性の低下は、積層体を一旦ロールに巻き取り、積層不織布の製造において繰り出して使用するときに、繰り出しをスムーズに行うために必要とされる。さらに、これらの樹脂は、エラストマー不織布を構成する繊維の融点を高くし、乾燥工程でエラストマー不織布が硬化されにくくする効果を発揮する。あるいは、オレフィン系樹脂以外の樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはアクリル系樹脂を、エラストマーとともに使用してよい。
エラストマーを含む繊維がエラストマー以外の樹脂を含む場合、その割合は、70質量%以下であることが好ましい。エラストマー以外の樹脂の割合が70質量%を超えると、積層不織布において良好な伸縮性を得られないことがある。エラストマー不織布を構成する繊維が2以上の樹脂で形成される場合、繊維は複合形態であってよく、例えば、芯鞘型複合繊維、分割型複合繊維および海島型複合繊維であってよい。あるいは、繊維は、混合樹脂から成る単一繊維であってよい。
エラストマー不織布が、エラストマーを含まない繊維を含む場合、そのような繊維の割合は、エラストマー樹脂がエラストマー不織布の30質量%以上を占めるように、選択されることが好ましい。その理由は上記のとおりである。エラストマーを含まない繊維は、先に説明した、エラストマー以外の樹脂で形成された合成繊維、または天然繊維もしくは再生繊維である。合成繊維エラストマー不織布は、好ましくはエラストマーを含む繊維のみで形成される。
エラストマー不織布は、エラストマーを含む繊維、またはエラストマーを含む繊維とエラストマーを含まない繊維とから、構成される。エラストマー不織布の形態は特に限定されず、エアスルー不織布、熱接着不織布、湿式抄造不織布、エアレイ不織布、水流交絡不織布、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布、およびメルトブローン不織布のいずれであってもよい。エラストマー不織布は、好ましくはメルトブローン不織布およびスパンボンド不織布であり、より好ましくはメルトブローン不織布である。エラストマー不織布がスパンボンド不織布またはメルトブローン不織布であると、後述する方法で、本発明の積層不織布を製造する場合に、エラストマー不織布の製造と同時に、短繊維層とエラストマー不織布との接着一体化を実施でき、また、短繊維層と適度な接着強力で一体化し得る。メルトブローン不織布は、繊度の小さい繊維が均一に分布した不織布であって、柔軟であることから、より好ましく用いられる。
エラストマー不織布がメルトブローン不織布である場合、その平均繊維径は、0.5〜15μm程度とすることが好ましく、0.5〜10μm程度とすることがより好ましい。繊維径を0.5μm以下とすることは困難であり、15μmを超えると、風合いが硬くなり、伸縮性が低下する場合がある。平均繊維径は、エラストマー不織布を電子顕微鏡で50〜500倍に拡大して観察し、不織布を構成する繊維をランダムに20本選択して繊維径を測定し、平均値を算出することにより求められる。メルトブローン不織布は、通常の方法に従って製造することができる。後述するように、ステープル繊維層と一体化させる前の積層体は、短繊維層上に繊維を集積させる方法で、メルトブローン不織布の製造と、メルトブローン不織布と短繊維層との一体化とを同時に実施して、得たものであることが好ましい。
エラストマー不織布が、スパンボンド不織布である場合、その平均繊維径は7〜50μm程度とすることが好ましく、10〜25μm程度とすることがより好ましい。平均繊維径が50μmを超えると、風合いが硬くなり、伸縮性が低下する場合がある。後述するように、ステープル繊維層と一体化させる前の積層体は、短繊維層上に繊維を集積させる方法で、スパンボンド不織布の製造と、スパンボンド不織布と短繊維層との一体化とを同時に実施して得たものであることが好ましい。
いずれの形態をとる場合も、エラストマー不織布の目付は、5〜50g/mであることが好ましく、5〜35g/mであることがより好ましく、5〜25g/mであることがさらにより好ましい。エラストマー不織布の目付が5g/m未満であると、伸縮性が十分でない場合があり、50g/mを超えると、寸法安定性が高くなり、短繊維層と一体化させなくても、幅入り等の問題が生じにくいことによる。但し、タック性の問題は、いずれの目付のエラストマー不織布においても見られることから、タック性に起因する不都合を回避するという観点からは、ここで挙げた範囲外の目付のエラストマー不織布も、本発明において好ましく用いられる。
また、エラストマー不織布は、いずれの形態をとる場合も、不織布のいずれか一つの方向において、100%伸長時の歪みが好ましくは、60%未満であり、より好ましくは50%未満であり、さらにより好ましくは40%未満である。ここで、100%伸長時の歪みは、下記の方法で測定される。
[100%伸長時の歪み]
試料を、JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)(2007年)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10±3cm/分の条件で引張試験に付し、100%伸長させ、同じ速度で伸長を緩和して、伸長時の伸長応力(復路の伸長応力)が0となった時点のつかみ間隔の長さL(cm)(有効数字3桁)を測定し、歪み(%)={(L−10.0)/10.0}×100の式より、100%伸長時の歪みを求める。
次に短繊維層について説明する。短繊維層は、繊維長0.5〜20mmの短繊維から成る層である。短繊維の繊維長は、好ましくは、0.5〜15mmであり、より好ましくは0.8〜10mmであり、さらにより好ましくは1〜5mmである。短繊維層を構成する短繊維は、すべて同じ長さを有していてよく、あるいは異なる長さを有していてよい。短繊維の平均繊維長は、JIS L1015 8.4.1 A法(ステープルダイヤグラム法)(2007年)に準じて測定される。短繊維がパルプの場合、JIS P8226(パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法)(2006年)に準じて測定し、数平均繊維長を求める。
短繊維層は、ステープル繊維層と一体化する前に、一般に、エアレイウェブまたは湿式不織布の形態であってよい。湿式不織布には、後述するセルロース系短繊維から成る紙も含まれる。本発明において、短繊維層は、湿式不織布であることが好ましい。湿式不織布は、その構成繊維および繊維の交絡の度合いにもよるが、一体に保持された形態として、連続加工に供することができることによる。また、一般に湿式不織布は、嵩が低い(薄い)ため、水流およびニードルによる交絡性がよい。さらに、湿式不織布は、水流交絡処理で繊維同士を交絡させる場合には、水圧を低くして処理することを可能にするので、積層不織布全体の風合いを柔らかくすることができる。さらにまた、湿式不織布は、その製造方法に由来して、方向(縦方向、横方向)の違いによる物性の違いが少ない。よって、湿式不織布が短繊維層である積層不織布を、特に切断加工に付すときに、刃の方向の違いに起因して、1つの輪郭で「だれ」の度合いのばらつきが生じることを無くす、またはばらつきを少なくし得る。
短繊維層を構成する繊維は、天然繊維、再生繊維、および合成繊維のいずれであってもよい。短繊維層は、1種類の短繊維から構成されてよく、あるいは2以上の異なる繊維から構成されてもよい。
短繊維層を構成する繊維は、好ましくは、熱可塑性エラストマーを含まない材料からなる。短繊維が熱可塑性エラストマーを含むと、短繊維層によるエラストマー不織布の幅入り抑制効果を得られないことがある。
本発明においては、短繊維層は、親水性を有する短繊維を含むことが好ましい。短繊維層を親水性の層とすることにより、水流交絡処理で繊維同士を交絡させるときに、ステープル繊維層と短繊維層との交絡が強固となって、伸長時応力の大きい積層不織布を得ることができる。また、短繊維層が親水性の層であると、本発明の積層不織布において、短繊維層が液体保持層となり、積層不織布を、例えば、化粧料、洗剤または薬品等を含浸させて使用するシートとして好ましく用いることができる。親水性繊維は、短繊維層に好ましくは50質量%以上含まれ、より好ましくは70質量%以上含まれ、最も好ましくは100質量%を占める。
親水性を有する短繊維は、セルロース系短繊維であることがより好ましい。セルロース系繊維は、セルロースから成る、またはセルロースを主たる成分とする繊維を指す。セルロース繊維は、より具体的には、機械パルプ、再生パルプおよび化学パルプ等のパルプ;ビスコースレーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維(例えば、レンチングリヨセル(登録商標)およびテンセル(登録商標))等の再生繊維;ならびに麻(靱皮繊維および葉茎または葉から採取した繊維を含む)、コットン(木綿)等の植物系天然繊維である。
パルプ繊維は、針葉樹木材または広葉樹木材を用いて常套の方法で製造されたものであってよい。一般的に、パルプ繊維の繊度は、1.0〜4.0dtex程度、繊維長は0.5〜4.5mm程度であるが、この範囲外の繊度および/または繊維長を有するパルプを使用してもよい。パルプ繊維からなる短繊維層は、エアレイウェブまたは湿式不織布として提供され、あるいは綿状のパルプ(フラッフ(fluff)パルプ)としても提供され得る。
前述のように、パルプ繊維を含む、又はこれのみから成る湿式不織布には、紙が含まれる。パルプ繊維を含む又はこれのみから成る紙には、ティッシュ(ティッシュペーパーとも呼ばれる)が含まれる。パルプ繊維を含む短繊維層は、パルプ繊維のみから構成してよく、あるいは、パルプ繊維と他の繊維とから構成してよい。当該他の繊維は、パルプ以外のセルロース系短繊維(例えば、コットン、ビスコースレーヨンおよび溶剤紡糸セルロース繊維)または合成繊維(例えば、ポリプロピレン繊維およびポリエステル繊維)等であってよい。パルプ繊維から成る湿式不織布は、積層不織布に親水性を付与すること、および繊維同士を水流交絡処理により交絡させるときに交絡の度合いを高めることから、好ましく用いられる。パルプ繊維から成る湿式不織布を短繊維層とすると、得られる積層不織布の剛性が大きくなる。そのため、積層不織布を、特に切断加工するときには、輪郭がだれずに、シャープな輪郭を有する製品を得ることができる。
再生繊維を使用する場合、その繊度は、0.5〜6dtex程度であることが好ましく、0.5〜5dtex程度であることがより好ましい。再生繊維の繊度が小さすぎると、短繊維層が緻密になりすぎて、例えば、後述するように、水流交絡処理により、積層不織布を構成する層を一体化させるときに、水が通りにくく、短繊維層および/またはステープル繊維層が乱れて、得られる積層不織布の表面状態が悪くなることがある。再生繊維の繊度が大きすぎると、地合ムラが大きくなり、また、水流交絡処理により、積層不織布を構成する層を一体化させるときに、繊維同士の交絡が不十分となることがある。再生繊維を含む短繊維層は、好ましくは湿式不織布の形態で提供される。その理由は、先に説明したとおりである。
短繊維層は、セルロース系繊維以外の天然繊維または合成繊維で形成されてよい。天然繊維は、例えば、シルクおよび羊毛であり、合成繊維は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、またはエチレン−プロピレン共重合体等、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体から成るポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート等から成るポリエステル繊維、ナイロン6またはナイロン66等から成るポリアミド系繊維、ならびにアクリル系繊維等である。合成繊維は、複合繊維であってよく、具体的には、芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、または分割型複合繊維であってよい。これらの繊維には、必要に応じて親水化処理を施してよい。
短繊維層の目付は、得ようとする積層体および積層不織布の目付、および積層されるエラストマー不織布の目付等に応じて、適宜選択される。例えば、上述のようにエラストマー不織布の目付が、5〜50g/mである場合には、短繊維層の目付は、好ましくは、5〜50g/mであり、より好ましくは、10〜40g/mであり、さらに好ましくは、12〜30g/mである。短繊維層の目付が5g/m未満であると、短繊維層の強力が弱くなりすぎて、積層体にステープル繊維層を積層するときに加えられる張力で短繊維層が破断する場合があり、50g/mを超えると、最終的に得られる積層不織布において、エラストマー不織布の伸縮特性が表れず、短繊維層の伸縮特性が支配的となる場合がある。
積層体のエラストマー不織布と短繊維層とは、ステープル繊維層と一体化させる前に、熱可塑性エラストマーを含む繊維により接着していて、ステープル繊維層と一体化させた後も、一部において、熱可塑性エラストマーを含む繊維により接着した状態で存在していてよい。それにより、短繊維層による積層不織布の安定化がより高くなる。あるいは、短繊維層とエラストマー不織布とが接着している積層体は、ステープル繊維層と一体化した後に、接着が解除された状態で存在していてよい。あるいは、積層体のエラストマー不織布と短繊維層は、ステープル繊維層と一体化させる前に、接着および/または交絡せずに互いに独立していて、単に重ねられたものであってよい。
積層体の目付は、用途等に応じて、エラストマー不織布および短繊維層の目付を選択することにより、決定され、例えば、10〜100g/mであることが好ましく、10〜60g/mであることがより好ましく、20〜40g/mであることがさらに好ましい。積層体の目付が小すぎると、エラストマー不織布および短繊維層の少なくとも一方にムラがあり、良好な伸縮特性を得にくい。積層体の目付が大きすぎると、コストが高くなり、経済的でない。また、目付が大きすぎると、水流交絡処理を施すときに、繊維が交絡しにくくなる場合がある。
積層体は、エラストマー不織布の一方の表面にのみ、短繊維層が位置するものであってよく、あるいはエラストマー不織布の両方の表面に、短繊維層が位置するものであってよい。あるいは、積層体は、エラストマー不織布/短繊維層/エラストマー不織布の構成を有してよい。
[ステープル繊維層]
ステープル繊維層は、繊維長が短繊維層を構成する繊維の繊維長よりも長いステープル繊維から成る。ステープル繊維は、より厳密には、短繊維層を構成する繊維の平均繊維長よりも、ステープル繊維の平均繊維長が長いことを要する。一般には、ステープル繊維の平均繊維長は、10〜100mmの範囲内にあることが好ましく、20〜100mmの範囲内にあることがより好ましく、30〜80mmの範囲内にあることがさらにより好ましい。短繊維層及びステープル繊維層を構成する繊維の平均繊維長は、JIS L1015 8.4.1 A法(ステープルダイヤグラム法)に準じて測定される。ステープル繊維層は、平均繊維長が短繊維層を構成する繊維の平均繊維長よりも長い限りにおいて、短繊維層の平均繊維長よりも短い繊維を含んでいてよい。
ステープル繊維層を、積層不織布の片面または両面に配置することにより、エラストマー不織布の伸縮性が良好に発揮され、また、短繊維層の繊維と、積層不織布の表面を構成する繊維とが良好に交絡して、層同士が強い強度で接合した不織布を得ることができる。ステープル繊維は、交絡性がよく、エラストマー不織布の伸縮性を大きく阻害しないので好ましい。
なお、ステープル繊維以外の繊維のみから成る繊維層、例えば、メルトブローン法およびスパンボンド法により得られる繊維層、ならびに湿式抄紙不織布からなる繊維層は、伸長性がほとんどなく、中層のエラストマー不織布の伸縮性を阻害する傾向にある。また、これらの不織布を構成する繊維は交絡しにくい。
ステープル繊維層は、ステープル繊維を好ましくは50質量%以上含み、より好ましくは80質量%以上含み、最も好ましくはステープル繊維のみから成る。ステープル繊維以外の繊維として、ステープル繊維層は、スパンボンド法またはメルトブローン法により形成される、連続フィラメントを含んでよい。
ステープル繊維の材料は特に限定されず、例えば、コットン、シルク、およびウール等の天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維(リヨセル)等の再生繊維、ならびに合成繊維から、1または複数選択される。溶剤紡糸セルロース繊維は、具体的には、レンチングリヨセル(登録商標)およびテンセル(登録商標)の名称で上市されている。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、およびエチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン6およびナイロン66等のポリアミド系繊維、ならびにアクリル系繊維等を挙げることができる。合成繊維は、複合繊維であってよく、具体的には、芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、または分割型複合繊維であってよい。分割型複合繊維を用いる場合には、後述するように、最終的に得られるステープル繊維層において、繊維が各成分に分割されることにより形成された極細繊維が存在することとなる。
ステープル繊維が、合成繊維である場合、合成繊維は熱可塑性エラストマーを含まない材料または含むとしても30質量%未満の量で含む材料で形成されることが好ましい。熱可塑性エラストマーを含まない又は少ない量で含む合成繊維は、積層不織布の表面がタック性を有することを防止する。また、ステープル繊維層に、熱可塑性エラストマーを多い量で含む繊維が含まれると、ステープル繊維層が伸縮性を過度に有して、短繊維層を有していても、加工時の幅入りが有効に防止されないことがある。
本発明の積層不織布において、ステープル繊維層は、繊度1dtex以下の極細繊維を含むことが好ましい。極細繊維を含むことにより、表面が緻密で、滑らかな不織布を得ることができる。より好ましい極細繊維の繊度は、0.5dtex以下である。極細繊維の繊度が1dtexを超えると、極細繊維を含むことによる上記効果を得られないことがある。極細繊維の繊度の下限は、特に限定されないが、積層不織布表面の耐摩耗性を考慮すると、0.01dtex以上であることが好ましい。
極細繊維は、好ましくはステープル繊維層に、10質量%以上含まれ、より好ましくは50質量%以上含まれる。極細繊維の割合が10質量%未満であると、極細繊維を含むことによる、上記効果を得られないことがある。
極細繊維は、好ましくは分割型複合繊維の割繊により形成されるものであることが好ましい。その理由は先に説明したとおりである。分割型複合繊維は、具体的には、繊維断面において構成成分のうち少なくとも1成分が2個以上に区分されてなり、構成成分の少なくとも一部が繊維表面に露出し、その露出部分が繊維の長さ方向に連続的に形成されている繊維断面構造を有する。分割型複合繊維を構成するポリマーの好ましい組み合わせは、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロンなどである。
あるいは、ステープル繊維層は、セルロース系繊維を含むことが好ましい。「セルロース系繊維」の意味は、先に短繊維層に関連して説明したとおりである。上記において例示した、ステープル繊維層を構成するのに適した繊維は、その生成過程に着目して分類されている。「セルロース系繊維」という用語は、生成過程の如何にかかわらず、主成分によって分類したときに、一つの種類を表すものとして使用される。ステープル繊維層に適したセルロース系繊維は、具体的には、ビスコースレーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維(例えば、レンチングリヨセル(登録商標)およびテンセル(登録商標))等の再生繊維;ならびに麻(靱皮繊維および葉茎または葉から採取した繊維を含む)、コットン(木綿)等の植物系天然繊維である。
ステープル繊維層に適したセルロース系繊維は、コットン(木綿)である。コットンは、天然素材として使用された実績が長く、衣服、下着および衛生材料の素材として広く使用されていて、肌に優しい、触感がよい、および安全であるという印象を、一般の消費者に与えている。したがって、コットンを使用することによって、より消費者に受け入れられやすい製品を提供することができる。また、コットンのみから成る、またはコットンと他の繊維とを混合して成る不織布は、一般に、機械特性において劣り、例えば、不織布に襞(または折り目)を付けようとすると、不織布に破れが生じることがある。しかし、コットンをステープル繊維層とし、これを、エラストマー不織布/短繊維層の積層不織布の片面または両面に配置して一体化させると、機械特性が向上し、襞(または折り目)を容易に形成することができる。
コットンは、不織布製造に一般的に用いられているものを任意に使用できる。具体的には、20〜60mm程度の繊維長(平均繊維長)を有するコットンを使用できる。ステープル繊維層は、繊維長および種類の異なるコットンを複数含んでよい。本発明の積層不織布の構成をとる場合、繊維長の長いものと繊維長の短いものが混在するステープル繊維層は、繊維長の長いもの(一般に、より良い触感を与える)のみからなるステープル繊維層と同等の触感を与える。その理由は定かではないが、このことは、価格の安いコットンの使用を可能にする。例えば、ステープル繊維層は、その繊維長(平均繊維長)が短繊維を構成する繊維の繊維長(平均繊維長)よりも短いかぎりにおいて、例えば、繊維長10mm程度のコットン(例:コーマ落綿)を含んでよい。
分割型複合繊維を使用する場合、分割型複合繊維は水流交絡処理前のステープル繊維層に50質量%以上含まれることが好ましく、80質量%以上含まれることがより好ましい。水流交絡処理後のステープル繊維層において、分割型複合繊維は各構成成分に完全に分割している必要はなく、例えば、構成成分の一部のみが分割していてよく、あるいは、極細繊維が完全に独立した繊維とならず、一本の分割型複合繊維から一本または複数本の極細繊維が枝分かれしていてもよい。このように分割型複合繊維において極細繊維の分割が途中で止まっている場合等には、ステープル繊維層中の極細繊維の割合を求めることが難しいことがある。このことを考慮して、上記において、本発明の積層不織布を構成するステープル繊維層を、水流交絡前の分割型複合繊維の割合で特定していることに留意されたい。
ステープル繊維層の目付はいずれの繊維を使用する場合でも、15g/m以上50g/m以下であることが好ましい。より好ましいステープル繊維層の目付は、20g/m以上40g/m以下である。ステープル繊維層の目付が15g/m未満であると、ステープル繊維層の厚みが小さくなるので、短繊維層を構成する繊維が表面に露出して、脱落することがある。ステープル繊維層の目付が50g/mを超えると、繊維同士の交絡が不十分となることがある。特に、本発明の積層不織布を水流交絡処理により一体化させる場合には、エラストマー不織布が水流に対し、バリアとなるので、ステープル繊維層の目付が大きすぎると、水流交絡処理による層間の一体化が不十分となる傾向にある。
ステープル繊維層が他の繊維層と一体化される前の形態は、特に限定されず、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、および湿式抄紙ウェブ等から選択されるいずれの形態であってもよい。工程性および風合い等を考慮すると、ステープル繊維層は、カードウェブであることが好ましい。
[積層不織布]
次に、上記各層を積層して成る、本発明の積層不織布を、その製造方法とともに説明する。
本発明の積層不織布は、前記積層体の少なくとも一方の表面に、ステープル繊維層が積層され、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維と、短繊維と、ステープル繊維とが、交絡して一体化されてなる不織布である。本発明の積層不織布は、用途等によるが、各層の目付がそれぞれ前記好ましい範囲内にある目付を有し、かつ全体として、20〜260g/mの範囲内にある目付を有し、より好ましくは50〜180g/mの範囲内にある目付を有し、さらにより好ましくは60〜140g/mの範囲内にある目付を有する。積層不織布の目付が小さい場合には、いずれか1層または複数の層の目付が小さくて、所期の効果(製造時および加工時の幅入りの減少、エラストマー不織布による伸縮性の付与)を得られないことがある。積層不織布の目付が大きい場合には、いずれか1層または複数の目付が大きくて、やはり所期の効果を得られないことがある。
本発明の積層不織布を、積層体の一方の表面がエラストマー不織布の表面であり、他方の表面が短繊維層の表面である積層体一方の表面にのみステープル繊維層を積層して構成する場合、ステープル繊維層は、いずれの側に配置してよい。ステープル繊維層を、エラストマー不織布側に配置すると、ステープル繊維層とエラストマー不織布との交絡がより強くなり、エラストマー不織布の伸縮にステープル繊維層が追随しやすくなり、伸縮時にステープル繊維の毛羽立ち及び抜けが少なくなる。ステープル繊維層を、短繊維層側に配置すると、ステープル繊維層と短繊維との交絡がより強くなり、また、短繊維が表面に露出しないので、短繊維が脱落しにくくなる。
各層が交絡一体化された状態の本発明の積層不織布においては、積層体がなお、少なくとも一部において、積層体として存在する。即ち、積層不織布の断面を観察したときに、少なくとも一部において、各層を明確に識別することができ、短繊維層およびエラストマー不織布がそれぞれ1つの層として存在する。このことにより、本発明の不織布は、さらに連続加工に付したときでも、幅入りが生じにくく、また、エラストマー不織布の有する伸縮性が顕現するものとなる。
本発明の積層不織布はまた、積層体の両面がステープル繊維層で覆われているため、その外観ならびに表面の触感および風合いは、ステープル繊維層により支配され、例えば、エラストマー不織布が有するタック性や、短繊維層の毛羽立ちが見られないものとなる。よって、本発明の不織布は、ステープル繊維層を構成する繊維を適宜選択することにより、その繊維を用いた不織布が通常使用される用途において、伸縮性がプラスされた不織布として、利用することができる。
本発明の積層不織布は、好ましくは水流交絡処理を利用して製造される。以下に、水流交絡処理を利用して、本発明の積層不織布を製造する方法を説明する。
まず、積層体を製造する。積層体は、繊維長0.5〜20mmの繊維から成る短繊維層の一方の表面に、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を集積して不織布を形成するとともに、集積した溶融または軟化している熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維によって、短繊維層と、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を含む不織布とを、接着させて得ることが好ましい。この方法で積層体を製造する場合、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を集積して形成される不織布は、短繊維層の無い状態で集積したときに、いずれか一つの方向において、100%伸長時の歪みが50%未満となる伸縮性を有するものであることが好ましく、100%伸長時の歪みが40%未満となるような伸縮性を有するものであることがより好ましい。
短繊維層とエラストマー不織布は、好ましくは3〜300mN/5cmの剥離強力で一体化され、より好ましくは3〜100mN/5cmの剥離強力で一体化され、最も好ましくは、3〜50mN/5cmの剥離強力で一体化されている。剥離強力が小さすぎると、積層体において両者の剥離が生じやすく、取扱い性が悪くなる。剥離強力が大きすぎると、最終的に得られる積層不織布においてエラストマー不織布の伸縮特性を十分に得られないことがある。
そのように両者を接着させるために、積層体は、短繊維層の上に、溶融した繊維を集積する方法でエラストマー不織布を製造することを含む方法で、好ましくは製造される。繊維の集積は、メルトブローン法またはスパンボンド法で実施することが好ましい。メルトブローン法またはスパンボンド法により、熱可塑性エラストマー繊維を短繊維層の上に集積すると、集積直後の繊維が溶融または軟化しているため、その後、冷却することにより、集積された熱可塑性エラストマー繊維と短繊維層の繊維とが接着されることとなる。繊維の集積は、通常採用されているメルトブローン法またはスパンボンド法で実施することができる。即ち、積層体は、繊維を集積する捕集ベルトの上に短繊維層を配置して、メルトブローン法またはスパンボンド法を実施することにより、製造することができる。必要に応じて、集積した後に、圧力を加えて、両者の接合の度合いをより高くしてよい。
より具体的には、メルトブローン法は、樹脂を溶融押出し、メルトブローン用の紡糸口金から紡糸された繊維を、高温高速の気体によって極細繊維流としてブローン紡糸し、捕集ベルトに載置された短繊維層上で捕集することにより実施できる。スパンボンド法は、押出機から樹脂を溶融押出しし、紡糸口金から樹脂を紡糸し、紡糸された繊維をエアサッカー等の気流牽引型の装置で引取り、気流とともに繊維を、捕集ベルトなどのウェブ捕集装置に載置された短繊維層上で捕集し、その後、必要に応じて、ウェブを、熱風吹き付け装置または加熱ロール等の加熱装置を用い、繊維同士を接着させることにより実施できる。
短繊維層をエラストマー不織布の両方の表面に位置させるときは、上記の方法で短繊維層の上にエラストマー不織布を形成した後、熱可塑性エラストマーを含む繊維が溶融または軟化している間に、短繊維層を積層して、必要に応じて圧力を加えて、接着させる。
あるいは、エラストマー不織布と短繊維層とは、別々に用意して、熱ロールまたは熱風吹き付け法等の熱処理により、接合させてもよい。その場合、エラストマー不織布と短繊維層との接合が強くなりすぎないように、熱処理の条件を適宜設定する必要がある。
さらに、エラストマー不織布と短繊維層とを、エラストマー不織布の繊維で接着した後で、水流交絡処理を施してもよい。水流交絡処理を施すと、両者の接合強度が高くなる。水流交絡処理は、短繊維をエラストマー不織布を構成する繊維に絡み合わせるように、短繊維層の側から実施することが好ましい。水流交絡処理条件は、エラストマー不織布および短繊維層の目付、ならびに積層体における両者の接合強度に応じて、適宜設定される。例えば、エラストマー不織布および短繊維層を合わせた目付が10〜100g/mである場合には、80〜100メッシュの平織の支持体の上にウェブを載せて、孔径0.05mm以上0.5mm以下のオリフィスが0.3mm以上1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧2MPa以上10MPa以下の水流を、短繊維層の側から1〜3回ずつ噴射することにより、水流交絡処理を実施してよい。
上記のようにして得られる積層体は、低い伸長率では、短繊維層の機械特性が支配的であり、高い伸長率ではエラストマー不織布の機械特性が支配的になる、積層体である。この積層体は、縦方向(機械方向)で伸長させたときに、応力が、低い伸長率では上昇してき、3〜30%の範囲内にある伸長率に達すると、短繊維層が破断して、応力が急激に低下する。その後は、エラストマー不織布の伸縮促成が支配的となって、伸長率を高くしても、低い応力を示す。
エラストマー不織布と短繊維層とが接着一体化した積層体において、伸長応力が最大となる伸長率は、前述のとおり、3〜30%であり、好ましくは5〜20%、最も好ましくは8〜18%である。伸長応力が最大となる伸長率が3%以上であると、連続加工するときに加えられる張力で短繊維層が破断することがない。伸長応力が最大となる伸長率が30%以下であると、伸度を大きくしたときに、短繊維層が破断し、エラストマー不織布の伸縮特性が発現する。
エラストマー不織布と短繊維層とが接着一体化した積層体において、機械方向に伸長させたときの最大の伸長応力(以下、この応力を「最大応力」とも呼ぶ)は、好ましくは1〜20N/5cmであり、より好ましくは1.5〜15N/5cmであり、最も好ましくは、2〜12N/5cmである。最大応力が1N/5cmより小さいと、連続加工するときに加えられる張力で短繊維層が破断することがある。最大応力が20N/5cmを超えると、エラストマー不織布の伸縮特性が表れず、短繊維層の伸縮特性に支配されやすい。
次いで、積層体の両方の表面に、ステープル繊維層が位置するように、多層構造(通常3層(エラストマー不織布の一方の表面にのみ短繊維層が配置され、かつステープル繊維層がエラストマー不織布または短繊維層の表面に配置されている場合)ないし5層(エラストマー不織布の両方の表面に短繊維層が配置されている場合、又は短繊維層の両方の表面にエラストマー不織布が配置されている場合)の積層体を作製する。このとき、ステープル繊維層は、繊維同士が交絡していない又は交絡が極めて緩い、ウェブの状態であってよい。
多層積層体において、ステープル繊維層は、前述のように、カードウェブ、エアレイウェブ、および湿式抄紙ウェブ等から選択されるいずれの形態であってもよい。また、最終的に得られる積層不織布において、ステープル繊維層を、分割型複合繊維の割繊により形成される、繊度1dtex以下の極細繊維層を含む層とする場合には、分割型複合繊維は、多層積層体のステープル繊維層に50質量%以上含まれることが好ましく、80質量%以上含まれることがより好ましい。
この多層積層体を、水流交絡処理に付す。このとき、ステープル繊維層が分割型複合繊維を含む場合には、分割型複合繊維が割繊されて、極細繊維が形成される。水流交絡処理は、公知の方法で実施してよく、その条件は最終的に得ようとする積層不織布の目付および分割型複合繊維を使用する場合には、その所望の割繊度合い等に応じて適宜設定してよい。水流交絡処理は、例えば、ウェブを80〜100メッシュの平織の支持体の上に載せて、孔径0.05mm以上0.5mm以下のオリフィスが0.3mm以上1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上10MPa以下の水流を、表裏面側からそれぞれ1〜4回ずつ噴射することにより実施してよい。特に、7MPa未満の低水圧で水流交絡処理すると、短繊維が表面に露出するのを抑制することができる。
ステープル繊維層がセルロース系繊維を50質量%よりも多く含む場合には、ステープル繊維層が合成繊維を50質量%よりも多く含む場合と比較して、水圧を低くしても、同程度の機械特性、特に伸縮特性を実現できる。これは、セルロース系繊維が一般に親水性を有することによると考えられる。そのため、セルロース系繊維をステープル繊維層の主成分として使用すると、低い圧力の水流で繊維同士が絡み合った、柔らかな触感を有する水流交絡不織布を得ることができる。
水流交絡処理により、短繊維層とエラストマー不織布との接着が破壊され、得られる積層不織布において、短繊維層とエラストマー不織布とが繊維同士の交絡によってのみ一体化する場合がある。その場合でも、短繊維層による効果(不織布の幅入りの減少等)およびエラストマー不織布による効果(積層不織布全体の伸縮性の確保)を十分に得られる。
積層体がエラストマー/短繊維層から成る2層構造であるとき、好ましくは、水流は、積層体のエラストマー不織布に隣接するステープル繊維層の側から噴射し、それから、積層体の短繊維層に隣接するステープル繊維層の側から噴射する。この順序で水流を噴射することにより、積層不織布において短繊維層が破壊されにくく、より確実に1層として残すことができる。
水流交絡処理を施して製造した積層不織布においては、水流の噴射された箇所がストライプ状の凹部を形成してよい。当該凹部においては、短繊維層を構成する短繊維が周囲に飛散したために、短繊維の量が少なくなっていて、厚さが小さくなっている。この部分では、多層構造が崩れて、部分的にステープル繊維層/エラストマー不織布の2層構造、ステープル繊維層/エラストマー不織布/ステープル繊維層の3層構造となっていることもあるが、それ以外の部分では多層構造が残存している。よって、水流交絡処理を用いて本発明の積層不織布を製造する場合には、本発明の所期の効果(連続加工時の幅入り及び伸びの減少、ならびにエラストマー不織布による伸縮性の顕現)を達成する、積層不織布を得ることが容易となる。
短繊維層が、パルプ繊維からなる湿式不織布である場合、水流交絡処理により、水流のあたった箇所のパルプ繊維が飛散する等して、パルプ繊維が再配列することがある。パルプ繊維の再配列は、積層不織布の初期応力(パルプ層が破断するまでの応力)をより小さくする(制御する)ことを可能にする。また、パルプ繊維の再配列により、パルプ層が液体を保持しやすくなり、保水性が向上する。
あるいは、本発明の積層不織布は、積層体とステープル繊維層とをニードルパンチにより一体化する方法で製造してよい。あるいはまた、本発明の積層不織布は、ニードルパンチと、水流交絡処理とを組み合わせて、製造してよい。あるいは、本発明の積層不織布は、ステープル繊維層、短繊維層およびエラストマー不織布を、別個に用意して、それらを単に重ね合わせた多層積層体を、水流交絡処理および/またはニードルパンチにより一体化する方法で製造してよい。
本発明の積層不織布は、短繊維層/エラストマー不織布の積層体の片面又は両面にステープル繊維層が積層された3又は4層構造、短繊維層/エラストマー不織布/短繊維層の積層体の片面又は両面にステープル繊維層が積層された4又は5層構造を有する。そのため、ステープル繊維層が本来有する風合いを有しつつ、短繊維層により、製造時および加工時の安定性が確保され、エラストマー不織布により伸縮性が確保されたものとなる。さらに、短繊維層を親水性繊維で形成することにより、内部に親水性層(または吸水層)を有する構成とすることができる。したがって、本発明の積層不織布は、乾燥状態又は湿潤状態のいずれの形態でも使用することができ、吸収性物品の伸縮部材、衛生マスク、対人および対物ワイパー、パップ材、化粧用物品(例えば、クレンジングシートおよびフェイスマスク)、ガーゼおよび絆創膏のパッド、自動車の天井裏材、椅子の裏材等の産業資材用途等に好適に使用することができる。
(積層体Aの製造)
短繊維層として、パルプ繊維から成る目付17g/mのティッシュ(ハビックス(株)製)を用意した。このティッシュを、メルトブローン装置の搬送ベルト上に載置して、連続的に供給しながら、ティッシュの表面に、熱可塑性エラストマー(スチレン系エラストマー 商品名:クレイトン1657G クレイトンポリマージャパン(株)製)60質量%とポリプロピレン樹脂40質量%とを混合した混合樹脂を、メルトブローン法により、ティッシュの上に15g/mの目付となるように集積して、エラストマー不織布と短繊維層とから成る積層体Aを得た。この積層体Aは、最大応力が縦方向で10.0N/5cm、横方向で4.2N/5cm、伸長応力が最大となる伸度が、縦方向で12.2%、横方向で5.1%であった。
なお、積層体Aの最大応力、および伸長応力が最大となる伸度はいずれも、JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)(2007年)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片を、幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10±3cm/分の条件で伸長させて、測定した。積層体Bのそれらも、同じ方法で測定した。また、最大応力、および伸長応力が最大となる伸度は、短繊維層(ティッシュ)の破断が生じるまで、積層体を伸長させて求めた。
メルトブローン法による繊維の集積は下記の条件に従って実施した。
ポリマー溶融温度(℃) 290
ポリマー吐出量(g/分) 0.1
熱風温度(℃) 300
熱風風量(m3/分) 2.7
熱風圧力(MPa) 0.47
オリフィス孔径(mm) 0.3
ノズル幅(mm) 800
ノズルピッチ(mm) 1
生産スピード(m/分) 10
(積層体Bの製造)
短繊維層として、パルプ繊維から成る目付17g/mのティッシュ(ハビックス(株)製)を用意した。このティッシュを、メルトブローン装置の搬送ベルト上に載置して、連続的に供給しながら、ティッシュの表面に、熱可塑性エラストマー(水素添加型スチレン−イソプレン−スチレン系エラストマー)60質量%とポリプロピレン樹脂40質量%とを混合した混合樹脂を、メルトブローン法により、ティッシュの上に13g/mの目付となるように集積して、エラストマー不織布(商品名:セプトン クラレ(株)製)と短繊維層とから成る積層体Bを得た。この積層体Bは、最大応力が縦方向で9.8N/5cm、横方向で4.0N/5cm、伸長応力が最大となる伸度が、縦方向で11.8%、横方向で5.0%であった。
(エラストマー不織布の製造)
上記積層体Aの製造で用いた混合樹脂を、上記条件でメルトブローン法により、搬送ベルト上に集積して、目付15g/mのエラストマー不織布を得た。このエラストマー不織布(即ち、上記積層体Aを構成するエラストマー不織布に相当する)の縦方向(MD方向)および横方向(CD方向)の100%伸長時の歪みは、23%であった。
(試料1:実施例
ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせから成る、繊度2.2dtex、繊維長51mmの分割型複合繊維(商品名DFS(SH) ダイワボウポリテック(株)製)からなる目付約34g/mのパラレルカードウェブを2枚作製し、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとした。
積層体Aの両面に、エラストマー不織布の表面に隣接する位置に第1ステープル繊維ウェブを、短繊維層の表面に隣接する位置に第2ステープル繊維ウェブを配置して、4層構造の積層体を形成し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いて、積層体の第1ステープル繊維ウェブの表面に向けて、3MPaの柱状水流を1回噴射し、第2ステープル繊維ウェブの表面に向けて水圧3.5MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。次いで、水流交絡処理後の積層体を、エアスルー熱処理機を用いて、110℃で乾燥して積層不織布を得た。
(試料2:実施例
分割型複合繊維として、ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせから成る、繊度2.2dtex、繊維長51mmの分割型複合繊維(商品名DF−7 ダイワボウポリテック(株)製)からなる目付約34g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとして用いたこと、および水流交絡処理の際に表1に記載の水圧を用いたこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
(試料3:実施例
ステープル繊維を構成する繊維として、繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨン(商品名コロナ、ダイワボウレーヨン(株)製)を選択し、このレーヨンからなる目付約34g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとして用いたこと、および水流交絡処理の際に表1に記載の水圧を用いたこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
(試料4:実施例
試料3の製造に用いたレーヨン繊維を使用して、目付約34g/mのパラレルカードウェブを作製し、これを第1ステープル繊維ウェブとして用い、繊度1.6dtex、繊維長44mmのポリエチレンテレフタレート繊維(商品名70W、東洋紡績(株)製)からなる目付約34g/mのパラレルカードウェブを第2ステープル繊維ウェブとして用いたこと、および水流交絡処理の際に表1に記載の水圧を用いたこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
(試料5:実施例
繊度1.0dtex、繊維長38mmのアクリル繊維(商品名トレロン、東レ(株)製)からなる目付約34g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとして用いたこと、および水流交絡処理の際に表1に記載の水圧を用いたこと以外は、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
(試料6:比較例
ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせから成る、繊度2.2dtex、繊維長51mmの分割型複合繊維(商品名DFS(SH) ダイワボウポリテック(株)製)からなる目付約42.5g/mのパラレルカードウェブを2枚作製し、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとした。
エラストマー不織布(ティッシュ層を有しない)の両面に第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブを配置して、3層構造の積層体を形成し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いて、積層体の第1ステープル繊維ウェブの表面に向けて、3MPaの柱状水流を1回噴射し、第2ステープル繊維ウェブの表面に向けて、水圧3.5MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。次いで、積層体を、エアスルー熱処理機を用いて110℃で乾燥して積層不織布を得た。
(試料7:比較例
分割型複合繊維として、ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせから成る、繊度2.2dtex、繊維長51mmの分割型複合繊維(商品名DF−7 ダイワボウポリテック(株)製)からなる目付約42.5g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとして用いたこと、および水流交絡処理の際に表1に記載の水圧を用いたこと以外は、試料6を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
(試料8:比較例
ステープル繊維を構成する繊維として、繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨン(商品名コロナ、ダイワボウレーヨン(株)製)を選択し、このレーヨンからなる目付約42.5g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとして用いたこと以外は、試料6を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
(試料9:比較例
試料8の製造に用いたレーヨン繊維を使用して、目付約42.5g/mのパラレルカードウェブを作製し、これを第1ステープル繊維ウェブとして用い、繊度1.6dtex、繊維長44mmのポリエチレンテレフタレート繊維(商品名70W、東洋紡績(株)製)からなる目付約42.5g/mのパラレルカードウェブを第2ステープル繊維ウェブとして用いたこと、および水流交絡処理の際に表1に記載の水圧を用いたこと以外は、試料6を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
(試料10:比較例
繊度1.0dtex、繊維長38mmのアクリル繊維(商品名トレロン、東レ(株)製)からなる目付約42.5g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとして用いたこと以外は、試料を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
(試料11:実施例
コットン(繊維長10〜60mmの繊維を含み、平均繊維長26mm、商品名MS−D,丸三産業(株)製)からなる目付約35g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとして、作製した。積層体Bの両面に、エラストマー不織布の表面に隣接する位置に第1ステープル繊維ウェブを、短繊維層の表面に隣接する位置に第2ステープル繊維ウェブを配置して、4層構造の積層体を形成し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、試料1を製造するときに採用した条件と同様の条件で実施した。さらに、水流交絡処理後の積層体を、試料1を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って、乾燥して、積層不織布を得た。
(試料12:実施例
繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨン(商品名コロナ、ダイワボウレーヨン(株)製)と繊度1.6dtex、繊維長44mmのポリエチレンテレフタレート繊維(商品名70W、東洋紡績(株)製))とを、8:2(重量比)の割合で混合した。この混合繊維からなる目付約35g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1および第2ステープル繊維ウェブとして作製した。
積層体Bの両面に、エラストマー不織布の表面に隣接する位置に第1ステープル繊維ウェブを、短繊維層の表面に隣接する位置に第2ステープル繊維ウェブを配置して、4層構造の積層体を形成し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いて、積層体の第1ステープル繊維ウェブの表面に向けて、2.5MPaの柱状水流を1回噴射し、第2ステープル繊維ウェブの表面に向けて水圧3.0MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。次いで、水流交絡処理後の積層体を、エアスルー熱処理機を用いて、110℃で乾燥して積層不織布を得た。
(試料13:参考例(製造例)
繊度2.2dtex、繊維長51mmの分割型複合繊維(商品名DFS(SH) ダイワボウポリテック(株)製)から成る目付約35g/mのパラレルカードウェブを1枚作製した。このウェブを、積層体Bのエラストマー不織布の表面に隣接する位置に配置して、3層構造の積層体を形成し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いて、積層体の繊維ウェブの表面に向けて、2.5MPaの柱状水流を1回噴射し、短繊維層の表面に向けて水圧3.0MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。次いで、水流交絡処理後の積層体を、エアスルー熱処理機を用いて、110℃で乾燥して積層不織布を得た。
(試料14:実施例
繊度2.2dtex、繊維長38mmの分割型複合繊維(商品名DFS(SH) ダイワボウポリテック(株)製)から成る目付約35g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1および第2ステープル繊維ウェブとして作製した。積層体Bのエラストマー不織布の表面に隣接する位置に配置して、第1ステープル繊維ウェブを、短繊維層の表面に隣接する位置に第2ステープル繊維ウェブを配置して、4層構造の積層体を形成し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いて、積層体の第1ステープル繊維ウェブの表面に向けて、3.0MPaの柱状水流を1回噴射し、第2ステープル繊維ウェブの表面に向けて水圧3.0MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。次いで、水流交絡処理後の積層体を、エアスルー熱処理機を用いて、110℃で乾燥して積層不織布を得た。
(試料15:実施例
繊度1.6dtex、繊維長44mmのポリエチレンテレフタレート繊維(商品名70W、東洋紡績(株)製)から成る目付約35g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1および第2ステープル繊維ウェブとして作製した。積層体Bの両面に、エラストマー不織布の表面に隣接する位置に第1ステープル繊維ウェブを、短繊維層の表面に隣接する位置に第2ステープル繊維ウェブを配置して、4層構造の積層体を形成し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いて、積層体の第1ステープル繊維ウェブの表面に向けて、3.0aの柱状水流を1回噴射し、第2ステープル繊維ウェブの表面に向けて水圧3.5MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。次いで、水流交絡処理後の積層体を、エアスルー熱処理機を用いて、110℃で乾燥して積層不織布を得た。
(試料16:比較例
試料11の作成で使用したコットンと同じコットンからなる目付約35g/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1ステープル繊維ウェブ及び第2ステープル繊維ウェブとして、作製した。目付26g/mのティッシュ(ハビックス(株)製)を用意し、これの両方の表面に隣接するように、第1および第2ステープル繊維ウェブをそれぞれ配置した。これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いて、積層体の第1ステープル繊維ウェブの表面に向けて、3.0MPaの柱状水流を1回噴射し、第2ステープル繊維ウェブの表面に向けて水圧3.0MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。次いで、水流交絡処理後の積層体を、エアスルー熱処理機を用いて、110℃で乾燥して積層不織布を得た。
(試料17:実施例
水流交絡処理を、第1ステープル繊維ウェブの表面に向けて、水圧2.5MPaの柱状水流を1回噴射し、第2ステープル繊維ウェブの表面に向けて、水圧3.0MPaの柱状水流を1回噴射して実施したことを除いては、試料11と同じ繊維および構成を用い、試料11を製造するときに採用した同じ手順に従って積層不織布を得た。
(試料18:比較例
繊度2.2dtex、繊維長51mmの分割型複合繊維(商品名DFS(SH) ダイワボウポリテック(株)製)から成る目付約30/mの2枚のパラレルカードウェブを、それぞれ第1および第2ステープル繊維ウェブとして作製した。エラストマー不織布として、アミド系エラストマーから成る、目付40g/mのスパンボンド不織布(品番PC5040 出光ユニテック(株)製)を用意し、短繊維層として、目付17g/mのティッシュ(ハビックス(株)製)を用意した。
第1ステープル繊維層/スパンボンド不織布/ティッシュ/第2ステープル繊維層の順に積層して、4層構造の積層体を形成し、これに水流交絡処理を施した。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いて、積層体の第1ステープル繊維ウェブの表面に向けて、3.0MPaの柱状水流を1回噴射し、第2ステープル繊維ウェブの表面に向けて水圧3.5MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。次いで、水流交絡処理後の積層体を、エアスルー熱処理機を用いて、110℃で乾燥して積層不織布を得た。
(試料19:比較例
水流交絡処理の際の水圧を表1に記載の値としたこと以外は、試料18を製造するときに採用した手順と同様の手順に従って積層不織布を得た。
得られた試料を、JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度10±3cm/分の条件で引張試験に付し、5%、10%、15%、20%、25%、30%伸長時の伸長応力(往路の伸長応力)を測定し、30%伸長させた直後、同じ速度で伸長を緩和して、30%、25%、15%、10%伸長時の伸長応力(復路の伸長応力)を測定した。引張試験は、不織布の横方向(機械方向と直交する方向、即ちCD方向)についてのみ実施した。さらに、伸長応力が0となった時点のつかみ間隔の長さL’(cm)(有効数字3桁)を測定し、歪み(%)={(L’−10.0)/3.0}×100の式より、30%伸長時の歪みを求めた。
各試料の往路の伸長応力、復路の伸長応力、および歪みを、表1に示す。
Figure 0005295713
試料1〜10、試料11〜15および試料16〜19はいずれも、歪みが0ではなく、また、手で2−3回、繰り返し伸ばしたときに、積層体を有しない目付100g/m程度の水流交絡不織布と比較して、戻り感をより強く感じることができた。このことより、試料1〜10の資料はいずれも、伸縮性を有していたといえる。試料16はエラストマー不織布を含まないため、25%伸長時の復路の伸長応力が小さく、伸縮性を殆ど示さなかった。
試料1〜5および試料11〜15の積層不織布を製造する際には、積層体Aの巻き取り速度を送り出し速度に対して7%速くして、張力(ラインテンション)を縦方向(機械方向(MD方向))に加えながら、ステープル繊維層を積層し、かつ水流交絡処理を施しても、幅入りは小さく、5%程度(張力を加える前の横方向の寸法を100としたときの、横方向の寸法の減少の割合で示す)であった。試料6〜10の積層不織布の製造の際にエラストマー不織布に同じ張力を縦方向に加えると、30%程度の幅入りが生じ、これらの試料の連続的な製造は行いにくかった。試料16はエラストマー不織布を含まないため、製造中の幅入りは小さかった。
試料1と試料6とは、短繊維層の有無においてのみ異なり、ステープル繊維層を構成する繊維は同じであり、全体の目付も略同じである。試料2と試料7、試料3と試料8、試料4と試料9、試料5と試料10の関係も同様である。しかしながら、往路の伸長時応力は、すべて4層構造のものの方が高かった。このことは、短繊維層の短繊維とステープル繊維層のステープル繊維とが良好に交絡していることを示すと考えられる。
復路の伸長性を検討したところ、20%伸長時を境に、短繊維層を有する試料の応力が短繊維層を有しない試料の応力と同程度であるかそれよりも小さくなっていることがわかった。これは、短繊維層が、復路において0〜10%程度、伸長させたときに破断したことによると考えられる。この性質は、例えば、人体の一部を積層不織布で覆う用途で用いるときに、人体と密着させるために、引っ張り気味にしながら、貼付することが望まれるものの、貼付した後、不織布が強い力で戻ろうとするときに生じる圧迫感が望まれない場合に、都合良く利用できる。そのような用途は、例えば、衛生マスク、顔の一部または全部を覆うフェイスマスク、傷口に当てられるガーゼおよび絆創膏のパッド、背中などの関節が比較的少なく、かつ比較的広い部位に貼付されるパップ材、自動車の天井裏材、椅子の裏材等の産業資材用途等である。
あるいは、この表から、短繊維層を有しない不織布と同様の往路の伸長時応力を、短繊維層を有する構造の不織布で達成するためには、水流交絡処理の際の水圧を弱くしてよいことが理解される。
試料17は、水圧を試料11で用いた水圧よりも低くして、作製した試料である。この試料は、往路の30%伸長時応力が試料11よりも小さいにもかかわらず、その復路の25%伸長時応力が試料11と同程度であり、復路の20%伸長時応力が試料11よりも高かった。この伸長特性は、試料17が、試料11よりも、より高い伸縮性(小さい力で伸び、かつ戻りやすい性質)を有することを示す。
また、試料12及び試料17は、比較的高い水圧で繊維同士を交絡させた試料5よりも高い伸長時応力を示した。このことは、ステープル繊維層がセルロース系繊維から成る場合には、ステープル繊維が積層体の繊維と良好に交絡して、高い機械特性を有する積層不織布が得られることを示す。
本発明の積層不織布は、伸縮性を有し、かつ加工の際に幅方向の寸法の減少が生じにくいので、種々の用途で利用でき、例えば、吸収物品を構成する伸縮性部材(例えばウエスト部材)、衛生マスク、ワイパー、化粧用物品(例えば、クレンジングシート、フェイスマスク)、ガーゼ、絆創膏のパッド、パップ材、自動車の天井裏材、椅子の裏材等の産業資材用途等として使用するのに適している。

Claims (15)

  1. 熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を含む伸縮性不織布の少なくとも一方の表面に、繊維長0.5〜20mmの短繊維から成る短繊維層が積層されてなり、伸縮性不織布と短繊維層とが熱可塑性エラストマーを含む繊維により接着している積層体、および
    当該積層体の両方の表面に積層された、繊維長が当該短繊維層に含まれる繊維の繊維長よりも長いステープル繊維を含む、ステープル繊維層
    を含み、
    ステープル繊維層と積層体とが、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維、短繊維、およびステープル繊維が互いに交絡することにより一体化されている、
    積層不織布。
  2. 前記伸縮性不織布がメルトブローン不織布である、請求項1に記載の積層不織布。
  3. 前記短繊維層が親水性繊維を50質量%以上含む不織布である、請求項1または請求項2に記載の積層不織布。
  4. 前記短繊維層がパルプ繊維から成る湿式抄紙不織布である、請求項3に記載の積層不織布。
  5. 前記ステープル繊維層が、繊度が1dtex以下である極細繊維を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層不織布。
  6. 前記極細繊維が、分割型複合繊維の割繊により形成されたものである、請求項5に記載の積層不織布。
  7. 前記ステープル繊維層が、セルロース系繊維を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層不織布。
  8. 前記セルロース系繊維が、コットンである、請求項7に記載の積層不織布。
  9. 前記熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維、前記短繊維、および前記ステープル繊維が、水流交絡処理により互いに交絡している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層不織布。
  10. 繊維長0.5〜20mmの繊維から成る短繊維層の一方の表面に、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を集積して不織布を形成するとともに、集積した溶融または軟化している熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維によって、短繊維層と、熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維を含む不織布とを、接着させて、積層体を得ること、
    積層体の少なくとも一方の表面に、繊維長が短繊維層に含まれる繊維の繊維長よりも長いステープル繊維を含むステープル繊維層を積層して、多層積層体を得ること、および
    多層積層体に水流交絡処理を施すこと
    を含む、積層不織布の製造方法。
  11. 前記熱可塑性エラストマーを含んで成る繊維をメルトブローン法により集積する、請求項10に記載の積層不織布の製造方法。
  12. 前記短繊維層がパルプ繊維から成る湿式不織布である、請求項10または11に記載の積層不織布の製造方法。
  13. 前記ステープル繊維層が、分割型複合繊維を50質量%以上含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載の積層不織布の製造方法。
  14. 前記ステープル繊維層が、セルロース系繊維を含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載の積層不織布の製造方法。
  15. 前記セルロース系繊維が、コットンである、請求項14に記載の積層不織布の製造方法。
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