以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、理解を容易にするため、各図面に描かれる装置類の大きさ(縮尺)は必ずしも一致していないが、各装置間の関係は当業者であれば各図面から当然に理解されるものである。
<本発明の実施形態の概略>
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡10、滅菌バッグ150及び通気アダプター170の概略構成を示す外観斜視図である。
以下に説明する本発明の各実施形態では、滅菌バッグ150内に収納された内視鏡10の内視鏡コネクター62に対して、滅菌バッグ150のアダプター開孔部152に外部から挿入装着される通気アダプター170の一端部が連結される一方で、通気アダプター170の他端部が滅菌バッグ150の外部に配置される。これにより、通気アダプター170内の通気路を介して、内視鏡10の密閉内部空間が滅菌バッグ150の外部と連通(通気)するようになっている。
さらに、通気アダプター170の他端部に通気デバイスの接続コネクター74を連結することによって、通気アダプター170を介して内視鏡10の密閉内部空間を外部デバイスと連通することができるようになっている。したがって、この外部デバイスとして気密テスターを用いる場合には、内視鏡10を滅菌バッグ150内に収納した状態で、内視鏡10の内部空間の気密状態のチェックを行うことが可能となる。また外部デバイスとして送気・換気装置を用いる場合には、内視鏡10を滅菌バッグ150内に収納した状態で、内視鏡10の密閉内部空間への送気・換気を行うことが可能となる。
以下、内視鏡10、滅菌バッグ150及び通気アダプター170の各々について説明するが、下記構成は一例に過ぎず、本発明は他の構成の内視鏡、滅菌バッグ及び通気アダプターに対しても適用することが可能である。
<内視鏡>
図2は内視鏡の全体構成を示す外観図であり、図3は内視鏡の挿入部の先端を拡大して示す斜視図である。
内視鏡10は、図2に示すように、ユーザ(術者)によって把持される手元操作部12と、この手元操作部12に連設され被験者の体内(体腔内)に挿入される挿入部14(可撓管部36、湾曲部38、先端硬質部40)とを備える。
手元操作部12にはユニバーサルケーブル16が接続され、ユニバーサルケーブル16の先端にはライトガイドコネクター(LGコネクター)18が設けられている。このLGコネクター18は、不図示の光源装置に着脱自在に連結され、この光源装置に連結されることによって、挿入部14の先端部(先端硬質部)40に配設される照明光学系(図3参照)に照明光を送ることができるようになっている。
またLGコネクター18には、配線ケーブル20を介して電気コネクター22が接続され、この電気コネクター22は不図示のプロセッサに対して着脱自在に連結されるようになっている。電気コネクター22をプロセッサに接続することによって、内視鏡10の先端硬質部40を介して得られた観察画像のデータがプロセッサに出力され、さらにプロセッサに接続されたモニタに観察画像を表示することができる。電気コネクター22には着脱自在のキャップ23が連結されており、例えば洗浄時にはキャップ23が電気コネクター22に装着され、電気コネクター22の端子部分をキャップ23によって密閉保護するようになっている。
手元操作部12には、送気・送水ボタン24、吸引ボタン26、及びシャッターボタン28が並設されている。送気・送水ボタン24は、挿入部14の先端硬質部40に配設された送気・送水ノズル48(図3参照)からエアーや水を噴射するための操作ボタンであり、先端硬質部40に設けられた観察光学系(観察レンズ、観察窓)44に向けて送気・送水ノズル48からエアーや水が噴出するようになっている。また吸引ボタン26は、先端硬質部40に配設された鉗子口50(図3参照)から病変部等を吸引するための操作ボタンであり、シャッターボタン28は、観察画像の録画等を操作するための操作ボタンである。
また手元操作部12には、一対のアングルノブ30が設けられている。ユーザは、アングルノブ30を回転することによって湾曲部(アングル部)38の湾曲状態を遠隔操作することができ、湾曲部38を所望方向へ湾曲させることができる。
さらに手元操作部12には、先端硬質部40の鉗子口50(図3参照)に連通する鉗子挿入部32が設けられ、鉗子挿入部32の開口端には鉗子栓34が装着される。鉗子等の処置具は、鉗子挿入部32(鉗子栓34)から可撓管部(軟性部)36内部の鉗子チャネル(図4の符号33参照)内に挿入され、先端硬質部40の鉗子口50から導出される。
また本例の手元操作部12には、鉗子挿入部32と対向する位置に、通気アダプター170(図1参照)を連結するための内視鏡コネクター62が設けられている。内視鏡10の密閉内部空間は、内視鏡コネクター62及び通気アダプター170を介して外部と通気可能となっている(後述の図8参照)。
一方、挿入部14は、手元操作部12側から順に、可撓管部36、湾曲部38、及び先端硬質部40が配設されて構成される。可撓管部36は、円筒状に形成された可撓性を有する部材であり、多層構造(外皮層等)をとることで必要とされる柔軟性及び剛性が得られ、挿入部14の体内挿入時の経路を確保する役割を担っている。湾曲部38は、前述の手元操作部12のアングルノブ30により湾曲状態がコントロールされ、先端硬質部40の先端面42に設けられた観察窓44、一対の照明窓46、送気・送水ノズル48及び鉗子口50の位置及び方向を適切に調整することができるようになっている(図3参照)。
先端硬質部40の観察窓44の後方にはCCD等の観察光学系(不図示)が配設され、CCDを支持する基板には信号ケーブル(不図示)が接続される。この信号ケーブルは、図1の挿入部14、手元操作部12、ユニバーサルケーブル16、配線ケーブル20等に挿通配線されて電気コネクター22まで延設され、不図示のプロセッサに接続される。観察窓44から取り込まれる観察像は、CCDの受光面において結像され電気信号に変換され、この電気信号が信号ケーブルを介してプロセッサに出力され、プロセッサにおいて映像信号に変換される。そして、プロセッサに接続されたモニタ(不図示)において観察画像が表示される。
先端硬質部40の一対の照明窓46の後方には、ライトガイド等の照明光学系(不図示)の出射端が配設される。このライトガイドは、図1の挿入部14、手元操作部12、ユニバーサルケーブル16に挿通され、LGコネクター18まで延設される。したがって、LGコネクター18が光源装置(不図示)に接続されると、光源装置からの照明光が、ライトガイドを介して照明窓46に伝送され、照明窓46から前方に出射されるようになっている。
先端硬質部40の送気・送水ノズル48は、手元操作部12の送気・送水ボタン24によって操作される送気・送水バルブ(不図示)に連通され、さらにこの送気・送水バルブはLGコネクター18の送気・送水コネクター52に連通される。送気・送水コネクター52には不図示の送気・送水手段が接続され、この送気・送水手段からエアー及び水が供給される。したがって、送気・送水ボタン24を操作することによって、図2の送気・送水ノズル48からエアー又は水を観察窓44に向けて噴射することができる。
先端硬質部40の鉗子口50は、手元操作部12の吸引ボタン26によって操作される吸引バルブ(不図示)に連通しており、この吸引バルブはLGコネクター18の吸引コネクター54に接続される。したがって、不図示の吸引ポンプを吸引コネクター54に接続して吸引バルブを吸引ボタン26により操作することにより、鉗子口50から病変部等を吸引することができる。
次に、手元操作部12に設けられる内視鏡コネクター62について説明する。図4は手元操作部12の概略を示す断面図であり、図5は内視鏡コネクター62の外観斜視図である。
本例の内視鏡10は、手元操作部12の外壁部のうち鉗子挿入部32と反対側に連通口58が設けられており、この連通口58には内視鏡コネクター62が密接且つ気密に連結されている。
図4には手元操作部12の内部空間56のみが示されているが、この内部空間56は、挿入部14、ユニバーサルケーブル16、LGコネクター18、及び配線ケーブル20(図2参照)のそれぞれの内部空間と連通している。そして、内視鏡10を構成する部材間の各接合部はパッキン(不図示)によって補強連結されている。このように、連通形成される内視鏡10の内部空間は、内視鏡10の外部から密閉された気密(液密)構造を有する。
内視鏡コネクター62は、連通口58との連結部位を構成する基部82と、基部82から延設されるガイド管84と、ガイド管84内にスライド可能に設けられるバルブ本体86と、基部82とバルブ本体86との間に設けられバルブ本体86を付勢押圧するスプリング(付勢部材)88とを備える。
基部82は、連通口58に挿入され内視鏡コネクター62の挿入端部を構成する連結管90と、連結管90と一体的に構成され連通口58の径より大きな径を有する環状部94とを有する。連結管90の底部には連結管開孔91が設けられており、当該底部とバルブ本体86との間の空間にはスプリング88が配設される。内視鏡の内部空間56は、連結管開孔91を介して、スプリング88が配置される空間と連通する。環状部94には第1のOリング89が配置される円形の溝が設けられており、環状部94と連通口58(手元操作部12の外周部)との間にこの第1のOリング89を密着配設することで、当該連結箇所の気密性が担保されている。
ガイド管84の一方の端部(内部側端部)は基部82の環状部94に嵌合連結され、ガイド管84と連結管90とは同軸上に配置される。またガイド管84の他方の端部(外部側端部)の端面の中央部にはガイド管開孔99が形成されており、このガイド管開孔99を介して、ガイド管84内のバルブ本体86を押圧スライドさせることができるようになっている。さらにガイド管84の略中間部の外周には、複数(本例では4個)のガイド管開口部96が周方向に等間隔に形成されており、ガイド管84の内外はガイド管開口部96によって連通されている。
バルブ本体86は、軸方向(スライド方向)の全長がガイド管84よりも短く、ガイド管84内に沿ってスライド可能となっている。バルブ本体86の内部には、スプリング88が配設される空間(基部82内の空間及びガイド管84内の空間)と連通する主流路100と、主流路100と連通する断面十字状又は断面T字状の送気流路98とが形成されている。この送気流路98は、バルブ本体86の軸方向に延びる流路と、バルブ本体86の径方向に延びる流路とが交差しており、この径方向に延在する流路はバルブ本体86を径方向に貫通する。本例の送気流路98の径方向に延在する流路は、バルブ本体86がスライド移動して基部82に当接した場合にガイド管84のガイド管開口部96と連通するように、配置位置が調整されている。
バルブ本体86の外周に形成された三カ所の溝には、シーリング手段としての第2のOリング102、第3のOリング104及び第4のOリング106が填め込まれている。すなわち図4に示されるように、送気流路98のうち径方向に延在する流路を挟む位置に第2のOリング102及び第3のOリング104が配設され、バルブ本体86の基部82側端部位置に第4のOリング106が配設される。これらの第2のOリング102、第3のOリング104及び第4のOリング106がバルブ本体86の外周部及びガイド管84の管内周部と密着当接した状態で、バルブ本体86はガイド管84内をスライド移動する。
バルブ本体86は、外力の作用しない平常時にはスプリング88に付勢され、ガイド管84の管内の一端面(外部側管内端面)に押し当てられる。一方、スプリング88の付勢力に対抗する外力がバルブ本体86に加えられると、バルブ本体86はガイド管84に沿ってスライド移動し、スプリング88は軸方向に収縮する。なお外力が解除されると、スプリング88の付勢力により、バルブ本体86はガイド管84の管内の一端面(外部側管内端面))に再び押し当てられる。
このような構成の内視鏡コネクター62によれば、スプリング88の付勢力によってバルブ本体86の端部(外部側端部)116がガイド管84に押し当てられている時には、第2のOリング102、第3のOリング104及び第4のOリング106によって、ガイド管開口部96、送気流路98、ガイド管開孔99及び内視鏡10の内部空間56の各々の間の通気が遮断され、内部空間56の密閉水密(気密)状態が適切に確保される。一方、ガイド管開孔99を介してバルブ本体86をスライド移動させて、ガイド管開口部96がバルブ本体86の送気流路98(バルブ本体86の径方向に延在する流路)と接続すると、内視鏡10の内部空間56と外部とが内視鏡コネクター62(ガイド管開口部96、送気流路98、主流路100等)を介して連通されることとなる。
なお、連通口58及び内視鏡コネクター62の配置位置は特に限定されず、例えば図6に示すようにLGコネクター18に連通口58及び内視鏡コネクター62を配設してもよい。すなわち、内視鏡10の構成部材のうち、剛性が比較的高い手元操作部12やLGコネクター18に連通口58を設けることにより、挿入部14やユニバーサルケーブル16に要求される柔軟性や腰(剛性)に影響を与えることなく、内視鏡10の密閉内部空間と外部とを適切に連通することができる。ただし、挿入部14やユニバーサルケーブル16に要求される柔軟性や腰(剛性)を確保することができるのであれば、これらの部材に連通口58及び内視鏡コネクター62を配設することも可能である。このように、内視鏡10の内部空間に連通可能な任意の箇所に、連通口58及び内視鏡コネクター62を設けることが可能である。
<滅菌バッグ>
次に、内視鏡10が収容される通気アダプター用開口付き滅菌バッグ150について説明する。
図1に示されるように、滅菌バッグ150には、内外を連通するアダプター開孔部152が形成されており、このアダプター開孔部152には通気アダプター170と密着適合する開孔部ブッシュ(密閉ゾーン部)154が嵌め込まれている。
この開孔部ブッシュ154はアダプター開孔部152に対して隙間なく密着接合されており、開孔部ブッシュ154とアダプター開孔部152との間は気密に保たれている。また開孔部ブッシュ154は、挿入連結される後述の通気アダプター170と密着して気密(液密)が保たれるようになっている。例えば、開孔部ブッシュ154の開口部の内径を通気アダプター170の挿入部外径と同じにすることで、開孔部ブッシュ154と通気アダプター170との間の気密を保つことができる。
開孔部ブッシュ154の材質として、ゴム等の密着性に優れた弾性部材を好適に用いることができる。弾性部材によって開孔部ブッシュ154が構成される場合には、開孔部ブッシュ154の開口部の内径を通気アダプター170の挿入部外径よりやや小さくして、開孔部ブッシュ154の弾性を利用して通気アダプター170を開孔部ブッシュ154に挿入することも可能である。この場合、開孔部ブッシュ154と通気アダプター170との間の気密性をより確実なものにすることができる。
なお、滅菌バッグ150の他の部分(内視鏡10を収容するための収容開口等)の位置、形状、サイズ、材質等の特性は特に限定されるものではないが、後述のオートクレーブ滅菌時の高温高圧環境で使用可能な滅菌バッグ150であることが好ましい。したがって、耐高温高圧特性を有する一般的な軟質プラスチックや不織布等を適宜組み合わせて、滅菌バッグ150を構成してもよい。オートクレーブ滅菌耐性(高温高圧耐性)を有する滅菌バッグ150を用いることによって、通気アダプター170を利用する本発明の利便性が著しく向上し、滅菌時から利用時まで清浄な環境下で内視鏡10を適切に保管することができる。
<通気アダプター>
次に、滅菌バッグ150に収容された内視鏡10の内視鏡コネクター62と連結する通気アダプター170について説明する。
図7は通気アダプター170が取り付けられていない内視鏡コネクター62の断面図であり、図8は内視鏡コネクター62に取り付けられた通気アダプター170の断面図であり、図9は通気アダプター170の一端部(内視鏡コネクター62と連結する端部)の外観斜視図である。なお図7及び図8では、図示を簡明にするため、内視鏡10(内視鏡コネクター62等)や滅菌バッグ150の構成要素に付される符号の一部が省略されている。
通気アダプター170は、図8に示されるように、管状構造のアダプター本体172に対して外部フランジ174が一体的に形成された構造を有し、主アダプター通路176、アダプター通気口178及び内視鏡接合部186によって構成される通気路が内部に設けられている。
アダプター本体172は、滅菌バッグ150の開孔部ブッシュ154の開口径と略同一の外径を有しており、アダプター本体172を開孔部ブッシュ154に挿入した際にアダプター本体172と開孔部ブッシュ154とが密着して気密構造を形成する密着部を構成する。特に、通気アダプター170がスライド移動可能な範囲(図8の破線Aで示される範囲)である、外部フランジ174より先端側(内視鏡コネクター62側)に配置されるアダプター本体172の全長にわたって、開孔部ブッシュ154の開口径と略同一の外径を有することで、開孔部ブッシュ154に沿って通気アダプター170がスライド移動しても、開孔部ブッシュ154と通気アダプター170(アダプター本体172)との間を気密に保つことができる。
一方、外部フランジ174は、滅菌バッグ150の開孔部ブッシュ154の開口径よりも大きな径を有し、通気アダプター170を内視鏡コネクター62に取り付けた時に滅菌バッグ150(開孔部ブッシュ154)の外側に配置される。この外部フランジ174は、開孔部ブッシュ154に対する通気アダプター170のスライド移動のストッパーとして機能し、滅菌バッグ150の外側に配置される外部フランジ174によって通気アダプター170の全体が滅菌バッグ150内に収容されることを確実に防ぐことができる。
通気アダプター170の一端部(滅菌バッグ150内に配置される端部)には、内視鏡コネクター62が嵌合収容される内視鏡接合部(収容空間)186が形成されている。通気アダプター170の当該端部の開口端には、径方向内側に向けて対抗配置される複数(本例では2つ)のアダプター嵌合爪182が設けられている。これらのアダプター嵌合爪182を内視鏡コネクター62(環状部94の切欠き112(図5参照))に挿入した状態で通気アダプター170を回動することにより、アダプター嵌合爪182は図8に示すようにコネクター係合溝92と係合し、内視鏡コネクター62に対して通気アダプター170が連結接続される。
内視鏡接合部186は内視鏡コネクター62を収容するための開口部であり、内視鏡接合部186の内周壁には溝に填め込まれる第5のOリング184が設けられる。第5のOリング184は、内視鏡コネクター62及び内視鏡接合部186に密接して両者をシーリングする。
通気アダプター170の内部には、通気アダプター170の他端部(滅菌バッグ150外に配置される端部)から軸方向へ内視鏡接合部186まで延びる主アダプター通路176と、主アダプター通路176と内視鏡接合部186との間に設けられ両者間を通気させる複数のアダプター通気口178と、アダプター通気口178と径方向に隣接する断面中心位置において内視鏡接合部186に向かって突出する押圧ピン180とが設けられている。
押圧ピン180は、ガイド管開孔99の径以下の外径を有すると共に、通気アダプター170が内視鏡コネクター62に装着された際にバルブ本体86を基部82に押し当てる位置にスライド移動させるような軸長を有する。したがって、通気アダプター170のアダプター嵌合爪182が内視鏡コネクター62のコネクター係合溝92と係合する際、押圧ピン180は、ガイド管開孔99に挿入されてバルブ本体86を押圧し、ガイド管84のガイド管開口部96とバルブ本体86の送気流路98とが連通する位置までバルブ本体86をスライド移動させるようになっている(図8参照)。なお、通気アダプター170を内視鏡コネクター62から取り外すと、スプリング88の付勢力によってバルブ本体86は元の位置に復帰し、バルブ本体86の内部通路は閉塞して、内視鏡10の内部空間56は封止される。この状態の時まで、第5のOリング184により、通気アダプター170及び内視鏡コネクター62から外部に漏れ出す通路は遮断されている。
このように本例では、通気アダプター170を内視鏡コネクター62に装着する動作によって、通気アダプター170内の通気路(滅菌バッグ150の外部)と内視鏡10の内部空間56とを連通することができ、また、通気アダプター170を内視鏡コネクター62から取り外す動作によって、気圧を維持した状態を保ったまま内視鏡10の内部空間56を封止することができる。
したがって、バルブ本体86が移動を開始する前から通気アダプター170と内視鏡コネクター62との間より外部への漏れ出し(通気漏れ)が抑えられ、その後図8に示されるように、内視鏡コネクター62のコネクター係合溝92に対して通気アダプター170のピン110が係合する接続位置で、バルブ本体86の送気流路98がガイド管84のガイド管開口部96と連通する。すなわち、外部への経路が遮断された後にバルブ本体86の内部通路が開放されるので、内視鏡コネクター62に対する通気アダプター170の接続途中では、外部への通気漏れが生じない。また、通気アダプター170を接続位置から取り外し方向に移動させると、バルブ本体86がスプリング88の付勢力によって直ぐに閉鎖方向へスライド移動するが、バルブ本体86の移動完了まで、コネクター同士の密閉状態を維持することができる。このように本例によれば、ガイド管84とバルブ本体86とスプリング88とからなる簡単なコネクター構造によって、内部空間56からの無駄な空気漏れを防止できるという効果を得ることができる。
このように、通気アダプター170を滅菌バッグ150内の内視鏡コネクター62に装着すると、内視鏡10の内部空間56と滅菌バッグ150の外部とは、図8において矢印で示されるように、通気アダプター170及び内視鏡コネクター62(主アダプター通路176、アダプター通気口178、内視鏡接合部186(通気アダプター170と内視鏡コネクター62との間)、ガイド管開口部96、送気流路98、主流路100、基部82の内部流路、及び基部82の連結管開孔91)を介して通気されるようになっている。このとき、内視鏡コネクター62と通気アダプター170との間では、第5のOリング184によって外部への通気漏れをもたらす通路が遮断され、両者の接続直前の状態から図8に示す接続位置まで気密状態が保持される。
なお、押圧ピン180によるバルブ本体86のスライド移動は、スプリング88を軸方向に収縮させるため、スプリング88の付勢力の増加をもたらす。このような付勢力の増加に伴って、内視鏡コネクター62(環状部94のコネクター係合溝92)と通気アダプター170(アダプター嵌合爪182)との間の係合力も強くなり、通気アダプター170と内視鏡コネクター62との間の連結はより強固なものになる。
図10は、通気アダプター170に通気デバイスの接続コネクター74が装着された状態の断面図である。
本例の接続コネクター74は、通気アダプター170の末端部(外側端部)を収容する開口収容空間195を形成する筒状のコネクター本体196と、開口収容空間195に連通するコネクター通気部198とを備える。コネクター本体196の開口端には、径方向内側に向けて対抗配置される複数(本例では2つ)のコネクター嵌合爪192が設けられている。また、コネクター本体196の内周面には溝に填め込まれたシーリング手段としての第6のOリング194が設けられ、通気アダプター170に対して接続コネクター74が連結される場合に第6のOリング194は通気アダプター170と密着するようになっている。この第6のOリング194によって、通気アダプター170と接続コネクター74との間では、外部への通気漏れをもたらす通路が遮断され、両者の接続直前の状態から図10に示す接続位置まで気密状態を保持することができる。
通気アダプター170と接続コネクター74との連結は、内視鏡コネクター62のコネクター係合溝92と通気アダプター170のアダプター嵌合爪182との連結と同様にして行われる。すなわち、接続コネクター74のコネクター嵌合爪192を通気アダプター170の切欠き(図示せず)に挿入した状態で接続コネクター74を回動することにより、コネクター嵌合爪192は図10に示すように通気アダプター170のアダプター係合溝190と係合し、通気アダプター170に対して接続コネクター74が連結接続される。このようにして通気アダプター170と接続コネクター74とが連結すると、通気アダプター170の主アダプター通路176と接続コネクター74の開口収容空間195及びコネクター通気部198とが通気可能となる。
<オートクレーブ滅菌>
次に、上述のような構成を有する内視鏡10、滅菌バッグ150及び通気アダプター170を用いたオートクレーブ滅菌の一例について説明する。図11は、内視鏡の清浄保管処理の一例を示すフローチャートである。
使用後の内視鏡10は、付着した汚れを落とす清浄処理が施される(図11のS10)。ここでいう「清浄処理」は、特に限定されるものではなく、内視鏡に付着する異物を取り除く処理全般を含みうる概念であり、例えば体液等の汚れをブラシや洗剤を用いて取り除くいわゆる洗浄処理だけではなく、視認することができない細菌やウイルスを死滅させるためのいわゆる消毒処理を含みうる。
清浄処理が施された内視鏡10は、図12に示されるように滅菌バッグ150に収容され、図13に示されるように通気アダプター170が装着される(S12)。
すなわち、滅菌バッグ150に収容した内視鏡10の内視鏡コネクター62、滅菌バッグ150のアダプター開孔部152、及び通気アダプター170の間で位置が合わせられて、アダプター開孔部152に通気アダプター170が外部から挿入され、通気アダプター170の一端部(滅菌バッグ150の内側に配置される先端部)と内視鏡コネクター62とが連結される。これにより、内視鏡コネクター62と連通する内視鏡10の密閉内部空間56は、通気アダプター170の通気路及び滅菌バッグ150の外部と連通される(図8参照)。
そして、内視鏡10を収容する滅菌バッグ150を、通気アダプター170が装着された状態で、オートクレーブ滅菌装置(図示せず)に投入し、オートクレーブ滅菌処理が行われる(S14)。すなわち、通気アダプター170の一端部が滅菌バッグ150に収容される内視鏡10に装着されると共に、通気アダプター170の他端部が通気路を介して滅菌バッグ150の外側と連通するように配置された状態で、内視鏡10に対してオートクレーブ滅菌が施される。
一般に、オートクレーブ滅菌処理時に内視鏡10(滅菌バッグ150)は高温高圧環境下に置かれるため、内視鏡の密閉内部空間と外部との間に大きな圧力差が生じて、破損等を招く懸念がある。しかしながら本例では、通気アダプター170によって、内視鏡10の内外に圧力差が生じることが確実に防がれる。すなわち、上述のように通気アダプター170が装着された内視鏡10の内部空間は外部と通気可能な開放状態にあるため、オートクレーブ滅菌処理時に内視鏡10の内部空間と外部との間に基本的には圧力差が生じない。したがって、オートクレーブ滅菌処理時の圧力差に起因する破損等の不利益を、本例の通気アダプター170によって回避することができる。
そして、オートクレーブ滅菌処理の終了後、通気アダプター170に対して通気デバイスの接続コネクター74が装着され(図14及び図15参照)、内視鏡10の内部空間56に対する通気処理(気密チェック、換気等)が行われる(S16)。すなわち、オートクレーブ滅菌処理終了時の内視鏡10は、滅菌バッグ150に収容された状態で通気アダプター170が装着されている。したがって、滅菌バッグ150から内視鏡10を取り出すことなく、通気アダプター170を介して通気デバイスの接続コネクター74を内視鏡10に装着することができる。このように、オートクレーブ滅菌処理後に滅菌バッグ150に収容した状態を保持して通気デバイスによる内視鏡10の通気処理を行うことは、ハンドリング性に優れると共に、内視鏡10の滅菌状態をより確実に保持することができる。
なお、接続コネクター74を介して接続される通気デバイスは、特に限定されるものではなく、気密テスターや換気装置等の通気を利用する装置類を通気デバイスとして使用することができる。
図16は、気密テスター(送気器具)72の一例を示す外観斜視図である。図16に示す気密テスター72は、気圧測定ゲージを備えたテスター本体76と、テスター本体76に設けられた手動加圧ポンプ78と、基端部がテスター本体76に接続されると共に先端部に接続コネクター74が設けられるチューブ80とを備える。手動加圧ポンプ78を膨縮操作することによって、手動加圧ポンプ78からの加圧空気を、チューブ80を介して接続コネクター74から噴出することができるようになっている。したがって、この気密テスター72の接続コネクター74を通気アダプター170に装着することで、気密テスター72から内視鏡10の内部空間に送気することができ(図10参照)、内視鏡10の気密性のチェックを適切に行うことができる。同様に、所定の換気装置(図示せず)の接続コネクター74を通気アダプター170に装着して、当該換気装置から内視鏡10の内部空間への空気(乾燥空気)の送出及び内部空間の空気の吸引を繰り返すことで、内視鏡10の内部空間を換気して湿気(水分)を効果的に取り除くことができる。
通気デバイスによる通気処理が終了すると、通気デバイスの接続コネクター74は通気アダプター170から取り外され、滅菌バッグ150に収容され通気アダプター170が装着された状態で内視鏡10は保管される(S18)。このように、滅菌バッグ150に収容され通気アダプター170が装着された状態で内視鏡10を保管することにより、再び通気デバイスによる通気処理等が必要になったとしても、通気アダプター170を介して迅速且つ適切に対応することができ、非常に有用である。
その後、内視鏡10は、通気アダプター170が取り外されて、滅菌バッグ150から取り出され、使用される(S20)。
<有益な効果>
以上説明したように、本例の滅菌バッグ150及び通気アダプター170(内視鏡保管具)によれば、滅菌バッグ150に収容される内視鏡10の密閉内部空間と滅菌バッグ150の外部との間の通気を、通気アダプター170によって容易に確保することができる。
したがって、オートクレーブ滅菌時等のように環境圧力が変動する場合であっても、通気アダプター170による通気によって、内視鏡10の内部空間と外部との間における圧力差の発生を防止し、内視鏡10の破損等を防ぐことができる。
また、通気アダプター170に気密テスターや送気・換気装置を接続することで、滅菌バッグ150に収容されている内視鏡10の内部空間の気密チェックや送気・換気を行うことができる。これにより、内視鏡10を滅菌バッグ150に収容してから使用する直前まで、滅菌バッグ150から内視鏡10を取り出すことなく、内視鏡10の内部空間56に対する通気処理(気密チェック、換気等)を簡便に行うことが可能となる。したがって、使用直前まで内視鏡10を滅菌バッグ150内の滅菌状態維持ゾーン(図15参照)において保管することが可能になり、内視鏡10の滅菌状態の信頼性を向上させることができる。
また、通気アダプター170のアダプター本体172のうち外部フランジ174より先端側(内視鏡コネクター62側)は、滅菌バッグ150の開孔部ブッシュ154の開口径と同じ径を有するため、通気アダプター170が開孔部ブッシュ154内でスライド移動しても、通気アダプター170(アダプター本体172)と開孔部ブッシュ154との間の密着性・気密性を適切に保つことができる。
また、通気アダプター170の外部フランジ174が滅菌バッグ150の外側に配置されるようにすることで、通気アダプター170を滅菌バッグ150の外側から簡単に外部フランジ174に挿入することができ、滅菌バッグ150内の内視鏡10に対する通気アダプター170の装着を簡便に行うことができる。
また、比較的小型で取り扱いが簡単な滅菌バッグ150及び通気アダプター170によって、内視鏡10のオートクレーブ滅菌及び使用直前までの保管を適切に行うことができる。したがって、従来使用・提案されてきた比較的大型の複雑な内視鏡収納容器(特許文献4参照)を準備する必要がなく、コスト面、ハンドリング性、保管スペース等に関して、本願発明に係る滅菌バッグ及び通気アダプターの組み合わせは非常に有利である。
<変形例>
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、他の形態に対しても適宜応用可能である。
例えば、上述の実施形態ではストッパーとして作用するフランジが滅菌バッグ150の外部に形成される通気アダプター170が使用されているが(図8の外部フランジ174参照)、そのようなフランジは滅菌バッグ150の内部に配置されるようにしてもよい。
図17は、通気アダプター170の一変形例を示す断面図である。図17に示す変形例では、外部フランジ174(図8参照)の代わりに、滅菌バッグ150の開孔部ブッシュ154の開口径よりも大きな径を有する内部フランジ175が、通気アダプター170を内視鏡コネクター62に取り付けた時に滅菌バッグ150(開孔部ブッシュ154)の内側(内部)に配置されるようになっている。一方、滅菌バッグ150(開孔部ブッシュ154)の外側には、径方向に突出する抜け防止爪(突出部)177が通気アダプター170のアダプター本体172に設けられており、アダプター本体172のうち抜け防止爪177が形成される箇所の径は滅菌バッグ150の開孔部ブッシュ154の開口径よりも大きな径を有する。抜け防止爪177は、滅菌バッグ150の内部から外部へ押し出し移動可能な程度の弾性を有しており、本変形例の通気アダプター170は滅菌バッグ150の内部から外部へ開孔部ブッシュ154に挿入することで装着される。本変形例によれば、内部フランジ175及び抜け防止爪177が通気アダプター170の開孔部ブッシュ154に対するスライド移動のストッパーとして機能する。すなわち、内部フランジ175と抜け防止爪177とによって規定される範囲(図17の破線Bで示される範囲)において、通気アダプター170は、開孔部ブッシュ154と密着して気密状態を保った状態でスライド移動可能となっている。なお、内部フランジ175と抜け防止爪177とは、開孔部ブッシュ154の厚み(軸方向厚み)以上離間していればよい。
また、内視鏡の使用時に露出する内視鏡の外周部は被験者に直接接触するが、上述の内視鏡内部の密閉空間は被験者に接触することがなく、内視鏡内部の密閉空間と被験者との間は遮断されることとなる。したがって現実的には、内視鏡使用時において、内視鏡の外周部の滅菌状態が確保されていれば十分であり、内視鏡内部の密閉空間は内視鏡の外周部ほどの高度な滅菌状態は要求されないともいえる。しかしながら、内視鏡内部の密閉空間も、内視鏡の外周部と同等の高度な滅菌状態にあることが好ましい。そのため、通気アダプター170(主アダプター通路176)をキャップ等の密閉手段により密閉可能としてもよい。例えばオートクレーブ滅菌後から通気デバイス(接続コネクター74)を取り付けるまでの間や、通気デバイスによる通気処理後(接続コネクター74を通気アダプター170から取り外した後)から内視鏡10の再使用時までの間、密閉手段により通気アダプター170を密閉することにより、通気アダプター170の通気路及び内視鏡10の内部空間56の滅菌状態を良好に保持することが可能である。
このような通気アダプター170の密閉手段は、特に限定されず、例えば上述の内視鏡コネクター62(図4参照)と同様のバルブ本体のスライド移動を利用したコネクター構造を用いてもよい。すなわち、スプリング(付勢手段)により付勢されたスライド可能なバルブ本体をガイド管内に配置し、接続コネクター74が通気アダプター170に取り付けられるとバルブ本体がスプリングの付勢力に対抗してスライド移動して、ガイド管の内外を連通するガイド管開口部とバルブ本体内の通気路(主アダプター通路176)とを連通することができる。一方、接続コネクター74が通気アダプター170から取り外されると、バルブ本体がスプリングの付勢力に対抗してスライド移動して、バルブ本体内の通気路(主アダプター通路176)を外部から遮断することができる。このように、通気デバイスの接続コネクター74の脱着に連動して、通気アダプター170(主アダプター通路176)の密閉及び通気をコントロールする密閉手段によれば、内視鏡10の密閉内部空間の滅菌状態を簡便に保持することができる。
また、上述の実施形態では内視鏡のオートクレーブ滅菌が行われているが、オートクレーブ滅菌以外の滅菌(消毒)処理に対しても本発明を適用することが可能である。そのような他の滅菌(消毒)処理において滅菌バッグ150に収容された内視鏡10を圧力が変動する環境に置く場合には、通気アダプター170によって、内視鏡の内外で通気させて圧力差が生じることを効果的に防ぐことができる。また単なる保管時においても、必要に応じて通気アダプターに通気デバイスを接続することで、内視鏡を滅菌バッグに収容した状態で所望の通気処理を実施することが可能である。
また、滅菌バッグ150の開孔部に挿入装着される通気アダプター170によって滅菌バッグ150内の内視鏡10を滅菌バッグ150の外部と適切に通気させることができる任意の内視鏡10、滅菌バッグ150及び通気アダプター170に対して本発明は適用可能であり、各部間の連結手法や密閉構造も特に限定されない。