JP4009510B2 - 内視鏡用逆止弁キャップおよび当該内視鏡用逆止弁キャップを装着する内視鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オートクレーブ滅菌可能な内視鏡に使用する内視鏡用逆止弁キャップおよび当該内視鏡用逆止弁キャップを装着する内視鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、医療分野において、内視鏡は、広く用いられる。内視鏡は、体腔内等に挿入する細長な挿入部を有している。内視鏡は、挿入部を挿入することで、体腔内の深部等を観察可能である。また、内視鏡は、必要に応じて処置具を用いることで治療処置等を行なうことができる。
一般に、内視鏡は、内視鏡検査後に洗滌、消毒を必要とする。更に、近年、内視鏡は、感染症等に対抗するために滅菌を要求される。
【0003】
従来の消毒滅菌処理は、エチレンオキサイド等のガスや消毒液に頼っていた。しかしながら、周知のように滅菌ガス類は、猛毒である。このため、従来の消毒滅菌処理は、滅菌作業を安全性を確保した状態で行う必要があり、煩雑な作業が要求される。また、従来の消毒滅菌処理は、滅菌後に機器に付着したガスを取り除くためのエアレーションに時間がかかる。このため、従来の消毒滅菌処理は、滅菌後すぐに使用できないという不都合がある。また、従来の消毒滅菌処理は、滅菌ガス類が与える環境への悪影響が問題視されている。更に、従来の消毒滅菌処理は、ランニングコストが高いという問題がある。
一方、従来の消毒滅菌処理は、消毒液で行う場合、この消毒液の管理が煩雑であり、使用後の消毒液の廃棄処理に多大な費用が必要となる問題がある。
【0004】
そこで、最近、オートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)は、主流になりつつある。オートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)は、煩雑な作業を伴わず、滅菌後、すぐに使用でき、しかもランニングコストが安い。
このオートクレーブ滅菌の代表的な条件は、米国規格協会承認、医療機器開発協会発行の米国規格ANSI/AAMI ST37−1992がある。この条件は、プレバキュームタイプで滅菌工程132℃、4分、またグラビティタイプで滅菌工程132℃、10分になっている。このオートクレーブ滅菌の温度は、一般的に115℃〜140℃の間で設定されることが多い。
【0005】
一般的なプレバキュームタイプのオートクレーブ滅菌工程は、滅菌対象の医療機器を収容した滅菌室内を滅菌前に減圧(陰圧)するプレバキューム工程と、その後に、滅菌室内に高圧高温水蒸気を送り込んで滅菌処理を行う滅菌工程と、滅菌処理後、内視鏡を乾燥させるために滅菌室内を再度減圧する乾燥工程とが含まれている。
【0006】
プレバキューム工程は、その後に行われる滅菌工程の際に医療機器の細部にまで蒸気を浸透させるための工程であり、滅菌室内を減圧することによって収容された医療機器全体に高圧高温蒸気が行き渡るようになる。尚、このプレバキューム工程は、エチレンオキサイドガスを使用するガス滅菌においても採用されている。プレバキューム工程及び乾燥工程における滅菌室内の圧力は、大気圧に対して−0.07MPa程度である。一方、滅菌工程時の圧力は、大気圧に対して+0.2MPa程度に設定される場合が多い。
【0007】
一般に、内視鏡は、柔軟性を有する挿入部や、この挿入部が湾曲部を有する場合、これらの外装部材として、ゴム、エラストマー等の柔軟な高分子材料を素材とする外皮チューブが使用されている。また、内視鏡は、薬液浸漬を可能とするために全体を水密に密閉できる構造となっている。
【0008】
従って、内視鏡は、水密状態を保持したままの状態でオートクレーブ滅菌処理を行う。この場合、内視鏡は、プレバキューム工程等の減圧工程の際に、外装の中で最も柔軟な外皮チューブが膨出し易くなり、耐久性が損なわれる虞れがある。同様に、内視鏡は、構成する部品間の接合部の比較的弱い部分に対して内側と外側との圧力差の影響を受けることにより、耐久性が低下してしまう。
【0009】
一方、これに対して、内視鏡は、例えば、特開2000−157483号公報や特開2001−70226号公報,特開2001−87215号公報に記載されているように内視鏡本体の内外を連通する連通路を設け、この連通路に内視鏡本体の内圧が外圧より高い場合にその圧力差により作動して開状態となる逆止弁を取り付けて構成されているものが提案されている。これにより、内視鏡は、オートクレーブ滅菌時の高圧高温水蒸気の浸入を防止可能で、また、内圧の相対的な上昇が防止される。また、内視鏡は、オートクレーブ滅菌後の内外の圧力差が解消され、正常な状態に復帰可能である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の内視鏡は、逆止弁に用いているシール部材がフッ素樹脂もしくはシリコン等のゴム製部材のOリングにグリースを湿布したものを使用していた。このグリースは、洗浄・消毒・滅菌の回数を重ねることで減少し、いずれはなくなる可能性があった。
【0011】
そして、上記従来の内視鏡は、Oリングにグリースがなくなった状態で、例えば、オートクレーブ滅菌を行った場合、オートクレーブ装置内の高温高圧蒸気下で不純物がOリングと弁座に付着することが原因と考えられる逆止弁の固着が発生する可能性があった。この固着が発生すると、逆止弁は、十分な機能を発揮できず、内視鏡の洗浄・消毒・滅菌作業を繁雑にしてしまう。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、洗浄・消毒・滅菌時の逆止弁の固着を防止可能な内視鏡用逆止弁キャップおよび当該内視鏡用逆止弁キャップを装着する内視鏡を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の内視鏡用逆止弁キャップは、内視鏡本体に着脱自在に設けられ、この内視鏡本体の内部と外部とを連通して流体の通過を許容するための連通路を形成した筒状の内外連通手段を備えた内視鏡用逆止弁キャップにおいて、前記連通路の先端開口側に形成された、所定の大きさの内径を有する大径部と、前記大径部の内径より小さい外径を有し、前記大径部の内周部において前記連通路の中心軸上を進退自在に移動可能に配設された弁部と、前記連通路の基端側に形成された、前記弁部の外径よりも小さい内径を有する小径部と、前記連通路において前記大径部と前記小径部とに連接し、前記大径部から前記小径部にかけて徐々に細径化するように形成された弁座部と、前記弁部の基端側と前記小径部との間の空間に配設され、少なくとも前記小径部の内径より大きな外形を有する環状形状を呈する弾性部材により構成されたシール手段であって、前記弁部の移動により当該弁部と前記弁座部との間で圧接され当該連通路を密閉して流体の通過を阻止するシール手段と、少なくとも前記弁座部の表面に形成された非粘着性膜と、を具備したことを特徴とする。
また、本発明の内視鏡は、前記内視鏡用逆止弁キャップを着脱自在とする内視鏡本体を備えたことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は本発明の第1の実施の形態の内視鏡を示す全体構成図、図2は図1の逆止弁キャップの構成を示す断面図、図3は図2のシール部を示す拡大図である。
【0015】
図1に示すように本発明の第1の実施の内視鏡1は、CCD等の固体撮像素子を先端に内蔵する挿入部2と、この挿入部2の基端側に接続され、観察者が把持して種々の操作を行う操作部3と、この操作部3より延出したユニバーサルコード4とから構成される内視鏡本体1Aを有している。
【0016】
内視鏡本体1Aは、ユニバーサルコード4の端部に、周辺機器への接続部であるコネクタ部5が設けられている。このコネクタ部5は、周辺機器である光源装置、カメラコントロールユニット(以下、CCU)に接続するライトガイドコネクタ6と、映像信号伝送用コネクタであるカメラコネクタ7とが設けられている。
【0017】
挿入部2は、先端部8と、湾曲自在で外装に柔軟な外皮チューブ9aを有する湾曲部9と、可撓性を有する可撓管部10とで構成されている。また、操作部3は、湾曲部9の動作を制御する湾曲操作レバー11と、鉗子等の処置具を挿入する処置具挿入口12と、画像のフリーズ、レリーズ等を行うための複数のスイッチ13が設けられている。
【0018】
更に、カメラコネクタ7は、この内側に内視鏡内外を通気するための通気口14が穿設されている。このカメラコネクタ7は、防水キャップ15が着脱自在に取り付け可能となっている。この防水キャップ15をカメラコネクタ7に取り付けることによって、内視鏡本体1Aは、水密に密閉されて、その内部を水密の密封空間として構成され、防水キャップ15を取り外すことによって本体の隔壁内外を通気することができる。
【0019】
内視鏡本体1Aは、流水洗滌、或いは薬液浸漬するとき、この防水キャップ15をカメラコネクタ7に着脱自在に取り付けて、本体全体を水密に密閉し、内部への液体の浸入を阻止している。更に、カメラコネクタ7は、防水キャップ15に代えて逆止弁キャップ200を着脱自在に取り付け可能である。
【0020】
図2に示すように逆止弁キャップ200は、キャップ本体201を備え、このキャップ本体201の底部に、内視鏡本体1Aの内部と外部とを連通して流体の通過を許容するための連通路250を形成した逆止弁202(内外連通手段)が配設されている。
【0021】
この逆止弁202は、前記キャップ本体201の底面に形成され、前記連通路250に設けた大径部250aと、前記連通路250に挿通した弁棒(弁体)203と、この弁棒203の下側端部に設けた弁部203aと、内視鏡本体1Aの内部の圧力が外部の圧力よりも小さいときに前記弁部203aが近接する前記連通路250に設けた小径部201aと、前記弁部203aの首下部分に設けた、Oリングなどのゴム製の環状部材からなるシール部材204(密閉手段)とで構成されている。
【0022】
また、逆止弁202は、弁棒203の上側端部に弁ばね受け部203bが形成され、この弁ばね受け部203bとキャップ本体201の底面との間に、図面上方へ弁棒203を付勢する弁ばね205が配置されている。
そして、逆止弁202は、この弁ばね205の付勢力により、連通口の外面側に形成された弁座201bに対し、シール部材204を介して弁部203aが密着されるようになっている。
【0023】
本実施の形態では、連通路250を通過する流体の残留を防止するために、この流体との摩擦抵抗を低減する特性を有するための被膜を前記シール部材204(密閉手段)の外面に形成して低摩擦被膜部を構成する。
【0024】
即ち、本実施の形態では、逆止弁202は、シール部材204の外表面が低摩擦被膜部として、図3に示すようにダイヤモンドライクカーボン被膜260を形成している。このことにより、内視鏡本体1Aは、連通路250を通過する流体の残留を防止できるようになっている。
【0025】
次に、上記構成による本実施の形態の作用について説明する。
内視鏡1は、使用後、オートクレーブ滅菌可能なものであっても、必ず内視鏡本体1Aの洗滌を行う必要がある。
【0026】
内視鏡1は、流水洗滌時、或いは薬液浸漬時、カメラコネクタ7に穿設されている通気口14から内視鏡本体1Aの内部に液体が浸入しないように、このカメラコネクタ7に防水キャップ15を取り付けて、内視鏡本体1Aの外装全体を密閉し、水密状態を保持する。これにより、洗滌の際、或いは薬液浸漬の際に、内視鏡1は、内視鏡本体1A内部への液体の浸入が阻止され、内装されている各部材の劣化を防止可能である。
【0027】
この場合、内視鏡1は、防水キャップ15に代えて逆止弁キャップ200をカメラコネクタ7に着脱自在に取り付けても、内視鏡本体1Aへの液体の浸入を阻止することが可能である。
【0028】
ここで、内視鏡本体1Aは、流水洗滌時、本体の内圧と外圧とがほぼ等しく、又、薬液浸漬時、本体の内圧に対して外圧がやや高くなる。このため、逆止弁キャップ200は、弁部203aが弁ばね205の付勢力を受け、或いは弁ばね205と外圧との双方の付勢力を受けて弁座201bに対しシール部材204を介して密着されて、水密性が確保される。つまり、前述のような付勢力によって、シール部材204を弁座201bに対して押し付けることで、弁部203aと弁座203bとにシール部材204が押圧されて変形する。そして、この押圧により、変形したシール部材204が流体の通路である小径部201aを閉鎖することで、内視鏡本体1Aの水密性が確保されるようになっている。従って、本実施の形態の内視鏡1は、逆止弁キャップ200を、内視鏡本体1Aの内圧に対し外圧が等しいか、高い条件下では、通常の防水キャップとして機能させることができる。
【0029】
そして、内視鏡本体1Aは、その洗滌が終了した後、カメラコネクタ7から防水キャップ15を取り外される。内視鏡本体1Aは、代わりに、逆止弁キャップ200を取り付けられる。そして、内視鏡本体1Aは、プレバキュームタイプのオートクレーブ滅菌室に収容されてオートクレーブ滅菌処理が行われる。
【0030】
その際、オートクレーブ滅菌は、先ず、滅菌前のプレバキューム工程において、滅菌室内を減圧(陰圧)する。滅菌室内が減圧されると、内視鏡本体1Aは、内圧が外圧に対して相対的に高くなり、やがて、これら内圧と外圧との圧力差が、逆止弁キャップ200の逆止弁202に設けられている弁ばね205の付勢力よりも大きくなる。すると、逆止弁202は、弁棒203が弁ばね205の付勢力に抗して突出動作し、この弁棒203の端部に形成されている弁部203aが弁座201bから離間して、小径部201aを開放する。
【0031】
すると、内視鏡本体1Aは、内部の圧力が、逆止弁202に穿設されている小径部201aから外部に放出され、内部と外部との圧力差がなくなる。
この結果、内視鏡本体1Aは、この外装の中で最も柔軟な外皮チューブ9aの膨出が防止される。
【0032】
また、内視鏡本体1Aは、構成する部品間の接合部の比較的弱い部分も圧力の影響を受ることがなくなり耐久性が向上する。
そして、内視鏡本体1Aは、内圧と外圧とがほぼ等しくなると、逆止弁202の弁部203aが弁ばね205の付勢力を受け、弁座201bに対しシール部材204を介して着座され、小径部201aが再び密閉される。
その後、オートクレーブ滅菌工程は、滅菌室内が大気圧に対しやや高い圧力で滅菌処理が行われる。
【0033】
このため、内視鏡1は、逆止弁202の弁部203aが弁ばね205と外圧との双方の付勢力を受けて弁座201bに、シール部材204を介して密着される。すると、小径部201aは、完全に密閉されて水密性が確保される。つまり、前述のような付勢力によって、シール部材204を弁座201bに対して押し付けることで、弁部203aと弁座203bとにシール部材204が押圧されて変形する。そして、この押圧により、変形したシール部材204が流体の通路である小径部201aを閉鎖することで、内視鏡本体1Aの水密性が確保される。
【0034】
このとき、逆止弁202は、シール部材204の外表面が低摩擦被膜部として、流体との摩擦抵抗を低減する特性のダイヤモンドライクカーボン被膜260を形成しているので、連通路250を通過する流体の残留を防止できるようになっている。
【0035】
また、オートクレーブ滅菌工程において、内視鏡本体1Aは、高圧高温水蒸気により滅菌処理を行っても、蒸気が外装内部に浸入することはなく、本体内部に設けられている観察手段を始めとする各種内蔵物や内部の蒸気による劣化が防止され、耐久性が向上する。
【0036】
尚、この場合、オートクレーブ滅菌時に使用する高圧高温水蒸気は、水密に密閉された内視鏡外装の高分子材料からなる部材等を透過して内視鏡外装内部に徐々に浸入し、また、このとき、内視鏡本体1Aは、120〜140℃程度にまで熱せられるが、外皮チューブ9aが温度変化等の影響により破損することはない。
【0037】
そして、オートクレーブ滅菌が終了した後、内視鏡本体1Aは、滅菌室から取り出されると、本体内部が外気に対し低圧状態となっている。このため、例えば湾曲部9を構成する外皮チューブ9aは、湾曲部9の内部構造体に張り付いた状態となる。
【0038】
このままの状態で、内視鏡本体1Aは、湾曲操作を行えば外皮チューブ9aに損傷を与える可能性はある。しかしながら、内視鏡本体1Aは、使用する際、必ず、その前に、カメラコネクタ7を、図示しないCCUに接続しなければならない。このため、逆止弁キャップ200は、内視鏡本体1Aを使用する前に必ず取り外されることになる。
【0039】
逆止弁キャップ200を取り外すと、内視鏡本体1Aは、カメラコネクタ7に穿設されている通気口14から本体内部に外気が導入される。そして、内視鏡本体1Aは、本体外壁を境とする内圧と外圧との圧力差がなくなる。従って、外皮チューブ9aは、内部構造体に張り付いた状態が解消され、内視鏡本体1Aは正常な状態で使用することができる。
【0040】
このように本実施の形態によれば、内視鏡1は、カメラコネクタ7に内視鏡本体1A内外を連通させる通気口14を設け、オートクレーブ滅菌前に、通気口14を含むカメラコネクタ7に逆止弁キャップ200を取り付ける。これにより、内視鏡1は、滅菌前のプレバキューム工程において、滅菌室内が減圧(陰圧)されたとき、内視鏡本体1Aの内圧と外圧との圧力差により、弁部203aが弁ばね205の付勢力に抗して開く。そして、内視鏡1は、小径部201aが開放されて、内視鏡本体1Aの内圧が外圧とほぼ等しくなる。このため、内視鏡1は、内視鏡本体1Aの湾曲部9を構成する外皮チューブ9aが膨出してしまうことがなく、外皮チューブ9aの耐久性が向上する。
【0041】
また、内視鏡1は、大気圧よりもやや高い圧力下で行われるオートクレーブ滅菌において、逆止弁202の弁部203aが弁ばね205と外圧との双方の付勢力を受けて、弁座201bに対しシール部材204を介して密着される。
【0042】
そして、内視鏡1は、小径部201aが密閉されて、内視鏡本体1Aの内部と外部とが遮断される。このため、内視鏡1は、高圧高温水蒸気が内視鏡本体1Aの内部に浸入することはなく、内視鏡本体1Aの内部に設けられた各種内蔵物や内部材の水蒸気による劣化が防止され、耐久性が向上する。
【0043】
また、このとき、内視鏡1は、シール部材204の外表面が低摩擦被膜部として、流体との摩擦抵抗を低減する特性のダイヤモンドライクカーボン被膜260を形成しているので、連通路250を通過する流体の残留を防止できる。従って、内視鏡1は、逆止弁202の固着を防止することができる。
【0044】
更に、内視鏡1は、オートクレーブ滅菌が完了した後、内視鏡本体1Aを使用する場合、カメラコネクタ7をCCU(図示せず)に接続する。このために、内視鏡1は、内視鏡本体1Aから逆止弁キャップ200が必ず取り外される。このため、内視鏡1は、内視鏡本体1Aから逆止弁キャップ200を取り外したときに、カメラコネクタ7に穿設されている通気口14から内視鏡本体1Aの内部に外気が導入される。
【0045】
そして、内視鏡1は、内視鏡本体1Aの内圧と外圧とに差が無くなり、湾曲部9を構成する外皮チューブ9aが内部構造体に張り付いた状態から解放される。このため、内視鏡1は、実際に内視鏡本体1Aを使用して湾曲操作を行う際に外皮チューブ9aが損傷を受けてしまうことがない。
【0046】
尚、この場合、図示しないが、内視鏡は、コネクタ部5に可撓管部10を介してカメラコネクタ7が接続されているタイプのものであっても、このカメラコネクタ7に逆止弁キャップ200を取り付けてオートクレーブ滅菌をすることにより、上述と同等の作用効果を得ることができる。
【0047】
この結果、本実施の形態の内視鏡1は、オートクレーブ滅菌を繰り返したとしても、シール部材にダイヤモンドライクカーボン膜を形成することで、逆止弁202の固着を防止することができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
図4ないし図9は本発明の第2の実施の形態に係り、図4は本発明の第2の実施の形態の内視鏡を示す全体構成図、図5は図4の防水キャップの構成を示す断面図、図6は図5の通気口金を示す拡大図、図7は取付部材の構成を示す外観斜視図、図8は図7の取付部材を内視鏡本体のカメラコネクタ付近に取り付けた際の説明図、図9は図8の状態から取付部材を防水キャップに取り付ける際の説明図、図10は従来の取付部材を内視鏡本体のカメラコネクタ付近に取り付ける際の説明図である。
【0049】
本第2の実施の形態は、防水キャップ部分以外は上記第1の実施の形態の内視鏡1と同じ構成である。
【0050】
即ち、本第2の実施の形態の内視鏡1Bは、上記第1の実施の形態で説明したのと同様な内視鏡本体1Aを有し、この内視鏡本体1Aのカメラコネクタ7に防水キャップ300が着脱可能となっている。また、内視鏡1Bは、内視鏡本体1Aに防水キャップ300を後述の取付部材313で繋げられるようになっている。
【0051】
先ず、図5及び図6を用いて防水キャップ300を説明する。
図5に示すように防水キャップ300は、この通気口金301に前記内視鏡本体1Aの内部から外部へ流体を通過させ且つ外部から該内視鏡本体1Aの内部へ流体を通過させない連通路350を形成した逆止弁302(内外連通手段)が配設されている。
【0052】
この逆止弁302は、前記連通路350に設けた大径部303と、前記連通路350の中心軸上に進退可能に挿通した弁体(弁棒)304と、前記大径部303の内径よりも小さい外径を有し、前記弁体304の前記大径部303側に配置した弁部305と、前記連通路350に設けた小径部306と、これら弁部305と小径部306との間に設けた弾性を有するOリング307(密閉手段)と、図面左側方向へ前記弁体304を付勢する弁ばね308と、前記弁体304の端部に形成した弁ばね受け部309とから構成される。
【0053】
そして、逆止弁302は、小径部306の外表面が図6に示すように不純物の付着を防止するための例えばフッ素系の非粘着性膜310を形成されている。更に、逆止弁302は、低摩擦被膜部として、Oリング307の外表面にダイヤモンドライクカーボン膜311が形成されている。このことにより、防水キャップ300は、逆止弁部に2重の固着防止対策を施しているので、固着の原因となる不純物が付着し易くなるのを防止できる。
【0054】
また、内視鏡1Bは、取付部材313によって、防水キャップ300を着脱自在に鎖313a等で繋いでおいても良い。
取付部材313は、図7に示すように内視鏡取付部313bとキャップ取付部313cとを鎖313aで繋いで構成される。
【0055】
内視鏡取付部313bは、内視鏡1Bの所定部分に取り付け可能なようにその取付部分の形状に合うよう形成された、例えばゴムのような弾性変形するバンド314が設けられている。このバンド314は、内視鏡1Bの所定部分に巻いて取り付ける際に、その所定部分の大きさが違っても固定することができるように複数の突起315を一端に設け、これら複数の突起315に嵌めるための複数の孔316を他端に形成している。
【0056】
一方、キャップ取付部313cは、例えば、防水キャップ300に取り付け可能な平板317が設けられている。この平板317は、防水キャップ300の通気口金301の外径より少し大きい内径を有する孔318が形成され、更に通気口金301のピン301a(図5参照)を通過させるために孔318から切欠部320が切り欠かれて形成されている。
尚、切欠部320は、偶発的に外れることを防止するために平板317の長手軸317Aから例えば略45度方向に突出して形成されている。
【0057】
このように構成される内視鏡1Bは、流水洗滌時、或いは薬液浸漬時、内視鏡本体1Aのカメラコネクタ7に防水キャップ300を取り付けて、内視鏡本体1Aの外装全体を密閉し、水密状態を保持する。このとき、内視鏡1Bは、取付部材313を用いて内視鏡本体1Aに防水キャップ300を繋げて用いられている。
【0058】
図8に示すように取付部材313は、内視鏡本体1Aの所定部分、この場合、カメラコネクタ7付近に内視鏡取付部313bのバンド314を巻かれ、複数の突起315にそれぞれ対応する複数の孔316を嵌め込まれ固定される。
そして、図9に示すように取付部材313は、キャップ取付部313cの平板317を通気口金301に取り付けて、防水キャップ300を吊し下げる。
【0059】
ここで、図10に示すように従来の取付部材400は、キャップ取付部400cの平板402に形成した孔403に対して切欠部404が平板402の長手軸402Aと平行であり、鎖400aの引っ張っぱられる方向(矢印B)と一致している。
【0060】
このため、従来の取付部材400は、平板402を通気口金301のピン301aに取り付けて防水キャップ300を吊し下げたときに、通気口金301のピン301aから切欠部404が偶発的に外れてしまうことがあった。
【0061】
しかしながら、本実施の形態では、取付部材313は、切欠部320が平板317の長手軸317Aから例えば略45度方向に突出して形成されているので、平板317を通気口金301のピン301aに取り付けて防水キャップ300を吊し下げたときに、ピン301aの方向(矢印C)と切欠部320の切り欠き方向とが一致しなくなり、且つ平板317が鎖313aに引っ張っぱられる方向(矢印B)とも一致しなくなるので、偶発的に外れることを防止している。
【0062】
そして、内視鏡1Bは、取付部材313で繋がった防水キャップ300を内視鏡本体1Aのカメラコネクタ7に防水キャップ300を取り付けて、流水洗滌、或いは薬液浸漬が行われる。
【0063】
このとき、内視鏡1Bは、防水キャップ300が洗浄・消毒時に従来の防止キャップと同様な作用を有すると共に、逆止弁302を設けているので、上記第1の実施の形態で説明した逆止弁キャップ200と同様の作用を有する。
【0064】
そして、内視鏡1Bは、内視鏡本体1Aに対して洗浄、消毒、滅菌全ての過程で同じ防水キャップ300が使用可能であるので、逆止弁部に固着の原因となる不純物が付着し易くなる。
【0065】
しかしながら、本実施の形態の内視鏡1Bは、防水キャップ300がOリング307にダイヤモンドライクカーボン膜311を形成し、小径部306に非粘着性膜310を形成して、2重の固着防止対策を施している。このため、本実施の形態の内視鏡1Bは、固着の原因となる不純物が防水キャップ300に付着し易くなるのを防止できる。
この結果、本第2の実施の形態の内視鏡1Bは、上記第1の実施の形態と同様な効果を得る。
【0066】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0067】
[付記]
(付記項1) 内視鏡本体に着脱自在に設け、この内視鏡本体の内部と外部とを連通して流体の通過を許容するための連通路を形成した筒状の内外連通手段と、
所定の大きさの内径を有して前記連通路に形成した大径部と、
前記大径部の内径より小さい外径を有し、前記連通路の中心軸上を進退可能に構成されて該連通路を開閉するための前記大径部の内部に配置した弁部と、
前記弁部の外径よりも小さい内径を有し、前記内視鏡本体の内部の圧力が外部の圧力よりも小さいときに前記弁部が近接する前記連通路に設けた小径部と、
前記小径部に近接した前記弁部によって該小径部に押し付けられることで前記連通路を密閉して流体の通過を阻止する該弁部と該小径部との間に設けた弾性を有する環状部材で構成する密閉手段と、
前記連通路を通過する流体の残留を防止するために、この流体との摩擦抵抗を低減する特性を有する被膜を前記密閉手段の外面に形成した低摩擦被膜部と、
を具備したことを特徴とする内視鏡。
【0068】
(付記項2) 前記密閉手段は、弾性を有する環状部材で形成されたシール部材であり、
前記低摩擦被膜部は、前記シール部材の外表面に形成したダイヤモンドライクカーボン膜であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【0069】
(付記項3) 内部を密封空間として構成した内視鏡本体と、
前記内視鏡本体に設けた弁体と弁座とから構成し、該内視鏡本体内部から外部へ流体を通過させ且つ外部から内部へ流体を通過させない逆止弁と、
前記逆止弁にて前記内視鏡本体の外部から内部へ流体を通過させないために、前記弁体と前記弁座とに押圧されてこの流体の通路を閉鎖するシール部材と、
前記逆止弁を通過する流体との摩擦抵抗を低減する特性を有する前記シール部材の外表面に形成したダイヤモンドライクカーボン膜と、
を具備したことを特徴とする内視鏡。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、洗浄・消毒・滅菌時の逆止弁の固着を防止可能な内視鏡用逆止弁キャップおよび当該内視鏡用逆止弁キャップを装着する内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の内視鏡を示す全体構成図
【図2】図1の逆止弁キャップの構成を示す断面図
【図3】図2のシール部を示す拡大図
【図4】本発明の第2の実施の形態の内視鏡を示す全体構成図
【図5】図4の防水キャップの構成を示す断面図
【図6】図5の通気口金を示す拡大図
【図7】取付部材の構成を示す外観斜視図
【図8】図7の取付部材を内視鏡本体のカメラコネクタ付近に取り付けた際の説明図
【図9】図8の状態から取付部材を防水キャップに取り付ける際の説明図
【図10】従来の取付部材を内視鏡本体のカメラコネクタ付近に取り付ける際の説明図
【符号の説明】
1…内視鏡
1A…内視鏡本体
2…挿入部
4…ユニバーサルコード
7…カメラコネクタ
9a…外皮チューブ
14…通気口
15…防水キャップ
200…逆止弁キャップ
201…キャップ本体
201a…小径部
202…逆止弁
203…弁棒(弁体)
203a…弁部
203b…弁ばね受け部
204…シール部材(密閉手段)
205…弁ばね
250…連通路
250a…大径部
260…ダイヤモンドライクカーボン被膜
Claims (3)
- 内視鏡本体に着脱自在に設けられ、この内視鏡本体の内部と外部とを連通して流体の通過を許容するための連通路を形成した筒状の内外連通手段を備えた内視鏡用逆止弁キャップにおいて、
前記連通路の先端開口側に形成された、所定の大きさの内径を有する大径部と、
前記大径部の内径より小さい外径を有し、前記大径部の内周部において前記連通路の中心軸上を進退自在に移動可能に配設された弁部と、
前記連通路の基端側に形成された、前記弁部の外径よりも小さい内径を有する小径部と、
前記連通路において前記大径部と前記小径部とに連接し、前記大径部から前記小径部にかけて徐々に細径化するように形成された弁座部と、
前記弁部の基端側と前記小径部との間の空間に配設され、少なくとも前記小径部の内径より大きな外形を有する環状形状を呈する弾性部材により構成されたシール手段であって、前記弁部の移動により当該弁部と前記弁座部との間で圧接され当該連通路を密閉して流体の通過を阻止するシール手段と、
少なくとも前記弁座部の表面に形成された非粘着性膜と、
を具備したことを特徴とする内視鏡用逆止弁キャップ。 - さらに、前記シール手段の外表面に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用逆止弁キャップ。 - 請求項1または請求項2に記載の内視鏡用逆止弁キャップを着脱自在とする内視鏡本体を備えたことを特徴とする内視鏡。
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