JP5287076B2 - フライホイールの製造方法及びフライホイール - Google Patents

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本発明は、例えば内燃機関の出力軸(クランクシャフト)に連結されるフライホイールに関し、さらに詳しくは、ホイール部とこのホイール部の外周部に組み付けられたリングギヤとを備えたフライホイールの製造方法、及び、その製造方法を採用して製造されるフライホイールに関する。
内燃機関(以下、エンジンともいう)が搭載された車両においては、エンジンの始動時やアイドル運転時の不安定な回転速度変動、及び、それに起因するエンジン停止を防止する等の目的から、エンジンのクランクシャフトにフライホイールを連結し、このフライホイールを介してエンジンの出力を外部要素(クラッチや変速機など)に伝達するようにしている。
マニュアル車に適用されるフライホイールでは、変速機(手動変速機)側の面にクラッチ摩擦面が形成されており、このクラッチ摩擦面にクラッチ機構のクラッチディスクが圧接されることによって、エンジンのクランクシャフトと変速機の入力軸とが連結され、エンジンの回転力がフライホイールを介して変速機の入力軸に伝達される。なお、オートマッチ車では、エンジンの回転速度変動はトルクコンバータにて吸収されるので、フライホイールを設けない場合が多い。
また、エンジンのクランクシャフトに連結されるフライホイール部の外周部にはリングギヤが設けられている(例えば、特許文献1〜3参照)。リングギヤには、エンジン始動時にスタータモータのピニオンギヤが噛み合わされ、そのスタータモータの回転力によってエンジンのクランクシャフトが回転駆動(クランキング)される。ピニオンギヤは、フライホイールの回転軸心と平行な方向に往復移動可能であり、エンジン始動時には上記したリングギヤとの噛み合い位置に移動され、エンジン始動以外のときは、リングギヤとの噛み合いが解除される待機位置に配置される。
このようなリングギヤ付きのフライホイールは、例えば、ホブ切りやピニオンカッタなどによる切削加工にてギヤ(平歯車)を加工したリングギヤを、フライホイール(ホイール部)の外周部に、圧入や焼ばめ等で組み付けることによって製作されている。
ところで、オートマチック車とマニュアル車とにおいて、エンジンブロック及びクランクシャフトなどの各部品及びそれら部品のレイアウトを共通化する場合、マニュアル車に用いるフライホイールの形状寸法が制約を受ける場合がある。例えば、オートマチック車ではフライホイールの設置スペースを考慮したレイアウトとなっていないことが多く、このため、例えばオートマチック車を想定してレイアウト設計を実施した後、そのレイアウトをマニュアル車に流用した場合、マニュアル車用のフライホイールの形状寸法が制約を受ける。このような寸法的な制約下で、フライホイールの軽量化の要求を満足するには、フライホイールの形状を工夫する必要がある。そのフライホイールの一例を図6に示す。
この例のフライホイール501は、略円盤形状のホイール部(例えば鋳鉄製)502とリングギヤ(例えば鋼材製)503とを備え、ホイール部502の外周部にリングギヤ503を焼ばめによって組み付ける構造となっている。ホイール部502には、クランクシャフト取付面521及びクラッチ摩擦面522が形成されている。また、ホイール部502の外周部には、クランクシャフト取付面521側(エンジン側)に延出するリム部523が一体形成されており、このリブ部523の先端部分に、リングギヤ503を組み付ける嵌合面524が形成されている。そして、この例のフライホイール501においては、クランクシャフト取付面521の周辺部の肉厚を薄くして軽量化を図るとともに、リングギヤ503の嵌合面524の位置を、エンジン側でクランクシャフト取付面521に対応する位置までシフトすることで、軸方向の寸法を小さくしている。
特開2001−3990号公報 特開平11−201234号公報 実開平6−84048号公報
図6に示す構造のフライホイール501では、軽量化及び寸法の縮小化を図っているために、リングギヤ503をホイール部502に焼ばめによって組み付ける際に不具合が発生する。
具体的には、図6のフライホイール501では剛性が弱いため(特に、クランクシャフト取付面521とクラッチ摩擦面522との間の屈曲部(図6に示すA部)の剛性が弱いため)、リム部503の先端部分の嵌合面524にリングギヤ503を焼ばめによって組み付けると、リングギヤ503が収縮する際に、図6の矢印(実線)で示す向きの回転モーメントが働き、ホイール部502が変形してリム部503が内側(クランクシャフト取付面521側)に傾く。このため、リングギヤ503の組み付け後において、図7に示すように、リングギヤ503がフライホイール501の回転軸心Lに対して垂直に組み付かず、リングギヤ503の歯すじが回転軸心Lに対して傾いてしまう。なお、図7では、問題点をわかり易くするために、リングギヤ503及び嵌合面524の傾きを誇張して示している。
このような状態になると、スタータモータのピニオンギヤ400とリングギヤ503との噛み合いが不適正となり、リングギヤ503の摩耗や異音の発生につながる。また、オーバーピン法にて測定するオーバーピン径(OPD:Over Pin Diameter)が小さくなり、オーバーピン径が許容寸法範囲から外れて不良品が発生する場合がある。オーバーピン法は、歯車について、2つの測定子(玉またはピン)を直径上の相対する歯溝に挿入し、オーバーピン径(2つの測定子間の距離)を測定する方法である。
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、ホイール部の外周部にリングギヤを組み付けるにあたり、リングギヤを適正な状態に組み付けることが可能な製造方法、及び、そのような製造方法を用いて製造されるフライホイールの提供を目的とする。
本発明の製造方法は、ホイール部と、このホイール部の外周部に焼ばめにより組み付けられたリングギヤとを備えたフライホイールの製造方法であって、前記リングギヤを前記ホイール部に組み付ける前の、前記ホイール部のリングギヤとの嵌合面を、当該フライホイールの回転軸心に対して傾斜するテーパ形状とし、前記テーパ形状の嵌合面を、前記リングギヤの焼ばめの際の収縮によって前記ホイール部が変形する方向に対して逆側に傾斜させるとともに、当該嵌合面の傾斜角を、前記リングギヤの焼ばめの際の収縮によって前記ホイール部が変形した後の前記嵌合面が前記フライホイールの回転軸心と平行な面となるように設定し、前記嵌合面に前記リングギヤを組み付けることを特徴とする。より具体的には、リングギヤをホイール部に組み付ける際のホイール部の変形を考慮し、リングギヤを組み付ける前の前記嵌合面の傾斜角(テーパ角の1/2)を、ホイール部にリングギヤを組み付けた後の当該リングギヤの歯すじがフライホイールの回転軸心と平行な方向に沿うような角度に設定することを特徴とする。
このように、リングギヤをホイール部に組み付ける前の、ホイール部のリングギヤとの嵌合面を、当該フライホイールの回転軸心に対して傾斜するテーパ形状とすることで、リングギヤを焼ばめによってホイール部に組み付ける際にホイール部が変形しても、組付後のリングギヤのフライホイール回転軸心に対する直角度を確保することができる。
なお、本発明を、ホイール部にリングギヤを焼ばめによって組み付けた後においてリングギヤが傾かない剛性を有するフライホイールに適用すると、設計変更等によりホイール部の剛性を低く設定しても、ホイール部にリングギヤを適正な状態で組み付けることが可能になるので、フライホイールの軽量化を達成することができる。
本発明のフライホイールによれば、上記した特徴を有する製造方法によって、ホイール部にリングギヤが適正な状態で組み付けられているので、リングギヤの摩耗や異音の発生を抑制することができる。
本発明によれば、ホイール部と、このホイール部の外周部に組み付けられたリングギヤとを備えたフライホイールにおいて、リングギヤをホイール部に適正な状態で組み付けることができるので、スタータモータのピニオンギヤとの噛み合いが適正になる。さらに、リングギヤのオーバーピン径を許容寸法範囲内に収めることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態は、自動車用エンジンのクランクシャフトの一端に連結されて、エンジンを安定的に回転させることを目的として設けられたフライホイールに、本発明を適用した場合について説明する。
図1は本発明のフライホイールの一例を示す斜視図である。図2は、そのフライホイールの正面図であり、図3は図2のX−X断面図である。
この例のフライホイール1は、ホイール部2と、このホイール部2の外周部に組み付けられたリングギヤ3とによって構成されている。リングギヤ3には、スタータモータのピニオンギヤ400(図3参照)がエンジン始動に際して噛み合わされ、そのスタータモータの駆動力でエンジンのクランクシャフト100(図4参照)が回転されるようになっている。
ホイール部2は略円盤形状の部材であって、エンジン側となる面にクランクシャフト取付面21が形成されており、変速機側となる面にクラッチ摩擦面22が形成されている。このクラッチ摩擦面22に対向してクラッチディスク202が配置される(図4参照)。
また、ホイール部2の外周部には、クランクシャフト取付面21側(エンジン側)に延出するリム部23が一体形成されており、このリム部23の先端部分に、リングギヤ3を組み付ける嵌合面24が形成されている。そして、このホイール部2の嵌合面24にリングギヤ3が焼ばめによって組み付けられている。なお、嵌合面24の形状については後述する。
この例のフライホイール1は、マニュアル車に適用されるフライホイールであって、例えば図4に示すように、フライホイール1の変速機側に、クラッチカバーアセンブリ200、レリーズベアリング301、及び、レリーズフォーク302などが配置される。クラッチカバーアセンブリ200は、ホイール部2に固定されるクラッチカバー201、クラッチディスク202を押圧するプレッシャプレート203、及び、ダイヤフラムスプリング204などを備えている。
以上のクラッチディスク202、クラッチカバーアセンブリ200、及び、フライホイール1のホイール部2などによってクラッチが構成される。そして、このような構成のクラッチにおいて、プレッシャプレート203が、ダイヤフラムスプリング204の弾性力によってフライホイール1側に向けて押圧されており、そのダイヤフラムスプリング204の弾性力によってクラッチディスク202がホイール部2のクラッチ摩擦面22に圧接されてクラッチ係合状態となる。
一方、フライホイール1の変速機側に配置されたレリーズフォーク302及び油圧アクチュエータ(図示せず)などによってレリーズベアリング301をホイール部2側に向けて移動させると、プレッシャプレート203がフライホイール1から離れる側に前記ダイヤフラムスプリング204の弾性力に抗して移動し、これによってクラッチディスク202がホイール部2のクラッチ摩擦面22から離れてクラッチ解放状態となる。
次に、この例の特徴部分について図3及び図5を参照して説明する。
まず、この例のフライホイール1では、エンジンのクランクシャフト側(変速機側)の設置スペースが狭いレイアウトであっても、これに対応できるように、図7に示すフライホイール501と同様に、リングギヤ3の嵌合面24の位置を、エンジン側でクランクシャフト取付面21に対応する位置にシフトして軸方向の寸法を小さくしている。また、クランクシャフト取付面21の周辺部の肉厚を薄くして軽量化を図っている。
このように、フライホイール1の軽量化及び寸法の縮小化を図った場合、上述したように、リングギヤ組み付け後において、図7に示すように、リングギヤ503がフライホイール501の回転軸心Lに対して垂直に組み付かず、リングギヤ503の歯すじが回転軸心Lに対して傾いてしまう。このような状態になると、スタータモータのピニオンギヤ400とリングギヤ503との噛み合いが不適正となり、リングギヤ503の摩耗や異音の発生につながる。また、オーバーピン径が小さくなり、オーバーピン径が許容寸法範囲から外れて不良品が発生する場合がある。
こうした点を解消するため、この例では、図5に示すように、リングギヤ3を組み付ける前のホイール部2の嵌合面24を、当該フライホイール1の回転軸心Lに対して傾斜(リングギヤ組付時にホイール部2が変形する方向に対して逆側に傾斜)するテーパ形状とし、そのテーパ形状の嵌合面24にリングギヤ3を組み付けることによって、図3に示すように、リングギヤ3を適正な位置に組み付けたフライホイール1を得ることを特徴としている。なお、図5では、嵌合面24のテーパ形状をわかり易くするために、フライホイール1の回転軸心Lに対する嵌合面24の傾斜角α/2(テーパ角αの1/2)を誇張して示している。
ここで、嵌合面24の傾斜角α/2については、嵌合面24にリングギヤ3を焼ばめによって組み付けた際に、リングギヤ3の収縮によりホイール部2が変形する変形量(具体的には、図7に示すホイール部521の変形による嵌合面524の傾き量)を予め実験・計算等によって取得しておき、その変形量(傾き量)を考慮し、リングギヤ3の組付後の嵌合面24がフライホイール1の中心軸線Lと平行な面となるように傾斜角α/2を設定する。このような設定により、ホイール部2へのリングギヤ3の組付後の、リングギヤ3のフライホイール1の回転軸心Lに対する直角度を確保することができ、リングギヤ3の歯すじをフライホイール1の回転軸心Lと平行に配置することができる。
このように、この例によれば、リングギヤ3をホイール部2に適正な状態で組み付けることができるので、リングギヤ3とピニオンギヤ400との噛み合いが適正になる。さらに、リングギヤ3のオーバーピン径を許容寸法範囲内に収めることができる。
−他の実施形態−
以上の例では、車両の搭載されるエンジンのクランクシャフトに連結されるフライホイールに本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られず、種々の装置の回転軸に連結されるフライホイールにも適用可能である。
なお、本発明は、図1〜図3に示す形状のフライホイール1に限られることなく、ホイール部の外周部にリングギヤを組み付けるフライホイールであれば、他の任意の形状のフライホイールにも適用可能である。また、本発明は、トーショナルダンパを備えたリングギヤ付きのフライホイールにも適用できる。
本発明のフライホイールの実施形態を示す斜視図である。 図1に示すフライホイールの正面図である。 図2のX−X断面図である。 図1のフライホイールの断面図とクラッチカバーアセンブリの概略構成図とを併記して示す図である。 リングギヤ3を組み付ける前のホイール部2の要部拡大断面図である。 フライホールの一例を示す縦断面図である。 図6のフライホイールの問題点を説明する図である。
符号の説明
1 フライホイール
2 ホイール部
21 クランクシャフト取付面
22 摩擦クラッチ取付面
23 リム部
24 嵌合面(テーパ面)
3 リングギヤ

Claims (3)

  1. ホイール部と、このホイール部の外周部に焼ばめにより組み付けられたリングギヤとを備えたフライホイールの製造方法であって、
    前記リングギヤを前記ホイール部に組み付ける前の、前記ホイール部のリングギヤとの嵌合面を当該フライホイールの回転軸心に対して傾斜するテーパ形状とし、前記テーパ形状の嵌合面を、前記リングギヤの焼ばめの際の収縮によって前記ホイール部が変形する方向に対して逆側に傾斜させるとともに、当該嵌合面の傾斜角を、前記リングギヤの焼ばめの際の収縮によって前記ホイール部が変形した後の前記嵌合面が前記フライホイールの回転軸心と平行な面となるように設定し、前記嵌合面に前記リングギヤを組み付けることを特徴とするフライホイールの製造方法。
  2. 請求項1に記載のフライホイールの製造方法において、
    前記リングギヤを組み付ける前の前記嵌合面の傾斜角を、前記リングギヤを前記ホイール部に組み付ける際のホイール部の変形を考慮し、前記ホイール部に前記リングギヤを組み付けた後の当該リングギヤの歯すじが前記フライホイールの回転軸心と平行な方向に沿うような角度に設定することを特徴とするフライホイールの製造方法。
  3. ホイール部の外周部にリングギヤが設けられたフライホイールであって、
    請求項1または2に記載の製造方法によって、前記ホイール部に前記リングギヤが組み付けられていることを特徴とするフライホイール。
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