JP2007205546A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度の低下や部品点数および製造コストの増大を招くことなく、入力軸に対するディスクの摺動案内を円滑に行なうことができるトロイダル型無段変速機を提供する。
【解決手段】このトロイダル型無段変速機においては、押圧装置130から所定のローディング圧で圧油を入力側ディスク2の内周面と入力軸1との間に導入することにより、入力側ディスク2と入力軸1とが圧油により分離され、圧油がいわゆる静圧軸受として作用するようになるため、入力軸1と入力側ディスク2との間に特別な軸受手段を設ける必要がなくなる。したがって、入力側ディスク2の変形に伴う強度低下や、そのような変形に伴う軸受手段の劣化といった問題を解消しつつ、入力軸1に対する入力側ディスク2の軸方向の摺動を円滑に行なうことができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図3および図4に示すように構成されている。図3に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され(例えば、特許文献1参照)、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図4参照)が回転自在に挟持されている。
図3中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図3の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部1eに螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
図3のA−A線に沿う断面図である図4に示すように、ケーシング50の内側であって、出力側ディスク3,3の側方位置には、両ディスク3,3を両側から挟む状態で一対のヨーク23A,23Bが支持されている。これら一対のヨーク23A,23Bは、鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。そして、後述するトラニオン15の両端部に設けられた枢軸14を揺動自在に支持するため、ヨーク23A,23Bの四隅には、円形の支持孔18が設けられるとともに、ヨーク23A,23Bの幅方向の中央部には、円形の係止孔19が設けられている。
一対のヨーク23A,23Bは、ケーシング50の内面の互いに対向する部分に形成された支持ポスト64,68により、僅かに変位できるように支持されている。これらの支持ポスト64,68はそれぞれ、入力側ディスク2の内側面2aと出力側ディスク3の内側面3aとの間にある第1キャビティ221および第2キャビティ222にそれぞれ対向する状態で設けられている。
したがって、ヨーク23A,23Bは、各支持ポスト64,68に支持された状態で、その一端部が第1キャビティ221の外周部分に対向するとともに、その他端部が第2キャビティ222の外周部分に対向している。
第1および第2のキャビティ221,222は同一構造であるため、以下、第1キャビティ221のみについて説明する。
図4に示すように、ケーシング50の内側において、第1キャビティ221には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図4においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、その本体部である支持板部16の長手方向(図4の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、前述したように、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図4の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。前述したように、各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、前述したように、ヨーク23A,23Bの幅方向(図4の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は球状凹面として、支持ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,4,4の回転方向に対して同方向(図4で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図4の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(枢軸14から延びる軸部)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、駆動軸22の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2および入力軸1に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図4の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、このようなトロイダル型無段変速機において、動力は、入出力側ディスク2,3とパワーローラ11との間での油のせん断力によって伝達される。そのため、入出力側ディスク2,3とパワーローラ11との接触点に大きな荷重を与える必要がある。
前記荷重を与える方法としては、入力トルクに比例した荷重を機械的に発生させる前述したローディングカム式の押圧装置12を用いる場合と、図5に示すような油圧式の押圧装置130を用いる場合とがある。ローディングカム式の押圧装置12のみを用いた場合、入力トルクだけに比例した推力(入力側ディスクの押し付け力)が発生することになるため、変速比によっては、ディスク2,3とローラ11との接触部に過剰な押し付け力が作用し、伝達効率の低下や耐久性の低下に繋がる虞がある。これに対し、油圧式の押圧装置130を用いると、変速、オイル温度、回転数などに応じて最適な押し付け力を与えることができるため、ローディングカム式の押圧装置12よりも変速機の高効率化が可能となる。
ここで、油圧式の押圧装置130について図5を参照しながら簡単に説明すると、押圧装置130は、入力軸1の基端部(図5において左端部)に結合される第1のシリンダ部141と、入力側ディスク2に設けられた第2のシリンダ部159と、環状の第1のピストン部161と、環状の第2のピストン部160とを備えている。
第1のシリンダ部141は、概略有底円筒状に形成され、筒状部分が第2のシリンダ部159の外周外側に位置しており、底部分が入力側ディスク2の背面(外側面)2dと対向した状態で配されている。また、第1のシリンダ部141は、その底部分が入力軸1に外嵌されて固定されている。また、第2のシリンダ部159は、筒状に形成されており、入力側ディスク2の外周縁から第1のシリンダ部141に向けて延びている。
第2のピストン部160は、その内周面が入力軸1の外周面に嵌合されるとともに、その外周面が第2シリンダ部159の内周面に嵌合されており、入力側ディスク2の背面2dに対向した状態で配されている。また、第1のピストン部161は、その内周面が入力軸1の外周面に嵌合されるとともに、その外周面が第1シリンダ部141の内周面に嵌合されており、第2のピストン部160と第1のシリンダ部141との間に配されている。
第1のシリンダ部141の内面と、第1のピストン部161と、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第1の油圧室(油室)170を構成している。この第1の油圧室170は、複数のシール部材171によって流体密に保たれている。また、第2のシリンダ部159の内周面と、第2のピストン部160と、入力側ディスク2の背面2dと、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第2の油圧室(油室)167を構成している。この第2の油圧室167は、複数のシール部材168によって流体密に保たれている。また、第2のシリンダ部159の内周側において、第2のピストン部160と第1のピストン部161との間に位置する空間175は空気室となっている。この空気室175は、複数のシール部材168,171によって流体密に保たれている。また、第2のシリンダ部159は、空気室175を外部に連通させる連通溝としても機能する隙間Sを第1のピストン部161との間に有しており、この隙間Sを介して第1のピストン部161と当接可能となっている。そして、第1の油圧室170を一部利用して、第1のピストン部161と第1のシリンダ部141との間には、予圧を付与するための皿バネ200が介挿され、第1のシリンダ部141に対して、入力軸1に沿って移動自在な第1のピストン部161を入力側ディスク2に向かって付勢している。
また、各油圧室167,170に油を供給するため、入力軸1等には、軸線Oと同軸な油路1fやこの油路1fと直交するように径方向に延びる油孔180等の油路が形成されている。
ここで、第1の油圧室170に圧油を供給して油圧をかけると、入力軸1に固定された第1のシリンダ部141に対して、入力軸1の軸方向に移動自在な第1のピストン部161が軸方向に沿って入力側ディスク2に向かって移動する。そして、第2シリンダ部159に当接する第1のピストン部161により、第2シリンダ部159が設けられたこの入力側ディスク2を他方の入力側ディスク2に向かって押圧する押圧力を付与する。
また、第2の油圧室167に圧油を供給して油圧をかけると、入力軸1に固定された第2のピストン部160に対して、入力軸1の軸方向に沿って移動自在な入力側ディスク2に設けられた第2シリンダ部159が、この入力側ディスク2とともに、他方の入力側ディスク2に向かう方向に移動し、他方の入力側ディスク2をこの入力側ディスク2に向かって押圧する押圧力を付与する。
実開平1−122550号公報
ところで、トロイダル型無段変速機では、パワーローラ11からの2点押し荷重により発生するディスク2,3の弾性変形が大きい。特にディスク2,3がその径方向内側でパワーローラ11と接触する場合には、接触点における軸直角方向(軸方向に対して垂直な方向)の力が大きくなり、ディスク2,3の径方向内側部位(小径部位)の内径が小さくなる。すなわち、図6に示す入力側ディスク2では、その径方向内側でパワーローラ11と接触すると(低速側)、その部位(図6の右側の小径側部位)の内径がテーパ状に狭くなってしまう(ディスク2が図6の点線の状態から実線の状態へと変形する)。そのため、前述した構成のように入力側ディスク2と入力軸1との間に軸方向摺動案内手段(軸方向の抵抗を減少させるベアリング手段)としてボールスプライン6を用いた場合には、ボールに負荷される荷重が局所的に増大したり、ボール溝に応力が集中したりして、強度を損なうことがある。また、これらのベアリング手段を用いることにより、部品点数および製造コストが増大するという問題もある。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、強度の低下や部品点数および製造コストの増大を招くことなく、入力軸に対するディスクの摺動案内を円滑に行なうことができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル型無段変速機は、回転トルクが入力される入力軸と、この入力軸に結合されて入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、この入力側ディスクとの間に設けられたパワーローラを介して入力側ディスクの回転力を所定の変速比で受ける出力側ディスクと、前記入力側ディスクの背面に配置され且つ前記入力側ディスクを軸方向へ押圧する油圧式の押圧装置とを備えるトロイダル型無段変速機であって、前記入力側ディスクは、前記入力軸との間に所定の隙間をもって前記入力軸に対して同心的に配置され、前記隙間には、前記押圧装置から所定のローディング圧で圧油が導入されるようになっていることを特徴とする。
この請求項1に記載の発明においては、押圧装置から所定のローディング圧で圧油を入力側ディスクの内周面と入力軸との間に導入することにより、入力側ディスクと入力軸とが圧油により分離され、圧油がいわゆる静圧軸受として作用するようになるため、入力軸と入力側ディスクとの間に特別な軸受手段を設ける必要がなくなる。したがって、入力側ディスクの変形に伴う強度低下や、そのような変形に伴う軸受手段の劣化といった問題を解消しつつ、入力軸に対する入力側ディスクの軸方向の摺動を円滑に行なうことができる。すなわち、特別なベアリング手段を用いることなく軸方向摺動を行なうことができるため、部品点数および製造コストの低減を図ることができるとともに、入力側ディスクにボール溝等を形成する必要がなく、曲げ荷重が作用したときの応力集中部が発生しないため、強度も向上させることができる。
なお、ローディング圧力は、ディスクおよびパワーローラを含むバリエータが伝達すべきトルクに応じて変化するが、軸方向の移動やディスクの変形が大きいときは、伝達トルクが大きいときであり、このときローディング圧力も高くするため、圧油による前記軸受機能(静圧軸受)が損なわれることはない。一方、ローディング圧力が低いときは、ディスクと入力軸とがいわゆるすべり軸受として機能するが、このときは、伝達トルクが小さく、移動や変形も小さいため、支障はない。
また、請求項2に記載のトロイダル型無段変速機は、請求項1に記載の発明において、前記入力側ディスクと前記入力軸との間には、前記隙間からの圧油の漏れを防ぐシール部材が介挿されていることを特徴とする。
この請求項2に記載の発明においては、隙間からの圧油の漏れを防ぐシール部材が設けられているため、ローディング圧力を入力側ディスクの内周面に確実に作用させることができ(これに対し、図5に示した従来構造では、ローディング圧が入力側ディスクの背面にしか作用しない)、圧油による前記軸受機能(静圧軸受)の向上を図ることができる。
本発明のトロイダル型無段変速機においては、押圧装置から所定のローディング圧で圧油を入力側ディスクの内周面と入力軸との間に導入することにより、入力側ディスクと入力軸とが圧油により分離され、圧油がいわゆる静圧軸受として作用するようになるため、入力軸と入力側ディスクとの間に特別な軸受手段を設ける必要がなくなる。そのため、強度の低下や部品点数および製造コストの増大を招くことなく、入力軸に対するディスクの摺動案内を円滑に行なうことができる
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の特徴は、入力軸に対して入力側ディスクを摺動可能に保持するための機構にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図3〜図6と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1および図2に示すように、本発明の実施形態においては、入力側ディスク2を軸方向へ押圧する押圧装置として、図5に関して前述した油圧式の押圧装置130が使用されている。また、入力軸1に対して同心的に配置された入力側ディスク2は、入力軸1との間に所定の隙間SAを形成している。そして、この隙間SAには、押圧装置130から所定のローディング圧で圧油が導入されるようになっている。すなわち、本実施形態では、入力側ディスク2と入力軸1との間にボールスプライン等の軸受手段が用いられておらず、両者1,2の間に僅かな隙間SAが存在するだけである。また、本実施形態においては、入力側ディスク2と入力軸1との間に、隙間SAからの圧油の漏れを防ぐシール部材400が介挿されている。具体的に、このシール部材400は、押圧装置130と対向する入力側ディスク2の背面と反対側の面の近傍(入力側ディスク2の小径側端面寄り)に配置されている。
このように、本実施形態においては、押圧装置130から所定のローディング圧で圧油を入力側ディスク2の内周面と入力軸1との間に導入することにより、入力側ディスク2と入力軸1とが圧油により分離され、圧油がいわゆる静圧軸受として作用するようになるため、入力軸1と入力側ディスク2との間に特別な軸受手段を設ける必要がなくなる。したがって、入力側ディスク2の変形に伴う強度低下や、そのような変形に伴う軸受手段の劣化といった問題を解消しつつ、入力軸1に対する入力側ディスク2の軸方向の摺動を円滑に行なうことができる。すなわち、特別なベアリング手段を用いることなく軸方向摺動を行なうことができるため、部品点数および製造コストの低減を図ることができるとともに、入力側ディスク2にボール溝等を形成する必要がなく、曲げ荷重が作用したときの応力集中部が発生しないため、強度も向上させることができる。
なお、ローディング圧力は、入力側ディスク2およびパワーローラ11を含むバリエータが伝達すべきトルクに応じて変化するが、軸方向の移動や入力側ディスク2の変形が大きいときは、伝達トルクが大きいときであり、このときローディング圧力も高くするため、圧油による前記軸受機能(静圧軸受)が損なわれることはない。一方、ローディング圧力が低いときは、入力側ディスク2と入力軸1とがいわゆるすべり軸受として機能するが、このときは、伝達トルクが小さく、移動や変形も小さいため、支障はない。
また、本実施形態においては、隙間SAからの圧油の漏れを防ぐシール部材400が設けられているため、ローディング圧力を入力側ディスク2の内周面に確実に作用させることができ(これに対し、図5に示した従来構造では、ローディング圧が入力側ディスク2の背面にしか作用しない)、圧油による前記軸受機能(静圧軸受)の向上を図ることができる。
なお、前述の実施形態では、隙間SAからの圧油の漏れを防ぐシール部材400を、押圧装置130と対向する入力側ディスク2の背面と反対側の面の近傍(入力側ディスク2の小径側端面寄り)における入力側ディスク2の内周面に設けられた環状溝に装着するようにしたが、これに代えて、押圧装置130と対向する入力側ディスク2の背面と反対側の面の近傍(入力側ディスク2の小径側端面寄り)における入力軸1の外周面に設けられた環状溝に装着するようにしてもよい。
本発明は、ダブルキャビティ型などのハーフトロイダル型無段変速機の他、トラニオンを有さないフルトロイダル型無段変速機にも適用することができる。
本発明の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部断面図である。 図1のトロイダル型無段変速機の要部拡大断面図である。 従来から知られているトロイダル型無段変速機の具体的構造の一例を示す断面図である。 図3のA−A線に沿う断面図である。 油圧式の押圧装置を備えたトロイダル型無段変速機の図3に対応する断面図である。 入力軸に対して入力側ディスクを摺動可能に支持する従来の支持構造を示す要部拡大断面図である。
符号の説明
1 入力軸
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
130 押圧装置
400 シール部材
SA 隙間

Claims (2)

  1. 回転トルクが入力される入力軸と、この入力軸に結合されて入力軸と一体で回転する入力側ディスクと、この入力側ディスクとの間に設けられたパワーローラを介して入力側ディスクの回転力を所定の変速比で受ける出力側ディスクと、前記入力側ディスクの背面に配置され且つ前記入力側ディスクを軸方向へ押圧する油圧式の押圧装置とを備えるトロイダル型無段変速機であって、
    前記入力側ディスクは、前記入力軸との間に所定の隙間をもって前記入力軸に対して同心的に配置され、
    前記隙間には、前記押圧装置から所定のローディング圧で圧油が導入されるようになっていることを特徴とするトロイダル型無段変速機
  2. 前記入力側ディスクと前記入力軸との間には、前記隙間からの圧油の漏れを防ぐシール部材が介挿されていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
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JP2015232350A (ja) * 2014-06-09 2015-12-24 日本精工株式会社 トロイダル型無段変速機

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