JP5282905B2 - 往復摺動装置 - Google Patents

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本発明は、相対的に往復動する2つの部材の間の環状隙間を密封するシールを備え、当該シールの両側の2つの油圧室の油圧の圧力差により前記往復動が生じる往復摺動装置に係り、例えば、トロイダル型無段変速機のパワーローラの傾転角を制御する油圧駆動装置として用いられる往復摺動装置に関する。
自動車用自動変速装置として、図4〜図6に示すようなハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機が知られている。これらの図に示すトロイダル型無段変速機は、ダブルキャビティ型と呼ばれるもので、入力軸1の両端部周囲に、入力側ディスク2、2がボールスプライン3、3を介して支持されている。したがって、これら両入力側ディスク2、2は、互いに同心に、且つ、同期した回転を自在に支持されている。また、上記入力軸1の中間部周囲に、出力歯車4がこの入力軸1に対する相対回転を自在として支持されている。そして、この出力歯車4の中心部に設けられた円筒部の両端部にそれぞれ、出力側ディスク5、5がスプライン係合されている。したがって、これら両出力側ディスク5、5は、上記出力歯車4とともに同期して回転する。
また、各入力側ディスク2、2と各出力側ディスク5、5との間にはそれぞれ、複数個ずつ(通常2〜3個ずつ)のパワーローラ6、6が挟持されている。これら各パワーローラ6、6はそれぞれ、トラニオン7、7の内側面に、支持軸8、8および複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持されている。上記各トラニオン7、7は、それぞれの長さ方向(図4、図6の上下方向、図5の表裏方向)両端部にこれら各トラニオン7、7毎に互いに同心に設けられた、枢軸9a、9bを中心として揺動変位自在となっている。これら各トラニオン7、7を傾斜させる動作は、油圧式のアクチュエータ(油圧駆動装置)10、10により、これら各トラニオン7、7を上記枢軸9a、9bの軸方向に変位させることにより行なうが、すべてのトラニオン7、7の傾斜角度は、油圧式および機械式に互いに同期させる。
すなわち、上記入力軸1と出力歯車4との間の変速比を変えるべく、各トラニオン7、7の傾斜角度を変える場合には、各アクチュエータ10、10により各トラニオン7、7を、互いに逆方向(上記各ディスク2、5の回転方向に関して同方向)に、例えば、図6の右側のパワーローラ6を同図の下側に、同図の左側のパワーローラ6を同図の上側に、それぞれ変位させる。この結果、これら各パワーローラ6、6の周面と各入力側ディスク2、2および各出力側ディスク5、5の内側面との当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化(当接部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン7、7が、支持板(ヨーク)11、11に枢支された枢軸9a、9bを中心として、互いに逆方向に揺動(傾斜)する。この結果、各パワーローラ6、6の周面と入力側、出力側各ディスク2、5の内側面との当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転変速比が変化する。
各アクチュエータ10、10への圧油の給排状態は、これら各アクチュエータ10、10の数に関係なく1個の制御弁12により行ない、何れか1個のトラニオン7の動きをこの制御弁12にフィードバックするようにしている。この制御弁12は、ステッピングモータ13により軸方向(図4の表裏方向、図6の左右方向)に変位させられるスリーブ14と、このスリーブ14の内径側に軸方向の変位自在に嵌装されたスプール15とを有している。また、各トラニオン7、7と各アクチュエータ10、10のピストン16、16とを連結する、シリンダ28内を往復摺動するこれら各ピストン16、16の動きを各トラニオン7、7に伝達するためのロッド17、17のうち、何れか1個のトラニオン7に付属のロッド17の端部にプリセスカム18が固定されている。そして、このプリセスカム18とリンク腕19とを介して、ロッド17の動き、すなわち、軸方向の変位量と回転方向との変位量との合成値をスプール15に伝達する、フィードバック機構を構成している。また、同一のキャビティ部分(互いに対向する入力側ディスク2と出力側ディスク5との間部分)に設置された一対のトラニオン7、7同士の間には、同期ケーブル20を襷掛けで掛け渡されて、これら両トラニオン7、7の傾斜角度が機械的に同期するようになっている。また、異なるキャビティに設置されたトラニオン7、7同士の間にも、図示しない同期ケーブルが掛け渡されている。
変速状態を切り換える際には、ステッピングモータ13によりスリーブ14を、得ようとする変速比に見合う所定位置にまで変位させて、上記制御弁12の所定方向の流路を開く。この結果、各アクチュエータ10、10に圧油が所定方向に送り込まれて、これら各アクチュエータ10、10が各トラニオン7、7を所定方向に変位させる。すなわち、上記圧油の送り込みに伴ってこれら各トラニオン7、7が、各枢軸9a、9bの軸方向に変位しつつ、これら各枢軸9a、9bを中心に揺動する。そして、上記何れか1個のトラニオン7の動き(軸方向および揺動変位)が、ロッド17の端部に固定したプリセスカム18とリンク腕19とを介してスプール15に伝達され、このスプール15を軸方向に変位させる。この結果、トラニオン7が所定量変位した状態で、制御弁12の流路が閉じられ、各アクチュエータ10、10への圧油の給排が停止される。
上述のようなトロイダル型無段変速機の運転時には、エンジン等の動力源に繋がる駆動軸21により一方(図4、図6の左方)の入力側ディスク2を、図示のようなローディングカム式の、あるいは油圧式の押圧装置22を介して回転駆動する。この結果、入力軸1の両端部に支持された一対の入力側ディスク2、2が、互いに近づく方向に押圧されつつ同期して回転する。そして、この回転が、各パワーローラ6、6を介して各出力側ディスク5、5に伝わり、出力歯車4から取り出される。
入力軸1と出力歯車4との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力歯車4との間で減速を行なう場合には、各アクチュエータ10、10により各トラニオン7、7を各枢軸9a、9bの軸方向に移動させ、これら各トラニオン7、7を揺動させる。そして、各パワーローラ6、6の周面を、各入力側ディスク2、2の内側面の中心寄り部分と各出力側ディスク5、5の内側面の外周寄り部分とにそれぞれ当接させる。反対に、増速を行なう場合には、各トラニオン7、7を逆方向に揺動させ、各パワーローラ6、6の周面を、各入力側ディスク2、2の内側面の外周寄り部分と各出力側ディスク5、5の内側面の中心寄り部分とに、それぞれ当接するように、各トラニオン7、7を傾斜させる。これら各トラニオン7、7の傾斜角度を中間にすれば、図5に示したような等速伝達状態を含め、入力軸1と出力歯車4との間で、中間の変速比(速度比)が得られる。
上述のように構成し作用するトロイダル型無段変速機において、各アクチュエータ10、10の動きを各トラニオン7、7に伝達する部分の構造については、例えば、図7のようなものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
図7に示す従来の構造では、一対の支持板11、11に設けられた支持孔29、29内に、内側面にパワーローラ6を回転自在に支持したトラニオン7の両端部に互いに同心に設けられた枢軸9a、9bが、調心機能を有するラジアルニードル軸受30、30により支持されている。したがって、トラニオン7は、各枢軸9a、9bの軸方向(図7の上下方向)移動およびこれら各枢軸9a、9bを中心とする揺動変位自在である。そして、油圧式のアクチュエータ10により、トラニオン7がロッド17を介して各枢軸9a、9bの軸方向に駆動自在とされている。
このために、トラニオン7の一端部(図7の下端部)で枢軸9aの中心部に設けられた雌ねじ部32に、このロッド17の中間部先端寄り部分に設けられた雄ねじ部31が、螺合することにより、トラニオン7とロッド17とが結合されている。このために、枢軸9aの中心部に、有底の円孔33がトラニオン7の一端部を軸方向に貫通しない状態で設けられている。すなわち、このトラニオン7は、パワーローラ6を支持するための支持板部34の両端部に、それぞれがこの支持板部34の内側面側(図7の右側)に向け突出した、一対の枢支壁部35、35が形成されている。各枢軸9a、9bは、これら両枢支壁部35、35の外側面(互いに反対側の側面)に、互いに同心に設けられている。
アクチュエータ10は、ハウジング38(図4、図6参照)内に固定されたシリンダボディ39に設けられたシリンダ40内に、ピストン16が軸方向(図7の上下方向)の移動を自在に、油密に嵌装されることにより構成されている。このアクチュエータ10は、シリンダ40内でピストン16により仕切られた一対の油圧室41a、41b内への油圧の給排によりこのピストン16が軸方向に変位し、ロッド17を押し引きするように構成されている。このピストン16の動きをこのロッド17に伝達するために、このピストン16の中心部に円筒部42が設けられ、この円筒部42にこのロッド17が挿通されている。そして、雄ねじ部31と雌ねじ部32とが螺合され更に緊締された状態で、ロッド17の基端部に設けられた外向フランジ状の鍔部43と、一端側の枢軸9aの端面との間に、円筒部42が軸方向両側から挟持されている。この枢軸9aの端面と円筒部42の端面との間にはワッシャ44が挟持されている。
また、トラニオン7の内部とロッド17の中心部とに、潤滑油通路(潤滑油路)27a、27bが設けられて、パワーローラ6の回転支持部に潤滑油が供給自在とされている。このうちのロッド17の中心部に設けた潤滑油通路27aの下流端は、このロッド17の先端面(図7の上端面)に開口している。また、この潤滑油通路27aの上流端は、円筒部42に形成された通油孔(潤滑油路)46を介して、シリンダボディ39内に設けられた、図示しない給油ポートに通じさせている。一方、トラニオン7の内部に設けられた潤滑油通路27bの上流側半部は、枢支壁部35内に、円孔33の奥端部を横切る状態で形成されている。また、潤滑油通路27bの下流側半部は、支持板部34内に、枢軸9aの軸方向に形成されている。これら潤滑油通路27bの上流側半部と下流側半部とは、互いに連通して、下流端を潤滑油を必要とする部分に通じさせるととともに、加工後に不要となる開口がプラグ47、47により塞がれている。
特開2005−54980号公報 特開2007−107571号公報
ところで、この従来のトロイダル型無段変速機では、一対の油圧室41a、41bと通油孔46とがロッド17の軸方向に沿って直列に設けられ、そしてシリンダボディ39とピストン16との間の隙間を油密に密封するシールとしては、一対の油圧室41a、41bを仕切るシール51、52、53と、通油孔46を仕切るシール53、54(シール53は兼用)とが設けられている。
しかし、図8に示すように、油圧方向が変わり、ピストン16の移動方向が変わるときに、シール52が移動し、そのシール52の移動中に油圧室41aと油圧室41bとが連通してしまうという問題がある。一対の油圧室41a、41bを仕切るシール52として単なるシールリングを用いる場合に特に問題である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、相対的に往復動する2つの部材の間の環状隙間を密封するシールを備え、当該シールの両側の2つの油圧室の油圧の圧力差により前記往復動が生じる往復摺動装置において、シールの密封性能の向上を図ることができる往復摺動装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の往復摺動装置は、相対的に往復動する2つの部材の間の環状隙間を密封するシールを備え、当該シールの両側の2つの油圧室の油圧の圧力差により前記往復動が生じる往復摺動装置であって、トロイダル型無段変速機のパワーローラの傾転角を制御する油圧駆動装置として用いられ、前記シールは複数個設けられ、これらのシールの間に前記油圧室より低圧の低圧油圧室が設けられ、前記低圧油圧室は、前記パワーローラの回転支持部を潤滑するための潤滑油路を構成していることを特徴とする。
請求項1に記載の発明においては、相対的に往復動する2つの部材の間の環状隙間を密封するシールが複数個設けられ、これらのシールの間に、これらのシールの両側の油圧室より低圧の低圧油圧室が設けられているので、これらのシールが往復摺動する(これらのシールの両側の油圧室の油圧の圧力差が反転する)ときにも、各シールに作用する油圧の圧力の方向が一定である(低圧油圧室側に向かう方向になる)ため、各シールに作用する圧力の反転が生じず、これらのシールからの漏れが無い。
また、トロイダル型無段変速機のパワーローラの傾転角を制御する油圧駆動装置として用いられるので、高い制御性能が求められるため、シールの密封性能が高いことがより有効となる。
さらに、低圧油圧室がパワーローラの回転支持部を潤滑するための潤滑油路を構成しているので、トロイダル型無段変速機の構成を簡略化することができる。
請求項2に記載の往復摺動装置は、請求項1に記載の発明において、前記シールは一方の前記部材に形成された環状のシール溝に装着されているとともに、このシール溝を形成する前記油圧室側の溝肩寸法が前記低圧油圧室側の溝肩寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明においては、シール溝の低圧油圧室側のみでシールが密封するので、油圧室側の溝肩寸法が低圧油圧室側の溝肩寸法よりも小さく設定されていても、良好な密封性能を確保することができる。しかも、油圧室側の溝肩寸法が低圧油圧室側の溝肩寸法よりも小さく設定されているので、シールの装着が容易になる。
本発明の往復摺動装置によれば、相対的に往復動する2つの部材の間の環状隙間を密封するシールを複数個設け、これらのシールの間に、これらのシールの両側の油圧室より低圧の低圧油圧室を設けたので、これらのシールが往復摺動する(これらのシールの両側の油圧室の油圧の圧力差が反転する)ときにも、各シールに作用する油圧の圧力の方向を一定にすることができて、各シールに作用する圧力の反転が生じないため、これらのシールからの漏れを無くすることができる。
本発明の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の油圧駆動装置を示す断面図である。 図1の部分拡大図である。 図1のシールの密封状態を説明するための図である。 従来から知られているトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。 図4のA−A線に沿う断面図である。 図4のB−B線に沿う断面図である。 従来のトラニオンおよび油圧駆動装置を示す断面図である。 従来の油圧駆動装置の模式的断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の油圧駆動装置の部分を示す断面図であり、図2は図1の部分拡大図であり、図3はシールの密封状態を説明するための図である。
なお、本発明の特徴は、油圧駆動装置にあり、その他の部分の構造および作用は、前述の図4〜図7に示した構造を含め、従来から広く知られているトロイダル型無段変速機と同様であるから、同等部分に関する図示および説明は省略し、以下、本発明の特徴部分および先に説明しなかった部分を中心に説明する。
油圧駆動装置10Aは、シリンダ40Aとピストン16Aとを備えている。シリンダ40Aは、ハウジング38(図4、図6参照)内に固定されたシリンダボディ39に設けられた円柱状の凹部61がその開口部を概略円環状の蓋部材62に塞がれることにより形成されている。蓋部材62は、シリンダ40Aの開口部分に油密に嵌装されている。シリンダボディ39(シリンダ40Aの内周面)と蓋部材62との間の環状隙間を密封する密封部材として、シール63が設けられている。シール63は、合成樹脂製の円環板状のものであって、蓋部材62の外周面に形成された円環板状のシール溝63Aに装着されている。蓋部材62は、シリンダ40Aの開口部の内周面に装着された止め輪(抜け止め部材)64により、シリンダ40から抜け出るのを防止されている。
シリンダ40A内には、概略円環板状のピストン16Aが軸方向(図1の上下方向)の移動を自在に、油密に嵌装されている。シリンダボディ39(シリンダ40Aの内周面)とピストン16Aの外周面との間の環状隙間を密封する密封部材として、ピストン16Aの外周面に、上下に間隔をおいて2個のシール65、66が設けられている。これらのシール65、66は、合成樹脂製の円環板状のものであって、ピストン16Aの外周面に上下に間隔をおいて形成された円環板状のシール溝65A、66Aに装着されている。
ピストン16Aの中心部には、両側に突出する小径の円筒部42が形成されている。円筒部42の上側部分および下側部分はそれぞれ、シリンダボディ39内および蓋部材62内に油密に嵌装されている。シリンダボディ39と円筒部42との間の環状隙間および蓋部材62と円筒部42との間の環状隙間を密封する密封部材としてそれぞれ、シール67およびシール68が設けられている。シール67およびシール68はそれぞれ、合成樹脂製の円環板状のものであって、円筒部42の外周面に形成された円環板状のシール溝67Aおよびシール溝68Aに装着されている。
円筒部42内には、ロッド17Aが嵌合状態で挿通されている。このロッド17Aは、トラニオン7の一端部で枢軸9aの中心部に設けられた雌ねじ部32に、このロッド17の先端寄り部分に設けられた雄ねじ部31が螺合することにより、トラニオン7に結合されている(図7参照)。そして、雄ねじ部31と雌ねじ部32とが螺合されて緊締された状態で、ロッド17の基端部に設けられた外向フランジ状の鍔部43Aと、一端側の枢軸9aの端面との間に、円筒部42が軸方向両側から挟持されている。これにより、ピストン16Aとロッド17Aとトラニオン7とが一体化され、ピストン16Aの動きがロッド17Aを介してトラニオン7に伝達されるようになっている。
油圧駆動装置10Aは、シリンダ40A内でピストン16Aにより仕切られた一対の油圧室71、72内への油圧の給排によりこのピストン16Aが軸方向に変位し、ロッド17Aを押し引きするように構成されている。油圧室71および油圧室72はそれぞれ、シリンダ40A内でピストン16Aの上側および下側に形成されている。シリンダ40Aの内周面とピストン16Aの外周面との間の環状隙間を密封するシール65と、シリンダボディ39と円筒部42の上側部分との間の環状隙間を密封するシール68とは、油圧室71と外部とを仕切り、油圧室71から油が漏れるのを防止している。シリンダ40Aの内周面とピストン16Aの外周面との間の環状隙間を密封するシール66と、シリンダ40Aの内周面と蓋部材62の外周面との間の環状隙間を密封するシール63と、蓋部材62の内周面と円筒部42の下側部分との間の環状隙間を密封するシール68とは、油圧室72と外部とを仕切り、油圧室72から油が漏れるのを防止している。
また、ピストン16Aの外周面には、シール65とシール66との間に、円環状の凹部からなる低圧油圧室(潤滑油路)75が形成されている。この低圧油圧室75は、シリンダボディ39に形成された潤滑油路76に連通しており、この潤滑油路76は油圧ポンプ等の潤滑油供給源に接続されている。また、ピストン16Aには、低圧油圧室75から径方向内側に延びる複数個の潤滑油路77が形成されている。
一方、トラニオン7の内部とロッド17Aの中心部とに、潤滑油路27a、27bが設けられており(図7参照)、このうちのロッド17Aの中心部に設けた潤滑油路27aの下流端は、このロッド17の先端面に開口している。また、この潤滑油通路27aの上流側は複数個に分岐されてその各上流端は、ロッド17Aの長さ方向中央部の外周面に形成された円環状の潤滑油路27cに連通している。この潤滑油路27cは、ピストン16Aの潤滑油路77に連通している。
油圧ポンプ等の潤滑油供給源から供給された潤滑油は、シリンダボディ39の潤滑油路76、ピストン16Aの低圧油圧室75と潤滑油路77、ロッド17Aの潤滑油路27cと潤滑油路2a、およびトラニオンの潤滑油路27bを通じて、パワーローラ6の回転支持部に供給されるようになっている。
このように、低圧油圧室75は、パワーローラ6の回転支持部を潤滑するための潤滑油路として機能し、一方油圧駆動装置10Aは、トロイダル型無段変速機のパワーローラの傾転角を制御して、変速制御を行う変速制御ピストン装置として機能するので、低圧油圧室75の油圧は、油圧駆動装置10Aの一対の油圧室71、72の油圧(変速制御圧)よりも低圧となっている。
また、上下の油圧室71、72と低圧油圧室75とを密封しているシール65,66が装着されるシール溝65A、66Aを形成する溝肩の寸法は、油圧室71、72側の溝肩寸法が低圧油圧室75側の溝肩寸法よりも小さく設定されている。
このように構成された油圧駆動装置10Aにあっては、図3に示すように、シリンダ40内で往復動するピストン16Aの間の環状隙間を密封するシール65、66が2個設けられ、これらのシール65、66の間に、これらのシール65、66の両側の油圧室71、72より低圧の低圧油圧室75が設けられているので、これらのシール65、66が往復摺動する(これらのシール65、66の両側の油圧室71、72の油圧の圧力差が反転する)ときにも、各シール65、66に作用する油圧の圧力の方向が一定である(低圧油圧室75側に向かう方向になる)。このため、各シール65、66に作用する圧力の反転が生じないため、これらのシール65、66からの漏れを無くすることができる。
また、シール溝65A、66Aの低圧油圧室75側のみでシールが密封するので、油圧室71、72側の溝肩寸法が低圧油圧室75側の溝肩寸法よりも小さく設定されていても、良好な密封性能を確保することができる。さらに、油圧室71、72側の溝肩寸法が低圧油圧室75側の溝肩寸法よりも小さく設定されているので、シール65、66の装着が容易である。
また、上述のようにシール65、66の密封性能が高いので、高い制御性能が求められるトロイダル型無段変速機のパワーローラの傾転角を制御する油圧駆動装置には特に有効である。
さらに、低圧油圧室75がパワーローラ6の回転支持部(軸受部)を潤滑するための潤滑油路を兼ねているので、トロイダル型無段変速機の構成を簡略化することができる。
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機のパワーローラの傾転角を制御する油圧駆動装置の他、相対的に往復動する2つの部材の間の環状隙間を密封するシールを備え、当該シールの両側の2つの油圧室の油圧の圧力差により前記往復動が生じる種々の往復摺動装置に適用することができる。
10A 油圧駆動装置(往復摺動装置)
16A ピストン
71 油圧室
72 油圧室
75 低圧油圧室(潤滑油路)
40A シリンダ
65 シール
65A シール溝
66 シール
66A シール溝

Claims (2)

  1. 相対的に往復動する2つの部材の間の環状隙間を密封するシールを備え、当該シールの両側の2つの油圧室の油圧の圧力差により前記往復動が生じる往復摺動装置であって、
    トロイダル型無段変速機のパワーローラの傾転角を制御する油圧駆動装置として用いられ、
    前記シールは複数個設けられ、これらのシールの間に前記油圧室より低圧の低圧油圧室が設けられ
    前記低圧油圧室は、前記パワーローラの回転支持部を潤滑するための潤滑油路を構成していることを特徴とする往復摺動装置。
  2. 前記シールは一方の前記部材に形成された環状のシール溝に装着されているとともに、このシール溝を形成する前記油圧室側の溝肩寸法が前記低圧油圧室側の溝肩寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の往復摺動装置。
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