JP2015147758A - 糖類連結クロリン誘導体 - Google Patents

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Masahiko Yamashita
正彦 山下
仲野 靖浩
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靖浩 仲野
陽統 井上
Akimune Inoue
陽統 井上
矢野 重信
Shigenobu Yano
重信 矢野
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Abstract

【課題】殺腫瘍細胞性(光毒性)に優れるS−グリコシル化クロリン誘導体の提供。【解決手段】下式で例示のS−グリコシル化クロリン誘導体。(X1ーX4は、F−又はオリゴ糖−S−のいずれかの基である)【選択図】なし

Description

本発明は、光線力学的療法(Photodynamic therapy;PDT)や光線力学的診断(Photodynamic diagnosis:PDD)において好適に用いることができる、S−グリコシル化クロリン誘導体、および当該クロリン誘導体を有効成分として含有する医薬または診断薬に関する。
光線力学的療法(PDT)は、標的となる疾患組織を有する患者に光感受性物質を投与し、標的となる疾患組織(癌組織、腫瘍組織、皮膚病変部など)に光感受性物質を集積させた後、光感受性物質を励起するに適切な波長の光を照射することにより、標的疾患組織のみを選択的に破壊する治療方法である。この場合、光励起されて活性化した光感受性物質が、近傍の分子状酸素に対して直接的または間接的にエネルギー移動を行い、これによる一重項酸素の生成が標的疾患組織破壊の主要メカニズムであると考えられている。
PDTに用いられる光感受性物質としては、ヘマトポルフィリン誘導体(例えばフォトフリン(登録商標))が良く知られており、既に実用化されている。しかしポルフィリン誘導体の最大吸収波長は約630nmであり、モル吸光係数も小さいため、PDTの治療効果が5〜10mm程度の表層癌に限定されてしまう。
このような課題に対し、クロリン誘導体は最大吸収波長が650〜670nmにあり、モル吸光係数も相対的に大きいため、PDTの治療効果がポルフィリン誘導体の場合よりも標的組織の深部に及ぶという利点があり、近年では光感受性物質としてクロリン誘導体の開発も進んでいる。例えば、タラポルフィンナトリウム(レザフィリン(登録商標))やテモポルフィン(フォスキャン(登録商標))、ベルテポルフィン(ビスダイン(登録商標))などが実用化され、臨床使用量を徐々に伸ばしている。しかしながら、これらの薬剤においては、腫瘍組織への選択蓄積性の不足、また臨床現場での実使用において重要となる薬剤自体の水溶性が不十分といった問題があり、さらなる改良が望まれている。特に腫瘍選択蓄積性の向上は、使用薬剤量の低減、さらに日光過敏症に代表される光線力学療法の副作用抑制につながるため、今後の重要な開発課題である。
このような課題に対し、特許文献1では、テトラフェニルクロリン骨格を有する化合物に糖分子を導入し、ワールブルグ効果を利用した腫瘍細胞親和性に優れる光感受性物質を開示している。さらに特許文献2や非特許文献1では、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(H2TFPP)のA環を還元反応または付加反応に供して誘導されるクロリン誘導体(H2TFPC)に対して、チオエーテル結合を介して糖分子を結合したS−グリコシル化クロリン誘導体を開示し、特にグルコースを連結した5,10,15,20−テトラキス(4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)−2,3−(メタノ(N−メチル)イミノメタノ)クロリン(以下H2TFPC−SGlcと略す)が、インビトロやインビボでのPDT実験において、タラポルフィンナトリウムよりも腫瘍細胞蓄積性が高く、殺腫瘍細胞性(光毒性)に優れ(IC50(50% Inhibition Concentration)が低い)、腫瘍組織の成長抑制効果も高いことが示されている。
特開2000−7693号公報 国際公開第2008/102669号パンフレット
ANTICANCER RESEARCH 31:763−770(2011).
ところがH2TFPC−SGlcは、グルコースが連結されているにも関わらず水溶性が不十分であり、常温の生理食塩水には殆ど溶解しない。そのため、in vitroやin vivoでのPDT実験では、H2TFPC−SGlcを少量のジメチルスルホキシド等に一旦溶解した後、水(または細胞培養液)を加えて水溶液状態にするということになる。故にH2TFPC−SGlcは、臨床現場で患者に適用することが困難である。
水溶性を向上する方法として、新たな親水性官能基を導入するか、糖の水酸基数を増やす方法が考えられる。ところが多糖類であるセルロースは水に不溶であること、またデンプンやアミロースなども常温の水には溶けないことがよく知られており、単純な糖の水酸基数の増加では返って水溶性を低下させるという懸念がある。例えば三糖類でH2TFPCの4つのペンタフルオロフェニル基の1箇所ずつをS−グリコシル化した場合、12個のピラノース環がクロリン環構造を覆い、一種の多糖類の様相を呈してくることが予想されるため、このような構造によって単純に水溶性が向上するか否かは一概には言えない。また糖の単糖結合数の増加に伴い、純度の高いS−グリコシル化クロリン誘導体の合成難易度も高くなることも難点である。
更に、薬物の多くは一般的に脂溶性(親油性)のものが多い。これは多くの薬剤は脂質二重膜からなる細胞膜を通過して薬効を発現するため、細胞膜を通過するためには脂溶性が高い方が有利であるからであり、これはPDT薬剤も例外ではないと推定される。言い換えれば、水溶性を上げることで逆に腫瘍細胞への取り込み性が低下し、薬効の低下も懸念される。
このような化学的推察もあってか、既述の特許文献2には、S−グリコシル化に用いる糖としてペントースまたはヘキソースなどの単糖類、ショ糖、マルトース、ラクトースなどの二糖類、デンプン、アミロース、グリコーゲンなどの多糖類などを挙げているが、好ましい糖類としてはグルコースやガラクトースなどの単糖類であることが開示されている。
前記した従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、常温で優れた水溶性を有することで臨床現場での実使用が可能であり、しかも殺腫瘍細胞性(光毒性)および腫瘍組織の成長抑制効果に優れ、さらに正常細胞による代謝性にも優れるS−グリコシル化クロリン誘導体を提供することである。
本発明者らは、上記の問題を解決するため、S−グリコシル化に用いる糖として、特許文献2では全く言及されていなかったオリゴ糖類を用いた。その結果、オリゴ糖類、特に三糖類のマルトトリオースや四糖類のマルトテトラオースを用いてS−グリコシル化クロリン誘導体を合成し、PDT評価を行ったところ、常温で優れた水溶性を有し、しかも驚くべきことに殺腫瘍細胞性(光細胞毒性)および腫瘍組織の成長抑制効果に優れ、さらに正常細胞による代謝性にも優れるS−グリコシル化クロリン誘導体が得られることを見出し、本発明に至ったのである。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体。
式中、X1〜X20は、互いに独立して、F−または糖−S−のいずれかの基であり、且つX1〜X20の少なくとも一つは糖−S−の基であって(ここでFはフッ素原子、Sはイオウ原子である)、糖は2〜9個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖であり、R5およびR6は互いに独立して水素原子、低級アルキル、またはQ−(CH2)k−(ここでQは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、またはシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数)であり、互いに連結して環構造を形成していても良い。
[2] 下記一般式(2)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体。
式中、X1,X2,X3およびX4は、互いに独立して、F−または糖−S−のいずれかの基であり、且つX1〜X4の少なくとも一つは糖−S−の基であって(ここでFはフッ素原子、Sはイオウ原子である)、糖は2〜9個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖であり、R5およびR6は互いに独立して水素原子、低級アルキル、またはQ−(CH2)k−(ここでQは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、またはシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数)であり、互いに連結して環構造を形成していても良い。
[3] 前記一般式(2)中、X1,X2,X3およびX4が全て糖−S−の基である、[2]に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
[4] 下記一般式(3)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体。
式中、X1,X2,X3およびX4は、互いに独立してF−または糖−S−のいずれかの基であり、且つX1〜X4の少なくとも一つは糖−S−の基であり(ここでFはフッ素原子、Sはイオウ原子である)、糖は2〜9個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖である。
[5] 前記糖が2〜7個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖である、[1]〜[4]のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
[6] 前記糖が3〜7個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖である、[1]〜[5]のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
[7] 前記一般式(3)中、X1,X2,X3,およびX4が全て糖−S−である、[6]に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
[8] 前記糖がマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキソースまたはマルトヘプタオースである、[7]に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
[9] 前記糖が三糖類または四糖類である、請求項1〜8のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
[10] 前記糖がマルトトリオースまたはマルトテトラオースである、[9]に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
[11] 前記糖がD体である、[1]〜[10]のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体、および薬剤学的に許容できる添加物を含有する、医薬組成物。
[13] 腫瘍もしくは固形癌、または加齢黄斑変性症、あるいは皮膚疾患の、治療、診断または検出のための、[12]に記載の医薬組成物。
[14] 腫瘍もしくは固形癌、または加齢黄斑変性症、あるいは皮膚疾患の診断または検出のための、[12]に記載の診断用組成物。
本発明のオリゴ糖を連結したS−グリコシル化クロリン誘導体は、常温で優れた水溶性を有するため臨床現場で治療薬として使用することが容易となり、しかも光照射による殺腫瘍細胞性(光細胞毒性)および腫瘍組織の成長抑制効果に優れ、また代謝性も良好であるため、インビトロまたはインビボにて、標的となるウィルス、細菌、若しくはこれらの感染細胞、腫瘍細胞、または腫瘍状組織と接触させた後、前記クロリン誘導体に吸収される波長の光線を照射することにより、前記標的を破壊する用途に適用することができる。従って、本発明は、上記クロリン誘導体を有効成分とする医薬、特に、腫瘍若しくは固形癌、または加齢黄斑変性症、あるいは皮膚病の光線力学的治療用薬、光線力学診断薬として用いることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」とも言う。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態は、新規な光感受性物質として、下記一般式(1)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体を提供する。
式中、X1〜X20は、互いに独立して、F−または糖−S−のいずれかの基であり、且つX1〜X20のうち少なくとも1つは糖−S−であり、糖は2〜9個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖である。ここで、Fはフッ素原子、Sはイオウ原子である。また、クロリン環のメソ位に結合している4個のフェニル基において、各フェニル基に2個以上の糖−S−の基が連結されていてもよい。
好ましくは、下記一般式(2)に示すように、クロリン環に対してフェニル基のパラ位にあるX1、X2、X3、およびX4の少なくとも一つが糖−S−の基で、オルト位およびメタ位はフッ素原子であり、より好ましくは、X1、X2、X3、およびX4の全てが糖−S−である。
本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体における糖−S−の基とは、糖がSに間接的に連結されていてもよいが、直接連結されていることが好ましい。ここで直接連結とは、例えば糖のアノマー位のC(炭素原子)とS(イオウ原子)が連結している構造(−C−S−)や、糖のアノマー位の水酸基のO(酸素原子)とS(イオウ原子)が連結しているような構造(−C−O−S−)を指し、特に前者が好ましい。これに対し間接的な連結とは、前記の−C−S−結合のC−S結合間、または前記−C−O−S−結合のO−S結合間に、原子または官能基を有する構造を指す。
本実施形態の糖−S−の基において、糖は、2〜9個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖である。グリコシド結合する単糖同士は、同じでもよく、異なっていてもよい。多くの種類の癌に効果がある等の観点からは、グリコシド結合した単糖としては、少なくとも一つはグルコースであることが好ましい。また癌の種類によっては、少なくとも一つはガラクトースであることが好ましいであろう。また、単糖同士のグリコシド結合は、α−結合であっても、β−結合であってもよい。
本実施形態の糖−S−の基の糖として、二糖類としては、ショ糖、マルトース、ラクトース、オリゴ糖としては、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、パノースなどの三糖類、マルトテトラオース、アカルボース、スタキオースなどの四糖類、マルトペンタオースなどの五糖類、マルトヘキソースなどの六糖類、さらに七糖類〜九糖類が例示される。ただしグリコシド結合した単糖数が増えすぎるとS−グリコシル化クロリン誘導体の水溶性が低下し、また合成および合成物の精製難易度も高くなる。従ってオリゴ糖は、光感受性物質の水溶解性、合成難易度およびその精製難易度、および生体内細胞の脂質二重膜透過性のバランスから、好ましくは二糖類または三糖類〜七糖類であり、より好ましくは三糖類〜六糖類であり、特に好ましくは三糖類〜五糖類であり、特に三糖類と四糖類が好ましい。さらに三糖類としてはマルトトリオース、四糖類としてはマルトテトラオースが好ましい。糖は、D体であってもよいし、L体であってもよいが、D体が好ましく用いられる。
また糖−S−の基において、糖が有するOH基の一部が、水溶性や薬効に実質的に影響を与えない範囲であれば、保護基によって保護されている状態であっても構わない。ただし、保護基で保護されているOH基が多くなると、S−グリコシル化クロリン誘導体の水溶性が低下するし、癌細胞による糖認識効果も低減する。従って、S−グリコシル化クロリン誘導体が有するOH基の脱保護基化率は80〜100%が好ましく、90〜100%がより好ましく、95〜100%が特に好ましい。ここで、保護基としてはアセチル基が好ましく用いられる。
一般式(1)中のX1〜X20、または一般式(2)中のX1〜X4のうち、2つ以上が糖−S−に置換されている場合、連結される糖の種類は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、三糖類と四糖類といった異なる単糖結合数の糖が連結されていてもよい。連結される糖の種類が異なるS−グリコシル化クロリン誘導体を得るには、H2TFPC(クロリン誘導体、実施例1に記載)とそれに連結する糖分子の反応モル比を調節しながら、多段反応を行うことで得ることができる。例えば、一般式(2)中のX1〜X4のうち、2つが「マルトトリオース−S−」であり、残り2つが「マルトテトラオース−S−」であるものを合成する場合は、まずチオアセチルマルトトリオースパーアセテート/H2TFPC=2/1のモル比で2分子置換体を合成し、引き続いてチオアセチルマルトテトラオースパーアセテート/2分子置換体=2/1のモル比で目的とする4分子置換体を合成することができる。
糖の種類が全て同一の場合は、合成が容易となるため好ましく、より好ましくは置換されている糖−S−の基に含まれている糖の全てが三糖類または四糖類であり、特にマルトトリオースやマルトテトラオースであることが好ましい。
上記一般式(1)および(2)中、R5およびR6は、水素原子または互いに独立した有機基である。
前記有機基としては、例えば、低級アルキルまたはQ−(CH2)k−である。Qは、低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノまたはシクロアルキル基である。ここで、低級アルキルとは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル等の炭素数1〜5の直鎖または分岐アルキルをいう。kは0〜3の整数である。
5とR6が互いに環を形成していてもよく、例えば、R5とR6で、ポルフィリン環の1〜24番号法でA環の2位と3位に結合するイミノ基(第3級アミン)を構成していてもよい。特にR5とR6が互いに環を形成した、一般式(3)に示す構造が好ましい。
本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体は、クロリン環の内側にある四つの窒素原子が金属イオンの配位座として利用されていても構わない。この場合の金属は用途に応じて適宜選択され、特に限定されるものではないが、具体的には、遷移金属、II族、III族、IV族の金属から選ばれ、好ましくは、Pt、Pd、Au、Al、Zn等の遷移金属であり、より好ましくはPt、Pd、Auといった貴金属である。金属の導入により光照射下での細胞毒性が高められ、特に、貴金属の導入の場合に大きな細胞毒性向上効果が得られることがある。なお、クロリン環への金属の導入方法は、特許文献2に記載された方法に準ずることで可能となる。
以上のような構造を有するS−グリコシル化クロリン誘導体は、暗所では細胞毒性は示さないが、光照射下で強い細胞毒性を示すことができる。そして常温で優れた水溶性を示すため、医薬品としての実用性を有し、しかも腫瘍細胞蓄積性が良好であり、これに伴い殺腫瘍細胞性(光毒性)および腫瘍組織の成長抑制効果に優れ、さらに正常細胞による代謝性にも優れるS−グリコシル化クロリン誘導体となる。
〔用途〕
本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体は、暗所下では細胞毒性を示さないが、光照射下で強い細胞毒性を示すことを利用して、標的となる生物材料と、暗所下でインビトロまたはインビボで接触させて細胞内に取り込ませた後、当該クロリン誘導体の吸収波長の光を照射することにより、標的を破壊する用途に用いることができる。
ここで、標的としては、ウィルスまたはバクテリアまたはこれらの感染細胞、腫瘍組織、腫瘍状組織、新生血管などが挙げられ、特に腫瘍組織、新生血管に親和性を有し、腫瘍部、新生血管に集積できることから、腫瘍、新生血管の破壊に用いることができる。
従って、本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体は、悪性腫瘍(maligant tumor)に分類される癌(cancer)および新生血管に起因する滲出型加齢黄斑変性症の治療薬として利用できる。本実施形態で対象とする悪性腫瘍は、上皮性悪性腫瘍だけでなく、肉腫(sarcoma)に分類されるような非上皮組織を発生母地とするような悪性腫瘍も含む。特に腫瘍細胞が塊状、充実性に増殖する固形癌(solid carcinoma)、光が届く表層癌の治療に有用である。具体的には、食道癌、肺癌、胃癌、子宮頸癌、子宮体癌等の子宮癌、皮膚癌、前立腺癌、腎臓癌などが挙げられる。皮膚癌には、原発性(扁平上皮癌、基底細胞癌、表皮付属機癌)の他、内臓癌の皮膚転移も含まれる。
また、本実施形態で対象とする加齢黄斑変性症は、網膜の中心にある黄斑部の機能が老化により障害される病気であり、脈絡膜から発生する新生血管の有無で「萎縮型」と「滲出型」に分けられる。本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体は、このうち網膜の下にある脈絡膜に新生血管が生じ、黄斑部に出血、網膜剥離、浮腫などが出現する滲出型加齢黄斑変性症の治療薬として利用できる。
加えて本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体は、悪性腫瘍だけでなく、良性腫瘍に対しても親和性を有することから、局所投与により、日光角化症、重症ニキビ、皮膚乾癬症等の皮膚病の光線力学的治療薬としての利用も可能である。
さらに本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体は、その腫瘍集積性を利用して、癌の光線力学的診断(Photodynamic diagnosis:PDD)に利用することも可能である。PDDとは、光感受性物質をがん組織に選択的に蓄積させた後、特定波長の光を照射して発せられる蛍光色を観察することによって、がん部位を特定する診断方法である。PDDは簡便で診断時間も短く、さらに生体侵襲性が少ない癌診断方法である。さらに本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体は、その腫瘍集積性および腫瘍に対する親和性を利用して、腫瘍の検出に利用することも可能である。
〔医薬組成物〕
本実施形態の医薬組成物は、上記本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体を有効成分として含有し、製薬学的に許容できる添加物、例えば固体または液体状の担体、賦形剤を含有する。
有効成分であるS−グリコシル化クロリン誘導体は、上述のように、優れた水溶性を有し、しかも細胞透過性に優れ、光毒性が高いので、腫瘍または固形癌の光線力学的治療用剤として好適に使用できる。
本実施形態の組成物の有効成分となる化合物は、カテーテル、静脈内または筋肉内注射により投与でき、またその他の非経口的な経路で投与することができる。また、クリーム状の薬剤組成物とすることで経皮的にも投与できる。その他、体内の深部の腫瘍組織へ直接に局所注入することができる。
本実施形態で用いられる担体は、製剤の種類に応じて適宜選択される。注射用製剤で調製する場合、有効成分の化合物を含む無菌の水溶液または分散液あるいは無菌の凍結乾燥剤の形に製剤化することができる。液体担体としては、例えば、水、生理食塩水、エタノール、含水エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油が好ましい。
本実施形態の医薬組成物には、有効成分とともに、ラクトース、スクロース、第2リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース等の希釈剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクのような滑剤;デンプン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびその誘導体等の結合剤を含み得る。
本実施形態における一製剤当たりの有効成分の含量は、治療すべき対象や用法によって適宜とすることができるが、例えば、S−グリコシル化クロリン誘導体の量として、1〜2000mgとすることができ、5〜1000mgとしてもよく、10〜500mgとしてもよい。
本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体の投与量は、治療すべき対象や目的によって異なるが、一般に、S−グリコシル化クロリン誘導体の量として、腫瘍の診断または検出、および腫瘍治療のためには0.1〜30mg/kg、好ましくは0.2〜20mg/kgが目安となる。
有効成分であるS−グリコシル化クロリン誘導体は、その光細胞毒性が高いことから、従来品(フォトフリン(登録商標)やレザフィリン(登録商標))よりも投与量を少なくして、同等以上の効果を得ることを期待できる。このことは、代謝、排泄に要する時間が短くて済むことを意味し、光線力学的療法の活用利便性を高める。
腫瘍の治療のためには、S−グリコシル化クロリン誘導体を投与した後、治療すべき部位に、該当化合物の吸収帯を含む光線を照射する。具体的には、500nm以上の光線照射により一重項酸素を発生して、目的の細胞毒性を発揮することができるが、好ましくは最大吸収波長の光の割合が高い光(640〜665nm)を照射することである。
照射源としては、LED、レーザー、ハロゲンランプなどが用いられる。レーザーとしては、色素レーザー、半導体レーザー、アルゴンレーザーなど、励起に必要な波長の光線が得られるものであればよい。
本実施形態のS−グリコシル化クロリン誘導体は、ポルフィリン誘導体と比較して相対的に吸光係数が大きいため、照射する光線の強度は、通常用いる光増感剤に比べて弱くても良い。従って、本実施形態のクロリン誘導体を用いる光線力学的療法は、療法を受ける生体への負担がより少なくなる。具体的には、光線照射量は、1〜100J/cm2であることができる。
以下に本実施形態を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
1.マルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal 3 −chlorin)の合成
(1)H2TFPCの合成(クロリン誘導体の合成)
1200mgのH2TFPP(1.20mmol;Frontier Scientific社製)、240mgのN−メチルグリシン(2.64mmol)および240mgのパラホルムアルデヒド(7.92mmol)を、300mLのトルエンに溶解し、窒素雰囲気下で16時間加熱還流した。この間、N−メチルグリシン(約240mg)とパラホルムアルデヒド(約240mg)を反応開始から2時間毎に追添した。16時間後、反応混合物を冷却し溶媒を減圧留去した。クロロホルム(100mL)を加え、水洗し過剰量のN−メチルグリシンとパラホルムアルデヒドを除去した。クロロホルム溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を中圧分取液体クロマトグラフ装置(山善株式会社製 EPCLC−W−Prep 2XY A−Type)を用い、未反応原料(H2TFPP)、目的物(H2TFPC)、副反応物(イソバクテリオクロリン誘導体)のフラクションに分離し(溶離液はクロロホルムと酢酸エチル)、目的物フラクション(深緑色)から溶媒除去、減圧乾燥することにより、H2TFPC(5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)−2,3−〔メタノ(N−メチル)イミノメタノ〕クロリン)を得た。収量595mg、収率55%。
構造同定は、J.Org.Chem.2005,70,2306−2314に基づき、1H−NMR(400MHz,重クロロホルム溶媒)にて行った。
(2)1β-チオアセチルマルトトリオースパーアセテート[Ac−Mal3−SAc]の合成
(2−1)マルトトリオースパーアセテート[Ac−Mal3]の合成
マルトトリオース[Mal3]3.00g(5.95mmol:和光純薬株式会社製) をピリジン15.6mL(193mmol)に30℃で溶解し、これを0℃に冷却後、無水酢酸10.4mL(111mmol)とジメチルアミノピリジン0.06g(0.49mmol)を加えた。氷浴を外し、そのまま12時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー法(TLC;トルエン/アセトン=2/1)で、原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.54)にて反応終了を確認した。反応液に無水エタノール(45mL)を加え、液体窒素でトラップしながら内容物を減圧濃縮した後、クロロホルム(90mL)に溶解し、このクロロホルム溶液を、2N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の各100mLで順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、クロロホルムを減圧留去し、真空乾燥後に白色固体のマルトトリオースパーアセテートAc−Mal3(5.70g)を得た。
構造同定は、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.44,4864−4879(2006)に基づき、1H−NMRスペクトル(400MHz,重クロロホルム溶媒)にて行った。
(2−2)1α-ブロモマルトトリオースパーアセテート[Ac−Mal3−Br]の合成
上記(2−1)で合成したマルトトリオースパーアセテート5.38g(5.56mmol)を超脱水ジクロロメタン50mL(和光純薬株式会社製)に溶解した後、臭化水素の25%酢酸溶液27mL(108mmol)を加え、窒素下、室温で30分撹拌した。TLC(ヘキサン/酢エチ=1/2)にて、原料であるAc−Mal3(Rf=0.33)が消費され、新規スポットの生成(Rf=0.47)を確認した。反応混合物を、ジクロロメタン80mLと水80mLで分配し、水層はジクロロメタンで再抽出(80mL×2回)した。合わせたジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mLで2回洗浄し、さらに飽和食塩水200mLで洗浄した。ジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンの減圧留去、真空乾燥を行い、白色固体の1α-ブロモマルトトリオースパーアセテート(Ac−Mal3−Br)を収量4.57g、収率84%で得た。
構造同定は、Angewandte Chemie Int.Ed,2004,43,827(Supporting Information for Angew.Chem.Int.Ed.Z52975)に基づき、1H−NMRスペクトル(400MHz,重クロロホルム溶媒)にて行った。
(2−3)1β-チオアセチルマルトトリオースパーアセテート[Ac−Mal3−SAc]の合成
上記(2−2)で合成した1α-ブロモマルトトリオースパーアセテート4.23g(4.28mmol)をドライアセトン15ml(和光純薬株式会社製)に溶解し、チオ酢酸カリウム0.98g(8.56mmol)を加え、窒素下、室温で21時間撹拌した。溶媒留去と真空乾燥後、反応混合物をジクロロメタン15mLと飽和食塩水30mLで分配した。さらに水層はジクロロメタン15mLで3回再抽出した。合わせたジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し(50mL×1回)、pH8であることを確認した。さらに飽和食塩水50mLで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去と真空乾燥を行って、淡黄色固体4.05g(収率96%)を得た。
構造同定は、Angewandte Chemie Int.Ed,2004,43,827(Supporting Information for Angew.Chem.Int.Ed.Z52975)に基づき、1H−NMRスペクトル(400MHz,重クロロホルム溶媒)にて行った。
(3)H2TFPCとAc−Mal3−SAcの連結によるマルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal3−chlorin)の合成
(1)で合成したH2TFPCの200mg(193mmol)、上記(2−3)で合成した1β-チオアセチルマルトトリオースパーアセテート(Ac−Mal3−SAc)の762mg(778mmol)およびジエチルアミン4mL(38.6mmol)をジメチルホルムアミド40mLに溶解し、氷水浴上で2時間撹拌、さらに室温で17時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー法(TLC;トルエン/アセトン=2/1)で原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.43)を確認し、反応終了とした。反応液から溶媒を減圧留去後、クロロホルム(40mL)を加え、十分に水洗後、無水硫酸ナトリウムでクロロホルム層を乾燥し、溶媒を減圧留去した。粗生成物をリサイクル分取HPLC装置(日本分析工業株式会社製LC−9130II NEXT、移動相はクロロホルム)にてリサイクル分離し、メインフラクションを分取した。溶媒除去することでパーアセチル化マルトトリオース連結フッ化クロリン(Ac−Mal3−chlorin)の319.6mgを得た。
得られた化合物のフッ素NMRを測定し、Bioconjugate Chem.Vol.21,No.11,2010.に記載のグルコース連結フッ化クロリン(5,10,15,20−テトラキス(4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)−2,3−(メタノ(N−メチル)イミノメタノ)クロリン)のフッ素NMRのスペクトルデータと比較することで、フェニル基のパラ位が置換された構造であることが確認できた。
19F−NMR(376MHz,DMSO−d6,C66=−163.60ppm):δ(ppm)=−133.62(4F,Ar−m−F),−134.76(4F,Ar−m−F),−138.59(2F,Ar−o−F),−140.60(6F,Ar−o−F).
続いて、得られたパーアセチル化マルトトリオース連結フッ化クロリン(Ac−Mal3−chlorin)の319.6mg(67.9μmol)を超脱水ジクロロメタン35mL(和光純薬株式会社製)と超脱水メタノール140mL(和光純薬株式会社製)の混合溶媒に溶解した。これにナトリウムメトキシド442mg(8.2mmol)を加えた後、窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌し、脱アセチル化反応を行った。薄層クロマトグラフィー法(TLC;水/アセトニトリル=1/1)で原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.47)の確認にて反応終了を確認した。得られた反応液を氷水浴上で冷却しながら酢酸で中和した後、溶媒を減圧留去した。得られた化合物を蒸留水175mlに溶解し、再生セルロース膜(スペクトラムラボラトリーズ社製,Spectra/Por6 Dialysis Membrane MWCO:1000)を用いて2日間透析し、脱塩した。凍結乾燥後、さらに真空乾燥して、マルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal3−chlorin)を108mg得た。
得られた化合物のLC/MS法による解析結果から、完全脱アセチル化体(M)が62.3%(LCエリア面積)、アセチル基が1個残った構造体(M+1Ac)が20.2%、アセチル基が2個残った構造体(M+2Ac)が10.7%、アセチル基が3個残った構造体(M+3Ac)が2.1%、アセチル基が4個残った構造体(M+4Ac)が1.6%で検出された。従って、得られたMal3−chlorinの純度は96.9%、脱アセチル化率は98.6%である事が分かった。
MS:m/z=1525.36[M+H+NH42++1017.24[M+2H+NH43+(M,62.3%),m/z=1546.36[M+H+NH42++1031.24[M+2H+NH43+(M+1Ac,20.2%),m/z=1567.37[M+H+NH42++1045.25[M+2H+NH43+(M+2Ac,10.7%),m/z=1588.37[M+H+NH42++1059.25[M+2H+NH43+(M+3Ac,2.1%),m/z=1609.38[M+H+NH42++1078.93[M+2H+NH43+(M+4Ac,1.6%).m/z([M+H]+); calcd.3032.68 for C119142165604,found.3032.7;UV(H2O):λ(nm)=413,510,600,and 652.
なおLC/MS装置として、液体クロマトグラフ装置(LC)はWaters社製UPLC(カラムはPhenomenex社製Kinetex 2.6u XB−C18 100A)を用い、移動相は10mM酢酸アンモニウム水溶液/メタノール=60/40〜0/100、検出は404nmを用いた。質量分析装置(MS)は、Waters社製Synapt G2を用い、イオン化法はESI+、スキャンレンジはm/z=500〜3000で行った。
2.マルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal 3 −chlorin)の水溶性評価
5.0mgのMal3−chlorinに少量の蒸留水(0.135mL)を加えたところ、Mal3−chlorinは容易に全て溶解した。この結果、Mal3−chlorinの水溶性は高く、水への溶解度は37mg/mL以上であることが分かった。
医薬品として実用化されているフォトフリン(登録商標)は、75mgを5%ブドウ糖注射液30mLに溶解して使用する。この場合の濃度は2.5mg/mLである。またレザフィリン(登録商標、一般名はタラポルフィンナトリウム)は、100mgを生理食塩液4mLに溶解して使用する。この場合は25mg/mL。従って、Mal3−chlorinは実用上、十分な溶解性を有していることが分かる。結果を表1に示す。
3.マルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal 3 −chlorin)の光毒性評価
光毒性評価にはIC50(Half maximal(50%)inhibitory concentration)を用いることとし、以下の手順で測定した。
ヒト胃癌由来細胞であるMKN45(JCRB細胞バンクより入手して6か月間継代培養したもの)およびMKN28(株式会社免疫生物研究所より入手して6か月間継代培養したもの)を、それぞれ96穴プレートの所定数量のwellに5×103個/well播種し(FBSを10%含むRPMI1640培地、100μL)、5%CO2存在下、37℃で24時間培養した。次にそれぞれのwellに、マルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal3−chlorin)を異なる濃度で含む同培地溶液を100μL加え、各wellを所定の薬剤濃度に調整し、4時間培養した後、100μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄した後、再度100μLのPBSを加えた。その後、660nmのLED光源(30.8mW/cm2)を用いて8分40秒光照射した(16J/cm2)。照射後、PBSを取り除き、2%FBSを含むRPMI1640培地を100μL加え、24時間培養した。
培養後、Cell Counting kit−8(Dojindo Laboratories:生細胞数測定キット)を用い、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定することで、Mal3−chlorinを添加していない場合に対する相対値としての細胞生存率を算出した。なお測定はn=8で行い、8回で得た値の最大値と最小値を除き、平均値をIC50の値とした。
マルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal3−chlorin)のIC50は、それぞれ1.3μmol/L(MKN45)および0.70μmol/L(MKN28)であった。また比較例1と比較するため、Mal3−chlorinを加えて細胞培養する際の培地に1%DMSO(ジメチルスルホキシド)を加え、同様にIC50の測定も行った。この場合のIC50は、それぞれ0.79μmol/L(MKN45)および1.0μmol/L(MKN28)であり、培地に1%DMSOを含んでいてもIC50の値に大きな影響はないことが分かった。得られた結果を表1に示す。
表1より、Mal3−chlorinとGlc−chlorin(比較例1)のIC50は、いずれもタラポルフィンナトリウムのIC50(比較例2)よりも有意に小さいことが分かった。これは両者が優れた光毒性(光腫瘍細胞毒性)を有することを意味する。
さらにMal3−chlorinは、光毒性に優れるだけでなく、Glc−chlorinでは実現できない優れた水溶性を有することが分かった。水溶性が良好になることで腫瘍細胞の細胞膜透過性が低下し、薬効の低下も懸念されたが、Mal3−chlorinは水溶性と細胞膜透過性のバランスを両立する優れたPDT用光感受性物質であることが分かった。
[実施例2]
1.マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal 4 −chlorin)の合成
(1)1β-チオアセチルマルトテトラオースパーアセテート[Ac−Mal4−SAc]の合成
(1−1)マルトテトラオースパーアセテート[Ac−Mal4]の合成
マルトテトラオース[Mal4]5.00g(7.50mmol:和光純薬株式会社製) をピリジン24.56mL(310mmol)に30℃で溶解し、これを0℃に冷却後、無水酢酸18.11mL(177mmol)とジメチルアミノピリジン0.1g(0.79mmol)を加えた。氷浴を外し、そのまま12時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー法(TLC;トルエン/アセトン=2/1)で、原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.63)にて反応終了を確認した。反応液に無水エタノール(60mL)を加え、液体窒素でトラップしながら内容物を減圧濃縮した後、クロロホルム(100mL)に溶解し、このクロロホルム溶液を、2N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の各125mLで順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、クロロホルムを減圧留去し、真空乾燥後に白色固体のマルトテトラオースパーアセテートAc−Mal4(10.15g)を得た。構造同定は、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.44,4864−4879(2006)に基づき、1H−NMRスペクトル(400MHz,重クロロホルム溶媒)にて行った。
(1−2)1α-ブロモマルトテトラオースパーアセテート[Ac−Mal4−Br]の合成
上記(1−1)で合成したマルトテトラオースパーアセテート9.56g(7.62mmol)を超脱水ジクロロメタン100mL(和光純薬株式会社製)に溶解した後、臭化水素の25%酢酸溶液37mL(148mmol)を加え、窒素下、室温で30分撹拌した。TLC(ヘキサン/酢エチ=1/2)にて、原料であるAc−Mal4(Rf=0.43)が消費され、新規スポットの生成(Rf=0.55)を確認した。反応混合物を、ジクロロメタン50mLと水150mLで分配し、水層はジクロロメタンで再抽出(50mL×2回)した。合わせたジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mLで2回洗浄し、さらに飽和食塩水200mLで洗浄した。ジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンの減圧留去、真空乾燥を行い、白色固体の1α-ブロモマルトテトラオースパーアセテート(Ac−Mal4−Br)を収量8.7g、収率90%で得た。得られた化合物の1H−NMRを測定し、Angewandte Chemie Int.Ed,2004,43,827(Supporting Information for Angew.Chem.Int.Ed.Z52975)に記載の1α-ブロモマルトトリオースパーアセテート[Ac−Mal3−Br]の1H−NMRのスペクトルデータにおける6.53ppmのピーク(ピラノース環のアノマー位の水素に帰属される)に対応する、6.50ppmのピークの出現を確認することで、ピラノース環のアノマー位のアセチル基がBr基に置換された構造であると判断した。
1H−NMR(400MHz,重クロロホルム溶媒,テトラメチルシラン=0ppm):δ(ppm)=2.00-2.20(39H,13×OAc),3.92-5.60(27H),6.50(1H).
(1−3)1β-チオアセチルマルトテトラオースパーアセテート[Ac−Mal4−SAc]の合成
上記(1−2)で合成した1α-ブロモマルトテトラオースパーアセテート8.4g(6.69mmol)をドライアセトン50ml(和光純薬株式会社製)に溶解し、チオ酢酸カリウム1.53g(13.4mmol)を加え、窒素下、室温で21時間撹拌した。溶媒留去と真空乾燥後、反応混合物をジクロロメタン30mLと飽和食塩水60mLで分配した。さらに水層はジクロロメタン30mLで3回再抽出した。合わせたジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し(100mL×1回)、pH8であることを確認した。さらに飽和食塩水100mLで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去と真空乾燥を行って、淡黄色固体8.41g(収率99%)を得た。得られた化合物の1H−NMRを測定し、Angewandte Chemie Int.Ed,2004,43,827(Supporting Information for Angew.Chem.Int.Ed.Z52975)に記載の1β-チオアセチルマルトトリオースパーアセテート[Ac−Mal3−SAc]の1H−NMRのスペクトルデータにおける2.40ppmのピーク(ピラノース環のアノマー位に連結したチオアセチル基に帰属される)に対応する、2.37ppmのピークを確認することで、ピラノース環のアノマー位のBr基がチオアセチル基に置換された構造であると判断した。
1H−NMR(400MHz,重クロロホルム溶媒,テトラメチルシラン=0ppm):δ(ppm)=1.99-2.18(39H,13×OAc),2.37(3H,SAc),3.87-5.42(28H).
(2)H2TFPCとAc−Mal4−SAcの連結によるマルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal4−chlorin)の合成
実施例1で合成したH2TFPCの200mg(193mmol)、上記(1−3)で合成した1β-チオアセチルマルトテトラオースパーアセテート(Ac−Mal4−SAc)の986mg(775mmol)及びジエチルアミン5.0mL(48.2mmol)をジメチルホルムアミド40mLに溶解し、氷水浴上で3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー法(TLC;トルエン/アセトン=2/1)で原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.36)を確認し、反応終了とした。反応液から溶媒を減圧留去後、クロロホルム(40mL)を加え、十分に水洗後、無水硫酸ナトリウムでクロロホルム層を乾燥し、溶媒を減圧留去した。粗生成物をリサイクル分取HPLC装置(日本分析工業株式会社製LC−9130II NEXT、移動相はクロロホルム)にてリサイクル分離し、メインフラクションを分取した。溶媒除去することでパーアセチル化マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Ac−Mal4−chlorin)の224mgを得た。
得られた化合物のフッ素NMRを測定し、Bioconjugate Chem.Vol.21,No.11,2010.に記載のグルコース連結フッ化クロリン(5,10,15,20−テトラキス(4−(β−D−グルコピラノシルチオ)−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)−2,3−(メタノ(N−メチル)イミノメタノ)クロリン)のフッ素NMRのスペクトルデータと比較することで、フェニル基のパラ位が置換された構造であることが確認できた。19F−NMR(376MHz,DMSO−d6,C66=−163.60ppm):δ(ppm)=−133.56(4F,Ar−m−F),−134.72(4F,Ar−m−F),−138.96(2F,Ar−o−F),−140.90(6F,Ar−o−F).
続いて、得られたパーアセチル化マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Ac−Mal4−chlorin)の215.5mg(36.7μmol)を超脱水ジクロロメタン20mL(和光純薬株式会社製)と超脱水メタノール80mL(和光純薬株式会社製)の混合溶媒に溶解した。これにナトリウムメトキシド309mg(5.7mmol)を加えた後、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌し、脱アセチル化反応を行った。薄層クロマトグラフィー法(TLC;水/アセトニトリル=1/1)で原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.60)の確認にて反応終了を確認した。得られた反応液を氷水浴上で冷却しながら酢酸で中和した後、溶媒を減圧留去した。得られた化合物を蒸留水120mlに溶解し、再生セルロース膜(スペクトラムラボラトリーズ社製,Spectra/Por6 Dialysis Membrane MWCO:1000)を用いて2日間透析し、脱塩した。凍結乾燥後、さらに真空乾燥して、マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal4−chlorin)を40mg得た。
得られた化合物のLC/MS法による解析結果から、完全脱アセチル化体(M)が28.9%(LCエリア面積)、アセチル基が1個残った構造体(M+1Ac)が19.6%、アセチル基が2個残った構造体(M+2Ac)が17.1%、アセチル基が3個残った構造体(M+3Ac)が14.0%、アセチル基が4個残った構造体(M+4Ac)が6.0%、アセチル基が5個残った構造体(M+5Ac)が4.2%、アセチル基が6個残った構造体(M+6Ac)が2.5%、アセチル基が7個残った構造体(M+7Ac)が2.0%、アセチル基が8個残った構造体(M+8Ac)が0.3%で検出された。従って、得られたMal4−chlorinの純度は94.6%、脱アセチル化率は96.5%である事が分かった。
MS:m/z=1849.46[M+H+NH42+(M,28.9%),m/z=1870.46[M+H+NH42+(M+1Ac,19.6%),m/z=1891.48[M+H+NH42+(M+2Ac,17.1%),m/z=1912.48[M+H+NH42+(M+3Ac,14.0%),m/z=1933.48[M+H+NH42+(M+4Ac,6.0%),m/z=1945.98[M+2H]2++1954.49[M+H+NH42+(M+5Ac,4.2%),m/z=1966.98[M+2H]2++1975.50[M+H+NH42+(M+6Ac,2.5%),m/z=1987.99[M+2H]2++1996.50[M+H+NH42+(M+7Ac,2.0%),m/z=2008.99[M+2H]2++2017.51[M+H+NH42+(M+8Ac,0.3%).m/z([M+H]+); calcd.3680.89 for C143182165804,found.3680.9;UV(H2O):λ(nm)=407,508,599,and 651.
なおLC/MS測定は、実施例1と同様の手法で行った。
2.マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal 4 −chlorin)の水溶性評価
5.0mgのMal4−chlorinに少量の蒸留水(0.135mL)を加えたところ、Mal4−chlorinは容易に全て溶解した。この結果、Mal4−chlorinの水溶性は高く、水への溶解度は37mg/mL以上であり、実用上、十分な溶解性を有していることが分かった。結果を表1に示す。
3.マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal 4 −chlorin)の光毒性評価
実施例1−3において、Mal3−chlorinの代わりにマルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal4−chlorin)を用いる他は、同様の方法でIC50を測定した。マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal4−chlorin)のIC50は、それぞれ3.6μmol/L(MKN45)および1.1μmol/L(MKN28)であった。得られた結果を表1に示す。
表1より、Mal4−chlorinのIC50はタラポルフィンナトリウムのIC50(比較例2)よりも有意に小さいことが分かった。これは優れた光毒性(光腫瘍細胞毒性)を有することを意味する。
水溶性が良好になることで腫瘍細胞の細胞膜透過性が低下し、薬効の低下も懸念されたが、Mal4−chlorinは水溶性と細胞膜透過性のバランスを両立する優れたPDT用光感受性物質であることが分かった。
[実施例3]
1.マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal 7 −chlorin)の合成
(1)1β-チオアセチルマルトヘプタオースパーアセテート[Ac−Mal7−SAc]の合成
(1−1)マルトヘプタオースパーアセテート[Ac−Mal7]の合成
マルトヘプタオース[Mal7]5.00g(4.34mmol:和光純薬株式会社製) をピリジン26.03mL(329mmol)に30℃で溶解し、これを0℃に冷却後、無水酢酸19.19mL(188mmol)とジメチルアミノピリジン0.1g(0.84mmol)を加えた。氷浴を外し、そのまま12時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー法(TLC;トルエン/アセトン=2/1)で、原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.90)にて反応終了を確認した。反応液に無水エタノール(60mL)を加え、液体窒素でトラップしながら内容物を減圧濃縮した後、クロロホルム(100mL)に溶解し、このクロロホルム溶液を、2N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の各125mLで順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、クロロホルムを減圧留去し、真空乾燥後に白色固体のマルトヘプタオースパーアセテートAc−Mal7(9.74g)を得た。
(1−2)1α-ブロモマルトヘプタオースパーアセテート[Ac−Mal7−Br]の合成
上記(1−1)で合成したマルトヘプタオースパーアセテート9.30g(4.39mmol)を超脱水ジクロロメタン100mL(和光純薬株式会社製)に溶解した後、臭化水素の25%酢酸溶液28mL(85.5mmol)を加え、窒素下、室温で30分撹拌した。TLC(ヘキサン/酢エチ=1/2)にて、原料であるAc−Mal7(Rf=0.70)が消費され、新規スポットの生成(Rf=0.82)を確認した。反応混合物を、ジクロロメタン140mLと水140mLで分配し、水層はジクロロメタンで再抽出(140mL×2回)した。合わせたジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液350mLで2回洗浄し、さらに飽和食塩水350mLで洗浄した。ジクロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ジクロロメタンの減圧留去、真空乾燥を行い、白色固体の1α-ブロモマルトヘプタオースパーアセテート(Ac−Mal7−Br)を収量8.3g、収率87%で得た。得られた化合物の1H−NMRを測定し、Angewandte Chemie Int.Ed,2004,43,827(Supporting Information for Angew.Chem.Int.Ed.Z52975)に記載の1α-ブロモマルトトリオースパーアセテート[Ac−Mal3−Br]の1H−NMRのスペクトルデータにおける6.53ppmのピーク(ピラノース環のアノマー位の水素に帰属される)に対応する、6.50ppmのピークの出現を確認することで、ピラノース環のアノマー位のアセチル基がBr基に置換された構造であると判断した。
(1−3)1β-チオアセチルマルトヘプタオースパーアセテート[Ac−Mal7−SAc]の合成
上記(1−2)で合成した1α-ブロモマルトヘプタオースパーアセテート8.0g(3.74mmol)をドライアセトン30ml(和光純薬株式会社製)に溶解し、チオ酢酸カリウム0.85g(7.47mmol)を加え、窒素下、室温で21時間撹拌した。溶媒留去と真空乾燥後、反応混合物をジクロロメタン30mLと飽和食塩水60mLで分配した。さらに水層はジクロロメタン30mLで3回再抽出した。合わせたジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し(100mL×1回)、pH8であることを確認した。さらに飽和食塩水100mLで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去と真空乾燥を行って、淡黄色固体7.85g(収率98%)を得た。得られた化合物の1H−NMRを測定し、Angewandte Chemie Int.Ed,2004,43,827(Supporting Information for Angew.Chem.Int.Ed.Z52975)に記載の1β-チオアセチルマルトトリオースパーアセテート[Ac−Mal3−SAc]の1H−NMRのスペクトルデータにおける2.40ppmのピーク(ピラノース環のアノマー位に連結したチオアセチル基に帰属される)に対応する、2.37ppmのピークを確認することで、ピラノース環のアノマー位のBr基がチオアセチル基に置換された構造であると判断した。
(2)H2TFPCとAc−Mal7−SAcの連結によるマルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal7−chlorin)の合成
実施例1で合成したH2TFPCの200mg(193.9mmol)、上記(1−3)で合成した1β-チオアセチルヘプタオースパーアセテート(Ac−Mal7−SAc)の1.66g(776mmol)及びジエチルアミン4.0mL(52.3mmol)をジメチルホルムアミド40mLに溶解し、氷水浴上で3時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー法(TLC;トルエン/アセトン=2/1)で原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.24)を確認し、反応終了とした。反応液から溶媒を減圧留去後、クロロホルム(40mL)を加え、十分に水洗後、無水硫酸ナトリウムでクロロホルム層を乾燥し、溶媒を減圧留去した。粗生成物をリサイクル分取HPLC装置(日本分析工業株式会社製LC−9130II NEXT、移動相はクロロホルム)にてリサイクル分離し、メインフラクションを分取した。溶媒除去することでパーアセチル化マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Ac−Mal7−chlorin)の633mgを得た。
続いて、得られたパーアセチル化マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Ac−Mal7chlorin600mg(64.3μmol)を超脱水ジクロロメタン60mL(和光純薬株式会社製)と超脱水メタノール240mL(和光純薬株式会社製)の混合溶媒に溶解した。これにナトリウムメトキシド972mg(18.0mmol)を加えた後、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌し、脱アセチル化反応を行った。薄層クロマトグラフィー法(TLC;水/アセトニトリル=1/1)で原料消失と新規スポットの形成(Rf=0.85)の確認にて反応終了を確認した。得られた反応液を氷水浴上で冷却しながら酢酸で中和した後、溶媒を減圧留去した。得られた化合物を蒸留水120mlに溶解し、再生セルロース膜(スペクトラムラボラトリーズ社製,Spectra/Por6 Dialysis Membrane MWCO:1000)を用いて2日間透析し、脱塩した。凍結乾燥後、さらに真空乾燥して、マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal7chlorin)を109mg得た。
2.マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal 7 −chlorin)の水溶性評価
5.0mgのMal7−chlorinに少量の蒸留水(0.135mL)を加えたところ、Mal7−chlorinは容易に全て溶解した。この結果、Mal7−chlorinの水溶性は高く、水への溶解度は37mg/mL以上であり、実用上、十分な溶解性を有していることが分かった。結果を表1に示す。
3.マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal 7 −chlorin)の光毒性評価
実施例1−3において、Mal3−chlorinの代わりにマルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal7−chlorin)を用いる他は、同様の方法でIC50を測定した。マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal7−chlorin)のIC50は、それぞれ4.0μmol/L(MKN45)および1.3μmol/L(MKN28)であった。得られた結果を表1に示す。
表1より、Mal7−chlorinのIC50はタラポルフィンナトリウムのIC50(比較例2)よりも有意に小さいことが分かった。これは優れた光毒性(光腫瘍細胞毒性)を有することを意味する。
表1の結果よりMal7−chlorinは水溶性と細胞膜透過性のバランスを両立する優れたPDT用光感受性物質であることが分かった。
[比較例1]
1.グルコース連結フッ化クロリン(Glc−chlorin)の合成
Glc−chlorinは、特許文献2、およびBioconjugate Chem.2010.21.2136−2146に従って合成した。具体的には、実施例1と同様の方法でグルコースから1β-チオアセチルグルコースパーアセテート[Ac−Glc−SAc]を合成し、これをH2TFPCと連結してAc−Glc−chlorinを得た。この化合物は、19F−NMRスペクトルからフェニル基のパラ位が置換されている構造であることが分かった(Bioconjugate Chem.Vol.21,No.11,2010.を参照した)。その後、脱アセチル化反応、脱塩を行って、Glc−chlorinを合成した。脱塩は、Sep−Pak C18(Waters社製)を用いて行った。
得られた化合物は、LC/MS法による解析から、完全脱アセチル化体が99.0%(LCエリア面積)で検出されたことから、得られたGlc−chlorinの純度は99.0%、脱アセチル化率は100%であることが分かった。
MS:m/z=868.66[M+2H]2+(99.0%).m/z([M+H]+);calcd.1736.25 for C7162165204,found.1736.30。
なおLC/MS装置については、実施例1と同じであり、スキャンレンジはm/z=500〜2200で行った。
2.グルコース連結フッ化クロリン(Glc−chlorin)の水溶性評価
1.0mgのGlc−chlorinに蒸留水を加えて超音波照射を5秒行う操作を繰り返し、目視で完全に溶解するまで蒸留水を加え続けたところ、約120gの蒸留水を加えることでほぼ完全に溶解することが分かった。この結果、Glc−chlorinの水への溶解度は約8.3μg/mL(約8.3×10-3mg/mL)であり極めて低いことが分かった。しかも超音波装置を使用しており、臨床現場での実用的観点からは、水への溶解度は不十分である。結果を表1に示す。
3.グルコース連結フッ化クロリン(Glc−chlorin)の光毒性評価
実施例1−3において、Mal3−chlorinの代わりにGlc−chlorinを用いる他は、同様の方法でIC50を測定した。ただしGlc−chlorinは水に殆ど溶けないため、一旦、Glc−chlorinを少量のDMSOに溶解した後、所定量の培地に加えるという方法を採用した(細胞培養する際の培地に1%DMSOを含む状態となる)。
その結果、グルコース連結フッ化クロリン(Glc−chlorin)のIC50は、それぞれ0.67μmol/L(MKN45)および0.53μmol/L(MKN28)であった。結果を表1に示す。IC50は、Mal3−chlorinとほぼ同等の低い値であり、タラポルフィンナトリウム(比較例2)と比較して有意に良好な値を示した。しかし、生体評価(細胞評価)に供するための薬剤分散液を得るためにはDMSOのような有機溶媒や超音波のような物理的エネルギーが必要となるため、臨床現場で実際に使用することは困難である。
[比較例2]
1.タラポルフィンナトリウムの光毒性評価
実施例1−3において、Mal3−chlorinの代わりにタラポルフィンナトリウム(モノ−L−アスパルチルクロリンe6、Medkoo Biosciences社製)を用いる他は、同様の方法でIC50を測定した。
その結果、タラポルフィンナトリウムのIC50は、それぞれ16μmol/L(MKN45)および16μmol/L(MKN28)であった。結果を表1に示す。タラポルフィンナトリウムのIC50は、Mal3−chlorin、Mal4−chlorin、およびGlc−chlorinよりも有意に大きく、光毒性が低いことが分かった。なお、タラポルフィンナトリウムの水溶性は良好であり、臨床現場では100mgを生理食塩液4mLに溶解して使用するため(25mg/mL)、水溶解度は25mg/mL以上である。
[一重項酸素の生成評価]
一重項酸素生成評価は以下の手順で測定した。近赤外蛍光分光装置はLabRAM HR Evolution(堀場製作所)を用い、溶媒は重水、励起光として532nmレーザー(出力5mW、シャープカットフィルタ850nm)を用いた。取り込み時間60sec、積算回数1回、減光フィルタ100%、対物レンズX100、回折格子の刻線数150(NIR、本/mm)の条件で1270nmの発光を検出することで一重項酸素の生成評価を行った。Coordination Chemistry Reviews 233−234(2002)351−371記載のRose Bengalの量子収率値を用い、発光強度より量子収率を算出した。それぞれ10μMの濃度に調整したRose Bengal(和光純薬株式会社製)、マルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal3−chlorin、実施例1)、マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal4−chlorin、実施例2)、マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal7−chlorin、実施例3)、及びタラポルフィンナトリウム(比較例2)溶液について測定を行った。結果を表2に示した。
[腫瘍成長抑制率の評価]
ヌードマウス(各群各々4〜6匹ずつ、雌4〜5週齢、20±2g)の右臀部に、ダルベッコ変法イーグル培地(Gibco BRL製)に浮遊させたヒト大腸癌細胞株HT29を2×107個皮下注射(0日目)し、腫瘍の大きさを2日ごとに測定した。腫瘍体積は、1/2(4π/3)(L/2)(W/2)Hで計算した(L:腫瘍の長さ、W:幅、H:高さ)。腫瘍体積が50〜100mm3に達したところ(10日目)で、ヌードマウスの側部尾静脈からそれぞれ0.1mlの生理食塩水(コントロール群)、1.25mMのマルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal3−chlorin、実施例1)、マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal4−chlorin、実施例2)、マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal7−chlorin、実施例3)、グルコース連結フッ化クロリン(Glc−chlorin、比較例1)、及びタラポルフィンナトリウム(比較例2)を投与した。Mal3−chlorin、Mal4−chlorin、Mal7−chlorin、及びタラポルフィンナトリウムは生理食塩水に溶解したもの、Glc−chlorinは20%Polyethylene Glycol400(PEG400、和光純薬株式会社製)を含む純水に溶解したものを使用した。投与4時間後に、腫瘍に660nm(15Jcm-2)、直径2cmのスポットのダイオードレーザー(100mW/cm2、CrystaLaser CL660)を照射した。腫瘍の大きさを2日ごとに測定し、腫瘍成長抑制率(TGI%)を24日目の腫瘍体積から次式で計算した。結果を表2に示した。
TGI%=((コントロール群の腫瘍体積)−(処理群の腫瘍体積))/
(コントロール群の腫瘍体積)× 100%
[皮膚光毒性の評価]
腫瘍成長抑制率の評価において、投与4時間後に、ヌードマウスの左後ろ足の正常皮膚にダイオードレーザーを照射し(下図)、2日ごとに「定量的皮膚光毒性評価系」(表3)に従い、PDTにより誘発された正常皮膚の損傷程度を評価した。結果を表4に示した。
マルトトリオース連結フッ化クロリン(Mal3−chlorin、実施例1)では、照射後4日目より皮膚光毒性反応がみられたが、照射後から10日目までに消滅した。マルトテトラオース連結フッ化クロリン(Mal4−chlorin、実施例2)では、照射後4日目より皮膚光毒性反応がみられたが、照射後から8日目までに消滅した。マルトヘプタオース連結フッ化クロリン(Mal7−chlorin、実施例3)では、照射後4日目より皮膚光毒性反応がみられたが、照射後から6日目までに消滅した。また、グルコース連結フッ化クロリン(Glc−chlorin、比較例1)では、照射後4日目より照射後14日目まで皮膚光毒性が観察された。
以上の実施例と比較例より、三糖を連結したマルトトリオース連結フッ化クロリン、四糖を連結したマルトテトラオース連結フッ化クロリン、七糖を連結したマルトヘプタオース連結フッ化クロリン、および単糖を連結したグルコース連結フッ化クロリンは、糖を連結していないタラポルフィンナトリウムに対していずれも優れた殺腫瘍細胞性(光毒性)および腫瘍組織の成長抑制効果を有する。しかし、単糖連結フッ化クロリンが水に殆ど溶けないため臨床現場での実用が困難であるという課題に対し、マルトトリオース連結フッ化クロリンは、常温で優れた水溶性を有するため臨床現場で治療薬として容易に使用することが可能であるという大きな特徴を有する。

Claims (14)

  1. 下記一般式(1)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体。
    式中、X1〜X20は、互いに独立して、F−または糖−S−のいずれかの基であり、且つX1〜X20の少なくとも一つは糖−S−の基であって(ここでFはフッ素原子、Sはイオウ原子である)、糖は2〜9個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖であり、R5およびR6は互いに独立して水素原子、低級アルキル、またはQ−(CH2)k−(ここでQは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、またはシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数)であり、互いに連結して環構造を形成していても良い。
  2. 下記一般式(2)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体。
    式中、X1,X2,X3およびX4は、互いに独立して、F−または糖−S−のいずれかの基であり、且つX1〜X4の少なくとも一つは糖−S−の基であって(ここでFはフッ素原子、Sはイオウ原子である)、糖は2〜9個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖であり、R5およびR6は互いに独立して水素原子、低級アルキル、またはQ−(CH2)k−(ここでQは低級アルキル、アリール、アミノ、低級アルキルアミノ、イミノ、低級アルキルイミノ、またはシクロアルキル基であり、kは0〜3の整数)であり、互いに連結して環構造を形成していても良い。
  3. 前記一般式(2)中、X1,X2,X3およびX4が全て糖−S−の基である、請求項2に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
  4. 下記一般式(3)で示されるS−グリコシル化クロリン誘導体。
    式中、X1,X2,X3およびX4は、互いに独立してF−または糖−S−のいずれかの基であり、且つX1〜X4の少なくとも一つは糖−S−の基であり(ここでFはフッ素原子、Sはイオウ原子である)、糖は2〜9個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖である。
  5. 前記糖が2〜7個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖である、請求項1〜4のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
  6. 前記糖が3〜7個の単糖同士がグリコシド結合したオリゴ糖である、請求項1〜5のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
  7. 前記一般式(3)中、X1,X2,X3,およびX4が全て糖−S−である、請求項6に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
  8. 前記糖がマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキソースまたはマルトヘプタオースである、請求項7に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
  9. 前記糖が三糖類または四糖類である、請求項1〜8のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
  10. 前記糖がマルトトリオースまたはマルトテトラオースである、請求項9に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
  11. 前記糖がD体である、請求項1〜10のいずれかに記載のS−グリコシル化クロリン誘導体。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のS−グリコシル化クロリン誘導体、および薬剤学的に許容できる添加物を含有する、医薬組成物。
  13. 腫瘍もしくは固形癌、または加齢黄斑変性症、あるいは皮膚疾患の、治療、診断または検出のための、請求項12に記載の医薬組成物。
  14. 腫瘍もしくは固形癌、または加齢黄斑変性症、あるいは皮膚疾患の診断または検出のための、請求項12に記載の診断用組成物。
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