JP5281606B2 - 機能性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
ガスバリア膜としては、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム等の各種の無機化合物からなる膜が知られている。また、これらのガスバリア膜は、プラズマCVD、スパッタリング、真空蒸着等の真空成膜法で成膜される。
また、このような機能性フィルムの製造において、高い生産性や生産効率での製造を可能とする方法として、長尺な基板を、ロール状に巻回してなる基板ロールから送り出し、長手方向に搬送しつつガスバリア膜等の成膜を行って、成膜済みの基板をロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll 以下、RtoRともいう)による成膜を行なう装置が知られている。
このような目的を達成するために、機能膜を成膜する基板の表面や、成膜した機能膜の表面を、保護フィルムで保護することが行われる。
この製造方法によれば、A面のガスバリア膜の上に保護フィルムを貼着しているので、B面のガスバリア膜の成膜時に、ドラム電極との接触によってA面のガスバリア膜が損傷することを防止できる。
さらに、特許文献1には、A面にガスバリア膜を成膜する前に、基板のA面に保護フィルムを貼着し、成膜領域に搬送する前に保護フィルムを剥離することも記載されている。特許文献1では、この方法によれば、基板表面の異物をガスバリア膜の成膜前に、基板表面に付着した異物を、ガスバリア膜の成膜前に除去でき、均質性に優れたガスバリアフィルムを製造できる、としている。
すなわち、基板の保護および機能膜の保護の両方が必要な場合には、2枚の保護フィルムが必要となる。さらに、複数層の機能膜を成膜する場合には、保護が必要な機能膜の層数に応じた枚数の保護フィルムが必要となる。
また、前記基板との剥離位置から前記基板への再貼着位置までの、前記保護フィルムの搬送経路に、その前後における保護フィルムにかかる張力を遮断するテンションカット手段を設けるのが好ましく、この際において、前記基板にかかる張力をT1、前記基板との剥離位置からテンションカット手段までに前記保護フィルムにかかる張力をT2、前記テンションカット手段から前記基板との再貼着位置までに前記保護フィルムにかかる張力をT3とした際に、『T3<T1<T2』であるのが好ましい。
また、前記基板の被処理面に施す処理が、減圧下における処理であって、前記基板との剥離位置から前記基板への再貼着位置までの前記保護フィルムの搬送を、減圧下で行うのが好ましく、この際において、前記基板の被処理面に施す処理が、1000Pa以下の圧力で行う処理であるのが好ましく、さらに、前記基板との剥離位置から前記基板への再貼着位置までの前記保護フィルムの搬送経路の圧力が、前記基板の被処理面の処理圧力と同一であるのが好ましい。
また、前記保護フィルムの搬送中に、前記保護フィルムの温度調節を行うのが好ましく、この際において、前記温度調整は、前記基板との再貼着位置における基板と保護フィルムとの温度差が、20℃以下となるように、前記保護フィルムの温度を調節するのが好ましく、また、前記基板および保護フィルムを、共に、それぞれのガラス転移温度以下の温度として、前記基板と保護フィルムとの再貼着を行うのが好ましい。
また、前記基板と保護フィルムとの剥離を、前記保護フィルムの粘着材の軟化温度以下で行うのが好ましく、また、ロール状に巻回された基板ロールから前記積層材を送り出して、前記基板と保護フィルムの剥離、基板の処理、および、基板と保護フィルムとの再貼着を行い、再貼着した積層材を、再度、ロール状に巻回するのが好ましく、さらに、前記保護フィルムの搬送経路中に、保護フィルムのクリーニング手段を設けるのが好ましい。
そのため、本発明の製造方法によれば、基板表面や成膜した機能膜等が露出するのを、成膜時などの必要最小限に抑えることができ、保護が必要な面を確実に保護して、他の部材との接触に起因する損傷などを大幅に抑制して、損傷等に起因する特性低下を防止した、高品質な製品を安定して製造できる。また、複数層の膜を成膜する機能性フィルムの製造であっても、基板表面の保護と、成膜したガスバリア膜など機能膜表面等の保護とを、1枚の保護フィルムで行うことができる。
そのため、本発明によれば、基板表面および処理後の表面を好適に保護することができると共に、多層の機能膜を成膜する機能性フィルムの製造においても、保護フィルムは1枚で済むので、保護フィルムに起因する製造コストの向上を、大幅に抑制できる。
図1に示す成膜装置10は、基板Zと保護フィルムLとの積層材Gを用い、基板Zと保護フィルムLとを剥離して、異なる搬送経路で同速度で搬送し、基板Zにガスバリア膜等の目的とする機能を発現する膜(以下、便宜的に『機能膜m』とする)を成膜した後、再度、基板Zと保護フィルムLとを貼着するものであり、真空チャンバ12と、この真空チャンバ12内に形成される、成膜室14と巻出し/巻取り室16とを有して構成される。
成膜装置10は、積層材ロール18から積層材Gを引き出して、長手方向に搬送しつつ、前述のように剥離/成膜/貼着等の所定の処理を施し、再度、ロール状に巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll 以下、RtoRともいう)による成膜を行なう装置である。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどの有機物からなるプラスチック(樹脂)フィルムや、アルミニウム、ステンレスなどの金属ウエブ状物等が、基板Zとして、好適に利用可能である。
この際においては、基材の上に1層のみが成膜されたウエブ状物を基板Zとして用いてもよく、あるいは、基材の上に、複数層が成膜されたウエブ状物を基板Zとして用いてもよい。また、基板Zが、基材の上に複数層の膜が成膜されたウエブ状物である場合には、同じ層を複数層有してもよく、例えば、平坦化層とガスバリア膜との組み合わせを複数回繰り返し積層した構成のように、2層以上を組み合わせてなる膜を、複数回、繰り返し積層したものであってもよい。
すなわち、本発明の製造方法においては、本発明の製造方法によって製造した、基板Zに機能膜mを成膜し、その上に保護フィルムLを積層/貼着した積層材G’(図2(B)参照)を、原材料となる積層材Gとして用いてもよい。
保護フィルムLには、特に限定はなく、機能性フィルムの製造において利用されている、粘着性を有する保護フィルムが、各種、利用可能である。
粘着材には、特に限定はなく、エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着材、ポロオレフィン系粘着材、アクリル系粘着材、ゴム系粘着材、ウレタン系粘着材、シリコン系粘着材、紫外線硬化型粘着材等、公知の粘着材が、各種、利用可能である。
このような保護フィルムLに関しては、前述の特許文献1(国際公開第2007/138837号公報)に詳述されている。
粘着材を塗布のような後付ではなく、プラスチックフィルム自体が溶融製膜される際に共流延によって粘着層を付与された保護フィルムLとすることで、さらに最適な粘着力を実現できると共に、積層材Gから保護フィルムLを剥離した際における、粘着材の基板Zの表面Zaへの残存を少なくすることができるので、高品質な機能性フィルムを製造することが可能となる。また、共流延によって粘着層を形成した保護フィルムLを用いることで、粘着材からの脱ガスを低減でき、図示例のような真空系で取り扱う際の悪影響を最小限に抑制することができ、余分なガスによる成膜への悪影響、例えば、機能膜mの割れや抜け等の欠陥が発生するのを更に抑制することができる。
また、保護フィルムLの剥離力には、特に限定は無いが、保護フィルムLの粘着力が高すぎると、特に図示例のような真空系で扱う場合には、基板Z(表面Za)と間のエアー除去化による密着力の向上によって、保護フィルムLの剥離により表面Zaを破壊する可能性が有り、さらに、表面Zaに粘着材が残存し、機能膜mを成膜する時の異物となる可能性も有る。逆に、保護フィルムLの粘着力の弱すぎると、保護フィルムLが基板Zに綺麗に貼り付かず、これが、皺や巻き姿の異常を引き起こす原因となる。
以上の点を考慮すると、保護フィルムLは、基板Zの表面Zaに対する剥離力が、0.4〜5N/mであるのが好ましい。特に、巻き締まりが生じる、図示例のような真空系で保護フィルムLを扱う場合には、保護フィルムLは、基板Zの表面Zaに対する剥離力が、0.4〜2.4N/mであるのが好ましい。
このような成膜装置10は、真空チャンバ12内に形成された、成膜室14と巻出し室/巻取り室16(以下、巻出し室16とする)とを有する。なお、成膜装置10(60)は、図示した部材以外にも、各種のセンサ、搬送ローラ対や基板Zの幅方向の位置を規制するガイド部材など、基板Zを所定の経路で搬送するための各種の部材(搬送手段)等、RtoRによって成膜を行なう装置が有する各種の部材を有してもよい。
図示例において、成膜室14は、ドラム24と、搬送ローラ26および28と、成膜手段30と、真空排気手段32と有して構成される。
ドラム24は、温度調節手段を内蔵して、成膜中の基板Zの温度を調節可能とするのが好ましい。なお、温度調節手段には、特に限定はなく、シリコンオイルや水等の温度調整媒体の循環手段、各種のヒータ等の加熱手段、ピエゾ素子等の冷却手段等、公知の手段が、各種、利用可能である。
また、成膜手段30が、CCP−CVD等の電極対を用いる成膜手段である場合には、ドラム24は、成膜手段24の対向電極として作用するのが好ましい。そのために、ドラム24には、バイアス電源(例えば、400Hzのパルス電源や高周波電源)を接続してもよく、あるいは、接地してもよく、あるいは、バイアス電源との接続と接地とを切り換え可能にしてもよい。
真空排気手段32には、特に限定はなく、ターボポンプ、メカニカルブースターポンプ、ドライポンプ、ロータリーポンプなどの真空ポンプ、さらには、クライオコイル等の補助手段、到達真空度や排気量の調整手段等を利用する、真空成膜装置に用いられている公知の(真空)排気手段が、各種、利用可能である。この点に関しては、後述する真空排気手段48も同様である。
本発明において、機能膜mの成膜方法には、特に限定はなく、CVD、プラズマCVD、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等、公知の真空下で行われる公知の成膜手段が、全て、利用可能である。従って、成膜手段30は、成膜室14で実施する成膜方法に応じた、各種の部材を有して構成される。
成膜室14が、CCP−CVD法(容量結合型プラズマCVD)によって機能膜mの成膜を行なうものであれば、成膜手段30は、中空状で多数の小孔を有し電極および原料ガス供給部として作用するシャワー電極、プラズマ励起電力を供給する高周波電源(13.56MHz等)、原料ガスの供給手段等を有して構成される。
成膜室14が、スパッタリングによって機能膜mの成膜を行なうものであれば、成膜手段30は、ターゲットの保持手段や高周波電極、スパッタガスの供給手段等を有して構成される。成膜室14が、反応性スパッタリングによって成膜を行うものであれば、さらに、反応ガスの供給手段を有して構成される。
成膜室14が、成膜室が真空蒸着によって機能膜mの成膜を行うものであれば、成膜手段30は、蒸発源(ルツボ)、電子銃や抵抗加熱電源などの成膜材料の加熱手段等を有して構成される。
一例として、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア膜などが例示される。
従って、本発明は、高品質な製品を得るために、成膜面の清浄性および平滑性や、成膜した機能膜mの損傷防止を要求される機能膜mの成膜には、好適に利用可能であり、例えば、これらが強く要求されるガスバリア膜の成膜(すなわちガスバリアフィルムの製造)等には、好適に利用される。
後に詳述するが、成膜装置10においては、成膜中は、成膜室14と巻出し室16とを、同じ圧力にするので、成膜圧を上記範囲とすることにより、保護フィルムLに塵埃等の異物が付着するのを、好適に防止できる。
また、スパッタリングは、通常、10Pa以下の圧力で成膜を行うので、全ての成膜が、好適に利用可能である。
また、成膜室内に、複数のドラムを配列して、それぞれのドラムに対応して、1以上の成膜手段30を配置して、複数層の機能膜mを成膜できるようにしてもよい。
このように複数の成膜手段30を配置する場合には、各成膜手段30は、同じ成膜方法を行うものであっても、異なる成膜方法を行うものであってもよい。
さらに、複数のドラムを用いる場合は、後述する塗布手段やフラッシュ蒸着手段を行うドラムと、真空成膜を行うドラムとを、圧力室等を設けて真空下で連結して、フラッシュ蒸着→真空成膜→フラッシュ蒸着、フラッシュ蒸着→真空成膜、真空成膜→フラッシュ蒸着のような成膜を行ってもよい。
このような巻出し室16は、供給軸36と、剥離ローラ38と、予備加熱ローラ40と、貼り付けローラ42と、巻取り軸46と、真空排気手段48と、テンションカッタ50と、搬送ローラ52(52a〜52c)とを有して構成される。
成膜室14と巻出し室16とは、前述のように、隔壁20によって略気密に分離されているが、両室は、基板Zの通過部において、連通しており、圧力差が有ると、巻出し室16の圧力が、成膜室14の成膜圧に悪影響を与える場合が有る。
これに対して、真空排気手段48によって、巻出し室16の圧力を成膜室14の圧力と同圧力にすることにより、巻出し室16の圧力が、成膜室14における機能膜mの成膜に悪影響を与えることを防止できる。
本発明において、成膜室14と巻出し室16との圧力が同一とは、不可避的な変動や誤差を加味した略同一はもちろん、上記汚染防止のための圧力差を有する場合も含むものである。
供給軸36は、この積層材ロール18が装填される回転/支持軸である。
剥離ローラ38は、複数の長尺なウエブ状物を貼着してなる積層材をローラ上で剥離する、公知の剥離ローラである。積層材Gは、この剥離ローラ38によって、基板Zと保護フィルムLとに剥離される。
このような構成を有することにより、粘着材が基板Zに転写されることを好適に防止できる等の点で好ましい結果を得る。
他方、保護フィルムLは、搬送ローラ52bおよび予備加熱ローラ40に案内されて、成膜室14の外側の所定経路を通って、貼り付けローラ42に供給される。搬送ローラ52bと予備加熱ローラ40との間にはテンションカッタ50が配置されている。テンションカッタ50、および、予備加熱ローラ40については、後に詳述する。
なお、剥離ローラ38から貼り付けローラ42までの基板Zおよび保護フィルムLの搬送において、基板Zと保護フィルムLとの搬送速度は、同一である。
図1に示すように、基板Zと保護フィルムLとは、貼り付けローラ42において、保護フィルムLが機能膜mの全面を覆うように積層されて、再貼着され、図2(B)に示すような積層材G’とされる。
この積層材G’は、搬送ローラ52cによって所定の経路に案内されて、巻取り軸46によって、ロール状に巻回される。なお、巻取り軸46による巻取り張力には、特に限定は無いが、本発明者の検討によれば、10〜100N/m程度が好ましい。
すなわち、本発明の製造方法では、基板表面や成膜した機能膜等が露出するのを、成膜時、および、その前後などの、必要最小限に抑えることができる。そのため、本発明の製造方法によれば、保護が必要な面を確実に保護して、搬送ローラ等の他の部材との接触による損傷や塵埃等の付着に起因する特性低下の無い、高品質な製品を安定して製造することができる。
さらに、図示例においては、機能膜mを成膜した基板Zに保護フィルムLを積層した状態で巻き取る。そのため、巻き取った後も、機能膜mが保護された状態を維持でき、一般的に剛性の高い基板Zの裏面が、機能膜mに接触することに起因する損傷や、基板裏面の凹凸が機能膜mに転写されるいわゆる裏面転写も防止できる。
しかも、本発明の製造方法で作製した機能膜mを有する基板Zと保護フィルムLを有する積層材G’に、さらに、本発明の製造方法で機能膜mの成膜等を行うことにより、多層の機能膜mを成膜する機能性フィルムの製造においても、保護フィルムLは1枚で済むので、保護フィルムに起因する製造コストの向上を、大幅に抑制できる。
これに対し、前述のように、図示例の成膜装置10は、成膜室14は減圧下での成膜を行う装置であり、成膜室14で適正な成膜圧力を維持するために、保護フィルムLを搬送する巻出し室16内も、成膜室14と同圧力にする。すなわち、成膜装置10においては、保護フィルムLも減圧下で搬送されるので、基板Zと剥離された状態で搬送される保護フィルムLに、塵埃等の異物が付着するのを防止できる。特に、前述のように、成膜室14での成膜圧力を1000Pa以下とすることにより、保護フィルムLへの塵埃等の異物の付着を、より好適に防止でき、高品位な機能性フィルムを、より安定して作製できる。
なお、保護フィルムLのクリーニング手段には、特に限定はなく、粘着性を有するクリーニングロール等、公知のウエブ状物のクリーニング手段が、各種、利用可能である。
また、成膜装置10において、搬送ローラ52aと予備加熱ローラ40は、保護フィルムLに掛かる張力を調整する、テンションコントローラを兼ねている。
さらに、成膜装置10においては、基板Zや保護フィルムLに掛かる張力(特に、後述するT1、T2およびT3)を測定するための張力測定手段(テンションピックアップ)が配置されてもよい。
一例として、基板Zに掛かる張力をT1、剥離ローラ38からテンションカッタ50までの間の保護フィルムLに掛かる張力をT2、および、テンションカッタ50から貼り付けローラ42までの間の保護フィルムLに掛かる張力をT3とする。成膜装置10においては、テンションカッタ50によって、剥離ローラ38と貼り付けローラ42との間で保護フィルムLに掛かる張力を遮断し、テンションコントローラによって、テンションカッタ50の上下流で保護フィルムLに掛かる張力を調整することにより、
T3<T1<T2
となるように、基板Zおよび保護フィルムLにかかる張力を調整する。
そのため、積層材Gを搬送しつつ基板Zから保護フィルムLを剥離する際に、確実に剥離するためには、保護フィルムLに強い張力を書ける必要がある。逆に、基板Zと保護フィルムLとを貼着する際に、保護フィルムLに強い張力が掛かっていると、保護フィルムLに長手方向のシワが入ってしまい、適正な貼着を行うことができない。
それに対して、図示例のように、保護フィルムLの搬送経路中にテンションカッタ50とテンションコントローラとを設け、基板Zおよび保護フィルムLに掛かる張力を『T3<T1<T2』とすることにより、基板Zと保護フィルムLとの剥離を確実に行い、かつ、基板Zと保護フィルムLとの再貼着の際に保護フィルムLにシワが入るのを防止して、適正な貼着(積層材G’の形成)を行うことが可能となる。
なお、テンションカッタ50は、保護フィルムLに掛かる張力を適正に遮断できると共に、保護フィルムLを損傷することが無いものを選択するのが好ましい。
本発明においては、さらに、ローラによる張力調整以外にも、各種の張力調整手段が利用可能である。
図示例の成膜装置10においては、このような保護フィルムLの温度調節手段を有することにより、機能膜mを成膜された基板Zと、保護フィルムLとの再貼着を、より適正に行うことを可能にしている。
一方で、基板Zと保護フィルムLとの剥離は、常温で行うのが好ましく、保護フィルムLは、剥離後は、基板Zとの再貼着までは、何の処理もされない。
このような温度差が有る状態で、基板Zと保護フィルムLとを再貼着すると、保護フィルムLおよび基板Zに急激な温度変化が生じ、その結果、剛性の弱い保護フィルムLに皺が入ってしまい、適正な製品を得ることができない。
そのため、成膜装置10によれば、基板Zと保護フィルムLとの再貼着の際に保護フィルムLにシワが入るのを防止して、適正な貼着を行うことが可能となる。
再貼着する際の基板Zと保護フィルムLとの温度差を、上記範囲とすることにより、再貼着時における保護フィルムLのシワの発生を、より確実に防止できる。
従って、前記貼り付けローラ42および予備加熱ローラ40による温度調節は、保護フィルムLの温度がガラス転移温度よりも高くならないように行うのが好ましい。また、再貼着される基板Zをガラス転移温度以下とするために、必要に応じて、貼り付けローラ42の上流に、基板Zの冷却手段を配置してもよく、基板Zと保護フィルムLとを再貼着する際の温度差の調整に、この冷却手段を用いてもよい。
また、十分な保護フィルムLの加熱を行うためには、貼り付けローラ42への保護フィルムLの巻き掛け量を十分に確保するのが好ましい。そのためには、貼り付けローラ42は、比較的径の大きなローラであるのが好ましく、例えばφ250mm以上の径を有するローラであるのが好ましい。
長尺な積層材Gは、ロール状に巻回された積層材ロール18として供給軸36に装填される。積層材ロール18が供給軸36に装填されたら、積層材Gが引き出され、剥離ローラ38で基板Zと保護フィルムLとが剥離され、基板Zは成膜室14を経て貼り付けローラ42に、保護フィルムLは搬送ローラ対52bおよび予備加熱ローラ40を経て貼り付けローラ42に、それぞれ送られ、貼り付けローラ42で貼着されて、巻取り軸46に至る(巻回される)、所定の搬送経路を挿通される。
並行して、成膜手段30における成膜の準備を開始する。例えば、成膜手段30が、CCP−CVDやスパッタリングによる成膜を行うものであれば、原料ガスの供給等を開始し、真空蒸着による成膜を行うものであれば、成膜材料の加熱を開始する。
成膜室14における成膜条件は、成膜手段30や成膜する機能膜m、膜厚や成膜レート等に応じて、適宜、設定すればよい。
ドラム24に搬送されつつ、機能膜mを成膜された基板Zは、搬送ローラ28によって案内されて、成膜室14から排出されて、貼り付けローラ42に搬送される。
この搬送において、保護フィルムLは、予備加熱ローラ40によって加熱される。また、テンションカッタ50と、テンションコントローラを兼ねる搬送ローラ52bおよび予備加熱ローラ40によって、保護フィルムLのテンションは、『T3<T1<T2』を満たすように調整されている。これにより、剥離ローラ38における剥離、および、後の貼り付けローラ42における再貼着が適正に行われるのは、前述のとおりである。
なお、保護フィルムLは、貼り付けローラ42による搬送時にも加熱され、基板Zと保護フィルムLとの温度差が、好ましくは20℃以下、より好ましくは5℃以下にされる。これにより、貼り付けローラ42における再貼着が適正に行われるのは、前述のとおりである。
なお、この機能膜mを成膜された基板Zと保護フィルムLとの積層材G’は、次工程として、同じく本発明の製造方法によって機能膜mを成膜する装置に供給されてもよいのは、前述のとおりである。
なお、図3に示す成膜装置60は、成膜方法が異なる以外は、基本的に、前記図1に示す成膜装置10と同様の装置であり、同じ部材を多用しているので、同じ部材には、同じ符号を付し、以下の説明は、成膜装置60の作用と共に、異なる部位を主に行う。
塗布手段62における塗料の塗布方法には、特に限定はなく、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、カーテンフローコート、スプレーコート、バーコート等の公知の塗布手段が、各種、利用可能である。
なお、乾燥手段64には、特に限定はなく、ヒータによる乾燥、温風(熱風)吹き付けによる乾燥など、公知の乾燥手段が、全て利用可能である。
フラッシュ蒸着手段は、例えば、減圧下で、有機化合物モノマー(オリゴマー)などの成膜材料を含む液体を、微細液体状態にして加熱手段に噴射して、加熱手段によって蒸発させ、この成膜材料の蒸気を基板Zに付着させることにより、基板Zに成膜を行う。
成膜装置60は、大気圧下において機能膜mを成膜するものであるが、基板Zと剥離された保護フィルムLを、内部の空気を清浄化されたクリーンゾーンを通過することにより、保護フィルムLが減圧下を通過する先の成膜装置10と同様に、保護フィルムLに塵埃等の異物が付着することを防止でき、これに起因する機能膜mの汚染や損傷を防止できる。
また、クリーンゾーンの清浄化は、防塵フィルタを通す空気の循環等、半導体製造工場等におけるクリーンルームなどと同様の公知の手段で行えばよい。
なお、貼り付けローラ42による貼着までに、保護フィルムLは、予備加熱ローラ40および貼り付けローラ42によって加熱され、基板Z(乾燥によって昇温)と保護フィルムLとの温度差が好ましくは20℃以下とされており、また、テンションカッタ50と、テンションコントローラを兼ねる搬送ローラ52bおよび予備加熱ローラ40によって、保護フィルムLのテンションは、『T3<T1<T2』を満たすように調整されているのも、先の成膜装置10と同様である。
また、成膜装置60においても、必要に応じて、剥離ローラ38から貼り付けローラ42までの保護フィルムLの搬送経路途中に、保護フィルムLの粘着面(あるいは両面)のクリーニング手段を設けてもよい。
例えば、以上の例は、基板Zの表面Zaにガスバリア膜等の機能膜mを成膜するものであったが、本発明は、これに限定はされない。例えば、機能膜mの成膜ではなく、基板Zの表面に、プラズマ照射等によって、表面改質、粗面化処理、活性化処理などを行うものであってもよい。
12 真空チャンバ
14 成膜室
16 巻出し/巻取り室
18 積層材ロール
20 隔壁
24 ドラム
26,28,52(52a〜52g) 搬送ローラ
30 成膜手段
32,48 真空排気手段
36 供給軸
38 剥離ローラ
40 予備加熱ローラ
42 貼り付けローラ
46 巻取り軸
50 テンションカッタ
62 塗布手段
64 乾燥手段
68 クリーンゾーン
G,G’ 積層材
Z 基板
L 保護フィルム
Claims (13)
- 長尺な基板の被処理面に保護フィルムを貼着してなる積層材の、前記基板の被処理面を処理して機能性フィルムを製造する製造方法であって、
前記基板から保護フィルムを剥離して、基板と保護フィルムとを異なる搬送経路で長手方向に搬送し、前記基板を搬送しつつ被処理面に処理を施し、その後、前記被処理面を保護フィルムで覆うように、処理済みの前記基板と保護フィルムとを、再度、貼着することを特徴とする機能性フィルムの製造方法。 - 前記処理が、前記基板の被処理面への成膜である請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
- 前記基板との剥離位置から前記基板への再貼着位置までの、前記保護フィルムの搬送経路に、その前後における保護フィルムにかかる張力を遮断するテンションカット手段を設ける請求項1または2に記載の機能性フィルムの製造方法。
- 前記基板にかかる張力をT1、前記基板との剥離位置からテンションカット手段までに前記保護フィルムにかかる張力をT2、前記テンションカット手段から前記基板との再貼着位置までに前記保護フィルムにかかる張力をT3とした際に、
T3<T1<T2
である請求項3に記載の機能性フィルムの製造方法。 - 前記基板の被処理面に施す処理が、減圧下における処理であって、
前記基板との剥離位置から前記基板への再貼着位置までの前記保護フィルムの搬送を、減圧下で行う請求項1〜4のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。 - 前記基板の被処理面に施す処理が、1000Pa以下の圧力で行う処理である請求項5に記載の機能性フィルムの製造方法。
- 前記基板との剥離位置から前記基板への再貼着位置までの前記保護フィルムの搬送経路の圧力が、前記基板の被処理面の処理圧力と同一である請求項5または6に記載の機能性フィルムの製造方法。
- 前記保護フィルムの搬送中に、前記保護フィルムの温度調節を行う請求項1〜7のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
- 前記温度調整は、前記基板との再貼着位置における基板と保護フィルムとの温度差が、20℃以下となるように、前記保護フィルムの温度を調節する請求項8に記載の機能性フィルムの製造方法。
- 前記基板および保護フィルムを、共に、それぞれのガラス転移温度以下の温度として、前記基板と保護フィルムとの再貼着を行う請求項1〜9のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
- 前記基板と保護フィルムとの剥離を、前記保護フィルムの粘着材の軟化温度以下で行う請求項1〜10のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
- ロール状に巻回された基板ロールから前記積層材を送り出して、前記基板と保護フィルムの剥離、基板の処理、および、基板と保護フィルムとの再貼着を行い、
再貼着した積層材を、再度、ロール状に巻回する請求項1〜11のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。 - 前記保護フィルムの搬送経路中に、保護フィルムのクリーニング手段を設ける請求項1〜12のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
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