JP5292031B2 - 曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品 - Google Patents
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Description
一般的に、このような冷却感や通気性を得るためには、優れた特性を有する素材を選択することが極めて有効であり、その素材の特徴を活かした構造が各種研究され、提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
しかしながら、公開された技術としては、従来までこの2部材を組み合わせて用いる例は、皆無であり、両者を有効に共動し、機能させて優れた効果を得た用途品化への研究について、何ら検討が進められたものはなかった。
これは、これらの特性がそれぞれ堅さ(柔らかさ)、伸展強さ(弱さ);圧縮強さ(弱さ);屈曲強さ(弱さ)について、全く相反する特性を有するため、皮膚に直接接触する用途品に対して、適用、組み合わせようとする発想自体、全く想到されるものではないからに他ならない。
ところが、さらなるユーザーの要求として、「皮膚に接触する快適さとして、より好ましくは、密着感はそのままに、冷感をもっと高めてほしい」というニーズが強くある。
なお、本発明でいう冷感とは、接触する皮膚に対して長時間強い冷却感を与えればよいというものではない。これは、快適感や休息といった心地よい使用感が要求される条件として、接触初期の冷感具合(初期冷感)と、その後の密着時の温度差の維持具合(冷感持続性)と、皮膚への接触感それぞれが重要であるためであり、これを総じて心地よい使用感として考えるからである。また、本明細書では、前記の初期冷感と冷却持続性を総じて冷感性能という。
このように、特に寝具類や運動具において健康な人体が快適に感じるには、密着感と適度な冷感性能の両立が要求される。これが両立しないと、寝具類で枕を例に取れば、入眠やその後の休息が損なわれるといった結果となってしまう。
これは、例えば、「いつまでも体温から離れた冷たすぎる枕」、あるいは、「外気温度にかかわらず一定温度の枕」であったりすれば、深い眠りにつけず目覚めてしまったり、それだけでなく体調を崩したり、外気温度への自己体温を調整しようとする生理的に不快なストレス、過剰な刺激を感じさせることにもなりかねない。
他方、密着感と適度な冷感性能の両立を得ることができれば、上記用途品では、優れた入眠や休息が得られ、心地よい使用感を得ることができる。
このような背景から、本発明者らは、快適な使用感として、接触初期の冷感温度(初期冷感)と、その後の密着時の温度差の維持具合(冷感持続性)に着眼し、それを実現させる構成を得るために、ゲル材と炭素質材料を用い、特定の条件を満足させて性能を両立させ、適度な冷感性能を維持し、人体に使用して、屈曲性や耐久性も満足させる構成の曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品を追求し、提供する。
ところが、本発明者らが直面した大きな問題点は、「炭素質材料」は、皮膚に直接接触する用途品として必要な屈曲に対し、容易に割裂したり、屈折し折れてしまったりすることであった。また、炭素質材料は、ゲル材との密着性が極めて悪く、それでも長期間密着させようとするほど、ゲル材からの液体成分を炭素質材料が吸収し、それぞれの水分または油分の転移により、両者ともその性能の低下を引き起こし、密着感や熱伝導性の維持すら容易ではなかった。
そこで、本発明者らは、ゲル材と炭素質材料との相反する組み合わせが共動できるための条件を試行錯誤した結果、ゲル材と炭素質材料とが共動できる条件、すなわち、硬さ(柔らかさ)、伸展強さ(弱さ);圧縮強さ(弱さ);屈曲強さ(弱さ)の共動を満足する構成を見出した。
さらに、上記の特定の条件において、皮膚に直接接触する用品に対して、ユーザーの所望する密着感を損なわず、適度な冷感性能によって、心地よい使用感が得られる性能を維持し、耐久性にも十分に満足する構成をも追求した結果、「ゲル材料」と「炭素質材料」の共動による曲面発熱体用冷感パッド積層体およびその用途品を提供できるに至った。
前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)にグラファイトからなる炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ
裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とし、
また、裏面層(C)は、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなり、かつ放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成され、熱源側からの屈曲する外力に対して、該小スリットが中間層(B)に密着しつつ、拡開し、
さらに、裏面層(C)は、該小スリットのスリット幅より大きい、少なくとも一本の大スリットで分断され、該大スリットは、25mm以下の幅で、該小スリットの方向とほぼ直交する方向に分断させてなることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
尚、本発明における引張り伸び率は、JIS K6251に準拠した同じダンベル形であるが、厚みは、各層の実厚みでの引張り伸び率であって、前記引張り伸び率の大小関係も、各層の実厚みでの引張り伸び率の比較における大小関係である。これは、各層の硬さと厚みで、引張り伸び率が変わるので、実際の積層構成における各層の引張り伸び特性の大小関係が重要であるためである。そこで本発明では、引っ張り伸び率は、表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲での数値として定める。また、本発明における曲面発熱体とは、特に生存する人体や動物など、表面が曲面で、柔らかく、冷温感を自覚できるもののことである。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、裏面層(C)には、さらに、可撓性の補強層(D)を有し、補強層(D)は、面積が裏面層(C)より大きく、かつ裏面層(C)全面を覆い、補強層(D)の一部が中間層(B)と密着することを特徴とする曲面発熱体用の冷感パッド積層体が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、表面層(B)と被覆層(E)との接合は、全周を溶着したことによるものあり、全周縁に硬質部を形成し、該硬質部により裏面層(C)の過剰な屈曲を抑制するとともに初期形状を維持させる機能を付与したことを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第4又は5の発明において、被覆層(E)は、引張り伸び率(JIS K6251準拠)が中間層(B)の樹脂材料と同一または大であり、かつ厚さが0.05〜0.15mmの樹脂フィルムであることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、表面層(A)は、熱伝導性ゲルシート、蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートからなる群から選ばれたものであることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、表面層(A)の熱伝導性ゲルシートは、熱伝導率(JIS R2616準拠)が0.5〜3.0W/m・Kであり、硬度が針入度(JIS K2207準拠)で20〜150であり、厚みが1〜10mmであることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体が提供される。
さらに、本発明の第11の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明に係る曲面発熱体用冷感パッド積層体を用いることを特徴とする運動具が提供される。
以下に、本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体及びその用途品などについて、項目毎に、詳細に説明する。
1.熱源側表面層(A)
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体に用いられる熱源側表面層(A)は、ゲル材料からなり、好ましくは、熱伝導性ゲルシート、蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートからなる群から選ばれたものである。
熱伝導性フィラー(c)は、熱伝導性充填剤とも言われ、金属酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、フェライトなど公知のものを一種又は二種以上を混合して使用できる。例えば、シリカ(石英)、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、マグネシア、亜鉛華、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、雲母が挙げられる。中でも、シリコーンゲルに対する分散性がよく、安価で環境負荷が少ない観点から、水酸化アルミニウムやアルミナが好ましい。また、これらの熱伝導性フィラーは、ゲルへの分散性とゲルとの密着性の向上のため、必要に応じて、シランカップリング剤などで表面処理をしてもよい。
また、シリコーンゲルは、上記硬さを備え、温度特性に優れ、溶出の点でも心配がなく、変質せず、耐久性がある等の基本的な諸物性を満たすものであれば、いずれのものも適用できるものである。
また、上記蓄熱ゲルシートは、熱伝導性ゲルシートと同様に、シリコーンゲルからなることが好ましく、上記熱伝導性ゲルシートに用いたシリコーンゲルを、同様に用いることができる。
高吸水性ポリマーゲルとしては、好ましくは、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩架橋物に自重の100倍吸水させたゲルなどの高吸水性ポリマーゲルを挙げることができる。
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体に用いられる中間層(B)は、樹脂材料からなり、その面積が後記の裏面層(C)より大きいものである。
また、中間層(B)は、本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体において、裏面層(C)と表面層(A)柔らかい感触を活かしつつ、かつ、伸延性に乏しい裏面層(C)を補強して曲げ追従性と曲げ耐久性の機能、働きを発揮するために、次の性状、性能を有するものである。
すなわち、上記樹脂材料としては、好ましくは、JIS K6251準拠の引張り伸び率が表面層(A)の引張り破断荷重以下の引張り試験力の範囲において、20〜200%、厚さが0.05〜0.5mm、及びJIS K7311準拠のJIS Aの硬度が30〜120の樹脂フィルムが挙げられる。引張り伸び率が20未満であると、冷感シートの使用の際に表面層(A)の柔らか感が損なわれることがある。一方、引張り伸び率が200%を超えると、表面層(A)の伸びとグラファイトシートの伸びとの差によって生ずる応力を緩和できず、グラファイトシートの曲げ耐久性が低下するので好ましくない。また、厚さが0.05mm未満であると、後述する被覆層(E)との溶着加工の際に、薄すぎて十分な溶着強度が得られない問題が発生する可能性があり、一方、厚さが0.5mmを超えると、可撓性が低下するとともに、中間層(B)の熱抵抗が大きくなるので、表面層(A)から裏面層(C)への熱の伝導が阻害されて、冷感持続性が低下するので好ましくない。特に好ましい厚さは、熱抵抗低減と可撓性の観点から、0.05〜0.15mmの範囲である。さらに、硬度については、硬度が30未満であると、表面層(A)の伸びとグラファイトシートの伸びとの差によって生ずる応力を緩和できず、グラファイトシートの曲げ耐久性が低下し、一方、硬度が120を超えると、冷感シートの使用の際に表面層(A)の柔らか感が損なわれることがある。
さらに、冷感パッドの冷感性能を損なわない範囲において、中間層(B)で表面層(A)表面全体を被覆してもよく、中間層(B)による全面被覆によって、ゲルシートである表面層(A)の保形と、使用時の熱源へのべた付き付着を防止することができる。
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体に用いられる裏面層(C)は、炭素質材料からなり、好ましくは、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなるものである。すなわち、厚み方向の熱伝導率が1〜50W/m・Kで、面方向の熱伝導率が100〜3500W/m・Kである。
そのようなグラファイトシートの熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいものとして、例えば、面方向に配向したタイカ(株)製の商品名「スーパーλGS」の熱伝導異方性(面方向250〜350W/m・K、厚み方向5〜10W/m・K)あるいは商品名「λGS」の熱伝導異方性(面方向170〜200W/m・K、厚み方向5〜10W/m・K)グラファイトシートなどが挙げられる。
さらに、裏面層(C)は、グラファイト粉の脱落や補強の目的で、裏面層(C)表面に、樹脂被覆処理を施したものでもよいし、さらに/あるいは、後述する補強層(D)を積層してもよい。前記樹脂被覆処理としては、アクリル系光硬化樹脂のコーティングなど公知の処理を適用でき、補強層(D)と裏面層(C)の接着性を向上させるにおいて有効である。
さらに、裏面層(C)は、少なくとも一本の大スリットで分断されていることが好ましく、前記大スリットの形成により、さらに裏面層(C)の屈曲による形状追従性が向上する。大スリットは、その面積が表面層(A)より小さく、かつ前記小スリットのスリット幅より大きいものであることが好ましい。
前記大スリットのスリット幅は、人体の皮膚の冷感点を基準に、該冷感点間の距離の10倍より小さければ、大スリット部分と裏面層(C)部分との冷感の差を感じない(し難い)ので、その範囲内で大スリットの幅を広げることができ、冷感の連続的な感覚を付与しながら、裏面層(C)の屈曲による形状追従性を向上することができる。なお、前記スリット幅の範囲を数値換算すると、具体的には25mm以下が好ましく、20mm以下が特に好ましい。25mmを超えると、冷感パッドの裏面層(C)のある部分と大スリットの部分で、冷感に明らかな差を感じやすくなり、好ましくない。25mm以下であれば、人体に適用した場合には、冷点の感覚において冷感の明らかな差を感じ難くなる作用がある。
小スリットと大スリットとは、略垂直の位置関係にあり、それぞれが面方向の縦(または横)、横(または縦)の曲げ変形時に対して、共動して変形応力を低減させることにより、裏面層(C)の優れた曲面形状追従性と曲げ耐久性を実現させる作用がある。
また、小スリットと大スリットは、その機能を損なわない範囲において、その形状は直線状や波形状など、好適な形状を適用できる。
なお、スリットとは、裏面まで貫通して、裏面層(C)の面方向が分断された状態であって、例えば、ごく薄い刃で切り込みを入れただけの状態も含まれる。
この理由としては、熱源側から荷重がかかって冷感パッドが表面層(A)を内側として屈曲(湾曲)した時に、伸縮性に乏しく脆い裏面層(C)が過度の荷重によって破断するのを防ぐために、表面層(A)より中間層(B)の引張り伸び率を小さくする必要があり、さらに、中間層(B)の引張り伸び率が裏面層(C)よりも小さいと、中間層(B)の剛性が大きくなり、冷感パッドとしてのフレキシブル性が損なわれるので、中間層(B)の引張り伸び率は、裏面層(C)よりも大きくする必要があるためである。
また、裏面層(C)は、その面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着させて、屈曲する位置に配置されることもでき、それが望ましい。本発明においては、例えば、裏面層(C)のグラファイトシートが屈曲する位置に配置されたとしても、割裂や屈折、それに伴う熱伝導性の低下といった不具合がなく、屈曲性や耐久性も満足し、曲げ耐久性に優れるものである。
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体において、裏面層(C)には、さらに、可撓性の補強層(D)を有していることが好ましい。
補強層(D)の形状としては、図2に示されるように、面積が裏面層(C)より大きく、かつ裏面層(C)全面を覆い、補強層(D)の一部が中間層(B)と密着することが望ましい。
また、補強層(D)の材質としては、可撓性であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ウレタン、ナイロンなどが挙げられる。
さらに、補強層(D)の性能、機能としては、可撓性であれば、特に限定されないが、厚みが0.1〜1mmであり、また、熱伝導性、防水性の性能を有していることが望ましい。
さらに、補強層(D)の裏面層側には粘着層を設けてもよい。粘着剤としては、十分な接着性を得られるものであれば、公知の粘着剤を適宜選択して適用できる。
また、本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体において、表面層(A)には、中間層(B)と接触していない部分に、さらに、被覆層(E)を有していてもよい。
被覆層(E)の形状としては、図5に示されるように、中間層(B)と連結して袋状とし、表面層(A)全面を被覆していることが望ましい。その場合には、少なくとも表面層(A)の熱源側は、被覆層(E)で被覆することが望ましい。
また、被覆層(E)の材質としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンや熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、中間層(B)との溶着性の観点から、中間層と同じ材質、もしくは中間層(B)との溶着性に好適なものが好ましい。
さらに、被覆層(E)の性能、機能としては、防水性や適度な熱伝導性を有していることが好ましい。
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体は、枕、クッション、マットレスなどの寝具類、後頸部保冷シート、足裏保冷シート、シューズ等の運道具といった用途に用いることができる。以下、簡単に説明する。
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体を、枕において、人間の後頸部などが接地する箇所に配置して、用いることができる。このようにすれば、表面層(A)のゲル触感(冷涼感)を与え、快適さ導き出し、さらに、裏面層(C)の特定形状、性能のグラファイトシートが放熱性を与え、快適さを持続させることができる。その結果、夏季等の熱帯夜のように夜間でも高温状態が続いてしまっているような場合であっても、就寝時に適度な冷感が入眠を促進させ、かつ適度な冷感性能によって心地よい使用感を、枕に付与できる。また、表面層(A)を熱伝導性ゲルシートとした場合には、予冷処理や電力の供給が不要であるので、そのまま使用でき、さらに、従来の予冷タイプの冷却枕(氷枕等)のように過度の冷し過ぎによる不快感や、結露によって枕や布団が湿ることがない。
枕基体部は、一例として、低反発のウレタンフォーム等から成る低反発発泡体を適用するものであるが、市場の嗜好性等に応じて種々の素材のものに改変して実施することが可能である。
就寝時において、人体頭部からの熱が、被覆層(E)を介して表面層(A)に吸熱され、表面層(A)のゲル層は熱伝導性に優れるため、この熱は下層の裏面層(C)に伝えられる。そして裏面層(C)により熱は拡散される。
本発明の曲面発熱体用冷感パッド積層体の用途としては、上述したような枕への使用の他、クッション、寝具用マットレス、ベッド、ペット用等の敷マット、シューズなどの運動具、パソコン作業時のアームレスト用マットや座席マットとしての使用など、放熱により冷感を付与されることが好まれる種々のマット材、シート材として使用可能である。
(i)表面層(A):
シリコーンゲル原料(a)として、二液付加反応型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製CF5106をA液/B液=50:50(重量比)にて混合)20重量%と、熱伝導性フィラー(c)として水酸化アルミニウム(昭和電工社製HS341)80重量%を、ケミカルミキサーで5分間混合後、10分間真空脱泡して25℃粘度が50Pa・sの未硬化のゲル組成物を準備した。次いで、前記未硬化のゲル組成物を、OPP/PET積層の剥離フィルムC1(タカラインコーポレーション社製、75μm)のOPP積層側に接するように挟んで厚み2.5mmのシートにロール成形機で成形し、電気式温風オーブン内で100℃、2時間加熱して、熱伝導性シートとし、230mm×80mmの長方形にカットして、表面層(A)とする熱伝導性シートを得た。前記熱伝導性シートの熱伝導率は1.0W/m・Kで、破断時の引張り伸び率は360%であった。
250mm×100mm×厚み0.1mmのウレタンフィルム(日本マタイ社製 エスマーURS92°)を準備した。前記ウレタンフィルムの、前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率は、20%であった。
厚み0.07mmで、予め片面にUV樹脂コート処理し、かつ他方面に片面粘着剤付のグラファイトシート(株式会社タイカ製、製品名スーパーラムダGS)を準備した。前記グラファイトシートの、前記表面層(A)の熱伝導性ゲルの引張り破断荷重(0.5N)における引張り伸び率は2%であった。
補強層(D)として、可撓性を有する不織布テープ(恵比寿工業社製、N1040)を、被覆層(E)として、250mm×100mm×厚み0.05mmで、引張り伸び率が40%のウレタンフィルム(日本マタイ社製、エスマーURS92°)を準備した。
また、引張り伸び率の測定は、JIS K6251に準拠して、ダンベル3号形状で、引張り強度試験機(島津製作所 AG−10)を用いて、クランプ距離55mm、引張り速度500mm/minの条件で実施した。引張り伸び率は、試験前の標線間距離L0(20mm)、破断時の標線間距離L1において、次式より求めた。
伸び率(%)={(L1−L0)/L0}×100
ただし、中間層(B)と裏面層(C)の伸び率は、表面層(A)の引張り破断時の試験力における標線間距離をL1として、上記の式から求めた。
作製手順:
(I)中間層(B)と被覆層(E)の各周端部約10mmを溶着シロとして、表面層(A)となる熱伝導ゲルシートの表裏面を、それぞれ中間層(B)と被覆層(E)で挟んで、空気が入らないように被覆、溶着して、250mm×100mmの長方形の熱伝導性ゲルシートのパックを作製する。
(II)熱伝導性ゲルシートのパックの中間層(B)面に、トムソン式抜き刃を用いて小スリットを形成した(又はしない)裏面層(C)を、裏面層(C)の粘着層を介して貼り付ける。(大スリットを形成する場合は、複数の裏面層片を、大スリットを形成するように配置して貼り付ける。)
(III)さらに、裏面層(C)が全被覆されるように、補強層(D)を貼り付ける。
評価法または評価基準としては、次のとおりである。
(i)耐久性(曲げ):
ドラム式乾燥機に冷感パッド積層体を入れ、20時間ドラムを回転させて冷感パッド積層体を屈曲・落下を繰り返したのち取り出して、外観の損傷の有無(特に裏面層)を目視で評価する(日立製作所製、DR−N40R7、回転数54RPM(実測)、温風切、回転のみ)。
インタークロス社の熱流束計を用い、同装置のプローブを冷感パッド積層体の測定部へプローブ自重で密着させ、プローブが33.4℃一定になるように温度制御しながら、30min間の経時的な熱流束と、プローブ接触面の温度の変化を測定した。なお、熱流束で250W/m2以上、プローブ接触面の温度で31.5℃以下であれば、冷感を感じるとして評価した。ここで、熱流束は、熱源から冷感パッドに熱が移動する方向を正の値としている。
テンピュール社製の枕(製品名:テンピュール(R)コンフォートピロー)の後頭部接触する部分に、作製した冷感パッドを、市販の両面テープ(ニチバン社製 ナイスタック)で固定して、簡易的な冷却枕を構成し、20代、30代、40代、50代の男女各1名の計8名を被験者として、室温30℃、相対湿度70%の環境で、前記冷却枕の冷感パッド部に後頭部〜うなじ(項)が当たるように、仰向けで30分寝て、冷感(初期冷感、冷感持続性、過冷却感)と使用感についてアンケートをとった。
作製手順(I)に従い作製した熱伝導性ゲルのパックの中間層(B)面側中央付近に、50mm×180mmの長方形に裁断した裏面層(C)を、作製手順(II)に従って、図3のように貼合わせて、冷感パッドとした。評価結果を表1に示す。
50mm×80mmの長方形で、かつ、シート面に、長辺方向に略並行に、端部から10mm間隔で略0.5mm幅の表裏面に貫通した小スリットを形成したグラファイトシートを2枚準備し、作製手順(I)に従い作製した熱伝導性ゲルパックの中間層(B)面中央付近に、前記小スリット付のグラファイトシートを20mmの間隔で隣接配置して、前記熱伝導性ゲルパックの中央部に大スリットを形成するように、作製手順(II)に従って図4のように貼合わせて、冷感パッドとした。評価結果を表1に示す。
実施例1の冷感パッドに、さらに、作製手順(III)に従って補強層(D)を積層して補強層付の冷感パッドとした。評価結果を表1に示す。
実施例2の冷感パッドに、さらに、作製手順(III)に従って補強層(D)を積層して補強層付の冷感パッドとした。評価結果を表1に示す。
比較例1は、実施例4において、中間層(B)が無い場合である。
また、比較例2は、実施例4において、中間層(B)を引張り伸び率400%(日本ユニポリマー社 FS1035 厚み0.05mm)として、表面層(A)より引張り伸び率が大きい場合である。
さらに、比較例3は、実施例2において、2枚のグラファイトシートの配置間隔を35mmとして、大スリットの幅を大きくした場合である。
またさらに、比較例4は、実施例1の裏面層(C)がない従来の構成である。
これらの評価結果を表2に示す。
さらに、熱流束計測定の条件で加熱したときの、冷感パッドの温度の経時的変化を調べた結果、図7のとおり、本発明の冷感パッドの温度上昇が抑制されており、従来品に比べて温度上昇速度が小さく、また、30分経過時において7℃も低く、その結果、冷感持続性が著しく向上した。入眠を想定した30分経過以降は、31〜32℃が維持されており、入眠後の体温に近い温度となっているので、過度の冷感がなく、心地よい睡眠をサポートできる特性を有することがわかる。
2 中間層(B)
3 裏面層(C)
4 補強層(D)
5 被覆層(E)
6 小スリット
7 大スリット
10 冷感パッド積層体
11 枕
Claims (11)
- 熱源側表面層(A)、中間層(B)及び裏面層(C)の少なくとも3層からなる曲面発熱体用冷感パッド積層体であって、
前記3層の素材は、熱源側表面層(A)にゲル材料、中間層(B)に樹脂材料、裏面層(C)にグラファイトからなる炭素質材料を選択して、前記3層の引張り伸び率(JIS K6251準拠)が、表面層(A)>中間層(B)>裏面層(C)の順になる構成とし、かつ
裏面層(C)は、面積が中間層(B)の面積より小さくし、さらに、中間層(B)の各辺にかからないよう中央に寄って密着し、屈曲に追従する配置とし、
また、裏面層(C)は、熱伝導率が厚み方向より面方向が大きいグラファイトシートからなり、かつ放熱を誘導させる方向にそろう複数の小スリットが形成され、熱源側からの屈曲する外力に対して、該小スリットが中間層(B)に密着しつつ、拡開し、
さらに、裏面層(C)は、該小スリットのスリット幅より大きい、少なくとも一本の大スリットで分断され、該大スリットは、25mm以下の幅で、該小スリットの方向とほぼ直交する方向に分断させてなることを特徴とする曲面発熱体用冷感パッド積層体。 - 裏面層(C)のグラファイトシートは、厚み方向の熱伝導率(JIS R2616準拠)が1〜50W/m・Kで、面方向の熱伝導率(JIS R2616準拠)が100〜3500W/m・Kであり、かつ厚みが0.05〜2.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
- 裏面層(C)には、さらに、可撓性の補強層(D)を有し、補強層(D)は、面積が裏面層(C)より大きく、かつ裏面層(C)全面を覆い、補強層(D)の一部が中間層(B)と密着することを特徴とする請求項1又は2に記載の曲面発熱体用の冷感パッド積層体。
- 表面層(A)には、さらに、被覆層(E)を有し、被覆層(E)は、中間層(B)周端部と接合されて、中間層(B)が密着した部分を除く表面層(A)の全面を被覆してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
- 中間層(B)と被覆層(E)との接合は、全周を溶着したことによるものあり、全周縁に硬質部を形成し、該硬質部により裏面層(C)の過剰な屈曲を抑制するとともに初期形状を維持させる機能を付与したことを特徴とする請求項4に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
- 被覆層(E)は、引張り伸び率(JIS K6251準拠)が中間層(B)の樹脂材料と同一または大であり、かつ厚さが0.05〜0.15mmの樹脂フィルムであることを特徴とする請求項4又は5に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
- 中間層(B)は、引張り伸び率(JIS K6251準拠)が20〜200%であり、かつ厚さが0.05〜0.5mmの樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
- 表面層(A)は、熱伝導性ゲルシート、蓄熱ゲルシート及び高吸水性ポリマーゲルシートからなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
- 表面層(A)の熱伝導性ゲルシートは、熱伝導率(JIS R2616準拠)が0.5〜3.0W/m・Kであり、硬度が針入度(JIS K2207準拠)で20〜150であり、厚みが1〜10mmであることを特徴とする請求項8に記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体を用いることを特徴とする寝具。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の曲面発熱体用冷感パッド積層体を用いることを特徴とする運動具。
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