JP3941659B2 - 熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、難燃性等に優れる高機能成形材料、塗料、コーティング材、接着剤、封止材、印刷配線板用プリプレグ、金属張積層板、FRP及び炭素製品等の原料として用いられる熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂は、その熱硬化性という性質に基づく耐熱性、信頼性により、多くの産業分野で用いられている。しかし、フェノール樹脂やメラミン樹脂は硬化時に揮発性副生成物を発生し、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂は耐熱性に劣り、ビスマレイミド樹脂は非常に高価である等、それぞれ固有の問題点が存在し、現実には用途に応じて問題点については適宜妥協する必要があった。そこで、これらの問題点を有しない新規な熱硬化性樹脂の開発が従来より進められてきた。
【0003】
その一つとして、ジヒドロベンゾオキサジン化合物がある(特開昭49−47387号公報、米国特許第5152939号明細書)。この化合物の硬化は、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環重合反応を利用するものであるため、揮発分の発生を殆ど伴わずに熱硬化する。
【0004】
また、これらの樹脂の硬化性、反応性の研究としては、J. Am. Chem. Soc. 3424(1965)のBurkeらの報告、Polym. Sci. Technol.27(1985)のRiessらの文献がある。また、特開平7−188364号公報には、分子中のフェノール性ヒドロキシル基をジヒドロベンゾオキサジン化する際に、フェノール性ヒドロキシル基を特定の割合で環化せずに残すことにより硬化性を改善したジヒドロベンゾオキサジン化合物が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭49−47387号公報に記載されている開環重合反応を利用したジヒドロベンゾオキサジン化合物の硬化物は、従来知られている熱硬化性樹脂と比較して耐熱性が良好であり、しかも高強度である。しかし、開環重合反応による硬化は通常のフェノール樹脂の硬化反応による硬化と比べて長時間を要するという欠点があり、生産性の点で産業上の用途が限定されるという問題点も知られている。
【0006】
また、特開平7−188364号公報に記載されているように、ジヒドロベンゾオキサジン化する際に分子中にフェノール性ヒドロキシル基をある一定割合で残した場合、得られるジヒドロベンゾオキサジン化合物の硬化性が改善できることが確認されているが、この化合物の合成時の加熱により開環反応が進行してしまうため、安定した合成を行うことが難しいという問題がある。
【0007】
また、Burke、Riessらの報告では、一官能性フェノール化合物を用いた際の硬化性検討例が記載されているが、硬化性改良が十分でなく、また架橋密度の低下による耐熱性、機械的強度の低下が認められる。
【0008】
本発明は機械特性の低下等、諸特性を低下させずに硬化性を向上させたジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂にノボラック型フェノール樹脂を硬化剤として配合することにより、機械特性等の諸特性を低下させずにジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の硬化性を向上させることができることを見出し、また、ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤としてジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を硬化剤として配合することにより、揮発分の発生を殆ど伴わずに硬化し、機械的特性等諸特性の良好な熱硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂60〜97重量%及びノボラック型フェノール樹脂3〜40重量%からなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物(以下、熱硬化性樹脂組成物(a)と呼ぶことがある)を開示する。
【0011】
本発明は、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂5〜30重量%及びノボラック型フェノール樹脂70〜95重量%からなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物(以下、熱硬化性樹脂組成物(b)と呼ぶことがある。)を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物(b)を硬化してなる硬化物を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂としては、ジヒドロベンゾオキサジン環を有し、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環重合反応により硬化する樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物と、1級アミンと、ホルマリンから下式のように合成される。
【0014】
【化1】
(式中のR1はメチル基、フェニル基又は少なくとも1つの炭素数1〜3のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基であり、ヒドロキシフェニレン基のヒドロキシル基のオルト位の少なくとも一方には水素原子が結合している。)
フェノール性水酸基を有する化合物としては、多官能フェノール、ビフェノール、ビスフェノール化合物、トリスフェノール化合物、テトラフェノール化合物、フェノール樹脂などが挙げられる。多官能フェノールとしては、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノールが挙げられる。ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びその位置異性体、ビスフェノールS、テトラフルオロビスフェノールA等が挙げられる。フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、フェノール変性ポリブタジエン等が挙げられる。
【0015】
1級アミンとしては具体的にはメチルアミン、アニリン、トルイジン、アニシジンなどの置換アニリン等が挙げられる。脂肪族アミンであると、得られた熱硬化性樹脂は硬化は速いが耐熱性に劣る。アニリンのような芳香族アミンであると、得られた熱硬化性樹脂を硬化させた硬化物の耐熱性はよいが硬化が遅くなる。
【0016】
上記のジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、ヒドロキシル基のオルト位の少なくとも1つが水素であるヒドロキシフェニレン基を1分子中に2以上有する化合物(以下、反応し得るヒドロキシフェニレン基を有する化合物という。)と、1級アミンとの混合物を、70℃以上に加熱したホルマリン等のホルムアルデヒド類中に添加して、70〜110℃、好ましくは、90〜100℃で、20分〜2時間反応させ、その後、120℃以下の温度で減圧乾燥することによって得られる。
【0017】
上記反応においては、通常、反応し得るヒドロキシフェニレン基を有する化合物の全フェノール性ヒドロキシル基1モルに対し、1級アミンを0.5〜1.0モル、好ましくは0.6〜1.0モル、1級アミン1モルに対し、ホルムアルデヒド2モル以上の比で反応させる。1級アミンが0.5モルより少ないと、架橋密度の低下を招き、耐熱性が不十分となる場合がある。
【0018】
本発明に用いられるジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は2種類以上を組み合わせて用いることもできる。またこれらの熱硬化性樹脂を予め80〜180℃、好ましくは120〜160℃で処理することにより、その一部を予備重合させ成形時の硬化速度や溶融粘度を調節することもできる。
【0019】
本発明において前記熱硬化性樹脂に配合されるノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂やビスフェノールノボラック樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0020】
本発明においては、上記ノボラック型フェノール樹脂として、オルソ率50%以上のいわゆるハイオルソノボラック樹脂を用いることが好ましい。このようなハイオルソノボラック樹脂を用いることにより、機械特性を低下させずに硬化性を向上させることができる。
【0021】
熱硬化性樹脂組成物(a)は、上記のジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂60〜97重量%、好ましくは70〜95重量%、及びノボラック型フェノール樹脂3〜40重量%、好ましくは5〜30重量%からなるものである。ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、自硬化性であるが硬化反応が遅い。そこで、ノボラック型フェノール樹脂を3〜40重量%配合することにより、硬化性が向上し、しかも機械特性の低下のない熱硬化性樹脂組成物を得ることができた。ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が97重量%を超えると、硬化性の向上効果が低減することがある。
【0022】
また、ジヒドロベンゾオキサジン構造を有する樹脂の硬化物は、従来の熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂、フェノール樹脂の硬化物に比べ、吸水率が低いという特徴がある。この現象は、フェノール性ヒドロキシル基が窒素原子との相互作用により固定化されるためと考えられる。この特徴を維持するためには、熱硬化性樹脂組成物(a)のように、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を主成分として用い、かつ、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基数と窒素原子数の比、フェノール性水酸基数/窒素原子数、が1.5以下、好ましくは0.3〜1.5、特に好ましくは0.5〜1.10となる組成とすることが望ましい。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物(b)は、上記のジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂5〜30重量%、好ましくは15〜30重量%及びノボラック型フェノール樹脂70〜95重量%、好ましくは70〜85重量%からなるものである。このようにノボラック型フェノール樹脂を70〜95重量%配合すると、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が硬化剤として作用する。従って、従来ノボラック樹脂の硬化剤として用いられるヘキサメチレンテトラミンを使用しないため、硬化時にアンモニア等の揮発分の発生がなく、作業性を向上させることができる。また、得られる硬化物は、機械的強度においても優れている。
【0024】
ノボラック樹脂が40重量%を超えたり、70重量%未満であったりすると硬化性は向上するが機械特性が低下することがある。
【0025】
また、熱硬化性樹脂組成物(a)及び本発明の熱硬化性樹脂組成物(b)には、更に迅速な硬化性を必要とする分野での用途では、フェノール樹脂の硬化剤として従来用いられているヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤を少量添加してもよい。このような従来の硬化剤を併用しても、その量を少量とすることにより、アンモニア等の揮発分の発生を低く抑えることができる。このような通常の硬化剤を併用する場合、その量は通常、熱硬化性樹脂組成物(a)及び熱硬化性樹脂組成物(b)のいずれについても、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とノボラック型フェノール樹脂との合計量に対し、1〜5重量%とすることが望ましい。
【0026】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とフェノール樹脂とは両者をミキサー等で微粉砕した後、粉体混合してもよいが、加熱ロール等で溶融混合する方法、溶剤中で溶解混合する方法などが好ましい。
【0027】
また、上記組成物には必要に応じて、充填材、強化繊維、離型剤、着色剤、接着剤等を添加することもできる。
【0028】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を加熱ロール等により混練し、然る後に180〜220℃、成形圧20〜70kgf/cm2で15〜30分間圧縮成形又は移送成形することにより硬化し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂単独より硬化性に優れ、更に機械特性や難燃性が良好な硬化物を得ることができる。
【0029】
また、この硬化物を更に180〜220℃で5〜120分間後硬化させることにより、より良好な特性を有する硬化物が得られる。
【0030】
熱硬化性樹脂組成物(a)及び本発明の熱硬化樹脂組成物(b)には、その用途に応じ、例えば、金属張積層板、成形材料、封止材、FRP用樹脂材料等の用途においては、エポキシ樹脂とその硬化剤を添加してもよい。
【0031】
添加成分として用いられるエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸などのポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸などの過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂及び脂環族エポキシ樹脂、臭素化されたエポキシ樹脂などがあり、これらを1種単独で、又は2種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に制限はないが、硬化時に揮発分を発生しないものが好ましく、特に、ノボラック型フェノール樹脂、ジシアンジアミド、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン等の重付加型硬化剤が好適である。なお、エポキシ樹脂の硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂を用いる場合には、上記の熱硬化性樹脂組成物(a)及び(b)について記載したノボラック型フェノール樹脂の配合量に加えて、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対しノボラック型フェノール樹脂のヒドロキシル基が通常0.5〜1.5モルである量のノボラック型フェノール樹脂を添加することが好ましい。
【0032】
本発明の熱硬化性樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物(b))は、耐熱性、難燃性、成形作業性等に優れる高機能成形材料、塗料、コーティング材、接着剤、封止材、印刷配線板用プリプレグ、金属張積層板、FRP及び炭素製品等の樹脂材料として好適に用いられる。
【0033】
例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物をそのまま、又は必要に応じて充填剤、強化繊維、離型剤、着色剤等を添加して、各種成形材料、半導体素子等の封止用の封止材等として用いることができる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物及び必要に応じて充填剤などを含有するワニスをガラス布等の基材に含浸させ、加熱乾燥することにより、印刷配線板の製造に用いられるプリプレグを得ることができる。このプリプレグを複数枚重ね、更にその片面又は両面に銅箔等の金属箔を配置して加熱加圧することにより、金属張積層板とすることができる。このようにして得られるプリプレグや金属張積層板を用いて作製される印刷配線板は耐熱性、難燃性に優れるものであることから、各種電気・電子分野において好適に用いられる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1〜13(実施例4、5、7、9、10、12及び13は参考例)、比較例1〜10
[1]ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成(I)
(1)フェノールノボラック樹脂の合成
フェノール1.9kg、ホルマリン(37%水溶液)1.15kg、しゅう酸4gを5リットルフラスコに仕込み、還流温度で6時間反応させた。引き続き、内部を6666.1Pa以下に減圧して未反応のフェノール及び水を除去した。得られた樹脂は軟化点89℃(環球法)、3〜多核体/2核体比89/11(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるピーク面積比)であった。
【0036】
(2)ジヒドロベンゾオキサジン環の導入
上記により合成したフェノールノボラック樹脂1.7kg(ヒドロキシル基16mol相当)をアニリン1.49kg(16mol相当)と混合し80℃で5時間撹拌し、均一な混合溶液を調製した。5リットルフラスコ中に、ホルマリン1.62kgを仕込み90℃に加熱し、ここへノボラック/アニリン混合溶液を30分間かけて少しずつ添加した。添加終了後30分間、還流温度に保ち、然る後に100℃で2時間6666.1Pa以下に減圧して縮合水を除去し、反応し得るヒドロキシル基の95%がジヒドロベンゾオキサジン化された熱硬化性樹脂を得た。
【0037】
[2]ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成(II)
(1)フェノールノボラック樹脂の合成
フェノール1.9kg、ホルマリン(37%水溶液)1.10kg、しゅう酸4gを5リットルフラスコに仕込み、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成(I)と同様にしてフェノールノボラック樹脂を合成した。得られた樹脂は軟化点84℃(環球法)、3〜多核体/2核体比82/18(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるピーク面積比)であった。
【0038】
(2)ジヒドロベンゾオキサジン環の導入
以下、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成(I)と同様にしてジヒドロベンゾオキサジン環を導入した。得られた熱硬化性樹脂は、フェノールノボラック樹脂の、反応し得るヒドロキシル基の90%にジヒドロベンゾオキサジン環が導入されたものであった。
【0039】
[3]ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の合成(III)
ビスフェノールA0.76kg(ヒドロキシル基10mol相当)、アニリン0.93kg(10mol)、ホルマリン(37%水溶液)1.62kgの配合で上記合成法と同様にして反応させ、ヒドロキシル基の94%にジヒドロベンゾオキサジン環が導入された熱硬化性樹脂を合成した。
【0040】
[4]ノボラック型フェノール樹脂の合成(A)
フェノール2.4kg、ホルマリン(37%水溶液)0.02kg、パラホルムアルデヒド0.6kg、酢酸亜鉛0.02kg、安息香酸0.06kg、水0.05kgを5リットルフラスコに仕込み、還流温度で6時間反応させた。引き続き、内部を6666.1Pa以下に減圧して未反応のフェノール及び水を除去した。得られた樹脂は軟化点75〜83℃(環球法)、オルソ率70%(NMR)であった。
【0041】
[5]ノボラック型フェノール樹脂の合成(B)
フェノール1.9kg、ホルマリン(37%水溶液)1.3kg、しゅう酸15gを5リットルフラスコに仕込み、還流温度で6時間反応させた。引き続き内部を6666.1Pa以下に減圧して未反応のフェノール及び水を除去した。得られた樹脂は軟化点84℃(環球法)、オルソ率40%(NMR)であった。
【0042】
[6]樹脂組成物の調製
実施例1〜13及び比較例6、8〜10では、上記により得られたノボラック型フェノール樹脂をフラスコに仕込み、110〜120℃に加熱して樹脂を溶解し、ここにジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を加え、均一になるまで5分間撹拌し、樹脂組成物とした。比較例1〜3では、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のみを用いた。比較例4、5では、ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとを粉砕した後、ミキサー中で3分間混合することにより、樹脂組成物を調製した。比較例7では、溶融フェノール中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を溶解し、均一になるまで5分間撹拌して樹脂組成物を調製した。
【0043】
[7]硬化
上記により得られた樹脂組成物を粉砕し、内径120×80×4mmの金型内に充填し180℃、1.96MPaで15分間加熱加圧して硬化物を作製した。
【0044】
樹脂組成物の特性は、ゲルタイムについては、樹脂組成物0.3gを180℃に加温したゲルタイマー上で1回/秒で撹拌し続け糸引きが無くなるまでの時間とした。
【0045】
硬化物の特性のうち、曲げ強さ、曲げ弾性率はJIS K 6911に準じ、23℃、曲げ速度2mm/分で評価した。
【0046】
難燃性についてはUL−94に準じ、3.6mm厚さで評価した。
【0047】
吸水率は、50×50×3mmの樹脂板を上記条件で作製し、PCT(プレッシャー・クッカー・テスター(121℃、2気圧)内で10時間処理し、処理前後の重量差から計算した。実施例4(フェノール性OH/N=1.10)と比較例6(フェノール性OH/N=1.93)の場合、吸水率は各々1.6%及び3.2%であり、大きな差が認められた。
【0048】
以下、各実施例、比較例における配合組成、測定結果を表1〜9に示す。なお、配合組成はすべて重量部で示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【発明の効果】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は速硬化性であり、その硬化物は良好な機械特性、難燃性を備えている。したがって、本発明の熱硬化性樹脂組成物は高機能性成形材料、塗料、コーティング剤、接着剤、封止剤、積層板、FRP及び炭素製品等の原料として有用である。
Claims (5)
- ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂5〜30重量%及びノボラック型フェノール樹脂70〜95重量%からなることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- ノボラック型フェノール樹脂がオルソ率が50%以上のノボラック型フェノール樹脂である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
- ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂が、ヒドロキシル基のオルト位の少なくとも一方に水素が結合しているヒドロキシフェニレン基を1分子中に2以上有する化合物と1級アミンとホルムアルデヒドとを、該化合物のフェノール性ヒドロキシル基1モル当たり1級アミン0.5〜1.0モル、及びホルムアルデヒドを1級アミン1モル当たり2モル以上の割合で用いて反応させることにより合成されたものである請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
- ヒドロキシル基のオルト位の少なくとも一方に水素が結合しているヒドロキシフェニレン基を1分子中に2以上有する化合物がフェノールノボラック樹脂又はビスフェノールAである請求項3記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜4いずれか記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
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