JP5291444B2 - パワーステアリング制御装置 - Google Patents

パワーステアリング制御装置

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Description

本発明は、悪路走行時のステアリング振動を抑制して良好な操縦安定性を得ることができるようにしたパワーステアリング装置に関する。
従来、自動車等の車両用の補助操舵装置として油圧式パワーステアリング装置が広く普及しているが、近年、電動モータのトルクを用いた電動パワーステアリング装置も利用されている。
この電動パワーステアリング装置は、運転者によるステアリングの操作や車両の動きを検出するトルクセンサと、トルクセンサからの検出信号に基づいて補助操舵力を演算するモータ制御装置(以下、「モータ_ECU」と称する)と、モータ_ECUからの出力信号にて回転駆動する電動モータと、電動モータの回転トルクをステアリング機構に伝える減速ギア列等を備えている。
車両走行中の操舵系に対しては、種々の振動成分を含む外力が逆入力される。このような逆入力は、ステアリング装置を構成するラック軸及びギヤボックスを介してステアリング軸に伝達され、このステアリング軸に、いわゆるステアリング振動を生じさせる。
特に、車両が砂利道等、路面が凹凸している悪路を走行すると、路面からの反力であるキックバックや振動がステアリング機構、ステアリング軸を介してハンドルに伝達されて、ハンドルに、いわゆる取られや大きなステアリング振動が発生する。
例えば特許文献1(特開平6−92256号公報)には、走行路が悪路と判定した場合、電動モータによる操舵アシスト力を減少させ、ハンドルを重くすることで、ハンドルの取られを抑制し、悪路走行時の操舵安定性を確保する技術が開示されている。
特開平6−92256号公報
上述した文献に開示されている技術では、キックバックが発生した場合、ハンドルが取られる方向へのアシスト力を少なくする制御を行うようにしているため、ハンドルの取られを抑制することはできるが、ステアリング振動を抑制することはできず、悪路走行において、良好な操縦安定性を得るには限界がある。
本発明は、上記事情に鑑み、悪路走行中に発生する大きなステアリング振動を抑制し、良好な操縦安定性を得ることのできるパワーステアリング制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため本発明によるパワーステアリング制御装置は、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクをアシストするアシストトルクを発生させる電動モータと、該電動モータから出力される前記アシストトルクを設定する制御手段とを備え、前記制御手段が、運転状態に基づいて基本アシストトルクを設定する基本アシストトルク設定手段と、前記ステアリングホイールに加えられる操舵トルクと反対方向に付与するダンパ制御量を運転状態に基づいて設定するダンパ制御量設定手段と、前記基本アシストトルクから前記ダンパ制御量を減算して前記アシストトルクを設定するアシストトルク設定手段と、走行路状態検出手段での検出結果に基づいて悪路判定を行う悪路判定手段と、前記悪路判定手段で悪路と判定された場合、車輪速検出手段で検出した車輪速の変動幅に基づいて前記ダンパ制御量を減衰させる制御係数を設定する制御係数設定手段とを有し、前記ダンパ制御量設定手段は、前記制御係数設定手段で今回の演算時に設定した前記制御係数に対して前回の演算時に設定した制御係数から段階的に到達させる過渡制御を実行し、得られた該制御係数で前記ダンパ制御量を補正して新たなダンパ制御量を設定することを特徴とする。
本発明によれば、走行路が悪路と判定された場合、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクと反対方向に付与するダンパ制御量を制御係数で補正して減衰させるようにしたので、キックバック等によるステアリング振動が抑制され、良好な操縦安定性を得ることができる。
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に電動パワーステアリング装置のステアリング系を含めた構成図を示す。
同図に示すように、電動パワーステアリング装置1は、そのステアリング軸2が、図示しない車体フレームにステアリングコラム3を介して回動自在に支持されており、その一端が運転席側へ延出され、他端がエンジンルーム側へ延出されている。ステアリング軸2の運転席側端部にステアリングホイール4が固設され、又、エンジンルーム側へ延出する端部にピニオン軸5が連設されている。
エンジンルームには、車幅方向へ延出するステアリングギヤボックス6が配設されており、このステアリングギヤボックス6にラック軸7が往復移動自在に挿通支持されている。このラック軸7に形成されたラック(図示せず)に、ピニオン軸5に形成されたピニオンが噛合されて、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤ機構が形成されている。又、ラック軸7の左右両端はステアリングギヤボックス6の端部から各々突出されており、その端部に、タイロッド8を介してフロントナックル9が連設されている。このフロントナックル9は、操舵輪としての左右輪10L,10Rを回動自在に支持すると共に、キングピン(図示せず)を介して車体フレームに転舵自在に支持されている。従って、ステアリングホイール4を操作し、ステアリング軸2、ピニオン軸5を回転させると、このピニオン軸5の回転によりラック軸7が左右方向へ移動し、その移動によりフロントナックル9がキングピン(図示せず)を中心に回動して、左右輪10L,10Rが左右方向へ転舵される。
又、ピニオン軸5にアシスト伝達機構11を介して、電動モータ13が連設されており、この電動モータ13にてステアリングホイール4に加える操舵トルクをアシストする。更に、ステアリング軸2に操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ14、及び操舵角センサ15が連設されている。そして、操舵トルクセンサ14にて、ステアリングホイール4に加えられる操舵トルクTqが検出される。又、操舵角センサ15にて、ステアリングホイール4の操舵角θωが検出される。尚、操舵角センサ15は、左旋回方向の舵角が正値で検出され、右旋回方向の舵角が負値で検出される。
この操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTq、及び操舵角センサ15で検出した操舵角θωが、モータ制御装置(モータ_ECU)21に入力される。更に、このモータ_ECU21に、走行路状態検出手段を兼用する車輪速検出手段としての車輪速センサ22が接続されている。尚、図においては、車輪速センサ22が1つのみ記載されているが、この車輪速センサ22は、前後輪の4輪にそれぞれ配設されている。
図2に示すように、このモータ_ECU21は、制御手段としてのモータ制御部26、モータ駆動信号生成回路27、モータ駆動回路28、電流検出部29を備えている。モータ制御部26は、モータ_ECU21の主な制御演算機能を担っており、電動モータ13から出力されるアシストトルクの目標値(目標アシストトルク)τpを設定すると共に、電動モータ13の出力が目標アシストトルクτpに収束するようにフィードバック制御を行う。
モータ駆動信号生成回路27は、モータ制御部26からのモータ制御信号Pmに対応するモータ駆動信号を生成する。尚、このモータ駆動信号としては、例えばモータ制御信号Pmに応じたデューティ比のパルス幅変調信号(PWM信号)がある。
モータ駆動回路28は、このモータ駆動信号に応じた電圧を電動モータ13へ出力し、運転者がステアリングホイール4に加える操舵トルクを、電動モータ13の駆動力でアシストする。更に、電流検出部29は電動モータ13に供給される電流(モータ電流)Isを検出し、モータ制御部26へ出力する。
モータ制御部26では、目標アシストトルクτpが、基本アシストトルクτtから基本ダンパ制御量(ダンパトルク)τdを減算して設定される。基本アシストトルクτtは、ステアリングホイール4の切り込み方向にモータトルク(アシストトルク)を与えるものであり、基本ダンパ制御量τdは、モータ(ステアリングホイール4)の回転と反対方向に補償トルク(ダンパトルク)を付与する際の基本値である。そして、これら両トルクτt,τdの差分から算出された値が目標アシストトルクτpとしてステアリング系に付与される。
モータ_ECU21に設けられている不揮発性メモリには、基本アシストトルクτt及び基本ダンパ制御量τdがテーブル形式で格納されている。図8(a)にアシスト特性テーブルの概念を示し、同図(b)にダンパ制御量特性テーブルの概念を示す。
アシスト特性テーブルには、車速Vsp[Km/h]と基本アシストトルクτtとの関係が、車速Vspが低速から高速へ移行するに従い、高い値から低い値へ非線形に変化する基本アシストトルクτtが実験等から求めて格納されている。又、ダンパ制御量特性テーブルには、車速Vsp[Km/h]と基本ダンパ制御量τdとの関係が、車速Vspが低速から高速へ移行するに従い、低い値から高い値へ非線形に変化する基本ダンパ制御量τdが実験等から求めて格納されている。
従って、基本ダンパ制御量τdは車速Vspが0[Km/h]付近では低い減衰特性となり、車速Vspが高くなるに従い、次第に高い減衰特性となる。尚、本実施形態で採用する電動パワーステアリング装置1は車速感応型であるため、車速Vspをパラメータとして基本アシストトルクτt、及び基本ダンパ制御量τdを設定するようにしているが、本実施形態は、舵角感応型の電動パワーステアリング装置に適用することもできる。この場合、電動パワーステアリング装置では、操舵角θωをパラメータとして基本アシストトルクτt、及び基本ダンパ制御量τdを設定することになる。尚、この車速Vspは、本実施形態では、4輪に配設されている車輪速センサ22で検出した車輪速Vsの平均値から算出しているが、周知の車速センサ(図示せず)で検出しても良い。
ところで、モータ制御部26で設定される良路走行時における目標アシストトルクτpは周知であるため、以下においては、悪路走行時において設定される目標アシストトルクτpについて説明する。
モータ制御部26で処理される悪路走行時における目標アシストトルクτpの設定は、具体的には、図3〜図7に示すフローチャートに従って実行される。イグニッションスイッチがONされると、先ず、図3に示す悪路判定ルーチンが実行され、悪路判定が行われる。尚、このアクセル判定ルーチンでの処理が本発明の悪路判定手段に相当する。
又、本ルーチンでは、車輪速センサ22で検出した車輪速Vsの変化に基づいて悪路判定を行っている。この場合、特定の車輪(例えば右前輪)に設けられている車輪速センサ22で検出した車輪速Vsに基づいて悪路判定しても、4輪全ての車輪速センサ22で検出した各車輪速Vsに基づいて、各車輪速センサ22毎に悪路判定を行うようにしても良い。
尚、4輪全ての車輪速センサ22で検出した車輪速Vsに基づいて悪路判定する場合であっても、悪路判定は車輪速センサ22毎に行われるため、以下においては、特定の車輪速センサ22で検出した車輪速Vsに基づいて悪路判定する場合について説明する。
このルーチンでは、ステップS1で、現在の車輪速Vsを読み込む。次いで、ステップS2で、前回のサンプリング時に読み込んだ車輪速Vs(n-1)と、今回の車輪速Vsとの差分から車輪速変化率(角加速度)Aを算出する(A←|Vs−Vs(n-1)|/Δt、但し、Δt:サンプリング周期(1〜2[sec]))。
次いで、ステップS3へ進み、車輪速変化率判定しきい値αと車輪速変化率Aとを比較する。この車輪速判定しきい値αは走行路が悪路か否かを判定するための値であり、α≧Aの場合は、良路と判定し、ステップS6へジャンプし、悪路判定フラグFをクリアして(F←0)、ステップS1へ戻り、このルーチンを悪路と判定するまで循環する。一方、α<Aの悪路と判定した場合は、ステップS4へ進み、ステップS4以下で、誤検出を防止するために、悪路走行か否かを更に詳しく判定する。
先ず、ステップS4では、予め設定されている第1区間時間Δt1(例えば1〜2[sec])における車輪速Vsのサンプリングを開始すべく、タイマの経過時間t1をクリアし(t1←0)、悪路判定カウンタのカウント値nをセットする(n←1)。ステップS4以下のサンプリング周期は、第1区間時間Δt1の1/20〜1/40であり、従って、第1区間時間Δt1が、例えば1[sec]の場合、サンプリング周期は、0.05〜0.025[sec]である。
次いで、ステップS5へ進み、経過時間t1がΔt1区間に達したか否かを調べ、Δt1<t1のときは、サンプリング区間(区間時間)Δt1内であるため、ステップS7へ進む。又、Δt1≧t1のときは第1区間時間Δt1に達したため、ステップS6で悪路判定フラグFをクリアして(F←0)、ステップS1へ戻る。
そして、ステップS7へ進むと、車輪速Vsを読み込み、ステップS8で、車輪速変化率(角加速度)Aを算出する(A←|Vs−Vs(n-1)|/Δt1)。その後、ステップS9へ進み、上述した車輪速変化率判定しきい値αと車輪速変化率Aとを比較する。そして、α≧Aのときは、悪路が検出されないため、ステップS14へジャンプし、経過時間t1をインクリメントして(t1←t1+1)、ステップS5へ戻る。一方、α<Aのときは、悪路検出と判定し、ステップS10へ進み、悪路判定カウンタのカウント値nをインクリメントして(n←n+1)、ステップS11へ進む。
ステップS11へ進むと、悪路判定感歌のカウント値nが悪路判定回数しきい値Nを越えたか否かを調べる。この悪路判定回数しきい値Nは、ステップS3で判定した悪路が誤判定か否かを調べるものであり、本実施形態では、N=5〜10に設定されているが、この悪路判定回数しきい値Nは車種によって相違する。
そして、N>nのときは、未だ悪路とは判定できないため、ステップS14へジャンプし、経過時間t1をインクリメントして(t1←t1+1)、ステップS5へ戻る。一方、N≦nのときは、悪路と判定し、ステップS12へ進み、平均車輪速変動幅ΔVaveを算出する。この平均車輪速変動幅ΔVaveは、ステップS9でα<Aと判定したときに求めた車輪速変動幅(絶対値)ΔV(ΔV←|V−V(n-1)|)の平均値である(ΔVave←ΣΔV/n)。
その後、ステップS13へ進み、ステップS9でα<Aと判定したときに求めた車輪速変動幅ΔVの中で最も高い値を示す車輪速変動幅ΔVを、最大車輪速変動幅ΔVmaxとして設定し、この最大車輪速変動幅ΔVmaxと、予め設定した車輪速変動幅判定しきい値βとを比較する。この車輪速変動幅判定しきい値βは、最大車輪速変動幅ΔVmaxが悪路と判定できる値か否かを最終的に判定するものであり、実験等から求めて設定されている。
そして、β≧ΔVmaxの場合、未だ悪路判定せず、ステップS14へ進み、経過時間t1をインクリメントして(t1←t1+1)、ステップS5へ戻る。一方、β<ΔVmaxのときは、悪路と最終的に判断し、ステップS15へ進み、悪路判定フラグFをセットして(F←1)、ステップS1へ戻る。
上述した平均車輪速変動幅ΔVave、最大車輪速変動幅ΔVmaxは、図4に示す悪路制御ルーチンにおいて読み込まれる。
このルーチンでは、先ず、ステップS11で悪路判定フラグFの値を調べ、F=0の良路と判定されているときは、そのままルーチンを抜ける。一方、F=1の悪路と判定されているとき、すなわち、悪路判定フラグFが、F=0からF=1に切り替わったとき、ステップS22へ進み、ステップS22以下で悪路制御が実行される。尚、後述するステップS22,S32での処理が、本発明の制御係数設定手段に対応している。
ステップS22では、上述した図3に示す悪路判定ルーチンのステップS12で設定した平均車輪速変動幅ΔVaveを読み込み、この平均車輪速変動幅ΔVaveに基づき、制御係数λを設定する。この制御係数λは、悪路制御ルーチンを実行する際の初期値であり、図9に示す制御係数テーブルを補間計算付きで参照して設定する。或いは演算により設定する。制御係数テーブルは、モータ_ECU21の不揮発性メモリに予め固定値として格納されているもので、平均車輪速変動幅ΔVaveが、ΔVave=0〜βまでは、λ=1に設定されており、この車輪速変動幅判定しきい値βから平均車輪速変動幅ΔVaveが増加するに従い、次第に減少する値に設定されており、最小車輪速変動幅λmin(例えば0.3〜0.4)に達すると一定となる特性を有している。
そして、ステップS23へ進み、悪路用ダンパ制御量τd’の設定処理を実行してステップS24へ進む。このステップS23で実行される悪路用ダンパ制御量τd’は、図5に示す悪路用ダンパ制御量設定サブルーチンに従って処理される。尚、この悪路用ダンパ制御量設定サブルーチンは、後述するように、第2区間時間Δt2(約3〜5[sec])に達するまで、所定演算周期毎に実行される。又、このサブルーチンでの処理、及び後述するステップS54,S55,S56での処理が、本発明のダンパ制御量設定手段に対応している。
このサブルーチンでは、先ず、ステップS41で、前回の演算時に設定した制御係数λ(n-1)と、今回設定した制御係数λとに基づき、第3区間時間Δt3(例えば1〜2[sec])における傾きaを求める(a←(λ−λ(n-1))/Δt3)。この傾きaは、前回設定した制御係数λ(n-1)から今回設定した制御係数λへ移行する際の過渡時における制御係数の急激な制御特性変化の影響により、運転者が違和感を抱くことを防ぐものであり、前回の制御係数λ(n-1)から今回の制御係数λまで段階的に変化させる(図10参照)。尚、悪路制御ルーチンが起動した最初のルーチン実行時は、前回の制御係数λ(n-1)は0であるため、傾きaは、a←λ/Δt3から求める。
次いで、ステップS42へ進み、ステップS42以下で、今回の制御係数λnewを次式から算出する過渡制御を行う。
λnew←a・λ+λ(n-1)
尚、次回の演算時においては、λ(n-1)←λnewとなる。
その後、ステップS43へ進み、車輪速Vsに基づき、基本ダンパ制御量τdを算出する。この基本ダンパ制御量τdは、図8(b)に示すダンパ制御量特性テーブルと同一の特性を有しており、同図の車速Vspを車輪速Vsに変えて適用することができる。
その後、ステップS44へ進み、基本ダンパ制御量τdに、制御係数λnewを乗算して、悪路用ダンパ制御量τd’を設定する(τd’←τd・λnew)。そして、ステップS45で、悪路用ダンパ制御量τd’を出力し、ステップS46へ進み、経過時間t3と第3区間時間Δt3とを比較する。尚、この悪路用ダンパ制御量τd’が大きいとステアリングの操作がスムーズとなり、操舵感が向上するが収斂性が悪化し、ステアリング振動が発生し易くなる。図9に示すように、制御係数λnewは1≧λnew≧λminの間で変動されるため、基本ダンパ制御量τdよりも大きな値となることはなく、基本ダンパ制御量τdを制御係数λnewで補正する(減衰させる)ことで、悪路走行時の収斂性を高め、ステアリング振動を抑制することができる。
そして、経過時間t3が区間時間Δt3以内の場合は(Δt3≧t3)、ステップS47へ進み、経過時間t3をインクリメントして(t3←t3+1)、ステップS42へ戻る。又、経過時間t3が第3区間時間Δt3を超過した場合は(Δt3<t3)、制御係数λnewが、目標値である、図4の悪路制御ルーチンのステップS22,S32で設定される制御係数λに到達したと判定し(図10参照)、過渡制御を終了すべく、ステップS48へ進み、経過時間t3をクリアして(t3←0)、図4のステップS24へ進む。
ステップS24では、上述した図3のステップS9でα<Aと判定したときに求めた車輪速変動幅ΔVの中で最も高い値を示す車輪速変動幅ΔV、すなわち、最大車輪速変動幅ΔVmaxを読み込み、ステップS25で、この最大車輪速変動幅ΔVmaxと予め設定した車輪速変動幅判定しきい値βとを比較する。この車輪速変動幅判定しきい値βは、上述した図3のステップS13で設定されているものと同じ値である。
そして、β≧ΔVmaxの場合、ステップS27へジャンプし、β<ΔVmaxのときは、ステップS26へ進み、悪路制御時悪路判定カウンタのカウント値mをインクリメントして(m←m+1)、ステップS27へ進む。
ステップS27へ進むと、予め設定されている第2区間時間Δt2と経過時間t2とを比較する。この第2区間時間Δt2は、上述した第1区間時間Δt1よりも長く、本実施形態では3〜5[sec]程度に設定されている。
そして、経過時間t2が第2区間時間Δt2以内の場合(Δt2≧t2)、ステップS28へ進み、経過時間t2をインクリメントして(t2←t2+1)、ステップS23へ戻る。一方、経過時間t2が第2区間時間Δt2を超過している場合(Δt2<t2)、ステップS29へ進み、経過時間t2をクリアし(t2←0)、ステップS30で、悪路制御時悪路判定カウンタのカウント値mの値を調べる。
そして、ステップS30で、第2区間時間Δt2以内に一度でも最大車輪速変動幅ΔVmaxが車輪速変動幅判定しきい値βを超過した場合は(m>0)、ステップS31へ進む。又、第2区間時間Δt2以内に一度も最大車輪速変動幅ΔVmaxが車輪速変動幅判定しきい値βを超過しなかった場合は(m=0)、ステップS34へ分岐する。
ステップS31へ進むと、第2区間時間Δt2以内に車輪速変動幅判定しきい値βを超過した最大車輪速変動幅ΔVmaxの平均値である平均車輪速変動幅ΔVaveを算出し(ΔVaxe←ΣΔVmax/m)、ステップS32へ進む。
ステップS32では、平均車輪速変動幅ΔVaveに基づき、図9に示す制御係数テーブルを補間計算付きで参照して、制御係数λを設定し、ステップS33へ進み、悪路制御時悪路判定カウンタのカウント値m、及び後述する悪路判定時悪路非検出カウンタのカウント値Pをクリアして(m←0,P←0)、ステップS36へ進む。
従って、本実施形態では、第2区間時間Δt2を制御サイクルとして設定し、この第2区間時間Δt2内で検出された平均車輪速変動幅ΔVaveに基づいて悪路走行時の制御係数λが設定される。
一方、ステップS30からステップS34へ分岐すると、悪路判定時悪路非検出カウンタのカウント値Pをインクリメントして(P←P+1)、ステップS35へ進み、前回の演算時に設定した制御係数λ(n-1)で今回の制御係数λを更新し(λ←λ(n-1))、ステップS36へ進む。
ステップS33或いはステップS35からステップS36へ進むと、経過時間t4と第4区間時間Δt4とを比較する。この第4区間時間Δt4は悪路制御ルーチンの終了を判定するものであり、本実施形態では10[sec]程度に設定されている。そして、経過時間t4が第4区間時間Δt4以内のときは(Δt4≦t4)、ステップS37へ進み、経過時間t4をインクリメントして(t4←t4+1)、ステップS23へ戻り、第4区間時間Δt4に達するまで、繰り返される。
又、経過時間t4が第4区間時間Δt4に達した場合(Δt4<t4)、ステップS38へ進み、経過時間t4をクリアして(t4←0)、ステップS39へ進み、悪路判定時悪路非検出カウンタのカウント値Pを調べる。
そして、第4区間時間Δt4以内に一度でも最大車輪速変動幅ΔVmaxが車輪速変動幅判定しきい値βを超過した経験がある場合は(P=0)、ステップS23へ進み、再度、第4区間時間Δt4の間、ステップS23以降の悪路制御を繰り返し実行する。又、第4区間時間Δt4以内に一度も最大車輪速変動幅ΔVmaxが車輪速変動幅判定しきい値βを超過しなかった場合は(P>0)、そのままルーチンを抜け、悪路制御を終了する。
その結果、悪路走行時は、ステップS23において、基本ダンパ制御量τdを制御係数λnewで減衰した値の悪路用ダンパ制御量τd’が設定される。
この悪路用ダンパ制御量τd’は、図6に示すアシストトルク算出ルーチンにおいて読み込まれる。
このルーチンでは、先ずステップS51で、車速Vspを読み込み、ステップS52で、車速Vspに基づき、図8(a)に示すアシスト特性テーブルを補間計算付きで参照して、基本アシストトルクτtを設定する。尚、このステップS52での処理が、本発明の基本アシストトルク設定手段に対応している。
次いで、ステップS53へ進み悪路判定フラグFの値を参照する。尚、この悪路判定フラグFは、図3に示す悪路判定ルーチンのステップS15でセットされ、又ステップS6でクリアされる。そして、F=0の通常制御のときは、ステップS54へ進み、又、F=1の悪路制御の場合はステップS55へ分岐する。
ステップS54へ進むと、車速Vspに基づき、図8(b)に示すダンパ制御量特性テーブルを補間計算付きで参照して、ダンパ制御量τdを設定し、ステップS57へ進む。一方、ステップS55へ分岐すると、悪路用ダンパ制御量τd’を読み込み、ステップS56で、この悪路用ダンパ制御量τd’にてダンパ制御量τdを設定し(τd←τd’)、ステップS57へ進む。
ステップS57では、基本アシストトルクτtとダンパ制御量τdとの差分から目標アシストトルクτpを算出し(τ←τt−τd)、ルーチンを抜ける。尚、このステップS57での処理が、本発明のアシストトルク設定手段に対応している。
この目標アシストトルクτpは、図7に示すパワステ制御ルーチンにおいて読み込まれる。このルーチンでは、先ず、ステップS71で、目標アシストトルクτpを読込み、続くステップS72で、目標アシストトルクτpに対応する目標アシスト電流値Ipを設定し、ステップS73で、電流検出部29で検出したモータ電流値Isを読込む。
そして、ステップS74で目標アシスト電流値Ipとモータ電流値Isとの差分ΔIp(ΔIp←Ip−Is)を算出し、続く、ステップS75で、この差分ΔIpが0に収束するような制御信号(フィードバック制御信号)Dを比例積分制御等により生成する。
次いで、ステップS76で、目標アシスト電流値Ipにフィードバック制御信号Dを加算してモータ制御信号Pmを算出し(Pm←Ip+D)、モータ駆動信号生成回路27へ出力する。モータ駆動信号生成回路27は、モータ制御部26から出力されるモータ制御信号Pmに応じたモータ駆動信号(例えばPWM信号)を生成し、モータ駆動回路28へ出力する。
モータ駆動回路28は、モータ駆動信号生成回路27で生成したモータ駆動信号に応じた電圧によって流れる電流に応じた大きさ、及び方向の電圧を電動モータ13へ供給する。すると、この電動モータ13の駆動力がピニオン軸5にアシスト伝達機構11を介して伝達される。
このように、本実施形態は、通常走行においては、目標アシストトルクτpは、ダンパ制御量τdの分だけ減衰されているためステアリングホイール4の収斂性が向上する。すなわち、図8(a),(b)に示すように、車速Vspが低速から高速方向へ移行するに従い、基本アシストトルクτtは減少するが、ダンパ制御量τdは逆に次第に増加する。その結果、車速Vspが高速へ移行するに従い、次第に高い収斂性を得ることができる。
又、悪路走行においては、このダンパ制御量τdが、平均車輪速変動幅ΔVaveに基づいて設定された制御係数λにて減衰されるため、収斂性がより高くなり、キックバックが発生した際のステアリング振動を抑制することができる。この場合、本実施形態では、基本アシストトルクτtは、通常走行時と同じ値で設定されるため、良好な操縦安定性を得ることができる。更に、走行路が良路から悪路に切り替わった際、或いは悪路走行時に設定する制御係数λが変化した場合、この制御係数λを目標値として、第3区間時間Δt3内に制御係数λに到達するような過渡制御を行うようにしたので、運転者に制御係数λの急激な変化による違和感を与えることがない。
電動パワーステアリング装置のステアリング系を含めた構成図 モータ制御装置の構成図 悪路判定ルーチンを示すフローチャート 悪路制御ルーチンを示すフローチャート 悪路用ダンパ制御量設定サブルーチンを示すフローチャート アシストトルク算出ルーチンを示すフローチャート パワステ制御ルーチンを示すフローチャート (a)はアシスト特性テーブルの概念図、(b)はダンパ制御量特性テーブルの概念図 制御係数テーブルの概念図 設定区間時間における制御係数の過渡制御を示す説明図
符号の説明
1…電動パワーステアリング装置、
4…ステアリングホイール、
10L,10R…左右輪、
13…電動モータ、
21…モータ制御装置、
22…車輪速センサ、
26…モータ制御部、
ΔV…車輪速変動幅、
ΔVave…平均車輪速変動幅、
Δt1〜Δt4…区間時間、
α…車輪速変化率判定しきい値、
β…車輪速変動幅判定しきい値、
λ…制御係数、
τd…基本ダンパ制御量、
τd’…悪路用ダンパ制御量、
τp…目標アシストトルク、
τt…基本アシストトルク、
A…車輪速変化率、
N…悪路判定回数しきい値、
P…カウント値、
Vs…車輪速、
Vsp…車速、
a…傾き、
m,n…カウント値

Claims (2)

  1. ステアリングホイールに加えられる操舵トルクをアシストするアシストトルクを発生させる電動モータと、該電動モータから出力される前記アシストトルクを設定する制御手段とを備え、
    前記制御手段が、
    運転状態に基づいて基本アシストトルクを設定する基本アシストトルク設定手段と、
    前記ステアリングホイールに加えられる操舵トルクと反対方向に付与するダンパ制御量を運転状態に基づいて設定するダンパ制御量設定手段と、
    前記基本アシストトルクから前記ダンパ制御量を減算して前記アシストトルクを設定するアシストトルク設定手段と、
    走行路状態検出手段での検出結果に基づいて悪路判定を行う悪路判定手段と、
    前記悪路判定手段で悪路と判定された場合、車輪速検出手段で検出した車輪速の変動幅に基づいて前記ダンパ制御量を減衰させる制御係数を設定する制御係数設定手段と
    を有し、
    前記ダンパ制御量設定手段は、前記制御係数設定手段で今回の演算時に設定した前記制御係数に対して前回の演算時に設定した制御係数から段階的に到達させる過渡制御を実行し、得られた該制御係数で前記ダンパ制御量を補正して新たなダンパ制御量を設定する
    ことを特徴とするパワーステアリング制御装置。
  2. 前記走行路状態検出手段は車輪速センサ或いは車速センサであり、
    前記悪路判定手段は、予め設定されている区間時間内で前記車輪速センサで検出した車輪速の変化或いは前記車速センサで検出した車速の変化が、予め設定したしきい値を超過し、且つ該超過した回数が予め設定されている回数を超過したとき悪路走行と判定する
    ことを特徴とする請求項1記載のパワーステアリング制御装置。
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