JP5290142B2 - 新規な糖連結クロリン誘導体 - Google Patents

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Description

本発明は、光毒性が高い新規な糖連結クロリン誘導体、並びに当該クロリン誘導体を用いた医薬に関する。
光線力学的療法(PDT)は、標的となる疾患組織中に光感作性物質を投与して、癌または腫瘍組織や病変部に集積させた後、適当な波長の光を照射することにより、癌組織のみを選択的に破壊する治療方法である。PDTは、光感作性物質が特定波長の光により励起され、生体組織に傷害的に作用することを利用したもので、活性化された光感作性物質からの直接的または間接的なエネルギー移動による分子状酸素からの一重項酸素の生成が、腫瘍破壊の主因であると現在考えられている。
PDTに用いられる光感作性物質としては、ポルフィリン誘導体がよく知られており、ポリヘマトポルフィリンエーテル(例えば、フォトフリン(登録商標))やタラポルフィリンナトリウムなどのように、すでに実用化されているものもある。しかし、ヘマトポルフィリンやその2量体の最大吸収波長は630nmであり、モル吸光係数も3000と低いため、PDTの治療効果が5〜10mmの表層癌に限定されてしまっている。また、光過敏症といった副作用の問題もある。このため、適用範囲が広く、副作用が少ない種々のポルフィリン誘導体が研究され、提案されている。
一般に、PDTは、癌、腫瘍組織だけでなく、正常組織も損傷させることになるため、できるだけ少量で光毒性を示す光感作性物質を使用することが求められる。また、副作用軽減の点から、光が照射されない条件下では、細胞毒性が低いことが求められる。近年、ポルフィリン環に糖を連結することにより、光照射下での強い細胞毒性を維持しながら、暗所下での細胞毒性を軽減できることが見出され、糖連結ポルフィリン誘導体をPDT用薬剤へ利用することが提案されている。
例えば、特許文献1には、O−グリコシル化により、グルコース等の単糖類又はアセチル化単糖類をフェニル基に結合させた、テトラフェニルバクテリオクロリン誘導体及びその金属錯体が提案されている。
このO−グリコシル化テトラフェニルバクテリオクロリン誘導体は、まず、アセチル化糖でO−グリコシル化したテトラフェニルポルフィリン誘導体を製造し、次いで炭酸アルカリ金属存在下、還元剤により還元して、テトラフェニルバクテリオクロリン誘導体とし、次いで、アルカリ処理して、アセチル化糖の脱アセチルを行なって、単糖類残基の水酸基を遊離の状態とすることにより製造している。
そして、5,10,15,20−テトラキス〔3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)フェニル〕バクテリオクロリン、5,10,15,20−テトラキス〔3−(β−D−アラビノピラノシルオキシ)フェニル〕バクテリオクロリン、5,10,15,20−テトラキス〔3−(β−D−キシロピラノシルオキシ)フェニル〕バクテリオクロリンを合成し、これらのO−グリコシル化バクテリオクロリン誘導体が740nm付近に強い吸収ピークをもつこと、これらのバクテリオクロリン誘導体に光を照射すると、細胞毒性を示すことが開示されている。
また、非特許文献1には、5,10,15,20−テトラキス〔3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)フェニル〕クロリン等のO−グリコシル化クロリン誘導体を合成して、この化合物が暗所では細胞毒性を示さないが、光照射により細胞毒性を示したと報告している。
さらに、特許文献2には、S−グリコシル化により、ガラクトース、キシロース、グルコース等の単糖類、マルトース等の二糖類を連結させたポルフィリン誘導体が提案されている。具体的には、ハロゲン化アルコキシフェニルポルフィリン誘導体にチオ糖アセチルを反応させて、アルコキシ基のハロゲンとチオ−糖アセチルとを置換反応し、次いで脱アセチル化により、S−グリコシル化アルコキシポルフィリン誘導体を製造している。また、アルコキシフェニル基に代えて、ペンタフルオロフェニル基がポルフィリン環に結合している場合には、ペンタフルオロフェニルポルフィリンにチオ糖アセチルを反応させることにより、S−グリコシル化テトラフルオロフェニルポルフィリンを合成している。
そして、これらの糖連結ポルフィリン誘導体は、光照射により細胞毒性を示し、グリコシル化されていない類似のポリフィリン誘導体よりも光毒性活性が強いことを開示している。
特許文献2には、所望であれば、Mg、Zn、Snなどで処理して金属複合体としてもよいとの記載はあるが、合成例は示されていない。
S−グリコシル化テトラフェニルポルフィリンについては、非特許文献2でも報告されている。テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(TPPF20)を合成し、このTPPF20と糖のチオアセテート誘導体とを反応させることにより、5,10,15,20−テトラキス(4,1’−チオ−グルコシル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ポルフィリン等のS−グリコシル化テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンを合成し、これらのポルフィリン誘導体を細胞と接触させた後、光照射により細胞死が観察できること、さらに糖の種類により光毒性が異なることを報告している。
WO2002−020536 特表2005−500335 Shiho Hiroharaら、「Sugar-dependent aggregation of glycoconjugated chlorins and its effect on photocytotoxicity in HeLa cells」Journal of Photochemistry and Photobiology B:Biology 84(2006)56-63 Xin Chenら、「Efficient Synthesis and Photodynamic Activity of Porphyrin−Saccharide Conjugates:Targeting and Incapacitating Cancer Cells」、Biochemistry 2004,43,10918-10929
以上のように、糖連結ポルフィリン、クロリン誘導体についても、開発、研究が進められているが、光毒性、安全性、さらに生産性の点で更なる改良余地がある。本発明では、暗所では安定で、少量で高い光毒性を示し、生産性に優れた新規な糖連結クロリン誘導体を提供することにある。
本発明者らは、種々の糖連結ポルフィリン誘導体、クロリン誘導体を検討した結果、光線力学的治療用剤として有用な、暗所で安定で且つ少量で高い光毒性を示すことができる光感作物質となる、新規な糖連結型クロリン誘導体を見出した。
よって、本発明は、新規な糖連結型クロリン誘導体である、下記一般式(1)で表されるS−グリコシル化クロリン誘導体又は下記一般式(2)で表されるS−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体を提供する。
Figure 0005290142
Figure 0005290142
【0017】
【0017】
式中、X〜X20は、互いに独立して、F−、グルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース―O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基で、且つX〜X20のうち少なくとも1つはグルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1〜6の炭化水素基である)、R及びRは、互いに独立して水素原子、低級アルキル又はQ−(CH −(ここで、Qは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、又はシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数である)であり、互いに環を形成していてもよい。
好ましくは下記(1)’式、(2)’式で表されるように、クロリン環に対してp位にあるX、X、X、及びXのうちの少なくとも1つがグルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基であり、クロリン環に対してo位及びm位がフッ素原子の場合のS−グリコシル化クロリン誘導体又はその金属錯体である。より好ましくは、X、X、X、及びXの全てがグルコース−S−の場合である。
Figure 0005290142
Figure 0005290142
グルコースはD体であることが好ましい。
発明は、上記クロリン誘導体又はその金属錯体を有効成分とする、医薬、特に、腫瘍若しくは固形癌、又は皮膚病の光線力学的治療用剤を提供する。
本発明の糖連結クロリン誘導体は、暗所で毒性がなく、光照射下で強い細胞毒性を示すことができる。
本発明の糖連結クロリン誘導体の製造方法の一実施形態を説明するための図である。 本発明の糖連結クロリン誘導体の製造方法の一実施形態を説明するための図である。 薬剤濃度0.5μMのときの光毒性試験の結果を示すグラフである。 薬剤濃度0.09μMのときの光毒性試験の結果(No.6,7,8,9,14,15)を示すグラフである。 薬剤濃度0.09μMのときの光毒性試験の結果(No.8,16)を示すグラフである。 薬剤濃度0.5μMのときの暗所における細胞毒性試験の結果を示すグラフである。 実施例4(HTFPC−SCHCHOAcGlc)のESI−MSスペクトルである。 実施例4(HTFPC−SCHCHOAcGlc)のESI−MSスペクトルのシミュレーション結果である。 実施例5(HTFPC’−SAcGlc)のESI−MSスペクトルである。 実施例5(HTFPC’−SAcGlc)のESI−MSスペクトルのシミュレーション結果である。
〔S−グリコシル化クロリン誘導体及びその製造方法〕
本発明は、新規な光感作性物質として、下記一般式(1)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体を提供する。
Figure 0005290142
式中、X〜X20は、互いに独立して、F−、糖−S−、糖−Z−S−、及び糖−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基で、且つX〜X20のうち少なくとも1つは糖−S−、糖−Z−S−、及び糖−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基である。
ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、α−ブチレン基、β−ブチレン基、シクロへキシレン、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基等の炭素数1〜6の炭化水素基である。
本発明のグリコシル化クロリン誘導体は、クロリンに結合している4個のフェニル基のうち、少なくとも1つがS−グリコシル化されていればよく、クロリン環に対して、o位、m位、p位のいずれかがS−グリコシル化されていればよい。また、各フェニル基において、2個以上がS−グリコシル化されていてもよい。
好ましくは、下記(1)’式に示すように、各フェニル基において、クロリン環に対してp位にあるX、X、X、及びXの少なくともいずれかが糖−S−、糖−Z−S−、及び糖−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基で、o位、m位はフッ素原子の場合であり、より好ましくは、p位にあるX、X、X、及びXの全てがグリコシル化されている。また、糖は、チオ基に直接連結されていてもよいし、Sと糖との間に、−Z−、−O−Z−の連結基が介在していてもよい。好ましくは、糖はチオ基に直接連結されている。
Figure 0005290142

連結される糖としては、下記式で表されるペントース又はヘキソースなどの単糖類;ショ糖、マルトース、ラクトースなどの2糖類;デンプン、アミロース、グリコーゲンなどの多糖類などが挙げられるが、好ましくは単糖類であり、より好ましくはペントース又はヘキソースである。単糖類は、D体であってもよいし、L体であってもよいが、D体が好ましく用いられる。
Figure 0005290142
ペントースとしては、アラビノース、キシロース、ラムノースなどがある。また、ヘキソースとしては、具体的には、グルコース、ガラクトース、マンノース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロースがあり、これらのうち、グルコースが最も好ましく用いられる。グルコースのときの光毒性が優れているからである。
(1)及び(1)’式中、X〜X20のうち、2つ以上が糖−S−、糖−Z−S−、及び/又は糖−O−Z−S−(以下、これらの基を特に区別しないときは、「S−グリコシル化基」と総称する)に置換されている場合、連結される糖の種類は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、単糖類と多糖類といった異なる種類の糖が連結されていてもよい。好ましくは、糖の種類が全て同一の場合であり、より好ましくは、置換されているS−グリコシル化基に含まれている糖の全てがグルコースの場合である。
上記(1)及び(1)’式中、R及びRは、水素原子又は互いに独立した有機基である。
前記有機基としては、例えば、低級アルキル又はQ−(CH−である。Qは、低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ又はシクロアルキル基である。ここで、低級アルキルとは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル等の炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキルをいう。kは0〜3の整数である。
とRが互い環を形成していてもよく、例えば、RとRで、ポルフィリン環の1〜24番号法でA環の2位、3位に結合するイミノ基、第3級アミンを構成していてもよい。
以上のようなS−グリコシル化クロリン誘導体の好ましい具体例としては、5,10,15,20−テトラキス〔4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕クロリン、5,10,15,20−テトラキス〔4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリンなどが挙げられる。
以上のような構成を有するS−グリコシル化クロリン誘導体は、暗所では細胞毒性は示さないが、光照射下で強い細胞毒性を示すことができる。特に、O−グリコシル化クロリン誘導体よりも、強い細胞毒性を有する。そして、ポルフィリン誘導体と比べて長波長における吸収が大きく(吸収極大波長650nm)、また糖の連結により化合物は水溶性となり、さらに細胞親和性、細胞透過性も高くなっているようである。
次に、本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体の製造方法について説明する。本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体の製造方法は、テトラフェニルポルフィリンのA環を還元反応又は付加反応に供してテトラフェニルクロリンとする工程を経て、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンを得る工程;及び該テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンと糖又は糖誘導体のチオールエステルと反応させて、S−グリコシル化する工程を含む。
クロリンに結合している芳香環のフッ素化は、ポルフィリンをクロリンに変換した後行なってもよいが、予めフッ素化された芳香環が結合したポルフィリン、すなわちテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンを用いて、これをクロリンに変換することが好ましい。すなわち、本発明の好ましいS−グリコシル化クロリン誘導体の製造方法は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンのA環を還元反応又は付加反応に供してテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンとする工程;得られた反応混合物からテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンを分離除去し、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンを得る工程;及び該テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンと糖又は糖誘導体のチオールエステルと反応させて、S−グリコシル化する工程を含む。
以下、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンを用いた場合について、本発明の製造方法を、図1を参照しつつ詳述する。
まず、5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(HTFPPと略記)を出発原料とし、ポルフィリン環の1〜24番号法における2、3位(ピロール環A環)を還元して、あるいは適宜化合物を付加することにより、クロリン環にする。還元は、約3当量の炭酸アルカリ金属の存在下、それぞれの基にもっとも適した量の還元剤、例えばヒドラゾン、セミカルバゾン、p−トルエンスルホニルヒドラジドを用いて行なうことができる。また、付加反応の場合、1,3−ジヒドロベンゾチオフェン2,2−ジオキシド、N−メチルグリシンとパラホルムアルデヒドの組合わせ等をピロール環A環の2、3位に環化付加反応させることによって、A環の二重結合を一重結合としてもよい。あるいは、臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アルキルなどを、水素化トリブチル錫などの連鎖移動剤の存在下で、ピロール環A環に付加反応させることによってA環の二重結合を一重結合としてもよい。
反応後、HTFPPを反応混合物から分離除去する。分離除去方法としては、再結晶、シリカゲルクロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー等により行なうことができる。
ポルフィリン誘導体の分離除去後、得られたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリン誘導体に、糖のチオールエステル(糖−SR)を作用させて、糖スルフィドをテトラフルオロフェニル基に連結させて、S−グリコシル化テトラフルオロフェニルクロリン誘導体(HTFPC−S−糖)を得る。図1に示すHTFPC−S−糖は、4個のフェニル基全てのp位に糖が連結した場合を示している。HTFPC−S−糖において、R、R、R、Rは糖−SRに由来する糖残基である。
加える糖のチオールエステル(糖−SR)の量は、クロリン環に連結している4個のペンタフルオロフェニル基のうち、糖を連結しようとするフェニル基の数に応じて設定すればよい。例えば、過剰量の糖のチオールエステルを添加した場合には、クロリン環に結合している4個のフェニル基のうちの1個以上のフェニル基に2個以上の糖が連結することになり、過小量の糖のチオールエステルしか添加しなかった場合には、クロリン環に結合している4個のフェニル基のうち、S−グリコシル化されないフェニル基も残存した糖連結クロリンが得られることになる。
好ましくは、クロリン環に連結している4個全てのペンタフルオロフェニル基のp位がS−グリコシル化されるように、糖のチオールエステルの添加量を調整し、リサイクル法を用いたゲル濾過クロマトグラフィを併用することにより、S−グリコシル化工程を行なうことが好ましい。尚、使用する糖−SRを構成するR基としては、Rがアシル基、アルキル基等が挙げられる。
また、糖のチオールエステル(糖−SR)中の糖としては、糖分子中の水酸基をアシル基等の保護基で保護したものを用いることが好ましい。保護基としては、アセチル、ピバロリル等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。これらの保護基のうち、アセチル基が特に好ましい。
保護基で水酸基がブロックされている糖を使用した場合には、次いで、アルカリ処理等により、保護基を脱離除去する。保護基がアシル基の場合には、アルカリ溶液を加えて加水分解すればよい。例えば、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフランあるいはこれらの混合溶媒中、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシドのようなアルカリを用いて、保護された化合物を処理することにより、保護基を除去する。保護基がアラルキル基の場合には、パラジウム触媒を使った水素添加により除去することができる。保護基が結合した糖では、細胞内への薬剤の移行が妨げられ、細胞毒性効果が得られないからである。
チオ基と糖との間に連結基Z又は−O−Z−が介在する場合、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリン誘導体に作用させる糖のチオールエステルとして、連結基を有するチオールエステル(糖−Z−SR又は糖−O−Z−SR)を用いればよい。
以上のような製造方法では、グリコシル化の前に、ポルフィリンをクロリンに変換しているので、ポルフィリンからクロリンへの変換工程の条件の設定が容易となる。すなわち、糖は120℃くらいで分解してしまい、またこれ以上の高温では糖とポルフィリン骨格との結合が切断されてしまうおそれがあるため、この変換工程をそれ以上の高温を必要とするような反応を行なわせることができなかった。この点、グリコシル化前であれば、例えば、ポルフィリン骨格のピロールA環の環化付加反応(通常、120℃以上の加熱必要)によってもクロリン変換工程を行なうことができる。
また、ポルフィリン骨格誘導体とクロリン骨格誘導体の混合物から、クロリン骨格誘導体を分離精製する場合、糖連結ポルフィリン誘導体混合物から糖連結クロリン誘導体を分離精製する場合と比べて、糖が連結していないポルフィリン誘導体から糖が連結されていないクロリン誘導体を分離精製する方が容易であり、分離精製効率が高い。ひいては生産性に優れている。
〔金属錯体タイプのS−グリコシル化クロリン誘導体及びその製造方法〕
本発明は、また、新規な光感作性物質として、下記一般式(2)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体を提供する。
Figure 0005290142

(2)式中、X〜X20、R及びRは、(1)式の場合と同様である。
Mは金属であり、具体的には、遷移金属、II族、III族、IV族の金属であり、好ましくは、Pt、Pd、Au、Al、Zn等の遷移金属であり、より好ましくはPt、Pd、Auといった貴金属である。金属の導入により光照射下での細胞毒性が高められ、特に、貴金属の導入の場合に細胞毒性向上効果が大きい。また、Pt、Pd、Au等の貴金属導入反応は高温で行なわなければならず、糖との関係で従来の方法では導入が困難であったが、後述する本発明の製造方法により、高収率で製造することができる。
本発明の金属錯体タイプのS−グリコシル化クロリン誘導体としては、好ましくは、下記(2)’式に示すように、クロリン環に対してp位にあるX、X、X、及びXの少なくともいずれかが糖−S−、糖−Z−S−、及び糖−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基で、o位、m位はフッ素原子の場合であり、より好ましくは、p位にあるX、X、X、及びXの全てがグリコシル化されているものである。
Figure 0005290142
以上のような構成を有するS−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体は、金属が導入されていないS−グリコシル化クロリン誘導体を製造した後、該当する金属の塩酸塩、硫酸塩等の金属塩を作用させることによって、所望の金属錯体を製造してもよいが、次に述べる本発明の製造方法により製造することが、糖の安定性、精製のしやすさなど、生産性の点から好ましい。
本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体の製造方法は、テトラフェニルポルフィリンのポルフィリンのA環を還元反応又は付加反応に供してテトラフェニルクロリンを得る工程、及びテトラフェニルポルフィリン又はテトラフェニルクロリンと金属塩とを反応させる工程を経てテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体を得る工程;並びに該テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体に、糖又は糖誘導体のチオールエステルを反応させてS−グリコシル化する工程を含む。
クロリン環に結合している芳香環のフッ素化は、金属塩との反応後であってもよいし、反応前であってもよい。いずれの場合でも、S−グリコシル化前に金属を導入しているので、反応混合物から目的とするテトラフェニルクロリンの金属錯体の分収効率が高く、S−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体の生産性に優れている。さらに、糖又は糖誘導体のチオールエステルとの反応を、目的とするテトラフェニルクロリンの金属錯体を得た後に行なっているので、金属導入のための反応、ポルフィリン環からクロリンへの反応条件を広範囲から選択することができる。
より好ましくは、まず、テトラフェニルポルフィリンのポルフィリンと金属塩を反応させてテトラフェニルポルフィリンの金属錯体を得た後、ポルフィリン環のA環を還元反応又は付加反応に供してテトラフェニルクロリンとする方法である。これにより、テトラフェニルクロリンの金属錯体の収率をより高めることが可能である。
本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体の製造方法において、予めフッ素化された芳香環が結合したポルフィリン、すなわち、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンを用いることが、より好ましい。従って、好ましいS−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体の製造方法は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンと金属塩とを反応させてテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンの金属錯体を得る工程;前記テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン金属錯体のポルフィリンのA環を還元反応又は付加反応に供してテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体とする工程;得られた反応混合物からテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンの金属錯体を分離除去し、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体を得る工程;及び該テトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリンの金属錯体に、糖又は糖誘導体のチオールエステルを反応させてS−グリコシル化する工程を含む。
以下、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリンを用いた場合について、本発明の製造方法を、図2を参照しつつ詳述する。
まず、出発原料となる5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(HTFPPと略記)に、金属Mを導入する。金属Mの導入は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、カルボン酸塩など、有機酸、無機酸との塩を、HTFPPと反応させることにより行なう。
例えば、HTFPPと導入しようとする金属塩を適当な有機溶媒中に懸濁して加熱還流し、得られた反応混合物を冷却後、減圧濃縮して、カラムクロマトグラフィにより目的成分を分収すればよい。
加熱条件は、金属の種類により適宜設定される。亜鉛等のイオン半径の小さな金属の場合には、30〜100℃で5〜25時間程度の加熱でよいが、Pd、Pt等のイオン半径の大きな金属を導入する場合、200〜250℃で80〜100時間の加熱が必要となる。糖が連結される前に行なうので、ポルフィリン骨格が安定に存在できる条件であればよいことから、このような高温、長時間の加熱を行なうことができる。
次いで、得られたHTFPPの金属錯体(MTFPPと略記)を、還元する。還元方法は、前述のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン誘導体からクロリン誘導体への変換工程で行なった還元反応、付加反応と同様の方法にて行なうことができる。図2中、得られるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリン誘導体を、MTFPCで示す。
次に、S−グリコシル化する(図2中、得られるS−グリコシル化クロリン誘導体を、MTFPC−S−糖で示す。このMTFPC−S−糖は、4個のペンタフルオロフェニル基の全てがS−グリコシル化された場合を示している。R、R、R、Rは糖−SRに由来する糖残基である)。グリコシル化の方法も、前述のS−グリコシル化クロリン誘導体の製造で行なった方法と同様の方法にて行なうことができる。糖の保護基除去が必要な場合、保護基除去方法も、前述のS−グリコシル化クロリン誘導体の製造で行なった方法と同様の方法により行なうことができる。
チオ基と糖との間に連結基Z又は−O−Z−が介在する場合、得られたテトラキス(ペンタフルオロフェニル)クロリン誘導体に作用させる糖のチオールエステルとして、連結基を有するチオールエステル(糖−Z−SR又は糖−O−Z−SR)を用いればよい。
本発明の製造方法によれば、クロリン骨格への金属の導入を、グリコシド化より先に行なっているので、金属導入反応条件の許容範囲が広くなる。従って、従来、O−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体の場合には、糖の安定性との関係から、100℃以下程度の加熱条件で導入できる金属の錯体しか合成できなかったが、本発明の製造方法によれば、それよりも高温、長時間の加熱還流が必要となるPt、Pd等の貴金属の導入が可能となり、より光毒性が高い金属錯体を得ることができる。
以上のような金属錯体タイプのS−グリコシル化クロリン誘導体の吸収帯は、金属の導入により600nm付近となるが、S−グリコシル化クロリン誘導体と同様に、糖残基の導入により水溶性を示し、また暗所下では細胞毒性を示さないが、光照射下で強い細胞毒性を示す。S−グリコシル化クロリン誘導体の場合と同様に、光照射下での細胞毒性は、O−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体よりも大きい。
〔用途〕
上記本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体は、暗所下では細胞毒性を示さないが、光照射下で強い細胞毒性を示すことを利用して、標的となる生物材料と、暗所下でインビトロ又はインビボで接触させて、細胞内に取り込ませた後、クロリン誘導体の吸収波長の光を照射することにより、標的を破壊する用途に用いることができる。
ここで、標的としては、ウィルス又はバクテリア又はこれらの感染細胞;腫瘍;腫瘍状組織などが挙げられ、特に腫瘍組織に親和性を有し、腫瘍部に集積できることから、腫瘍の破壊に用いることができる。
従って、本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体及びその金属錯体は、悪性腫瘍(malignant tumor)に分類される癌(cancer)の治療薬として利用できる。本発明で対象とする悪性腫瘍は、上皮性悪性腫瘍だけでなく、肉腫(saucoma)に分類されるような非上皮組織を発生母地とするような悪性腫瘍も含む。特に腫瘍細胞が塊状、充実性に増殖する固形癌(solid carcinoma)、光が届く表層癌の治療に有用である。具体的には、食道癌、肺癌、胃癌、子宮頸癌、子宮体癌等の子宮癌、皮膚癌、前立腺癌、腎臓癌などが挙げられる。皮膚癌には、原発性(扁平上皮癌、基底細胞癌、表皮付属機癌)の他、内臓癌の皮膚転移も含まれる。
また、本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体及びその金属錯体は、悪性腫瘍だけでなく、良性腫瘍に対しても親和性を有することから、局所投与により、日光角化症、皮膚乾癬症等の皮膚病の光線力学的治療薬としての利用も可能である。
さらに、本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体の腫瘍集積性を利用して、PET等との併用により、癌の診断に利用することも可能である。
本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体の最大吸収波長が650nmとポルフィリン系化合物よりも長波長となり、特に、水溶性で組織内部への浸透を期待できるので、表層癌だけでなく、表皮よりも深い領域にある腫瘍又は固形癌に対する適用が期待できる。一方、本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体の金属錯体の吸収波長は600nm付近であることから、光が届く表層癌や皮膚病の光線力学的治療薬、診断薬に適している。
〔医薬組成物〕
本発明の医薬組成物は、上記本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体(金属錯体タイプを含む)(以下、特に区別しない場合は、本項目欄において、両者をまとめて「S−グリコシル化クロリン誘導体」という)を有効成分として含有し、製薬学的に許容できる固体又は液体状の担体を含有する。
有効成分であるS−グリコシル化クロリン誘導体及びその金属錯体は、上述のように、いずれも水溶性で細胞透過性に優れ、光毒性が高いので、腫瘍又は固形癌の光線力学的治療用剤として好適に使用できる。
本発明の組成物の有効成分の化合物は、カテーテル、静脈内または筋肉内注射により投与でき、またその他の非経口的な経路で投与することができる。また、経皮的にも投与できる。その他、体内の深部の腫瘍組織へ直接に局所注入することができる。
本発明で用いられる担体は、製剤の種類に応じて適宜選択される。注射用製剤で調製する場合、有効成分の化合物を含む無菌の水溶液又は分散液あるいは無菌の凍結乾燥剤の形に製剤化することができる。液体担体としては、例えば、水、生理食塩水、エタノール、含水エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、植物油が好ましい。
本発明の医薬組成物には、有効成分とともに、ラクトース、スクロース、第2リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース等の希釈剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクのような滑剤;デンプン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリドン、セルロース及びその誘導体等の結合剤を含み得る。
本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体又はその金属錯体の投与量は、治療すべき対象や目的によって異なるが、一般に、S−グリコシル化クロリン誘導体の量として、腫瘍の診断のためには、1〜3mg/kg(フォトフリン)、腫瘍治療のためには、30〜0.3mg/kgHpD(フォトフリン)、好ましくは1〜5mg/kgHpD(フォトフリン)または20〜0.2mg/kgPHEである。
有効成分であるS−グリコシル化クロリン誘導体又はその金属錯体の細胞毒性は高いことから、従来よりも投与量を少なくして、同等以上の効果を得ることを期待できる。このことは、代謝、排泄に要する時間が短くて済むことを意味し、光線力学的療法の活用利便性を高める。
腫瘍の治療のためには、S−グリコシル化クロリン誘導体又はその金属錯体を投与した後、治療すべき部位に、該当化合物の吸収帯を含む光線を照射する。具体的には、500nm以上の光線照射により一重項酸素を発生して、目的の細胞毒性を発揮することができるが、好ましくは最大吸収波長の光の割合が高い光線を照射することである。
照射源としては、レーザー、ハロゲンランプなどが用いられる。レーザとしては、色素レーザ、半導体レーザ、アルゴンレーザなど、励起に必要な波長の光線が得られるものであればよい。
本発明のS−グリコシル化クロリン誘導体は、吸光係数が大きいため、照射する光線の強度は、通常用いる光増感剤に比べて弱くても良い。従って、本発明のテトラフェニルクロリン誘導体又はその金属錯体を用いる光線力学的療法は、療法を受ける生体にとって受ける負担がより少なくなる。具体的には、光線照射量は、1〜20J/cmである。
〔S−グルコシル化クロリン誘導体の製造〕
実施例1:S−グルコシル化クロリン誘導体
(1)HTFPPの製造(テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン誘導体の合成)
ペンタフルオロベンズアルデヒド(5g)とピロール(2mL)を窒素置換したジクロロメタン(1.2L)に溶解した。得られた溶液に、三フッ化ホウ素エーテル錯体(1mL)を加え、4時間、加熱還流した後、クロラニル(6.9g)を加えて、さらに12時間、加熱還流した。得られた反応混合物を冷却し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムに充填し、クロロホルムを用いて溶離することにより、5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(「HTFPP」と略記)を分収した。減圧濃縮後、さらにクロロホルムとメタノールの混合溶媒から再結晶した(収量3.8g、収率61%)。
Figure 0005290142
(2)HTFPCの製造(ポルフィリン誘導体からクロリン誘導体への変換)
(1)で製造したHTFPP(892mg)、N−メチルグリシン(171mg)及びパラホルムアルデヒド(134mg)を、トルエン(200mL)に溶解した。得られた溶液を、窒素雰囲気下、N−メチルグリシン(約400mg)とパラホルムアルデヒド(400mg)を2時間毎に加えながら、20時間加熱還流する。反応混合物を冷却後、溶媒を減圧留去する。クロロホルム(50mL)を加え、水洗し過剰量のN−メチルグリシンとパラホルムアルデヒドを除去する。トルエン溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去する。得られた粗生成物をシリカゲルカラムに充填し、クロロホルムを用いて溶離することにより、5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリン(HTFPCと略記)を分収し、さらに減圧濃縮した(収量595mg、収率55%)。
Figure 0005290142
(3)HTFPC−SAcGlcの製造(S−グルコシル化)
(2)で得られたHTFPC(102mg)、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルチオアセチル(AcGlcSAcと略記)(375mg)及びジエチルアミン(2mL)をジメチルホルムアミド(20mL)に溶解し、室温下16時間攪拌した。反応混合物に、クロロホルム(20mL)を加え、水洗した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムに充填し、クロロホルム及びメタノールの混合溶媒で溶離し、さらにゲル浸透クロマトグラフ分収装置により、5,10,15,20−テトラキス〔4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリン(HTFPC−SAcGlcと略記)を得た(収量210mg、収率94%)。
Figure 0005290142
(4)HTFPC−SGlcの製造(アセチル保護基の除去)
TFPC−SAcGlc(185mg)をジクロロメタン(20mL)とメタノールの混合物に溶解した。得られた溶液にナトリウムメトキシドをpH9になるまで加えた後、窒素雰囲気下、15〜20℃で12時間、さらに、45〜50℃の湯浴で3時間加熱還流した。得られた反応混合物を冷却し、次いで酢酸で中和し減圧濃縮した。得られた沈殿をろ別し、水洗後、真空乾燥して、5,10,15,20−テトラキス〔4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリン(HTFPC−SGlcと略記)を得た(収量81mg、収率47%)。得られた化合物は、19F−NMRスペクトルから、全てのフェニル基のp位がS−グリコシル化されていることが確認できた。
Figure 0005290142
実施例2:HTFPC−SGlcのPd錯体
(1)PdTFPPの製造(金属の導入)
実施例1の(1)で製造したHTFPP(1g)と塩化パラジウム(0.4g)をベンゾニトリル(35mL)に溶解した。得られた溶液を、窒素置換後、窒素雰囲気下、220℃で96時間加熱還流し、得られた反応混合物を、冷却後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を、アルミナカラムに充填し、クロロホルムを用いて溶離することにより分収した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより分収し、得られた生成物を減圧濃縮した後、さらにジクロロメタンとメタノールの混合溶媒から再結晶することにより、〔5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリナト〕パラジウム(II)(PdTFPPと略記)を得た(収量0.76g、収率70%)。
(2)PdTFPCの製造(ポルフィリン環からクロリン環への変換)
(1)で製造したPdTFPP(0.4g)、N−メチルグリシン(0.2g)及びパラホルムアルデヒド(0.17g)を、トルエン(50mL)に溶解し、実施例1(2)の変換工程に準じてポルフィリン環のA環を環化付加することによりクロリン骨格に変換した後、シリカゲルクロマトグラフィーにより分収し、減圧濃縮後、さらにゲル浸透クロマトグラフ装置により目的成分を分収し、クロロホルムとヘキサンの混合溶媒から再結晶して、{5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリナト}パラジウム(PdTFPCと略記)を得た(収量0.075g、収率17%)。
(3)PdTFPC−SAcGlcの製造(S−グルコシル化)
(2)で得られたPdTFPC(0.11g)、AcGlcSAc(0.19g)及びジエチルアミン(3mL)をジメチルホルムアミド(30mL)に溶解し、実施例1(3)に準じて、S−グリコシル化を行なった。得られた粗生成物をゲル浸透クロマトグラフ分収装置により目的成分を分収し、溶媒を減圧留去することにより、{5,10,15,20−テトラキス〔4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリナト}パラジウム(II)(PdTFPC−SAcGlcと略記)を得た(収量0.15g、収率66%)。
(4)PdTFPC−SGlcの製造(アセチル保護基の除去)
(3)で得られたPdTFPC−SAcGlc(0.15g)をジクロロメタン(20mL)とメタノール(20mL)の混合溶媒に溶解し、実施例1(4)に準じて、グルコースの水酸基の保護基であるアセチル基を除去し、逆相液体クロマトグラフ装置で、目的成分を分収し、溶媒を減圧留去後、その残渣を分子量カットオフが1000の透析膜を用いて脱塩し、溶媒留去後、{5,10,15,20−テトラキス〔4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリナト}パラジウム(II)(PdTFPC−SGlcと略記)を得た(収量0.065g、収率59%)。得られた化合物は、19F−NMRスペクトルから、全てのフェニル基のp位がS−グリコシル化されていることが確認できた。
実施例3;HTFPC−SGal
実施例1の(3)S−グルコシル化工程において、AcGlcSAcに代えて、2,3,4,6−テトラ−o−アセチル−β−D−ガラクトピラノシルアセチルチオアセチル(AcGalSAcと略記)を用いた以外は、実施例1と同様にして、糖がガラクトースである5,10,15,20−テトラキス〔4−(β−D−ガラクトピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリン(HTFPC−SGalと略記)を得た(収量86mg、収率84%)。
〔ポルフィリン誘導体の製造〕
比較例1;HTFPP−SGlc
実施例1(1)で合成したHTFPP(55mg)、AcGlcSAc(207mg)及びジエチルアミン(0.8mL)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、室温下24時間攪拌し、実施例1(3)に準じてS−グリコシル化を行ない、ゲル浸透クロマトグラフ分収装置により分収し、溶媒を減圧留去することにより5,10,15,20−テトラキス(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ポルフィリン(HTFPP−SAcGlcと略記)を得た(収量100mg、収率76%)。
Figure 0005290142
得られたHTFPP−SAcGlc(152mg)をジクロロメタン(20mL)とメタノール(20mL)の混合溶媒に溶解し、実施例1(4)に準じて、アセチル基の除去反応後、逆相液体クロマトグラフ装置で、目的成分を分収した。分収した溶液から溶媒を減圧留去して、5,10,15,20−テトラキス〔4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕ポルフィリン(HTFPP−SGlcと略記)を得た(収量56mg、収率37%)。
比較例2:PdTFPP−SGlc
実施例2(1)で合成したPdTFPP(77mg)、AcGlcSAc(224mg)及びジエチルアミン(1.2mL)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶解し、実施例1(3)に準じてS−グリコシル化を行ない、ゲル浸透クロマトグラフ分収装置により分収し、溶媒を減圧留去することにより、{5,10,15,20−テトラキス〔4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕ポルフィリナト}パラジウム(II)(PdTFPP−SAcGlcと略記)を得た(収量157mg、収率89%)。
得られたPdTFPP−SAcGlc(184mg)をジクロロメタン(20mL)とメタノール(20mL)の混合溶媒に溶解し、実施例1(4)に準じて、アセチル基を除去反応後、逆相液体クロマトグラフ装置で、目的成分を分収した。分収した溶液から溶媒を減圧留去して、{5,10,15,20−テトラキス〔4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル〕ポルフィリナト}パラジウム(II)(PdTFPP−SGlcと略記)を得た(収量46mg、収率25%)。
〔O−グリコシル化クロリン誘導体〕
比較例3:m−TGlcPC
WO2002−20536に記載の方法に準じて、まず5,10,15,20−テトラキス〔3−(2’,3’,4’,6’−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルオキシ)フェニル〕ポルフィリン(以下、TGlcPPと略記)を合成し、次いで、ポルフィリン環のA環を還元して、下記式で表される5,10,15,20−テトラキス〔3−(β−D−グルコピラノシルオキシ)フェニル〕クロリン(m−TGlcPCと略記)を得た。
Figure 0005290142
参考例1:PtTFPC
実施例2(1)において、塩化パラジウムに代えて塩化白金酸ナトリウムを使用してPtTFPPを製造し、さらに実施例の方法と同様にしてポルフィリン環からクロリン環へ変換することにより、PtTFPCを得た。
参考例2:
市販品の5,10,15,20−テトラキス(4−スルホフェニル)ポルフィリン(TPPSと略記)を用いた。
〔光毒性の評価方法〕
HeLa細胞を96穴プレートに5×10cells/well(培地容積100μL)だけ播き、5%CO存在下、37℃で24時間培養した。これに2%ジメチルスルホキシドを含む薬剤溶液を100μL加え、所定濃度にした。これをさらに5%CO、37℃で24時間培養した。その後、培地を排出し、リン酸緩衝溶液100μLで2回洗浄した。各ウェルに10%ウシ胎児血清(FCS)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を100μL加えた。500nmのカットフィルターとウォータージャケットをつけた100Wのハロゲンランプを用いて、所定光量(16J/cm)の光を照射した。その後、さらに5%CO、37℃で24時間培養した。これにWST−8アッセイにより、薬剤を添加していない場合に対する相対値としての細胞生存率を算出した。各薬剤について6サンプル試験して得られた結果の平均値を求めた。
尚、所定光量は、パワーメータを用いて、照射時間を調節することにより調整した。
WSTアッセイは、細胞の脱水素酵素の活性を測定する方法の1つで、生細胞の量に依存してテトラゾリウム塩(WST−8)が分解される。この分解量を吸光光度法で測定することにより生細胞の相対量を調べた。
〔光毒性比較〕
(1)薬剤濃度0.5μM
上記実施例及び比較例で製造、及び製造中間体として得られたクロリン誘導体又はポルフィリン誘導体、及び参考例について、上記評価方法に基づいて、薬剤濃度0.5μMのときの光毒性を測定した。結果を図3に示す。図3中の化合物No.に対応する化合物は、表1に示す通りである。
Figure 0005290142
図3において、化合物No.1と6,No.2と7、No.3と8、No.4と9を比較すると、いずれも糖が連結している方が光毒性効果が高いことがわかる。また、No.6と10、No.7と11、No.8と12、No.9と13との比較から、糖の水酸基がアセチル基で保護されていると、光毒性が消失することがわかる。さらに、No.3,4,5の比較から、クロリン誘導体において、金属を導入することにより、光毒性が高くなることがわかった。
一方、S−グルコシド化クロリン誘導体(No.8,9)、S−グルコシド化ポルフィリン誘導体(No.6,7)、O−グルコシドクロリン誘導体(No.15)、S−ガラクシドクロリン誘導体(No.16)は、いずれも市販品のTPPS(No.14)と比べて、高い光毒性を示した。
(2)薬剤濃度0.09μM
表1に示す化合物No.6〜9、14〜16について、上記評価方法に基づいて、薬剤濃度0.09μMのときの光毒性を測定した。結果を図4及び図5に示す。
薬剤濃度0.5μMのときには、S−グルコシド化クロリン誘導体(No.8,9)とS−グルコシド化ポルフィリン誘導体(No.6,7)、O−グルコシド化クロリン誘導体(No.15)との比較において光毒性の差違は認められなかったが、薬剤濃度0.09μMでは、図4に示すように、糖連結クロリン誘導体と糖連結ポルフィリン誘導体との間で顕著な差違が認められた。つまり、No.6,7,14とNo.8,9との比較からわかるように、薬剤濃度0.09μMの濃度では、ポルフィリン誘導体における糖連結による光毒性の向上効果が認められなかったが、クロリン誘導体では、薬剤濃度0.09μMの濃度において、糖連結による顕著な光毒性向上効果が認められた。
また、No.8、9と15の比較から、糖連結クロリン誘導体として0.5μMのときには光毒性に差違は認められなかったが、0.09μMでは、S−グリコシル化クロリン誘導体とO−グリコシル化クロリン誘導体との間で光毒性に差違が認められ、Sグリコシル化クロリン誘導体(No.8,9)の方が光毒性が高かった。
さらに、図5から、薬剤濃度0.09μMのときには、S−グリコシド化クロリン誘導体において、連結する糖がグルコースの場合(No.8)の方が、ガラクトースの場合(No.16)よりも光毒性が高く、同程度の光毒性効果を得るために必要な量が、グルコース連結クロリン誘導体では少なくて済むことがわかる。
〔暗所における細胞毒性比較〕
上記実施例1,2の化合物(No.8、9)を、光照射しない(光量0J/cm)ときの細胞生存率を光毒性評価方法に準じて調べた。結果を図6に示す。
図6からわかるように、いずれの化合物も、暗所下では、細胞毒性がないことがわかる。
〔連結基介在クロリン誘導体の製造〕
実施例4;HTFPC−SCHCHOAcGlc
実施例1の(3)S−グルコシル化工程において、2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルチオアセチル(AcGlcSAc)に代えて、2−(S−アセチル)メルカプトエチル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(AcGlcOCHCHSAc)を用いた以外は、実施例1と同様にして、下記構造を有するS−グリコシド化クロリン誘導体を得た。
Figure 0005290142
得られたHTFPC−SCHCHOAcGlcをESI−MSによりスペクトル測定した(イオン化モードESI、スペクトル記録間隔1.0sec、オリフィス電圧掃引200V)。得られたスペクトルを図7に示す。目的化合物の平均質量である2585に該当するピーク(2584.50012)が認められた。また、図7に示すマススペクトルと、HTFPC−SCHCHOAcGlcをシミュレーションして得られるマススペクトル(図8参照)とは、主たるピーク(2583.5、2588.5、2589.5)がほぼ一致していた。従って、HTFPC−SCHCHOAcGlcが合成されていることが確認できる。実施例1と同様にしてアセチル保護基を除去すれば、目的とするクロリン誘導体を合成できる。
〔他のクロリン誘導体の製造〕
実施例5:HTFPC’−SAcGlc
上記で合成したHTFPP1gをトルエン20mlに溶かし、60℃で加熱しながら、臭化ベンジル9.76mL、水素化トリブチル錫24mL、アゾイソブチロニトリル1.7gを17日かけて加えた。ヘキサンを分離液として用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて粗生成物から目的成分を分画し、さらにゲル浸透クロマトグラフ分収装置により目的成分を集めた。さらにクロロホルムとアセトニトリルから再結晶して、下記構造を有する、10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)−2−ベンジルクロリン(HTFPC’と略記)35mgを得た。
Figure 0005290142

TFPC’を用いて実施例1と同様にして、S−グルコシル化を行ない、下記構造を有するS−グリコシド化クロリン誘導体(HTFPC’−SAcGlc)を得た。
Figure 0005290142
得られたHTFPC’−SAcGlcをESI−MSによりスペクトル測定した(イオン化モードESI、スペクトル記録感覚1.0sec、オリフィス電圧掃引150V)。得られたスペクトルを図9に示す。目的化合物の理論平均質量である2444.13に該当するピーク(2443.43072)が認められた。また、図9に示すマススペクトルと、HTFPC’−SAcGlcをシミュレーションして得られるマススペクトル(図10参照)とは、主たるピーク(2442.5、2444.5、2445.5、2446.5)がほぼ一致していたことから、HTFPC’−SAcGlcが合成されていることが確認できる。実施例1と同様にしてアセチル保護基を除去すれば、目的とするクロリン誘導体を合成できる。
実施例6:糖が5分子連結したS−グルコシル化クロリン誘導体(HTFPC−SGlc
実施例1において、HTFPC−SAcGlcを合成した際に得られた副生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒は酢酸エチル:ヘキサン=3:2、HTFPC−SAcGlc(Rf値=0.18)、HTFPC−SAcGlc(Rf値=0.11))で分離、精製した。目的のフラクションについて、ESI−MSの測定を行なったところ、HTFPC−SAcGlcに由来するピークは確認されず、目的化合物(HTFPC−SAcGlc)の平均質量である2752.51及び2774.49に該当するピーク(2751.53及び2773.8747)のみが認められ、1分子内にグルコース5分子が連結したS−グルコシル化クロリン誘導体が得られていることが確認できた。
得られたHTFPC−SAcGlc(479mg)をジクロロメタン(30ml)とメタノール(30ml)の混合溶媒に溶解した後、ナトリウムメトキシド(188mg)を添加して、窒素雰囲気下、25℃で24時間攪拌した。得られた反応混合物を冷却し、次いで酢酸で中和して、減圧濃縮した。得られた沈殿をろ別し、水洗後、真空乾燥してHTFPC−SGlcを得た(収量326mg)。ESI−MS測定を行なったところ、HTFPC−SGlcの平均質量である1912.30及び1934.28に該当するピーク(1911.58及び1933.55)が認められ、HTFPC−SGlcであることが確認できた。
〔S−グリコシル化クロリンの他の金属錯体の製造〕
実施例7:
実施例1で製造したHTFPC−SGlcのメタノール溶液に塩化亜鉛を添加し、30℃で24時間反応させた。反応後、ESI−MSによりスペクトル測定したところ、HTFPC−SGlcのNa溶液で主として認められる1758m/zのピークが低くなり、1820.4のピークが現われた。このピークは、HTFPC−SGlcの亜鉛錯体の理論平均質量のピークとほぼ一致していた。
実施例8:
実施例1で製造したHTFPC−SGlcと塩化マンガンとを、メタノール(10ml)と水(10ml)の混合溶媒中で、80℃で24時間反応させた。反応後、ESI−MSによりスペクトル測定したところ、1788.29のピークが現われた。このピークは、HTFPC−SGlcのマンガン錯体の理論平均質量のピークとほぼ一致していた。
本発明の新規な糖連結クロリン誘導体及びその金属錯体は、水溶性で組織透過性がよく、光照射により強い光毒性を示すので、PDT治療用薬剤の有効成分として有用である。さらに、本発明の新規な糖連結クロリン誘導体は、従来よりも長波長領域に強い吸収ピークを有するので、従来のPDT治療用薬剤よりも適用範囲の拡大が可能となる。

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体。
    Figure 0005290142
    式中、X〜X20は、互いに独立して、F−、グルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース―O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基で、且つX〜X20のうち少なくとも1つはグルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1〜6の炭化水素基である)、
    及びRは、互いに独立して水素原子、低級アルキル又はQ−(CH −(ここで、Qは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、又はシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数である)であり、互いに環を形成していてもよい。
  2. 下記一般式(1)’で示される請求項1に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
    Figure 0005290142
    式中、X、X、X、及びXは、互いに独立して、F−、グルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基で、且つX、X、X、及びXのうち少なくとも1つはグルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1〜6の炭化水素基である)、
    及びRは、互いに独立して水素原子、低級アルキル又はQ−(CH −(ここで、Qは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、又はシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数である)であり、互いに環を形成していてもよい。
  3. 前記(1)’式中、X、X、X、及びXは、グルコース−S−である請求項2に記載のクロリン誘導体。
  4. 下記一般式(2)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体。
    Figure 0005290142
    式中、X〜X20は、互いに独立して、F−、グルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基で、且つX〜X20のうち少なくとも1つはグルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1〜6の炭化水素基である)、
    及びRは、互いに独立して水素原子、低級アルキル又はQ−(CH −(ここで、Qは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、又はシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数である)であり、互いに環を形成していてもよく、Mは金属である。
  5. 下記一般式(2)’で示される請求項4に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
    Figure 0005290142
    式中、X、X、X、及びXは、互いに独立して、F−、グルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基で、且つX、X、X、及びXのうち少なくとも1つはグルコース−S−、グルコース−Z−S−、及びグルコース−O−Z−S−からなる群から選ばれる1つの基であり(ここで、Fはフッ素原子、Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Zは炭素数1〜6の炭化水素基である)、
    及びRは、互いに独立して水素原子、低級アルキル又はQ−(CH −(ここで、Qは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、又はシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数である)であり、互いに環を形成していてもよく、Mは金属である。
  6. 前記(2)’式中、X、X、X、及びXは、グルコース−S−である請求項5に記載のクロリン誘導体。
  7. 前記金属Mが遷移金属である請求項4〜6のいずれかに記載のクロリン誘導体。
  8. 前記金属Mが、Pt、Pd、及びAuからなる群より選ばれる1種である請求項4〜6のいずれかに記載のクロリン誘導体。
  9. 前記グルコースは、D体である請求項1〜8のいずれかに記載のクロリン誘導体。
  10. 請求項1〜のいずれかの化合物を有効成分として含有する医薬。
  11. 請求項1〜のいずれかの化合物を有効成分として含有する、腫瘍又は固形癌の光線力学的治療用剤。
  12. 請求項1〜のいずれかの化合物を有効成分として含有する、皮膚病の光線力学的治療用剤。
  13. 請求項1〜のいずれかの化合物を有効成分として含有し、製薬学的に許容できる固体又は液体状の担体又は賦形剤を含有する医薬組成物。
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