JP5292578B2 - 燃料電池用金属セパレータ、燃料電池用金属セパレータの製造方法、及び燃料電池 - Google Patents

燃料電池用金属セパレータ、燃料電池用金属セパレータの製造方法、及び燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池用金属セパレータ、その製造方法、及び燃料電池に係り、特に電極との間で燃料流路及び酸化剤流路を形成し、且つ集電機能を有する燃料電池用金属セパレータであって、耐食性、導電性に優れた燃料電池用金属セパレータに関する。
従来、一般的に、燃料電池用セパレータとしては、基材として強度、導電性に優れたカーボン系材料やステンレス鋼(SUS)、チタン、アルミニウム等の金属材料が使用されている。
カーボン系材料からなるセパレータは、耐食性に優れ、且つ電気伝導性が高いという利点を有する。しかしながら、カーボン系材料は非常に脆いため、セパレータの表面に流路を形成すべく切削加工等を施すことは容易ではなく、量産が困難であった。
一方、上記金属材料からなるセパレータは、カーボン系材料のセパレータと比較して強度、延性に優れている。このため、プレス加工により流路を形成し易く、量産も容易であるという利点がある。しかしながら、固体電解質型燃料電池においては、セパレータは高温の水蒸気や腐食性環境下に曝されるため腐食を起こし易い。このため、セパレータ表面と電極との接触抵抗が大きくなり、セパレータの集電性能が低下するという問題がある。
これに対して、従来は、セパレータの構成材料である金属材料の表面に耐食性に優れた金、白金、パラジウム等の貴金属材料をコーティングした材料が検討されている(例えば、特許文献1、2)。
また、本出願人は、特許文献3において、金属平板上に炭素系材料を含む樹脂からなる被覆層を形成し、耐食性を向上させることを提案している。
特開2006−269090号公報 特開2004−296381号公報 WO2006/135108A1
しかしながら、特許文献1、2のようにめっき自体に耐食性を持たせるためには、めっき層を比較的厚く形成(めっき使用量を多く)する必要があった。このため、コストが高くなるという問題があった。
一方、特許文献3では、被覆層と金属平板との間の電気抵抗を一層低減することが要求されている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、低コストで、充分な耐食性と導電性とが得られる燃料電池用金属セパレータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、最外層にストライクめっきが1〜100nmの膜厚になるように施された金属平板と、該金属平板上に直接形成され、炭素材料と樹脂とを含む被覆層と、を備えたことを特徴とする燃料電池用金属セパレータを提供する。
請求項1によれば、金属平板の最外層は、ストライクめっきにより酸化皮膜が除去されると共に、導電性の高いストライクめっき層が形成される。これにより、金属平板と被覆層との間の電気抵抗を低減できる。また、上記ストライクめっきが施された金属平板上に炭素系材料と樹脂とを含む被覆層が形成されるので、金属平板に充分な耐食性を持たせることができる。このように、低コストで、充分な耐食性と導電性とを有する金属セパレータを得ることができる。
請求項2は請求項1において、前記ストライクめっきは、ニッケルストライクめっきであることを特徴とする。
請求項2によれば、充分な導電性が得られ、且つ比較的低コストである点で、ニッケルストライクめっきが好ましい。
請求項1によれば、被覆層を形成することで金属平板に充分な耐食性を付与できる。このため、ストライクめっきは少なくとも導電性を向上できる程度の厚さに形成されればよい。したがって、めっき使用量を少なくでき、低コスト化できる。また、ストライクめっきの膜厚は5〜50nmであることがより好ましく、2〜3nmでも導電性を十分に向上させることができる。
請求項3は請求項1又は2において、前記金属セパレータの厚さ方向の面積抵抗は1〜15mΩcmであることを特徴とする。
請求項3によれば、面積抵抗が1〜15mΩcmであるので、金属セパレータとしての充分な導電性を得ることができる。
請求項4は請求項1〜3の何れか1項において、前記金属平板は、オーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。
請求項4によれば、金属平板としてオーステナイト系ステンレス鋼のような耐食性の高い金属を使用することで、金属セパレータとしての耐食性を一層向上させることができる。
請求項5は請求項1〜4の何れか1項において、前記被覆層の厚さは5〜100μmであることを特徴とする。
請求項5によれば、被覆層の厚さを5〜100μmとすることで金属平板に充分な耐食性を付与できる。このため、ストライクめっきは少なくとも導電性を向上できる程度の厚さに形成されればよい。したがって、めっき使用量を少なくでき、低コスト化できる。なお、被覆層の厚さは30〜70μmとすることがより好ましい。
請求項6は請求項1〜5の何れか1項において、前記被覆層上に、流路を形成するための流路形成部材が配置されたことを特徴とする。
請求項6によれば、流路を、被覆層を形成した金属平板上に流路形成部材を配置して形成するので、金属平板自体に残留応力が生じるのを抑制できる。これにより、残留応力に起因する応力腐食割れを抑制できる。
本発明の請求項7は前記目的を達成するために、請求項1〜6の何れか1項に記載の金属セパレータの製造方法であって、金属平板の最外層にストライクめっきを1〜100nmの膜厚になるように施す工程と、該金属平板上に直接、炭素及び樹脂を含む被覆層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする燃料電池用金属セパレータの製造方法を提供する。
なお、ストライクめっきの種類は、特に限定されないが、例えば金、銅、ニッケル等が挙げられる。
請求項8は請求項7において、前記ストライクめっきは、ニッケルストライクめっきであることを特徴とする。
請求項9は請求項7又は8において、前記被覆層は、炭素系材料を含む樹脂を熱圧着することにより形成することを特徴とする。
請求項9によれば、炭素系材料を含む樹脂を熱圧着することにより被覆層を形成するので、該被覆層を緻密に形成できる。したがって、金属平板に充分な耐食性を付与できる。
請求項10は請求項7〜9の何れか1項において、前記被覆層上に流路形成部材を配置することにより流路を形成する工程を備えたことを特徴とする。
請求項10によれば、流路を、被覆層を形成した金属平板上に流路形成部材を配置して形成するので、金属平板自体に残留応力が生じるのを抑制できる。これにより、残留応力に起因する応力腐食割れを抑制できる。
本発明の請求項11は前記目的を達成するために、固体高分子電解質膜を挟む一対の電極と、該一対の電極を挟持し、且つ前記一対の電極に原料を供給するための流路を備えた一対の金属セパレータと、よりなる単電池を積層した燃料電池であって、前記金属セパレータは、請求項1〜6の何れか1項に記載の燃料電池用金属セパレータであることを特徴とする燃料電池を提供する。
請求項11によれば、本発明に係る金属セパレータを用いることで、電気抵抗に伴う電圧降下を低減できると共に、耐久性に優れた燃料電池を得ることができる。
本発明によれば、低コストで、充分な耐食性と導電性とが得られる金属セパレータを提供できる。
以下、添付図面に従って本発明に係る金属セパレータ及びその製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
まず、本発明に係る金属セパレータの一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における金属セパレータの構成を示す断面模式図である。図1に示すように、金属セパレータ10は、主に、金属平板12と、該金属平板の表面に施されたニッケルストライクめっき層14と、該ニッケルストライクめっき層14上に形成され、炭素系材料を含む樹脂からなる耐食性の被覆層16と、該被覆層16上に配され、原料等を供給・排出する流路を形成する流路形成部材18と、より構成されている。なお、本実施形態では、金属平板12の片面にニッケルストライクめっき層14等を形成する例で説明するが、これに限定されるものではなく、金属平板12の両面にニッケルストライクめっき層14等を形成できることはいうまでもない。
金属平板12としては、特に限定はないが、例えば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、鋼等の薄板が使用できる。中でも、金属平板12としては、耐食性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼が好ましい。金属平板12の厚さは、用途にもよるが0.03mm〜1.5mmの範囲であることが好ましい。
ニッケルストライクめっき層14は、金属平板12表面の被覆層16との界面に形成されており、金属平板12と被覆層16との導電性を高める機能を有する。一般的に、ニッケルストライクめっきは、金等の耐食性の高い貴金属めっき等の下地層として使用される。しかしながら、本実施形態では、被覆層16が優れた耐食性を有するので、必ずしもニッケルストライクめっき層14に耐食性を持たせる必要はない。このため、ニッケルストライクめっき層14は、金属平板12の残留応力を低減する上でも、薄層に形成されることが好ましい。具体的には、ニッケルストライクめっき層14の膜厚は1〜100nmであることが好ましく、5〜50nmであることがより好ましく、2〜3nmでも充分に電気抵抗を低減できる。また、ニッケルストライクめっき層14は、金属平板12の面全体を均一に被覆する必要はないが、平均膜厚で1nm以上あればよい。
なお、ニッケルストライクめっきに限らず、その他のストライクめっき、例えば、銅(Cu)ストライクめっき、金(Au)ストライクめっき等も採用できる。
被覆層16は、金属平板12の腐食を防止するための保護層として機能する。被覆層16は、導電材(炭素系材料)を均一に分散させた緻密な樹脂層状に形成されている。金属平板12の耐食性を重視する上で、被覆層16における導電材の含有量は60〜80質量%とすることが好ましい。また、集電性を損なわないようにする観点から、体積固有抵抗(厚さ方向)を50mΩcm以下とすることが好ましい。
流路形成部材18は、原料等が流れる流路を形成し、且つ電極体(MEA)との導通を確保するよう機能する。このため、流路形成部材18は、高導電性の導電材又は該導電材を含有する樹脂より形成されている。電極体との導通を重視する上で、流路形成部材18における導電材の含有量は60〜85質量%とし、且つ体積固有抵抗を20mΩcm以下とすることが好ましい。
被覆層16及び流路形成部材18に使用される樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ゴム系樹脂、フラン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
導電材としては、導電性、分散性、コスト、取り扱い性の点で優れる炭素系導電材が好ましい。炭素系導電材としては、例えば、黒鉛、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンブラック、ダイヤモンド被覆カーボンブラック、炭化ケイ素、炭化チタン、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等が使用できる。また、導電材は、上記炭素系導電材だけでなく、金属酸化物、窒化物やほう化物等も使用できる。
次に、このように構成された金属セパレータの製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態における金属セパレータの製造工程を説明する断面図である。
まず、図2(a)に示すように、脱脂処理した金属平板12を用意する。たとえば、金属平板がステンレス鋼である場合、ステンレス鋼板の表面が不動態皮膜で皮膜されており、その不動態皮膜の表面には空気中の埃や人間の手の油等による汚れが付着している。そこで、金属平板12を脱脂処理することにより、金属平板表面の汚れを除去する。
次いで、図2(b)に示すように、金属平板12の表面にニッケルストライクめっきを施す。これにより、金属平板12上の不動態皮膜を取り除き、金属平板表面を活性化させると共に、導電性の高いニッケルストライクめっき層14を形成する。
このとき、めっき浴組成としては、例えば、塩化ニッケル200〜300g/L、塩酸50〜120g/Lを含み、電流密度は5〜15A/dm2とすることができる(参考文献:日本鍍金材料協同組合 2006年度版めっき技術要覧)。ニッケルストライクめっきの膜厚は、5nm以上であることが好ましいが、2〜3nmでも被覆層18と金属平板12表面の間の電気抵抗を充分に低減することができる。
めっき時間は、ニッケルストライクめっきの膜厚が2〜3nm以上形成できる時間に設定されることが好ましく、例えば、電流密度3A/dm以上で5〜10秒以上とすることが好ましい。
次いで、図2(c)に示すように、ニッケルストライクめっき層14上に被覆層16を形成する。
被覆層16は、例えば、炭素系材料を含む樹脂溶液又は樹脂シートを、樹脂の軟化温度以上又は硬化温度域で加圧しながら塑性変形させること(熱圧着法)により形成する。このような熱圧着法としては、例えば、ホットプレスやホットロール等を採用できる。被覆層16の膜厚は、金属平板12の腐食を確実に抑制する観点から、5〜100μmとすることが好ましく、30〜70μmとすることがより好ましい。
このとき、金属平板12の外層に、極薄のニッケルストライクめっき層14が形成されているので、被覆層16と金属平板12の間の導通を飛躍的に向上させることができる。
そして、被覆層16上に流路形成部材18を配置して流路を形成する。流路形成部材18は、例えば、炭素系材料を含む樹脂溶液を射出成形法、金型成形法、フォトリソグラフィ法等で製造したものを使用できる。フォトリソグラフィ法を採用する場合は、上記樹脂溶液として、炭素系材料を含む感光性ドライフィルムや液状レジスト等が使用できる。なお、流路形成部材18は、被覆層16上で直接成形してもよいし、予め成形した流路形成部材18を被覆層16上に配置してもよい。
これにより、例えば、金属平板12がステンレス鋼である場合、ニッケルストライクめっきを施すことで、面積抵抗を、従来(めっきなし)の12〜14mΩcmから6〜8mΩcm程度まで大幅に低減できる。
次に、本発明に係る金属セパレータの適用例について説明する。図3(A)は、本発明に係る金属セパレータを組み込んだ燃料電池の単セル部分の一例を示す部分分解斜視図であり、図3(B)は、図3(A)において組み立てられた状態でのA−A線断面図である。なお、同図において、金属セパレータの両面に流路を形成する例であり、表面(上面)がアノード側、裏面(下面)がカソード側を示す。以下、カソード側については、アノード側と同様の構成を有するので、その詳細な説明は省略する。
図3に示すように、燃料電池20は、電極膜接合体(MEA)22が一対の金属セパレータ24、24により挟持されて構成される。
電極膜接合体(MEA)22は、図3(B)に示すように、固体高分子電解質膜22Mが、アノード電極22A、カソード電極22Cにより挟まれた構造となっている。アノード電極22A、カソード電極22Cは、例えば、白金、白金−ルテニウム等の触媒が多孔質導電材(例えば、カーボンペーパー等)上に保持されている。
金属セパレータ24は、外層にニッケルストライクめっき層26が形成された金属平板28と、該金属平板28表面を被覆する被覆層30と、被覆層30上に配され、流路31を形成する多孔質の流路形成部材32と、より構成されている。金属セパレータ24表面の周囲には、ガスケット34が形成されており、これにより単セル内部がシールできるように構成されている。
金属セパレータ24の流路入口には、燃料電池20を構成する各アノード側の金属セパレータ24に燃料を分配供給する供給マニホールド36が連通している。同様に、金属セパレータ24の流路出口には、各アノード側の金属セパレータ24から残留燃料又は反応生成物を回収する回収マニホールド38が連通している。
このように構成された燃料電池20では、例えば、供給マニホールド36より供給された水素ガス等の燃料は、流路31を通じてアノード電極22Aに供給される(矢印参照)。そして、アノード電極22Aに供給されなかった残留燃料や反応生成物は、回収マニホールド38より回収される。なお、符号36’、38’はそれぞれ酸化剤の供給マニホールド、回収マニホールドを示しており、これらは各カソード側の金属セパレータに対して酸化剤を供給又は回収できるように構成されている。
このように、本発明に係る金属セパレータを用いることにより、金属セパレータの電気抵抗に起因する電圧降下を低減できるので、発電効率を向上できる。さらに、被覆層により金属セパレータの腐食を確実に抑制できる。
なお、流路形状等は、図3の態様に限定されることはなく、例えば、蛇行流路、ストレート状流路などでもよい。また、燃料も水素ガスに限らず、例えば、メタノール等の液体燃料でもよい。
以上、本発明に金属セパレータ及びその製造方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態では、金属平板表面にニッケルストライクめっきを施す例を示したが、これに限定されず、例えば、金(Au)ストライクめっき、銅(Cu)ストライクめっきを施すこともできる。また、金属平板の表面に直接、スパッタや蒸着のようなドライプロセスを適用してもよい。
また、本実施形態では、流路形成部材を金属平板上に配置して流路を形成する例を示したが、例えば、液圧成形法等の残留応力を極力小さくする方法で金属平板を変形させ、流路を形成してもよい。また、本実施形態では、燃料や酸化剤を流通させる流路を備えた金属セパレータについて示したが、これに限定されず、例えば、冷却水を流通させる流路を備えた金属セパレータにも本発明を適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(試験1−1)
本発明に係るニッケルストライクめっきを施した金属セパレータ10について、面積抵抗を測定した。
材質SUS304、厚さ0.2mmで、サイズが150mm×200mmの金属平板12を使用した。この金属平板12の表面を脱脂処理した後、以下の条件でニッケルストライクめっき層14を形成した。
(ニッケルストライクめっき条件)
めっき浴組成:塩化ニッケル 240g/L
塩酸 60〜100g/L
電流密度 :3A/dm
めっき時間 :20秒
めっき膜厚 :14nm
このように、ニッケルストライクめっき(Ni−stめっき)を施した金属平板12を50mm×50mmのサイズに切断し、図4に示すように、2枚のカーボンペーパー42、42で挟み、これを更に2枚の電極板(銅板)44、44で挟み、試験体40にセットした。そして、金属平板12に対する電極板44の面圧が1MPaになるように荷重をかけ、2枚の電極板44、44間に電流を流し、電極板44、44間の電圧降下から金属平板12の厚さ方向の面積抵抗(面積抵抗A)を測定した。
次いで、上記金属平板12上に、以下の条件で膜厚50μmの被覆層16を形成した。この被覆層16を形成した金属平板12を図4に示す試験体40にセットし、面積抵抗を測定した(面積抵抗B)。
(被覆層16の形成条件)
組成:黒鉛 74質量%、エポキシ樹脂 26質量%
ホットプレス条件:190℃、10MPa、30分
さらに、上記被覆層16を形成した金属平板12上に、以下の条件で作製した高さ0.5mmの流路形成部材18を配置した。この流路形成部材18を配置した金属平板12を図4に示す試験体40にセットし、面積抵抗を測定した(面積抵抗C)。
(流路形成部材18の形成条件)
組成:黒鉛 81質量%、エポキシ樹脂 19質量%
この結果を表1に示す。
(試験1−2)
ニッケルストライクめっきを施していない未処理の金属平板12を用いた以外は、試験1−1と同様に金属平板12の面積抵抗(面積抵抗A)を測定した。
また、上記未処理の金属平板12上に、膜厚50μmの被覆層16を試験1−1と同様の条件で形成し、面積抵抗を測定した(面積抵抗B)。
この結果を表1に示す。
(試験1−3)
ニッケルストライクめっきを施さず、表面をブラスト処理した金属平板12を用いた以外は、試験1−1と同様に金属平板12の面積抵抗(面積抵抗A)を測定した。
また、上記ブラスト処理した金属平板12上に、膜厚50μmの被覆層16を試験1−1と同様の条件で形成し、面積抵抗を測定した(面積抵抗B)。
また、上記被覆層16上に0.5mmの流路形成部材18を配置した状態で面積抵抗を測定した(面積抵抗C)。なお、流路形成部材18は、試験1−1と同様の条件で形成した。
この結果を表1に示す。
Figure 0005292578
表1に示すように、金属平板12にニッケルストライクめっきを施した試験1−1が面積抵抗A、B、Cのいずれにおいても低かった。
これに対して、金属平板12にニッケルストライクめっきを施さなかった試験1−2、1−3では、金属平板12の表面をブラスト処理することで面積抵抗をいくらか低減できるものの、面積抵抗A、B、Cのいずれにおいても試験1−1より高いことがわかった。
以上のように、従来の未処理のステンレス鋼板では、高抵抗な酸化皮膜により面積抵抗が800〜1000mΩcmであったのを、ニッケルストライクめっきを施すことで3〜5mΩcmまで低減できることがわかった。
(試験2)
被覆層16を試験1−1と同様の条件で形成した金属平板12について、ニッケルストライクめっきのめっき時間ごとの面積抵抗を測定した。この結果を図5に示す。
図5に示すように、被覆層16が形成された金属平板12において、ニッケルストライクめっき時間が5秒を超えると面積抵抗Bは約5mΩcm付近まで低下し、めっき時間がそれ以上になるとほぼ一定になった。
これにより、5秒程度の短いめっき時間でも、被覆層16が形成された金属平板12の面積抵抗を5mΩcm付近まで低減できることがわかった。
また、めっき時間ごとのニッケルストライクめっきの膜厚を、めっき前後の重量変化より算出した。この結果を図6に示す。
図6に示すように、ニッケルストライクめっきの膜厚は、めっき時間が10秒以上で約5nm以上となることがわかった。
(試験3)
試験1−1と同様に作製した金属平板サンプルについて以下の腐食試験を行った。すなわち、試験1−1と同様に作製した金属平板サンプルを85℃、2000時間、95%RHの腐食雰囲気に曝す前、曝した後について、1モル硫酸溶液中でサイクリックボルタンメトリー(CV測定法)による電流−電位曲線を測定した。掃引速度は10mV(vsRHE)/秒で行い、0.6〜0.7V(vsRHE)付近に鉄の酸化還元電流(腐食電流)が生じるかについて測定した。この結果を図7に示す。
図7に示すように、腐食雰囲気に曝す前後において、CV曲線に大きな変化はみられず、いずれも0.6〜0.7V付近に鉄の酸化還元電流はみられなかった。これにより、金属平板のニッケルストライクめっき層上に形成した被覆層にはピンホール等の欠陥はなく、耐腐食性は問題ないことが確認できた。
(試験4−1)
試験1−1の金属セパレータ(ニッケルストライクめっき金属平板12+被覆層16)を用いて、アノード側の運転環境を想定して、90℃、90%RHの水素加湿雰囲気に曝したときの面積抵抗の変化を測定した。この結果を図8(A)に示す。
(試験4−2)
試験1−3の金属セパレータ(ブラスト処理金属平板12+被覆層16)を用いた以外は試験4−1と同様にした。この結果を図8(A)に示す。
(試験5−1)
試験1−1の金属セパレータ(ニッケルストライクめっき金属平板12+被覆層16)を用いて、カソード側の運転環境を想定して、90℃、90%RHの空気加湿雰囲気に曝したときの面積抵抗の変化を測定した。この結果を図8(B)に示す。
(試験5−2)
試験1−3の金属セパレータ(ブラスト処理金属平板12+被覆層16)を用いた以外は試験5−1と同様にした。この結果を図8(B)に示す。
アノードを想定した運転環境においては、図8(A)に示すように、本発明に係る金属セパレータを用いた試験4−1では、試験開始から1000時間経過時点では、経過時間によらずほぼ一定で面積抵抗の増加はみられなかった。これに対して、試験4−2の金属セパレータでは、経過時間に対して面積抵抗が大幅に増加することがわかった。
カソードを想定した運転環境においては、図8(B)に示すように、本発明に係る金属セパレータを用いた試験5−1では、試験開始から500時間経過時点では、面積抵抗の増加はみられなかった。これに対して、試験5−2の金属セパレータは、面積抵抗が試験開始直後から増加することがわかった。
このように、アノード、カソードのいずれにおいても、本発明に係る金属セパレータを長時間使用した際でも面積抵抗を低く維持することができ、耐久性に優れることがわかった。特に、アノードを想定した運転環境において、耐久性を著しく向上できることがわかった。
以上から、本発明を適用することで、金属セパレータが高い耐食性を有するとともに、少ないめっき使用量でも電気抵抗を大幅に低減できることが確認できた。
本実施形態の金属セパレータを示す断面模式図である。 本実施形態の金属セパレータの製造方法を示す断面模式図である。 本実施形態の金属セパレータを用いた燃料電池の一例を示す部分分解斜視図である。 本実施例における抵抗測定用の試験体を示す断面模式図である。 本実施例における実験結果を示すグラフ図である。 本実施例における実験結果を示すグラフ図である。 本実施例における実験結果を示すグラフ図である。 本実施例における実験結果を示すグラフ図である。
符号の説明
10、24…金属セパレータ、12、28…金属平板、14、26…ニッケルストライクめっき層、16、30…被覆層、18、32…流路形成部材、20…燃料電池、22…電極膜接合体(MEA)、36、36’…供給マニホールド、38、38’…回収マニホールド

Claims (11)

  1. 最外層にストライクめっきが1〜100nmの膜厚になるように施された金属平板と、
    該金属平板上に直接形成され、炭素材料と樹脂とを含む被覆層と、
    を備えたことを特徴とする燃料電池用金属セパレータ。
  2. 前記ストライクめっきは、ニッケルストライクめっきであることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用金属セパレータ。
  3. 前記金属セパレータの厚さ方向の面積抵抗は1〜15mΩcmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用金属セパレータ。
  4. 前記金属平板は、オーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池用金属セパレータ。
  5. 前記被覆層の厚さは5〜100μmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の燃料電池用金属セパレータ。
  6. 前記被覆層上に、流路を形成するための流路形成部材が配置されたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の燃料電池用金属セパレータ。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の金属セパレータの製造方法であって、
    金属平板の最外層にストライクめっきを1〜100nmの膜厚になるように施す工程と、
    該金属平板上に直接、炭素及び樹脂を含む被覆層を形成する工程と、
    を備えたことを特徴とする燃料電池用金属セパレータの製造方法。
  8. 前記ストライクめっきは、ニッケルストライクめっきであることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池用金属セパレータの製造方法。
  9. 前記被覆層は、炭素材を含む樹脂を熱圧着することにより形成することを特徴とする請求項7又は8に記載の燃料電池用金属セパレータの製造方法。
  10. 前記被覆層上に流路形成部材を配置することにより流路を形成する工程を備えたことを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の燃料電池用金属セパレータの製造方法。
  11. 固体高分子電解質膜を挟む一対の電極と、
    該一対の電極を挟持し、且つ前記一対の電極に原料を供給するための流路を備えた一対の金属セパレータと、よりなる単電池を積層した燃料電池であって、
    前記金属セパレータは、請求項1〜6の何れか1項に記載の燃料電池用金属セパレータであることを特徴とする燃料電池。
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