JP5294432B2 - 酸化亜鉛バリスタの製造方法および酸化亜鉛バリスタ - Google Patents

酸化亜鉛バリスタの製造方法および酸化亜鉛バリスタ Download PDF

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Description

本発明は、酸化亜鉛バリスタの製造方法および酸化亜鉛バリスタに関する発明である。
酸化亜鉛を用いたバリスタの製造方法として、たとえば特許文献1および特許文献2が存在する。
特許文献1に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法では、酸化亜鉛を主成分としたグリーンシートを積層し、当該積層後のグリーンシートを焼結している。これに対して、特許文献2に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法では、単結晶の酸化亜鉛を用いたバリスタの製造方法が開示されている。
特開2007−5500号公報 特開2004−186349号公報
しかしながら、特許文献1に係る技術では、酸化亜鉛バリスタを製造するまでに多くの工程が必要であり、高温での焼結処理も含まれている。したがって、酸化亜鉛バリスタの製造工程が煩雑となり、製造コストが高くなるという問題が存在する。
また、特許文献2に係る技術においても、単結晶の酸化亜鉛が必要となるので、酸化亜鉛バリスタの製造コストが高くなるという問題が同様に存在する。
ところで、酸化亜鉛バリスタの安定動作を考慮すると、用いられる酸化亜鉛の粒径は揃っていることが望ましい。また、酸化亜鉛バリスタの動作電圧を考慮すると、用いられる酸化亜鉛の配向は揃っていることが望ましい。
そこで、本発明は、簡単な工程および低製造コストにて、酸化亜鉛膜から成る酸化亜鉛バリスタを作成することができる、酸化亜鉛バリスタの製造方法を提供することを目的とする。また、より好ましくは、粒径および配向の揃った酸化亜鉛膜から成る酸化亜鉛バリスタを、簡単な工程および低製造コストにて作成することができる、酸化亜鉛バリスタの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法は、(A)亜鉛を含む溶液をミスト化させる工程と、(B)基板を加熱する工程と、(C)前記工程(B)中の前記基板の第一の主面上に、前記工程(A)においてミスト化された前記溶液を供給することにより、前記第一の主面上に酸化亜鉛膜を成膜する工程と、(D)前記酸化亜鉛膜に電極を配設することにより、酸化亜鉛バリスタを作成する工程とを、備えている。
さらに、前記工程(B)は、前記基板を280℃に加熱する工程であり、前記工程(C)は、前記基板の前記第一の主面上に、オゾンおよび酸素ラジカルを供給しない工程である。
または、前記工程(B)は、前記基板を480℃に加熱する工程である、前記工程(C)は、前記基板の前記第一の主面上に、オゾンをも供給する工程である。
本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法は、加熱中の基板に、ミスト化された亜鉛を含む溶液を供給することにより、基板上に酸化亜鉛膜を成膜する。そして、当該酸化亜鉛膜に電極を配設することにより、酸化亜鉛バリスタを作成する。
したがって、酸化亜鉛膜から成る酸化亜鉛バリスタを、簡単な工程および低製造コストにて作成することができる。
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
実施の形態1で説明した酸化亜鉛膜の成膜方法を実現することができる成膜装置の構成を示す図である。 基板上に酸化亜鉛膜が成膜された様子を示す断面図である。 本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法を説明するための工程断面図である。 本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法を説明するための工程断面図である。 本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法を説明するための工程断面図である。 本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法を説明するための工程断面図である。 本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法を説明するための工程断面図である。 本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法を説明するための工程断面図である。 本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法を説明するための工程断面図である。 本発明に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法を説明するための工程断面図である。 実施の形態2で説明した酸化亜鉛膜の成膜方法を実現することができる成膜装置の構成を示す図である。 第一の条件(基板温度280℃、溶液のみ供給)で成膜された酸化亜鉛膜の結晶構造の様子を示す図である。 第二の条件(基板温度280℃、溶液とオゾンとを供給)で成膜された酸化亜鉛膜の結晶構造の様子を示す図である。 第三の条件(基板温度480℃、溶液とオゾンとを供給)で成膜された酸化亜鉛膜の結晶構造の様子を示す図である。 第四の条件(基板温度480℃、溶液のみ供給)で成膜された酸化亜鉛膜の結晶構造の様子を示す図である。 C軸配向を有する酸化亜鉛膜を用いて形成される、本発明に係る酸化亜鉛バリスタの構造を示す断面図である。
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
<実施の形態1>
酸化亜鉛バリスタの製造方法を、酸化亜鉛膜の作成と当該作成された酸化亜鉛膜を用いた酸化亜鉛バリスタの作成とに分けて、説明する。
まず、酸化亜鉛膜の作成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る酸化亜鉛膜の成膜装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、実施の形態1に係る酸化亜鉛膜の成膜装置100は、反応容器1、加熱器3、溶液容器5およびミスト化器6から構成されている。
当該成膜装置100では、スプレー熱分解法、パイロゾル法またはミスト堆積法などが実施される。つまり、成膜装置100では、基板2の第一の主面上にミスト化した所定の溶液を噴霧することにより、当該基板2の第一の主面上に、酸化亜鉛膜を成膜することができる。
加熱器3上に基板2が載置されている状態で、反応容器1内における所定の反応により、基板2の第一の主面上には酸化亜鉛膜が成膜される。なお、基板2が加熱器3に載置されている状態において、当該基板2の第二の主面は加熱器3に接触している。当該記載より分かるように、本明細書内で述べる基板2の第一の主面とは、酸化亜鉛膜が成膜される側の基板2の主面である。これに対して、本明細書内で述べる基板2の第二の主面とは、加熱器3に載置される側の基板2の主面である。
ここで、反応容器1内を大気圧として、当該大気圧下において基板2上に酸化亜鉛膜を成膜しても良く、あるいは、反応容器1内を0.0001〜0.1MPaの範囲で減圧しながら、当該減圧環境下において基板2上に酸化亜鉛膜を成膜しても良い。
また、基板2としては、プラスチック基板などを採用できる。また、たとえば基板2を完成品における電極板として機能させる場合には、当該基板2は金属などの導電性材料から構成される。
加熱器3は、ヒータ等であり、当該加熱器3に載置された基板2を加熱することができる。外部制御部により当該加熱器3の加熱温度は調整され、成膜処理の際には酸化亜鉛膜成膜温度まで加熱器3は加熱される。
溶液容器5内には、金属源として、亜鉛または亜鉛含有化合物が溶解した材料溶液(以下、溶液と称する)4が充填されている。ここで、亜鉛含有化合物は、アルコキシド化合物、β−ジケトン化合物およびカルボン酸塩化合物の内の、少なくとも何れか1つを含むものである。
また、溶液4内に後述するドーパント源は含まれていなくても良い。しかしながら、溶液4には、ドーパント源として、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムの内の、少なくとも1つが含まれていることが好ましい。または、溶液4には、ドーパント源として、ビスマスが含まれていることが好ましい。または、溶液4には、ドーパント源として、コバルトおよびマンガンの少なくとも何れかが、含まれていることが好ましい。または、溶液4には、ドーパント源として、ニオブ、アンチモンおよびクロムの内の、少なくとも1つが含まれていることが好ましい。なお、溶液4に、ドーパントして、前記で列記した各元素が混合して含まれていても良い。
また、上記溶液4の溶媒として、水、エタノールやメタノールなどのアルコールや、これらの液体の混合液などを採用することができる。
ミスト化器6として、たとえば超音波霧化装置を採用できる。当該超音波霧化装置であるミスト化器6は、溶液容器5内の溶液4に対して超音波を印加することにより、溶液容器5内の溶液4をミスト化させる。ミスト化された溶液4は、経路L1を通って、反応容器1内の基板2の第一の主面に向けて供給される。
なお、反応容器1内にミスト状の溶液4が供給されると、加熱中の基板2上において当該溶液4が反応し、基板2の第一の主面上に酸化亜鉛膜が成膜される。ここで、反応容器1で未反応となった溶液4は、経路L3を通して、反応容器1外に常時(連続的に)排出される。
次に、本実施の形態に係る酸化亜鉛膜の成膜方法について説明する。
まず、溶液容器5内において、ミスト化器6により、溶液4はミスト化される。ミスト化された溶液4は、経路L1を通って、反応容器1へ供給される。ここで、完成品において基板2が電極板として機能できるように、当該成膜方法の説明では、基板2は導電性材料から構成されるものとする。
一方、加熱器3により、当該加熱器3上に載置されている基板2は、酸化亜鉛膜成膜温度まで加熱されており、当該酸化亜鉛膜成膜温度で基板2の温度は保持されている。たとえば、基板2の温度が300℃以下で保持されている。
上記加熱状態の基板2の第一の主面に、ミスト状の溶液4が供給される。これにより、反応容器1内に存する基板2の第一の主面上には、酸化亜鉛膜が成膜される。図2は、基板2上に酸化亜鉛膜9が成膜された状態を示す断面図である。
ここで、当該成膜工程は、大気圧に配設されている基板2に溶液4を供給し、基板2上に酸化亜鉛膜を成膜する工程であっても良い。これに対して、成膜装置100に反応容器1内を減圧させることができる真空ポンプ(図示せず)を別途備え、減圧(たとえば、0.0001〜0.1MPa)環境下に配設されている基板2に溶液4を供給し、基板2上に酸化亜鉛膜を成膜する工程であっても良い。
次に、前記で成膜された酸化亜鉛膜9を用いた、酸化亜鉛バリスタの作成方法について説明する。
まず、図3に示すように、酸化亜鉛膜9の所定の箇所に対して、上面から、ダイサーによるハーフカット処理を施す。当該ハーフカット処理により、酸化亜鉛膜9は部分的に除去される。当該ハーフカット処理後の様子を図4に示す。図4に示すように、基板2上に成膜された酸化亜鉛膜9の所定の箇所において、当該酸化亜鉛膜の膜厚が減じられている。
次に、酸化亜鉛膜9上にマスク10を形成する。ここで、図5に示すように、当該マスク10は、上記所定の箇所に対応する領域が開口している。当該マスク10が形成された酸化亜鉛膜9に対して、スクリーン印刷法を施す。これにより、図5に示すように、上記酸化亜鉛膜9の膜厚が減じられた部分に、導電ペースト11が塗布される。マスク10を除去した後、当該導電ペースト11の硬化のために、図5に示す構造体に対して90〜200℃程度加熱する。
なお、ここでは、スクリーン印刷法により導電ペースト11を塗布する場合について説明した。しかしながら、フォトリソグラフ技術により、上記酸化亜鉛膜9の膜厚が減じられた部分に、電極材を形成する方法を採用することもできる。
次に、平坦化処理のために、硬化後の導電ペースト11に対して研磨処理を施す(図6参照)。研磨処理後の様子を、図7に示す。図7に示すように、酸化亜鉛膜9の上面は、平坦化されている。
次に、酸化亜鉛膜9上にマスク12を再度形成する。ここで、図8に示すように、当該マスク12には、硬化した導電ペースト11をマスクし、それ以外の酸化亜鉛膜9の上面が露出する、開口が形成されている。当該マスク12が形成された酸化亜鉛膜9に対して、スクリーン印刷法を再度施す。これにより、図8に示すように、酸化亜鉛膜9上に導電ペースト13が塗布される。ここで、当該導電ペースト13は、酸化亜鉛膜9の膜厚が減じられていない部分の、当該酸化亜鉛膜9上に塗布される。マスク12を除去した後、当該導電ペースト13の硬化のために、図8に示す構造体に対して90〜200℃程度加熱する。
なお、図8に示すように、硬化後の導電ペースト11と硬化後の導電ペースト13とは、電気的に分離している。つまり、両導電ペースト11,13は、接触していない。また、ここでも、スクリーン印刷法の代わりに、フォトリソグラフ技術を採用しても良い。
次に、硬化した各導電ペースト11が二つに分離するように、当該導電ペースト11、酸化亜鉛膜9および基板2に対して、ダイシングによるカット処理を施す。当該カット処理後の様子を図10に示す。当該カット処理により、図10に示すように、2対の電極が形成される酸化亜鉛バリスタを、複数(図10では、少なくとも2個)形成することができる。ここで、第一の電極対は電極11aで構成され、第二の電極対は基板2と電極13aとで構成される。
以上のように、本実施の形態に係る酸化亜鉛バリスタの製造方法では、ミスト化した亜鉛を含む溶液4を加熱した基板2上に供給するのみで、当該バリスタを構成する酸化亜鉛膜9が成膜される。
したがって、簡単な工程にて、酸化亜鉛膜9から成る酸化亜鉛バリスタを作成することができる。なお、本実施の形態に係る製造方法では、千度以上の焼成処理や高価な材料も必要としない。また、当該製造方法を実施する製造装置も安価なもので構成できる。したがって、低製造コストにて、酸化亜鉛膜から成る酸化亜鉛バリスタを作成することができる。
また、溶液4に亜鉛が含まれている状態において、当該溶液4に、ドーパントとして、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムの内の何れか1つを、少なくとも含ませても良い。前記アルミニウム等のドーパントを溶液4に含ませることにより、成膜される酸化亜鉛膜9の電気抵抗を低下させることができる。
また、溶液4に亜鉛が含まれている状態において、当該溶液4に、ドーパントとして、ビスマスをも含ませても良い。ビスマスをドーパントとして溶液4に含ませることにより、成膜される酸化亜鉛膜9の結晶粒の制御や高α値の顕在化を図ることができる。
また、溶液4に亜鉛が含まれている状態において、当該溶液4に、ドーパントとして、コバルトおよびマンガンの少なくとも何れかをも含ませても良い。コバルトやマンガンをドーパントとして溶液4に含ませることにより、非線形な電流電圧特性を有する酸化亜鉛バリスタを作成することができる。
また、溶液4に亜鉛が含まれている状態において、当該溶液4に、ドーパントとして、ニオブ、アンチモンおよびクロムの内の何れか1つを、少なくとも含ませても良い。前記ニオブ等のドーパントを溶液4に含ませることにより、形成される酸化亜鉛バリスタの電気特性を向上させることができる。
また、上記の通り、反応容器1内を大気圧として、当該大気圧下において基板2上に酸化亜鉛膜を成膜しても良い。これにより、真空装置などの構成などを省略することができるので、成膜装置100のコスト削減を図ることができる。
これに対して、上記の通り、反応容器1内を減圧させることができる真空ポンプなどを備えても良い。そして、反応容器1内を0.0001〜0.1MPaの範囲で減圧しながら、当該減圧環境下において基板2上に酸化亜鉛を成膜しても良い。これにより、成膜装置100のコストは増大するが、大気圧下で成膜されたものよりも、基板2上においてより良質の酸化亜鉛膜を成膜することが可能となる。
<実施の形態2>
図11は、本実施の形態に係る酸化亜鉛膜の成膜装置の概略構成を示す図である。
図1と図11との比較から分かるように、本実施の形態に係る酸化亜鉛膜の成膜装置200は、実施の形態1に係る酸化亜鉛膜の成膜装置100の構成に、オゾン発生器7が追加された構成となっている。また、成膜装置200では、オゾン発生器7から反応容器1へオゾンを供給するために、経路L2が配設されている。
当該オゾン発生器7および経路L2が追加されている以外、他の構成に関しては、成膜装置100と成膜装置200との間において同じである。したがって、オゾン発生器7および経路L2に関する事項以外については、実施の形態1を参照されたい。
オゾン発生器7は、オゾンを発生させることができる。オゾン発生器7で生成されたオゾンは、経路L1と異なる経路L2を通って、反応容器1内の基板2の第一の主面に向けて供給される。オゾン発生器7では、たとえば、平行に配置した平行電極間に高電圧を印加し、その電極間に酸素を通すことで酸素分子が分解し、他の酸素分子と結合することによって、オゾンを発生させることができる。
なお、反応容器1内にオゾンおよびミスト状の溶液4が供給されると、加熱中の基板2上において当該オゾンと溶液4とが反応し、基板2の第一の主面上に酸化亜鉛膜が成膜される。ここで、反応容器1で未反応となったオゾンや溶液4は、経路L3を通して、反応容器1外に常時(連続的に)排出される。
次に、本実施の形態に係る酸化亜鉛膜の成膜方法について説明する。
まず、溶液容器5内において、ミスト化器6により、溶液4はミスト化される。ミスト化された溶液4は、経路L1を通って、反応容器1へ供給される。また、オゾン発生器7でオゾンは生成される。生成されたオゾンは、経路L2を通って、反応容器1へ供給される。
一方、加熱器3により、当該加熱器3上に載置されている基板2は、酸化亜鉛膜成膜温度まで加熱されており、当該酸化亜鉛膜成膜温度で基板2の温度は保持されている。たとえば、基板2の温度が300℃以下で保持されている。
上記加熱状態の基板2の第一の主面に、オゾンおよびミスト状の溶液4が供給される。加熱状態の基板2にオゾンおよびミスト状の溶液4が接触すると、オゾンは熱分解を起こし、酸素ラジカルが生成され、当該酸素ラジカルにより溶液4は分解が促進され、基板2の第一の主面上には、酸化亜鉛膜が成膜される。
ここで、当該成膜工程は、大気圧に配設されている基板2に、溶液4とオゾンとを供給し、基板2上に酸化亜鉛膜を成膜する工程であっても良い。これに対して、成膜装置200に反応容器1内を減圧させることができる真空ポンプ(図示せず)を別途備え、減圧(たとえば、0.0001〜0.1MPa)環境下に配設されている基板2に、溶液4とオゾンとを供給し、基板2上に酸化亜鉛膜を成膜する工程であっても良い。
なお、当該成膜された酸化亜鉛膜を用いた酸化亜鉛バリスタの作成方法は、実施の形態1と同様である(図2〜10参照)。
以上のように、本実施の形態では、亜鉛が溶解した溶液4をミスト化させている。さらに、オゾンを含む雰囲気中の反応容器1において、ミスト状の溶液4を加熱している基板2に接触させている。
したがって、オゾンおよび熱等によりオゾンが分解して生成した活性酸素は反応性に富むため、溶液4中の材料化合物の分解・酸化を促進する。これにより、低温加熱状態であっても基板2上において、酸化亜鉛膜を成膜することができる。つまり、実施の形態1で説明した酸化亜鉛膜の成膜方法よりも、本実施の形態で説明した酸化亜鉛膜の成膜方法の方が、基板2の加熱温度を低く設定することが可能となる。
オゾンは、200℃程度から分解が開始される(つまり、200℃の加熱温度により、オゾンから酸素ラジカルが生成され始める)。したがって、基板2に対する加熱温度は200℃程度であっても、基板2上に酸化亜鉛膜を成膜することが可能である。
また、図11の構成から分かるように、溶液4とオゾンとは、異なる経路L1,L2を通して基板2へ供給されている。図11の構成では、溶液4は、経路L1を通して、反応容器1内の基板2に向けて供給される。他方、オゾンは、経路L2を通して、反応容器1内の基板2に向けて供給される。
このように、異なる経路L1,L2を通して、溶液4とオゾンとを基板2へ供給することにより、オゾンと溶液4との混ざり合う場所を反応容器1(基板2の配設領域)のみに限定することができる。つまり、溶液4とオゾンとが供給過程の経路において混ざり合うことを防止できる。よって、溶液4とオゾンとの反応を基板2の配置領域のみとすることができ、当該基板2における反応効率を向上させることができる。
また、溶液4とオゾンが供給過程で混ざり合うことで、基板到達前に溶液4とオゾンが反応し気相中で意図しない反応物が生成される場合がある。当該意図しない反応物の生成は、基板表面での膜成長を妨げる(意図しない反応物の堆積による膜質低下、成膜レートの低下)原因となる。そこで、異なる経路L1,L2を通して、溶液4とオゾンとを基板2へ供給することにより、このような意図しない反応物の生成も抑制できる。
なお、成膜装置200は、次のような制御を行う制御部(図示省略)を、さらに備えていても良い。当該制御部は、ミスト化された溶液4とオゾンとを、同時にまたは所定のタイミングで別々に、反応容器1内の基板2へ供給される制御を行う。
ミスト化された溶液4とオゾンとを同時に反応容器1内の基板2へ供給することにより、反応容器1内におけるオゾン反応性(酸化力)を十分に利用することができる。これに対して、ミスト化された溶液4とオゾンとを別々のタイミングにて反応容器1内の基板2へ供給することにより、基板2表面以外でのオゾンと溶液4との反応を抑制することができる。
なお、ミスト化された溶液4とオゾンとを別々のタイミングにて反応容器1内の基板2へ供給することにより、反応容器1内におけるオゾン反応性(酸化力)を十分に利用することができなくなる。しかしながら、基板2を加熱させながらオゾンを供給することにより、成膜される酸化亜鉛膜の特性が向上する(たとえば、結晶性の向上や、移動度とキャリア濃度の如何によっては電気抵抗の向上など)。
また、本実施の形態2において、基板2に供給されるオゾンに対して紫外光(波長:10nm〜400nm程度)を照射させる紫外光発生器を別途備えることもできる。当該構成の場合には、オゾンが当該紫外光照射により酸素ラジカルに分解され、基板2が配設された反応容器1内に当該酸素ラジカルが供給される。当該酸素ラジカルは、酸化亜鉛膜成膜のための反応を促進させることができる。また、反応容器1に供給されるオゾンは、紫外光照射により酸素ラジカルに分解されるので、基板2を加熱する加熱器3を省略することもできる。なお、反応促進の観点からは、紫外光照射の構成の場合においても基板2の加熱を行う方が望ましい。さらに、当該紫外光照射の構成の場合には、オゾンの代わりに酸素を採用しても良い。当該酸素は紫外光照射により酸素ラジカルに分解され、基板2が配設された反応容器1内に当該酸素ラジカルが供給される。
また、本実施の形態2において、基板2に供給されるオゾンをプラズマ化するプラズマ発生器を別途備えることもできる。当該構成の場合には、オゾンがプラズマ発生器により酸素ラジカルに分解され、基板2が配設された反応容器1内に当該酸素ラジカルが供給される。当該酸素ラジカルは、酸化亜鉛膜成膜のための反応を促進させることができる。また、反応容器1に供給されるオゾンは、プラズマ発生器により酸素ラジカルに分解されるので、基板2を加熱する加熱器3を省略することもできる。なお、反応促進の観点からは、プラズマ発生器を備える構成の場合においても基板2の加熱を行う方が望ましい。さらに、当該プラズマ発生器を備える構成の場合には、オゾンの代わりに酸素を採用しても良い。当該酸素は紫外光照射により酸素ラジカルに分解され、基板2が配設された反応容器1内に当該酸素ラジカルが供給される。
<実施の形態3>
実施の形態1,2において、酸化亜鉛バリスタを構成する酸化亜鉛膜の成膜方法について説明した。本実施の形態では、より有益な酸化亜鉛バリスタを提供することができる、酸化亜鉛膜の具体的な成膜条件を提供する。
オゾンを基板2に供給しない実施の形態1で説明した成膜方法の場合には、加熱器3により基板2を280℃に加熱させる。そして、280℃の基板2に溶液4を供給する。つまり、後述する第一の条件で、酸化亜鉛膜を成膜する。
他方、オゾンを基板2に供給する実施の形態2で説明した成膜方法の場合には、加熱器3により基板2を480℃に加熱させる。そして、480℃の基板2に溶液4およびオゾンを供給する。つまり、後述する第三の条件で、酸化亜鉛膜を成膜する。
図12乃至図15は、成膜された酸化亜鉛膜のSEM(走査型電子顕微鏡)画像の様子を示す図である。ここで、図12は、280℃に加熱された基板2に溶液4のみを供給することにより成膜された(第一の条件で成膜された)、酸化亜鉛膜の結晶の様子を示す。また、図13は、280℃に加熱された基板2に溶液4とオゾンとを供給することにより成膜された(第二の条件で成膜された)、酸化亜鉛膜の結晶の様子を示す。また、図14は、480℃に加熱された基板2に溶液4とオゾンとを供給することにより成膜された(第三の条件で成膜された)、酸化亜鉛膜の結晶の様子を示す。また、図15は、480℃に加熱された基板2に溶液4のみを供給することにより成膜された(第四の条件で成膜された)酸化亜鉛膜の結晶の様子を示す。
上記第一の条件で成膜された場合および上記第三の条件で成膜された場合には、図12,14に示すように、酸化亜鉛膜を構成する結晶の結晶粒の大きさは、100〜200nm程度と小さく、当該結晶粒の大きさは揃っている。他方、上記第二の条件で成膜された場合および上記第四の条件で成膜された場合には、図13,15に示すように、酸化亜鉛膜を構成する結晶の結晶粒の大きさは、300〜500nm程度と大きく、当該結晶粒の大きさはランダムである。
また、X線回折などの方法により、各条件で成膜された酸化亜鉛膜の結晶構造を解析した。結果、上記第一の条件で成膜された場合および上記第三の条件で成膜された場合には、酸化亜鉛膜を構成する結晶の配向方向は、C軸方向に揃っている。他方、上記第二の条件で成膜された場合および上記第四の条件で成膜された場合には、酸化亜鉛膜を構成する結晶の配向方向は、ランダムである。
以上のように、上記第一の条件または上記第三の条件で成膜された酸化亜鉛膜を用いて酸化亜鉛バリスタを作成することにより、当該酸化亜鉛バリスタは下記に示す効果を奏する。
上記第一の条件または上記第三の条件で成膜された酸化亜鉛膜では、結晶粒の大きさが揃う。したがって、酸化亜鉛バリスタの安定動作を確保できる。また、上記第一の条件または上記第三の条件で成膜された酸化亜鉛膜では、結晶の配向方向がC軸に揃う。したがって、比較的低い電圧で安定的に動作する酸化亜鉛バリスタまたは比較的高い電圧で安定的に動作する酸化亜鉛バリスタを提供することができる。
なお、上記第一の条件または上記第三の条件で成膜された酸化亜鉛膜を用いて、図16に示す構造の酸化亜鉛バリスタを作成しても良い。ここで、図16の上下方向は、C軸方向であるとする。つまり、上記第一の条件または上記第三の条件で基板2上に酸化亜鉛膜9を成膜する場合、当該成膜の方向(膜厚の方向)がC軸方向となる。また、図16に示す酸化亜鉛バリスタの作成方法は、図2〜10を用いて説明した通りである。
図16に示すように、酸化亜鉛バリスタ50は、C軸に配向した酸化亜鉛膜9と、2対の電極11a,2,13aとから構成されている。ここで、基板2は電極としても機能している。1対の第一電極2,13aは、当該酸化亜鉛膜9を図面上下方向から挟持するように設けられる。また、第一電極2,13aの電極面の法線方向が、C軸の方向と並行となる。また、1対の第二電極11a,11aは、当該酸化亜鉛膜9を図面左右方向から挟持するように設けられる。また、第二電極11a,11aの電極面の法線方向が、C軸の方向と垂直となる。
当該図16に示す構造を有する酸化亜鉛バリスタ50を作成することにより、異なる動作電圧を有するバリスタ50を提供することができる。つまり、電極2,13a間に電圧を印加させバリスタ50を動作させる場合、バリスタ50は比較的低い第一の動作電圧で動作する。他方、電極11a,11a間に電圧を印加させバリスタ50を動作させる場合、バリスタ50は比較的高い第二の動作電圧(当該第二の動作電圧は、第一の動作電圧よりも大きい)で動作する。つまり、二種類の機能を有する酸化亜鉛バリスタ50を提供できる。その後、電極がバリスタ50をバイパスしてしまうことを避けるため、2対の電極11a,2,13aは、酸化亜鉛膜9と同程度の抵抗であることが望ましい。
たとえば、複数の酸化亜鉛バリスタ50を作成し、回路の所定の箇所において、バリスタ50を高電圧で動作させる必要がある場合には、当該所定の箇所においてバリスタ50の電極11a,11aを接続させる。また、同じ回路の他の箇所において、バリスタ50を低電圧で動作させる必要がある場合には、当該他の箇所において他のバリスタ50の電極2,13aを接続させば良い。
なお、上記第一の条件または上記第三の条件で成膜された酸化亜鉛膜では、結晶粒の大きさは小さくなる。したがって、当該酸化亜鉛膜を用いてバリスタ50を作成することにより、小さいサイズのバリスタで、動作電圧が大きい回路を保護することができる。
また、実施の形態1,2では、溶液容器5は一つのみが配設されていたが、異なる種類の溶液を充填するために、複数の溶液容器を配設することもできる。当該構成の場合には、各溶液容器にはミスト化器が配設されており、各溶液容器と反応容器1との間には、溶液の通路となる経路が個別に配設される。また、当該構成の場合には、各溶液を同時に供給しても良く、所定の順番で別々のタイミングにて各溶液を供給しても良い。
また、当該複数の溶液容器を備える実施の形態2の場合には、オゾンを常時供給され続けられている一方で、異なる溶液を所定の順序で供給しても良い。または、各溶液およびオゾンを、異なるタイミングで別途に供給しても良い。なお、いずれの供給態様の場合においても、各溶液およびオゾンは、異なる経路にて、反応容器1内の基板2に向けて供給されることが望ましい。
なお、本願発明により製造された酸化亜鉛バリスタは、たとえばLED内に配設させて利用される。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
1 反応容器
2 基板
3 加熱器
4 溶液
5 溶液容器
6 ミスト化器
7 オゾン発生器
9 酸化亜鉛膜
10,12 マスク
11,13 導電ペースト
11a,13a 電極
50 酸化亜鉛バリスタ
100,200 成膜装置
L1,L2,L3 経路

Claims (8)

  1. (A)亜鉛を含む溶液をミスト化させる工程と、
    (B)基板を加熱する工程と、
    (C)前記工程(B)中の前記基板の第一の主面上に、前記工程(A)においてミスト化された前記溶液を供給することにより、前記第一の主面上に酸化亜鉛膜を成膜する工程と、
    (D)前記酸化亜鉛膜に電極を配設することにより、酸化亜鉛バリスタを作成する工程とを、備えており、
    前記工程(B)は、前記基板を280℃に加熱する工程であり、
    前記工程(C)は、
    前記基板の前記第一の主面上に、オゾンおよび酸素ラジカルを供給しない工程である、
    ことを特徴とする酸化亜鉛バリスタの製造方法。
  2. (A)亜鉛を含む溶液をミスト化させる工程と、
    (B)基板を加熱する工程と、
    (C)前記工程(B)中の前記基板の第一の主面上に、前記工程(A)においてミスト化された前記溶液を供給することにより、前記第一の主面上に酸化亜鉛膜を成膜する工程と、
    (D)前記酸化亜鉛膜に電極を配設することにより、酸化亜鉛バリスタを作成する工程とを、備えており、
    前記工程(C)は、
    前記工程(B)中の前記基板の前記第一の主面上に、オゾンをも供給することにより、前記酸化亜鉛膜を成膜する工程であり、
    前記工程(B)は、前記基板を480℃に加熱する工程である、
    とを特徴とする酸化亜鉛バリスタの製造方法。
  3. 前記溶液には、
    亜鉛含有化合物が含まれており、
    前記亜鉛含有化合物は、
    アルコキシド化合物、β−ジケトン化合物およびカルボン酸塩化合物の内の、少なくとも何れか1つを含む、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化亜鉛バリスタの製造方法。
  4. 前記溶液には、
    アルミニウム、ガリウムおよびインジウムの内の、少なくとも何れか1つが含まれている、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化亜鉛バリスタの製造方法。
  5. 前記溶液には、
    ビスマスが含まれている、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化亜鉛バリスタの製方法。
  6. 前記溶液には、
    コバルトおよびマンガンの少なくとも何れかが、含まれている、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化亜鉛バリスタの製方法。
  7. 前記溶液には、
    ニオブ、アンチモンおよびクロムの内の、少なくとも何れか1つが含まれている、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化亜鉛バリスタの製方法。
  8. C軸に配向した酸化亜鉛膜と、
    前記酸化亜鉛膜を挟持するように設けられ、電極面の法線方向が前記C軸の方向と並行である、1対の第一電極と、
    前記酸化亜鉛膜を挟持するように設けられ、電極面の法線方向が前記C軸の方向と垂直である、1対の第二電極とを、備えており、
    前記第一電極と前記第二電極とは、電気的に接続されていない、
    ことを特徴とする酸化亜鉛バリスタ。
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