JP5284058B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
さらに、耐熱性の高いアクリル系樹脂は、比較的強度が弱く、靭性が低いため、フィルムの成形加工性やハンドリング性の面で生産性が劣ることが懸念される。耐熱系アクリルの強度を向上させる技術として、グルタル酸無水物単位を含有するアクリル樹脂に多層構造を有する架橋弾性体を含有させる技術が開示されている(特許文献3参照)。また、無水マレイン酸単位を含有するアクリル樹脂にアクリルゴムを添加する技術が開示されている(特許文献4参照)。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、光学特性、耐熱性を維持し、且つ、優れた機械強度(靭性)及び成形安定性を有する熱可塑性樹脂組成物、及びその製造方法を提供することである。
また、紫外線吸収剤(d)をさらに組み合わせることにより、光学特性がさらに良好となることや、熱安定剤(c)、紫外線吸収剤(d)をある特定種に限定することにより、本発明の効果がさらに顕著に発現することを見出した。
[1]
メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む耐熱アクリル系樹脂(a)と、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)と、
熱安定剤(c)と、
を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、前記ゴム質含有共重合体粒子(b)を0.1質量部以上50質量部以下、前記熱安定剤(c)を0.1質量部以上10質量部以下含む熱可塑性樹脂組成物。
[2]
前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、三層構造以上の多層構造を有する粒子である、上記[1]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]
前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、内側から硬質層―軟質層−硬質層の順に形成された三層構造を有する粒子である、上記[1]又は[2]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]
前記熱安定剤(c)は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤又はリン系加工安定剤である、上記[1]〜[3]のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]
前記耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、紫外線吸収剤(d)を0.1質量部以上10質量部以下さらに含む、上記[1]〜[4]のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]
前記紫外線吸収剤(d)は、ベンゾトリアゾール系化合物又はベンゾトリアジン系化合物である、上記[5]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7]
上記[1]〜[6]のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
[8]
23℃環境下のヘイズ値が2.0%以下である、上記[7]記載の成形体。
[9]
ビカット軟化温度(VST)が110℃以上である、上記[7]又は[8]記載の成形体。
[10]
上記[1]〜[6]のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物からなる光学材料用成形体。
[11]
上記[1]〜[6]のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物からなる偏光板保護フィルム。
[12]
上記[1]〜[6]のいずれか記載の熱可塑性樹脂組成物からなる位相差フィルム。
[13]
メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を0.1質量部以上50質量部以下、及び熱安定剤(c)を0.1質量部以上10質量部以下を配合する工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む耐熱アクリル系樹脂(a)と、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)と、
熱安定剤(c)と、
を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、前記ゴム質含有共重合体粒子(b)を0.1質量部以上50質量部以下、前記熱安定剤(c)を0.1質量部以上10質量部以下含む。
耐熱アクリル系樹脂(a)の第一の単量体成分であるメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルの具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルが挙げられる。上記の中でも、透明性や重合し易さの観点からメタクリル酸メチルが好ましい。
(1)で表される化合物単位が5質量%以上30質量%以下である。
本実施の形態の熱可塑性樹脂組成物は、上述した耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を含む。
熱安定剤(c)としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤等の酸化防止剤等が挙げられ、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
CR[/Pa]=Δn/σR
ここで、σRは伸張応力[Pa]、Δnは応力付加時の複屈折であり、Δnは下式により定義される。
Δn=n1−n2
ここで、n1は伸張方向と平行な方向の屈折率、n2は伸張方向と垂直な方向の屈折率である。
ここで、平面レタデーション(Re)は下式により定義されるものである。
Re=(nx−ny)×d
(式中、nx、ny:平面の主屈折率、d:厚み)
延伸倍率(%)=[(収縮前の長さ/収縮後の長さ)−1]×100
Rth=((nx+ny)/2)−nz)×d
(式中、nx:成形体面内において屈折率が最大となる方向をxとした場合のx方向の
主屈折率、ny:成形体面内においてx方向に垂直な方向をyとした場合のy方向の主屈
折率、nz:成形体厚み方向の主屈折率、d:成形体の厚み(nm)である。)
前記耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を0.1質量部以上50質量部以下、及び熱安定剤(c)を0.1質量部以上10質量部以下を配合する工程を含む。
実施例で用いた測定及び評価方法は以下のとおりである。
(1)ガラス転移温度(Tg)測定
DSC−7型(PerkinElmer社製)を用い、室温から200℃までの昇温測定において、昇温速度20℃/分で各サンプル重量8.0〜10mgのTgを測定した。
(2)樹脂組成物の熱安定性評価(TGA、熱減量測定)
空気雰囲気下、各サンプル重量8.0〜10mgをTGA−7(PerkinElmer社製)を用い、40℃〜270℃まで20℃/minで昇温後、270℃でホールドしホールド開始時間をゼロとして、サンプル重量の3%重量減及び5%重量減の時間を測定した。
(3)3mm成形体の表面荒れ評価
射出成形品の表面を目視観察し、フラッシュが発生した場合を×として、5枚成形中何枚フラッシュが発生しているかをX/5で示した。
(4)ビカット軟化温度(VST)の測定
射出成形品をISO306B50に準じて測定した。
(5)シャルピー衝撃強度測定(ノッチなし)
射出成形品をISO179/1eUに準じて測定した。
(6)23℃へイズ測定
3mm厚の射出成形体及び原反フィルムのヘイズ値をJIS−K7136に準じて測定した。
(7)70℃へイズ測定
各原反フィルムを3mmのアクリル板で挟み込み、温水で70℃下に保った状態でヘイズ値を測定した。
(8)フィルム膜厚の測定
マイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて各フィルムの中央部を測定した。
(9)フィルム成形安定性評価法
◎:樹脂組成物の高温時での発泡が抑制され、成形性が非常に良好である。
○:樹脂組成物の高温時での発泡が抑制され、成形性が良好である。
△:樹脂組成物の高温時での発泡が幾分か生じ、成形性が安定化しない。
×:樹脂組成物の高温時での発泡がかなり生じ、成形性が安定化しない。
(10)光弾性係数(CR)の測定
測定光の経路に引張装置(井元製作所株式会社製)を配置し、試験片に伸張応力をかけながらその複屈折をRets−RFI(大塚電子製)を用いて測定した。伸張時の歪速度は0.3%/分(チャック間:30mm、チャック移動速度0.1mm/分)、試験片幅は10mmとした。25℃、試験片の0〜0.5%の歪範囲における複屈折の絶対値(|Δn|)をy軸、伸張応力(σR)をx軸としてプロットし、最小二乗近似により線形領域の直線の傾きを求め、光弾性係数の絶対値(|CR|)を計算した。
(11)分光透過率
日立製作所株式会社製U−3310を用いて分光スペクトルを測定し、380nmにおける透過率を求めた。
(12)平面レタデーション(Re)の測定
大塚電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100を用いて、回転検光子法により25℃における平面レタデーション(Re)を測定した。
(13)厚み方向レタデーション(Rth)の測定
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、23℃で光学フィ
ルムの平均屈折率nを測定した。そして、平均屈折率nとフィルム厚さd(nm)を大塚
電子(株)社製複屈折測定装置RETS−100に入力し、23℃で厚み方向レタデーシ
ョン(Rth)を測定・算出した。
(14)耐折強度の測定(靭性の評価)
光学フィルムの靭性は、以下の耐折強度の測定により評価した。
長さ110mm×幅15mmに裁断したサンプルをJIS P 8115(国際標準化機構:ISO5626)に従って、MD方向に対して垂直方向の耐折回数を測定し、その平均値を示した。下記に試験条件を記載する。
試験条件 試験機:MIT耐揉試験機(東洋精機製作所株式会社)
荷重:2.45N (=250g)
折り曲げ角度:±135°
折り曲げ速度:175cpm
試験片つかみ具
先端半径:R=0.38mm
開き:0.25mm
当該耐折試験の結果は、耐折強度をもって表示する。
耐折強度は次の式で算出される。
耐折強度 = Log n
(式中、nは試験片が損傷(折れ破壊)にいたる試験回数を示す。)
(15)ゴム質含有共重合体粒子(b)の平均粒子径の測定
三層構造のゴム質含有共重合体粒子の乳化液をサンプリングして、固形分500ppmになるように水で希釈し、UV1200V分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いて波長550nmでの吸光度を測定した。この値から、透過型電子顕微鏡写真より粒子径を計測したサンプルについて、同様に吸光度を測定して作成した検量線を用いて平均粒子径を求めた。
(16)屈折率の測定
Metricon社製レーザー屈折計Model2010を用いて、耐熱アクリル系樹脂(a)プレス品の23℃、550nmでの平均屈折率を測定した。
(1)耐熱アクリル系樹脂(a)
(1−1)耐熱アクリル系樹脂(a−1)
特公昭63−1964に記載された方法で、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体である耐熱アクリル系樹脂(a−1)を得た。得られた共重合体の組成は、メタクリル酸メチル74質量%、スチレン16質量%、無水マレイン酸10質量%であり、共重合体メルトフローレート値(ASTM−D1238;230℃、3.8kg荷重)は1.6g/10分であった。
(1−2)アクリル系樹脂(a−2)
上記と同様の方法により、メタクリル酸メチル51質量%、スチレン45質量%、無水マレイン酸4質量%の共重合組成を有するアクリル系樹脂(a−2)を得た。アクリル系樹脂(a−2)は、後述する比較例2で用いた。
ゴム質含有共重合体粒子の製造法において用いた略号は、以下の化合物を示す。
MMA;メチルメタクリレ−ト
BA;n−ブチルアクリレ−ト
St;スチレン
MA;メチルアクリレ−ト
ALMA;アリルメタクリレ−ト
PEGDA;ポリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト(分子量200)
DPBHP;ジイソプロピルベンゼンハイドロパ−オキサイド
n−OM;n−オクチルメルカプタン
HMBT;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
(2−1)三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b−1)
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水4600mL、乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム24gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。次いで、還元剤としてロンガリツト1.2gを加え均一に溶解した。
第一層として、MMA150g、BA2.5g、St40g、ALMA0.2g、DPBHP0.2gの単量体混合物を加え、80℃で重合した。約15分で反応は完了した。
次いで、第二層として、BA1020g、St660g、PDEGA40g、ALMA7.0g、DPBHP3.5g、ロンガリツト2.0gの単量体混合物を90分にわたって滴下した。滴下終了後60分で反応は完了した。
次いで、第三層1段としてMMA190g、BA2.0g、DPBHP0.2g、n−OM0.1gの単量体混合物を5分にわたって滴下し、滴下終了後、この段階の反応は約15分で完了した。
最後に、第三層2段としてMMA380g、BA2.5g、DPBHP0.4g、n−OM1.2gの単量体混合物を10分にわたって加えた。この段階は約15分で反応が完了した。
温度を95℃に上げ、1時間保持し、得られた乳化液を0.5%塩化アルミニウム水溶液中に投入して重合体を凝集させ、温水で5回洗浄後、乾燥して白色フロック状の材料を得た。得られたゴム質含有共重合体粒子(b−1)の平均粒子径は0.1μmであった。また、耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.002であった。
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水5600mL、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム40gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレ−ト1.2gを添加してから5分後に、MMA240g、BA4.2g、St84g、ALMA0.33g及びDPBHP0.33gからなる単量体混合物のうち30質量%を一括添加し、その直後から残りの70質量%を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持して最内層の重合を完結させた。
次に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレ−ト1.0gを添加してから5分後に、BA775g、St495g、ALMA20g、テトラエチレングリコールジアクリレート6.5g及びDPBHP2.6gからなる単量体混合物を90分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに80分間保持して軟質層(中間層)の重合を完結させた。
次に、MMA815g、BA52g、DPBHP1.7g及びn−OM1.0gからなる単量体混合物を60分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。次いで、95℃に昇温し60分間保持して、最外層の重合を完結させた。このようにして得られた重合体乳化液を少量採取し、吸光度法により平均粒子径を求めたところ、0.08μmであった。残りの乳化液を4質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、ゴム含有共重合体(b−2)をパウダ−として得た。また、耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.003であった。
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水4600mL、乳化剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム24gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下80℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。次いで、還元剤としてロンガリツト1.3gを加え均一に溶解した。第一層としてMMA190g、BA2.5g、ALMA0.2g、DPBHP0.2gの単量体混合物を加え80℃で重合した。約15分で反応は完了した。
次いで、第二層としてBA1360g、St320g、PDEGA40g、ALMA7.0g、DPBHP1.6g、ロンガリツト1.0gの単量体混合物を90分にわたって滴下した。滴下終了後40分で反応は完了した。
次に、第三層1段としてMMA190g、BA2.3g、DPBHP0.2gの単量体混合物を5分にわたって滴下し、滴下終了後、この段階の反応は約15分で完了した。
最後に、第三層2段としてMMA380g、BA4.6g、DPBHP0.4g、n−OMの量を1.2gの単量体混合物を10分にわたって加えた。この段階は約15分で反応が完了した。
温度を95℃に上げ、1時間保持し、得られた乳化液を0.5%塩化アルミニウム水溶液中に投入して重合体を凝集させ、温水で5回洗浄後、乾燥して白色フロック状の材料を得た。得られた三層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b’−2)の平均粒子径は0.1μmであった。また、耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.019であった。
内容積10Lの還流冷却器付反応器に、イオン交換水6868mL、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム13.7gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。MMA907g、BA33g、HMBT0.28g及びALMA0.93gからなる混合物(I−1)のうち222gを一括添加し、5分後に過硫酸アンモニウム0.22gを添加した。その40分後から(I−1)の残りの719gを20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに60分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム1.01gを添加した後、BA1067g、St219g、HMBT0.39g、ALMA27.3gからなる混合物(I−2)を140分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに180分間保持した。
次に、過硫酸アンモニウム0.30gを添加した後、MMA730g、BA26.5g、HMBT0.22g、n−OM0.76gからなる混合物(I−3)を40分間かけて連続的に添加し、添加終了後95℃に昇温し30分間保持した。
残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩拆・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、ゴム含有共重合体粒子(b’−3)を得た。得られたゴム質含有共重合体粒子(b’−3)の平均粒子径は0.23μであった。また、耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差は0.02であった。
実施例としてヒンダードフェノール系酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製のIRGANOX1010(白色粉末、融点(Tm):110−125℃、蒸気圧:1.3×10−10Pa(20℃))又は住友化学(株)社製のスミライザーGSを用いた。 また、比較例として、ラクトン系酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)HP−136(融点(Tm):99℃及び124℃)、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製IRGASTAB FS 042(融点(Tm):56−92℃)、イオウ系酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製IRGANOX PS 800 FL(融点(Tm):39−41℃)を用いた。
ベンゾトリアゾール系化合物である旭電化(株)社製アデカスタブLA−31(融点(
Tm):195℃)を用いた。理学電気(株)社製ThermoPlus TG8120
を用いて、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の重量減少率を
測定したところ、0.03%であった。
実施例及び比較例の樹脂組成物は、表1に示す各配合比によりヘンシェルミキサーを用いて5分間混合した後、30mmベント付き2軸押出し機(ナカタニ機械株式会社製、A型)を用いて250℃でペレタイズ化した。
<射出成形>
得られた各種ペレットをインラインスクリュー射出成形機(東芝機械株式会社製、IS−75S型)を用いて成形温度240〜260℃、射出圧力900kgf/cm2、金型温度50℃の条件で所定の試験片を作製し、物性測定を行った。配合比、60×40×3mm射出成形品の成形温度、特性評価を表1に示した。
<フィルム成形>
プラスチック工学研究所製Tダイ装着押し出し機(BT−30−C−36−L型/幅400mmTダイ装着/リップ厚0.8mm)を用いて、スクリュー回転数、押し出し機のシリンダー内樹脂温度、Tダイの温度を調整し押出し成形をすることにより未延伸フィルムを得た。フィルムの流れ(押し出し方向)をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向とした。配合比、成形条件、フィルム光学特性を表1に示した。
実施例6〜8では熱安定剤にヒンダードフェノール系酸化防止剤又はリン系加工安定剤以外を用いたため熱安定効果が若干低くなり、成形品の表面荒れや発泡の影響等でやや透明性が低下したが、比較的耐熱性、機械強度及び光学特性に優れる成形体を得ることができた。
実施例9では、三層構造のゴム質含有共重合体の代わりに二層構造のゴム質含有共重合体(b’−1)を用いたため、光実施例1〜5に比べゴム質含有共重合体の耐熱変形性や耐熱劣化性が低下し、耐熱性、光学特性及び成形安定性が低下傾向となった。
比較例1では、耐熱性は有しているものの、三層構造のゴム質含有共重合体を混合していないため、機械強度が低く、熱安定剤を混合していないため、フィルム成形時に若干の発泡現象が見られた。
また、比較例2では、耐熱アクリル系樹脂の共重合組成比が適切でないため、耐熱性が不十分であり、比較例3では、熱安定剤を混合していないため、三層構造のゴム質含有共重合体混合時においては溶融粘度が低下し、樹脂組成物のシリンダー内の滞留よる発泡が生じた。
さらに、比較例4においては耐熱アクリル系樹脂とゴム質含有共重合体粒子(b’−2)との屈折率差が大きいために、比較例5ではゴム質含有共重合体粒子(b’−3)の屈折率差及び平均粒子径が適切でないために、各々ヘイズ値の上昇が見られた。
さらに、透明性等の光学特性にも優れているため、光学材料用成形体として好適に用いることが可能であり、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等、また、太陽電池に用いられる透明基盤等への利用可能性を有する。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー等にも利用することができる。本発明の光学材料用成形体は、例えば反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をすることもできる。
Claims (13)
- メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む耐熱アクリル系樹脂(a)と、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)と、
熱安定剤(c)と、
を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、前記ゴム質含有共重合体粒子(b)を0.1質量部以上50質量部以下、前記熱安定剤(c)を0.5質量部以上3.0質量部以下含む熱可塑性樹脂組成物。 - 前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、三層構造以上の多層構造を有する粒子である、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ゴム質含有共重合体粒子(b)は、内側から硬質層―軟質層−硬質層の順に形成された三層構造を有する粒子である、請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱安定剤(c)は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤又はリン系加工安定剤である、請求項1〜3のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、紫外線吸収剤(d)を0.4質量部以上3.0質量部以下さらに含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記紫外線吸収剤(d)は、ベンゾトリアゾール系化合物又はベンゾトリアジン系化合物である、請求項5記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
- 23℃環境下のヘイズ値が2.0%以下である、請求項7記載の成形体。
- ビカット軟化温度(VST)が110℃以上である、請求項7又は8記載の成形体。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる光学材料用成形体。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる偏光板保護フィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物からなる位相差フィルム。
- メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステル単位40質量%以上90質量%以下と、芳香族ビニル化合物単位5質量%以上40質量%以下と、下記一般式(1)で表される化合物単位5質量%以上30質量%以下と、を含む耐熱アクリル系樹脂(a)100質量部に対して、
前記耐熱アクリル系樹脂(a)との屈折率差が0.015以下、平均粒子径が0.04μm以上0.13μm以下の、多層構造を有するゴム質含有共重合体粒子(b)を0.1質量部以上50質量部以下、及び熱安定剤(c)を0.5質量部以上3.0質量部以下を配合する工程を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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