JP5277740B2 - 触媒層の形成方法および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 - Google Patents

触媒層の形成方法および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子燃料電池用電極における触媒層の形成方法および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法に関する。
燃料電池は発電効率が高く、反応生成物が原理的には水だけであり、環境への負荷が小さいことから今後の普及が見込まれている。なかでも固体高分子形燃料電池は、出力密度が高いため自動車用や分散発電システム、可搬型発電システム、家庭用のコージェネレーションシステムとして広く普及することが期待されている。
固体高分子形燃料電池は、通常、触媒層およびガス拡散層を有するカソードと、触媒層およびガス拡散層を有するアノードと、カソードの触媒層とアノードの触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜とを備えた膜電極接合体の両側に、ガス流路が形成された導電性のセパレータを配置してなるセルから構成される。
膜電極接合体の寸法安定性や機械的強度が低い場合、セルを組み立てる際の取扱性が悪くなったり、運転中に固体高分子電解質膜が破れたりする場合がある。そのため、膜電極接合体には、充分な機械的強度および寸法安定性を有していることが求められている。
また最近、固体高分子形燃料電池には、燃料電池システムの簡素化や低コスト化のために、反応ガス(燃料ガスおよび酸化剤ガス)の相対湿度が低い、低加湿条件における運転が求められている。低加湿条件下で安定的に発電が行えると、加湿装置などの周辺装置を設ける必要がなくなることから、燃料電池システムの低価格化や小型化を行うことができる。そのため、膜電極接合体の固体高分子電解質膜には、低加湿においてもイオン伝導性を維持するために、イオン交換容量が高いこと(すなわち、当量重量(イオン性基1当量あたりのポリマーのg数。以下、EWと記す。)が小さいこと)および厚さが薄いこと(25μm以下)が求められている。
しかし、固体高分子電解質膜は、EWが小さいほど、湿度環境の変化により大きな膨潤と収縮とを起こす性質がある。該膨潤と収縮は、セル温度、反応ガスの相対湿度、反応ガスの量、出力等の運転条件の変化によって発生するため、実用用途においては、該膨潤と収縮とが繰り返されることにより、固体高分子電解質膜が無秩序に寸法変化を起こし、その結果、固体高分子電解質膜に皺を発生させる。そして、固体高分子電解質膜の厚さが薄い場合、該皺によって固体高分子電解質膜が破れる場合がある。
寸法安定性が高められた固体高分子電解質膜および膜電極接合体としては、たとえば、下記のものが提案されている。
(1)多孔質微細構造を有する延伸膨張テトラフルオロエチレン膜にイオン交換樹脂を含浸させた厚さ約25μm以下の薄い複合膜(固体高分子電解質膜)(特許文献1)。
(2)無作為に配向した個々の繊維の多孔質体内にイオン伝導性ポリマーを含ませた複合膜(固体高分子電解質膜)(特許文献2)。
(3)固体高分子電解質膜の少なくとも片面に、導電性ナノ繊維を含む補強材を配置した膜電極接合体(特許文献3)。
しかし、(1)の複合膜は、補強されていない膜に比べて、イオン伝導性が低下してしまい、特に低加湿条件での発電性能が低くなる問題がある。
(2)の複合膜も、充分な化学安定性および量産性を有する多孔質体を選定した場合、補強されていない膜に比べて、イオン伝導性が低下してしまい、特に低加湿条件での発電性能が低くなる問題がある。
(3)の膜電極接合体においては、寸法安定性および機械的強度はいまだ不充分であり、特に固体高分子電解質膜の厚さが25μm以下の場合には、前記膨潤と収縮との繰り返しに耐えうることができない。すなわち、(3)の膜電極接合体のように、固体高分子電解質膜の外側に補強材を設ける場合、固体高分子電解質膜の寸法安定性を高めるためには、補強材とこれに隣接する層との間の接着力を高め、補強材により固体高分子電解質膜が充分に補強されている必要がある。
膜電極接合体の別の問題としては、膜電極接合体の製造時に、触媒層にクラック等の欠陥が生じやすい問題がある。すなわち、触媒層は、離型フィルム等の基材の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工し、乾燥させることによって形成されるが、乾燥時の溶媒蒸発、溶媒を含んだイオン交換樹脂の収縮等のため、触媒層にクラック等が発生しやすい。また、触媒層は脆いため、固体高分子電解質膜に転写する際に触媒層のクラック等により、触媒層の脱落、転写不良等の欠陥が発生しやすい。
米国特許第5547551号明細書 特開平10−312815号公報 特開2006−252967号公報
本発明は、触媒層と補強層とを有する固体高分子燃料電池用電極における、触媒層の形成方法であって、触媒層にクラック等の欠陥が発生しにくく、触媒層と補強層との界面における接着力が高く、かつ触媒層に接して固体高分子電解質膜を設けた際には、触媒層と固体高分子電解質膜との界面における接着力も高くなる触媒層の形成方法;および、低加湿条件においても高い発電性能を発現でき、充分な機械的強度および寸法安定性を有し、湿潤と乾燥等を繰り返す環境下においても優れた耐久性を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法を提供する。
本発明の触媒層の形成方法は、触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層と、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材および導電性ファイバーを含む補強層と、を有する固体高分子燃料電池用電極における、触媒層の形成方法であり、下記の工程(a)、(b)を有することを特徴とする。
(a)基材の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b)工程(a)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて触媒層を形成する工程。
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、第1の触媒層を有する第1の電極と、第2の触媒層を有する第2の電極と、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極のうち少なくとも前記第1の電極が、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材および導電性ファイバーを含む補強層を、さらに有する固体高分子燃料電池用膜電極接合体の製造方法であり、下記の工程(a’)〜(d’)を有することを特徴とする。
(a’)離型フィルムの上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b’)工程(a’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
(c’)工程(b’)で形成された第1の触媒層から離型フィルムを剥がして第1の触媒層と補強層とからなる第1の積層体を得る工程。
(d’)工程(c’)で得られた第1の積層体と、固体高分子電解質膜とを、第1の積層体の第1の触媒層と前記固体高分子電解質膜とが接するように接合する工程。
また、本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法 第1の触媒層を有する第1の電極と、第2の触媒層を有する第2の電極と、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極のうち少なくとも前記第2の電極が、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材および導電性ファイバーを含む補強層を、さらに有する固体高分子燃料電池用膜電極接合体の製造方法であり、下記の工程(a”)〜(c”)を有することを特徴とする。
(a”)離型フィルムの上に形成された固体高分子電解質膜の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b”)工程(a”)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第2の触媒層を形成する工程。
(c”)工程(b”)の後、固体高分子電解質膜から離型フィルムを剥がして固体高分子電解質膜と第2の触媒層と補強層とからなる第2の積層体を得る工程。
工程(a”)〜(c”)を有する製造方法は、下記の工程(a’)〜(c’)、(d”)をさらに有することが好ましい。
(a’)離型フィルムの上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b’)工程(a’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
(c’)工程(b’)で形成された第1の触媒層から離型フィルムを剥がして第1の触媒層と補強層とからなる第1の積層体を得る工程。
(d”)工程(c’)で得られた第1の積層体と、工程(c”)で得られた第2の積層体とを、前記第1の積層体の第1の触媒層と前記第2の積層体の固体高分子電解質膜とが接するように接合する工程。
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法は、第1の触媒層を有する第1の電極と、第2の触媒層を有する第2の電極と、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極が、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材および導電性ファイバーを含む補強層を、さらに有する固体高分子燃料電池用膜電極接合体の製造方法であり、下記の工程(h)〜(j)、(h’)〜(j’)、(k)を有することを特徴とする。
(h)離型フィルムの上に形成された第1のイオン交換樹脂膜の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(i)工程(h)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
(j)工程(i)の後、第1のイオン交換樹脂膜から離型フィルムを剥がして第1のイオン交換樹脂膜と第1の触媒層と補強層とからなる第3の積層体を得る工程。
(h’)離型フィルムの上に形成された第2のイオン交換樹脂膜の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(i’)工程(h’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第2の触媒層を形成する工程。
(j’)工程(i’)の後、第2のイオン交換樹脂膜から離型フィルムを剥がして第2のイオン交換樹脂膜と第2の触媒層と補強層とからなる第4の積層体を得る工程。
(k)工程(j)で得られた第3の積層体の第1のイオン交換樹脂膜と工程(j’)で得られた第4の積層体の第2のイオン交換樹脂膜とが接するように接合するとともに第1のイオン交換樹脂膜と第2のイオン交換樹脂膜とからなる固体高分子電解質膜を形成する工程。
本発明の触媒層の形成方法によれば、触媒層にクラック等の欠陥が発生しにくく、触媒層と補強層との界面における接着力が高く、かつ触媒層に接して固体高分子電解質膜を設けた際には、触媒層と固体高分子電解質膜との界面における接着力も高くなる。
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法によれば、低加湿条件においても高い発電性能を発現でき、充分な機械的強度および寸法安定性を有し、湿潤と乾燥等を繰り返す環境下においても優れた耐久性を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を製造できる。
本明細書においては、式(1)で表される繰り返し単位を単位(1)と記す。他の式で表される繰り返し単位も同様に記す。繰り返し単位は、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
また、本明細書においては、式(2)で表される化合物を化合物(2)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
<膜電極接合体>
本発明の製造方法で得られる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体と記す。)は、カソードまたはアノードの少なくとも一方が補強層を有し、この補強層で固体高分子電解質膜を外側から補強することにより、固体高分子電解質膜の寸法変化を充分に抑えつつ、固体高分子電解質膜を内部から補強する場合に比べて抵抗の上昇を抑えて発電特性を向上させることができる。特に、低加湿条件での発電特性を高くすることができる。
図1は、膜電極接合体の一例を示す断面図である。膜電極接合体10は、第1の触媒層22、補強層24およびガス拡散層26を順に有する第1の電極20と;第2の触媒層32、補強層34およびガス拡散層36を順に有する第2の電極30と;第1の電極20の第1の触媒層22と第2の電極30の第2の触媒層32との間に配置される固体高分子電解質膜40とを備えたものである。
第1の電極20は、アノードであってもよく、カソードであってもよい。第2の電極30は、第1の電極20がアノードの場合、カソードであり、第1の電極20がカソードの場合、アノードである。
(触媒層)
第1の触媒層22および第2の触媒層32(以下、まとめて触媒層とも記す。)は、触媒およびイオン交換樹脂を含む層である。第1の触媒層22および第2の触媒層32は、成分、組成、厚さ等が同じ層であってもよく、異なる層であってもよい。
触媒としては、燃料電池における酸化還元反応を促進するものであればよく、白金を含む触媒が好ましく、白金または白金合金がカーボン担体に担持された担持触媒が特に好ましい。
カーボン担体としては、活性炭、カーボンブラック等が挙げられ、化学的耐久性が高い点から、熱処理等によりグラファイト化したものが好ましい。
カーボン担体の比表面積は、200m/g以上が好ましい。カーボン担体の比表面積は、BET比表面積装置により、カーボン表面への窒素吸着により測定する。
白金合金としては、白金を除く白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム。)、金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、およびスズからなる群から選ばれる1種以上の金属と、白金との合金が好ましい。該白金合金には、白金と合金化される金属と、白金との金属間化合物が含まれていてもよい。
白金または白金合金の担持量は、担持触媒(100質量%)のうち、10〜70質量%が好ましい。
イオン交換樹脂としては、耐久性の点から、含フッ素イオン交換樹脂が好ましく、イオン性基を有するパーフルオロカーボンポリマー(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)がより好ましい。該パーフルオロカーボンポリマーとしては、ポリマー(H)またはポリマー(Q)が好ましく、ポリマー(Q)が特に好ましい。
ポリマー(H):
ポリマー(H)は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)に基づく単位と、単位(1)とを有するコポリマーである。
Figure 0005277740
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
ポリマー(H)は、TFEおよび化合物(2)の混合物を重合して前駆体ポリマー(以下、ポリマー(F)と記す。)を得た後、ポリマー(F)中の−SOF基をスルホン酸基に変換することにより得られる。−SOF基のスルホン酸基への変換は、加水分解および酸型化処理により行われる。
CF=CF(OCFCFX)−O−(CF−SOF ・・・(2)。
ただし、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1である。
化合物(2)としては、化合物(2−1)〜(2−3)が好ましい。
CF=CFO(CFn1SOF ・・・(2−1)、
CF=CFOCFCF(CF)O(CFn2SOF ・・・(2−2)、
CF=CF(OCFCF(CF))m3O(CFn3SOF ・・・(2
−3)。
ただし、n1、n2、n3は1〜8の整数であり、m3は1〜3の整数である。
ポリマー(Q):
ポリマー(Q)は、単位(U1)と単位(U2)とを有するコポリマーである。
Figure 0005277740
ただし、Qは、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Qは、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Rf1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、Qは、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基であり、Rf2は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、bは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基であり、tは、0または1である。
単結合は、CYまたはCYの炭素原子と、SOのイオウ原子とが直接結合していることを意味する。
有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
単位(U1):
、Qのパーフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、パーフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、原料の含フッ素モノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。また、炭素数が6以下であれば、ポリマー(Q)のEWの増加が抑えられ、プロトン伝導率の低下が抑えられる。
は、エーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。Qがエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であれば、Qが単結合である場合に比べ、長期にわたって固体高分子形燃料電池を運転した際に、発電性能の安定性に優れる。
、Qの少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基を有する含フッ素モノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
f1のパーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。パーフルオロアルキル基としては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等が好ましい。
単位(U1)が2つ以上のRf1を有する場合、Rf1は、それぞれ同じ基であってもよく、それぞれ異なる基であってもよい。
−(SO(SOf1基は、イオン性基である。
−(SO(SOf1基としては、スルホン酸基(−SO 基)、スルホンイミド基(−SON(SOf1基)、またはスルホンメチド基(−SOC(SOf1基)が挙げられる。
としては、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
単位(U1)としては、単位(M1)が好ましく、ポリマー(Q)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(M11)、単位(M12)または単位(M13)がより好ましい。
Figure 0005277740
ただし、RF11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、RF12は、炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基である。
単位(U2):
のパーフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、パーフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、ポリマー(Q)のEWの増加が抑えられ、プロトン伝導率の低下が抑えられる。
f2のパーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。パーフルオロアルキル基としては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等が好ましい。
−(SO(SOf2基は、イオン性基である。
−(SO(SOf2基としては、スルホン酸基(−SO 基)、スルホンイミド基(−SON(SOf2基)、またはスルホンメチド基(−SOC(SOf2基)が挙げられる。
としては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
単位(U2)としては、単位(M2)が好ましく、ポリマー(Q)の製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(M21)、単位(M22)、単位(M23)または単位(M24)がより好ましい。
Figure 0005277740
ただし、Yは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、mは、0〜3の整数であり、nは、1〜12の整数であり、pは、0または1であり、かつ、m+p>0である。
他の単位:
ポリマー(Q)は、さらに、後述する他のモノマーに基づく繰り返し単位(以下、他の単位と記す。)を有していてもよい。他の単位の割合は、ポリマー(Q)の、EWが後述の好ましい範囲となるように、適宜調整すればよい。
他の単位としては、機械的強度および化学的な耐久性の点から、パーフルオロモノマーに基づく繰り返し単位が好ましく、TFEに基づく繰り返し単位がより好ましい。
TFEに基づく繰り返し単位の割合は、機械的強度および化学的な耐久性の点から、ポリマー(Q)を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。
TFEに基づく繰り返し単位の割合は、電気抵抗の点から、ポリマー(Q)を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、92モル%以下が好ましく、87モル%以下がより好ましい。
ポリマー(Q)は、単位(U1)、単位(U2)、他の単位を、それぞれ1種ずつ有していてもよく、それぞれ2種以上有していてもよい。
ポリマー(Q)は、化学的な耐久性の点から、パーフルオロポリマーであることが好ましい。
ポリマー(Q)のEWは、400〜900g乾燥樹脂/当量(以下、g/当量と記す。)が好ましく、500〜800g/当量がより好ましく、550〜780g/当量がさらに好ましく、580〜750g/当量が特に好ましい。EWが900g/当量以下であれば、プロトン伝導率が高くなる(電気抵抗が低くなる)ため、充分な電池出力を得ることできる。EWが400g/当量以上であれば、分子量の高いポリマーの合成が容易であり、また、ポリマー(Q)が過度に水で膨潤しないため、機械的強度を保持できる。
従来から汎用的に用いられているポリマーのEWは、電気抵抗と機械的強度とのバランスから、900〜1100g/当量とされている。一方、ポリマー(Q)においては、EWを小さくして、電気抵抗を下げても、機械的強度を保持できる。
ポリマー(Q)における単位(U2)の割合は、単位(U2)/(単位(U1)+単位(U2))とした場合、0.2〜0.7が好ましく、0.25〜0.6がより好ましく、0.3〜0.55(モル比)がさらに好ましい。単位(U2)の割合が0.2以上であれば、湿潤と乾燥との繰り返しに対する耐久性が高くなり、固体高分子形燃料電池を長期にわたって安定して運転できる。単位(U2)の割合が0.7以下であれば、含水率が高すぎることなく、また、軟化温度およびガラス転移温度も低くなりすぎることなく、機械的強度を保持できる。
ポリマー(Q)の質量平均分子量は、1×10〜1×10が好ましく、5×10〜5×10がより好ましく、1×10〜3×10がさらに好ましい。ポリマー(Q)の質量平均分子量が1×10以上であれば、膨潤度等の物性が経時的に変化しにくく、耐久性が充分となる。ポリマー(Q)の質量平均分子量が1×10以下であれば、溶液化および成形が容易となる。
ポリマー(Q)の質量平均分子量は、TQ値を測定することにより評価できる。TQ値(単位:℃)は、ポリマーの分子量の指標であり、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件でポリマーの溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。たとえば、TQ値が200〜300℃であるポリマーは、ポリマーを構成する繰り返し単位の組成で異なるが、質量平均分子量が1×10〜1×10に相当する。
ポリマー(Q)の製造方法:
ポリマー(Q)は、たとえば、下記の工程を経て製造できる。
(i)化合物(u1)、化合物(u2)、および必要に応じて他のモノマーを重合し、−SOF基を有する前駆体ポリマー(以下、ポリマー(P)と記す。)を得る工程。
Figure 0005277740
(ii)必要に応じて、ポリマー(P)とフッ素ガスとを接触させ、ポリマー(P)の不安定末端基をフッ素化する工程。
(iii)ポリマー(P)の−SOF基をスルホン酸基、スルホンイミド基、またはスルホンメチド基に変換し、ポリマー(Q)を得る工程。
工程(i):
化合物(u1)としては、化合物(m1)が好ましく、化合物(m11)、化合物(m12)または化合物(m13)がより好ましい。
Figure 0005277740
化合物(m1)は、たとえば、下記合成ルートにより製造できる。
Figure 0005277740
化合物(u2)としては、化合物(m2)が好ましく、化合物(m21)、化合物(m22)、化合物(m23)または化合物(m24)がより好ましい。
Figure 0005277740
化合物(u2)は、たとえば、D.J.Vaugham著,”Du Pont Inovation”,第43巻、第3号,1973年、p.10に記載の方法、米国特許第4358412号明細書の実施例に記載の方法等、公知の合成方法により製造できる。
他のモノマーとしては、たとえば、TFE、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレンン、パーフルオロα−オレフィン類(ヘキサフルオロプロピレン等。)、(パーフルオロアルキル)エチレン類((パーフルオロブチル)エチレン等。)、(パーフルオロアルキル)プロペン類(3−パーフルオロオクチル−1−プロペン等。)、パーフルオロビニルエーテル類(パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル等。)等が挙げられる。
パーフルオロビニルエーテル類としては、化合物(m3)が好ましく、化合物(m31)、化合物(m32)または化合物(m33)がより好ましい。
CF=CF−(OCFCFZ)−O−R ・・・(m3)、
CF=CF−O−(CFCF ・・・(m31)、
CF=CF−OCFCF(CF)−O−(CFCF ・・・(m32)、
CF=CF−(OCFCF(CF))−O−(CFCF ・・・(m33)。
ただし、Zは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Rは、直鎖状または分岐状の炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基であり、uは、0〜3の整数であり、vは、1〜9の整数であり、wは、1〜9の整数であり、xは、2または3である。
他のモノマーのうち、機械的強度および化学的な耐久性の点から、パーフルオロモノマーが好ましく、TFEがより好ましい。
重合法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法が挙げられる。また、液体または超臨界の二酸化炭素中にて重合を行ってもよい。
重合は、ラジカルが生起する条件で行われる。ラジカルを生起させる方法としては、紫外線、γ線、電子線等の放射線を照射する方法、ラジカル開始剤を添加する方法等が挙げられる。
重合温度は、通常、10〜150℃である。
ラジカル開始剤としては、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、アゾ化合物類、過硫酸塩類等が挙げられ、不安定末端基が少ないポリマーFが得られる点から、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類等のパーフルオロ化合物が好ましい。
溶液重合法にて用いる溶媒としては、20〜350℃の沸点を有する溶媒が好ましく、40〜150℃の沸点を有する溶媒がより好ましい。溶媒としては、パーフルオロトリアルキルアミン類(パーフルオロトリブチルアミン等。)、パーフルオロカーボン類(パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン等。)、ハイドロフルオロカーボン類(1H,4H−パーフルオロブタン、1H−パーフルオロヘキサン等。)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等。)が挙げられる。
溶液重合法においては、溶媒中にモノマー、ラジカル開始剤等を添加し、溶媒中にてラジカルを生起させてモノマーの重合を行う。モノマーの添加は、一括添加であってもよく、逐次添加であってもよく、連続添加であってもよい。
懸濁重合法においては、水を分散媒として用い、該分散媒中にモノマー、非イオン性のラジカル開始剤等を添加し、分散媒中にてラジカルを生起させてモノマーの重合を行う。 非イオン性のラジカル開始剤としては、ビス(フルオロアシル)パーオキシド類、ビス(クロロフルオロアシル)パーオキシド類、ジアルキルパーオキシジカーボネート類、ジアシルパーオキシド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキシド類、ビス(フルオロアルキル)パーオキシド類、アゾ化合物類等が挙げられる。
分散媒には、助剤として前記溶媒;懸濁粒子の凝集を防ぐ分散安定剤として界面活性剤;分子量調整剤として炭化水素系化合物(ヘキサン、メタノール等。)等を添加してもよい。
工程(ii):
不安定末端基とは、連鎖移動反応によって形成される基、ラジカル開始剤に基づく基等であり、具体的には、−COOH基、−CF=CF基、−COF基、−CFH基等である。不安定末端基をフッ素化または安定化することにより、ポリマー(Q)の分解が抑えられ、耐久性が向上する。
フッ素ガスは、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して用いてもよく、希釈せずにそのまま用いてもよい。
ポリマー(P)とフッ素ガスとを接触させる際の温度は、室温〜300℃が好ましく、50〜250℃がより好ましく、100〜220℃がさらに好ましく、150〜200℃が特に好ましい。
ポリマー(P)とフッ素ガスとの接触時間は、1分〜1週間が好ましく、1〜50時間がより好ましい。
工程(iii):
たとえば、−SOF基をスルホン酸基に変換する場合は、工程(iii−1)を行い、−SOF基をスルホンイミド基に変換する場合は、工程(iii−2)を行う。
(iii−1)ポリマー(P)の−SOF基を加水分解してスルホン酸塩とし、スルホン酸塩を酸型化してスルホン酸基に変換する工程。
(iii−2)ポリマー(P)の−SOF基をイミド化して塩型のスルホンイミド基(−SONMSOf1基)(ただし、Mは、アルカリ金属または1〜4級のアンモニウムである。)とし、さらに酸型化して酸型のスルホンイミド基(−SONHSOf1基)に変換する工程。
工程(iii−1):
加水分解は、たとえば、溶媒中にてポリマー(P)と塩基性化合物とを接触させて行う。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。溶媒としては、水、水と極性溶媒との混合溶媒等が挙げられる。極性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール等。)、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
酸型化は、たとえば、スルホン酸塩を有するポリマーを、塩酸、硫酸等の水溶液に接触させて行う。
加水分解および酸型化は、通常、0〜120℃にて行う。
工程(iii−2):
イミド化としては、下記の方法が挙げられる。
(iii−2−1)−SOF基と、Rf1SONHMとを反応させる方法。
(iii−2−2)アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、MF、アンモニアまたは1〜3級アミンの存在下で、−SOF基と、Rf1SONHとを反応させる方法。
(iii−2−3)−SOF基と、Rf1SONMSi(CHとを反応させる方法。
酸型化は、塩型のスルホンイミド基を有するポリマーを、酸(硫酸、硝酸、塩酸等。)で処理することにより行う。
なお、イオン性基がスルホンイミド基であるポリマー(Q)は、化合物(u1)の−SOF基をスルホンイミド基に変換した化合物(u1’)と、化合物(u2)の−SOF基をスルホンイミド基に変換した化合物(u2’)と、必要に応じて他のモノマーとを重合させることによっても製造できる。
化合物(u1’)、(u2’)は、化合物(u1)、(u2)の不飽和結合に塩素または臭素を付加し、−SOF基を工程(iii−2)と同様の方法でスルホンイミド基に変換した後、金属亜鉛を用いて脱塩素または脱臭素反応を行うことにより製造できる。
以上説明したポリマー(Q)にあっては、単位(U1)と単位(U2)とを有するため、電気抵抗が低く、従来のイオン交換樹脂よりも高い軟化温度を有し、かつ柔軟性が高い。該理由は、下記の通りである。
単位(U1)の側鎖は二つのイオン性基を有しており、一つのイオン性基を側鎖に有する単位(U2)にくらべて側鎖の運動性が低い。そのため、単位(U2)を有し、かつ単位(U1)を有さないポリマーに比べて、単位(U1)と単位(U2)とを有するポリマー(Q)の軟化温度が高くなると考えられる。また、単位(U2)の側鎖は、ポリマーの主鎖の屈曲性を高める効果があるため、単位(U1)を有し、かつ単位(U2)を有さないポリマーに比べて、単位(U1)と単位(U2)とを有するポリマー(Q)は、柔軟性が高いと考えられる。
触媒層における含フッ素イオン交換樹脂の質量(F)と触媒中のカーボンの質量(C)との質量比(F/C)は、電極の導電性および撥水性の点から、0.2〜2.5が好ましく、0.7〜2.0がより好ましい。F/Cが0.2以上であれば、触媒層が割れにくい。F/Cが2.5以下であれば、触媒層が緻密な構造とならず、ガス拡散性が良好となる。
触媒層は、単層であってもよく、複数層であってもよい。複数層の場合、各層のF/Cは、固体高分子電解質膜40に近くなるにつれて、しだいに大きくすることが好ましい。
触媒層に含まれる白金量は、電極反応を効率よく行うための最適な厚みの点から、0.01〜0.5mg/cmが好ましく、原料のコストと性能とのバランスの点から、0.05〜0.35mg/cmがより好ましい。
触媒層の厚さは、触媒層中のガス拡散を容易にし、固体高分子形燃料電池の発電性能を向上させる点から、20μm以下が好ましく、1〜15μmがより好ましい。また、触媒層の厚さは、均一であることが好ましい。触媒層の厚さを薄くすると、単位面積あたりに存在する触媒量が少なくなって反応活性が低くなるおそれがあるが、該場合は触媒として白金または白金合金が高担持率で担持された担持触媒を用いれば、薄くても触媒量が不足することなく電極の反応活性を高く維持できる。
触媒層の厚さは、触媒層の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)等によって観察することにより測定する。
触媒層は、フラッディングの抑制効果が高まる点から、撥水化剤を含んでいてもよい。 撥水化剤としては、TFE−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPと記す。)、TFE−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAと記す。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)等が挙げられる。撥水化剤としては、触媒層を撥水化処理しやすい点から、溶媒に分散できる含フッ素ポリマーが好ましい。
撥水化剤の量は、触媒層(100質量%)中、0.01〜30質量%が好ましい。
(補強層)
補強層24および補強層34(以下、まとめて補強層とも記す。)は、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材と、導電性ファイバーと、必要に応じて結着剤とを含む層である。補強層24および補強層34は、成分、組成、厚さ等が同じ層であってもよく、異なる層であってもよい。
補強層は、内部にポリマーからなる多孔質のシート状補強材が配置されているため、機械的強度が高く、かつ多孔質のシート状補強材の内部に空隙をもって導電性ファイバーが充填され、さらにシート状補強材の表面にも導電性ファイバーが存在するため、導電性とガス拡散性を有する。補強層の表面積の1%以上に導電性ファイバーが存在することが好ましく、これは後述する中間層であってもよい。
シート状補強材を構成するポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ナイロン、ポリアミド、PTFE、PFA、エチレン−TFE共重合体(以下、ETFEと記す。)、FEP、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド重合体(以下、PVdFと記す。)、ポリビニルフルオライド重合体(PVF)、これらのポリマーを構成するモノマー単位複数からなる共重合体、これらのポリマーのブレンド物等が挙げられる。また、該ポリマーのブレンド物等は、導電性を有していてもよい。
シート状補強材の形態としては、織布、不織布等、発泡体、多孔質フィルム等が挙げられる。
多孔質フィルムとしては、PTFEからなる多孔質フィルムが好ましい。PTFEからなる多孔質フィルムは、PTFEフィルムを延伸して製造される。該製造方法によれば、量産性、製造コストに優れ、100μm以下の薄いフィルムを製造できる。
不織布としては、メルトブローン法またはエレクトロスピニング法で製造された不織布が好ましい。メルトブローン法によれば、繊維径が約10μm以下の細い繊維で不織布を製造でき、また、量産性にも非常に優れる。メルトブローン法に用いるポリマーとしては、ポリプロピレン、含フッ素ポリマー(ETFE、FEP等。)等が挙げられ、含フッ素ポリマーが好ましい。エレクトロスピニング法によれば、繊維径が約1μm以下の細い繊維で不織布を製造でき、また、量産性にも優れる。エレクトロスピニング法に用いるポリマーとしては、ポリアミド、PVdF、ナイロン等が挙げられる。
複数の繊維からなるシート状補強材については、平均繊維径は、0.2〜7μmが好ましく、0.3〜5μmがより好ましい。該範囲とすることにより、充分な補強効果、ガス拡散性および排水性を維持できる。
シート状補強材の平均繊維径は、SEM等によって表面を観察することにより測定する。
延伸法により作製された多孔質シート等、繊維から構成されないシート状補強材については、平均細孔径は、0.4〜7μmが好ましく、0.8〜5μmがより好ましい。該範囲とすることにより、充分な補強効果、ガス拡散性および排水性を維持できる。
シート状補強材の平均細孔径は、バブルポイント法(JIS K3832)で測定できる。
シート状補強材の厚さは、5〜300μmが好ましく、10〜80μmがより好ましい。該範囲とすることにより、充分な補強効果、ガス拡散性および排水性を維持できる。
シート状補強材の厚さは、デジマチックインジケータ(Mitutoyo社製、543−250、フラット測定端子:φ5mm)を用いて4箇所の厚さを測定し、これらを平均して算出する。
導電性ファイバーは、補強層の表面において触媒層に含まれる電子伝導性物質(白金または白金合金、カーボン担体等。)に絡まり、該電子伝導性物質同士の点接触による導電パスに加えて、新たな導電パスが発現するため、触媒層との界面における電子伝導性が向上する。また、ガス拡散層に接した場合においても、ガス拡散層を構成する電子伝導性物質との絡まりあいが起きやすく、ガス拡散層との界面における電子伝導性が向上する。
導電性ファイバーとしては、カーボンファイバー等が挙げられ、化学的耐久性が高い点から、熱処理等によりグラファイト化したものが好ましい。
カーボンファイバーとしては、微細でかつ電子伝導性が高い点から、カーボンナノファイバーが好ましい。カーボンナノファイバーとしては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ(シングルウォール、ダブルウォール、マルチウォール、カップ積層型等。)等が挙げられる。
カーボンファイバーの平均繊維径は、50〜500nmが好ましく、50〜300nmがより好ましい。カーボンファイバーの平均繊維長は、1〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。該範囲とすることにより、カーボンファイバーが互いに絡み合って空隙を形成し、多孔質の空隙を埋めてしまうことがないため、高いガス拡散性が維持さ
れる。
カーボンファイバーの繊維径および繊維長は、光学顕微鏡、SEM、TEM(透過型電子顕微鏡)等による観察により測定する。カーボンナノファイバーの繊維径および繊維長は、それぞれ、カーボンナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長を示す。
結着剤は、シート状補強材からの導電性ファイバーの欠落を抑える成分である。結着剤としては、ポリマーが好ましく、イオン交換樹脂がより好ましく、含フッ素イオン交換樹脂がさらに好ましい。含フッ素イオン交換樹脂としては、イオン性基を有するパーフルオロカーボンポリマー(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)が好ましく、ポリマー(H)またはポリマー(Q)が特に好ましい。
導電性ファイバーと結着剤との質量比(導電性ファイバー/結着剤)は、1/0.05〜1/1が好ましく、1/0.1〜1/0.7がより好ましい。該範囲とすることにより、多孔質のシート状補強材の内部に導電性ファイバーを充填するときの分散性、補強層のガス拡散性、シート状補強材と導電性ファイバーの結着性、排水性が良好となる。
補強層の厚さは、12〜250μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。該範囲とすることにより、充分な補強効果、ガス拡散性および排水性を維持できる。
補強層の厚さは、補強層の断面をSEM等によって観察することにより測定する。
なお、本発明の膜電極接合体は、図示例のものに限定はされない。たとえば、第1の電極20および第2の電極30の一方が補強層を有し、他方が補強層を有さない膜電極接合体であってもよい。寸法安定性の観点から、補強層を第1の電極20および第2の電極30の両方に設けるのが好ましい。
また、シート状補強材が薄い場合、補強層の表面付近には、導電性ファイバーと結着剤とを含み、シート状補強材を含まない表皮層が形成される場合がある。表皮層は、触媒層と接する側に形成されていてもよく、ガス拡散層と接する側に形成されていてもよい。
表皮層が形成されることにより、水が毛細管現象によって触媒層から補強層、補強層からガス拡散層へと速やかに移動し、固体高分子形燃料電池運転時のフラッディングの問題が解消されやすくなる。
表皮層の厚さは、1〜20μmが好ましい。該範囲とすることにより、触媒層と補強層との密着性、補強層とガス拡散層との密着性が良好となり、また、該界面での接触抵抗を充分小さくできる。
表皮層の厚さは、表皮層の断面をSEM等によって観察することにより測定する。
表皮層は、補強層24および補強層34の両方に設けてもよく、補強層24および補強層34の一方に設けてもよい。補強層24および補強層34の一方が表皮層を有し、他方が表皮層を有さない場合、カソード側の補強層が表皮層を有することが好ましい。
(ガス拡散層)
ガス拡散層26およびガス拡散層36(以下、まとめてガス拡散層とも記す。)としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等のガス拡散性基材が挙げられる。
膜電極接合体においては、ガス拡散層を設けた場合、ガス拡散層を構成する繊維等が、固体高分子電解質膜に突き刺さる等の物理的なダメージを補強層によって防ぐことができる。これにより膜電極接合体の短絡を抑えることができ、膜電極接合体の耐久性をより向上させることができる。
さらに、補強層が触媒層とガス拡散層との間に存在することにより、ガス拡散層を構成する繊維等による触媒層や固体高分子電解質膜の両方への物理的ダメージを防ぐことができ、膜電極接合体の短絡をより一層抑え、膜電極接合体の耐久性をさらに向上させることができる。
ガス拡散層の表面は、撥水性の含フッ素ポリマーを含む溶液または分散液によって撥水処理されていることが好ましい。撥水処理することにより、カソード側の触媒層で発生する水がガス拡散層の細孔を塞ぎにくくなり、ガス拡散性の低下が抑えられる。
ガス拡散層の表面は、膜電極接合体の導電性の点から、撥水性の含フッ素ポリマーおよび導電性カーボンを含む分散液よって撥水処理されていることがより好ましい。
撥水性の含フッ素ポリマーとしては、PTFE等が挙げられる。導電性カーボンとしては、カーボンブラック等が挙げられる。
ガス拡散層の撥水処理された表面が、触媒層または補強層に接する。
ガス拡散層の厚さは、100〜400μmが好ましく、120〜300μmがより好ましい。
ガス拡散層の厚さは、デジマチックインジケータ(Mitutoyo社製、543−250、フラット測定端子:φ5mm)を用いて4箇所の厚さを測定し、これらを平均して算出する。
(固体高分子電解質膜)
固体高分子電解質膜40は、イオン交換樹脂の膜である。
イオン交換樹脂としては、耐久性の点から、含フッ素イオン交換樹脂が好ましく、イオン性基を有するパーフルオロカーボンポリマー(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)がより好ましく、ポリマー(H)またはポリマー(Q)がさらに好ましく、ポリマー(Q)が特に好ましい。ポリマー(Q)の膜は、従来のイオン交換樹脂の膜よりも高い軟化温度を有し、かつ柔軟性が高いため、電気抵抗が低く、従来のイオン交換樹脂の膜よりも高い耐熱性を有し、かつ湿潤状態における膨潤と乾燥状態における収縮とを繰り返しても破損しにくい。
固体高分子電解質膜40は、耐久性をさらに向上させるために、セリウムおよびマンガンからなる群から選ばれる1種以上の原子を含んでいてもよい。セリウム、マンガンは、固体高分子電解質膜40の劣化を引き起こす原因物質である過酸化水素を分解する。セリウム、マンガンは、イオンとして固体高分子電解質膜40中に存在することが好ましく、イオンとして存在すれば固体高分子電解質膜40中でどのような状態で存在してもかまわない。
固体高分子電解質膜40は、乾燥を防ぐための保水剤として、シリカ、ヘテロポリ酸(リン酸ジルコニウム、リンモリブデン酸、リンタングステン酸等。)を含んでいてもよい。
固体高分子電解質膜40の厚さは、10〜30μmが好ましく、15〜25μmがより好ましい。固体高分子電解質膜40の厚さが30μm以下であれば、低加湿条件での固体高分子形燃料電池の発電性能の低下がより抑えられる。また、固体高分子電解質膜40の厚さを10μm以上とすることにより、ガスリークや電気的な短絡を抑えることができる。
固体高分子電解質膜40の厚さは、固体高分子電解質膜40の断面をSEM等によって観察することにより測定する。
固体高分子電解質膜40のEWは、900g/当量以下が好ましく、700g/当量以下が特に好ましい。該範囲とすることにより、低い加湿環境においてもプロトン伝導率が高くなる(電気抵抗が低くなる)ため、充分な電池出力を得ることできる。
固体高分子電解質膜40のEWは、下記の方法により求める。
滴定によりあらかじめEWがわかっている2種のポリマー(EWが1000g/当量のものと909g/当量のもの)を用意し、それぞれのポリマーからなる2種の膜(厚さ200μm)について、蛍光X線(リガク社製、RIX3000)を用いてイオウ原子に基づくピーク強度を測定し、該ピーク強度とEWとの関係を示す検量線を作成する。ポリマー(P)またはポリマー(F)を、後述するTQ値の温度でプレスして厚さ200μmの膜を作製し、蛍光X線でイオウ原子に基づくピーク強度を測定し、前記検量線にてEWを求める。なお、ポリマー(P)またはポリマー(F)の−SOF基の割合(モル比)と、ポリマー(Q)またはポリマー(H)の−SOH基の割合(モル比)は同じであるため、ポリマー(P)またはポリマー(F)のEWは、そのままポリマー(Q)またはポリマー(H)のEWとして扱うことができる。
また、固体高分子電解質膜は、イオン交換樹脂の膜同士を接するようにして接合することでイオン交換樹脂膜からなる固体高分子電解質膜を形成してもよい。
(補強層の形成方法)
補強層は、たとえば、下記の方法によって形成できる。
離型フィルムの表面に、シート状補強材を配置した後、シート状補強材に、導電性ファイバーと必要に応じて結着剤とを含む分散液(以下、導電性塗工液と記す。)を塗工し、浸透させ、乾燥して補強層を形成する方法。
導電性塗工液は、導電性ファイバーを溶媒に分散させ、必要に応じて結着剤を溶媒に溶解または分散させることにより調製される。
溶媒としては、結着剤がイオン交換樹脂の場合、水とアルコール類(エタノール等。)との混合溶媒が好ましい。
導電性塗工液の固形分濃度は、5〜30質量%が好ましい。
離型フィルムとしては、樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムの材料としては、下記の樹脂が挙げられ、耐熱性、化学的安定性、離型性の点から、含フッ素樹脂が好ましい。
非フッ素系樹脂:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等。
含フッ素樹脂:PTFE、ETFE、エチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、PFA、PVdF等。
塗工方法としては、公知の方法を用いればよい。
乾燥温度は、40〜130℃が好ましい。
(固体高分子電解質膜の形成方法)
固体高分子電解質膜40は、たとえば、下記の方法によって形成される。
前記工程(iii)で得られたポリマー(H)またはポリマー(Q)を膜状に成形する方法。
ポリマー(H)またはポリマー(Q)を膜状に成形する方法としては、ポリマー(H)またはポリマー(Q)の液状組成物を離型フィルムの上に塗工、乾燥する方法(キャスト法)が挙げられる。
液状組成物は、アルコール類および水を含む分散媒に、ポリマー(H)またはポリマー(Q)を分散させた分散液である。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール等が挙げられる。
アルコール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水の割合は、分散媒(100質量%)のうち、10〜99質量%が好ましく、40〜99質量%がより好ましい。水の割合を増やすことにより、分散媒に対するポリマー(H)またはポリマー(Q)の分散性を向上できる。
アルコール類の割合は、分散媒(100質量%)のうち、1〜90質量%が好ましく、1〜60質量%がより好ましい。
液状組成物は、含フッ素溶媒を含んでいてもよい。含フッ素溶媒としては、たとえば、ポリマー(Q)の製造における溶液重合法にて用いた含フッ素溶媒が挙げられる。
液状組成物の固形分濃度は、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
塗工方法としては、公知の方法を用いればよい。
乾燥温度は、40〜130℃が好ましい。
固体高分子電解質膜40を安定化させるために、熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は、130〜200℃が好ましい。熱処理の温度が130℃以上であれば、ポリマー(H)またはポリマー(Q)が過度に含水しなくなる。熱処理の温度が200℃以下であれば、イオン性基の熱分解が抑えられ、固体高分子電解質膜40のプロトン伝導率の低下が抑えられる。
固体高分子電解質膜40は、必要に応じて過酸化水素水で処理してもよい。
(触媒層の形成方法)
本発明の触媒層の形成方法は、触媒層と補強層とを有する電極(第1の電極20および/または第2の電極30)における、触媒層の形成方法であり、下記の工程(a)、(b)を有する方法である。
(a)基材の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液(以下、触媒層用塗工液と記す。)を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b)工程(a)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、塗工液層を乾燥させて触媒層を形成する工程。
工程(a):
基材としては、離型フィルム;該離型フィルムの表面に固体高分子電解質膜40が形成された積層体等が挙げられる。
触媒層用塗工液は、触媒を溶媒に分散させ、イオン交換樹脂を溶媒に溶解または分散させることにより調製される。
イオン交換樹脂が含フッ素イオン交換樹脂の場合、溶媒としては、アルコール類または含フッ素溶媒が好ましい。
アルコール類としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。イオン交換樹脂の溶解性を上げるために、アルコール類と水との混合溶媒を用いてもよい。
含フッ素溶媒としては、下記のものが挙げられる。
ヒドロフルオロカーボン:2H−パーフルオロプロパン、1H,4H−パーフルオロブタン、2H,3H−パーフルオロペンタン、3H,4H−パーフルオロ(2−メチルペンタン)、2H,5H−パーフルオロヘキサン、3H−パーフルオロ(2−メチルペンタン)等。
フルオロカーボン:パーフルオロ(1,2−ジメチルシクロブタン)、パーフルオロオクタン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロヘキサン等。
ヒドロクロロフルオロカーボン:1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等。
フルオロエーテル:1H,4H,4H−パーフルオロ(3−オキサペンタン)、3−メトキシ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン等。
含フッ素アルコール:2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等。
イオン交換樹脂が非フッ素系イオン交換樹脂の場合、溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等が挙げられる。
触媒層用塗工液の固形分濃度は、5〜25質量%が好ましく、8〜15質量%がより好ましい。触媒層用塗工液の固形分濃度が5質量%以上であれば、塗工液層の上に補強層を配置した際に補強層への触媒層用塗工液の浸入が少ない。触媒層用塗工液の固形分濃度が25質量%以下であれば、均一な厚さの触媒層を形成できる。触媒層用塗工液の固形分濃度が8〜15質量%であれば、触媒層用塗工液の安定性が向上する。
触媒層用塗工液の粘度は、ずり速度が1(1/S)のとき、200〜8000mPa・sが好ましく、1000〜4000mPa・sがより好ましい。触媒層用塗工液の粘度が200mPa・s以上であれば、補強層への触媒層用塗工液の浸入が少ない。触媒層用塗工液の粘度が8000mPa・s以下であれば、均一な厚さの触媒層を形成できる。触媒層用塗工液の粘度が1000〜4000mPa・sであれば、触媒層用塗工液の安定性が向上する。
触媒層用塗工液中のF/Cは、0.2〜2.5が好ましく、0.7〜2.0がより好ましい。F/Cが0.2以上であれば、触媒層が割れにくい。F/Cが2.5以下であれば、触媒層が緻密な構造とならず、ガス拡散性が良好となる。F/Cが0.7〜2.0であれば、触媒層がより割れにくく、かつガス拡散性もより良好となる。
塗工液層は、単層であってもよく、複数層であってもよい。複数層の場合、層数に対応する触媒層用塗工液を複数調製し、同時または逐次塗工する。複数層の場合、各触媒層用塗工液のF/Cは、固体高分子電解質膜40に近くなるにつれて、しだいに大きくすることが好ましい。
塗工法としては、バッチ式塗工法または連続式塗工法が挙げられる。
バッチ式塗工法としては、バーコータ法、スピンコータ法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
連続式塗工法としては、後計量法または前計量法が挙げられる。後計量法は、過剰の触媒層用塗工液を塗工し、後から所定の厚さとなるように触媒層用塗工液を除去する方法である。前計量法は、所定の厚さを得るのに必要な量の触媒層用塗工液を塗工する方法である。
後計量法としては、エアドクタコータ法、ブレードコータ法、ロッドコータ法、ナイフコータ法、スクイズコータ法、含浸コータ法、コンマコータ法等が挙げられる。
前計量法としては、ダイコータ法、リバースロールコータ法、トランスファロールコータ法、グラビアコータ法、キスロールコータ法、キャストコータ法、スプレイコータ法、カーテンコータ法、カレンダコータ法、押出コータ法等が挙げられる。
塗工法としては、均一な厚さの塗工液層を形成できる点から、スクリーン印刷法またはダイコータ法が好ましく、生産効率の点から、ダイコータ法がより好ましい。
工程(b):
あらかじめ、補強層から離型フィルムを剥がしておく。
塗工液層は、触媒層用塗工液を塗工して形成され、かつ触媒層用塗工液に含まれていた溶媒の全部または一部が残っている塗膜である。塗工液層に残存する溶媒は、触媒層用塗工液に含まれる溶媒(100質量%)に対し、20質量%以上が好ましい。
塗工液層の上に補強層を被せるのは、基材の上に触媒層用塗工液を塗工した直後でもよく、塗工液層に含まれる溶媒の一部を蒸発させた後であってもよい。通常は、溶媒として水やアルコール類を用いるため、塗工液層の上に補強層を被せるのは、基材の上に触媒層用塗工液を塗工してから5分以内が好ましい。
塗工液層に含まれる溶媒の一部は、室温で蒸発させてもよく、加熱して蒸発させてもよい。塗工液層の上に補強層を被せる前に、塗工液層に含まれる溶媒の一部を蒸発させる際の加熱温度は、100℃以下が好ましい。
塗工液層の上に補強層を被せた後、塗工液層を乾燥する際の乾燥温度は、50〜150℃が好ましい。乾燥温度が50℃以上であれば、乾燥に時間がかからず、また、触媒層のイオン交換樹脂が充分に熱処理され、安定化する。乾燥温度が150℃以下であれば、触媒層が劣化しにくく、また、触媒層が燃焼することもない。
塗工液層の乾燥を連続乾燥炉にて行う場合、乾燥温度は徐々に上昇させることが好ましく、乾燥時間が短い点、触媒層のイオン交換樹脂が充分に熱処理されて安定的な構造となる点、固体高分子形燃料電池の発電特性が良好となる点から、乾燥炉入口温度は50〜80℃とし、乾燥炉出口温度は120〜150℃とすることがより好ましい。
塗工液層の上に補強層を被せた後、塗工液層を乾燥する際の乾燥時間は、3〜30分が好ましく、5〜15分がより好ましい。乾燥時間が3分以上であれば、充分に乾燥が行われ、溶媒がほとんど残存しない。乾燥時間が30分以下であれば、生産性が向上し、また、乾燥温度が130℃より高い高温条件であっても、触媒層の劣化が進行しにくい。乾燥時間が5〜15分であれば、固体高分子形燃料電池の発電特性も充分に発揮される。
<膜電極接合体の製造方法>
本発明の膜電極接合体の製造方法としては、下記の方法(I)〜(III)が挙げられる。
方法(I)は、下記の工程(a’)〜(c’)、(a''')〜(c''')、(d’)、(e’)を有する方法である。
(a’)離型フィルムの上に、触媒層用塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b’)工程(a’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
(c’)工程(b’)で形成された第1の触媒層から離型フィルムを剥がして第1の触媒層と補強層とからなる第1の積層体を得る工程。
(a''')離型フィルムの上に、触媒層用塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b''')工程(a''')で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、塗工液層を乾燥させて第2の触媒層を形成する工程。
(c''')工程(b''')で形成された第2の触媒層から離型フィルムを剥がして第2の触媒層と補強層とからなる第1’の積層体を得る工程。
(d’)工程(c’)で得られた第1の積層体と、工程(c''')で得られた第1’の積層体と、固体高分子電解質膜とを、第1の積層体の第1の触媒層と固体高分子電解質膜とが接するようにし、第1’の積層体の第2の触媒層と固体高分子電解質膜とが接するようにして接合する工程。
(e’)必要に応じて、工程(d’)で得られた補強層/第1の触媒層/固体高分子電解質膜/第2の触媒層/補強層から構成される第5の積層体とガス拡散層とを接合し、膜電極接合体を得る工程。
方法(II)は、下記の工程(a’)〜(c’)、(a”)〜(c”)、(d”)、(e’)を有する方法である。
(a’)離型フィルムの上に、触媒層用塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b’)工程(a’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
(c’)工程(b’)で形成された第1の触媒層から離型フィルムを剥がして第1の触媒層と補強層とからなる第1の積層体を得る工程。
(a”)離型フィルムの上に形成された固体高分子電解質膜の上に、触媒層用塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(b”)工程(a”)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、塗工液層を乾燥させて第2の触媒層を形成する工程。
(c”)工程(b”)の後、固体高分子電解質膜から離型フィルムを剥がして固体高分子電解質膜と第2の触媒層と補強層とからなる第2の積層体を得る工程。
(d”)工程(c’)で得られた第1の積層体と、工程(c”)で得られた第2の積層体とを、第1の積層体の第1の触媒層と第2の積層体の固体高分子電解質膜とが接するように接合する工程。
(e’)必要に応じて、工程(d”)で得られた補強層/第1の触媒層/固体高分子電解質膜/第2の触媒層/補強層から構成される第5の積層体とガス拡散層とを接合し、膜電極接合体を得る工程。
方法(III)は、下記の工程(h)〜(j)、(h’)〜(j’)(k)、(e’)を有する方法である。
(h)離型フィルムの上に形成された第1のイオン交換樹脂膜の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(i)工程(h)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
(j)工程(i)の後、第1のイオン交換樹脂膜から離型フィルムを剥がして第1のイオン交換樹脂膜と第1の触媒層と補強層とからなる第3の積層体を得る工程。
(h’)離型フィルムの上に形成された第2のイオン交換樹脂膜の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
(i’)工程(h’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第2の触媒層を形成する工程。
(j’)工程(i’)の後、第2のイオン交換樹脂膜から離型フィルムを剥がして第2のイオン交換樹脂膜と第2の触媒層と補強層とからなる第4の積層体を得る工程。
(k)工程(j)で得られた第3の積層体の第1のイオン交換樹脂膜と工程(j’)で得られた第4の積層体の第2のイオン交換樹脂膜とが接するように接合するとともに第1のイオン交換樹脂膜と第2のイオン交換樹脂膜とからなる固体高分子電解質膜を形成する工程。
(e’)必要に応じて、工程(k)で得られた補強層/第1の触媒層/固体高分子電解質膜/第2の触媒層/補強層から構成される第5の積層体とガス拡散層とを接合し、膜電極接合体を得る工程。
(方法(I))
工程(a’)、工程(a'''):
図2に示すように、離型フィルム50の上に、触媒層用塗工液を塗工して塗工液層60を形成する。
工程(a’)、工程(a''')は、前記工程(a)と同様に行えばよい。
工程(b’)、工程(b'''):
図3に示すように、工程(a’)(工程(a'''))で形成された塗工液層60の上に、補強層24(34)を配置した後、塗工液層60を乾燥させて第1の触媒層22(第2の触媒層32)を形成する。
工程(b’)、工程(b''')は、前記工程(b)と同様に行えばよい。
工程(c’)、工程(c'''):
図4に示すように、工程(b’)(工程(b'''))で形成された第1の触媒層22(第2の触媒層32)から離型フィルム50を剥がして第1の触媒層22(第2の触媒層32)と補強層24(34)とからなる第1の積層体70(第1’の積層体72)を得る。
工程(d’):
図5に示すように、工程(c’)で得られた第1の積層体70と、工程(c''')で得られた第1’の積層体72と、固体高分子電解質膜40とを、第1の積層体70の第1の触媒層22と固体高分子電解質膜40とが接するようにし、第1’の積層体72の第2の触媒層32と固体高分子電解質膜40とが接するように重ねる。さらに、必要に応じて、第1の積層体70/固体高分子電解質膜40/第1’の積層体72からなる積重物の上下に、2枚のフレーム状のサブガスケット80を配置してもよい。これらを積み重ねた後、これらを接合する。このようにして、補強層/第1の触媒層/固体高分子電解質膜/第2の触媒層/補強層から構成され、かつ必要に応じて周縁部が2枚のサブガスケット80で挟持された第5の積層体100を得る。
サブガスケット80は、接合後に周縁部が固体高分子電解質膜40と接することができる大きさを有し、かつ開口部の面積が第1の積層体70、第1’の積層体72の面積よりも小さくされたものである。
サブガスケット80の材料としては、非フッ素系樹脂(PET、ポリエチレンナフタレート(以下、PENと記す。)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等。)、含フッ素樹脂(PTFE、ETFE、FEP、PFA等。)等が挙げられる。
接合方法としては、熱プレス法、熱ロールプレス、超音波融着等が挙げられ、面内の均一性の点から、熱プレス法が好ましい。
プレス温度(プレス機内のプレス板の温度)は、120〜180℃が好ましく、130〜170℃がより好ましい。プレス温度が120℃以上であれば、接合が充分に行われ、接触不良による抵抗の上昇が抑えられる。プレス温度が170℃以下であれば、触媒層が劣化しにくく、また、固体高分子電解質膜40が変形しにくい。プレス温度が130〜170℃であれば、固体高分子形燃料電池の発電特性、耐久性が良好となる。
プレス圧力は、0.5〜5MPaが好ましく、1〜4MPaがより好ましい。プレス圧力が0.5MPa以上であれば、接合が充分に行われ、接触不良による抵抗の上昇が抑えられる。プレス圧力が5MPa以下であれば、触媒層が劣化しにくく、また、固体高分子電解質膜40が変形しにくい。プレス圧力が1〜4MPaであれば、固体高分子形燃料電池の発電特性、耐久性が良好となる。
プレス時間は、0.5〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましい。プレス時間が0.5分以上であれば、接合が充分に行われ、接触不良による抵抗の上昇が抑えられる。プレス時間が10分以下であれば、触媒層が劣化しにくく、また、固体高分子電解質膜40が変形しにくい。プレス時間が1〜5分であれば、固体高分子形燃料電池の発電特性、耐久性が良好となる。
工程(e’):
図6に示すように、2枚のガス拡散基材(ガス拡散層26およびガス拡散層36)で第5の積層体100を挟み、これらを接合することにより、膜電極接合体10を得る。
接合方法としては、ホットプレス法、ホットロールプレス法、超音波融着法等が挙げられ、面内の均一性の点から、ホットプレス法が好ましい。
プレス機内のプレス板の温度は、100〜150℃が好ましい。
プレス圧力は、0.5〜4.0MPaが好ましい。
(方法(II))
工程(a’)〜(c’):
工程(a’)〜(c’)は、前記方法(I)の工程(a’)〜(c’)と同様に行う。
工程(a”):
図7に示すように、離型フィルム50の上に形成された固体高分子電解質膜40の上に、触媒層用塗工液を塗工して塗工液層60を形成する。
工程(a”)は、前記方法(I)の工程(a’)と同様に行えばよい。
工程(b”):
図8に示すように、工程(a”)で形成された塗工液層60の上に、補強層34を配置した後、塗工液層60を乾燥させて第2の触媒層32を形成する。
工程(b”)は、前記方法(I)の工程(b’)と同様に行えばよい。
工程(c”):
図9に示すように、工程(b”)の後に、固体高分子電解質膜40から離型フィルム50を剥がして固体高分子電解質膜40と第2の触媒層32と補強層34とからなる第2の積層体90を得る。
工程(d”):
図10に示すように、工程(c’)で得られた第1の積層体70と、工程(c”)で得られた第2の積層体90とを、第1の積層体70の第1の触媒層22と第2の積層体90の固体高分子電解質膜40とが接するように重ねる。さらに、必要に応じて、第1の積層体70/固体高分子電解質膜40/第2の積層体90からなる積重物の上下に、2枚のフレーム状のサブガスケット80を配置してもよい。これらを積み重ねた後、これらを接合する。このようにして、補強層/第1の触媒層/固体高分子電解質膜/第2の触媒層/補強層から構成され、かつ必要に応じて周縁部が2枚のサブガスケット80で挟持された第5の積層体100を得る。
第1の積層体70の面積は、第2の積層体90の面積よりも狭くし、固体高分子電解質膜40の片面の周縁部とサブガスケット80とが接合できるようにすることが好ましい。固体高分子電解質膜40の周縁部とサブガスケット80とを接合させることにより、ガスシール性が向上する。
接合方法、条件は、前記方法(I)の工程(d’)と同様である。
工程(e’):
工程(e’)は、前記方法(I)の工程(e’)と同様に行う。
(方法(III))
工程(h)、工程(h’):
図11に示すように、離型フィルム50の上に形成された第1のイオン交換樹脂膜102(第2のイオン交換樹脂膜104)の上に、触媒層用塗工液を塗工して塗工液層60を形成する。
工程(h)、工程(h’)は、前記方法(I)の工程(a’)と同様に行えばよい。
工程(i)、工程(i’):
図12に示すように、工程(h)(工程(h’))で形成された塗工液層60の上に、補強層24(34)を配置した後、塗工液層60を乾燥させて第1の触媒層22(第2の触媒層32)を形成する。
工程(i)、工程(i’)は、前記方法(I)の工程(b’)と同様に行えばよい。
工程(j)、工程(j’):
図13に示すように、工程(i)(工程(i’))の後に、第1のイオン交換樹脂膜102(第2のイオン交換樹脂膜104)から離型フィルム50を剥がして第1のイオン交換樹脂膜102と第1の触媒層22と補強層24とからなる第3の積層体92(第2のイオン交換樹脂膜104と第2の触媒層32と補強層34とからなる第4の積層体94)を得る。
ただし、第1のイオン交換樹脂膜102と第2のイオン交換樹脂膜104の厚さは、固体高分子電解質膜40の厚さの半分とする。
工程(k):
図14に示すように、工程(j)、工程(j’)で得られた第3の積層体92と第4の積層体94とを、第3の積層体92と第4の積層体94との間に配置されたフレーム状のサブガスケット80の開口部を介して第3の積層体92の第1のイオン交換樹脂膜102と第4の積層体94の第2のイオン交換樹脂膜104が接するように重ねる。さらに、必要に応じて、第3の積層体92/(サブガスケット80)/第4の積層体94からなる積重物の上下に、2枚のフレーム状のサブガスケット80を配置してもよい。これらを積み重ねた後、これらを接合する。このようにして、補強層/第1の触媒層/固体高分子電解質膜/第2の触媒層/補強層から構成され、固体高分子電解質膜がサブガスケット80で囲まれ、かつ必要に応じて周縁部が2枚のサブガスケット80で挟持された第5の積層体100を得る。
サブガスケット80の厚さは、前記方法(I)、(II)で用いたサブガスケット80の厚さよりも薄くすることが好ましい。
接合方法、条件は、前記方法(I)の工程(d’)と同様である。
工程(e’):
工程(e’)は、前記方法(I)の工程(e’)と同様に行う。
以上説明した方法(I)〜(III)による膜電極接合体10の製造方法によれば、塗工液層60を形成した後、塗工液層60を完全に乾燥させることなく、塗工液層60が溶媒を含んだ状態にて、塗工液層60の上に補強層24(34)を被せ、該状態にて塗工液層60を乾燥して第1の触媒層22(第2の触媒層32)を形成しているため、触媒層にクラック等の欠陥を発生させることがない。
また、塗工液層60の一部が補強層24(34)に浸入し、得られる第1の触媒層22(第2の触媒層32)と補強層24(34)との接着力が向上する。
また、方法(I)、(II)においては、離型フィルム50の上に塗工液層60を形成した後、第1の触媒層22(第2の触媒層32)を形成しているため、第1の触媒層22(第2の触媒層32)の離型フィルム50側にイオン交換樹脂が多く存在するようになる。そのため、加熱接合による第1の触媒層22(第2の触媒層32)と固体高分子電解質膜40との界面の接着力が高くなり、該界面における抵抗が低くなり、固体高分子形燃料電池の発電特性が良好となる。
また、方法(II)、(III)においては、固体高分子電解質膜40(イオン交換樹脂膜)の上に塗工液層60を形成した後、第1の触媒層22(第2の触媒層32)を形成しているため、第1の触媒層22(第2の触媒層32)のイオン交換樹脂が固体高分子電解質膜40(イオン交換樹脂膜)と強固に接着する。そのため、該界面における抵抗が低くなり、固体高分子形燃料電池の発電特性が良好となる。
そして、方法(I)〜(III)によって得られた膜電極接合体10は、固体高分子電解質膜40内に補強材が存在していないため、固体高分子電解質膜40のイオン伝導性が損なわれることがない。その結果、低加湿条件においても高い発電性能を発現できる。
また、第1の電極20および/または第2の電極30が触媒層とガス拡散層との間に補強層を有しているため、充分な機械的強度を有する。
また、各界面の接着力が高いため、補強層によって寸法安定性が保たれる。
また、各界面の接着力が高いため、加湿度が変動した場合であっても、剥離による固体高分子形燃料電池の出力電圧の低下がない。すなわち、湿潤と乾燥等を繰り返す環境下においても優れた耐久性を有する。
さらに、膜電極接合体10は、補強層を有することによって、下記の効果も奏することができる。
(i)固体高分子電解質膜40を保護するためのサブガスケット80の内縁部を補強層の周縁部に配置することにより、加熱接合の際、補強層が緩衝材となりサブガスケット80の内縁部が固体高分子電解質膜40にくい込むことが防止できる。これによって、固体高分子電解質膜40の局所的な薄膜化を抑え、機械的強度が向上する。
(ii)ガス拡散層を加熱接合した場合、ガス拡散層を構成する繊維等が固体高分子電解質膜40に突き刺さる等の物理的なダメージを補強層によって防ぐことができる。これによって、膜電極接合体10の短絡を抑えることができる。すなわち耐久性に優れる。
(iii)サブガスケット80の内縁部が補強層の周縁部にくい込むため、第5の積層体100の両面に、サブガスケット80による段差ができにくい。これによって、ガス拡散層の接合を良好に行うことができる。
また、膜電極接合体10は、固体高分子電解質膜40とサブガスケット80とが部分的に接するように配置することにより、水素ガス等のガスリークを抑えることができる。
また、本発明の他の発明としては、補強層の塗工液層を形成し触媒層と接合させ、接合後に、補強層の塗工液層を乾燥させて補強層を形成することで、同じく、接着性を向上させることができる。
さらに、本発明の他の発明としては、補強層の塗工液層と、触媒層の塗工液層とを接合させ、接合後に、補強層の塗工液層と補強層の塗工液層とを乾燥させて補強層と触媒層を形成することで、同じく、接着性を向上させることができる。
〔固体高分子形燃料電池〕
本発明の製造方法で得られた膜電極接合体の両面に、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータを配置することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。
セパレータとしては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、本発明の製造方法で得られた膜電極接合体を適用できる。
本発明の製造方法で得られた膜電極接合体を適用した固体高分子形燃料電池は、低加湿条件においても安定的発電が可能であり、加湿器などの周辺機器を簡素化することができることから、コスト的、小型化に有利である。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
例1、2、3は実施例であり、例4、5は比較例である。
(EW)
ポリマー(P)のEWは、下記の方法により求めた。
滴定によりあらかじめEWがわかっている2種のポリマー(EWが1000g/当量のものと909g/当量のもの)を用意し、それぞれのポリマーからなる2種の膜(厚さ200μm)について、蛍光X線(リガク社製、RIX3000)を用いてイオウ原子に基づくピーク強度を測定し、該ピーク強度とEWとの関係を示す検量線を作成した。ポリマー(P)を、後述するTQ値の温度でプレスして厚さ200μmの膜を作製し、蛍光X線でイオウ原子に基づくピーク強度を測定し、前記検量線にてEWを求めた。なお、ポリマー(P)の−SOF基の割合(モル比)と、ポリマー(Q)の−SOH基の割合(モル比)は同じであるため、ポリマー(P)のEWは、そのままポリマー(Q)のEWとして扱うことができる。
(繰り返し単位のモル比)
ポリマー(P)を構成する繰り返し単位のモル比を、溶融19F−NMRにより求めた。
(TQ値)
TQ値(単位:℃)は、ポリマーの分子量の指標であり、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件でポリマーの溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。
フローテスタCFT−500A(島津製作所社製)を用い、温度を変えてポリマー(P)の押出し量を測定し、押出し量が100mm/秒となるTQ値を求めた。
(プロトン伝導率)
ポリマー(Q)のフィルムのプロトン伝導率は、下記の方法により求めた。
5mm幅のポリマー(Q)のフィルムに、5mm間隔で4端子電極が配置された基板を密着させ、公知の4端子法により、温度80℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下にて交流10kHz、1Vの電圧でフィルムの抵抗を測定し、該結果からプロトン伝導率を算出した。該プロトン伝導率は、固体高分子電解質膜の電気抵抗の目安となる。
(軟化温度、ガラス転移温度)
ポリマー(Q)の軟化温度およびガラス転移温度は、下記の方法により求めた。
動的粘弾性測定装置(アイティー計測社製、DVA200)を用い、試料幅0.5cm、つかみ間長2cm、測定周波数1Hz、昇温速度2℃/分の条件にて、ポリマー(Q)のフィルムの動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率が50℃における値の半分になる値を軟化温度とした。また、tanδのピーク値からガラス転移温度(Tg)を求めた。
(寸法変化率)
第5の積層体の寸法変化率は、下記の手順により測定した。
(手順1)第5の積層体の電極部を切り出したサンプルを、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下に16時間以上置いた後、サンプルの中心部において縦と横の長さを測定し、その平均寸法(a)を算出した。
(手順2)サンプルを80℃の温水に3時間浸漬した。
(手順3)サンプルを温水から取り出して中心部において縦と横の長さを測定し、その平均寸法(b)を算出した。
(手順4)下式から寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=[寸法(b)−寸法(a)]/寸法(a)×100。
(温水浸漬電極剥離率)
第5の積層体の温水浸漬電極剥離率は、下記の手順により測定した。
(手順1)第5の積層体を、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下に16時間以上置いた後、電極部の中心部においての縦と横の長さを測定し、その面積(a)を算出した。
(手順2)第5の積層体を80℃の温水に12時間浸漬した。
(手順3)第5の積層体を温水から取り出して12時間室温で乾燥後、剥離した電極部分の面積(b)を1cm角ごとに測定し算出した。
(手順4)下式から剥離率を算出した。
剥離率(%)=面積(b)/面積(a)×100。
(セル電圧)
膜電極接合体を発電用セルに組み込み、膜電極接合体の温度を80℃に維持し、アノードに水素(利用率70%)、カソードに空気(利用率50%)を、それぞれ150kPa(絶対圧力)に加圧して供給した。ガスの加湿度を、水素および空気ともに相対湿度100%にし、電流密度が1.0A/cmのときのセル電圧をそれぞれ記録した。
また、水素および空気ともに相対湿度を0%とし、それぞれ175kPa(絶対圧力)に加圧して供給し、その他は同条件にて電流密度が1.0A/cmのときのセル電圧をそれぞれ記録した。
(抵抗)
膜電極接合体を発電用セルに組み込み、電流遮断法により抵抗を測定した。
(絶縁抵抗)
膜電極接合体の絶縁抵抗は、下記の手順により測定した。
(手順1)図15に示すように、2枚の集電板110の間に膜電極接合体10を置き、集電板110にポテンショスタット112(北斗電工社製、HA−301)を接続した。
(手順2)集電板110/膜電極接合体10/集電板110の積重物を、絶縁板114を介してプレス板116で挟み、集電板110に50mVの電圧を印加するとともに、膜電極接合体10の電極部分に1MPaの圧力を加え、5秒後に電流値を測定した。
(手順3)下式から絶縁抵抗値を算出した。
絶縁抵抗(Ω・cm)=電圧(mV)/(電流値(mA)/電極面積(cm))。
測定を5回行い、絶縁抵抗が1000(Ω・cm)以上を合格としてその数を示した。
(湿潤−乾燥サイクル試験)
湿潤−乾燥サイクル試験は、下記の文献に記載の方法に準じて行った。
Yeh−Hung Lai,Cortney K. Mittelsteadt,Craig S. Gittleman,David A. Dillard,”VISCOELASTIC STRESS MODEL AND MECHANICAL CHARACTERIZATION OF PERFLUOROSULFONIC ACID (PFSA) POLYMER ELECTROLYTE MEMBRANES”,Proceedings of FUELCELL2005,Third International Conference on Fuel Cell Science,Engineering and Technology,FUELCELL2005,(2005),74120.
具体的には、下記のようにして行った。
膜電極接合体を発電用セル(電極面積25cm)に組み込み、セル温度80℃、アノードおよびカソードにそれぞれ窒素を1L/分で供給した。その際に、ガスの加湿度をアノードおよびカソードともに相対湿度150%にして2分間供給した後、相対湿度0%にして2分間供給する工程を1サイクルとして繰り返した。100サイクルごとに、アノードとカソードとの間に圧力差を生じさせ、物理的なガスリークの有無を判定した。ガスリークが生じ、かつ、ガスクロスオーバー速度が10sccm以上になった時点を寿命と判断した。該時点におけるサイクル数を耐久性能の指標とする。
サイクル数が20000サイクル未満を×、20000サイクル以上を○とした。
〔合成例〕
下記の合成ルートにより化合物(m12)を合成した。
Figure 0005277740
(化合物(a2)の合成)
特開昭57−176973号公報の実施例2に記載の方法と同様にして、化合物(a2)を合成した。
(化合物(c2)の合成)
ジムロート冷却管、温度計、滴下ロートおよび撹拌翼付きガラス棒を備えた300cmの4口丸底フラスコに、窒素雰囲気下、フッ化カリウム(森田化学社製、クロキャットF)の1.6gおよびジメトキシエタンの15.9gを入れた。ついで、丸底フラスコを氷浴で冷却して、滴下ロートより化合物(b11)の49.1gを32分かけて、内温10℃以下で滴下した。滴下終了後、滴下ロートより化合物(a2)の82.0gを15分かけて滴下した。内温上昇はほとんど観測されなかった。滴下終了後、内温を室温に戻して約90時間撹拌した。分液ロートで下層を回収した。回収量は127.6gであり、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと記す。)純度は55%であった。回収液を200cmの4口丸底フラスコに移して、蒸留を実施した。減圧度1.0〜1.1kPa(絶対圧)の留分として化合物(c2)の97.7gを得た。GC純度は98%であり、収率は80%であった。
(化合物(d2)の合成)
200cmのステンレス製オートクレーブに、フッ化カリウム(森田化学社製、クロキャットF)の1.1gを入れた。脱気後、減圧下で、オートクレーブにジメトキシエタンの5.3g、アセトニトリルの5.3gおよび化合物(c2)の95.8gを入れた。
ついで、オートクレーブを氷浴で冷却して、内温0〜5℃にて、ヘキサフルオロプロペンオキシドの27.2gを27分かけて加えた後、撹拌しながら内温を室温に戻して一晩撹拌した。分液ロートで下層を回収した。回収量は121.9gであり、GC純度は63%であった。回収液の蒸留により沸点80〜84℃/0.67〜0.80kPa(絶対圧)の留分として化合物(d2)の72.0gを得た。GC純度は98%であり、収率は56%であった。
(化合物(m12)の合成)
内径1.6cmのステンレス製管を用いて、長さ40cmのU字管を作製した。該U字管の一方にガラスウールを充填し、他方にステンレス製焼結金属を目皿としてガラスビーズを充填し、流動層型反応器を作製した。流動化ガスとして窒素ガスを用い、原料を、定量ポンプを用いて連続的に供給できるようにした。出口ガスはトラップ管を用いて液体窒素で捕集した。
流動層型反応器を塩浴に入れ、反応温度を340℃に保持しながら、化合物(d2)/Nのモル比が1/20となるように、流動層型反応器に化合物(d2)の34.6gを1.5時間かけて供給した。反応終了後、液体窒素トラップより27gの液体を得た。GC純度は84%であった。該液体の蒸留により沸点69℃/0.40kPa(絶対圧)の留分として化合物(m12)を得た。GC純度は98%であった。
化合物(m12)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)。
δ(ppm):45.5(1F),45.2(1F),−79.5(2F),−82.4(4F),−84.1(2F),−112.4(2F),−112.6(2F),−112.9(dd,J=82.4Hz,67.1Hz,1F),−121.6(dd,J=112.9Hz,82.4Hz,1F),−136.0(ddt,J=112.9Hz,67.1Hz,6.1Hz,1F),−144.9(1F)。
〔製造例1〕
下記のようにして固体高分子電解質膜を形成した。
(ポリマー(P1)の合成)
オートクレーブ(内容積2575cm、ステンレス製)を窒素で置換し、充分に脱気を行った。減圧下で、化合物(m12)の950.3g、化合物(m21)の291.4g、溶媒である化合物(3−1)の490.1g、メタノールの173.7mgおよびラジカル開始剤である化合物(4)(日本油脂社製、パーロイルIPP)の873.1mgを入れ、オートクレーブ内を蒸気圧まで脱気した。
CClFCFCHClF ・・・(3−1)、
(CHCHOC(=O)OOC(=O)OCH(CH ・・・(4)。
内温を40℃に昇温し、オートクレーブにTFEを導入し、圧力を0.44MPaG(ゲージ圧)とした。温度、圧力を一定に保持して、6.0時間重合を行った。ついで、オートクレーブ内を冷却して重合を停止し、系内のガスをパージした。
反応液を化合物(3−1)で希釈した後、化合物(3−2)を加え、ポリマーを凝集させ、ろ過した。
CHCClF ・・・(3−2)。
化合物(3−1)中でポリマーを撹拌した後、化合物(3−2)を加え、ポリマーを再凝集し、ろ過した。該再凝集を2回繰り返した。ポリマーを80℃で一晩減圧乾燥し、TFEと化合物(m12)と化合物(m21)とのコポリマーであるポリマー(P1)の203.4gを得た。EW、ポリマーを構成する繰り返し単位の比およびTQ値を表1に示す。
Figure 0005277740
(ポリマー(Q1)の合成)
ポリマー(P1)を、メタノールを含む水酸化カリウム水溶液に加熱しながら加え、−SOF基を加水分解して−SOK基に変換した。
該ポリマーを水洗し、硫酸水溶液に加えて、−SOK基をスルホン酸基に変換し酸型のポリマー(Q1)を得た。
(ポリマー(Q1)分散液の調製)
ポリマー(Q1)をエタノール/水=1/1(質量比)の混合分散媒に分散させ、固形分濃度が13質量%のポリマー(Q1)分散液を得た。
(固体高分子電解質膜の形成)
ポリマー(Q1)分散液をETFEフィルム(旭硝子社製、アフレックス100N、厚さ:100μm)の表面にダイコータで塗工し、80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ、さらに160℃の乾燥器内で1時間の熱処理を施して20μmのポリマー(Q1)のフィルム(固体高分子電解質膜)を形成した。
ポリマー(Q1)のフィルムの軟化温度、ガラス転移温度、プロトン伝導率を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0005277740
〔製造例2〕
下記のようにして補強層を形成した。
(導電性塗工液の調製)
TFEに基づく単位と、単位(11)とからなるポリマー(H1)(イオン交換容量:1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)をエタノールに分散させ、固形分濃度10質量%のイオン交換樹脂液(A’)を調製した。
Figure 0005277740
気相成長炭素繊維(昭和電工社製、VGCF−H、繊維径:約150nm、繊維長:10〜20μm)の10.0gに蒸留水35.1gを加え、よく撹拌した。これにイオン交換樹脂液(A’)の30.0gとエタノールの54.9gを加え、よく撹拌し、さらに超音波印加装置を用いて混合、粉砕させ、固形分濃度が10質量%の導電性塗工液(A)とした。導電性塗工液(A)中の気相成長炭素繊維とポリマー(H1)との質量比(気相成長炭素繊維/ポリマー(H1))は、1/0.3であった。
(補強層)
シート状補強材として、ポリプロピレン不織布(目付け量:5g/m、平均繊維径:2μm、厚さ:40μm)を用意した。
ETFEフィルム(旭硝子社製、アフレックス100N、厚さ:100μm)の表面に、ポリプロピレン不織布を載置し、ポリプロピレン不織布の表面に、ダイコータを用いて導電性塗工液(A)を塗工した後、80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ補強層(R)を得た。導電性塗工液層の塗工量は1.6mg/cmであり、補強層の厚さはおよそ70μmであった。
〔他の材料〕
(触媒層用塗工液)
カーボン担体(比表面積800m/g)に白金が50%担持された触媒(田中貴金属工業社製)の10gを蒸留水の58.1gに添加してよく撹拌し、さらにエタノールの58.1gを加えて超音波印加装置を用いて粉砕し、よく撹拌した。これにポリマー(Q1)分散液の33.8gを加え、よく撹拌し、固形分濃度が9質量%、粘度が3200mPa・s、F/Cが0.95の触媒層用塗工液(B)を得た。
(ガス拡散層)
ガス拡散層を構成するガス拡散性基材として、カーボンブラック粒子とポリテトラフルオロエチレンとを含む分散液により表面が撥水処理されたカーボンペーパー(NOK社製、商品名:H2315T10A)(以下、カーボンペーパー(C)と記す。)を用意した。
(サブガスケット)
厚さ12μmのPENフィルムの中央部分を50mm角でくりぬいて、サブガスケット(S)を作製した。
〔例1〕
工程(a’):
ETFEフィルムの上に触媒層用塗工液(B)を、白金量が0.5mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、塗工液層を形成した。
工程(b’):
塗工液層を形成した直後に、塗工液層の上に、ETFEフィルムを取り除いた補強層(R)を被せ、塗工液層を80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ、さらに140℃の乾燥器内で30分間熱処理を施して触媒層を形成した。
工程(c’):
触媒層からETFEフィルムを剥がし、第1の積層体(L11)を得た。
工程(d’):
サブガスケット(S)、第1の積層体(L11)、ETFEフィルムを取り除いた高分子電解質膜、第1の積層体(L11)、サブガスケット(S)の順に重ねた。この際、第1の積層体(L11)の触媒層と固体高分子電解質膜とが接するように重ねた。また、サブガスケット(S)が、第1の積層体(L11)の補強層の周縁部および高分子電解質膜の周縁部に接するように重ねた。これらを、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で5分間熱プレスし、電極面積が25cmである第3の積層体(L31)を得た。
第3の積層体(L31)について寸法変化率および温水浸漬電極剥離率を測定した。結果を表3に示す。
工程(e’):
2枚のカーボンペーパー(C)で第3の積層体(L31)を挟み、あらかじめ130℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、膜電極接合体(D1)を得た。
膜電極接合体(D1)についてセル電圧、抵抗、絶縁抵抗を測定した。また湿潤−乾燥サイクル試験を行った。結果を表3に示す。
〔例2〕
工程(a’):
ETFEフィルムの上に触媒層用塗工液(B)を、白金量が0.5mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、塗工液層を形成した。
工程(b’):
塗工液層を形成した直後に、塗工液層の上に、ETFEフィルムを取り除いた補強層(R)を被せ、塗工液層を80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ、さらに140℃の乾燥器内で30分間熱処理を施して触媒層を形成した。
工程(c’):
触媒層からETFEフィルムを剥がし、第1の積層体(L12)を得た。
工程(a”):
ETFEフィルムの上に形成された固体高分子電解質膜の上に触媒層用塗工液(B)を、白金量が0.5mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、塗工液層を形成した。
工程(b”):
塗工液層を形成した直後に、塗工液層の上に、ETFEフィルムを取り除いた補強層(R)を被せ、塗工液層を80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ、さらに140℃の乾燥器内で30分間熱処理を施して触媒層を形成した。
工程(c”):
固体高分子電解質膜からETFEフィルムを剥がし、第2の積層体(L22)を得た。
工程(d”):
サブガスケット(S)、第1の積層体(L12)、これより面積の広い第2の積層体(L22)、サブガスケット(S)の順に重ねた。この際、第1の積層体(L12)の触媒層と第2の積層体(L22)の固体高分子電解質膜とが接するように重ねた。また、下側のサブガスケット(S)が、第1の積層体(L12)の補強層の周縁部、高分子電解質膜の周縁部および上側のサブガスケット(S)に接するように重ねた。また、上側のサブガスケット(S)が、第2の積層体(L22)の補強層の周縁部および下側のサブガスケット(S)に接するように重ねた。これらを、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で5分間熱プレスし、電極面積が25cmである第5の積層体(L32)を得た。
第5の積層体(L32)について寸法変化率および温水浸漬電極剥離率を測定した。結果を表3に示す。
工程(e’):
2枚のカーボンペーパー(C)で第5の積層体(L32)を挟み、あらかじめ130℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、膜電極接合体(D2)を得た。
膜電極接合体(D2)についてセル電圧、抵抗、絶縁抵抗を測定した。また湿潤−乾燥サイクル試験を行った。結果を表3に示す。
〔例3〕
工程(h):
ETFEフィルムの上に形成された厚さ10μmのイオン交換樹脂膜の上に触媒層用塗工液(B)を、白金量が0.5mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、塗工液層を形成した。
工程(i):
塗工液層を形成した直後に、塗工液層の上に、ETFEフィルムを取り除いた補強層(R)を被せ、塗工液層を80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ、さらに140℃の乾燥器内で30分間熱処理を施して触媒層を形成した。
工程(j):
イオン交換樹脂膜からETFEフィルムを剥がし、第3の積層体(L23)を得た。
工程(h’):
ETFEフィルムの上に形成された厚さ10μmのイオン交換樹脂膜の上に触媒層用塗工液(B)を、白金量が0.5mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、塗工液層を形成した。
工程(i’):
塗工液層を形成した直後に、塗工液層の上に、ETFEフィルムを取り除いた補強層(R)を被せ、塗工液層を80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ、さらに140℃の乾燥器内で30分間熱処理を施して触媒層を形成した。
工程(j’):
イオン交換樹脂膜からETFEフィルムを剥がし、第4の積層体(L23)を得た。
工程(k):
サブガスケット(S)、第3の積層体(L23)、サブガスケット(S)、第4の積層体(L23)、サブガスケット(S)の順に重ねた。この際、第3の積層体(L23)と第4の積層体(L23)の間に配置された中間のサブガスケット(S)の開口部を介して第3の積層体(L23)と第4の積層体(L23)のイオン交換樹脂膜同士が接するように重ねた。また、下側のサブガスケット(S)が、第3の積層体(L23)の補強層の周縁部および中間のサブガスケット(S)に接するように重ねた。また、上側のサブガスケット(S)が、第4の積層体(L23)の補強層の周縁部および中間のサブガスケット(S)に接するように重ねた。これらを、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で5分間熱プレスして固体高分子電解質膜を形成し、電極面積が25cmである第5の積層体(L33)を得た。
第5の積層体(L33)について寸法変化率および温水浸漬電極剥離率を測定した。結果を表3に示す。
工程(e’):
2枚のカーボンペーパー(C)で第5の積層体(L33)を挟み、あらかじめ130℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、膜電極接合体(D3)を得た。
膜電極接合体(D3)についてセル電圧、抵抗、絶縁抵抗を測定した。また湿潤−乾燥サイクル試験を行った。結果を表3に示す。
〔例4〕
ETFEフィルムの上に触媒層用塗工液(B)を、白金量が0.5mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、塗工液層を80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ、さらに140℃の乾燥器内で30分間熱処理を施して触媒層を形成した。
触媒層付きETFEフィルム、サブガスケット(S)、ETFEフィルムを取り除いた固体高分子電解質膜、サブガスケット(S)、触媒層付きETFEフィルムの順に重ねた。この際、サブガスケット(S)の開口部を介して触媒層付きETFEフィルムの触媒層と固体高分子電解質膜とが接するように重ねた。また、サブガスケット(S)の内縁部が触媒層の周縁部と固体高分子電解質膜の周縁部の間に入るように重ねた。これらを、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で5分間熱プレスした。
触媒層からETFEフィルムを剥がし、電極面積が25cmである膜触媒層接合体(E4)を得た。
膜触媒層接合体(E4)について寸法変化率を測定した。結果を表3に示す。
2枚のカーボンペーパー(C)で膜触媒層接合体(E4)を挟み、あらかじめ130℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、膜電極接合体(D4)を得た。
膜電極接合体(D4)についてセル電圧、抵抗、絶縁抵抗を測定した。また湿潤−乾燥サイクル試験を行った。結果を表3に示す。
〔例5〕
ETFEフィルムの上に触媒層用塗工液(B)を、白金量が0.5mg/cmとなるようにダイコータを用いて塗工し、塗工液層を80℃の乾燥器内で15分間乾燥させ、さらに140℃の乾燥器内で30分間熱処理を施して触媒層を形成し、55mm角の触媒層付きETFEフィルムを得た。
触媒層付きETFEフィルム、サブガスケット(S)、ETFEフィルムを取り除いた70mm角の固体高分子電解質膜、サブガスケット(S)、触媒層付きETFEフィルムの順に重ねた。この際、サブガスケット(S)の開口部を介して触媒層付きETFEフィルムの触媒層と固体高分子電解質膜とが接するように重ねた。また、サブガスケット(S)の内縁部が触媒層の周縁部と固体高分子電解質膜の周縁部の間に入るように重ねた。これらを、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で5分間熱プレスした。
触媒層からETFEフィルムを剥がし、電極面積が25cmである膜触媒層接合体(E5)を得た。
ETFEフィルムを取り除いた50mm角の補強層(R)、膜触媒層接合体(E5)、ETFEフィルムを取り除いた50mm角の補強層(R)の順に重ね、あらかじめ150℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で5分間熱プレスし、第5の積層体(L35)を得た。
第5の積層体(L35)について寸法変化率を測定した。結果を表3に示す。
2枚のカーボンペーパー(C)で第5の積層体(L35)を挟み、あらかじめ130℃に加熱したプレス機の中に入れ、1.5MPaのプレス圧力で2分間熱プレスし、膜電極接合体(D5)を得た。
膜電極接合体(D5)についてセル電圧、抵抗、絶縁抵抗を測定した。また湿潤−乾燥サイクル試験を行った。結果を表3に示す。
Figure 0005277740
本発明の膜電極接合体は、低加湿条件や湿潤と乾燥等を繰り返す環境下において運転される固体高分子形燃料電池用膜電極接合体として有用である。
膜電極接合体の一例を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(a’)、(a''')を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(b’)、(b''')を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(c’)、(c''')を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(d’)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(e’)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(a”)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(b”)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(c”)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(d”)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(h)、(h’)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(i)、(i’)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(j)、(j’)を示す断面図である。 本発明の膜電極接合体の製造方法における工程(k)を示す断面図である。 絶縁抵抗の測定方法を説明するための概略図である。
符号の説明
10 膜電極接合体
20 第1の電極
22 第1の触媒層
24 補強層
26 ガス拡散層
30 第2の電極
32 第2の触媒層
34 補強層
36 ガス拡散層
40 固体高分子電解質膜
50 離型フィルム
60 塗工液層
70 第1の積層体
72 第1’の積層体
80 サブガスケット
90 第2の積層体
92 第3の積層体
94 第4の積層体
100 第5の積層体
102 第1のイオン交換樹脂膜
104 第2のイオン交換樹脂膜
110 集電板
112 ポテンショスタット
114 絶縁板
116 プレス板

Claims (5)

  1. 触媒およびイオン交換樹脂を含む触媒層と、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材および導電性ファイバーを含む補強層と、を有する固体高分子燃料電池用電極における、触媒層の形成方法であり、
    下記の工程(a)、(b)を有する、触媒層の形成方法。
    (a)基材の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
    (b)工程(a)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて触媒層を形成する工程。
  2. 第1の触媒層を有する第1の電極と、第2の触媒層を有する第2の電極と、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極のうち少なくとも前記第1の電極が、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材および導電性ファイバーを含む補強層を、さらに有する固体高分子燃料電池用膜電極接合体の製造方法であり、
    下記の工程(a’)〜(d’)を有する、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
    (a’)離型フィルムの上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
    (b’)工程(a’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
    (c’)工程(b’)で形成された第1の触媒層から離型フィルムを剥がして第1の触媒層と補強層とからなる第1の積層体を得る工程。
    (d’)工程(c’)で得られた第1の積層体と、固体高分子電解質膜とを、第1の積層体の第1の触媒層と前記固体高分子電解質膜とが接するように接合する工程。
  3. 第1の触媒層を有する第1の電極と、第2の触媒層を有する第2の電極と、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極のうち少なくとも前記第2の電極が、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材および導電性ファイバーを含む補強層を、さらに有する固体高分子燃料電池用膜電極接合体の製造方法であり、
    下記の工程(a”)〜(c”)を有する、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
    (a”)離型フィルムの上に形成された固体高分子電解質膜の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
    (b”)工程(a”)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第2の触媒層を形成する工程。
    (c”)工程(b”)の後、固体高分子電解質膜から離型フィルムを剥がして固体高分子電解質膜と第2の触媒層と補強層とからなる第2の積層体を得る工程。
  4. 下記の工程(a’)〜(c’)、(d”)をさらに有する、請求項3に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
    (a’)離型フィルムの上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
    (b’)工程(a’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
    (c’)工程(b’)で形成された第1の触媒層から離型フィルムを剥がして第1の触媒層と補強層とからなる第1の積層体を得る工程。
    (d”)工程(c’)で得られた第1の積層体と、工程(c”)で得られた第2の積層体とを、前記第1の積層体の第1の触媒層と前記第2の積層体の固体高分子電解質膜とが接するように接合する工程。
  5. 第1の触媒層を有する第1の電極と、第2の触媒層を有する第2の電極と、前記第1の触媒層と前記第2の触媒層との間に配置される固体高分子電解質膜とを備え、前記第1の電極および前記第2の電極が、ポリマーからなる多孔質のシート状補強材および導電性ファイバーを含む補強層を、さらに有する固体高分子燃料電池用膜電極接合体の製造方法であり、
    下記の工程(h)〜(j)、(h’)〜(j’)、(k)を有する、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
    (h)離型フィルムの上に形成された第1のイオン交換樹脂膜の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
    (i)工程(h)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第1の触媒層を形成する工程。
    (j)工程(i)の後、第1のイオン交換樹脂膜から離型フィルムを剥がして第1のイオン交換樹脂膜と第1の触媒層と補強層とからなる第3の積層体を得る工程。
    (h’)離型フィルムの上に形成された第2のイオン交換樹脂膜の上に、触媒およびイオン交換樹脂を含む塗工液を塗工して塗工液層を形成する工程。
    (i’)工程(h’)で形成された塗工液層の上に、補強層を配置した後、前記塗工液層を乾燥させて第2の触媒層を形成する工程。
    (j’)工程(i’)の後、第2のイオン交換樹脂膜から離型フィルムを剥がして第2のイオン交換樹脂膜と第2の触媒層と補強層とからなる第4の積層体を得る工程。
    (k)工程(j)で得られた第3の積層体の第1のイオン交換樹脂膜と工程(j’)で得られた第4の積層体の第2のイオン交換樹脂膜とが接するように接合するとともに第1のイオン交換樹脂膜と第2のイオン交換樹脂膜とからなる固体高分子電解質膜を形成する工程。
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