JP5290948B2 - 耐熱性樹脂組成物とその製造方法及びそれを用いた成形品 - Google Patents
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Description
しかしながら、耐熱性樹脂組成物を用いて成形加工を行う際に、クッラクやボイドが発生してしまい、精密機械には使用できないという欠点があるため、これらの向上が要求されている。
一方、本発明者らは、4,4’−ジアミノジフェニルメタンを用いることなく耐熱性を向上させるため、特定のポリイミドを導入した樹脂組成物を提案している(特許文献2参照)。
すなわち、本発明は、下記の耐熱性樹脂組成物とその製造方法及びそれを用いた成形品を提供する。
で示されるビスマレイミド化合物、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分として含み、揮発成分の含有量が0.3質量%未満である樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)成分と(B)成分とを混練したのち、前記(C)成分を添加し、混練する方法において、前記(A)成分と(B)成分とを150〜200℃、80hPa以下で真空排気しながら加熱溶融混練することを特徴とする耐熱性樹脂組成物の製造方法。
3.前記(A)ビスマレイミド化合物を90〜110kPaの圧力下、115〜150℃で加熱脱気処理したものである上記1または2に記載の耐熱性樹脂組成物の製造方法、
4.前記1〜3のいずれかに記載の製造方法で得られた耐熱性樹脂組成物、
6.前記成形品が精密機械の構成材料である上記5に記載の成形品。
本発明の耐熱性樹脂組成物は、(A)特定の式で表されるビスマレイミド化合物〔以下、単に(A)ビスマレイミド化合物と称す〕、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類〔以下、単に(B)アミノフェノール類と称す〕及び(C)エポキシ樹脂を必須成分とするものである。
(A)ビスマレイミド化合物は下記化学式で示されるものである。
(A)ビスマレイミド化合物としては、例えばN,N’−3,3’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−パラフェニレンビスマレイミド、N,N’−メタフェニレンビスマレイミド、N,N’−(2−メチルメタフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド及びN,N’−(3,3’−ジフェニルスルフォン)ビスマレイミド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の耐熱性樹脂組成物においては、(A)成分は115〜150℃で加熱脱気処理したものであることが好ましい。
(B)アミノフェノール類は、硬化剤としての役割を有するものであり、主として(A)ビスマレイミド化合物や(C)エポキシ樹脂を硬化させるために加えられるものである。
(B)アミノフェノール類は、1分子中に第1級アミノ基とフェノール性水酸基とを有するものであり、例えばオルトアミノフェノール、メタアミノフェノール、パラアミノフェノール、2−(4−アミノフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−アミノ−4−クロロフェノール及び2−アミノ−4−クレゾール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)エポキシ樹脂は、主として耐熱性樹脂組成物の接着性を向上させるために加えられる。(C)エポキシ樹脂は特に制限されるものではなく、一般に知られているものを広く使用することができる。
(C)エポキシ樹脂としては、例えばフェノール又はアルキルフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合物をエポキシ化することによって得られるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのグリシジルエーテル、テトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンのエポキシ化物及びビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)ビスマレイミド化合物、(B)アミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂の含有割合は、これら(A)〜(C)成分の合計量100質量%のうち、(B)成分の含有量を5〜20質量%、(C)成分の含有量を5〜20質量%とすることが好ましい。
(B)成分の含有量が5質量%以上であれば反応性が良好であり、硬化特性が向上し、20質量%以下であれば組成物の粘度が増加し過ぎず成形性が良好なものとなり、硬化物の機械的特性及び耐熱性も良好なものとなる。
また、(C)成分の含有量が5質量%以上であれば反応性が良好であり、硬化特性が向上し、20質量%以下であれば組成物の粘度が増加し過ぎず成形性が良好なものとなり、硬化物の機械的特性及び耐熱性も良好なものとなる。
上記(A)〜(C)成分の他に、本発明の耐熱性樹脂組成物に速やかな硬化性を付与させるため、硬化促進剤を含有させることが好ましい。
使用することができる硬化促進剤としては、熱硬化性樹脂組成物を硬化させるために一般に用いられているものであれば特に制限されるものではなく、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニルホスフィン)、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン及びビス(ジフェニルホスフィノ)メタン等の有機ホスフィン化合物;2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール及び2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物又はその誘導体;DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデンセン−7)又はそのフェノール塩等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の耐熱性樹脂組成物は、本発明の目的に反しない限度において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、粒子状もしくは繊維状の有機又は無機充填材、離型剤、着色剤、カップリング剤等を添加してもよい。
他の熱硬化性樹脂としては、例えば耐熱性の高いポリアミドイミド等、離型剤としては合成ワックス、天然ワックス、エステル類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド類、パラフィン類等、着色剤としてはカーボンブラック等が挙げられる。
粒子状もしくは繊維状の有機又は無機充填材を添加する場合、(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して、100質量部以上添加することが好ましい。粒子状もしくは繊維状の有機又は無機充填材を100質量部以上添加することで、本発明の耐熱性樹脂組成物の硬化特性を向上させ、成形性をさらに向上させることができる。
本発明の耐熱性樹脂組成物の製造方法は、(A)前記化学式で示されるビスマレイミド化合物、(B)1分子中にアミノ基とフェノール性水酸基とを有するアミノフェノール類及び(C)エポキシ樹脂を必須成分として含み、揮発成分の含有量が0.3質量%未満である樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)成分と(B)成分とを混練したのち、前記(C)成分を添加し、混練する方法において、(A)成分と(B)成分とを150〜200℃、80hPa以下で真空排気しながら加熱溶融混練することを特徴とする。
(a)(A)成分を90〜110kPa程度の圧力下、115〜150℃で加熱脱気処理してもよい。
(b)(A)成分と(B)成分とを150〜200℃、80hPa以下で真空排気しながら均一に混合して、熱ロール又はニーダー等により加熱溶融混合処理を行う。特に上記(a)と(b)とを組み合わせて行うことが好ましい。
上記のような処理を施したのち、冷却固化させ適当な大きさに粉砕することにより、揮発成分が0.3質量%未満である耐熱性樹脂組成物を製造する。
前述した製造方法により製造された本発明の耐熱性樹脂組成物は、例えば低圧トランスファー、射出成形、圧縮成形等の成形方法を用いて成形品を製造するために用いることができる。また、成形は成形温度約200〜230℃で行うことができる。
本発明の耐熱性樹脂組成物は4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を含まないため環境への悪影響が少なく、硬化特性に優れ、硬化物の特性、特に耐熱性に優れており、さらに成形時のクッラクやボイドが少ないため、例えば成形材料、砥石、ブレーキ、圧粉磁心等の電気・電子分野、自動車分野における各種精密部品の構成材料として好適に用いることができ、接着剤としても用いることができる。
以下に示す実施例1〜6、比較例1〜3は、樹脂組成は変わらず、実施例1と実施例2とは、(A)ビスマレイミドの製造元(製造に使用した溶媒)が異なり、実施例1,3〜6及び比較例1〜3はそれぞれ製造工程が異なる。
(A)ビスマレイミド(A社製)78.3質量%、(B)メタアミノフェノール(商品名、住友化学工業株式会社製)7.4質量%、(C)エピコート1004(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、分子量 約1650)5.6質量%、(C)エピコート1007(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、分子量 約2900)8.7質量%を用い、
140℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を170℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
なお、A社製のビスマレイミドは、酢酸を溶媒として製造されたものである。
(A)ビスマレイミド(B社製)78.3質量%、(B)メタアミノフェノール(商品名、住友化学工業株式会社製)7.4質量%、(C)エピコート1004(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、分子量 約1650)5.6質量%、(C)エピコート1007(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン株式会社製、分子量 約2900)8.7質量%を用い、
140℃、1時間で(A)B社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を170℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
なお、B社製のビスマレイミドは、キシレンを溶媒として製造されたものである。
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
140℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を150℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
140℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を190℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
140℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を130℃、大気中で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
加熱ニーダーにより(A)A社製のビスマレイミド及び(B)成分を170℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、耐熱性樹脂組成物を得た。
実施例1で(A)ビスマレイミドの脱気処理をせず、加熱溶融混合処理を130℃、大気圧下で行ったほかは、同様にして樹脂組成物を得た。
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
110℃、1時間で(A)A社製のビスマレイミドを脱気処理し、加熱ニーダーにより上記(A)成分及び(B)成分を130℃、大気中で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、樹脂組成物を得た。
実施例1で使用した(A)〜(C)成分と同様の樹脂組成により、
加熱ニーダーにより(A)A社製のビスマレイミド及び(B)成分を130℃、80hPa以下で加熱溶融混合処理した後、(C)成分を添加して加熱溶融混合処理し、冷却固化させ所定の大きさに粉砕し、樹脂組成物を得た。
次に、実施例1〜5、参考例1、比較例1〜3の樹脂組成物について、ゲルタイム、揮発成分を測定すると共に、それらの硬化物について耐熱性の評価として抗折強度、5%質量減少温度、ボイド数、クラック数を測定し評価した。測定方法は下記のとおりであり、結果を表1に示す。
200℃に保たれた熱板状で一定量の樹脂組成物を直径4〜5cmの円上に広げ、一定速度で練り合わせたときの樹脂組成物が増粘し最終的に粘りのなくなった時間を測定した。
(抗折強度の測定)
樹脂組成物を60mm×10mm×5mmの大きさに成形(圧力800N/mm2)し、この成形品を温度350℃、30分間空気中で焼成し、試験片を作製した。この試験片を用い、JISK6911に準拠して行った。
(5%質量減少温度、揮発成分の測定)
TG−DTA(セイコーインスルメンツ社製)を用い、昇温速度10℃/分で、上記と同様に作製した試験片を用い測定した。5%質量減少温度の測定は、質量減少が5%となる温度を測定し、揮発成分の測定は、170℃における質量減少の値を測定した。
(ボイド数、クラック数の測定)
樹脂組成物を直径50mm、厚さ4mmに成形(圧力800N/mm2)し、この成形品を温度350℃、30分間空気中で焼成し、試験片を作製した。この試験片の円面を研磨し、50μm以上のボイド数を測定した。クラック数は、5mm以上のクラック数を測定した。なお、ボイドの数は5個以下が好ましく、クラック数は0個のものが好ましい。
Claims (6)
- 前記(A)ビスマレイミド化合物と前記(B)アミノフェノール類とを170〜200℃で加熱溶融混練する請求項1に記載の耐熱性樹脂組成物の製造方法。
- 前記(A)ビスマレイミド化合物が90〜110kPaの圧力下、115〜150℃で加熱脱気処理したものである請求項1または2に記載の耐熱性樹脂組成物の製造方法。
- 前記請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で得られた耐熱性樹脂組成物。
- 前記請求項4に記載の耐熱性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
- 前記成形品が精密部品の構成材料である請求項5に記載の成形品。
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