JP4402630B2 - 固体高分子型燃料電池用セパレータおよび燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用セパレータおよび燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子型燃料電池の構成部材であるセパレータおよび固体高分子型燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池で使用されるセパレータ材料は、大きく分けて炭素系と金属系が存在する。炭素系は、例えば、緻密黒鉛材料を切削加工して流路やマニホールドを成型する。このため、材料費のみならず、加工のための費用が大きいと云う問題がある。
これを解決するために、例えば、黒鉛に樹脂を混合し、加熱圧縮成型や射出成型の手段を用いてセパレータを完成する方法がある。この方法では成型が容易であるので前記の緻密黒鉛切削加工に比較すると、格段にコスト低減が可能となった。
金属はセパレータに要求される機能の一つである反応ガス(燃料ガスと酸化剤ガスの総称)不透過性を満足し、熱伝導性や電気伝導性は金属の種類により大小の差は在れ、一般に黒鉛より大きい。また、金属の持つ強度,靭性,延性は黒鉛材料より優れており、構造材としての機能や、被加工材としての機能でも秀れている。
セパレータとして使用する金属が、一般商用の汎用金属であれば材料の入手が容易であり、かつ、材料費も安価である。そのため、黒鉛と樹脂とを混ぜて成型するセパレータより一層のコスト削減ができると期待されている。
しかし、金属は炭素系材料にはない、腐食され易いという欠点を有している。白金や金などの貴金属を除くと、ほとんどの金属は腐食に対する危険性がある。
固体高分子型燃料電池は温度70℃前後で運転され、燃料極側のセパレータは、水素ガスの他に、二酸化炭素ガスと微量の一酸化炭素ガスが加湿成分の蒸気(水を含むことがある)の混合体に曝される。もう一方の空気極側セパレータは蒸気や水分を含む空気に曝される。
普通、金属がステンレス鋼以上の耐食性を有していれば、このような環境下で腐食されることは無いが、電池特有の分極と云う現象がセパレータに課せられる。これは電極とセパレータとの間で電気的導通があるためで、電位の異なる材料が電気的に接触すると、電気化学反応の強さ(反応速度の速さ)や面積に応じて分極される。このとき、セパレータと電極との間にはイオン導電性が必要となる。
イオン導電性をつかさどる物質は、主に凝結している水であると考えられる。セパレータと電極との間に水が連結して存在すると、イオンの通り道が形成される。セパレータ表面から電極までの最短距離が数百μmと短く、かつ、温度が高いため、例え純水であってもiRドロップは数十mV程度となるため、セパレータを分極させるには十分な電位が印加され得ると考えられる。
セパレータが分極し、分極した結果の電位が金属の活性態域や過不動態域に当ると、金属の腐食が速まり、セパレータと拡散層との接触抵抗が増大したり、あるいは、腐食生成物がイオンとなって電解質膜に捕捉され、その結果、イオン交換膜のイオン導電性を低下させることがある。
セパレータが分極された先の電位が不動態域であった場合、腐食の発生は非常に少ないが、不働態皮膜が成長する。通常の不働態皮膜は水酸化物を出発材としてオキシ水酸化物、酸化物等で構成されている。これら化合物のほとんどは電気伝導性に乏しいため、金属セパレータの不働態皮膜が厚く成長するに従って、電気抵抗が増大し、電池性能の劣化につながる。
金属の耐食性は、不働態皮膜によって維持されるが、これが却って性能劣化を引き起こす原因ともなっている。
この他に、セパレータに電流が流れることによっても酸化皮膜の成長や腐食が発生することがある。特に、セパレータ/拡散層における接触抵抗が大きい場合に顕著で、また、アノード側のセパレータで特にこの現象が発現し易い。この現象は一種の迷走電流腐食(電食)やガルバニック腐食に似た現象で、高電流密度ほど腐食が大きくなる。
このように金属をセパレータとして用いた場合、電気抵抗が増大する、あるいは、腐食されると云う背景から、金属セパレータを用いた場合の高抵抗化防止や腐食防止に関する発明が数多く開示されている。
セパレータではないが特許第3,211,378号または特開平4−159227号公報(特許文献1)は、拡散層としてニッケル,アルミニウム,銅などの発泡金属を用い、これに白金,金などの耐食性材料をコーティングしている。
特許第2,953,555号公報または特開平6−092637号公報(特許文献2)の二極板(セパレータ)はアルミニウム,チタン,ジルコニウム,ニオブ,タンタルおよびその合金、あるいは、ステンレス鋼,高合金鋼,ニッケル−クロム合金製で、その表面に導電性材料を被覆してある。
特開平8−190883号公報(特許文献3)では、ステンレス鋼製あるいはチタン合金製の波板セパレータに、貴金属層を形成し抵抗の増大を抑えたものである。
特開平8−222237号公報(特許文献4)では、金属セパレータの表裏面に多数の突起を配し、その表面には電気伝導性のコーティングが施してある。
特開平9−298064号公報(特許文献5)では、金属上に撥水層を形成し、この撥水層を金めっき層等としてある。
特開平10−228914号公報(特許文献6)では、ステンレス鋼等の金属に、これが電極と接触する面に0.01〜0.06μmの金めっき層を形成している。
特開平10−255823号公報(特許文献7)では、アルミニウムあるいはチタンを80重量%以上含む金属に導電性炭素材料を形成している。同じく、特開平11−162479号公報(特許文献8)では、導電性セラミクスを分散した金属皮膜を形成している。
特開平11−345618号公報(特許文献9)では、ステンレス鋼基板上に導電性塗膜を3〜20μm形成し、この塗膜がグラファイトとカーボンブラックを含む混合粉末としている。
特開平11−144744号公報(特許文献10)では、ステンレス基板上にカーボンを分散させた塗料を塗布し、圧延後、これを加熱処理してカーボン層を形成している。
特開2000−036309号公報(特許文献11)では、金属にフッ化黒鉛粒子と貴金属とを複合めっきした構成としている。
特開2000−123850号公報(特許文献12)では、ステンレス鋼あるいはチタン、並びにチタン合金のいずれかに、貴金属めっき層を設けた構成としている。
特開2000−138067号公報(特許文献13)では、金属基板上に第1と第2のコート層を形成し、第1のコート層には炭素以外の導電性物質、第2のコート層には炭素材料を形成したセパレータとし、高耐食性を実現している。
特開2000−155742号公報(特許文献14)では、金属の表面に陰イオン捕捉物質を含む陰イオン捕捉層を形成し、腐食性物質が金属に到達する前に陰イオン物質を捕捉して腐食を防止する。
特開2000−164228号公報(特許文献15)では、ステンレス鋼,銅,アルミニウム,チタンとこれらの合金あるいは複合材料をセパレータ上に複数層を形成し、耐剥離性,導電性,耐食性を得ている。
特開2000−260441号公報(特許文献16)では、金属のガス流路板(セパレータ)のうち、拡散層と接触する部位に導電性粒子を配置し、この導電性粒子の硬さをセパレータより硬くし、酸化皮膜を破って導電性パスを形成している。
特開2000−307747号公報(特許文献17)では、基板金属上に溶融形成する金属コート層を設け、更には炭素材料などによる耐食コート層を形成し、耐食性の向上を図っている。
特開2000−353531号公報(特許文献18)では、チタン,アルミニウム,クロム,銅およびこれらの合金やステンレス鋼等の金属窒化物層を形成している。
特開平4−159227号公報 特開平6−092637号公報 特開平8−190883号公報 特開平8−222237号公報 特開平9−298064号公報 特開平10−228914号公報 特開平10−255823号公報 特開平11−162479号公報 特開平11−345618号公報 特開平11−144744号公報 特開2000−036309号公報 特開2000−123850号公報 特開2000−138067号公報 特開2000−155742号公報 特開2000−164228号公報 特開2000−260441号公報 特開2000−307747号公報 特開2000−353531号公報
上記の発明は、主として金属の表面に被覆層を形成して耐食性の向上を図ったもので、これらは金属の耐食性を確実に向上させ、金属単体で使用したときより電池の発電寿命を延長させることが可能であった。
しかし、製造工程が複雑になり過ぎたり、連続生産が困難であったり、あるいは、耐食性向上の効果が大きくても材料費が高いなどのためにコスト高を免れ得ない。あるいは、低コストで高耐食化ができるものであっても、効果の持続性が足りないことがある。
例えば、一般に要求されている電池の寿命は、車載用では5000時間以上、家庭用あるいは分散電源用では40,000〜90,000時間とされていること考えると、十分な耐食性を付与する必要があり、寿命延長が金属を用いた場合の大きな課題となっている。
被覆層による防食および高抵抗化防止機能を長時間持続させるためには、被覆層を透過する水や空気を遮断すること、外表面の金属が酸化されてもイオンとして溶出しない金属を選ぶことが肝要と考え、本発明を得るに至った。
実際にセパレータを形成するためには耐食性の他に、基板金属の加工性も加味する必要がある。金属の特徴は十分な強度と、塑性加工の容易性にあるが、数在る金属でもアルミニウムや銅のように塑性加工に優れたものから、ニッケル−クロム−モリブデン合金やチタン合金などの、耐食性が良くても塑性加工に向かない金属まで広く存在する。本発明においては、加工性にも優れた金属で高耐食化を実現するセパレータを提供する。
前記目的を達成するための本発明の要旨は次の通りである。
(1)金属層と導電性を有する被覆層を有する固体高分子型燃料電池用セパレータであって、前記金属層は外層/中間層/外層の三層構造で形成されており、前記外層はチタンまたはチタン合金であり、チタン中の不純物濃度として水素が0.05ppm以下、酸素が0.2ppm以下、鉄が0.25ppm以下、窒素が0.05ppm以下であり、前記外層の厚みは10μm以上であり、前記中間層は、銅、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びこれらの合金から選ばれる金属で形成されており、前記被覆層はカーボン、導電性セラミクス、金属粉末から選ばれる少なくとも1種の導電材を有することを特徴とする。
(2)金属層と導電性を有する被覆層を有する固体高分子型燃料電池用セパレータであって、前記金属層は外層/中間層/外層の三層構造で形成されており、前記外層はチタンまたはチタン合金であり、硬度がビッカース硬さで72〜112の範囲にあり、前記外層の厚みは10μm以上であり、前記中間層は、銅、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びこれらの合金から選ばれる金属で形成されており、前記被覆層はカーボン、導電性セラミクス、金属粉末から選ばれる少なくとも1種の導電材を有することを特徴とする。
(3)前記金属層の最外層の厚みが10μm以上で、かつ、前記金属層の厚みに対する前記最外層の厚みの比が30%以下である。
(4)前記被覆層の膜厚が10〜100μmである。
(5)前記被覆層は、カーボン、導電性セラミクス、金属粉末から選ばれる少なくとも1種の導電材と、該導電材を固定するための樹脂結着剤とで構成される被覆層である。
(6)前記被覆層は、黒鉛及びカーボンブラックを含有する炭素系導電材と結着剤とからなり、炭素系導電材と結着剤の配合比率が重量比で15:85〜90:10、前記炭素系導電材の黒鉛とカーボンブラックの配合比率が重量比で30:70〜90:10である。
(7)前記被覆層の結着剤がフッ素系樹脂、シリコン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フラン系樹脂、ゴム系樹脂の少なくとも1つを含む。
(8)前記被覆層の結着剤が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と六フッ化プロピレン(HFP)との共重合体(PVDF‐HFP共重合体)であり、前記六フッ化プロピレンが結着剤の5〜30重量%である。
(9)イオン導電性を有する高分子電解質と、前記高分子電解質の両面に電極が形成され、ガス拡散層及びセパレータを有する固体高分子型燃料電池において、前記セパレータが(1)に記載のセパレータであることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
本発明によれば、最外層にチタンまたはチタン合金を有する金属層にカーボン等の導電材と導電材を固定するための樹脂結着材とで構成される被覆層を形成することにより、長期に渡り金属層の耐食性を保持し、抵抗増大を抑制した固体高分子電解質型燃料電池の金属セパレータ、並びに、固体高分子電解質型燃料電池を提供することが可能になる。
本発明者らは、まず最初に金属セパレータ材料として適する材料の選定を試みた。その手法として室温の硫酸水溶液中における浸漬試験による試験前後の重量変化、30℃における硫酸(pH約1.2)および硫酸ナトリウム水溶液中(pH約6.8)の分極曲線から求められる電流密度、70℃における硫酸ナトリウム水溶液中の定電位保持試験による電流密度と溶出金属量を用いた。
セパレータが暴露される実際の電池環境は不明な点が多いが、上記試験の実施により材料間の耐食性について相対比較することが可能と考えた。
純金属類について各種試験を実施した結果、次の知見が得られた。硫酸水溶液中における耐食性の挙動は大きく3つに分類される。
分類1:アノード極、カソード極のいずれも耐食性に優れる
分類2:アノード極で耐食性に優れる
分類3:アノード極、カソード極のいずれも耐食性が劣る
上記分類1に属する金属類は以下のとおりであった。
分類1に属する元素:チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、金、白金、鉛、ケイ素、黒鉛。
これらの材料は、分極曲線終了後の試験溶液や定電位保持試験の試験溶液に含まれるこれら金属成分は極微量で、その他の金属よりもおよそ3桁程度低い値であった。従って、電極や電解質に対し、悪影響を及ぼす可能性は少ないと期待される。
しかし、分極時にはある程度の電流が流れるので、この電流はほとんどが皮膜成長に使用されたと考えられる。上記に挙げた金属は、金などの貴金属を除くとほとんどがバルブ金属である。従って、耐食性はよいものの、時間の経過に伴い金属の面抵抗が上昇する懸念がある。実際、チタンの場合は、初期の面抵抗が0.3mΩ・cm2(板厚4mm)であったものが、数十時間で100mΩ・cm2オーダまで上昇した。即ち、貴金属を除くこれらの金属も、何らかの表面処理を施す必要がある。
一般に耐食性金属と云われているステンレス鋼は、広く使用されている金属であり安価で、かつ、加工性に優れている。そのため、セパレータ用材料として期待されるが、特に、カソード極電位域での耐食性が乏しかった。ステンレス鋼はその成分であるクロムやニッケルが高電位域で溶解するためと考えられる。実際、定電位保持試験後の試験溶液中には、ステンレス鋼の構成元素イオンが検出された。
純クロムや純ニッケルは燃料電池のカソード電位域で丁度、過不動態域に相当する。従って、これらクロムやニッケルを主要構成成分とするステンレス鋼(特にオーステナイト系)もカソード電位域で電流が大きくなり、溶解量も増えたものと考えられる。
このことから、高クロム、高ニッケルステンレス鋼、例えば、SUS309SやSUS310Sは、SUS304より耐食性に乏しかった。また、モリブデンは、高耐食化を付与する元素としてステンレス鋼に添加されているが、モリブデンは硫酸水溶液環境で全く不動態化を示さなかった。従って、モリブデンが添加してあるSUS310番代の合金では、ほんの若干であるがSUS304より耐食性に劣った。添加元素としても銅もモリブデンと同じであった。
同様の理由でニッケル基合金もカソード極側での耐食性が乏しい。塩酸や硫酸などの強酸性溶液を扱う化学プラントでは、ニッケル基合金が構造材料として使用されているが、燃料電池環境では使用が難しいと考えられる。
但し、これらの材料はアノード極電位域で優れた耐食性を示したので、表面処理によって耐食性を向上できる可能性はある。
材料の価格や耐食性を勘案すると、総合的にはオーステナイト系のSUS304鋼やSUS316鋼、フェライト系のSUS430が優れていた。耐食性だけの観点では2層ステンレス鋼(SUS329等)が優れているが、材料費が低減できればこの材料も有望である。その他、チタンはSUS304鋼より約1桁価格が高い金属であるが、薄層のチタンを安価な金属に被覆する複合金属材料とすれば、安価となるので期待できる金属でもある。
以上から、金属単体としてセパレータに使用できる金属は貴金属以外には困難である。貴金属を使用することは経済上論外なので、その他の廉価な金属に対し、電気抵抗上昇を抑制したり、耐食性を付与するなどの何らかの表面処理の手段が必要である。
更に、次の実験を実施したところ、基板金属は腐食されても不溶性である必要があることが分かった。
試験片を金属/カーボンペーパ/金属(接触部面積10cm2)とし、この試験片の両端の金属にリード線を取り付けた。この試験は、燃料電池におけるセパレータと炭素でできている拡散層を模擬している。この試験片を70℃、中性0.05M Na2SO4水溶液(大気開放、2L)に浸漬し、ガルバノスタットを用いて、両電極間に強制的に電流(0.1A/cm2,リード線などのiRドロップを補正した後の金属間の電圧は約1.0V)を流した。
その結果、金属がステンレス鋼、ニッケル基合金などのNiやCrを含む合金では、100h後の試験溶液は、その中にppmオーダのNiやCrが存在した。試験後の観察した表面はプラス極、マイナス極共の腐食を呈し、特に、プラス極が著しかった。金属がチタンの場合は、試験溶液へのチタン成分の溶出は認められなかった。
金属からの溶出成分は上述したように電極の失活や、高分子電解質膜のイオン導電性の低下をもたらすため、金属からの溶解成分を抑えなければならない。以上の実験からも、基板金属として有効なのは分類1に属する元素、即ち、チタン,ジルコニウム,タンタル,ニオブ,タングステン,金,白金,鉛,ケイ素,黒鉛であった。
この中で実用的な金属はチタン,ジルコニウム,タンタル,ニオブ,タングステンであり、金属層の最外表面がこれら金属であることが望ましい。しかし、これらの金属は高価であると云う短所の他に、成形性に劣ると云う欠点がある。
セパレータは、反応ガスを効率良く電極に供給させる役目を担うため、複雑な溝形状あるいはディンプル加工、エンボス加工がなされるのが普通である。本発明では鉄や銅,アルミニウム,マグネシウムなど、耐食性は劣るが、加工性の良い金属を中間層に据え、その両面を薄いチタン等の上記金属で被覆し、外層/中間層/外層とした。
本材料を形成する方法として爆着法,圧延法,接着法などがあるが、圧延法の場合、外層と中間層の加工性の差により接合の良否がある。このため、外層と中間層の性質について適当なものを選ぶ必要がある。
次に各種表面処理法について検討した。なお、試験方法として、被覆層の効果を迅速に判断するため、耐食性に乏しい炭素鋼(SS400)に各種表面処理法を適用し、分極曲線と定電位浸漬試験(単純浸漬試験も実施)を通して防食機能を評価した。
めっき法ではクロムめっき,ニッケルめっき,金めっきなどが代表的であるが、前記のように、クロムやニッケルは耐食性に乏しいため、電解金めっきを採用した。その結果、めっきを2段階に分け、めっき層の厚みを0.1μm以上まで厚くしないとピンホールを無くすことができず、十分な耐食性が得られなかった。また、金めっきは前処理等のプロセスが多くなる上、コスト高となる。
導電性セラミクスを、イオンプレーティングやスパッタリングなどのドライプロセスで成膜した材料も満足な耐食性が得られなかった。膜がポーラスであると云う他に、使用するセラミクスによっては、セラミクス自身が電気化学反応で変化し、溶解することがあった。
次に、表面処理法として導電性塗料の塗布を試みた。黒鉛などの導電材を樹脂バインダと共に混合した塗料を炭素鋼に塗布したところ、これが最も防食効果と抵抗上昇抑制効果が高かった。しかし、結着剤(バインダ)の種類や導電材の濃度により防食の効果が著しく異なり、最適な組成を得る必要がある。
なお、本発明は下記の実施形態も含む。
(1)前記金属層は鉄、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、ニッケル、クロムおよび前記金属の合金から選ばれる少なくとも1種の金属からなり、かつ、前記金属の外表面はチタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブおよびこれらの合金から選ばれる金属で構成される。
(2)前記金属層の外層/中間層/外層の各層間には、隣り合う金属で構成される金属間化合物が形成されている。
(3)前記外層の金属の硬度が前記中間層の金属の硬度に対する比が1/3〜3/1である。
(4)前記中間層がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属層であり、前記アルミにウムまたはアルミニウム合金が露出している部位がアルマイトあるいはベーマイト皮膜で被覆されている。
(5)前記被覆層の膜厚は10〜100μm、好ましくは40〜70μmである。
(6)前記炭素系導電材と結着剤の配合比率が重量比で15:85〜90:10、好ましくは、35:65〜55:45である。
(7)イオン導電性を有する高分子電解質との両面に電極、ガス拡散層及びマニホールドを備えたセパレータを有する固体高分子燃料電池において、通電面のみに前記被覆層を形成した固体高分子型燃料電池用セパレータ。
〔参考例〕
参考例を図表を用いて説明する。本参考例では被覆層について各種材料の耐食性を比較した。
前記の金属基板では、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステンを外層に、中間層に鉄、銅、アルミニウム及びマグネシウムで構成される多相金属を用いる。これにより耐食性と加工性に優れた基板金属が得られる。ここでは一例としてチタン/銅/チタンを用いる。
チタン/銅/チタン材はチタンと銅の適当な厚さの薄板を3枚重ね、これを冷間あるいは熱間で圧延し、最終的に板厚0.2〜0.3mmとした。熱間圧延の場合、温度を400〜600℃とし、表面にできた酸化皮膜はエメリー紙で除去した。
被覆層は種々の組成を持つ、炭素/結着剤/溶媒の混合体を用いた。炭素は黒鉛、あるいは、これにカーボンブラックを添加したものを用いた。結着剤はフッ素系樹脂,シリコン系樹脂,フェノール系樹脂,エポキシ系樹脂,ポリイミド系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリオレフィン系樹脂,フラン系樹脂,ゴム系樹脂、および、一部これらの混合物を用いた。
混合体の調製方法は次による。結着剤を各種溶剤(結着剤の材質により適当な溶剤を選定)に溶解し、これに平均粒径約4μmの黒鉛と平均粒径0.02μmのファーネスブラックを添加し、ロールで分散処理して混合体を得た。黒鉛とファーネスブラックの配合比率は重量比で、80:20とした。
別試験で抵抗に及ぼす黒鉛:ファーネスブラックの質量比を試験したところ、黒鉛:ファーネスブラックの質量比が30:70〜90:10で、黒鉛単体より抵抗を小さくすることでき、特に黒鉛:ファーネスブラックの質量比が80:20で最も抵抗が小さくなったことからこの組成比を選んだ。
この混合体を20×50mmに切断したチタン/銅/チタン材上にスクリーン印刷法で塗布した。スクリーンは乾燥後の膜厚が50μm近傍となるようにスクリーンの厚みを選んだ。塗布後、それぞれの溶媒、結着剤の特性に合わせ、乾燥した。さらにこの試験片は20×50mmの一面を残し、その他の部位はシリコン樹脂で被覆し、最終的に露出面が約16mm×46mmなるようにした。
試験に用いた金属は、被覆層の耐食だけを調べるためにチタン/銅/チタンと同じサイズのSS400製(炭素鋼)金属板にも塗布し、防食性能を比較した。
腐食試験は次の手法を用いた。ループ式試験器のガラス製容器(容積2L)に試験片を挿入後、0.05M Na2SO4水溶液を導入し、容器内の試験溶液が溶存酸素濃度<10ppb、溶存水素濃度約30ppb、pH6.8〜7.2に到達した後、温度70℃まで30分で昇温し、ガラス製容器の出口バルブを閉めた。
定期に容器内の試験液をサンプリングし、試験液に含まれる金属成分をICPで定量した。試験時間は100時間とした。
表1は、本参考例で使用した被覆層の詳細と腐食試験の結果を表す。表中の導電材(wt%)は、乾燥後の導電材量の割合を表す。
Figure 0004402630
No2〜No14は被覆層の防食性能を調べた結果である。導電材が高くなるに従って、鉄の溶出速度が高くなる。特に導電材の割合が90wt%になると、被覆層を形成していない裸のSS400(No1)よりは、耐食性の改善が図られているものの、SS400の1/10程度まで腐食量が増加する。
逆に、導電材の割合が小さくなると腐食量が減少するが、別試験で、No3の面抵抗を測定したところ、1Ω・cm2に達していた。この抵抗値は、例えば、燃料電池の電流値を0.5A/cm2程度流すとすると、0.5VのiRドロップに相当し、発電によって得られる電圧の80%が抵抗のロスとなり、実用的な値ではなかった。
電池の効率を高く保つためには、iRドロップをできる限り小さくすることが肝要で、その際、セパレータの抵抗は30mΩ・cm2以下とする必要がある。この値を満足する導電材:結着材との比は35:65〜55:45であった。
以上を纏めると、導電材と結着材との配合比率は15:85〜90:10で耐食性の向上は期待できるが、セパレータにおける導電材として機能をより引き出すためには導電材:結着材の比は35:65〜55:45であることが分かった。
被覆層の膜厚は耐食性に大きな影響を及ぼすことも分かった。図2は被覆層の膜厚と腐食速度との関係を表し、膜厚が10μm以上あれば、耐食性の改善効果が現れる。特に40μm以上あれば、基板のSS400は腐食していない。
逆に膜厚を100μm以上にすると、膜厚の不均一化が生じ、それが乾燥ムラを誘発し、一部の被覆層が風船状に膨らむ現象が発生する。風船状に膨らんだ箇所は被覆層が形成されていなかった。
平均膜厚を70μm以下とすると、この現象を完全に抑えることができた。従って、膜厚は10〜100μmが適当で、好ましくは40〜70μmがよい。
No12およびNo15〜No22は、結着材の影響を調べた結果である。いずれの結着剤を用いてもSS400(No1)を高耐食化する効果はあるが、最も防食効果の大きい結着剤はPVDFやPTFEのフッ素系樹脂である。これらの樹脂は特に疎水性に優れ、水の透過が小さいためと考えられる。
更に、PVDFに関しては、金属との密着力を向上できると期待されるHFPとの共重合体についても試験した。No6〜No11はPVDF−HFP(フッ化ビニリデン−6フッ化ポリプロピレン)共重合体の組成を0〜50%まで変化させたときの結果である。効果の差異は微小であるが、HFPの割合が5〜30%の範囲で防食性能を向上できる。
No25は、チタン/銅/チタン無垢の状態、No26はチタン/銅/チタン金属層に導電材量45wt%のPVDF系被覆層を形成した場合である。どちらの場合も試験溶液中にチタンは存在せず、最も優れている。しかし、後で詳述するが、チタン/銅/チタンを無垢のままセパレータとして使用すると、酸化皮膜の成長のため、十分な発電性能が得られず、被覆層の形成が必須であることがわかった。
〔実施例1〕
本実施例では金属層に外層/中間層/外層の構造を有し、その両面に参考例で述べた黒鉛系の導電材とPVDF系結着材とで構成される被覆層を備えたセパレータについて説明する。
中間層は銅,鉄,アルミニウムおよびマグネシウム、あるいは、これらの合金類が選ばれる。これらの金属は低コストである上に、プレス成形性に優れるためである。これらの金属のいずれでも構わないが、特に、銅は電気伝導性,熱伝導性および組成加工性に優れるため選定した。
また、以下で述べるチタンとの接着性,親和性にも優れる。外層は、チタン,ジルコニウム,タンタル,ニオブ,タングステンが適当であるが、これらの金属の中で最も汎用的なチタンを選んだ。このような外層/中間層/外層を形成した金属層を用いることで、高価なチタン,ジルコニウム,タンタル,ニオブ,タングステンの使用量を抑えられ、低コスト化が可能である。
また、チタン,ジルコニウム,タンタル,ニオブ,タングステンは加工性が乏しく、単体でプレス加工などの塑性加工を施すことが困難であったが、このような外層/中間層/外層の構造とすることで、塑性加工性が向上する。
例えば、最も効果が現れたのはセパレータの流路をプレス加工した際で、板厚0.3mmのチタン/銅/チタン、あるいは、チタン/アルミニウム/チタンでは、図3に示すようなリブ21の巾1mm、溝22の開口部幅1.5mm、溝22の深さ0.5mmを有する波板構造のセパレータ6にプレス成型すると、反りの大きさが1/100であったのに対し、チタン単体(JIS TP270H)では1/20と大きかった。また、コーナー部にクラックの発生が認められた。
このように、金属層1を外層/中間層/外層とすることで、加工性の向上ができた。
図1は、上記の金属層1として厚さ0.3mmのチタン/銅/チタン材をプレスで直線流路を形成し、これに被覆層2を形成したセパレータ6の断面拡大図である。
ここで用いたチタン/銅/チタン材は次の特徴を有する。チタン/銅/チタンは冷間圧延で接合した材料である。但し、チタンと銅は変形抵抗が異なるため、それぞれの金属の硬度をできるだけ合わせる必要があった。一般に中間層である銅は軟らかい金属で、外層であるチタンは硬い。中間層と外層との硬度を種々変化させ、出来上がり後の接着強度を板の曲げ試験で評価したところ、外層と中間層との硬度の比が1/3〜3/1の範囲にあると、チタン/銅/チタンは90度曲げ試験でも剥離することは無かった。
チタン/鉄/チタンも同じく、剥離は生じなかった。チタン/アルミニウム/チタンやチタン/マグネシウム/チタンは曲げにより剥離が生じた。これを解決する手段として冷間圧延後に400℃程度まで加熱すると、隣接金属間で金属間化合物が生成し、接着力の向上が図られた。このような効果はチタン/銅/チタンやチタン/鉄/チタンでも同じように得られた。これら金属は上述したように冷間圧延だけでも接着は可能であるが、熱処理を加え、層間に金属化合物を生成させると、より接着力が強くなった。接着力の他に、材料の電気抵抗も小さくなった。層間がより密着するため、接触抵抗も低減できたためと考えられる。
本実施例では中間層に銅を用いるが、これは軟らかい金属であるため、外層に用いるチタンも変形抵抗差が大きくならない材料を選んだ。チタンおよびチタン合金はJISおよびASTM規格で規定されているように、10種類程度存在する。
これら中で中間層の銅,鉄,アルミニウム,マグネシウムと最も接着力の良い金属は、チタンの不純物濃度として水素が0.05ppm以下、酸素が0.2ppm以下、鉄が0.25ppm以下、窒素が0.05ppm以下であるか、あるいはチタンまたはチタン合金の硬度がビッカース硬さで72〜112の範囲にあるチタンであった。
このチタンは、変形抵抗が銅,鉄,アルミニウム,マグネシウムに近く、そのため、圧延したときに外層のチタンも中間層の銅,鉄,アルミニウム,マグネシウムもほぼ均一に圧延できた。
チタンの不純物濃度が上記から外れるとチタンが硬くなり、圧延時に中間層だけが優先して圧延され、均一な厚みを有する多層金属が得られなかった。特に、アルミニウムやマグネシウムを中間層とした場合、これが顕著であった。
チタンが上記組成の範囲にあっても、アルミニウムやマグネシウムを中間層としたときは均一化できないこともあるので、アルミニウム−銅合金やアルミニウム−マグネシウム合金を用いることが好ましい。
チタン/銅/チタン材におけるチタン層の厚みは10μm以上必要であった。これはチタンの結晶粒径が10μm前後であるためである。チタン層の厚みが結晶粒径の厚みと同程度であると、プレス時の曲げ応力が外層のチタンに加わった際、粒界から破壊し易くなるためである。また、外層であるチタンの厚みを、むやみに厚くしても、加工性の面で好ましくない。
金属層のうち、外層の厚みの比が30%以下であれば、中間層の優れた加工性を損なうことはなく、中間層の金属が単体のときと同様に組成加工が可能であった。外層の厚みが30%を超えると、チタンの機械的性質が顕在化し、塑性変形性が悪化した。従って、外層の厚みは10μm以上あって、金属層の厚みに対する外層の厚みの比が30%以下であることが好ましい。
図1に示した被覆層2は、表1に示したNo8の材料で構成されている。結着材としてのPVDF−HFP(10wt%)共重合体をNMP(N−メチルピロリドン)に溶解し、これに平均粒径約4μmの黒鉛と平均粒径0.02μmのファーネスブラックを添加し、ロールで分散処理して混合体を得た。黒鉛とファーネスブラックの配合比率は、重量比で80:20とした。最終的に混合体に対する導電材+結着材の質量比(固形分量)が25wt%と40wt%となる2種類の混合体を調製した。
図4に示すようにセパレータ6の流路断面は台形で、拡散層9と接触するリブの幅は1mm,溝の開口部幅は1.5mm,流路深さは0.5mmである。図1の被覆層2はディップコート法とスクリーン印刷法の2種類とした。
ディップコート法は、室温で固形分量(導電材+結着材)25wt%の混合体中にセパレータ6を10秒程度浸漬し、引き上げ速度10mm/秒の速度で引き上げる方法で行った。これを真空乾燥器で140℃に加熱し、3時間乾燥した。この方法で得られた被覆層2の厚さは平均60μmであった。
スクリーン印刷は、最終的な被覆層2(図1参照)の厚さが60μmとなるようなステンレス製メッシュサイズ#100のスクリーンを用い、シリコンゴム製ブレードで固形分量40wt%の混合体を印刷塗布した。スクリーン印刷方法はディップコート法がセパレータ6の全面に被覆層2が形成されるのに対し、セパレータ6のリブ面(電気が流れる通電面)だけに被覆層2が形成できる。但し、金属層1のうち、板周辺の銅が露出する部分については、はけ塗りで被覆層2を形成した。このセパレータ6を真空乾燥器で140℃,3時間加熱乾燥した。被覆層2の厚さは平均60μmであった。
本実施例で例示した導電材は、黒鉛およびファーネスブラックであるが、これに限定されるものではなく、フラーレンやカーボンチューブ等であってもよく、また、タングステンカーバイドや窒化チタンなどの導電性セラミクスであってもよいし、混合体であってもよい。さらにまた、金属粉体であっても同じ効果が得られる。
〔実施例2〕
本実施例を図を用いて説明する。本実施例では実施例1のセパレータを単セル燃料電池に使用した例を示す。
図4はこのセパレータ6を備えた単電池発電試験セル7の断面模式図である。単電池発電試験セル7は、ゴアテックジャパン製MEA(Membran Electrode Assembly;PRIMEA5510)8を、同社製の拡散層(CARBEL−CF)9の2枚で挟み、更に、セパレータ6で挟持している。
セパレータ6は肉厚0.3mmの板材で、発電面(拡散層9との接触面)が30mm×30mmであり、この部位に直線流路が形成されている。さらに、このセパレータ6は緻密黒鉛製のホルダ10に納められている。
前記の表面処理層2はセパレータ6の外表面全てに形成されているタイプと、リブ面だけに形成されているタイプ、および、表面処理層2を形成しないタイプの3種類を用いた。
上記被覆層2は図1に示すように、樹脂5がポリフッ化ビニリデン、導電材3が平均粒径4μmの黒鉛と平均粒径0.02μmのカーボンブラックの混合体で構成されている。被覆層2に占める導電材3の質量は40%で、被覆層2の厚みは平均60μmである。
これらによって形成された単電池発電試験セル7の連続発電試験を実施した。発電試験条件はセル温度70℃,アノードおよびカソード加湿温度70℃,電流密度0.5A/cm2とし、水素利用率70%,酸素利用率40%の条件下、出力電圧の経時変化を観察した。なお、燃料ガスには常圧の純水素を、また、酸化剤ガスには乾燥空気を用いた。
その結果、試験開始初期の電圧は0.68Vであった。比較のために測定した機械切削緻密黒鉛製セパレータと比較すると、チタンでは約0.03Vほど低い値であった。これはセパレータ6の抵抗が緻密黒鉛より大きいためである。
また、初期電圧は黒鉛セパレータ製より低いものの、チタン/銅/チタン製セパレータでは連続発電時間1,000時間の時点で電圧低下率が−15mV/1,000時間であり、5,000時間以上の寿命と見做すことができる。
発電性能に関しては、表面処理層2がセパレータ6の全面形成タイプとリブ面形成タイプのいずれもほぼ同じであった。このことから表面処理層2はリブ面のみに形成するだけでも十分である。被覆層2を必要箇所に限って形成することにより材料の使用量を低く抑えることができる。
被覆層2を有しない裸のチタン/銅/チタン製のセパレータ6を用いると、初期の電圧が0.6V以下で、電圧低下率は−1,000mV/1,000時間であった。分解後のセパレータ6の表面は、全体的に薄紫色の干渉色に変化しており、チタンの皮膜が成長して抵抗が増加したことが、大きな低下率を招く要因と考える。
比較のために、同じ表面処理層を形成したステンレス鋼(SUS304鋼)についても同じ試験を実施した。ステンレス鋼の場合、出力電圧および電圧低下率は、それぞれチタン/銅/チタン製セパレータとほぼ同じ0.68Vおよび−15mV/1,000時間であったが、発電時間が400時間を超えると、出力電圧が急激に減少し、0.2V以下となった。
ステンレス製セパレータを用いた電池を分解し、表面処理層2を除去して表面を観察したところリブ表面は全面腐食の様相を呈していた。
更に、MEAの元素分布をTOF−SIMSで分析した結果、ステンレス鋼の成分であるニッケルが電解質膜中に検出された他に、特に、カソード側電極層において鉄の蓄積が観察された。
ステンレス鋼をセパレータとして用いた場合、発電に伴う腐食によりステンレス鋼からの溶出成分がMEAに悪害を与え、寿命を短くした。チタン/銅/チタンのセパレータでは若干のチタンがMEAで観察されたものの、その量は少なく、発電性能に影響を及ぼすほどではなかった。
このように被覆層2を形成したチタン/銅/チタンは電池の寿命を短くさせることなく使用することができる。
〔実施例3〕
本実施例を図を用いて説明する。本実施例では積層型電池の一例を示す。
図5は本実施例の積層型電池に用いたセパレータ6の模式鳥瞰図である。セパレータ6は金属層1がチタン/アルミニウム/チタンの3層、被覆層2が表1に示したNo8の混合体を前記チタン/アルミニウム/チタン3層の金属層1の両面全体に被覆してある。
被覆方法は実施例1で述べたディップコート法を用いた。前記セパレータ6の発電面は直線状の流路溝をプレス加工で成型されており、流路溝部80×150mmである。この流路部はリブ21(図3参照)の幅1mm、溝22の開口部幅1.5mm、溝22の深さ0.5mmである。前記セパレータ6は反応ガス及び冷却水の出入り口であるマニホールド13が形成されている。
また、前記セパレータ6は反応ガスを流路部に導入するための導入溝が形成されているPPS製のフレーム12がシリコン接着剤で接着されている。
外層/中間層/外層の構造を有する金属層はセパレータ6の周辺部や、マニホールド端面13において中間層が露出する。そのため、この露出部を何の保護もせず、そのまま使用すると中間層が選択的に腐食し、腐食生成物が発電性能を悪化させる。そのため、実施例2では露出面を保護層2と同じ材料で被覆したが、これはメッキ,樹脂被覆などその他の方法でもよい。チタン/アルミニウム/チタンを金属層1として用いた場合はアルマイト処理が適当である。
室温,10wt%硫酸中で15分間、15Vの電圧でこれをアノード酸化すると、中間層であるアルミニウムが緻密で耐食性に優れるアルマイト皮膜で覆われる。アルマイト処理後の耐食性は約3桁ほど向上した。
アルマイト処理に続き純水,95℃で10分間封孔処理すると、更に耐食性が向上した。但し、外層のチタンも酸化され、紫色の絶縁性皮膜も成長するので、これを研磨等で除去してからセパレータとした。
図6に冷却板15の鳥瞰図を示す。冷却板(冷却セル)15はセパレータ6と同一構造のものを用いた。セパレータ6と同じ形状を有する冷却板15の2枚で冷却水用フレーム16を挟持し、これを一単位の冷却セルとした。冷却水は、冷却板15−aと冷却板15−bとの間を流れる構造である。
冷却板15−aおよび冷却板15−bの対向面が冷却水の通り道であるのに対し、それぞれの反対側の面は電極面となる。
図7は前記セパレータ6を積層した積層型電池の構造を示す。セパレータ6とセパレータ6の間にはゴアテックジャパン製MEA(Membran Electrode Assembly;PRIMEA5510)8と、同社製の拡散層(CARBEL−CF)9の2枚で挟み込まれている。これを一単位の発電セルとした。
発電セル3単位に対し、冷却セル1単位を繰り返し積み上げ、トータルで発電セル9単位、冷却セル2単位積層し積層型電池とした。積層体の両端には外側に向かってカーボンペーパ17/ニッケル製集電材18/テフロン(登録商標)製絶縁板19/エンドプレート20が設置されている。
上記積層体の両端に設けられた2つのエンドプレート20間で、ボルトナットと皿バネを使用し積層体を締め付けた。エンドプレート20には反応ガスおよび冷却水の出入口用コネクタが設けられ、これを介して反応ガスと冷却水が積層型電池に導入される。
この積層型電池を次の条件で発電した。発電条件は電流密度0.3A/cm2、電池温度70℃、アノードおよびカソード加湿水温度70℃(外部加湿器により反応ガスを加湿)、水素利用率70%(純水素)、酸素利用率40%(空気)、ガス排圧大気圧とした。
開回路電圧は1発電セル当たり平均900mV、0.3A/cm2負荷時、1発電セル当たり平均0.74Vであった。1,000時間まで発電したところ、出力電圧は1発電セル当たり0.02V低下したのみであった。
発電時の交流抵抗を定期に測定した結果は、発電開始から3,000時間後まで全く変化せず、90mΩ・cm2であった。このことから、セパレータ自身は全く劣化が認められず、長寿命のセパレータとすることができた。
本実施例で用いたセパレータ6の形状並びにそのリブ21の幅、溝22の幅、深さは一例であって、これに限定するものではない。
チタン/銅/チタンに被覆層を形成したセパレータの模式断面拡大図である。 被覆層の膜厚と腐食速度の関係を表すグラフである。 プレスセパレータの鳥瞰図と断面拡大図である。 単電池発電試験セルの模式断面図である。 積層型電池に用いたセパレータの鳥瞰図である。 積層型電池に用いた冷却板の鳥瞰図である。 積層型電池の構成を表す模式断面図である。
符号の説明
1…金属層、2…被覆層、3…導電材、5…樹脂、6…セパレータ、7…単電池発電試験セル、8…MEA、9…拡散層、10…ホルダ、12…フレーム、13…マニホールド、15…冷却板、16…冷却水用フレーム、17…カーボンペーパ、18…集電板、19…絶縁板、20…エンドプレート、21…リブ、22…溝。

Claims (9)

  1. 金属層と導電性を有する被覆層を有する固体高分子型燃料電池用セパレータであって、前記金属層は外層/中間層/外層の三層構造で形成されており、前記外層はチタンまたはチタン合金であり、チタン中の不純物濃度として水素が0.05ppm以下、酸素が0.2ppm以下、鉄が0.25ppm以下、窒素が0.05ppm以下であり、前記外層の厚みは10μm以上であり、前記中間層は、銅、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びこれらの合金から選ばれる金属で形成されており、前記被覆層はカーボン、導電性セラミクス、金属粉末から選ばれる少なくとも1種の導電材を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  2. 金属層と導電性を有する被覆層を有する固体高分子型燃料電池用セパレータであって、前記金属層は外層/中間層/外層の三層構造で形成されており、前記外層はチタンまたはチタン合金であり、硬度がビッカース硬さで72〜112の範囲にあり、前記外層の厚みは10μm以上であり、前記中間層は、銅、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びこれらの合金から選ばれる金属で形成されており、前記被覆層はカーボン、導電性セラミクス、金属粉末から選ばれる少なくとも1種の導電材を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  3. 前記金属層の最外層の厚みが10μm以上で、かつ、前記金属層の厚みに対する前記最外層の厚みの比が30%以下である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  4. 前記被覆層の膜厚が10〜100μmである請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  5. 前記被覆層は、カーボン、導電性セラミクス、金属粉末から選ばれる少なくとも1種の導電材と、該導電材を固定するための樹脂結着剤とで構成される被覆層であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  6. 前記被覆層は、黒鉛及びカーボンブラックを含有する炭素系導電材と結着剤とからなり、炭素系導電材と結着剤の配合比率が重量比で15:85〜90:10、前記炭素系導電材の黒鉛とカーボンブラックの配合比率が重量比で30:70〜90:10である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  7. 前記被覆層の結着剤がフッ素系樹脂、シリコン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フラン系樹脂、ゴム系樹脂の少なくとも1つを含む請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  8. 前記被覆層の結着剤が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と六フッ化プロピレン(HFP)との共重合体(PVDF‐HFP共重合体)であり、前記六フッ化プロピレンが結着剤の5〜30重量%である請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用セパレータ。
  9. イオン導電性を有する高分子電解質と、前記高分子電解質の両面に電極が形成され、ガス拡散層及びセパレータを有する固体高分子型燃料電池において、前記セパレータが請求項1に記載のセパレータであることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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