JP5284991B2 - 珪化鉄スパッタリングターゲットの製造方法及び珪化鉄スパッタリングターゲット - Google Patents
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Description
しかし、インジウムは資源寿命が極めて少なく、20年程度が採掘可能年数と云われており、また砒素は周知のように毒性の強い元素である。このようなことから、現在広範囲に使用されている光通信用半導体材料は、使用上に大きな問題があると云わざるを得ない。
特に、製品寿命の短い携帯電話に使用されているガリウム・砒素の半導体素子は、強い毒性を持つ砒素があるために、これらの廃棄処理が大きな問題となっている。
しかし、このβFeSi2は問題がないわけではなく、現在のところインジウム・燐、ガリウム・砒素等の化合物半導体に匹敵するような高品質な材料に作製するための技術が確立されていないことである。
しかし、この方法では成膜時及びアニール時に基板を長時間、高温に加熱する必要があるため、デバイス設計に制限があり、またシリサイド化反応が基板からのSiの拡散によるため、厚いβFeSi2膜を形成することが困難であるという問題がある。
この方法に類似する方法として、基板をFeとSiが反応する温度、すなわち470°Cに維持しながら、Si基板上にFeを堆積していく方法も提案されているが、同様の問題がある。
しかし、この方法ではスパッタ工程が複雑になり、また膜の厚さ方向の均一性をコントロールするのが難しいという問題がある。
上記の方法は、いずれもSi基板上にFeを成膜した後にアニールすることを前提としているが、長時間の高温で加熱するこれらの方法においては、膜状に形成されていたものが、アニールの進行とともにβFeSi2が島状に凝集するという問題も指摘されている。
また、FeとSiのブロックを所定の面積比で配置したターゲット(モザイクターゲット)の提案もなされたが、FeとSiのスパッタのされ方(スパッタレート)が大きく異なるため、所定の膜組成を大きな基板に成膜することは困難であり、さらにFeとSiの接合界面でのアーキングやパーティクル発生が避けられなかった。
また、Fe粉末とSi粉末を含む原料粉末を粉砕混合する工程と、粉砕混合された粉末を成型する工程と、成形された材料を焼結する工程よりなるβFeSi2の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、フェロシリコンと鉄粉末を混合し、ついで焼結温度900〜1100°Cの不活性雰囲気で加圧焼結する鉄シリサイド熱電材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、不活性ガスでジェットミル粉砕して得た微粉砕粉に所定量の遷移金属粉末を混合することにより、残留酸素量が少なく平均粒径数μm以下の微粉末が容易に得られ、されに、スプレードライヤー装置によりスプレー造粒した後、プレス、焼結することによりFeSi2系熱電変換素子用原料粉末の製造方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
さらにまた、粒径がナノメートルオーダーの金属シリサイド半導体粒子であるβ−鉄シリサイド半導体素子が、多結晶シリコン中に粒子状に分散した金属シリサイド発光材料が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
2.酸化鉄を水素還元する際に、600°C以下の水素気流中で還元することを特徴とする上記1)記載の珪化鉄スパッタリングターゲットの製造方法。
3.酸化鉄を水素還元する際に、500°C以下の水素気流中で還元することを特徴とする上記1)記載の珪化鉄スパッタリングターゲットの製造方法。
5.酸素が1500ppm以下であることを特徴とする上記4)記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
6.酸素が1000ppm以下であることを特徴とする上記4)記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
7.ガス成分を除く不純物が500ppm以下であることを特徴とする上記4)〜6)のいずれかに記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
8.ガス成分を除く不純物が50ppm以下であることを特徴とする上記4)〜6)のいずれかに記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
9.ガス成分を除く不純物が10ppm以下であることを特徴とする上記4)〜6)のいずれかに記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
10.上記1)〜3)のいずれかの製造方法によって得られた珪化鉄スパッタリングターゲット。
また、本明細書において使用する珪化鉄粉末は、珪化鉄及び珪化鉄を主成分とし少量の他の添加元素を含む粉末を意味し、本発明はこれらを全て包含する。
ターゲット中のガス成分である酸素を低減させることによって、スパッタリングの際の、パーティクルの発生を抑制し、ユニフォーミティと膜組成が均一な成膜が可能となる。ガス成分を除く不純物は500ppm以下、好ましくは50ppm以下、さらには10ppm以下とし、純度の高い珪化鉄粉末を得ることができ、上記と同様の効果を得ることができる。なお、ガス成分とは、定量分析を行なう際に、ガス状態になって検出される元素を意味する。
以上の珪化鉄粉末を使用することによって、ターゲット組織の平均結晶粒径を300μm以下に、又は150μm以下に、さらには75μm以下とすることが可能となる。このように結晶粒径の小さい珪化鉄ターゲットは、アーキングやパーティクルの発生を抑制し、安定した特性を持つβFeSi2薄膜を製造することができる。
このような珪化鉄ターゲットの場合、すなわちβ相(半導体相)への相変態が抑制されζα相が残存する場合には、ターゲットに安定したバイアス電圧を印加できるので、プラズマ密度が上げ易く、スパッタガス圧を低く抑えることができるので、ガス損傷の少ない良好な膜を得ることができるという優れた効果が得られる。
その具体例を示すと、例えば純度3N(ガス成分除く)レベルの鉄を塩酸で溶解してイオン交換膜・溶離法で精製し、この高純度鉄塩溶液を乾固・酸化焙焼(酸素気流中で加熱することが望ましい)して、酸化鉄(Fe2O3)とする。これによって、4〜5N(ガス成分を除く)レベルの高純度酸化鉄を得ることができる。以上の高純度酸化鉄を得る方法については、特に制限はない。
酸化鉄を水素還元する際には600°C以下、好ましくは500°C以下の水素気流中で還元して比表面積0.2m2/g以上の鉄粉末を作製し、この鉄粉末を用いて珪化鉄粉末を製造することが望ましい。なお、400°C以下では還元時間がかかり過ぎるので、それ以上が望ましい。
以上によって、ζα(αFe2Si5相又はαFeSi2相とも言われる)(金属相)の残存率が高い微粉末が得られる。
このようにして得られた珪化鉄微粉末は、ホットプレス、熱間静水圧プレス又は放電プラズマ焼結法で焼結しターゲットとすることができる。焼結に際しては、特に放電プラズマ焼結法が望ましい。この放電プラズマ焼結法によれば、結晶粒成長を抑え、高密度、高強度のターゲットを焼成することができる。
主に、ζα相(金属相)単相であると、スパッタリング時にターゲットに安定したバイアス電圧を印加できるので、プラズマ密度が上げ易く、スパッタガス圧が低く抑えられるのでガス損傷の少ない良好な膜を得ることができる。
本発明の珪化鉄微粉末を使用することによって、ガス成分を除去し、パーティクルの発生が少なく、ユニフォーミティと膜組成が均一で、スパッタ特性が良好であるスパッタリングターゲットを得ることができる。
高純度透明石英の管状炉で精製した塩化鉄を焙焼し、この酸化鉄を連続して水素気流中(水素流量20リットル/min)、500°Cで約3時間水素還元して鉄粉末を作製した。
この鉄粉末の比表面積(BET法による)は0.62m2/gであった。この微粉末と純度5NのSi粉末(比表面積1.6m2/g)とをFe:Si=1:1の混合比で混合し、真空中1350°C(液相が出現する1410°C以下)で、FeSiを合成した。
また、XRD測定(CuKα線回折ピーク)からβFeSi2のメインピーク(2θ=29°)は観察されなかった。
実施例1の水素還元温度、原料鉄粉末の比表面積、合成工程(2段階)、粉砕性、得られた珪化鉄粉末の比表面積、酸素含有量、焼結体ターゲットの相対密度、焼結体の酸素含有量を、それぞれ表1に示す。
高純度透明石英の管状炉で精製した塩化鉄を焙焼し、この酸化鉄を連続して水素気流中(水素流量20リットル/min)、900°Cで約3時間水素還元して鉄粉末を作製した。
この鉄粉末の比表面積(BET法による)は0.21m2/gであった。この微粉末と純度5NのSi粉末(比表面積1.6m2/g)とをFe:Si=1:1の混合比で混合し、真空中1350°C(液相が出現する1410°C以下)で、FeSiを合成した。
また、XRD測定(CuKα線回折ピーク)からβFeSi2のメインピーク(2θ=29°)は観察されなかった。
実施例2の水素還元温度、原料鉄粉末の比表面積、合成工程(2段階)、粉砕性、得られた珪化鉄粉末の比表面積、酸素含有量、焼結体ターゲットの相対密度、焼結体の酸素含有量を、それぞれ表1に示す。
高純度透明石英の管状炉で精製した塩化鉄を焙焼し、この酸化鉄を連続して水素気流中(水素流量20リットル/min)、650°Cで約3時間水素還元して鉄粉末を作製した。
この鉄粉末の比表面積(BET法による)は0.47m2/gであった。この微粉末と純度5NのSi粉末(比表面積1.6m2/g)とをFe:Si=1:1の混合比で混合し、真空中1350°C(液相が出現する1410°C以下)で、FeSiを合成した。
また、XRD測定(CuKα線回折ピーク)からβFeSi2のメインピーク(2θ=29°)は観察されなかった。
実施例3の水素還元温度、原料鉄粉末の比表面積、合成工程(2段階)、粉砕性、得られた珪化鉄粉末の比表面積、酸素含有量、焼結体ターゲットの相対密度、焼結体の酸素含有量を、それぞれ表1に示す。
高純度透明石英の管状炉で精製した塩化鉄を焙焼し、この酸化鉄を連続して水素気流中(水素流量20リットル/min)、500°Cで約3時間水素還元して鉄粉末を作製した。
この鉄粉末の比表面積(BET法による)は0.6m2/gであった。この微粉末と純度5NのSi粉末(比表面積1.6m2/g)とをFe:Si=1:2の混合比で混合し、真空中1050°C(液相が出現する1410°C以下)で、1段でFeSi2を合成した。
この合成塊の比表面積は0.06m2/gであり、ボールミルによる粉砕は容易ではなかった。ガス分析(LECO法)の結果、この珪化鉄(FeSi2)粉末の酸素量は2500ppmと多かった。
比較例1の水素還元温度、原料鉄粉末の比表面積、合成工程(2段階)、粉砕性、得られた珪化鉄粉末の比表面積、酸素含有量、焼結体ターゲットの相対密度、焼結体の酸素含有量を、それぞれ表1に示す。
高純度透明石英の管状炉で精製した塩化鉄を焙焼し、この酸化鉄を連続して水素気流中(水素流量20リットル/min)、1000°Cで約3時間水素還元して鉄粉末を作製した。
この鉄粉末の比表面積(BET法による)は0.08m2/gであった。この微粉末と純度5NのSi粉末(比表面積1.6m2/g)とをFe:Si=1:1の混合比で混合し、真空中1350°C(液相が出現する1410°C以下)で、FeSiを合成した。
次に、Fe:Si=1:2になるように、不足分のSi粉末をボールミルで混合粉砕を行った。この混合微粉砕粉末を真空中1050°Cで合成した。この合成塊の比表面積は0.03m2/gであり、ボールミルによる粉砕は不良であった。ガス分析(LECO法)の結果、この珪化鉄(FeSi2)粉末の酸素量は340ppmと低かった。
比較例2の水素還元温度、原料鉄粉末の比表面積、合成工程(2段階)、粉砕性、得られた珪化鉄粉末の比表面積、酸素含有量、焼結体ターゲットの相対密度、焼結体の酸素含有量を、それぞれ表1に示す。
市販の5Nレベルの鉄粉末を使用した。この鉄粉末の比表面積(BET法による)は0.12m2/gであった。この微粉末と純度5NのSi粉末(比表面積1.6m2/g)とをFe:Si=1:2の混合比で混合し、真空中1350°C(液相が出現する1410°C以下)で、1段でFeSi2を合成した。
この合成塊の比表面積は0.11m2/gであり、ボールミルによる粉砕は不良であった。ガス分析(LECO法)の結果、この珪化鉄(FeSi2)粉末の酸素量は2300ppmと極めて多かった。
比較例3の水素還元温度、原料鉄粉末の比表面積、合成工程(2段階)、粉砕性、得られた珪化鉄粉末の比表面積、酸素含有量、焼結体ターゲットの相対密度、焼結体の酸素含有量を、それぞれ表1に示す。
市販の5Nレベルの鉄粉末を使用した。この鉄粉末の比表面積(BET法による)は0.55m2/gであった。この微粉末と純度5NのSi粉末(比表面積1.6m2/g)とをFe:Si=1:2の混合比で混合し、真空中1350°C(液相が出現する1410°C以下)で、1段でFeSi2を合成した。
この合成塊の比表面積は0.08m2/gであり、ボールミルによる粉砕は不良であった。ガス分析(LECO法)の結果、この珪化鉄(FeSi2)粉末の酸素量は3200ppmと極めて多かった。
比較例4の水素還元温度、原料鉄粉末の比表面積、合成工程(2段階)、粉砕性、得られた珪化鉄粉末の比表面積、酸素含有量、焼結体ターゲットの相対密度、焼結体の酸素含有量を、それぞれ表1に示す。
市販の5Nレベルの鉄粉末を使用した。この鉄粉末の比表面積(BET法による)は0.58m2/gであった。この微粉末と純度5NのSi粉末(比表面積1.6m2/g)とをFe:Si=1:1の混合比で混合し、真空中1350°C(液相が出現する1410°C以下)で、1段でFeSiを合成した。
次に、Fe:Si=1:2になるように、不足分のSi粉末をボールミルで混合粉砕を行った。この混合微粉砕粉末を真空中1050°Cで合成した。
この合成塊の比表面積は0.44m2/gであり、ボールミルによる粉砕は良好であった。ガス分析(LECO法)の結果、この珪化鉄(FeSi2)粉末の酸素量は4300ppmと極めて多かった。
比較例5の水素還元温度、原料鉄粉末の比表面積、合成工程(2段階)、粉砕性、得られた珪化鉄粉末の比表面積、酸素含有量、焼結体ターゲットの相対密度、焼結体の酸素含有量を、それぞれ表1に示す。
この結果ターゲットの相対密度はいずれも90%以上、平均結晶粒径は300μm以下、ζαの面積率は70%以上、膜の均一性(ユニフォーミティ、3σ)が良好、パーティクルの発生は著しく低く、スパッタ性が良好であるという結果が得られた。
これに対して、比較例はいずれも珪化鉄粉末中の酸素含有量が高く、またβFeSi2の割合が高く、この珪化鉄粉末を用いて焼結したターゲットは、パーティクルの発生が顕著で、剥離し易い膜が形成された。そして、これらはスパッタ成膜の品質を低下させる原因となった。
Claims (10)
- 酸化鉄を水素で還元して比表面積0.2m 2 /g以上の鉄粉末を作製し、この鉄粉末とSi粉末を非酸化性雰囲気中で加熱して主にFeSiからなる合成粉末を作製し、さらに再度Si粉末を添加混合し非酸化性雰囲気で加熱して得られた珪化鉄粉末を焼結することを特徴とする珪化鉄スパッタリングターゲットの製造方法。
- 酸化鉄を水素還元する際に、600°C以下の水素気流中で還元することを特徴とする請求項1記載の珪化鉄スパッタリングターゲットの製造方法。
- 酸化鉄を水素還元する際に、500°C以下の水素気流中で還元することを特徴とする請求項1記載の珪化鉄スパッタリングターゲットの製造方法。
- 結晶構造が、ζα相であるか又は主要相がζα相であることを特徴とする珪化鉄スパッタリングターゲット。
- 酸素が1500ppm以下であることを特徴とする請求項4記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
- 酸素が1000ppm以下であることを特徴とする請求項4記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
- ガス成分を除く不純物が500ppm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
- ガス成分を除く不純物が50ppm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
- ガス成分を除く不純物が10ppm以下であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の珪化鉄スパッタリングターゲット。
- 請求項1〜3のいずれかの製造方法によって得られた珪化鉄スパッタリングターゲット。
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