JP5278367B2 - 有機樹脂ラミネート鋼板 - Google Patents

有機樹脂ラミネート鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP5278367B2
JP5278367B2 JP2010091394A JP2010091394A JP5278367B2 JP 5278367 B2 JP5278367 B2 JP 5278367B2 JP 2010091394 A JP2010091394 A JP 2010091394A JP 2010091394 A JP2010091394 A JP 2010091394A JP 5278367 B2 JP5278367 B2 JP 5278367B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyester resin
resin
steel sheet
polyester
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2010091394A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011218691A (ja
Inventor
洋 上代
祐治 久保
雅晴 茨木
浩 西田
誠 河端
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2010091394A priority Critical patent/JP5278367B2/ja
Publication of JP2011218691A publication Critical patent/JP2011218691A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5278367B2 publication Critical patent/JP5278367B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本発明は、非めっき鋼板に樹脂フィルムを2層以上被覆した有機樹脂ラミネート鋼板に関するものである。
有機樹脂ラミネート鋼板とは、鋼板の表面に有機樹脂フィルムをラミネート(被覆)した鋼板であり、有機樹脂フィルムによって耐食性、加工性、意匠性等の向上が可能であり、飲料缶、食缶、電子材料部材、建材等に利用されている。
有機樹脂ラミネート鋼板の製造方法は、予め成形された有機樹脂フィルムをフィルムの融点以上に加熱した鋼板に圧着して接着させる熱ラミネート法、鋼板に溶融した熱可塑性樹脂膜をTダイから流下させてラミネートする押出ラミネート法、樹脂フィルムを接着剤によりラミネートする方法などにより製造される。
ラミネート鋼板に使用される樹脂フィルムは、食品用缶用途であれば臭気、衛生性、加工性などからポリエステル類、薬品缶用途であれば耐薬品性の観点からポリオレフィン類、電子材料分野では耐熱性からポリイミド、建材用途であれば外観性、耐汚染性からふっ素系樹脂といった様に、用途に応じて種々の樹脂フィルムが利用される。また鋼板も、耐食性、加工性、溶接性などの要求特性に応じて、ティンフリースチール、錫めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板等が使用される。
特許文献1では、成形性、密着性、耐衝撃性、内容物充填・レトルト殺菌処理後の耐食性を兼ね備えた容器用フィルムとして、上層が二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムからなり、下層がPET−G等の非晶性ポリマー樹脂フィルムからなる2層フィルムが開示されている。また、同文献では金属板としてアルミニウム板や軟鋼板、ティンフリースチールなどが開示され、加工後の密着性、耐食性の観点から特にティンフリースチールに関して検討されている。
また、特許文献2には、ラミネート鋼板の、フレーバー性の改善の為のゲルマニウム触媒の利用が記載されている。
特開2003−225967号公報 特開平6−179742号公報
ラミネート鋼板向けの鋼板として、クロメート処理や、亜鉛めっき、錫めっきなどのめっき処理が成されていない非めっき鋼板が利用出来れば、めっきなどの工程及び原料が省略でき、コストダウンが可能となる。めっき鋼板用のラミネート樹脂であるポリエステル類は、非めっき鋼板に対しても密着性を示すので、非めっき鋼板を備えた有機樹脂ラミネート鋼板を製造する事は可能である。しかし、非めっき鋼板を備えた有機樹脂ラミネート鋼板に飲料を接触させると、飲料の香気や味が著しく低下することが明らかになった。
その原因としては、非めっき鋼板を備えた有機樹脂ラミネート鋼板では地鉄に直接ポリエステル類からなるフィルムがラミネートされているため、香気成分または味成分がフィルムを透過して地鉄に接触し分解されるか、地鉄から溶出した鉄イオンが飲料中に混入するためと考えられている。
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題に鑑みてなされたもので、飲料等の香気が低下することのない有機樹脂ラミネート鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討し、以下の知見を得、本発明を完成した。まず、特許文献1及び特許文献2には、非めっき鋼板に使用した際の香気の低下に関する言及はない。
そこで、樹脂フィルムがラミネートされた非めっき鋼板での香気の低下を詳細に検討した所、上述したとおり、香気成分と場合によっては味成分とがフィルムを透過して地鉄に接触し分解されるか、地鉄から溶出した鉄イオンが飲料中に混入するために香気が低下する事が推定された。従来のめっき鋼板は、錫や亜鉛、クロムなどの非鉄金属や、りん酸亜鉛などの化成成分がその表面を覆っているため、香気の低下といった問題が顕在化しなかったが、非めっき鋼板では、鉄が鋼板表面の主成分であるため、このような特有の問題が生じたと考えられる。
よって飲料等の香気の低下防止の為には、鋼板表面の地鉄と香気成分との接触を減少させるとともに、地鉄からの鉄イオンの溶出を抑制する必要がある。ここで、鉄表面を、香気の主成分と考えられる有機低分子を浸透させず、かつ鉄の溶出を抑制し得る材料で覆えば、本課題は解決できる。
しかし、鋼板へのめっき処理は、ラミネート鋼板に非めっき鋼板を使用することでコストを低下させるという目的に合致しない。また、金属酸化物などの緻密膜をポリエステルフィルム等の表面に形成させることでバリア性を向上させる方法も考えられるが、緻密膜の成膜コストはむしろめっき処理よりも高コストである。従って、これらの利用は本末転倒と言える。
また、結晶性が高い樹脂フィルムはバリア性が高い事が知られている。しかし、ラミネート鋼板に使用されるポリエステル樹脂のバリア性は、めっき層や金属酸化物などの緻密膜と比較して低いため、香気が特に重要視される場合のめっき層の代替としては不十分である。
そこで、樹脂フィルム同士の組み合わせによっては、その界面で分子同士の相互作用により特別な緻密組織が生じ、これがバリア層の働きを発現する可能性があるとの設計思想に基づき鋭意検討した所、シクロヘキサンジメタノールをアルコールユニットとして含有するポリエステルと、カルボン酸ユニットとしてテレフタル酸成分を多量に含むポリエステルとを接合させる事で、香気成分の低下を抑制する現象が発現することを見いだした。さらに、この2種類の樹脂の組み合わせに際し、それぞれの樹脂に特有の有機成分を添加することで、さらにこの効果が高まることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] めっき処理されていない非めっき鋼板と、前記非めっき鋼板の表面に積層された、全アルコールユニットのうちシクロヘキサンジメタノールユニットを65〜100モル%含有するポリエステル樹脂(A)からなるフィルムと、前記ポリエステル樹脂(A)からなるフィルム上に積層された、全ジカルボン酸ユニットのうちテレフタル酸ユニットを93〜100モル%含有するポリエステル樹脂(B)からなるフィルムと、を具備してなることを特徴とする有機樹脂ラミネート鋼板。
[2] 前記ポリエステル樹脂(A)に、環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸が添加され、前記ポリエステル樹脂(B)に、芳香環を分子内に二個含有するとともにこれら芳香環が脂肪鎖で結合されるフェノール類が添加されていることを特徴とする[1]記載の有機樹脂ラミネート鋼板。
[3] 前記ポリエステル樹脂(A)に添加される前記エステル若しくは前記カルボン酸の添加率が、ポリエステル樹脂(A)に対して0.02〜0.14質量%の範囲であり、かつ前記ポリエステル樹脂(B)に添加される前記フェノール類の添加率が、ポリエステル樹脂(B)に対して0.003〜0.08質量%の範囲であることを特徴とする[2]に記載の有機樹脂ラミネート鋼板。
[4] 前記ポリエステル樹脂(A)からなるフィルムと前記ポリエステル樹脂(B)からなるフィルムとの厚み比が(A)/(B)=1/8〜13/1の範囲であることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の有機樹脂ラミネート鋼板。
[5] 前記ポリエステル樹脂(B)におけるアルコールユニットのうち脂肪族環状ジオールユニットの含有量が5モル%以下であることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の有機樹脂ラミネート鋼板。
尚、本発明で、アルコールユニットとは、アルコールがポリエステル分子になった場合の構成要素、例えばエチレングリコールがポリエステルになった際のオキシエチレンオキシ基を指す。またカルボン酸ユニットとはカルボン酸がポリエステル分子になった場合の構成要素、例えばテレフタル酸がポリエステルになった際のカルボニルフェニレンカルボニル基を指す。
また、本発明で、非めっき鋼板とは、亜鉛めっき、亜鉛−アルミニウム合金めっき、亜鉛−コバルト−モリブデンめっき、錫めっき、ニッケルめっき、クロムめっき、ニッケル−りんめっき,ニッケル−亜鉛めっきニッケル−コバルトめっき、ニッケル−錫めっき、アルミニウムめっき、といっためっき処理が施されていない鋼板をいう。
本発明の有機樹脂ラミネート鋼板によれば、香気が重視される飲料などに接触させても飲料の香気が低下することが少ない。
また、ポリエステル本来が有する成形性、耐熱性、耐薬品性、機械強度、ガスバリア性、外観美麗性、製造性等の優れた各種特性を併せ持つ、すなわち非めっき鋼板被覆用樹脂フィルムとして好適なフィルムを備えた有機樹脂ラミネート鋼板を実現できる。
以下に、本発明について説明する。
(1)ポリエステル樹脂(A)の原料
本発明に係るポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物またはヒドロキシカルボン酸化合物ユニットとジカルボン酸ユニット及びジオール化合物ユニットを構成ユニットとする熱可塑性ポリエステルである。また、本発明に係るポリエステル樹脂(A)は、前記の熱可塑性ポリエステルの混合物であっても良い。
ヒドロキシカルボン酸化合物ユニットの原料となるヒドロキシカルボン酸化合物を例示すると、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシエチル安息香酸、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4'-カルボキシフェニル)プロパン等が挙げられ、これらは単独で使用しても、また、2種類以上を混合して使用しても良い。
また、ジカルボン酸ユニットを形成するジカルボン酸化合物を例示すると、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びアジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独で使用しても、また、2種類以上を混合して使用しても良い。
次に、後述するように、本発明のポリエステル樹脂(A)には、アルコールユニットとしてシクロヘキサンジメタノールユニットが所定量含まれている事が重要であるが、シクロヘキサンジメタノールユニット以外のジオールユニットを含有していても良い。シクロヘキサンジメタノールユニット以外のジオールユニットを形成するジオール化合物を例示すると、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略称する)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、o-ヒドロキシフェニル-p-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'-ビフェノール、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオール及びエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、水添ビスフェノールA等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等が挙げられる。これらは単独で使用することも、また、2種類以上を混合して使用することもできる。
また、これらから得られるポリエステル樹脂(A)は、次項に述べるようにシクロヘキサンジメタノール(CHDM)ユニットを所定量含有していれば、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても良いが、中でも芳香族ジカルボン酸ユニットとジオールユニットより構成される含芳香族ポリエステル樹脂であることが、加工性、熱的安定性の観点から好ましい。
また、本発明に係るポリエステル樹脂(A)は、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトール等の多官能化合物から誘導される構成単位を少量、例えば2モル%以下の量を含んでいても良い。
本発明に使用する好ましいポリエステル樹脂(A)を例示すると、シクロヘキサンジメタノールユニットを所定量含有しているポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールユニットを所定量含有しているポリブチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールユニットを所定量含有しているポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールユニットを所定量含有しているポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレート等が挙げられるが、中でも適度の機械特性、及び金属密着性を有するシクロヘキサンジメタノールユニットを所定量含有しているポリエチレンテレフタレート、シクロヘキサンジメタノールユニットを所定量含有しているポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。
また、非めっき鋼板と接する前記ポリエステル樹脂(A)のフィルムの層(下地層)は、下記に示すように、CHDMユニットを所定量含有することを必須とする。
<シクロヘキサンジメタノール(CHDM)ユニット>
本発明のポリエステル樹脂(A)は上層となるポリエステル樹脂(B)と接合されることで、その界面に特有のバリア層を形成することが必要であり、その為には、ポリエステル樹脂(A)はジオール成分として、CHDMユニットを含有していることが必要である。鋼板と接するポリエステル樹脂(A)のフィルムは、全アルコールユニットに対しCHDMユニットを65〜100モル%含有するものとする。CHDMユニット含有率が65モル%より少ない場合には、バリア層の形成が不十分となり、飲料等の香気が低下しやすくなる。また、より緻密なバリア層を形成できるという観点から、CHDMユニットの含有率が72モル%以上である事が好ましく、更により堅固なバリア層を形成できるという観点から、CHDMユニットの含有率が79モル%以上である事が好ましい。また、幅広い製造温度で容易にバリア層が形成されるという観点からは、CHDMユニットの含有率は98%以下がより好ましく、さらに形成されたバリア層が、ラミネート後の湿潤処理によっても安定であるという観点からはCHDMユニットの含有率は94%以下が好ましい。
上記CHDMユニットの含有率は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロパノールなどで樹脂を溶解した後、核磁気共鳴分析により決定することが出来る。
また、CHDMユニットの添加方法としては、CHDMユニットの総含有量が上記の範囲であれば、CHDMユニットを含有しないポリエステルとCHDMユニットを含有するポリエステルを混合しても良いし、CHDMユニットを含有するポリエステルを複数種類混合しても良いし、CHDMユニットを含有するポリエステルを単独で使用しても良い。
(2)ポリエステル樹脂(A)の物性
本発明に使用するCHDMユニットを含有するポリエステル樹脂(A)の固有粘度は、0.65〜1.19dl/gであることが好ましい。前記固有粘度が0.65dl/g未満では、混練によって本発明に係るポリエステル樹脂(A)を製造する際に、ポリエステル樹脂(A)の溶融粘度が低すぎ、製膜性が低下する場合がある。一方、固有粘度が1.25dl/gを越えると、ポリエステル樹脂(B)との界面が適切に形成されなくなる可能性があるため好ましくない。また、非めっき鋼板にラミネートした後にラミネート鋼板のフィルム表面の凹凸が少なくなる観点からは、固有粘度は0.71dl/g以上が好ましい。さらに、固有粘度が低い場合は、非めっき鋼板にラミネートした後に、ラミネート鋼板の反りが少なくなるため、固有粘度は1.12dl/g以下が好ましい。
上記固有粘度は、25℃のo-クロロフェノール中、0.5%の濃度で測定し、下記(i)式によって求められる。式中、Cは溶液100ml当たりの樹脂のg数で表わした濃度を、t0は溶媒の流下時間を、tは溶液の流下時間を各々表す。
固有粘度={ln(t/t0)}/C … (i)
本発明に使用するポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg、サンプル量約10mg、昇温速度10℃/分の示差型熱分析装置(DSC)で測定できる)が、通常30〜120℃、より好ましくは65〜100℃であることが望ましい。ガラス転移温度Tgが30℃より低いと、ポリエステル樹脂が軟質で加工性が悪化しやすくなり、一方、120℃を超えると、樹脂が硬質で耐衝撃性が低下しやすくなるからである。
(3)ポリエステル樹脂(B)の原料
本発明に使用するポリエステル樹脂(B)とは、ジカルボン酸化合物及びジオール化合物またはヒドロキシカルボン酸化合物ユニットとジカルボン酸ユニット及びジオール化合物ユニットを構成ユニットとする熱可塑性ポリエステルである。また、本発明に係るポリエステル樹脂(B)は、前記の熱可塑性ポリエステルの混合物であっても良い。
ヒドロキシカルボン酸化合物ユニットの原料となるヒドロキシカルボン酸化合物を例示すると、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシエチル安息香酸、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4'-カルボキシフェニル)プロパン等が挙げられ、これらは単独で使用しても、また、2種類以上を混合して使用しても良い。
また、ジカルボン酸ユニットを形成するジカルボン酸化合物を例示すると、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びアジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらは単独で使用しても、また、2種類以上を混合して使用しても良い。
次に、ポリエステル樹脂(B)のジオールユニットを形成するジオール化合物を例示すると、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略称する)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、o-ヒドロキシフェニル-p-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'-ビフェノール、3,3',5,5'-テsトラメチル-4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオール及びエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレンsグリコール、ポリエチレングリコール、等が挙げられ、これらは単独で使用することも、また、2種類以上を混合して使用することもできる。
また、これらから得られるポリエステル樹脂(B)は、次項に述べるようにテレフタル酸ユニットを所定量含有していれば、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても良いが、中でも芳香族ジカルボン酸ユニットとジオールユニットより構成される含芳香族ポリエステル樹脂であることが、加工性、熱的安定性の観点から好ましい。
本発明のポリエステル樹脂(B)は下層となるポリエステル樹脂(A)と接合されることで、その界面に特有のバリア層を形成することが必要であり、その為には、ポリエステル樹脂(B)はカルボン酸ユニットとして、テレフタル酸を含有していることが必要である。ポリエステル樹脂(B)は、全カルボン酸ユニットに対しテレフタル酸ユニットを94〜100モル%含有するものとする。テレフタル酸ユニット含有率が94モル%より少ない場合には、バリア層の形成が不十分となり、香気が低下しやすくなる。また、より緻密なバリア層を形成できるという観点から、テレフタル酸ユニットの含有率が95.5モル%以上である事が好ましく、更により堅固なバリア層を形成できるという観点から、テレフタル酸ユニットの含有率が96.2モル%以上である事が好ましい。また、幅広い製造温度で容易にバリア層が形成されるという観点からは、テレフタル酸ユニットの含有率は99.5%以下がより好ましく、さらに形成されたバリア層が、ラミネート後の湿潤処理によっても安定であるという観点からはテレフタル酸ユニットの含有率は98.5%以下が好ましい。
また、本発明に係るポリエステル樹脂(B)は、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族環状ジオールを含有するポリエステル樹脂(A)からなるフィルムとの界面でバリア層を形成させるという観点から、バリア層形成成分である脂肪族環状アルコール類、特に、シクロヘキサンジメタノールユニットを多量に含むことは好ましくなく、緻密なバリア層形成の観点からは、ポリエステル樹脂(B)の全アルコールユニットのうち脂肪族環状ジオールユニットの含有量が5モル%以下、堅固なバリア層形成の観点からは、2モル%以下であることが好ましい。
本発明に使用する好ましいポリエステル樹脂(B)を例示すると、テレフタル酸ユニットを所定量含有しているポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸ユニットを所定量含有しているポリブチレンテレフタレート、テレフタル酸ユニットを所定量含有しているポリヘキサメチレンテレフタレート、テレフタル酸ユニットを所定量含有しているポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレート等が挙げられるが、中でも適度の機械特性、及び金属密着性を有するテレフタル酸ユニットを所定量含有しているポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸ユニットを所定量含有しているポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。
上記テレフタル酸ユニットの含有率は、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロパノールなどでポリエステル樹脂(B)を溶解した後、核磁気共鳴分析により決定することが出来る。
また、ポリエステル樹脂(B)へのテレフタル酸ユニットの添加方法としては、テレフタル酸ユニットの総含有量が上記の範囲であれば、テレフタル酸ユニットを含有しないポリエステルとテレフタル酸ユニットを含有するポリエステルを混合しても良いし、テレフタル酸ユニットを含有するポリエステルを複数種類混合しても良いし、テレフタル酸ユニットを含有するポリエステルを単独で使用しても良い。
(4)ポリエステル樹脂(B)の物性
本発明に使用するテレフタル酸ユニットを含有するポリエステル樹脂(B)の固有粘度は、0.85〜1.23dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.85dl/g未満では、混練によって本発明のポリエステル樹脂(B)を製造する際に、ポリエステル樹脂(B)の溶融粘度が低すぎ、製膜性が低下する場合がある。一方、固有粘度が1.23dl/gを越えると、ポリエステル樹脂(A)との界面が適切に形成されなくなる可能性があるため好ましくない。また、非めっき鋼板にラミネートした後にラミネート鋼板のフィルム表面の凹凸がすくなくなる観点からは、固有粘度は0.91dl/g以上が好ましい。さらに、固有粘度が低い樹脂は、非めっき鋼板にラミネートした後に、ラミネート鋼板に反りが生じにくくなるため、固有粘度は1.12dl/g以下が好ましい。
(5)環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸
ポリエステル樹脂(A)には、環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸を添加しても良い。環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸とは、芳香族または非芳香族の環状構造を一つ分子内に有し、かつエステル基若しくはカルボキシル基を1種以上含有する化合物である。エステル基の場合には、エステル基が環状構造を形成していてもかまわない。エステル基及びカルボキシル基は、複数でも良く、同一の官能基が複数でも、異なる官能基が合わせて複数でもよい。また1分子内にエステル基とカルボキシル基の両方を有していてもよい。
環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸の具体例としては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸-n-プロピル、安息香酸イソブチル、安息香酸-n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、p-ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p-ヒドロキシ安息香酸-n-プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸イソブチル、p-ヒドロキシ安息香酸-n-ブチル、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、アスコルビン酸などが挙げられる。これらの内、香気を低下させないための安定的なバリア層を形成できるという観点から、安息香酸、安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、サリチル酸、アスコルビン酸が挙げられる。ポリエステル樹脂(A)に対するこれら添加成分の添加量は、バリア層が適切に形成される観点から0.02〜0.14質量%が好ましい。添加量が、0.02%未満及び0.14%を越える場合はバリア層が形成されにくくなる。また添加量が0.06%以上、0.10%以下の場合には、より堅固なバリア層が形成されることからより好ましい。
(6)芳香環を分子内に二個含有し、それらが脂肪鎖で結合されているフェノール類
ポリエステル樹脂(B)には、芳香環を分子内に二個含有し、それらが脂肪鎖で結合されているフェノール類を添加しても良い。芳香環を分子内に二個含有し、それらが脂肪鎖で結合されているフェノール類とは、水酸基を有するベンゼン環や、水酸基を有するナフタレン環や、水酸基を有するピリジン環などのフェノール性の芳香族環を分子内に二個含有し、それらが脂肪鎖で結合されている化合物を指す。ただし、ナフタレン環の様に複数のベンゼン環が縮合している芳香族化合物は、1個の芳香環として数える。すなわち、芳香環がナフタレン環の場合には、ナフタレン環が2個必要となる。脂肪鎖としては、メチレン、プロピレンの様な直鎖でも、側鎖を有したり、ヒドロキシル基、アミノ基の様な官能基を有していても良い。
芳香環を分子内に二個含有し、それらが脂肪鎖で結合されているフェノール類の具体例としては、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-オクチルフェノール)、2,2'-エチレンビス(4-メチル-6-tert-オクチルフェノール)、2,2'-プロピレンビス(4-メチル-6-tert-オクチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ドデシルフェノール)、2,2'-エチレンビス(4-メチル-6-tert-ドデシルフェノール)、2,2'-プロピレンビス(4-メチル-6-tert-ドデシルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2、6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4'-エチレンビス(2、6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4'-プロピレンビス(2、6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2 -tert-ブチルフェノール)、4,4'-エチレンビス(2 -tert-ブチルフェノール)、4,4'-プロピレンビス(2 -tert-ブチルフェノール)などが挙げられる。これらの内、香気を低下させないための安定的なバリア層を形成できるという観点から、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-オクチルフェノール)4,4'-メチレンビス(2、6-ジ-tert-ブチルフェノール)が特に好ましい。ポリエステル樹脂(B)に対する添加成分の添加量は、バリア層が適切に形成される観点から0.003〜0.08質量%が好ましい。添加量が、0.003%未満及び0.08%を越える場合はバリア層が形成されにくくなる。また添加量が0.009%以上、0.064%以下の場合には、より堅固なバリア層が形成されることからより好ましい。
(7)香気低下防止のバリア層形成の原理
非めっき鋼板にシクロヘキサンジメタノールユニットを適切量含むポリエステル樹脂(A)のフィルムをラミネートし、さらにその上にテレフタル酸ユニットを適切量含むポリエステル樹脂(B)のフイルムをラミネートすることで、飲料等の香気の低下を大幅に改善可能である。これは、ポリエステル樹脂(A)中に含まれる脂環式化合物であるシクロヘキサンジメタノールユニットと、ポリエステル樹脂(B)中に含まれるテレフタル酸ユニットとの間で、何らかの相互作用が発現してバリア層が形成されるものと推測している。
また、ポリエステル樹脂(A)に含まれるシクロヘキサンジメタノールユニットと、ポリエステル樹脂(B)に含まれるテレフタル酸ユニットとが、エステル基の親和性により近接し、シクロヘキサンジメタノールユニットのシクロヘキシル基とテレフタル酸ユニットのベンゼン環の間に空隙が生じ、そこに、非めっき鋼板由来の鉄イオンなどが取り込まれた包接化合物のような物を形成する可能性もある。
ここで、シクロへキシル基は、脂肪族でかつイス型の立体的な構造を有し、ベンゼン環は芳香族で平面的な構造を有するため、シクロへキシル基同士、或いはベンゼン環同士であれば、立体的な整合性が高く、空隙は形成されにくい。一方で、シクロへキシル基とベンゼン環では立体的な整合性が低く、空隙が形成されやすいと考えられる。これが、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の界面にバリア層的な物が形成されると推定される理由である。
いずれの場合であっても、香気の透過が抑制され、また、地鉄からの鉄イオンの溶出が抑制され、その結果、非めっき鋼板の接触による香気の低下が抑制されたものと推測できる。
また、シクロヘキサンジメタノールユニット中の脂環式骨格とテレフタル酸ユニット中のベンゼン環の相互作用はCH-π相互作用が主体の弱い相互作用であり、これだけで強いバリア層を形成するとは考えにくいが、恐らくシクロヘキサンジメタノールユニットの両端に形成されるエステル基と、テレフタル酸ユニットの両端に形成されるエステル基とが相互作用する事で、総合的に強いポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の界面に強いバリア層のようなものが形成されると考えられる。すなわち、このバリア層の形成の為には、分子の整合性が非常に重要であるため、エステル基同士が相互作用出来るような適切な距離に固定できる、シクロヘキサンジメタノールユニット及びテレフタル酸ユニットが、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)に適切量含まれることが重要である。
またこのバリア層の形成は、ポリエステル樹脂(A)中に環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸が、また、ポリエステル樹脂(B)中に、芳香環を分子内に二個含有し、それらが脂肪鎖で結合されているフェノール類が存在するときに、より促進される。
この理由は、例えば以下のように推測される。
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の間で、シクロへキシル基とベンゼン環が相対することでその間に空隙が生じ、バリア層的な物が形成されると考える場合、シクロへキシル基とベンゼン環が相対するためには、シクロへキシル基とベンゼン環のそれぞれが樹脂の中である程度の運動性を有している事が重要と考えられる。完全に結晶化している場合は、分子の運動性が極めて低く、シクロへキシル基とベンゼン環が正しく相対するような配置を取ることが困難と考えられる。
ここで、ポリエステル樹脂(A)に「環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸」を添加すると、ポリエステル樹脂(A)が適度に可塑化され、分子運動性が高まり、シクロへキシル基とベンゼン環が相対しやすくなると考えられる。このとき「環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸」は、エステル若しくはカルボン酸部分によりポリエステル樹脂(A)と親和性を有し、環状構造部分がシクロヘキシル基と親和性が低いために、適度な可塑化効果を有すると考えられる。環状構造がゼロや二個以上であれば、親和性が低く可塑化効果が望めないと推測される。
またポリエステル樹脂(B)に「芳香環を分子内に二個含有し、それらが脂肪鎖で結合されているフェノール類」を添加する効果も、同様な可塑化効果と考えられ、この場合、フェノール部分がポリエステル樹脂(B)と親和性を有し、二個の芳香環が、テレフタル酸のベンゼン環と適度な親和性を有するために適度な可塑化効果が発現すると考えられる。例えば、芳香環が二個未満では親和性が低すぎて、可塑化効果が望めず、3個以上では親和性が高すぎて、可塑化効果が強くなりすぎて逆にバリア性が低下することが推測される。
このように、カルボニル基を有し、且つ特有の形状を有するエステル類やカルボン酸類がバリア層形成を補助することは、先のポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の界面でそれぞれの分子が整合する事でバリア層が形成されるというメカニズムを示唆すると考えられるが、あくまでも本メカニズムは仮説であり、本発明を限定するものではない。
(8)ポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムの製造方法
本発明のポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムの製造方法としては、樹脂原料が複数からなる場合は、1軸若しくは2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練したのちTダイなどから押し出す方法が挙げられる。
ポリエステル樹脂(A)、(B)がそれぞれ、複数樹脂の樹脂混合物から成る場合は、樹脂混練法、溶媒混練法等の公知の樹脂混練方法を広く使用できる。また、樹脂原料が単数からなる場合、或いは複数からなる場合でも、Tダイを設置した1軸若しくは2軸押出機を使用して直接押し出す方法が挙げられる。
樹脂混練法を例示すると、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、V 型ブレンダー等によりドライブレンドで混合した後、1軸若しくは2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法が挙げられる。また、溶媒混合法を例示すると、樹脂フィルムに含まれる原料樹脂の共通溶媒に各樹脂を溶解した後、溶媒を蒸発させたり、共通の貧溶媒に添加して析出した混合物を回収する方法等がある。
本発明のポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムの製造温度は、所望のフィルム厚み、厚み精度で成膜ができればよく、特に限定されない。通常はポリエステル類が溶融状態になる170℃以上300℃以下にて製造できる。
(9)強化剤
また、本発明のポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムには、剛性や線膨張特性の改善等を目的に、ガラス繊維、金属繊維、チタン酸カリウィスカー、炭素繊維のような繊維強化剤、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ミルドファイバー、金属フレーク、金属粉末のようなフィラー類を混入させても良い。これらの充填剤の内、ガラス繊維、炭素繊維の形状としては、6〜60μmの繊維径と30μm以上の繊維長を有することが望ましい。また、これらの添加量としては、全樹脂組成物質量に対して0.5〜50質量部であることが望ましい。
(10)その他補助剤
更に、ポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムには、目的に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、離型剤、滑剤、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤等を適正量添加することも可能である。
(11)多層化
また、耐衝撃性の向上などの目的で、ポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムとともに、他の樹脂フィルム若しくは接着剤、又は他の樹脂フィルムと接着剤の両方と組み合わせて使用しても差し支えない。但し、香気を低下させないためのバリア層形成の観点から、ポリエステル(A)とポリエステル(B)は、直接接触している必要がある。
(12)非めっき鋼板の例
本発明のポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムは非めっき鋼板の被覆材として使用できる。非めっき鋼板としては、鋼種は特に限定するものではないが、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、錫めっき鋼板などの原板として使用されている冷延鋼板が挙げられる。
また本発明のポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムは、香気を低下させないという特性から、めっき鋼板へも利用可能である。めっき鋼板としては、金属板は特に限定するものではないが、ブリキ、薄錫めっき鋼板、電解クロム酸処理鋼板(ティンフリースチール)またはニッケルめっき鋼板等の缶用鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛-鉄合金めっき鋼板、溶融亜鉛-アルミニウム- マグネシウム合金めっき鋼板、溶融アルミニウム-シリコン合金めっき鋼板または溶融鉛-錫合金めっき鋼板等の溶融めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛-ニッケルめっき鋼板、電気亜鉛-鉄合金めっき鋼板または電気亜鉛-クロム合金めっき鋼板等の電気めっき鋼板、等の表面処理鋼板が挙げられる。また、冷延鋼板やアルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、マグネシウム等の非鉄金属板等を用いてもよい。また、ポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムによる被覆は、鋼板の片面又は両面の何れであっても良い。
(13)ポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムの厚み
香気を低下させないためのバリア層形成の安定的な形成の為には、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)のフィルムの合計厚みが、5μm以上、より強固なバリア層形成の為には10μm以上である必要がある。また、フィルム層が厚すぎる場合には、フィルムの残留応力によりラミネート鋼板に反りが生じる可能性が有るため、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)のフィルムの合計厚みが90μm以下である必要がある。凹凸の少ない美麗な鋼板を得る目的では60μm以下であることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)のフィルムの厚み比は、(A)/(B)比で1/8〜13/1の範囲であることが好ましい。これ以外の比率の場合は、残留応力の為に、フィルム界面でのバリア層が適切に形成されない可能性がある。
(14)ポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムによる非めっき鋼板の被覆方法
フィルム圧着(間接/直接)、直接ラミネーションなど、非めっき鋼板への被覆には、公知の方法が使用できる。具体的には、(1)あらかじめ混練機により原料樹脂を溶融混練することで調製した樹脂組成物をTダイス付の押出機で本樹脂フィルムに成型し、これを金属板に熱圧着する方法(この場合、フィルムは無延伸でも、1方向若しくは2方向に延伸してあっても良い)、(2)Tダイスから出たフィルムを直接熱圧着する方法、が挙げられる。さらにフィルムを直接熱圧着する別の方法としては、(3)Tダイス付の押出機のホッパにあらかじめ混練機により原料樹脂を溶融混練することで調製した樹脂組成物の代わりに、本樹脂組成物の原料となる樹脂を投入し、押出機内で樹脂組成物に混練し、それを直接熱圧着する方法が挙げられ、被覆方法は特に限定されるものではない。
(15)滑剤の使用
非めっき鋼板への被覆工程や金属板加工時の潤滑性を向上する目的で、特開平5−186613号公報に開示されているような公知の滑剤が添加されていても良い。
滑剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子などの有機系のいずれでもよいが、無機系が好ましい。
滑剤の粒径は2.5μm以下が好ましい。2.5μm超では樹脂フィルムの機械特性が低下する。滑剤の添加量は金属板の巻取性や深絞り加工性に応じて決定されるが、0.05〜20%が好ましい。
特に、平均粒径が2.5μm以下であると共に粒径比(長径/短径)が1.0〜1.2である単分散の滑剤が耐ピンホールの点で好適であり、例えば、真球状シリカ、真球状酸化チタン、真球状シリコンなどを挙げることができる。滑剤の平均粒径(数平均粒子径)、粒径比は粒子を電子顕微鏡観察により求めることができる。滑剤の粒径分布は鋭く、標準偏差は0.5以下が好ましい。
滑剤の添加量は、フィルム製造工程における巻取り性と関係するので、一般に粒径が大きいときは少量、小さいときは多量に用いるとよい。例えば、滑剤の種類にもよるが、平均粒径0.2〜2.0μmで0.02〜0.5質量%程度である。
(16)顔料の使用
本発明のポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムは、顔料を含んでもよい。例えば、白色顔料として、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、などの無機系顔料を挙げることができる。顔料の平均粒径は、滑剤の粒径と同じ理由から、2.5μm以下が好ましい。顔料の添加量は、着色の機能を達成するために必要な量であり、3〜50質量%程度の範囲内で使用される。顔料の添加方法は公知の方法によることができる。
(17)可塑剤、帯電防止剤、抗菌剤などの使用
ポリエステル樹脂(A)、(B)の可塑剤としては、例えば、炭素数2〜20の脂肪酸多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体に対する炭素数8〜20の芳香族多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比が0〜2.0であるこれらの多塩基酸成分と、炭素数2〜20の脂肪族アルコールとを縮重合したものを、炭素数2〜20の一塩基酸又はそのエステル形成性誘導体及び/又は炭素数1〜18の一価アルコールで末端エステル化したポリエステルからなるポリエステル樹脂用可塑剤を挙げることができる。
成膜工程におけるフィルムのロールへの巻き付きや、フィルム表面への汚れ付着等の静電気障害を防止することを目的として、特開平5−222357号公報に開示される帯電防止剤等の樹脂組成物中に練り込む方法や、フィルム表面に特開平5−1164号公報に記載されている帯電防止剤を塗布する方法などを必要に応じて適用することができる。
特開平11−48431号公報、特開平11−138702号公報等に開示されている従来公知の抗菌剤を必要に応じて使用することができる。
(18)積層方法(多層/単層、片面/両面、金属厚み)
また、本発明のポリエステル樹脂(A)、(B)のフィルムを非めっき鋼板に被覆する際には、非めっき鋼板の片面及び/又は両面に、少なくとも上記樹脂フィルムを用いて2層以上積層して被覆することができる。この際に、2種類以上の樹脂フィルムを用いて非めっき鋼板の片面及び/又は両面に多層状に積層しても良く、また、必要に応じてPETフィルム、ポリカーボネートフィルム等のポリエステルフィルムや、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルムや、6-ナイロンフィルム等のポリアミドフィルムや、アイオノマーフィルム等の他の公知の樹脂フィルム、あるいは、結晶/非結晶ポリエステル組成物フィルム、ポリエステル/アイオノマー組成物フィルム、ポリエステル/ポリカーボネート組成物フィルム等の公知の樹脂組成物フィルムをその上層に積層して被覆しても良い。特に、食品用途などでは、従来から利用されているポリエステルフィルムを本発明に係るフィルムの上に積層することは、耐疵付き性、耐熱性などの観点から好ましい。但し何れの場合にも、ポリエステル樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の界面に香気を低下させないためのバリア層が形成される原理から、ポリエステル(A)及びポリエステル(B)は直接接触している必要がある。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びこれらのブレンド物が、特に耐疵付き性向上の観点から好ましい。具体的な積層方法としては、すでに述べた方法を使用する場合、多層のTダイスを使用して本発明に係る樹脂フィルムと他の樹脂フィルムや樹脂組成物フィルムとの多層膜を製造し、これを熱圧着する方法がある。本発明に係るラミネート鋼板は本発明に係る樹脂フィルムが被覆された鋼板であり、被覆は片面であっても両面であっても良い。非めっき鋼板の厚みは特に制限するものではないが、0.01〜5mmであることが好ましい。0.01mm未満では強度が発現し難くなる場合がある。5mm超では加工が困難になる場合がある。
次に、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
以下の実施例および比較例において、ポリエステル樹脂(A)としてイーストマンケミカル(株)製イースター6763(CHDM比率33%、6763と略す)、AN001(CHDM比率100%), AN004(CHDM比率100%),DN011(CHDM比率54%)、ポリエステル樹脂(B)として帝人(株)製TR3000H(3000Hと略す。テレフタル酸ユニット86%含有)、ユニチカ(株)製SA1206(1206と略すテレフタル酸ユニット86%含有)を使用した。
金属板として、厚さ0.1〜0.7mmのブリキ用冷延鋼板を使用した。
(実施例1〜18)
実施例1〜18(表1)は、ポリエステル樹脂(A)がCHDMユニットを65〜100%含有し、ポリエステル(B)がテレフタル酸ユニットを94〜100%含有する例である。CHDMユニットの含有モル%はポリエステル1とポリエステル2を混合することで調製し、得られたポリエステル(A)のCHDMユニットの含有モル%は、CHDMモル%として表記した。またテレフタル酸ユニットの含有モル%はポリエステル3とポリエステル4を混合することで調製し、得られたポリエステル(B)のテレフタル酸ユニットの含有モル%は、テレフタル酸モル%として表記した。
特定の樹脂成分含有量とするために、ポリエステル(A)、ポリエステル(B)とも、表1に示した2種類の樹脂を、目的とする樹脂成分量から逆算した混合比でドライブレンドしたものを原料ペレット使用して、二層フィルムとして押し出しTダイスで所定厚みの二層積層フィルムを得た(押出温度:260〜275℃、リップ幅=310mm、巻き取り速度=4.5〜5.5m/分 、リップ/第1ロール間距離=10cm)。フィルムの厚さは、実施例1〜16は50ミクロンである。ポリエステル(A)とポリエステル(B)の厚みは、実施例1〜16でそれぞれ25ミクロンずつ((A)/(B)=1/1)、実施例17では(A)が5.6ミクロン、(B)が44ミクロン((A)/(B)=1/8)、実施例18では(A)が46ミクロン、(B)が3.6ミクロン((A)/(B)=13/1)、比較例8では(A)が5ミクロン、(B)が45ミクロン((A)/(B)=1/9)、比較例9では(A)が46.7ミクロン、(B)が3.3ミクロン((A)/(B)=14/1)である。得られたフィルムを250℃に加熱した厚さ0.2ミリ、5cm角の非めっき鋼板の片面にラミネートし、水冷により10秒以内に100℃以下まで急冷し、樹脂被覆金属板を作製した。
ただし、実施例16のみ、ポリエステル(A)及びポリエステル(B)のフィルムを別個に単層フィルムとして作成し、これらをラミネートの際に、ポリエステル(A)のフィルムが非めっき鋼板に接触するように積層してラミネートする事で樹脂被覆金属板を作製した。
(比較例1〜9)
比較例1〜9(表2)は、CHDMユニット、テレフタル酸ユニット、添加剤の量が不適切な例である。フィルムの製造、分析は、実施例と同様である。ただし、非めっき鋼板のかわりに、比較例5では亜鉛めっき鋼板、比較例6ではティンフリースティール、比較例7ではすずめっき鋼板をそれぞれ使用した。
このようにして得られた樹脂被覆金属板について、下記に示す評価方法により、香気性の評価を行った。
<香気性評価>
上記の樹脂被覆金属板の中心部の直径2センチの円形部分を市販のアイスコーヒー(無糖、乳成分非添加、10mL)に25℃で2週間接触させた(カップをかぶせることで、コーヒーの大気接触は防止する)。その後、官能評価を行い、香気の変化が全く認められない物を◎、香気の低下がわずかに感じられる物を○、香気の低下が目立つ物を△、香気の低下が著しい物を×とした。
レトルト有りでの香気評価は、上記の樹脂被覆金属板をオートクレーブ中で121℃、30分の水熱殺菌処理を施した後に、上記のコーヒーとの接触試験および官能評価を行った。
レトルト+エリクセン加工有りでの香気評価は、樹脂被覆金属板をオートクレーブ中で121℃、30分の水熱殺菌処理を施した後に直径2センチ、押し出し量1センチのエリクセン加工を施した後、上記のコーヒーとの接触試験および官能評価を行った。
なお、表1及び表2において、添加剤の欄の上段にはポリエステル(A)に添加した添加剤を、下段にはポリエステル(B)に添加した添加剤をそれぞれ示している。略号は以下の通りである。a:安息香酸、b:安息香酸メチル、c:p-ヒドロキシ安息香酸メチル、d:p-ヒドロキシ安息香酸エチル、e:サリチル酸、f:アスコルビン酸、g:2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-オクチルフェノール)、h:4,4'-メチレンビス(2、6-ジ-tert-ブチルフェノール)、i:o-ヒドロキシ安息香酸メチル。
また、添加剤の添加量は、樹脂に対する質量%であり、添加剤略号の後ろの「/」の後ろに示した。「-」の記号は添加剤が添加されていないことを示す。
表3の結果より、本発明の樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)が適切な量のシクロヘキサンジメタノールユニット及びテレフタル酸ユニットをそれぞれ含有する場合に、香気性の低下が少なく、さらに適切な量の添加剤を含有する場合に、より効果が高くなる事がわかる。
表4の結果より、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)が適切な量のシクロヘキサンジメタノールユニット及びテレフタル酸ユニットをそれぞれ含有しない場合には、香気の低下が生じている事がわかる。さらに比較例5〜7から、この香気性の低下現象が非めっき鋼板特有の課題であることがわかる。また、比較例8、9から、フィルム(A)/(B)比が不適切の場合には香気が低下する事がわかる。
Figure 0005278367
Figure 0005278367
Figure 0005278367
Figure 0005278367

Claims (5)

  1. めっき処理されていない非めっき鋼板と、
    前記非めっき鋼板の表面に積層された、全アルコールユニットのうちシクロヘキサンジメタノールユニットを65〜100モル%含有するポリエステル樹脂(A)からなるフィルムと、
    前記ポリエステル樹脂(A)からなるフィルム上に積層された、全ジカルボン酸ユニットのうちテレフタル酸ユニットを93〜100モル%含有するポリエステル樹脂(B)からなるフィルムと、を具備してなることを特徴とする有機樹脂ラミネート鋼板。
  2. 前記ポリエステル樹脂(A)に、環状構造を一つ分子内に含有するエステル若しくはカルボン酸が添加され、
    前記ポリエステル樹脂(B)に、芳香環を分子内に二個含有するとともにこれら芳香環が脂肪鎖で結合されるフェノール類が添加されていることを特徴とする請求項1記載の有機樹脂ラミネート鋼板。
  3. 前記ポリエステル樹脂(A)に添加される前記エステル若しくは前記カルボン酸の添加率が、ポリエステル樹脂(A)に対して0.02〜0.14質量%の範囲であり、かつ前記ポリエステル樹脂(B)に添加される前記フェノール類の添加率が、ポリエステル樹脂(B)に対して0.003〜0.08質量%の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の有機樹脂ラミネート鋼板。
  4. 前記ポリエステル樹脂(A)からなるフィルムと前記ポリエステル樹脂(B)からなるフィルムとの厚み比が(A)/(B)=1/8〜13/1の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の有機樹脂ラミネート鋼板。
  5. 前記ポリエステル樹脂(B)におけるアルコールユニットのうち脂肪族環状ジオールユニットの含有量が5モル%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の有機樹脂ラミネート鋼板。
JP2010091394A 2010-04-12 2010-04-12 有機樹脂ラミネート鋼板 Active JP5278367B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010091394A JP5278367B2 (ja) 2010-04-12 2010-04-12 有機樹脂ラミネート鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010091394A JP5278367B2 (ja) 2010-04-12 2010-04-12 有機樹脂ラミネート鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011218691A JP2011218691A (ja) 2011-11-04
JP5278367B2 true JP5278367B2 (ja) 2013-09-04

Family

ID=45036278

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010091394A Active JP5278367B2 (ja) 2010-04-12 2010-04-12 有機樹脂ラミネート鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5278367B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2970550B1 (en) 2013-03-15 2017-08-30 Akzo Nobel Coatings International B.V. Acrylic grafted polyether resins based on phenol stearic acid and coating compositions formed therefrom
EP2970564B1 (en) 2013-03-15 2017-05-31 Akzo Nobel Coatings International B.V. Bisphenol-a free polyether resins based on phenol stearic acid and coating compositions formed therefrom
KR20170095569A (ko) * 2016-02-15 2017-08-23 이니츠 주식회사 금속과의 접착성이 우수한 폴리아릴렌 설파이드 조성물

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3343424B2 (ja) * 1993-12-28 2002-11-11 東洋製罐株式会社 絞りしごき缶用樹脂被覆金属板およびこれからなる絞りしごき缶
JP2000080177A (ja) * 1998-09-03 2000-03-21 Toray Ind Inc 金属板ラミネート用ポリエステルフィルム
JP2001081164A (ja) * 1999-09-17 2001-03-27 Toyobo Co Ltd ポリエステルフィルム及びその製造方法
JP5146171B2 (ja) * 2008-07-23 2013-02-20 新日鐵住金株式会社 有機樹脂ラミネート鋼板
JP5146170B2 (ja) * 2008-07-23 2013-02-20 新日鐵住金株式会社 有機樹脂ラミネート鋼板

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011218691A (ja) 2011-11-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8808844B2 (en) Packaging articles and lamination films
EP3109042B1 (en) Resin-coated metal sheet for container
JPH0259341A (ja) 改良された耐候性を有する共有押出製品
EP2878627A1 (en) Thermoplastic resin composition and sheet using same
JP5278367B2 (ja) 有機樹脂ラミネート鋼板
CN109562600A (zh) 多层聚酯膜、由该膜和金属箔制得的层压材料、用于制造所述膜和所述层压材料的方法、以及由所述层压材料制得的容器
JP2019524501A (ja) 多層ポリエステルフィルム及びアルミニウムシートから製造される積層体、かかる積層体を製造する方法、及びかかる積層体から製造される飲料缶蓋
JP4631583B2 (ja) ラミネート用積層ポリエステルフィルムおよびポリエステル樹脂ラミネート金属板
JP5146171B2 (ja) 有機樹脂ラミネート鋼板
JP3645771B2 (ja) 樹脂組成物、これを用いた樹脂フィルム、樹脂被覆金属板並びに樹脂被覆金属容器
JP5146170B2 (ja) 有機樹脂ラミネート鋼板
WO2004011254A1 (en) Polycarbonate/cycloali phatic polyester multilayered articles
JPH0985917A (ja) 金属板被覆用フィルム、被覆金属板及びその製造方法
JP2004130536A (ja) 金属板貼合せ成形加工用白色ポリエステルフィルム
JP5200480B2 (ja) 金属板被覆用樹脂組成物、樹脂フィルム、樹脂被覆金属板、及び樹脂被覆金属容器
WO2021200358A1 (ja) 積層ポリエステル樹脂被覆金属板、積層ポリエステル樹脂フィルム、及び缶蓋
JP4725477B2 (ja) 金属板ラミネート用樹脂フィルム、その製造方法、樹脂ラミネート金属板並びにその製造方法
JP3083508B2 (ja) 金属板ラミネート用ポリエステルフィルム
JP4462722B2 (ja) 金属板表面被覆用ポリエステル積層体
JP2007204630A (ja) 金属板被覆用樹脂フィルムおよび樹脂フィルム被覆金属板とそれらの製造方法
JP4079207B2 (ja) 樹脂被覆シームレス缶
EP3974474A1 (en) Resin film for metal plate laminate, and laminate metal plate using this
JPH09277473A (ja) 金属板ラミネート用2軸延伸積層フィルム
JP2021041632A (ja) 金属貼合せ成形加工用フィルム
JP2013189536A (ja) ポリエステル樹脂組成物及び積層体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120809

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130418

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130423

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130506

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5278367

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350